転写シート及び転写方法
【課題】 電子複写機などにより形成したトナー画像を対象物に転写する過程において転写シートの材料物質の混入による画像の不鮮明化や転写したトナー画像が欠損することなく、速やかに転写シートを除去し、対象物に当該トナー画像を確実性高く明瞭に形成する手段を生産効率よく提供すること。
【課題を解決するための手段】
転写シートには、それ自身が溶解するか若しくは、転写シートの基材シートに水を浸透する材料を用い、その上に直接溶解層を塗工するか又は、基材シートに有機物または無機物の微粒子が成分として含まれるマット加工を施した上に溶解層を塗工したものであり、その溶解層上にトナー画像を形成して用いるものであることを特徴とする転写シート及び、これらの何れかの転写シートを用いてその溶解層上に形成したトナー画像面を対象物に重ねて加熱、加圧して対象物に付着させた後に溶解層を溶解して、トナー画像を対象物に転写する。
【課題を解決するための手段】
転写シートには、それ自身が溶解するか若しくは、転写シートの基材シートに水を浸透する材料を用い、その上に直接溶解層を塗工するか又は、基材シートに有機物または無機物の微粒子が成分として含まれるマット加工を施した上に溶解層を塗工したものであり、その溶解層上にトナー画像を形成して用いるものであることを特徴とする転写シート及び、これらの何れかの転写シートを用いてその溶解層上に形成したトナー画像面を対象物に重ねて加熱、加圧して対象物に付着させた後に溶解層を溶解して、トナー画像を対象物に転写する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー画像の転写に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電電子複写機や静電電子プリンタ(これらを以下「電子複写機」という。)には、印刷媒体として普通紙タイプであるPPC用紙又はポリエステルフィルムを表面処理したOHPシートが使用されている。
【0003】
しかしこうしたシート状のものに対する印刷はできるものの、印刷対象が立体物であるなどにより電子複写機に直接印刷できない場合がある。
【0004】
そのような場合は、電子複写機に適合する印刷媒体に電子複写機によって一旦印刷した後、その印刷画像を対象物に転写して、目的を達成することがある。
その転写の形態としては、透明な印刷媒体に電子複写機によって印刷した後、その印刷媒体を適宜の形状に切り抜いて、対象物に貼り付ける方法があり、そのための接着層を設けた印刷媒体が多数提案されている。
【0005】
しかしこれらは、あくまでもシールが張り付いているだけであり、本来の転写、即ち電子複写機などによって形成されたトナー画像のみを対象物に転写するのとは異なる。
このトナー画像のみを対象物に転写するための転写用の印刷媒体(以下「転写シート」という。)には、紙などによる支持体の表面にシリカや炭酸化合物の微粒子などを塗工したいわゆるマット加工紙によって試みられたり、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルムを支持体としてその印刷面にポリビニルアルコール(以下「PVA」という。)を塗工して剥離性を高めようとしたものがある。
そして、これによる転写の方法は、先ず、転写シートの上に電子複写によりトナー画像を印刷形成した後にそれを生基板に重ねて加熱・加圧してトナー画像を対象物の表面に付着させ、その後、転写シートを剥がして除去し、対象物の表面に転写画像を得るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許出願2008−273717
【特許文献2】特許出願2009−43894
【特許文献3】特許出願2005−203667
【特許文献4】特許出願2002−176616
【特許文献5】特許出願2001−353772
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】山口晶大「ホット・プレートを使ったプリント基板作成に挑戦」CQ出版社 トランジスタ技術 2005年12月号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの転写シートの問題点を考察すると、
転写シートがマット加工紙である場合は、加熱加圧の後に水に浸潤し、更に蒸気により蒸してトナー画像を紙から分離しようとするものであるが、その際にシリカや炭酸化合物等がトナーとともに転写付着してレジストとなる画像が不鮮明となったり、紙とトナーの分離が不十分なために一旦対象物に付着したトナー画像が引き剥がされて転写画像が欠損する問題がある。
【0009】
転写シートがPVAを塗布したプラスチックシートである場合は、加熱加圧の後、PVAのプラスチックシートへの付着力よりもトナー画像の対象物への付着力が大きいことにより、プラスチックシートを引き剥がしても、トナー画像が対象物側に付着するものであるが、これも対象物面に付着したトナー画像が再び引き剥がされてしまう応力が掛かることは避けられないため、これを補完するために水に浸潤しつつ、プラスチックシートの一端からPVAを溶かしつつ徐々にめくってプラスチックシートとトナー画像を分離して、対象物の上に転写画像を形成しようとするが、プラスチックが水を通さない材料のためPVAはシートがめくれて水と接するほんの僅かな部分からしか溶け始めることができず、充分な時間を掛けて慎重にゆっくりと剥がさないと、PVAが充分に溶けていない部分は一旦は対象物に付着したトナー画像がシートと分離できずに引き剥がされる応力が掛かり転写画像が欠損する問題が起きる。
【0010】
このように従来の転写の方法では何れの場合においても、相当熟練しないと満足な転写画像を形成することは困難であり、作業性もよくない。
【0011】
これらのことから、本発明で解決しようとする課題は、電子複写機で印刷したトナー画像を対象物に転写する過程において転写シートの材料物質の混入による画像の不鮮明化を生じさせないこと、及び対象物に付着したトナー画像に引き剥がすような応力を与えないで速やかに転写シートを除去し、対象物に当該トナー画像を確実性高く明瞭に形成する手段を生産効率よく提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の課題を解決するための発明は、
トナー画像を水溶性樹脂からなる溶解層の上に形成して、そのトナー画像面を対象物に重ねて加熱、加圧又は加熱加圧して対象物に付着させた後、溶解層を溶解してトナー画像を対象物に残すことで転写を完了させることである。
そしてこの転写を行うための転写シートは、次の3種類の転写シートである。
【0013】
1 水を浸透する材料からなる基材シートの少なくとも一面上に水溶性樹脂を成分とする溶解層を塗工し、その溶解層の上にトナー画像を形成して使用するものであることを特徴とする転写シートである。
【0014】
2 水を浸透する材料からなる基材シートの少なくとも一面上に有機物または無機物の微粒子が成分として含まれるマット加工を施し、さらにそのマット加工面の上に水溶性樹脂を成分とする溶解層を塗工し、その溶解層の上にトナー画像を形成して使用するものであることを特徴とする転写シートである。
【0015】
3 親水性樹脂を成分とする溶解性のシート上にトナー画像を形成して使用するものであることを特徴とする転写シートである。
【0016】
4 そして、これら何れかの転写シートを用いて行うことを特徴とする転写方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明における転写シートは、転写シートの溶解層の上に所定形状のトナー画像を形成した上で、そのトナー画像面を対象物に重ねて加熱、加圧又は加熱加圧してトナー画像を対象物に付着させ、次に転写シートを除去する際に、これら全体を水に浸潤するなどして転写シートの溶解層を溶解することで対象物にトナー画像が残るように利用する。
【0018】
溶解層が迅速に溶解するためには、基材シートの親水性もさることながら、溶解層が薄く均一であることが必要であるが、そのための溶解層の形成方法としては、溶解層をなす成分を含む溶液(以下「塗布液」という。)を塗工する方法が、形成層の厚さや表面性を制御しやすいため好ましい。
【0019】
そのようにして構成された転写シートが、課題を解決するための手段第1項に示す転写シートであり、この溶解層は薄く均一に塗工されていることが望ましい。
【0020】
また、課題を解決するための手段第2項に示す転写シートでは、溶解層を薄く均一に塗工しようとする際に、親水性の基材シートに直接に塗布液を塗布した場合は、その塗布液が基材内部に浸透してしまうことから見かけ上の溶解層が厚くなり転写時の剥離性を阻害することがあり、一方、基材シートの親水性を低くすれば、基材シートへの塗布液の浸透を防止でき、従って基材シート上に薄く均一に溶解層をなすことが可能であるが、これでは、転写シートを除去する際に水の浸透が阻害され、やはり剥離性が悪くなってしまうことがあるため、基材シートと溶解層の間にマット加工層を設けて、そのマット加工層の上に溶解層を塗工することでその相反する問題を解決したものである。
【0021】
さらに、課題を解決するための手段第3項に示す転写シートでは、転写シート自体が溶解性であることから、転写後に基材シートを取り除く手間が不要となるものである。
【0022】
これらの何れかの転写シートを使った転写の方法は、転写シートの溶解層上に所定形状のトナー画像を形成し、そのトナー画像面を対象物に重ねて加圧、加熱または加熱加圧してトナー画像を対象物に付着させ、さらにこれらを重ねたまま転写シートの基材シート面から水を浸潤して溶解層を溶解させる。すると、トナー画像が転写シートから浮くように分離して対象物への転写が完了するものである。
なお、課題を解決するための手段第3項に示す転写シートでは、転写シート自体が溶解性であることから水に浸潤すると転写シートが溶解してトナー画像が対象物に残って転写が完了する。
こうしたことで、一旦対象物に付着したトナー画像に引き剥がす応力が掛かることを防止でき、確実で明瞭な転写画像が高い生産効率で得られる。
【0023】
この技術は多様な物、例えば金属、プラスチック、木材、竹、皮革、石材、セラミック、陶磁器、紙、布、ゴム、ガラス及び更にこれらに塗装や表面加工を施したもの、また、これら固形物の他に、非水溶性ゲル状の半固形物に対しても転写することが可能となるものであり、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】転写シートの基材の上に溶解層を塗工した状態の断面図
【図2】溶解層の上に所定形状のトナー画像を形成した状態の断面図
【図3】トナー画像面を対象物に重ねて加圧、加熱または加熱加圧して対象物にトナー画像を付着させた状態の断面図
【図4】基材シート面から水を浸透させて溶解層を溶解した結果、トナー画像と転写シートが分離した状態の断面図
【図5】分離した転写シートを除去して対象物にトナー画像が転写した状態の断面図
【図6】基材シートのマット加工層の上に溶解層を塗工した状態の断面図
【図7】溶解層の上に所定形状のトナー画像を形成した状態の断面図
【図8】トナー画像面を対象物に重ねて加圧、加熱または加熱加圧して対象物にトナー画像を付着させた状態の断面図
【図9】基材シート面から水を浸透させて溶解層を溶解した結果、トナー画像と転写シートが分離した状態の断面図
【図10】分離した転写シートを除去して対象物にトナー画像が転写した状態の断面図
【図11】溶解層のみからなる転写シートの上に所定形状のトナー画像を形成した状態の断面図
【図12】トナー画像面を対象物に重ねて加圧、加熱または加熱加圧して対象物にトナー画像を付着させた状態の断面図
【図13】転写シートを溶解して、対象物にトナー画像が転写した状態の断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の一実施形態を、次に示す。
1 基材シートとして所定の大きさの紙を用意する。
2 転写シートの第1の形態として基材シートの上に直接PVA溶液を塗工して乾燥させて転写シートを得る。
【0026】
3 転写シートの第2の形態として、基材シートの上に先ずマット加工層を形成する。マット加工は合成樹脂等の有機物やシリカや炭酸化合物等の無機物の微粒子が成分として含まれる材料を塗工するものであり、既成技術が利用できるのでここでは詳細は省略する。なお、このマット加工層は、親水性があり、かつ、多孔質であることが望ましい。
そして、マット加工層の上にPVA溶液を塗工して乾燥させて転写シートを得る。
この転写シートの第2の形態ではPVA溶液が基材シートにまで浸透することなく、マット加工層の上に所定の厚さを以て安定的に塗工することができる。
【0027】
次にこれらの何れかの転写シートを用いて転写を行うには、
4 溶解層上に所定形状のトナー画像を電子コピーにより印刷して所定形状のトナー画像を形成する。トナー画像は左右反転像である必要がある。
5 対象物の転写面は清浄にしておくことが望ましい。
6 次に、転写シートのトナー画像面を対象物に重ねて加熱加圧する。
7 次に、これらを重ねたまま基材シート面から水を浸潤させる。このとき、温水を用いたり界面活性剤を加えた水を用いたり、あるいは界面活性剤を含んだ温水を用いると水の浸潤が更に良好になる。
8 水の浸潤が進行して程なく熔解層が溶解するとトナー画像が転写シートから浮くようにして分離するので、その転写シートを除去して転写が完了する。
【符号の説明】
【0028】
1 基材シート
2 マット加工層
3 溶解層
4 トナー画像
5 対象物
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー画像の転写に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、静電電子複写機や静電電子プリンタ(これらを以下「電子複写機」という。)には、印刷媒体として普通紙タイプであるPPC用紙又はポリエステルフィルムを表面処理したOHPシートが使用されている。
【0003】
しかしこうしたシート状のものに対する印刷はできるものの、印刷対象が立体物であるなどにより電子複写機に直接印刷できない場合がある。
【0004】
そのような場合は、電子複写機に適合する印刷媒体に電子複写機によって一旦印刷した後、その印刷画像を対象物に転写して、目的を達成することがある。
その転写の形態としては、透明な印刷媒体に電子複写機によって印刷した後、その印刷媒体を適宜の形状に切り抜いて、対象物に貼り付ける方法があり、そのための接着層を設けた印刷媒体が多数提案されている。
【0005】
しかしこれらは、あくまでもシールが張り付いているだけであり、本来の転写、即ち電子複写機などによって形成されたトナー画像のみを対象物に転写するのとは異なる。
このトナー画像のみを対象物に転写するための転写用の印刷媒体(以下「転写シート」という。)には、紙などによる支持体の表面にシリカや炭酸化合物の微粒子などを塗工したいわゆるマット加工紙によって試みられたり、ポリエステルフィルム等のプラスチックフィルムを支持体としてその印刷面にポリビニルアルコール(以下「PVA」という。)を塗工して剥離性を高めようとしたものがある。
そして、これによる転写の方法は、先ず、転写シートの上に電子複写によりトナー画像を印刷形成した後にそれを生基板に重ねて加熱・加圧してトナー画像を対象物の表面に付着させ、その後、転写シートを剥がして除去し、対象物の表面に転写画像を得るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許出願2008−273717
【特許文献2】特許出願2009−43894
【特許文献3】特許出願2005−203667
【特許文献4】特許出願2002−176616
【特許文献5】特許出願2001−353772
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】山口晶大「ホット・プレートを使ったプリント基板作成に挑戦」CQ出版社 トランジスタ技術 2005年12月号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの転写シートの問題点を考察すると、
転写シートがマット加工紙である場合は、加熱加圧の後に水に浸潤し、更に蒸気により蒸してトナー画像を紙から分離しようとするものであるが、その際にシリカや炭酸化合物等がトナーとともに転写付着してレジストとなる画像が不鮮明となったり、紙とトナーの分離が不十分なために一旦対象物に付着したトナー画像が引き剥がされて転写画像が欠損する問題がある。
【0009】
転写シートがPVAを塗布したプラスチックシートである場合は、加熱加圧の後、PVAのプラスチックシートへの付着力よりもトナー画像の対象物への付着力が大きいことにより、プラスチックシートを引き剥がしても、トナー画像が対象物側に付着するものであるが、これも対象物面に付着したトナー画像が再び引き剥がされてしまう応力が掛かることは避けられないため、これを補完するために水に浸潤しつつ、プラスチックシートの一端からPVAを溶かしつつ徐々にめくってプラスチックシートとトナー画像を分離して、対象物の上に転写画像を形成しようとするが、プラスチックが水を通さない材料のためPVAはシートがめくれて水と接するほんの僅かな部分からしか溶け始めることができず、充分な時間を掛けて慎重にゆっくりと剥がさないと、PVAが充分に溶けていない部分は一旦は対象物に付着したトナー画像がシートと分離できずに引き剥がされる応力が掛かり転写画像が欠損する問題が起きる。
【0010】
このように従来の転写の方法では何れの場合においても、相当熟練しないと満足な転写画像を形成することは困難であり、作業性もよくない。
【0011】
これらのことから、本発明で解決しようとする課題は、電子複写機で印刷したトナー画像を対象物に転写する過程において転写シートの材料物質の混入による画像の不鮮明化を生じさせないこと、及び対象物に付着したトナー画像に引き剥がすような応力を与えないで速やかに転写シートを除去し、対象物に当該トナー画像を確実性高く明瞭に形成する手段を生産効率よく提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以上の課題を解決するための発明は、
トナー画像を水溶性樹脂からなる溶解層の上に形成して、そのトナー画像面を対象物に重ねて加熱、加圧又は加熱加圧して対象物に付着させた後、溶解層を溶解してトナー画像を対象物に残すことで転写を完了させることである。
そしてこの転写を行うための転写シートは、次の3種類の転写シートである。
【0013】
1 水を浸透する材料からなる基材シートの少なくとも一面上に水溶性樹脂を成分とする溶解層を塗工し、その溶解層の上にトナー画像を形成して使用するものであることを特徴とする転写シートである。
【0014】
2 水を浸透する材料からなる基材シートの少なくとも一面上に有機物または無機物の微粒子が成分として含まれるマット加工を施し、さらにそのマット加工面の上に水溶性樹脂を成分とする溶解層を塗工し、その溶解層の上にトナー画像を形成して使用するものであることを特徴とする転写シートである。
【0015】
3 親水性樹脂を成分とする溶解性のシート上にトナー画像を形成して使用するものであることを特徴とする転写シートである。
【0016】
4 そして、これら何れかの転写シートを用いて行うことを特徴とする転写方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明における転写シートは、転写シートの溶解層の上に所定形状のトナー画像を形成した上で、そのトナー画像面を対象物に重ねて加熱、加圧又は加熱加圧してトナー画像を対象物に付着させ、次に転写シートを除去する際に、これら全体を水に浸潤するなどして転写シートの溶解層を溶解することで対象物にトナー画像が残るように利用する。
【0018】
溶解層が迅速に溶解するためには、基材シートの親水性もさることながら、溶解層が薄く均一であることが必要であるが、そのための溶解層の形成方法としては、溶解層をなす成分を含む溶液(以下「塗布液」という。)を塗工する方法が、形成層の厚さや表面性を制御しやすいため好ましい。
【0019】
そのようにして構成された転写シートが、課題を解決するための手段第1項に示す転写シートであり、この溶解層は薄く均一に塗工されていることが望ましい。
【0020】
また、課題を解決するための手段第2項に示す転写シートでは、溶解層を薄く均一に塗工しようとする際に、親水性の基材シートに直接に塗布液を塗布した場合は、その塗布液が基材内部に浸透してしまうことから見かけ上の溶解層が厚くなり転写時の剥離性を阻害することがあり、一方、基材シートの親水性を低くすれば、基材シートへの塗布液の浸透を防止でき、従って基材シート上に薄く均一に溶解層をなすことが可能であるが、これでは、転写シートを除去する際に水の浸透が阻害され、やはり剥離性が悪くなってしまうことがあるため、基材シートと溶解層の間にマット加工層を設けて、そのマット加工層の上に溶解層を塗工することでその相反する問題を解決したものである。
【0021】
さらに、課題を解決するための手段第3項に示す転写シートでは、転写シート自体が溶解性であることから、転写後に基材シートを取り除く手間が不要となるものである。
【0022】
これらの何れかの転写シートを使った転写の方法は、転写シートの溶解層上に所定形状のトナー画像を形成し、そのトナー画像面を対象物に重ねて加圧、加熱または加熱加圧してトナー画像を対象物に付着させ、さらにこれらを重ねたまま転写シートの基材シート面から水を浸潤して溶解層を溶解させる。すると、トナー画像が転写シートから浮くように分離して対象物への転写が完了するものである。
なお、課題を解決するための手段第3項に示す転写シートでは、転写シート自体が溶解性であることから水に浸潤すると転写シートが溶解してトナー画像が対象物に残って転写が完了する。
こうしたことで、一旦対象物に付着したトナー画像に引き剥がす応力が掛かることを防止でき、確実で明瞭な転写画像が高い生産効率で得られる。
【0023】
この技術は多様な物、例えば金属、プラスチック、木材、竹、皮革、石材、セラミック、陶磁器、紙、布、ゴム、ガラス及び更にこれらに塗装や表面加工を施したもの、また、これら固形物の他に、非水溶性ゲル状の半固形物に対しても転写することが可能となるものであり、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】転写シートの基材の上に溶解層を塗工した状態の断面図
【図2】溶解層の上に所定形状のトナー画像を形成した状態の断面図
【図3】トナー画像面を対象物に重ねて加圧、加熱または加熱加圧して対象物にトナー画像を付着させた状態の断面図
【図4】基材シート面から水を浸透させて溶解層を溶解した結果、トナー画像と転写シートが分離した状態の断面図
【図5】分離した転写シートを除去して対象物にトナー画像が転写した状態の断面図
【図6】基材シートのマット加工層の上に溶解層を塗工した状態の断面図
【図7】溶解層の上に所定形状のトナー画像を形成した状態の断面図
【図8】トナー画像面を対象物に重ねて加圧、加熱または加熱加圧して対象物にトナー画像を付着させた状態の断面図
【図9】基材シート面から水を浸透させて溶解層を溶解した結果、トナー画像と転写シートが分離した状態の断面図
【図10】分離した転写シートを除去して対象物にトナー画像が転写した状態の断面図
【図11】溶解層のみからなる転写シートの上に所定形状のトナー画像を形成した状態の断面図
【図12】トナー画像面を対象物に重ねて加圧、加熱または加熱加圧して対象物にトナー画像を付着させた状態の断面図
【図13】転写シートを溶解して、対象物にトナー画像が転写した状態の断面図
【発明を実施するための形態】
【0025】
この発明の一実施形態を、次に示す。
1 基材シートとして所定の大きさの紙を用意する。
2 転写シートの第1の形態として基材シートの上に直接PVA溶液を塗工して乾燥させて転写シートを得る。
【0026】
3 転写シートの第2の形態として、基材シートの上に先ずマット加工層を形成する。マット加工は合成樹脂等の有機物やシリカや炭酸化合物等の無機物の微粒子が成分として含まれる材料を塗工するものであり、既成技術が利用できるのでここでは詳細は省略する。なお、このマット加工層は、親水性があり、かつ、多孔質であることが望ましい。
そして、マット加工層の上にPVA溶液を塗工して乾燥させて転写シートを得る。
この転写シートの第2の形態ではPVA溶液が基材シートにまで浸透することなく、マット加工層の上に所定の厚さを以て安定的に塗工することができる。
【0027】
次にこれらの何れかの転写シートを用いて転写を行うには、
4 溶解層上に所定形状のトナー画像を電子コピーにより印刷して所定形状のトナー画像を形成する。トナー画像は左右反転像である必要がある。
5 対象物の転写面は清浄にしておくことが望ましい。
6 次に、転写シートのトナー画像面を対象物に重ねて加熱加圧する。
7 次に、これらを重ねたまま基材シート面から水を浸潤させる。このとき、温水を用いたり界面活性剤を加えた水を用いたり、あるいは界面活性剤を含んだ温水を用いると水の浸潤が更に良好になる。
8 水の浸潤が進行して程なく熔解層が溶解するとトナー画像が転写シートから浮くようにして分離するので、その転写シートを除去して転写が完了する。
【符号の説明】
【0028】
1 基材シート
2 マット加工層
3 溶解層
4 トナー画像
5 対象物
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を浸透する材料からなる基材シートの少なくとも一面上に親水性樹脂を成分とする溶解層を塗工し、その上にトナー画像を形成して用いるものであることを特徴とする転写シート。
【請求項2】
水を浸透する材料からなる基材シートの少なくとも一面上に有機物または無機物の微粒子が成分として含まれるマット加工を施し、さらにそのマット加工面の上に親水性樹脂を成分とする溶解層を塗工し、その上にトナー画像を形成して用いるものであることを特徴とする転写シート。
【請求項3】
請求項1による転写シートの溶解層上に所定形状のトナー画像を形成した後、その画像面を対象物に重ねて加圧、加熱又は加熱加圧してトナー画像を対象物に付着させ、さらにこれらが重なったままの状態で基材シート面から水を浸潤させて転写シートの溶解層を溶解して、トナー画像から転写シートを分離除去することで、対象物にトナー画像を転写することを特徴とする転写方法。
【請求項4】
請求項2による転写シートの溶解層上に所定形状のトナー画像を形成した後、その画像面を対象物に重ねて加圧、加熱又は加熱加圧してトナー画像を対象物に付着させ、さらにこれらが重なったままの状態で基材シート面から水を浸潤させて転写シートの溶解層を溶解して、トナー画像から転写シートを分離除去することで、対象物にトナー画像を転写することを特徴とする転写方法。
【請求項5】
親水性樹脂を成分とする溶解性のシートを転写シートとして用い、その転写シートの上に所定形状のトナー画像を形成した後、その画像面を対象物に重ねて加圧、加熱又は加熱加圧してトナー画像を対象物に付着させ、さらにこれらが重なったままの状態で水に浸潤して転写シートを溶解して、対象物にトナー画像を転写することを特徴とする転写方法。
【請求項1】
水を浸透する材料からなる基材シートの少なくとも一面上に親水性樹脂を成分とする溶解層を塗工し、その上にトナー画像を形成して用いるものであることを特徴とする転写シート。
【請求項2】
水を浸透する材料からなる基材シートの少なくとも一面上に有機物または無機物の微粒子が成分として含まれるマット加工を施し、さらにそのマット加工面の上に親水性樹脂を成分とする溶解層を塗工し、その上にトナー画像を形成して用いるものであることを特徴とする転写シート。
【請求項3】
請求項1による転写シートの溶解層上に所定形状のトナー画像を形成した後、その画像面を対象物に重ねて加圧、加熱又は加熱加圧してトナー画像を対象物に付着させ、さらにこれらが重なったままの状態で基材シート面から水を浸潤させて転写シートの溶解層を溶解して、トナー画像から転写シートを分離除去することで、対象物にトナー画像を転写することを特徴とする転写方法。
【請求項4】
請求項2による転写シートの溶解層上に所定形状のトナー画像を形成した後、その画像面を対象物に重ねて加圧、加熱又は加熱加圧してトナー画像を対象物に付着させ、さらにこれらが重なったままの状態で基材シート面から水を浸潤させて転写シートの溶解層を溶解して、トナー画像から転写シートを分離除去することで、対象物にトナー画像を転写することを特徴とする転写方法。
【請求項5】
親水性樹脂を成分とする溶解性のシートを転写シートとして用い、その転写シートの上に所定形状のトナー画像を形成した後、その画像面を対象物に重ねて加圧、加熱又は加熱加圧してトナー画像を対象物に付着させ、さらにこれらが重なったままの状態で水に浸潤して転写シートを溶解して、対象物にトナー画像を転写することを特徴とする転写方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
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【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−118169(P2012−118169A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266124(P2010−266124)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(710013446)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(710013446)
【Fターム(参考)】
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