説明

転写フィルム及びその製造方法

【課題】 被覆層を形成するメタリック系インクの切れや剥離を防止し、ベースフィルム上の画像を確実に被覆できるインモールド成形用の転写フィルム及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 インクをベースフィルム11上に転写してカラーインク層21を形成し、カラーインク層21の上に、バインダー樹脂を転写してプライマ層22を形成し、さらにプライマ層22の上に、金属膜を転写してカラーインク層21を被覆する被覆層23を形成する。金属膜からなる被覆層23はプライマ層22を介してカラーインク層21の表面に強い接着力で固定されており、金属膜は切れることなくピンホール50や段差51の部分を確実に被覆することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形品の表面を加飾する際に用いられるインモールド成形用の転写フィルム及びその製造方法に係わり、特にサーマルヘッドと熱転写型インクリボンを用いて形成される転写フィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インモールド成形における加飾は、まず所定のフィルム上に熱転写型プリンタのサーマルヘッドを用いて熱転写リボンのインクを転写することにより、画像が形成された転写フィルムを製造する。そして、転写フィルムを所定の金型内に配置して樹脂を注入してインモールド成形すると、画像が成形品の表面に再転写されて加飾が行われる。
【0003】
下記の特許文献1は、フィルム上にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの順で転写を行って画像を形成し、その画像の上に接着剤層としてのプライマを転写して行なう際にサーマルヘッドの各発熱素子の全てを通電することで光沢感のある画像が形成されるというものである。
【0004】
また、下記の特許文献2は、記録情報に基づいて熱溶融性インクを記録用紙に溶融転写する下地処理を黒色インクで行うとともに、この下地処理の上にメタリック系インクを転写して記録を行うことにより、メタリック系インクの光沢感を増大させるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−216675号公報
【特許文献2】特開平11−320935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
熱転写型のプリンタでは、一般的にサーマルヘッドに対する通電量を制御し、熱転写する面積を異ならせることにより階調の調整が行われる。このため、記録情報が「0」の部分はカラー指定のない部分であり、画像上は配色のないブランク部分としてピンホールが形成される。
【0007】
また画像の形成は、フィルム上にイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックなど複数の熱溶融性インクを重ねて転写するが、記録情報に応じて重なるインクの層数が異なるため、画像の至る箇所に多数の段差が形成されることになる。
【0008】
メタリック系インクは上記のようなピンホールや段差の上にも転写されるが、メタリック系インクは例えばPETなどからなるフィルム基材上に金属を蒸着させることにより形成されているため、面に沿う方向で連結度が弱く、ピンホール部分でメタリック系インクが切れる、あるいは大きな段差部分で転写しきれずに剥離するというような転写不良の問題があった。
【0009】
このため、このようなピンホールや段差が多数形成された画像を有する転写フィルム用いて樹脂をインモールド成形した場合、成形品においてメタリック系インクの切れ間、剥離またはピンホールを通じて光が漏れて成形品全体が透けやすくなり、このため成形品の表面が十分な光沢感のあるメタリック調に仕上げ難いという問題があった。
【0010】
本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、被覆層を形成するメタリック系インクの切れや剥離を防止して、ベースフィルム上の画像を確実に被覆できるインモールド成形用の転写フィルム及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第1の発明は、所定の記録情報に基づく画像がベースフィルム上に形成された転写フィルムにおいて、
着色インクリボンのインクを、前記ベースフィルム上に転写することにより形成されたカラーインク層と、バインダー樹脂を、前記カラーインク層の上に転写することにより形成されたプライマ層と、金属膜を、前記プライマ層の上に転写することにより形成された被覆層とを有し、
前記被覆層が、前記プライマ層を介して前記カラーインク層の表面に接着固定されていることを特徴とするものである。
【0012】
第1の発明では、画像を形成するカラーインク層を、プライマ層を介して金属膜を有する被覆層で被覆することにより、カラーインク層に形成されたスルーホールや段差を切れ間なく確実に被覆することができる。
【0013】
例えば、前記着色インクリボンのインクは、イエロー、マゼンタ、シアンの3色の熱溶融性インク、またはこれらにブラックを加えた4色の熱溶融性インクである。
【0014】
また、前記バインダー樹脂は、アクリル系樹脂又はエポキシ系樹脂又はポリエステル系樹脂から形成されるものである。
さらに、前記金属膜は、フィルム基材上に蒸着により形成されたアルミニウムである。
【0015】
また第2の発明は、所定の記録情報に基づく画像を、サーマルヘッドを用いてベースフィルム上に転写する転写フィルムの製造方法において、
少なくとも1以上のインクが前記ベースフィルム上に転写されてカラーインク層が形成される第1の工程と、
前記カラーインク層の上に、バインダー樹脂が転写されてプライマ層が形成される第2の工程と、
前記プライマ層の上に、金属膜が転写されて前記カラーインク層が被覆される被覆層を形成する第3の工程と、を有し、
前記第3の工程では、前記被覆層が前記プライマ層を介して前記カラーインク層の表面に接着固定されることを特徴とするものである。
【0016】
第2の発明においても、画像を形成するカラーインク層を、プライマ層を介して金属膜を有する被覆層で被覆することにより、カラーインク層に形成されたスルーホールや段差を切れ間なく確実に被覆することができる。
【0017】
上記において、前記カラーインク層を形成するインクを備えた着色インクリボンと、前記プライマ層を形成するバインダー樹脂を備えたバインダーインクリボンと、前記被覆層を形成する金属膜を備えたメタリック系インクリボンとが設けられており、いずれか一のインクリボンが選択されて、前記サーマルヘッドにより、前記インク、バインダー又は金属膜が熱転写されるものが好ましい。
【0018】
上記手段では、インクリボンを選択して転写する機能を有する熱転写プリンタを用いて転写フィルムを製造することができる。
【0019】
あるいは、前記ベースフィルムの搬送経路上に、前記カラーインク層を形成するインクを備えた着色インクリボンと、前記プライマ層を形成するバインダー樹脂を備えたバインダーインクリボンと、前記被覆層を形成する金属膜を備えたメタリック系インクリボンと、前記各インクリボンにそれぞれ対応するサーマルヘッドと、が設けられており、
各インクリボンに対応する前記サーマルヘッドが順番に駆動されて、前記ベースフィルム上に前記インク、バインダー及び金属膜が熱転写されるものが好ましい。
【0020】
上記手段では、インクリボン用のカートリッジを選択する必要がないので、転写フィルムの製造時間を短縮することができる。
【0021】
上記において、例えば、前記バインダー樹脂は、アクリル系樹脂又はエポキシ系樹脂又はポリエステル系樹脂から形成されるものを使用できる。
前記金属膜は、フィルム基材上に蒸着により形成されたアルミニウムが使用できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、画像を形成するカラーインク層に形成されたピンホールや段差を確実に被覆することができるため、転写不良の少ない転写フィルム及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態としての転写フィルムを拡大して示す断面図、
【図2】転写フィルムを製造する熱転写プリンタの概略を示す側面図、
【図3】被覆層を形成する熱転写インクリボン(メタリック系インクリボン)の断面図、
【図4】(A)ないし(C)は本発明の実施の形態としての転写フィルムの製造方法を示す工程図、
【図5】転写フィルムを製造する他の実施の形態として熱転写プリンタの概略を示す側面図、
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の実施の形態としての転写フィルムを拡大して示す断面図である。
図1に示すように、転写フィルム10は、表面に剥離層12が積層されたベースフィルム11と、その剥離層12の表面に形成された画像20とで形成されている。画像20は、ベースフィルム11の上に積層されたカラーインク層21と、カラーインク層21の上に積層されたプライマ層22と、前記プライマ層22の上に積層された被覆層23とを有して構成される。
【0025】
なお、剥離層12の材料としては、アクリル樹脂、セルロース系樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン系樹脂などが好適である。
【0026】
カラーインク層21は、イエロー(Yellow)21y、マゼンタ(Magenta)21m、シアン(Cyan)21c、ブラック(black)21bなどからなる熱溶融インクのうちの1種で形成され、または2種以上が積層されることにより形成されている。
【0027】
4種類の熱溶融インクのうち、イエロー21y、マゼンタ21m、シアン21cの3種値の組合せは自由である。ただし、これら3種の熱溶融インクの全てを積層した場合には黒色となり、ブラック21bは3種類を積層してなる黒色の濃度を高めるため、それらの上に積層される。
【0028】
プライマ層22はカラーインク層21の上に積層される。プライマ層22はバインダー樹脂のみで形成されており、カラーインク層21と被覆層23との間の接着を行う接着剤として機能している。
【0029】
被覆層23は、例えばアルミニウムなどからなる薄い金属膜で形成されており、プライマ層22の上に接着されてカラーインク層21の全体を覆っている。
【0030】
図2は、転写フィルムを製造する熱転写プリンタの概略を示す側面図、図4は、(A)ないし(C)は本発明の実施の形態としての転写フィルムの製造方法を示す工程図である。なお、図2及び図4(A)ないし(C)では、段差の高い中央よりも左側(ピンホール50を含む側)が黒色を転写する場合を示し、段差の低い右側が黒色以外のカラーを転写する場合を示している。
【0031】
図2に示すように、熱転写プリンタ30は、熱記録手段としてのサーマルヘッド31、サーマルヘッド31と対向する位置に配置されたプラテンローラ32、中間転写体としてのベースフィルム11、ベースフィルム11供給用の供給ローラ33、巻取りローラ34及び複数のフィードローラ35,36,37,38,39などを有して構成されている。
【0032】
サーマルヘッド31は、ベースフィルム11と熱転写インクリボン41とを介してプラテンローラ32に対して進退自在に配置されている。ベースフィルム11は供給ローラ33の回転により、フィードローラ35を介してサーマルヘッド31とプラテンローラ32との間に供給され、その後、フィードローラ36,37,38,39を介して巻取りローラ34に巻き取られる。
【0033】
熱転写インクリボン41は、カードリッジ40内に供給リール42、巻取りリール43及びフィードローラ44,45とともに設けられている。熱転写インクリボン41は、供給リール42の回転により、フィードローラ44を介してサーマルヘッド31とプラテンローラ32との間に供給され、その後、フィードローラ45を介して巻取りリール43により巻き取られる。
【0034】
熱転写プリンタ30の内部には、記録情報(原画像データ)から各画素の階調を生成する階調生成手段(図示せず)と、階調生成手段により変換された原画像の各画素の階調値に従ってサーマルヘッド31に対する通電を制御する記録制御手段(図示せず)などが設けられている。
【0035】
熱転写プリンタ30は図示しないコンピュータに接続されており、コンピュータから記録情報が熱転写プリンタに送信されると、図示しない階調生成手段や記録制御手段などを介してサーマルヘッド31や供給ローラ33、巻取りローラ34などが駆動される。
【0036】
そして、ベースフィルム11と熱転写インクリボン41がそれぞれサーマルヘッド31とプラテンローラ32との間に供給され、サーマルヘッド31への通電により、ベースフィルム11に熱転写インクリボン41の熱溶融インクが熱転写されて、画像が形成された転写フィルム10が製造される。
【0037】
すなわち、熱転写プリンタ30は、熱転写インクリボン41の溶融熱転写インクをサーマルヘッド31でベースフィルム11上に画像を熱転写することにより転写フィルム10を形成する画像形成手段しての機能を備えている。画像の形成は、ベースフィルム11に対して熱転写インクリボン41の種類ごと、つまりイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色ごとに繰り返し行われる。
【0038】
なお、熱転写インクリボン41は、カラーインク層21を形成するだけでなく、プライマ層22及び被覆層23を形成する際にも用いられる。カラーインク層21用の熱転写インクリボン41は、例えばアクリル系樹脂又はエポキシ系樹脂又はポリエステル系樹脂からなる透明なバインダー樹脂の中に、顔料としてイエロー、マゼンタ、シアン,ブラックのうちのいずれか一色を混ぜ合わせたものを、PETなどからなる帯状フィルムの表面に印刷等することにより形成されている(着色インクリボン)。またプライマ層22用の熱転写インクリボン41は、PETなどからなるフィルムの表面に、顔料を含まない前記透明なバインダー樹脂のみを印刷することにより形成されている(バインダーインクリボン)。
【0039】
さらに被覆層23を形成するための熱転写インクリボン41は、PETなどからなるフィルムの表面に、アルミニウムなどの金属材料を蒸着させた薄い金属膜を有している(メタリック系インクリボン)。より詳細には図3に示すように、メタリック系インクリボンである熱転写インクリボン41は、フィルムの表面に離型層、アルミニウムなどの金属材料を蒸着させてなる蒸着層および接着層が、この順で積層されてなる構成である。
【0040】
各層を構成する材料として、離型層は、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、ポリビニルブチラール、アクリル系樹脂またはスチレン系樹脂などで形成され、接着層はポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合体などで形成されている。
【0041】
この熱転写プリンタ30の中には、カラーインク層21を形成する着色用インクリボンを備えた4種類(イエロー、マゼンタ、シアン,ブラックの4種)のカートリッジと、プライマ層22を形成するバインダー用インクリボンを備えたカートリッジと、被覆層23を形成するメタリック系インクリボンを備えたカートリッジがそれぞれ設けられており、熱転写を行う際いずれか一のインクリボンを備えたカートリッジが選択される。
【0042】
次に、熱転写プリンタ30を用いてベースフィルム11に画像20を形成する具体的な製造方法について説明する。
【0043】
転写フィルム10を構成するベースフィルム11が、サーマルヘッド31とプラテンローラ32との間に供給され、サーマルヘッド31が通電されると、ベースフィルム11に熱転写インクリボン41の熱溶融インクが熱転写される。
【0044】
図4の(A)に示すように、例えばベースフィルム11の上に第1層としてシアン21cが転写され、その上にマゼンタ21mが転写され、さらにその上のイエロー21yが転写される。あるいはシアン21cの上に、マゼンタ21m及びイエロー21yが転写される。
【0045】
シアン21cを転写するときにはシアン用の着色インクリボンを備えたカートリッジが選択される。以下同様に、マゼンタ21m、イエロー21y又はブラック21bを転写するときには、各色ごとに対応する着色インクリボンを備えたカートリッジがそれぞれ選択される。
【0046】
またブラック21bを転写すると黒色の画像を得ることができるが、ブラック21bのみを使用した場合、生成される画像の濃度が薄くなりがちである。このため、図4(A)の左側に示すように、まずシアン21c、マゼンタ21m、イエロー21yの3色を熱転写して黒色の画像を生成し、さらにこの画像の上にブラック21bを熱転写して4層構造からなるカラーインク層21とすることが好ましく、これにより転写後の黒色の画像20の濃度を高めることが可能となる。
【0047】
なお、記録情報(原画像データ)が「0」の部分は、全く熱溶融インクが存在しないブランク部分としてのピンホール50が形成される。
【0048】
またカラーインク層21の表面の至る箇所には、段差51が形成されている。なお段差51は、転写の回数の相違によるカラーインク層21の層数の違いにより形成される。
【0049】
次に、図4(B)に示すように、熱転写プリンタ30はカラーインク層21の上にプライマ層22を形成する。この際、熱転写プリンタ30は、プライマ層22を形成するためのバインダーインクリボンを備えたカートリッジを選択する。そして、熱転写プリンタ30は、顔料を含まない前記透明なバインダー樹脂をカラーインク層21の上に熱転写することにより、プライマ層22を形成する。このとき、溶融したバインダー樹脂の一部がピンホール50の内部に浸入し、ピンホール50が埋設される。
【0050】
最後に、図4(C)に示すように、熱転写プリンタ30は被覆層23を形成する。すなわち、熱転写プリンタ30は、熱転写インクリボン41のうちメタリック系のインクリボンを備えたカートリッジを選択する。
【0051】
この際、フィルムの表面に蒸着されたアルミニウムなどの薄い金属膜(メタリック系インクに相当)がプライマ層22の表面に転写される。このとき、被覆層23を形成する金属膜が、プライマ層22を形成するバインダー樹脂によってカラーインク層21の上に接着固定される。
【0052】
しかもピンホール50内にはプライマ層22を形成するバインダー樹脂が埋設されているため、熱転写された金属膜は切れることなくピンホール50を有するカラーインク層21の表面を確実に被覆することができる。さらに、プライマ層22は、カラーインク層21と被覆層23を構成する金属膜との接着力を高めることができる。このため、段差51においても金属膜を確実に接着固定し剥離の発生を防止することができる。よって、転写不良のない、または少ない転写フィルム10となり、光が画像20を通過し難くすることができる。
【0053】
さらに、被覆層23を転写する際に、金属膜がプライマ層22上で滑り難くなるため、金属膜に皺が形成されることを防止することができる。
【0054】
またプライマ層22を備えることにより、被覆層23をカラーインク層21の表面に効率よく接着させることができるため、被覆層23で転写する際にサーマルヘッド31が必要とするエネルギーを少なくすることが可能となる。
【0055】
転写フィルム10は、樹脂をインモールド成形する際に、ベースフィルム11側を金型の内面に向けた状態で配置される。溶融した樹脂が金型内のキャビティ(図示せず)に注入され、被覆層23側が樹脂内に埋設された状態で硬化させられ。そして、金型を外すと、転写フィルム10のベースフィルム11側が、樹脂の表面に表れた状態で成形品が取り出される。そして、ベースフィルム11のみを成形品から剥離させることにより、成形品の表面に画像20を表出させることができる。
【0056】
そして、このような方法で形成された成形品は、光が透き通り難く、光沢感のあるメタリック調の仕上がりとすることができる。
【0057】
なお、顧客の要望等により、成形品の種類によっては転写フィルム10の最上面(ベースフィルムとは逆側の面)を接着層で形成することが求められる場合がある。このような場合には、図4(C)の工程の後に、図4(B)と同じ工程を被覆層23の上に行うことにより、被覆層23の上に接着層を形成してもよい。同じバインダーインクリボンを備えたカートリッジを使用して形成することができるため、製造コストを低く抑えることができるとともに、製造時間を短くすることができる。
【0058】
なお、上記実施の形態では、転写フィルムの製造方法として、複数のインクリボンのカートリッジの中からいずれか一の熱転写インクリボン41用のカートリッジを選択してフィルム上に画像形成する構成を示して説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、例えば図5に他の実施の形態として示すようにすることもできる。
【0059】
図5は転写フィルムを製造する他の実施の形態として熱転写プリンタの概略を示す側面図である。
【0060】
図5に示す他の実施の形態では、ベースフィルム11の搬送経路上であるプラテンローラ32の周囲に、熱転写インクリボン41a,41b,41c,41d用のカートリッジと、これに対応するサーマルヘッド31a,31b,31c,31dが設けられている。すなわち、使用する熱転写インクリボン41a,41b,41c,41dごとにサーマルヘッド31a,31b,31c,31dを備えている。
【0061】
このうち、最下流に位置する熱転写インクリボン41dはメタリック系インクリボンであり、それよりも一つ上流の熱転写インクリボン41cはバインダー用インクリボンである。またこの実施の形態では、上流側の2つの熱転写インクリボン41a,41bが着色用インクリボンである。なお、熱転写インクリボンは4種類使用することがあるので、着色用としてサーマルヘッドをあと2つ追加する構成(全部で6つのサーマルヘッド)であってもよい。
【0062】
図5に示す他の実施の形態では、ベースフィルム11が送られると、まず上流側のサーマルヘッド31a,31bがこの順で駆動されてカラーインク層21が形成され、次にサーマルヘッド31cが駆動されてカラーインク層21の上にプライマ層22が形成され、最後にサーマルヘッド31dが駆動されてプライマ層22の上に被覆層23が形成される。この実施の形態では、カートリッジを選択する必要がないので、転写フィルム10の製造に要する時間を短縮することができる。
【0063】
以上のように、本発明では、カラーインク層21に形成されているピンホール50を塞いだ転写フィルムとすることができる。
【符号の説明】
【0064】
10 転写フィルム
11 ベースフィルム
20 画像
21 カラーインク層
22 プライマ層
23 被覆層
30 熱転写プリンタ
31,31a,31b,31c,31d サーマルヘッド
32 プラテンローラ
40 カートリッジ
41,41a,41b,41c,41d 熱転写インクリボン
50 ピンホール
51 段差

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の記録情報に基づく画像がベースフィルム上に形成された転写フィルムにおいて、
着色インクリボンのインクを、前記ベースフィルム上に転写することにより形成されたカラーインク層と、バインダー樹脂を、前記カラーインク層の上に転写することにより形成されたプライマ層と、金属膜を、前記プライマ層の上に転写することにより形成された被覆層とを有し、
前記被覆層が、前記プライマ層を介して前記カラーインク層の表面に接着固定されていることを特徴とする転写フィルム。
【請求項2】
前記着色インクリボンのインクは、イエロー、マゼンタ、シアンの3色の熱溶融性インク、またはこれらにブラックを加えた4色の熱溶融性インクである請求項1記載の転写フィルム。
【請求項3】
前記バインダー樹脂は、アクリル系樹脂又はエポキシ系樹脂又はポリエステル系樹脂から形成される請求項1又は2記載の転写フィルム。
【請求項4】
前記金属膜は、フィルム基材上に蒸着により形成されたアルミニウムである請求項1ないし3のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項5】
所定の記録情報に基づく画像を、サーマルヘッドを用いてベースフィルム上に転写する転写フィルムの製造方法において、
少なくとも1以上のインクが前記ベースフィルム上に転写されてカラーインク層が形成される第1の工程と、
前記カラーインク層の上に、バインダー樹脂が転写されてプライマ層が形成される第2の工程と、
前記プライマ層の上に、金属膜が転写されて前記カラーインク層が被覆される被覆層を形成する第3の工程と、を有し、
前記第3の工程では、前記被覆層が前記プライマ層を介して前記カラーインク層の表面に接着固定されることを特徴とする転写フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記カラーインク層を形成するインクを備えた着色インクリボンと、前記プライマ層を形成するバインダー樹脂を備えたバインダーインクリボンと、前記被覆層を形成する金属膜を備えたメタリック系インクリボンとが設けられており、いずれか一のインクリボンが選択されて、前記サーマルヘッドにより、前記インク、バインダー又は金属膜が熱転写される請求項5記載の転写フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記ベースフィルムの搬送経路上に、前記カラーインク層を形成するインクを備えた着色インクリボンと、前記プライマ層を形成するバインダー樹脂を備えたバインダーインクリボンと、前記被覆層を形成する金属膜を備えたメタリック系インクリボンと、前記各インクリボンにそれぞれ対応するサーマルヘッドと、が設けられており、
各インクリボンに対応する前記サーマルヘッドが順番に駆動されて、前記ベースフィルム上に前記インク、バインダー及び金属膜が熱転写される請求項5記載の転写フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記バインダー樹脂は、アクリル系樹脂又はエポキシ系樹脂又はポリエステル系樹脂から形成される請求項5ないし7のいずれか1項に記載の転写フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記金属膜は、フィルム基材上に蒸着により形成されたアルミニウムである請求項5ないし8のいずれか1項に記載の転写フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−214899(P2010−214899A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66860(P2009−66860)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】