説明

転写フィルム及び転写フィルムで加飾された合成樹脂製成形品

【課題】 衝撃、長期間の使用、あるいはスクイズ変形等の繰り返し負荷される大きな変形にも、その加飾性を損なうことのない転写フィルムの層構成を課題とし、もって使用中クラック、摩耗、あるいは剥離により加飾性を損なうことのない転写フィルム、およびこの転写フィルムで加飾した合成樹脂製成形品を提供することを目的とする。
【解決手段】
転写フィルムにおいて、合成樹脂製の基材フィルムと、この基材フィルムに剥離可能に積層した合成樹脂製の保護フィルムと、被加飾体に接着する接着層を有し、保護フィルムと接着層の間に印刷、あるいは蒸着等による加飾層を形成する構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は加飾用として用いられる転写フィルム、およびこの転写フィルムで加飾された合成樹脂製成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製の成形品の表面の加飾方法として、ラベルを貼付したり、転写フィルムを用いたりする方法がある。たとえば、特許文献1には転写フィルムに関する発明が記載さており、図6は特許文献1に記載される、従来の転写フィルムの代表的な例である。この転写フィルム101は基本的にはこの図に示されるように、ベースフィルム102、剥離層106、印刷層112、および接着層107から構成さる。
【0003】
そして、転写フィルム101はインモールド法、ホットスタンプ法、熱ロール法等の方法により加熱圧して接着層107により成形品表面に接着して、印刷層112が転写され、その加飾性が発揮される。そしてベースフィルム102は剥離層106により剥離して除去される。また印刷層112に金属を蒸着して使用することもできる。
【特許文献1】特開2002−252545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これら転写フィルムによる印刷層に擦り傷やクラックが発生したり、剥がれたりして外観が損なわれ、外観が商品性に大きく影響を及ぼす化粧料等の用途では商品イメージの低下が著しいという問題がある。また、チューブ容器、あるいは薄肉のブロー成形容器等で特に胴部をスクイズ変形させて内容物を注出するタイプの容器では繰り返しスクイズ変形して使用するのでこの問題はより顕著である。
【0005】
擦り傷の発生に対する対策としては、表面の耐磨耗性を付与するために印刷層等の加飾のための層を、紫外線硬化型のアクリル樹脂等のハードコート層でコートする方法が従来より採用されているが、衝撃や、長期間の使用により、また内容物に含まれる成分等の付着の影響もあってハードコート層にクラックが発生して外観を損ねてしまうという問題が依然として残る。
【0006】
また、繰り返しスクイズ変形させるような厳しい条件下では、短期間でもクラックの発生を抑えることができないという問題がある。特にチューブ容器、あるいはブロー成形容器の胴部の全周に亘って転写フィルムを回巻し、転写する等の場合には、スクイズ変形の際の変形の逃げ場がなくよりシビアな問題となる。
【0007】
本発明は、上記のような問題を解消するためのものであり、衝撃、長期間の使用、あるいはスクイズ変形等の繰り返し負荷される大きな変形にも、その加飾性を損なうことのない転写フィルムの層構成を課題とし、もって使用中クラック、摩耗、あるいは剥離により加飾性を損なうことのない転写フィルム、およびこの転写フィルムで加飾した合成樹脂製成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記技術的課題を解決する本発明のうち、請求項1記載の発明の手段は、転写フィルムにおいて、合成樹脂製の基材フィルムと、この基材フィルムに剥離可能に積層した合成樹脂製の保護フィルムと、被加飾体に接着する接着層を有し、保護フィルムと接着層の間に印刷、あるいは蒸着等による加飾層を形成する構成とすること、にある。
【0009】
請求項1記載の上記構成の転写フィルムは、合成樹脂製の基材フィルムと保護フィルムと接着層を有するラミネートフィルム状であり、接着層で被加飾体に接着しながら、基材フィルムを剥離状に取り除いて使用する。(なお、以降被加飾体に接着される、転写フィルムの基材フィルムを剥離して取り除いた部分を転写層と記載する。)
そして、本請求項の転写フィルムでは、従来のハードコート層でなく、保護フィルムにより印刷等による加飾層が常に覆われて保護されるので、たとえばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、AS樹脂等の一般的に使用される汎用の合成樹脂を使用して、この保護フィルムを十分柔軟性のあるものとすることができ、スクイズ変形等の繰り返しの大変形にも十分追従することができ、印刷層等の加飾層での剥離、擦り傷、あるいはクラックの発生を確実に防ぐことができ、当初の加飾性を損なうことなく使用することができる。
【0010】
また、スクイズ変形する容器に限らず、一般的な合成樹脂製成形品であっても、保護フィルムを十分柔軟性のあるものとした転写フィルムで加飾すれば、被加飾体表面を角部等にぶつけた際に発生する衝撃による傷つきを防ぐこともでき、長期間の使用に係るクラックの発生も防ぐことができる。
たとえば射出成形品であり、高品位な加飾性が要求されるコンパクト容器を本発明の転写フィルムで加飾することにより、この高品位な加飾性を衝撃、あるいは長期間の使用により損なうことなく、保持することができる。
さらには用途に応じて表面にソフトな感触を付与することもできる。
【0011】
請求項2記載の発明の手段は、請求項1記載の発明において、保護フィルムと接着層の間に、少なくとも一方の面に印刷、あるいは蒸着等による加飾層を形成した合成樹脂製の加飾フィルムを積層する構成としたこと、にある。
【0012】
加飾フィルムに加飾的性、たとえば印刷適性、あるいは印刷層の密着性等に優れた合成樹脂製材料を選択することにより、鮮明で高品位な加飾層を形成できると共に、印刷層等の加飾層の密着強度を高くすることができ、衝撃、長期間の使用、スクイズ変形等の繰り返しの大変形に、より十分に対応することができる。なお、加飾層は加飾フィルムのどちらの面にも形成することができるし、両面に形成することもできる。
【0013】
請求項3記載の発明の手段は、請求項1または2記載の発明において、接着層を、被加飾体の壁面に熱融着により直接接着可能な合成樹脂製の接着用フィルムにする構成としたこと、にある。
【0014】
請求項3記載の上記構成により、接着層とした接着用フィルムが熱融着により直接被加飾体の壁面に接着するので、接着力が強力であり、衝撃、長期間の使用、スクイズ変形等の繰り返しの大変形で転写層が剥離したり、皺が発生することなく使用でき、より確実に当初の加飾性を維持することができる。
なお、被加飾体の壁面に熱融着により直接接着可能とするめには、接着用フィルムに被加飾体の壁面と同質の合成樹脂製材料を使用すればよい。
【0015】
請求項4記載の発明の手段は、請求項1、2または3記載の発明において、保護フィルムを押出しラミネート法により直接基材フィルムに剥離可能に積層する構成としたこと、にある。
【0016】
請求項4記載の上記構成により、剥離層を形成することなく、転写層から基材フィルムを容易に剥離することができる。
基材フィルムと保護フィルムをそれぞれに、相互に相溶性の低い合成樹脂製とし、押出しラミネート法により、すなわち基材フィルム上に押出機に配設したTダイ等から保護フィルムとなる溶融樹脂フィルムを押出し、ロールで熱圧着状に積層すれば、冷却後基材フィルムと保護フィルムは密着しているが、容易に剥離することができる。
【0017】
請求項5記載の発明の手段は、請求項2、3または4記載の発明において、基材フィルムをポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)製、保護フィルムを低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)製、加飾フィルムをナイロン樹脂製とした請求項2、3または4記載の転写フィルム。
【0018】
請求項5記載の上記構成は、層構成の一つの具体例である。PETフィルム特には2軸延伸したPETフィルムは透明性、耐熱性に優れ、比較的安価でもあり、腰が強く基材フィルムとして優れた機能を発揮させることができる。LDPEは押出しラミネート性に優れており、また一般的な合成樹脂のなかでは比較的柔軟な性質を有し加飾層におけるクラック発生等を十分に防ぐことができ、さらに透明性も優れているので保護フィルムとして最適な材料の一つである。ナイロン樹脂は印刷特性等の加飾性に優れると共に加飾層の密着強度を高くすることができ、耐熱性も高く加飾フィルムとしての優れた機能が発揮される。
【0019】
なお、上記構成で保護フィルムは基材フィルム上に押出しラミネート法により積層でき、基材フィルムと加飾フィルムは接着剤層を介してドライラミネート法により積層できる。またたとえば、被加飾体がポリエチレン製のチューブ容器や、ブロー成形容器の場合は接着層としてLDPE製の接着用フィルムを加飾フィルムに接着剤層で積層する構成とすれば、この接着用フィルムによる接着層を熱融着により直接容器の壁面に熱融着することができる。
【0020】
請求項6記載の発明の手段は、合成樹脂製成形品において、合成樹脂製の基材フィルムと、この基材フィルムに剥離可能に積層した合成樹脂製の保護フィルムと、被加飾体に接着する接着層を有し、保護フィルムと接着層の間に印刷、あるいは蒸着等による加飾層を形成した転写フィルムを用い、壁面に接着層を接着しながら、基材フィルムを剥離除去して容器壁面を熱転写状に加飾する構成としたこと、にある。
【0021】
請求項6記載の上記構成の合成樹脂製成形品は、保護フィルム層の保護機能が発揮され、印刷層等の加飾層における剥がれ、クラックの等の発生を防いで、加飾性を損なうことなく使用でき、特に加飾状態により商品性が大きく影響をうける分野で、高品位な加飾性を損なうことがない合成樹脂製成形品を提供することができる。
【0022】
請求項7記載の発明の手段は、請求項6記載の発明において、成形品をチューブ容器としたことにある。
【0023】
請求項7記載の上記構成のチューブ容器は、繰り返しスクイズ変形をさせて使用しても、また転写フィルムを胴部全周に亘って回巻するような厳しい条件下でも保護フィルム層の保護機能が発揮され、印刷層等の加飾層における剥がれ、クラックの等の発生を防いで、加飾性を損なうことなく使用でき、特に化粧料用等の加飾状態により商品性が大きく影響をうける分野で、高品位な加飾性を損なうことがないチューブ容器を提供することができる。
【0024】
請求項8記載の発明の手段は、請求項7記載の発明において、成形品をブロー成形容器としたことにある。
【0025】
請求項8記載の上記構成のブロー成形容器は、繰り返しスクイズ変形をさせて使用しても、また転写フィルムを胴部全周に亘って回巻するような厳しい条件下でも保護フィルム層の保護機能が発揮され、印刷層等の加飾層における剥がれ、クラックの等の発生を防いで、加飾性を損なうことなく使用でき、特に化粧料用等の加飾状態により商品性が大きく影響をうける分野で、高品位な加飾性を損なうことがないブロー成形容器を提供することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明は上記した構成であり、以下に示す効果を奏する。
請求項1記載の発明にあっては、加飾フィルムを全面に亘って保護フィルムで覆うので、衝撃による傷つきを防ぐことができ、長期間の使用に係るクラックの発生を防ぐことができ、またスクイズ変形等による繰り返しの大変形にも十分追従することができ、当初の高品位な加飾性を損なうことなく使用することができる。
【0027】
請求項2記載の発明にあっては、加飾フィルムに、印刷適性、あるいは印刷層の密着性等に優れた合成樹脂製材料を選択することにより、鮮明で高品位な加飾層を形成できると共に、印刷層等の加飾層の密着強度を高くすることができ、
【0028】
請求項3記載の発明にあっては、被加飾体への接着力をより強力にすることができ、衝撃、長期間の使用、あるいはスクイズ変形等の繰り返し大変形による剥離、皺の発生をより効果的に防止でき、より確実に当初の高品位な加飾性を維持することができる。
【0029】
請求項4記載の発明にあっては、剥離層を形成することなく、転写層部分から基材フィルムを容易に剥離することができる。
【0030】
請求項5記載の発明にあっては、転写フィルムの層構成の具体例の一つであるが、基材フィルムをPET製、保護フィルムをLDPE製、加飾フィルムをナイロン樹脂製とすることにより、各層に要求される機能が十分発揮され全体として、加工性、転写性、あるいは加飾性に優れた転写フィルムとすることができる。
【0031】
請求項6記載の発明にあっては、保護フィルム層の保護機能が発揮され、印刷層等の加飾層における剥がれ、クラックの等の発生を防いで、加飾性を損なうことなく使用でき、特に加飾状態により商品性が大きく影響をうける分野で、高品位な加飾性の低下のない合成樹脂製成形品を提供することができる。
【0032】
請求項7記載の発明にあっては、高品位な加飾性を損なうことなく、繰り返しスクイズ変形をさせての使用も可能なチューブ容器を提供することができる。
【0033】
請求項8記載の発明にあっては、高品位な加飾性を損なうことなく、繰り返しスクイズ変形をさせての使用も可能なブロー成形容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は本発明の転写フィルムの一実施例の層構成を示す縦断面図である。この転写フィルムは図中、上から下に、PET製延伸フィルムである基材フィルム2、LDPE製の保護フィルム3、接着剤層8、ナイロン樹脂製の加飾フィルム4、印刷層12、アルミの蒸着層13、接着剤層8、および接着層7であるLDPE製の接着用フィルム5が積層したラミネートフィルムである。
なお、以下便宜的に図1に示された状態で上下方向を区別して転写フィルムの構成を説明する場合がある。
【0035】
ここで、基材フィルム2は25ミクロン、保護フィルム3は30ミクロン、加飾フィルム4は15ミクロン、接着用フィルム5は15ミクロンである。また保護フィルム3は基材フィルム2上にTダイにより溶融したLDPEをフィルム状に押出しラミネート法で熱圧状に積層したものであり、基材フィルム2と保護フィルム3は密着して積層しているが、PETとLDPEは相互に相溶性の低い樹脂であり、容易に剥離することができる。なお、図1中では基材フィルム2の右端の一部を残りの転写層9から剥離して示している。
【0036】
また、本実施例では加飾フィルム4の下面には加飾層11である印刷層12とアルミの蒸着層13が形成されているが、保護フィルム3と加飾層11が形成された加飾フィルム4、そしてこの加飾フィルム4と接着用フィルム5は接着剤層8によりドライラミネート法により積層されている。
【0037】
ここで、本実施例における加飾層11は加飾フィル4の下面に間欠的に印刷層12を形成して、さらにこの印刷層12を覆うように略全面に亘ってアルミの蒸着層13を形成する構成としているが、たとえば印刷層12だけを全面的に、あるいは部分的に形成することもできる。
また、加飾層11の形成は加飾フィルム4の下面に限定されるものではなく、たとえば一方の面に印刷層12を形成し、他方の面に蒸着層13を形成することもでき、目的とする加飾効果に応じてさまざまな態様で加飾層11を形成することができる。
【0038】
図2は、本発明の合成樹脂製成形品の一例であるチューブ容器を示す(a)正面図と、(b)胴部の平断面図である。このチューブ容器21はLDPE製であるが、押出し成形して適宜の長さにした円筒状のチューブ成形品の一端にヘッド部23を専用金型を用いて熱融着により取り付けたものである。
【0039】
そして、胴部の略全高さおよび全周に亘って、上記説明した図1に示す転写フィルムを用いて加飾が施されている。すなわち後述する熱ロール工程により、転写フィルム1の接着用フィルム5(接着層7)を胴部壁22に接着しながら、基材フィルム2を剥離除去して、胴部壁22に加飾機能を発揮する転写層9を転写した状態である。
【0040】
図1に示される実施例の転写フィルムでは、加飾フィル4の下面に間欠的に印刷層12を形成して、さらにこの印刷層12を覆うように略全面に亘ってアルミの蒸着層13を形成する構成としているが、図2(a)で見ると、全面的に形成されたアルミの蒸着層13によるメタリックな背景の中に、印刷層12により図案化した”ABCD”の文字が描かれたものであり、また容器の略全域に亘り装飾することができ、製品に高級なイメージを与えるための高品位な加飾状態となっている。
【0041】
なお、図1に示す転写フィルム1の接着層7はLDPE製の接着用フィルム5であり、後述する熱ロール法により同様にLDPE製のチューブ容器21の胴部壁22に熱融着して直接接着している。
【0042】
図3は、転写フィルム1を熱ロール法でチューブ容器21の胴部壁22に転写する工程の一例を概略的に示した説明図である。チューブ容器21の胴部に、この胴部の形状を支持するためのコア治具Cを嵌入し、220〜230℃程度の熱ロールHRを回転させながら、転写フィルム1を胴部壁22に押付け状に挟んだ状態で、接着フィルム5を胴部壁22に熱融着しながら、基材フィルム2を剥離して転写層9が胴部壁22に転写される。
【0043】
なお、図4はこの工程で使用した転写フィルム1の平面図であり、予め矩形状の刃型で転写層9の厚さ分だけ打ち抜いて、基材フィルム2上に胴部壁22に転写される矩形状の転写層9のみを残し、他の部分は剥離して取り除いたものである。
【0044】
このような工程で製造され、転写層9により加飾された図2のチューブ容器21にクリーム状の化粧料を充填し、下端開放部を熱シールした製品を用いて使用テストを実施した。スクイズにより内容物を注出する操作を繰り返して実施したが、最後まで転写層9のチューブ容器21からの剥離、および皺等の発生は勿論のこと、印刷層12あるいは蒸着層13でのクラックの発生等は全く見られなかった。
【0045】
図5は、本発明の合成樹脂製成形品の一例であるチューブ容器の他の例を示す正面図である。このチューブ容器21は、図1に示した転写フィルムにおいて、楕円状に加飾層11のない部分を形成することにより、この楕円状の部分により窓部24としての機能が発揮され、内容物の状態が確認できる等の便利な機能を有する容器としたものである。
【0046】
なお、本発明の転写フィルムは、上記したような実施例に限定されるものではなく、同じくスクイズ変形して使用する薄肉のブロー成形容器の胴部に転写して、チューブ容器と同様に使用することができる。
また保護フィルムをLDPEのように比較的柔軟な合成樹脂製としておけば、たとえばAS、ABS樹脂等でその外表面が形成されるジャー容器等の成形品の外周面に転写して使用すると、テーブル等の角にぶつけてもこの保護フィルムにより傷の発生を防ぐことができたり、またソフトな触感を付与することができる等、本発明の転写フィルムはさまざまな被加飾体にさまざまな態様で使用することができる。
【0047】
また、基材フィルム2、保護フィルム3、あるいは加飾フィルム4には、その機能を考えて各種の合成樹脂を選択して使用することができる。
基材フィルム2には基材としての機能を発揮するための剛性、押出しラミネート工程における加工性、および熱ロールによる転写工程における耐熱性が特に要求されるが、2軸延伸PETフィルムの他にも、2軸延伸PPフィルム、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系延伸フィルム、ナイロン系延伸フィルム等が使用される。
保護フィルム3には比較的柔軟性を有するフィルムを使用するが、LDPEの他にも直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、PP、ポリスチレン系樹脂等透明性を有する様々な合成樹脂を使用することができる。
【0048】
また、加飾フィルム4はナイロン樹脂製のほかにも、PET製、AS製等の鮮明で高品位な印刷でき、印刷層の密着強度の高いフィルムを選択することができが、用途によってはこの加飾フィルム4は必ずしも必要でない。たとえば基材フィルム2/保護フィルム3(加飾層11)/接着剤層8/接着フィルム5のように保護フィルム3の下面に加飾層11を形成しても良い。
また、たとえば加飾フィルム4に保護フィルム3としての機能も併せて発揮させて基材フィルム2/加飾フィルム4(加飾層11)/接着剤層8/接着フィルム5のような層構成とすることもできる。
【0049】
また、基材フィルム2と保護フィルム3の積層は接着剤層8によってドライラミネート法で積層することもできる。
また接着フィルム5は被加飾容器壁面等の表面の材質に応じて選択することができ、LDPE製でないたとえばPP、あるいはAS製容器では、それぞれPP系あるいはAS系樹脂製とすればよい。さらに用途によって、この接着フィルム5は必ずしも必要でなく接着剤層8で容器壁面等に接着することもできる。
【0050】
また、本発明のラベルの転写工程は、転写部位、あるいは範囲、合成樹脂製容器等の被加飾体の性状により、熱ロール法に限らずホットスタンプ法やインモールド法等の方法を使用することができる。
【0051】
また、本発明の合成樹脂製成形品は、上述したスクイズ変形用のチューブ容器、あるいはブロー成形容器に限定されるものではない。射出成形品、熱成形品等の他の様々な成形法による成形品を使用することができ、たとえば射出成形のコンパクト容器等の化粧料容器では高品位な加飾性を損なうことなく長期間使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上説明したように、本発明の転写フィルムは加飾性を損なうことなく長期間、あるいはスクイズ変形等の用途にも使用できる等の特長を有するものであり、高品位な加飾効果を発揮して、外観により差別化された製品を提供することができ、化粧料の用途等でより幅広い用途展開が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の転写フィルムの一実施例の層構成を示す縦断面図である。
【図2】本発明の合成樹脂製成形品の一例であるチューブ容器を示す(a)正面図と、(b)胴部の平断面図である。
【図3】チューブ容器に転写フィルムを転写する工程の一例を示す説明図である。
【図4】図3の工程で使用する転写フィルムの一例を示す平面図である。
【図5】本発明の合成樹脂製成形品の一例であるチューブ容器の他の例を示す正面図である。
【図6】従来の転写フィルムの層構成の一例を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 ;転写フィルム
2 ;基材フィルム
3 ;保護フィルム
4 ;加飾フィルム
5 ;接着用フィルム
7 ;接着層
8 ;接着剤層
9 ;転写層
11;加飾層
12;印刷層
13;蒸着層
21;チューブ容器
22;胴部壁
23;ヘッド部
24;窓部
101;転写フィルム
102;ベースフィルム
106;剥離層
107;接着層
112;印刷層
HR;ホットロール
C ;コア治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製の基材フィルム(2)と、該基材フィルム(2)に剥離可能に積層した合成樹脂製の保護フィルム(3)と、被加飾体に接着する接着層(7)を有し、前記保護フィルム(3)と接着層(7)の間に印刷、あるいは蒸着等による加飾層(11)を形成したことを特徴とする転写フィルム。
【請求項2】
保護フィルム(3)と接着層(7)の間に、少なくとも一方の面に印刷、あるいは蒸着等による加飾層(11)を形成した合成樹脂製の加飾フィルム(4)を積層した請求項1記載の転写フィルム。
【請求項3】
接着層(7)を、被加飾体の壁面に熱融着により直接接着可能な合成樹脂製の接着用フィルム(5)とした請求項1または2記載の転写フィルム。
【請求項4】
保護フィルム(3)を押出しラミネート法により直接基材フィルム(2)に剥離可能に積層した請求項1、2または3記載の転写フィルム。
【請求項5】
基材フィルム(2)をポリエチレンテレフタレート樹脂製、保護フィルム(3)を低密度ポリエチレン樹脂製、加飾フィルム(4)をナイロン樹脂製とした請求項2、3または4記載の転写フィルム。
【請求項6】
合成樹脂製の基材フィルム(2)と、該基材フィルム(2)に剥離可能に積層した合成樹脂製の保護フィルム(3)と、被加飾体に接着する接着層(7)を有し、前記保護フィルム(3)と接着層(7)の間に印刷、あるいは蒸着等による加飾層(11)を形成した転写フィルムを用い、壁面に接着層(7)を接着しながら、基材フィルム(2)を剥離除去して壁面を熱転写状に加飾したことを特徴とする合成樹脂製成形品。
【請求項7】
成形品がチューブ容器である請求項6記載の合成樹脂製成形品。
【請求項8】
成形品がブロー成形容器である請求項6記載の合成樹脂製成形品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−326224(P2007−326224A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−54649(P2005−54649)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】