説明

転写具

【課題】焼却処理可能であるとともに、焼却炉を損傷させたり、燃焼ガスによる環境汚染等のおそれも少なく、地球環境保護に適した転写具を提供する。
【解決手段】片手による手持ち操作可能なケース2と、ケース2内に回転可能に装着されて、転写テープTを繰り出し可能に巻装した繰出リール3と、ケース2内に回転可能に装着されて、使用後の転写テープT´を巻き取り回収する巻取リール4と、両リール3、4を相互に連動回転させる連動機構5と、ケースの先端部分に配設されて、転写テープTを被転写部上に加圧転写する転写ヘッド6と、両リール3、4における転写テープTの繰出速度および巻取速度を同期させるクラッチ機構7とを備えてなり、構成部品2〜7の主要構成材料として、焼却処理可能な非プラスチック材料が使用されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転写具に関し、さらに詳細には、転写テープ上に形成された塗膜や転写マーク等の被転写膜を紙面等に転写するための転写具において、地球環境保護に配慮した構成部品の改良技術に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の転写具は構成部品のほとんどがプラスチック製であり、プラスチックは、物質的に安定していて寿命が長く、種類も豊富で、用途別に最適なものを選定しやすいという長所がある反面、使用後に廃棄物として処分される場合に、この長所は逆に短所となっていた。
【0003】
すなわち、近年大きな関心事となっているプラスチック廃棄物の処理の問題である。廃棄物としてのプラスチック、いわゆる廃プラスチックは、従来、多くの自治体において「不燃ごみ」として焼却せずに埋め立て処理されてきていた。
【0004】
ところで、廃プラスチックの不燃ごみに占める割合は重量にして50%以上であり、大量消費時代の現在においては埋立地の確保が困難となってきており、また遠方の埋立地までの運搬にかかる経費や運搬自動車の排出する二酸化炭素排出量の増加も、地球温暖化防止など地球環境保護の観点からも無視することができず、廃プラスチックの埋め立て処理は大きな問題となってきていた。
【0005】
このような観点から、国あるいは自治体の施策として、廃プラスチックをなるべく焼却処分するという方向に向かってきている。不燃ごみの50%以上を占める廃プラスチックを焼却することで、埋め立て量が体積で約60%程度減少できるだけでなく、その焼却熱を発電に利用する「サーマルリサイクル」も行うことができるとともに、廃プラスチックを従来の家庭ごみを焼却する助燃剤として使用されてきた重油の代わりにできるということも、廃プラスチックの焼却処分化を後押ししている。
【0006】
しかしながら、廃プラスチックは、そのまま焼却炉などで燃焼させると、厨芥や紙ごみに比べて熱量が大きくて燃焼温度が高いために、焼却炉を損傷させるおそれがあり、また焼却時に発生する燃焼ガスが環境汚染等の弊害を誘発させるおそれもあった。
【0007】
このように、廃プラスチックは、埋め立て処理および焼却処分のいずれにも問題があり、その改善が強く要望されていた。
【0008】
なお、本出願人の知る限りにおいて、このような従来の問題点に着目・改良した先行技術はまだ存在しない。
【0009】
【特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、焼却処理可能であるとともに、焼却炉を損傷させたり、燃焼ガスによる環境汚染等のおそれも少なく、地球環境保護に適した構成を備える転写具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明の第1の転写具は、転写テープ上の塗膜、転写マーク等の被転写膜を紙面等に転写するためのものであって、その構成部品の主要構成材料として、焼却処理可能な非プラスチック材料が使用されてなることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の第2の転写具は、転写テープ上の塗膜、転写マーク等の被転写膜を紙面等に転写するためのものであって、片手による手持ち操作可能なケースと、このケース内に回転可能に装着されて、転写テープを繰り出し可能に巻装した繰出リールと、上記ケース内に回転可能に装着されて、使用後の転写テープを巻き取り回収する巻取リールと、この巻取リールおよび上記操出リールを相互に連動回転させる連動機構と、上記ケースの先端部分に配設されて、上記繰出リールから繰り出される転写テープを被転写部上に加圧転写する転写ヘッドと、上記繰出リールおよび巻取リールにおける転写テープの繰出速度および巻取速度を同期させるクラッチ機構とを備えてなり、これら構成部品の主要構成材料として、焼却処理可能な非プラスチック材料が使用されてなることを特徴とする。
【0013】
好適な実施態様として、以下の構成が採用される。
(1)上記非プラスチック材料が紙および/またはパルプである。
【0014】
(2)上記非プラスチック材料が草および/または木である。
【0015】
(3)上記非プラスチック材料が貝殻である。
【0016】
(4)上記非プラスチック材料がおからである。
【0017】
(5)上記構成部品は、紙および/またはパルプ50〜80重量%と熱可塑性樹脂50〜20重量%とを含む混合物からなる成形品である。
【0018】
(6)上記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリスチレン系、ポリアミド系、ABS樹脂および生分解性樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種である。
【0019】
(7)上記ケースは、紙および/またはパルプからなる成形品である。
【0020】
(8)上記ケースは、草および/または木からなる成形品である。
【0021】
(9)上記ケースは、貝殻からなる成形品である。
【0022】
(10)上記ケースは、おからからなる成形品である。
【0023】
(11)上記ケースは、植物由来材料からなる成形品である。
【0024】
(12)上記ケースは、その表面の筆記性が良好な材料からなる成形品である。
【0025】
(13)上記ケースは、彫刻刃、カッターナイフ等の刃物により彫刻可能な材料からなる成形品である。
【0026】
(14)上記構成部品の少なくとも一つは、香料含有材料からなる成形品である。
【0027】
(15)上記構成部品の少なくとも一つは、石油以外の原材料からなる成形品である。
【0028】
(16)上記クラッチ機構は、上記繰出リールまたは巻取リールと駆動側部材との間の弾発的な摩擦係合によりトルク駆動連結される構造を備え、上記トルク駆動連結における連結力が、摩擦係合部の摩耗により経時的に減小するように構成される。
【0029】
(17)上記転写テープは、基材テープの表面に、修正塗料層および加圧粘着性を有する粘着剤層が順次積層されてなる修正テープであり、上記基材テープが紙からなるフィルム状テープの形態とされている。
【0030】
(18)上記転写テープは、基材テープの表面に、多数の感圧粘着性を有する転写マークが所定間隔をもって剥離可能に貼着保持されてなるマーク転写テープであり、上記基材テープが紙からなるフィルム状テープの形態とされている。
【0031】
(19)上記転写テープを含めた上記構成部品のすべてが使い切りの消耗品とされてなる使い切りタイプとされている。
【0032】
(20)上記ケース内に、少なくとも上記繰出リールおよび上記巻取リールを備えるテープカートリッジが取外し交換可能に装着されて、上記転写テープの交換が可能な構造を備えてなるリフィルタイプとされている。
【発明の効果】
【0033】
本発明の転写具によれば、構成部品の主要構成材料として、焼却処理可能な非プラスチック材料が使用されてなるから、以下に列挙されるような種々の特有の効果が得られ、焼却処理可能であるとともに、焼却炉を損傷させたり、燃焼ガスによる環境汚染等のおそれも少なく、地球環境保護に適した構成を備える転写具を提供することができる。
【0034】
(1)構成部品の主要構成材料が、焼却処理可能な非プラスチック材料とされていることにより、使用後に廃棄物として処分される場合に、従来のプラスチック製の転写具のように不燃ごみとして埋め立て処理することなく、また、構成部品毎に分解して分別する必要もなく、転写具のままで一般の普通ごみとして焼却処分することができる。
【0035】
(2)使用後の廃棄物として処分する際に、構成部品毎の分別作業が不要となることにより、環境保護意識の低いユーザにおいても、環境に優しい取り組みを誘発しやすく、その結果、これら環境保護意識の低いユーザも環境に優しい取り組みに参入できることとなり、この観点からも地球環境に優しい製品を提供することができる。
【0036】
(3)構成部品の主要構成材料が、焼却処理可能な非プラスチック材料とされ、例えばこの非プラスチック材料として、紙やパルプを使用することで、容器包装リサイクル法の素材分類上の「紙」とすることも可能で、転写具をそのまま焼却炉などで燃焼させても、厨芥や紙ごみ等と同様に、廃プラスチックに比較して、熱量も大きくなくて燃焼温度も高くなく、焼却炉を損傷させるおそれがなく、また焼却時の燃焼ガスの発生も少なくて、環境汚染等を誘発させるおそれもない。
【0037】
(4)構成部品の主要構成材料として、焼却処理可能な非プラスチック材料、例えば、パルプ・紙、草・木、貝殻あるいはおからなどを使用することにより、原材料として石油を使用する割合が低いことから、原材料の原油価格への依存度が低くて、原油価格の高騰の影響を受けにくく、材料コストが低く安定して、製造コストさらには製品コストを低く抑えることが可能である。
【0038】
(5)上記非プラスチック材料として、パルプ・紙、草・木、貝殻あるいはおからなどの石油以外の原材料を使用することで、原材料の多種多様化による限りある地球資源の有効活用が実現し、この観点からも地球環境に優しい製品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、図面全体にわたって同一の符号は同一の構成部材または要素を示している。
【0040】
実施形態1
本発明に係る転写具が図1〜図3に示されており、この転写具1は、具体的には、転写テープT上の塗膜、転写マーク等の被転写膜を紙面等に転写するための転写具であって、図示の実施形態の転写具1は誤字等を修正するための字消し具として使用されるものであり、転写テープTを含めて、すべての構成部品が使い切りの消耗品とされてなる使い切りタイプの構造を備えてなる。
【0041】
すなわち、字消し具1は、図1(a)に示すような外観形状を呈するケース2内に、図1(b)に示すように、転写テープTを繰り出し可能に巻装した繰出リール3、使用後の転写テープT´を巻き取り回収する巻取リール4、これら両リール3、4を相互に連動回転させる連動機構5、転写テープTを被転写部上に加圧転写する転写ヘッド6および上記両リール3、4における転写テープTの繰出速度および巻取速度を同期させるクラッチ機構7などを主要部として備えてなり、これら構成部品2〜7の主要構成材料として、焼却処理可能な非プラスチック材料が使用されてなる。
【0042】
これら構成部品2〜7の主要構成材料として、焼却処理可能な非プラスチック材料が使用されてなる構成としては、(i)各構成部品2〜7それぞれの主要構成材料が焼却処理可能な非プラスチック材料からなる場合と、(ii)字消し具1全体としての主要構成材料が焼却処理可能な非プラスチック材料からなる場合とがある。
【0043】
(i)の構成は、字消し具1が廃棄物として処分される場合に、構成部品2〜7のそれぞれが一般の普通ごみとして焼却処分することができる構成であり、一方、(ii)の構成は、ユニット品としての字消し具1が一般の普通ごみとして焼却処分することができる構成であり、本実施形態においては、前者(i)の構成が採用されている。
【0044】
上記非プラスチック材料としては、(a)紙および/またはパルプ、(b)草および/または木、(c)貝殻、(d)おからなどが好適に使用され、本実施形態においては、紙および/またはパルプが採用されている。
【0045】
このような非プラスチック材料として石油以外の原材料を使用することで、字消し具1の構成材料における石油以外の原材料の構成比率を高めることが望ましい。
【0046】
上記構成部品2〜7は、いずれも同じ材料から構成され、主要構成材料である紙および/またはパルプ50〜80重量%と、熱可塑性樹脂50〜20重量%とを含む混合物からなる射出成形品とされ、上記混合物には、必要に応じて、各種添加剤が添加される。
【0047】
主要構成材料としての紙またはパルプの配合量が50〜80重量%に設定されるのは、この範囲では、容器包装リサイクル法の素材分類における紙として認められて、一般家庭等から廃棄される紙ごみ等と一緒に普通ごみとして回収され焼却処分され得るとともに、射出成形による成形が容易でかつ転写具の構成部品2〜7の必要強度が得られるためである。
【0048】
上記紙またはパルプとしては、一般家庭や事業所・工場で排出される古新聞等の回収古紙、あるいは製紙工場において発生する不要紙屑、古新聞などの回収屑、再生パルプあるいは間伐材から作成されたパルプ等が好適に採用され得る。
【0049】
また、上記熱可塑性樹脂は、好ましくは、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリスチレン系、ポリアミド系、ABS樹脂および生分解性樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種であり、また、これら2種以上の熱可塑性樹脂が使用される場合には、各熱可塑性樹脂の使用比率が目的に応じて設定される。
【0050】
なお、本実施形態における上記構成部品2〜7の構成材料としては、一般市販の混合物製品を使用することができ、例えば、北越製紙株式会社製の商品名「Eペレット」や商品名「EMペレット」が好適に採用される。
【0051】
さらに、これら構成部品2〜7の少なくとも一つの構成材料に、香料を含有して芳香性を付与することも可能である。この目的からは、ケース2(8、9)の構成材料が香料含有材料であることがより効果的である。
【0052】
字消し具1を構成する各構成部品2〜7は、従来周知の一般的な射出成形技術により所定の形状寸法にそれぞれ成形される。次に、各構成部品2〜7の構造について具体的に説明する。
【0053】
ケース2は片手による手持ち操作可能なもので、図示のごとく、上記繰出リール3および巻取リール4等の構成部品を内装し得る正面輪郭形状寸法と幅寸法を備える偏平な箱状とされ、その対向する一対の扁平な表裏面2a,2bが手持ち操作時の基準的な把持面とされている。
【0054】
このケース2は、射出成形等により一体成形された非プラスチック製の成形品であって、分割構造のケース本体8とキャップ体9とから構成されるとともに、ケース2の先端部には、転写ヘッド6を内外に挿通するヘッド挿通開口10が形成されている。このヘッド挿通開口10は、ケース本体8の先端に凹設された開口形成凹部10aと、キャップ体9の先端に凹設された開口形成凹部10bとから形成されている。
【0055】
なお、ケース2(8、9)は、上述したような構成材料からなることにより、上記把持面2a、2bを含めた表面の筆記性が良好であり、また彫刻刃、カッターナイフ等の刃物により彫刻可能とされている。
【0056】
上記ケース本体8の内側面に、支軸11、12がそれぞれ起立状に一体形成され、これら支軸11、12に、上記繰出リール3および巻取リール4がそれぞれ回転可能に軸支されるとともに、これら両リール3、4には、それぞれ連動歯車5a、5bが同心状に設けられ、これら両連動歯車5a、5bが相互に噛合されて上記連動機構5を構成している。
【0057】
具体的には、連動歯車5aは、図2に示すように、上記繰出リール4と別部材とされて、これら両者4、5a間に上記クラッチ機構7が形成されている。つまり、連動歯車5aは、円筒状の回転軸13が上記支軸11に回転可能に軸支されるとともに、この回転軸13に上記繰出リール3の中心孔3aが回転可能にかつ軸方向に弾発的に嵌合支持されている。また、連動歯車5aの上面には、上記繰出リール3の下面に弾発的に摩擦係合する弾発係合部14、14、…が形成されて、この部位にクラッチ機構7を形成している。
【0058】
なお、このクラッチ機構7は、図示のような繰出リール3側でなく、巻取リール4側に設けられてもよい。
【0059】
本実施形態のクラッチ機構7においては、繰出リール3と駆動側部材である連動歯車5aが上述したような非プラスチック材料を主要構成材料としていることから、上記弾発的な摩擦係合によるトルク駆動連結の連結力が、両者3、5a間の摩擦係合部の摩耗により経時的に減小するように構成されている。したがって、実際の転写具1の使用に際して、クラッチ機構7の使用度合いに応じて上記トルクつまり連結力が経時的に変化減小して、修正テープTのテープ切れ等が有効に防止される。
【0060】
このクラッチ機構7の作用により、常態においては、繰出リール3と連動歯車5aが一体回転する一方、転写テープTに所定値以上のテンションが加わると、繰出リール3と連動歯車5aとの間に回転方向への滑りが生じて、両者が相対回転するようにされている。
【0061】
また、連動歯車5bは、上記巻取リール4の軸方向端部に一体形成されており、この連動歯車5bが上記繰出リール3側の連動歯車5aと相互に噛合されて、転写テープTにテンションが作用して上記繰出リール3が回転すると、連動機構5を介して繰出リール3が従動回転する構成とされている。
【0062】
また、図2に示すように、上記連動歯車5aとケース本体8には、上記両リール3、4の逆回転を防止する逆転防止機構15が設けられている。この逆転防止機構15は、上記連動歯車5aに弾性変形可能に設けられた一対の係止爪15a,15aと、上記ケース本体8の内側面に支軸11と同心の環状に設けられた多数の逆転防止爪15b,15b,…とからなる。これにより、上記両リール3、4のテープ繰出し方向(図1の矢符方向)への回転(正回転)を許容する一方、テープ繰出し方向と反対方向への回転(逆回転)を阻止する。
【0063】
転写テープTは、基材テープBTの表面に、修正塗料層および加圧粘着性を有する粘着剤層が順次積層されてなる修正テープである。図示の修正テープTは従来周知の積層構造を備え、具体的には、フィルム状基材テープBTの表面に、剥離剤層、修正塗料層および加圧接着性を有する粘着剤(感圧接着剤)層が順次積層されてなり、これら修正塗料層と粘着剤層が被転写膜としての修正塗膜tを形成している。
【0064】
上記基材テープBTは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのプラスチック材料や、あるいは紙材料等からなるフィルム状テープの形態とされ、本実施形態の基材テープBTは、紙からなるフィルム状テープの形態とされている。
【0065】
繰出リール3から繰出される転写テープTは、そのままの状態で上記案内ピン20を介して上記転写ヘッド6に導かれ、転写ヘッド6の片側テープ走行面に沿って先端加圧部6aへ案内された後、この先端加圧部6aを経由して反転され、さらに反対側テープ走行面に沿って案内された後に、上記案内ピン21を介して巻取リール4に巻回される。
【0066】
転写ヘッド6は、ヘッド本体16と取付部17からなり、転写テープTの加圧方向に対して弾性変形可能な弾性ヘッドの形態とされている。具体的には、上記ヘッド本体16は、その先端がある程度尖ったいわゆる尖頭形とされて、上記先端加圧部6aを形成するとともに、その両側縁に、転写テープTの走行を案内するガイドフランジ16a、16aが形成されている。また、上記ヘッド本体16の基端側部位に円筒形状の上記取付部17が一体形成され、この取付部17がケース本体8の内側面に起立状に一体形成された取付ピン18に挿入支持されて、ヘッド本体16がケース本体8に取り付けられる。
【0067】
そして、転写ヘッド6がこのようにケース本体8に取付け固定された状態において、先端加圧部6aは転写テープTをケース2の把持面2a、2bに対して平行な状態で加圧する角度位置にあり、いわゆる横引き使用タイプの転写ヘッドとされている。
【0068】
しかして、以上のように構成された字消し具1により誤字等を修正するには、図3に示すように、ケース2の把持面2a,2bを手指にて把持して、転写ヘッド6の先端加圧部6aを紙面等の被転写部O上に密着状に押し当てて、そのままケース2を被転写部Oの表面に沿って移動させることにより、転写ヘッド6の先端加圧部6aにおける転写テープTの塗膜tが、基材テープから剥離して上記被修正部分O上に転写されるとともに、被転写膜tが剥離された使用後の転写テープT´つまり上記基材テープはケース2内の巻取リール4に巻取り回収される。
【0069】
また、使用後に不要となった字消し具1は、廃棄物として処分されることになるが、その構成部品2〜7の主要構成材料が紙および/またはパルプからなるから、ユニット品としての字消し具1自体はもちろんのこと、分解された構成部品2〜7毎の個別にも容器包装リサイクル法の素材分類における紙として、一般家庭等から廃棄される紙ごみ等と一緒に普通ごみとして回収され焼却処分され得る。
【0070】
以上のように、本実施形態の字消し具1によれば、以下に列挙されるような種々の特有の効果が得られ、焼却処理可能であるとともに、焼却炉を損傷させたり、燃焼ガスによる環境汚染等のおそれも少なく、地球環境保護に適した構成を備える転写具として提供することができる。
【0071】
(a)構成部品2〜7の主要構成材料が、焼却処理可能な非プラスチック材料である紙および/またはパルプとされていることにより、使用後に廃棄物として処分される場合に、従来のプラスチック製の字消し具のように不燃ごみとして埋め立て処理することなく、また、構成部品2〜7毎に分解して分別する必要もなく、字消し具1のままで一般の普通ごみとして焼却処分することができる。
【0072】
(b)使用後の廃棄物として処分する際に、構成部品2〜7毎の分別作業が不要となることにより、環境保護意識の低いユーザにおいても、環境に優しい取り組みを誘発しやすく、その結果、これら環境保護意識の低いユーザも環境に優しい取り組みに参入できることとなり、この観点からも地球環境に優しい製品を提供することができる。
【0073】
(c)構成部品2〜7の主要構成材料として紙および/またはパルプが使用されていることで、上述したように、容器包装リサイクル法の素材分類上の「紙」とされ、字消し具1をそのまま焼却炉などで燃焼させても、厨芥や紙ごみ等と同様に、廃プラスチックに比較して、熱量も大きくなくて燃焼温度も高くなく、焼却炉を損傷させるおそれがなく、また焼却時の燃焼ガスの発生も少なくて、環境汚染等を誘発させるおそれもない。
【0074】
(d)構成部品2〜7の主要構成材料が紙および/またはパルプであることにより、原材料として石油を使用する割合が低い。このため、本実施形態の字消し具1は、原材料の原油価格への依存度が低くて、原油価格の高騰の影響を受けにくく、材料コストが低く安定して、製造コストさらには製品コストを低く抑えることが可能である。
【0075】
(e)構成部品2〜7の主要構成材料が紙および/またはパルプであることにより、石油以外の原材料を使用することで、原材料の多種多様化による限りある地球資源の有効活用が実現し、この観点からも地球環境に優しい製品を提供することができる。
【0076】
実施形態2
本実施形態の字消し具1は、実施形態1の構造が改変されたものであり、具体的には、構成部品2〜7のうち、ケース2の構成材料が他の構成部品のものと違う構成とされている。
【0077】
すなわち、本実施形態の字消し具1においては、構成材料として構成部品2〜7の大部分を占めるとともに、その構造が比較的簡素で厚肉のケース2が、非プラスチック材料からなる成形品とされている。
【0078】
ケース2の具体的な構成材料としては、(a)紙および/またはパルプ、(b)植物由来材料、(c)貝殻、(d)おからなどが好適に使用される。
【0079】
上記紙またはパルプとしては、一般家庭や事業所・工場で排出される古新聞等の回収古紙、あるいは製紙工場において発生する不要紙屑、古新聞などの回収屑、再生パルプあるいは間伐材から作成されたパルプ等が好適に採用される。
【0080】
上記植物由来材料としては、刈り取られた草木類等が好適に採用され、具体的には乾燥後に粉砕機により所定のサイズの細片状に破砕されたものが使用される。
【0081】
上記貝殻としては、帆立貝の貝殻等が好適に採用され、具体的には粉砕機により粉末状に粉砕されたものが使用される。
【0082】
これらの構成材料は、構成材料自体が従来周知のプレスモールド成形技術により、あるいは射出成形技術により上記ケース2に成形されるが、成形に際しては必要に応じて適宜の結合剤が混合される。
【0083】
なお、上記植物由来材料としては、一般市販の混合物製品を使用することができ、例えば、第和工業株式会社製の商品名「エコピュア」が好適に採用され得る。
【0084】
しかして、以上のように構成された字消し具1においては、実施形態1の構造以上に脱プラスチック化が進んだ構造とされ、焼却処分されても、焼却炉を損傷させたり、燃焼ガスによる環境汚染等のおそれが少ないことはもちろん、より地球環境保護に適した構成を備える転写具として提供することができる。
【0085】
さらに、本実施形態のケース2(8、9)のように、構成部品2〜7の少なくとも一つが石油以外の原材料からなる成形品とすることで、実施形態1よりもさらに一歩進んだ地球資源の有効活用が実現し得る。
その他の構成および作用は実施形態1と同様である。
【0086】
なお、上述した実施形態はあくまでも本発明の好適な実施態様を示すものであって、本発明はこれに限定されることなく、その範囲内で種々の設計変更が可能である。
【0087】
例えば、図示の実施形態の字消し具(転写具)1は、転写テープTを含めた構成部品のすべてが使い切りの消耗品とされてなる使い切りタイプとされているが、具体的には図示しないが、ケース2内に、少なくとも繰出リール3および巻取リール4を備えるテープカートリッジが取外し交換可能に装着されて、転写テープTの交換が可能な構造を備えてなるリフィルタイプも採用可能である。
【0088】
また、図示の実施形態の転写具1は、転写テープTが、基材テープの表面に、修正塗料層および加圧粘着性を有する粘着剤層を順次積層されてなる修正テープとされた字消し具であるが、このほか、具体的には図示しないが、転写テープが、基材テープの表面に、多数の感圧粘着性を有する転写マークが所定間隔をもって剥離可能に貼着保持されてなるマーク転写テープとされたマーク転写具でも良く、この場合も、上記基材テープが紙からなるフィルム状テープの形態とされているのが望ましい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の一実施形態である字消し具を示す斜視図で、図1(a)は外観構成を示し、図1(b)はケースを開いて内部構成を示す。
【図2】同じく同字消し具の構成部品を分解して示す斜視図である。
【図3】同じく同字消し具の使用状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0090】
T 修正テープ(転写テープ)
BT 基材テープ
t 修正塗膜
1 字消し具(転写具)
2 ケース
3 繰出リール
4 巻取リール
5 連動機構
6 転写ヘッド
7 クラッチ機構
8 ケース本体
9 キャップ体


【特許請求の範囲】
【請求項1】
転写テープ上の塗膜、転写マーク等の被転写膜を紙面等に転写するための転写具であって、
その構成部品の主要構成材料として、焼却処理可能な非プラスチック材料が使用されてなる
ことを特徴とする転写具。
【請求項2】
転写テープ上の塗膜、転写マーク等の被転写膜を紙面等に転写するための転写具であって、
片手による手持ち操作可能なケースと、
このケース内に回転可能に装着されて、転写テープを繰り出し可能に巻装した繰出リールと、
前記ケース内に回転可能に装着されて、使用後の転写テープを巻き取り回収する巻取リールと、
この巻取リールおよび前記操出リールを相互に連動回転させる連動機構と、
前記ケースの先端部分に配設されて、前記繰出リールから繰り出される転写テープを被転写部上に加圧転写する転写ヘッドと、
前記繰出リールおよび巻取リールにおける転写テープの繰出速度および巻取速度を同期させるクラッチ機構とを備えてなり、
これら構成部品の主要構成材料として、焼却処理可能な非プラスチック材料が使用されてなる
ことを特徴とする転写具。
【請求項3】
前記非プラスチック材料がパルプおよび/または紙であることを特徴とする請求項1または2に記載の転写具。
【請求項4】
前記非プラスチック材料が草および/または木であることを特徴とする請求項1または2に記載の転写具。
【請求項5】
前記非プラスチック材料が貝殻であることを特徴とする請求項1または2に記載の転写具。
【請求項6】
前記非プラスチック材料がおからであることを特徴とする請求項1または2に記載の転写具。
【請求項7】
前記構成部品は、紙および/またはパルプ50〜80重量%と熱可塑性樹脂50〜20重量%とを含む混合物からなる成形品である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の転写具。
【請求項8】
前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリスチレン系、ポリアミド系、ABS樹脂および生分解性樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種である
ことを特徴とする請求項7に記載の転写具。
【請求項9】
前記ケースは、紙および/またはパルプからなる成形品であることを特徴とする請求項2に記載の転写具。
【請求項10】
前記ケースは、草および/または木からなる成形品であることを特徴とする請求項2に記載の転写具。
【請求項11】
前記ケースは、貝殻からなる成形品であることを特徴とする請求項2に記載の転写具。
【請求項12】
前記ケースは、おからからなる成形品であることを特徴とする請求項2に記載の転写具。
【請求項13】
前記ケースは、植物由来材料からなる成形品であることを特徴とする請求項2に記載の転写具。
【請求項14】
前記ケースは、その表面の筆記性が良好な材料からなる成形品であることを特徴とする請求項2に記載の転写具。
【請求項15】
前記ケースは、彫刻刃、カッターナイフ等の刃物により彫刻可能な材料からなる成形品であることを特徴とする請求項2に記載の転写具。
【請求項16】
前記構成部品の少なくとも一つは、香料含有材料からなる成形品であることを特徴とする請求項1または2に記載の転写具。
【請求項17】
前記構成部品の少なくとも一つは、石油以外の原材料からなる成形品であることを特徴とする請求項1または2に記載の転写具。
【請求項18】
前記クラッチ機構は、前記繰出リールまたは巻取リールと駆動側部材との間の弾発的な摩擦係合によりトルク駆動連結される構造を備え、
前記トルク駆動連結における連結力が、摩擦係合部の摩耗により経時的に減小するように構成されている
ことを特徴とする請求項2に記載の転写具。
【請求項19】
前記転写テープは、基材テープの表面に、修正塗料層および加圧粘着性を有する粘着剤層が順次積層されてなる修正テープであり、前記基材テープが紙からなるフィルム状テープの形態とされている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の転写具。
【請求項20】
前記転写テープは、基材テープの表面に、多数の感圧粘着性を有する転写マークが所定間隔をもって剥離可能に貼着保持されてなるマーク転写テープであり、前記基材テープが紙からなるフィルム状テープの形態とされている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の転写具。
【請求項21】
前記転写テープを含めた前記構成部品のすべてが使い切りの消耗品とされてなる使い切りタイプとされている
ことを特徴とする請求項2に記載の転写具。
【請求項22】
前記ケース内に、少なくとも前記繰出リールおよび前記巻取リールを備えるテープカートリッジが取外し交換可能に装着されて、前記転写テープの交換が可能な構造を備えてなるリフィルタイプとされている
ことを特徴とする請求項2に記載の転写具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−143065(P2009−143065A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321391(P2007−321391)
【出願日】平成19年12月12日(2007.12.12)
【出願人】(000106782)株式会社シード (52)
【出願人】(392013187)株式会社ヨネプラ (4)
【Fターム(参考)】