転写媒体製造方法、転写媒体
【課題】基材に付着した記録材を保護する保護シートのずれを抑制し、ターゲットに対して美麗な転写が可能な転写媒体製造方法、転写媒体を提供する。
【解決手段】ターゲットに対して転写可能なインクをフィルム13に付着させた転写媒体35を製造するための転写媒体製造方法において、フィルム13に対してインクを付着させる段階と、フィルム13におけるインクが付着した転写領域及び該転写領域の周囲に接着液を付着させる段階と、フィルム13上に転写領域を被覆可能な保護シート33を載置した状態で、転写領域に付着した接着液には該接着液と保護シート33とを接着させるための加熱処理及び加圧処理を施すことなく、転写領域の周囲に付着した接着液に対して、該接着液と保護シート33とを接着させるための加熱処理及び加圧処理を施す段階とを備える。
【解決手段】ターゲットに対して転写可能なインクをフィルム13に付着させた転写媒体35を製造するための転写媒体製造方法において、フィルム13に対してインクを付着させる段階と、フィルム13におけるインクが付着した転写領域及び該転写領域の周囲に接着液を付着させる段階と、フィルム13上に転写領域を被覆可能な保護シート33を載置した状態で、転写領域に付着した接着液には該接着液と保護シート33とを接着させるための加熱処理及び加圧処理を施すことなく、転写領域の周囲に付着した接着液に対して、該接着液と保護シート33とを接着させるための加熱処理及び加圧処理を施す段階とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に形成されたパターンをターゲットに対して転写可能な転写媒体、及び転写媒体を製造するための転写媒体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インク(記録材)をシート(基材)上に付着させて形成した文字や画像などのパターンをターゲットに転写する転写媒体が知られている。すなわち、パターンを転写する場合には、シート上に転写可能に形成されたパターンを該パターン上に塗布された接着剤によってターゲットに接着することにより、パターンがシートから剥離してターゲットに転写される。
【0003】
そのため、接着剤が露出した状態でシートを移動させると、接着剤がターゲット以外のところに貼着してパターンが壊れてしまう。
そこで、特許文献1の転写媒体では、パターンが形成されたシートを剥離シート(保護シート)で被覆してパターンを保護すると共に、パターン上に塗布された接着剤によって剥離シートとパターンが形成されたシートとを接着していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−314879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、パターン上に塗布されて転写に使用される接着剤によって剥離シートを貼着しているため、パターンが小さい場合、すなわち剥離シートの接着面積が小さい場合には、剥離シートがずれてパターンが壊れてしてしまう虞があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、基材に付着した記録材を保護する保護シートのずれを抑制し、ターゲットに対して美麗な転写が可能な転写媒体製造方法、転写媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の転写媒体製造方法は、ターゲットに対して転写可能な記録材を基材に付着させた転写媒体を製造するための転写媒体製造方法において、前記基材に対して前記記録材を付着させる記録材付着段階と、前記基材における前記記録材が付着した記録材付着領域及び該記録材付着領域の周囲に非記録材を付着させる非記録材付着段階と、前記基材上に前記記録材付着領域を被覆可能な保護シートを載置した状態で、前記記録材付着領域に付着した前記非記録材には該非記録材と前記保護シートとを接着させるための付加処理を施すことなく、前記記録材付着領域の周囲に付着した前記非記録材に対して、該非記録材と前記保護シートとを接着させるための付加処理を施す付加処理段階とを備える。
【0008】
この構成によれば、記録材付着領域の周囲に付着して付加処理が施された非記録材に保護シートを接着することにより、記録材付着領域のサイズに関わらず保護シートによる記録材付着領域の被覆状態が確保された転写媒体を製造することができる。したがって、基材に付着した記録材を保護する保護シートのずれを抑制し、ターゲットに対して美麗な転写が可能である。
【0009】
本発明の転写媒体製造方法において、前記付加処理が施される前の前記非記録材と前記保護シートとの密着力は、前記付加処理が施された後の前記非記録材と前記保護シートとの密着力よりも弱い。
【0010】
この構成によれば、記録材付着領域に付着した非記録材は、記録材付着領域の周囲に付着して付加処理が施された後の非記録材よりも保護シートに対する密着力が弱い。そのため、保護シートを基材から剥離する場合に、記録材付着領域に付着した記録材が保護シートと共に剥離されてしまうのを抑制することができる。
【0011】
本発明の転写媒体は、ターゲットに対して転写可能な記録材を基材に付着させた転写媒体において、前記基材における前記記録材が付着した記録材付着領域と該記録材付着領域の周囲とに非記録材が付着され、前記記録材付着領域に付着された前記非記録材には該非記録材と前記記録材付着領域を被覆可能な保護シートとを接着させるための付加処理が施されず、前記記録材付着領域の周囲に付着された前記非記録材には該非記録材と前記保護シートとを接着させるための付加処理が施され、該付加処理が施された前記非記録材に前記保護シートが接着されている。
【0012】
この構成によれば、記録材付着領域の周囲に付着して付加処理が施された非記録材に保護シートを接着することにより、記録材付着領域のサイズに関わらず保護シートによる記録材付着領域の被覆状態を確保することができる。したがって、基材に付着した記録材を保護する保護シートのずれを抑制し、ターゲットに対して美麗な転写が可能である。
【0013】
本発明の転写媒体において、前記基材と前記記録材の間には、前記ターゲットに前記記録材が転写された場合に当該記録材の表面を保護するための保護材が付着されている。
この構成によれば、基材と記録材との間に保護材を付着させることにより、記録材の表面を保護材により保護し、ターゲットに転写された記録材の耐久性を向上させることができる。
【0014】
本発明の転写媒体において、前記非記録材が付着される前記記録材付着領域の周囲の領域であって前記基材と前記非記録材の間には前記保護材が付着され、前記保護材と前記基材との密着力は、前記付加処理が施された前記非記録材と前記保護シートとの密着力よりも小さい。
【0015】
この構成によれば、基材と非記録材の間に保護材を付着させることにより、付加処理を施された非記録材と基材とが直接接触することを抑制することができる。すなわち、非記録材の基材に対する接着力を弱くすることにより、保護シートが剥離された場合に、記録材付着領域の周囲に付着した非記録材も保護シートと共に剥離させることができる。したがって、ターゲットに対して記録材を転写する場合には、記録材付着領域外において、非記録材がターゲットに貼着して該ターゲットを汚染する虞を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態の転写媒体製造装置の正面模式図。
【図2】記録ヘッドのノズル形成面を示す模式図。
【図3】非プレス時のプレス部の模式図。
【図4】プレス板の斜視図。
【図5】制御構成のブロック図。
【図6】図3における6−6矢視断面模式図。
【図7】(a)〜(c)は図6における7−7矢視断面であって、転写媒体の製造過程の説明図。
【図8】プレス時のプレス部の模式図。
【図9】(a)〜(c)は転写画像をターゲットに転写する過程の説明図。
【図10】変形例1の転写媒体の平面模式図。
【図11】変形例2の転写媒体の平面模式図。
【図12】変形例3の転写媒体の平面模式図。
【図13】変形例4の転写媒体の平面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をフィルム上にインクを噴射して転写媒体を製造する転写媒体製造装置に具体化した一実施形態を図1〜図9に従って説明する。なお、以下における明細書中の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は、図1等の図面に矢印で示した方向を基準として示すものとする。
【0018】
図1に示すように、転写媒体製造装置11は、直方体状の本体ケース12を備えている。本体ケース12内には、長尺状の基材としてのフィルム13を繰り出す繰り出し部14と、そのフィルム13に記録材としてのインクの噴射により印刷が施される印刷室15と、その印刷によりインクが付着したフィルム13に乾燥処理を施す乾燥装置16と、乾燥処理が施されたフィルム13に保護処理を施す保護処理部17とが設けられている。
【0019】
すなわち、本体ケース12内における上下方向の中央部よりもやや上寄りの位置には、本体ケース12内を上下に区画する平板状の基台18が設けられており、この基台18よりも上側の領域が矩形板状のプラテン19を基台18上に支持してなる印刷室15となっている。そして、基台18よりも下側の領域において、フィルム13の搬送方向で上流側となる左側寄りの位置に、繰り出し部14が配設されると共に、下流側となる右側寄りの位置に、乾燥装置16及び保護処理部17が配設されている。
【0020】
図1に示すように、繰り出し部14には、前後方向に延びる第1巻き軸20が回転自在に設けられ、その第1巻き軸20に対してフィルム13が予めロール状に巻かれた状態で第1巻き軸20と一体回転可能に支持されている。すなわち、フィルム13は、第1巻き軸20が回転することにより、繰り出し部14から繰り出されて搬送方向の下流側に搬送されるようになっている。そして、第1巻き軸20から繰り出されたフィルム13は、第1ローラー21、第2ローラー22、第3ローラー23、及び第4ローラー24に順次巻き掛けられて搬送方向を変換される。
【0021】
なお、印刷室15内においてプラテン19を挟んで左右方向で対向する第2ローラー22及び第3ローラー23は各々の周面の頂部がプラテン19の上面と同一高さとなるように各々の設置される位置が調整されている。そのため、印刷室15内において第2ローラー22と第3ローラー23との間を下流側に搬送されるフィルム13は、その裏面がプラテン19の上面に摺接するようになっている。そして、プラテン19には、プラテンヒーター(図示略)が埋設されており、プラテン19に支持されたフィルム13を加熱するようになっている。
【0022】
また、図1に示すように、印刷室15内におけるプラテン19の前後両側には、左右方向に延びるガイドレール26(図1では2点鎖線で示す)が対をなすように設けられている。ガイドレール26の上面はプラテン19の上面よりも高くなっており、両ガイドレール26の上面には、矩形状のキャリッジ27が図示しない駆動機構の駆動に基づき両ガイドレール26に沿って左右方向への往復移動可能な状態で支持されている。そして、このキャリッジ27の下面側には支持板28を介して記録ヘッド29が支持されている。
【0023】
この記録ヘッド29は、プラテン19に支持されたフィルム13に対してインクを噴射することにより印刷(記録)を施すと共に、非記録材としての接着液と保護材としての保護液を噴射する記録材付着手段、非記録材付着手段、保護材付着手段として機能する。また、印刷室15内において、第3ローラー23よりも右側となる領域には、非印刷時に記録ヘッド29のメンテナンスを行うためのメンテナンス機構30が設けられている。
【0024】
図1に示すように、保護処理部17には、前後方向に延びる第2巻き軸32が回転自在に設けられ、その第2巻き軸32に対して保護シート33が予めロール状に巻かれた状態で第2巻き軸32と一体回転可能に支持されている。そして、第4ローラー24の右側となる位置には、第2巻き軸32が回転して繰り出した保護シート33の搬送方向を変換する第5ローラー34と、印刷が施されたフィルム13及び保護シート33からなる転写媒体35に付加処理を施すプレス部36とが設けられている。さらに、プレス部36の右側となる位置には、排紙トレイ37が設けられている。
【0025】
図2に示すように、キャリッジ27の下面側に支持された支持板28には複数個(本実施形態では6個)の記録ヘッド29がフィルム13の搬送方向(図2において白抜き矢印で示す方向)と直交する幅方向(前後方向)に亘って千鳥状の配置態様となるように支持されている。そして、各記録ヘッド29の下面となるノズル形成面39には、多数のノズル40により前後方向に沿う複数列(本実施形態では8列)の第1〜第8ノズル列41〜48が左右方向に所定間隔をおいて規則的に形成されている。そして、このように構成された第1〜第8ノズル列41〜48には、各ノズル列41〜48に対応するカートリッジ(図示略)から複数種類の液体がそれぞれ供給されると共に、各ノズル40に対応するように設けられた圧電素子49(図5参照)の振動に伴ってノズル40ごとに噴射されるようになっている。
【0026】
すなわち、第1〜第5ノズル列41〜45には、搬送方向において最も上流側(左側)に位置する第1ノズル列41から順に、シアン,マゼンタ,イエロー,ブラック,ホワイトの各色のインクが供給されるようになっている。さらに、左側から6番目に位置する第6ノズル列46には、メタルインクが供給されるようになっている。そして、第1〜第6ノズル列41〜46から噴射されたインクがフィルム13に付着することにより、パターンとしての着色層51(図3参照)が形成されるようになっている。なお、メタルインクとは、金属性顔料を液体中に分散させたインクであって、フィルム13に付着させることにより金属箔状の着色層51を形成可能なインクである。
【0027】
また、左側から7番目に位置する第7ノズル列47には、接着液が供給されるようになっている。なお、本実施形態における接着液は、接着剤成分を内包したマイクロカプセルを液体中に分散させたものであり、付加処理としての加熱処理及び加圧処理を施してマイクロカプセルを破壊することによって接着性が向上する液体である。そして、フィルム13の搬送方向において最も下流側(右側)に位置する第8ノズル列48には、保護液が供給されるようになっている。
【0028】
図3に示すように、プレス部36は、転写媒体35を支持する樹脂製のプレス台53と、プレス台53の上方位置に設けられたプレス板54と、プレス板54をプレス台53に対して相対移動させる移動装置55とにより構成されている。
【0029】
すなわち、移動装置55は、プレス板54が取り付けられた直方体状の取付板57と、該取付板57に取り付けられた側面視T字状の押し棒58とが、ばね59を介して本体ケース12に固定されたばね受け部60に支持されている。すなわち、移動装置55は、ばね59によって押し棒58を押し上げることにより、取付板57に固定されたプレス板54をプレス台53から離間した離間位置に位置させる。そして、カムモーター62(図5参照)の駆動に基づいて回転するカム63が押し棒58を押し下げることにより、プレス板54は、離間位置とプレス台53に接近する接近位置(図8参照)との間を変位するようになっている。
【0030】
図3及び図4に示すように、プレス板54は、平面視矩形状の孔65を有して枠状に形成されている。そして、プレス板54の右枠部66、左枠部67、前枠部68、後枠部69には、プレスヒーター70が埋設されており、加熱装置71(図5参照)から電流が供給されることにより発熱してプレス板54を加熱するようになっている。
【0031】
また、図4に示すように、プレス板54は、左枠部67の左右方向の幅w1が、右枠部66の左右方向の幅w2よりも大きく形成されていると共に、右枠部66の幅w2は、前枠部68と後枠部69の左右方向の幅w3,w4と同じ幅となるように形成されている。
【0032】
そして、左枠部67の下面67aには、前後方向において転写媒体35の幅よりも大きなカッター72が取り付けられている(図6参照)。なお、このカッター72の上下方向の長さは、プレス板54が接近位置に位置したときに、プレス台53とプレス板54による転写媒体35のプレスを阻害しない程度の長さであって、フィルム13及び保護シート33を切断可能な程度の長さに設定されている。
【0033】
図5に示すように、転写媒体製造装置11には、該転写媒体製造装置11の駆動を統括制御するマイクロコンピューター等からなる制御部74が設けられている。この制御部74は、ユーザーにより操作される操作部75からの入力に基づき、圧電素子49、カムモーター62、加熱装置71、搬送モーター76の駆動を制御する。
【0034】
そこで次に、以上のような転写媒体製造装置11を用いて転写媒体35を製造する場合の製造方法について説明する。
図6に示すように、転写パターンを形成する文字や画像などの印刷データとして、例えばアルファベットのRという印刷データが入力されると、まず制御部74は、インクを付着させる記録材付着領域としての転写領域Aを設定すると共に、転写領域Aとは非連続な非記録材付着領域としての接着領域Bを設定する。
【0035】
すなわち、転写領域Aは、ターゲット77(図9参照)に転写する転写パターンを形成する領域である。なお、本実施形態において製造する転写媒体35は、転写媒体35に形成された転写画像をターゲット77(図9参照)に左右反転して転写するため、転写された転写画像に対して左右反転した転写領域Aを設定する。また、接着領域Bは、プレス部36においてプレス板54とプレス台53によりプレス可能であって、接着領域Bの幅w5がプレス板54の各枠部66〜69の幅w1〜w4よりも細く、且つ転写領域Aの周囲を囲うように設定される。
【0036】
さて、ユーザーによって操作部75が操作されて転写媒体35の製造が開始されると、制御部74は、加熱装置71を駆動してプレスヒーター70に電流を供給する。すると、プレスヒーター70が発熱してプレス板54を加熱する。また、制御部74は、フィルム13における第1印刷領域C1(図6参照)に対して保護液、インク、接着液をそれぞれ付着させる。
【0037】
具体的には、図7(a)に示すように、まず制御部74は、キャリッジ27の移動に合わせて第8ノズル列48に対応する圧電素子49を振動させ、転写領域Aと接着領域Bとに保護液を付着させる。なお、保護液が付着するフィルム13は、プラテンヒーター(図示略)によって加熱されたプラテン19に支持されている。そのため、プラテン19上では、保護液中の溶媒の蒸発が促進され、流動性が低下した第1保護層79,第2保護層80が形成される。また、制御部74は、接着領域Bにおいて単位面積あたりに噴射する保護液の量を、転写領域Aにおいて単位面積あたりに噴射する保護液の量よりも多くすることにより、接着領域Bに形成される第1保護層79の厚みを転写領域Aに形成される第2保護層80の厚みよりも厚く形成する。
【0038】
図7(b)に示すように、続いて制御部74は、キャリッジ27の移動に合わせて第1〜第6ノズル列41〜46に対応する圧電素子49を振動させ、第2保護層80が形成された転写領域Aにインクを噴射して着色層51を形成する(記録材付着段階)。すなわち、例えば箔転写のための転写媒体を製造する場合には、メタルインクを用いて着色層51を形成する。具体的には、まずメタルインクを転写領域Aに付着させ、その後ホワイトインクを転写領域Aに付着させることで、銀色の着色層51を形成する。
【0039】
そして、図7(c)に示すように、制御部74は、キャリッジ27の移動に合わせて第7ノズル列47に対応する圧電素子49を振動させ、第1保護層79が形成された接着領域Bと第2保護層80及び着色層51が形成された転写領域Aとに接着液を付着させる(非記録材付着段階)。すると、接着領域Bと転写領域Aとには、接着液中の溶媒の蒸発が促進され、流動性が低下した第1接着層81,第2接着層82が形成される。なお、本実施形態では、接着液が含有する接着成分はマイクロカプセルに内包されているため、接着層81,82の接着性は低い。また、単位面積あたりに噴射される接着液の量は、転写領域Aよりも接着領域Bにおいて多く、接着領域Bにおいて形成された第1保護層79及び第1接着層81の上下方向の合計の厚みは、転写領域Aにおいて形成された第2保護層80、着色層51、第2接着層82の合計の厚みよりも厚くなっている。
【0040】
フィルム13における第1印刷領域C1に対する印刷が終了すると、制御部74は搬送モーター76を駆動して第1,第2巻き軸20,32、第1〜第5ローラー21〜24,34を回転させてフィルム13及び保護シート33を搬送方向の下流側へ搬送する。
【0041】
図6に示すように、印刷室15では、第1印刷領域C1に続いて第2印刷領域C2へ第1印刷領域C1と同様の印刷を開始する。なお、第2印刷領域C2は、第1印刷領域C1よりも搬送方向の上流側(左側)であって、第1印刷領域C1の左側の接着領域Bと第2印刷領域C2の右側の接着領域Bとの幅w6が、プレス板54の左枠部67の幅w1よりも狭くなるように設定されている。
【0042】
印刷が施された第1印刷領域C1は、フィルム13の搬送に伴って搬送方向の下流側へ移動し、乾燥装置16において乾燥処理が施される。なお、乾燥装置16の温度は、第2接着層82中のマイクロカプセルを破壊しない程度の温度に設定されている。乾燥処理が施されたフィルム13は、保護処理部17において保護シート33が載置され、第1印刷領域C1が保護シート33に被覆された状態でプレス台53上へ搬送される。
【0043】
第1印刷領域C1がプレス台53まで搬送されると、制御部74は、搬送モーター76の駆動を停止し、カムモーター62を駆動する。すると、カム63が回転して離間位置に位置したプレス板54を接近位置に移動させる(図8参照)。
【0044】
すなわち、転写媒体35の第1印刷領域C1のうち接着領域Bが、加熱されたプレス板54とプレス台53とによってプレスされ、加熱処理及び加圧処理が施される(付加処理段階)。すると、熱と圧力が作用する接着領域Bにおいて第1接着層81のマイクロカプセルが破壊されて接着性が発現し、保護シート33を第1接着層81に接着する。
【0045】
一方、転写領域Aは、プレス板54の孔65内に位置して加熱処理及び加圧処理は施されず、熱及び圧力が作用しない第2接着層82は接着性を発現していない状態が維持される。したがって、第2接着層82と保護シート33との密着力は、加熱及び加圧処理が施された第1接着層81と保護シート33との密着力よりも弱い。
【0046】
そして、接着領域Bの第1保護層79と第1接着層81との厚みは、転写領域Aの第2保護層80と着色層51と第2接着層82との厚みよりも厚いため、転写領域Aの第2接着層82と保護シート33との間には隙間が形成されるようになっている。
【0047】
また、第2印刷領域C2の右側の接着領域Bは、第1印刷領域C1のプレス時にプレス板54の左枠部67にかかるように設定されている。したがって、第1印刷領域C1のプレスにおいて、第2印刷領域C2の上流側(右側)の接着領域Bがプレスされ、保護シート33が接着される。
【0048】
また、プレス板54が接近位置に移動すると、カッター72が転写媒体35を裁断する。そして、制御部74は、カムモーター62を駆動してプレス板54を離間位置へ移動させると共に、裁断された転写媒体35を図示しない搬送ローラーによって排紙トレイ37に排紙する。
【0049】
第1印刷領域C1が設定された転写媒体35が排紙されると、制御部74は搬送モーター76を駆動して第2印刷領域C2が設定された転写媒体35をプレス台53上に搬送する。このとき、転写媒体35は、搬送方向の上流側(右側)において保護シート33が接着された状態で搬送されるため、保護シート33がフィルム13の搬送に連れられるようにプレス台53上に移動するようになっている。
【0050】
そこで次に、以上のような転写媒体製造装置11において製造された転写媒体35を用いて、ターゲット77に画像を転写する場合の作用について図9(a)〜(c)に基づいて説明する。
【0051】
まず、図9(a)に示すように、フィルム13上から保護シート33を剥離する。なお、保護シート33と第1接着層81との密着力、及び第1保護層79と第1接着層81との密着力は、フィルム13と第1保護層79との密着力よりも強い。そのため、フィルム13上から保護シート33を剥離したとき、接着領域Bの第1保護層79及び第1接着層81は、保護シート33と共にフィルム13から剥離される。一方、転写領域Aの第2接着層82と保護シート33との密着力は、第1接着層81と保護シート33との密着力よりも弱いため、フィルム13上から保護シート33を剥離したとき、第2保護層80、着色層51、第2接着層82はフィルム13側に残る。
【0052】
そして、図9(b)に示すように、第2接着層82をターゲット77の転写面77aに接触させた状態において、ヒーター(図示略)が内蔵された加熱ローラー84と、従動ローラー85によってターゲット77とフィルム13とを挟圧する。なお、加熱ローラー84は、図示しない付勢手段によって従動ローラー85側に付勢されており、第2接着層82に対してフィルム13側から加圧処理及び加熱処理を施す。したがって、第2接着層82の接着性が向上し、ターゲット77が第2接着層82に接着する。
【0053】
図9(c)に示すように、ターゲット77と第2接着層82とが接着された状態において、剥離ローラー86によってフィルム13を徐々に剥離すると、第2保護層80がフィルム13から剥離する。したがって、着色層51は、透明な第2保護層80に保護された状態でターゲット77に転写される。
【0054】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)転写領域Aの周囲に付着して加熱処理及び加圧処理が施された接着液(第1接着層81)に保護シート33を接着することにより、転写領域Aのサイズに関わらず保護シート33による転写領域Aの被覆状態が確保された転写媒体35を製造することができる。したがって、フィルム13に付着したインク(着色層51)を保護する保護シート33のずれを抑制し、ターゲット77に対して美麗な転写が可能である。
【0055】
(2)転写領域Aに付着した接着液は、転写領域Aの周囲に付着して付加処理としての加熱処理及び加圧処理が施された後の接着液(第1接着層81)よりも保護シート33に対する密着力が弱い。そのため、保護シート33をフィルム13から剥離する場合に、転写領域Aに付着したインクが保護シート33と共に剥離されてしまうのを抑制することができる。
【0056】
(3)転写領域Aの周囲に付着して加熱処理及び加圧処理が施された接着液(第1接着層81)に保護シート33を接着することにより、転写領域Aのサイズに関わらず保護シート33による転写領域Aの被覆状態を確保することができる。したがって、フィルム13に付着したインク(着色層51)を保護する保護シート33のずれを抑制し、ターゲット77に対して美麗な転写が可能である。
【0057】
(4)フィルム13とインクとの間に保護液を付着させることにより、インク(着色層51)の表面を保護液(第2保護層80)により保護し、ターゲット77に転写されたインクの耐久性を向上させることができる。
【0058】
(5)フィルム13と接着液との間に保護液を付着させることにより、加熱処理及び加圧処理を施された接着液とフィルム13とが直接接触することを抑制することができる。すなわち、接着液のフィルム13に対する接着力を弱くすることにより、保護シート33が剥離された場合に、転写領域Aの周囲に付着した接着液も保護シート33と共に剥離させることができる。したがって、ターゲット77に対してインクを転写する場合には、転写領域A外において、接着液がターゲット77に付着して該ターゲット77を汚染する虞を抑制することができる。
【0059】
(6)ターゲット77にインクを転写する場合に用いる第2接着層82と、保護シート33を接着する第1接着層81をそれぞれ非連続に形成することにより、保護シート33とフィルム13とを剥離する場合に、第1接着層81に連れられて第2接着層82が保護シート33と共に剥離してしまう虞を低減することができる。
【0060】
(7)フィルム13と着色層51との間に第2保護層80を形成することにより、フィルム13とインクの相性に関わらず着色層51を形成することができる。すなわち、例えば、撥水性を有する樹脂製のフィルム13上に染料や顔料といった色材によって着色された液体(インク)で印刷を行う場合でも、シリカなどの無機微粒子や膨潤性樹脂を含む透明なコート剤を用いて第2保護層80を形成することにより、インクの定着性を高めることができる。
【0061】
(8)圧電素子49を振動させて接着液を噴射することにより、マイクロカプセルが維持された状態で接着液をフィルム13に付着させることができる。すなわち、接着液の接着力が低減された状態で接着液を噴射することができるため、ノズル40の目詰まりを抑制することができる。
【0062】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・図10に示すように、転写媒体88において接着領域B1は、転写領域A1の周囲を囲う非連続の環状領域であってもよい(第1変形例)。
【0063】
・図11に示すように、転写媒体89において接着領域B2は、転写領域A2の外郭形状に沿って設定してもよい(第2変形例)。
・図12に示すように、転写媒体90において、接着領域B3は、転写領域A3の外郭形状に沿うように、且つ部分的に非連続となるように設定してもよい(第3変形例)。
【0064】
・図13に示すように、転写媒体91において、接着領域B4は、転写領域A4の周囲であって転写領域A4とは非連続となる領域にランダムに複数設定してもよい。そして、各接着領域B4の形状は円形、楕円形、涙形、鉤形など、任意に設定することができ、各接着領域B4同士は連続していてもよい(第4変形例)。
【0065】
・接着液(非記録材)として、紫外線硬化接着剤を用いてもよい。また、転写領域Aと接着領域Bに異なる種類の非記録材を付着させてもよい。すなわち、例えば転写領域A(A1〜A4)には、接着性を有する接着剤をマイクロカプセルに内包した接着液(非記録材)を付着させると共に、接着領域B(B1〜B4)には、紫外線硬化接着剤(非記録材)を付着させ、付加処理として紫外線を照射してもよい。なお、紫外線硬化接着剤は、紫外線と反応して硬化し、保護シート33と接着する。一方、マイクロカプセルは紫外線では破壊されないため、接着液の接着性は低い状態に維持される。そのため、紫外線を印刷領域の全域に照射した場合においても、保護シート33を接着させるための付加処理が施されるのは接着領域B(B1〜B4)に付着した紫外線硬化接着剤のみとなり、転写領域Aに付着した接着液には付加処理が施されない。そして、これによれば、転写領域Aでは、保護シート33との密着力が小さい状態が維持されるのに対し、接着領域Bでは、保護シート33が接着されて密着力が大きくなる。
【0066】
・熱硬化性の樹脂や、熱を加えると軟化し、冷えると硬化する熱可逆性の樹脂などを接着液として用いて、転写領域Aもしくは接着領域Bに塗布してもよい。
・保護液を付着させず、保護層79,80を形成しなくてもよい。また、保護液は転写領域Aと接着領域Bの一方のみに付着させ、第1保護層79,第2保護層80のうち一方のみを形成するようにしてもよい。また、保護層が形成されたフィルムを用いてもよい。
【0067】
・転写媒体35をターゲット77に転写する場合には、第2接着層82をターゲット77の転写面77aに接触させた状態において、例えばアイロンなどの加熱板を押し当てることにより、加熱処理及び加圧処理を行って画像を転写しても良い。また、付加処理として、加熱処理と加圧処理のうち一方の処理によってマイクロカプセルを破壊し、接着液の接着性を発現させてもよい。そして、ターゲット77と第2接着層82とが接着した状態において、フィルム13を剥離する場合には、剥離ローラー86などの器具を用いずに剥離させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
13…フィルム(基材)、33…保護シート、35,88〜91…転写媒体、51…着色層(記録材)、77…ターゲット、79…第1保護層(保護材)、80…第2保護層(保護材)、81…第1接着層(非記録材)、82…第2接着層(非記録材)、A…転写領域(記録材付着領域)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に形成されたパターンをターゲットに対して転写可能な転写媒体、及び転写媒体を製造するための転写媒体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インク(記録材)をシート(基材)上に付着させて形成した文字や画像などのパターンをターゲットに転写する転写媒体が知られている。すなわち、パターンを転写する場合には、シート上に転写可能に形成されたパターンを該パターン上に塗布された接着剤によってターゲットに接着することにより、パターンがシートから剥離してターゲットに転写される。
【0003】
そのため、接着剤が露出した状態でシートを移動させると、接着剤がターゲット以外のところに貼着してパターンが壊れてしまう。
そこで、特許文献1の転写媒体では、パターンが形成されたシートを剥離シート(保護シート)で被覆してパターンを保護すると共に、パターン上に塗布された接着剤によって剥離シートとパターンが形成されたシートとを接着していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−314879号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、パターン上に塗布されて転写に使用される接着剤によって剥離シートを貼着しているため、パターンが小さい場合、すなわち剥離シートの接着面積が小さい場合には、剥離シートがずれてパターンが壊れてしてしまう虞があった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、基材に付着した記録材を保護する保護シートのずれを抑制し、ターゲットに対して美麗な転写が可能な転写媒体製造方法、転写媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の転写媒体製造方法は、ターゲットに対して転写可能な記録材を基材に付着させた転写媒体を製造するための転写媒体製造方法において、前記基材に対して前記記録材を付着させる記録材付着段階と、前記基材における前記記録材が付着した記録材付着領域及び該記録材付着領域の周囲に非記録材を付着させる非記録材付着段階と、前記基材上に前記記録材付着領域を被覆可能な保護シートを載置した状態で、前記記録材付着領域に付着した前記非記録材には該非記録材と前記保護シートとを接着させるための付加処理を施すことなく、前記記録材付着領域の周囲に付着した前記非記録材に対して、該非記録材と前記保護シートとを接着させるための付加処理を施す付加処理段階とを備える。
【0008】
この構成によれば、記録材付着領域の周囲に付着して付加処理が施された非記録材に保護シートを接着することにより、記録材付着領域のサイズに関わらず保護シートによる記録材付着領域の被覆状態が確保された転写媒体を製造することができる。したがって、基材に付着した記録材を保護する保護シートのずれを抑制し、ターゲットに対して美麗な転写が可能である。
【0009】
本発明の転写媒体製造方法において、前記付加処理が施される前の前記非記録材と前記保護シートとの密着力は、前記付加処理が施された後の前記非記録材と前記保護シートとの密着力よりも弱い。
【0010】
この構成によれば、記録材付着領域に付着した非記録材は、記録材付着領域の周囲に付着して付加処理が施された後の非記録材よりも保護シートに対する密着力が弱い。そのため、保護シートを基材から剥離する場合に、記録材付着領域に付着した記録材が保護シートと共に剥離されてしまうのを抑制することができる。
【0011】
本発明の転写媒体は、ターゲットに対して転写可能な記録材を基材に付着させた転写媒体において、前記基材における前記記録材が付着した記録材付着領域と該記録材付着領域の周囲とに非記録材が付着され、前記記録材付着領域に付着された前記非記録材には該非記録材と前記記録材付着領域を被覆可能な保護シートとを接着させるための付加処理が施されず、前記記録材付着領域の周囲に付着された前記非記録材には該非記録材と前記保護シートとを接着させるための付加処理が施され、該付加処理が施された前記非記録材に前記保護シートが接着されている。
【0012】
この構成によれば、記録材付着領域の周囲に付着して付加処理が施された非記録材に保護シートを接着することにより、記録材付着領域のサイズに関わらず保護シートによる記録材付着領域の被覆状態を確保することができる。したがって、基材に付着した記録材を保護する保護シートのずれを抑制し、ターゲットに対して美麗な転写が可能である。
【0013】
本発明の転写媒体において、前記基材と前記記録材の間には、前記ターゲットに前記記録材が転写された場合に当該記録材の表面を保護するための保護材が付着されている。
この構成によれば、基材と記録材との間に保護材を付着させることにより、記録材の表面を保護材により保護し、ターゲットに転写された記録材の耐久性を向上させることができる。
【0014】
本発明の転写媒体において、前記非記録材が付着される前記記録材付着領域の周囲の領域であって前記基材と前記非記録材の間には前記保護材が付着され、前記保護材と前記基材との密着力は、前記付加処理が施された前記非記録材と前記保護シートとの密着力よりも小さい。
【0015】
この構成によれば、基材と非記録材の間に保護材を付着させることにより、付加処理を施された非記録材と基材とが直接接触することを抑制することができる。すなわち、非記録材の基材に対する接着力を弱くすることにより、保護シートが剥離された場合に、記録材付着領域の周囲に付着した非記録材も保護シートと共に剥離させることができる。したがって、ターゲットに対して記録材を転写する場合には、記録材付着領域外において、非記録材がターゲットに貼着して該ターゲットを汚染する虞を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態の転写媒体製造装置の正面模式図。
【図2】記録ヘッドのノズル形成面を示す模式図。
【図3】非プレス時のプレス部の模式図。
【図4】プレス板の斜視図。
【図5】制御構成のブロック図。
【図6】図3における6−6矢視断面模式図。
【図7】(a)〜(c)は図6における7−7矢視断面であって、転写媒体の製造過程の説明図。
【図8】プレス時のプレス部の模式図。
【図9】(a)〜(c)は転写画像をターゲットに転写する過程の説明図。
【図10】変形例1の転写媒体の平面模式図。
【図11】変形例2の転写媒体の平面模式図。
【図12】変形例3の転写媒体の平面模式図。
【図13】変形例4の転写媒体の平面模式図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明をフィルム上にインクを噴射して転写媒体を製造する転写媒体製造装置に具体化した一実施形態を図1〜図9に従って説明する。なお、以下における明細書中の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は、図1等の図面に矢印で示した方向を基準として示すものとする。
【0018】
図1に示すように、転写媒体製造装置11は、直方体状の本体ケース12を備えている。本体ケース12内には、長尺状の基材としてのフィルム13を繰り出す繰り出し部14と、そのフィルム13に記録材としてのインクの噴射により印刷が施される印刷室15と、その印刷によりインクが付着したフィルム13に乾燥処理を施す乾燥装置16と、乾燥処理が施されたフィルム13に保護処理を施す保護処理部17とが設けられている。
【0019】
すなわち、本体ケース12内における上下方向の中央部よりもやや上寄りの位置には、本体ケース12内を上下に区画する平板状の基台18が設けられており、この基台18よりも上側の領域が矩形板状のプラテン19を基台18上に支持してなる印刷室15となっている。そして、基台18よりも下側の領域において、フィルム13の搬送方向で上流側となる左側寄りの位置に、繰り出し部14が配設されると共に、下流側となる右側寄りの位置に、乾燥装置16及び保護処理部17が配設されている。
【0020】
図1に示すように、繰り出し部14には、前後方向に延びる第1巻き軸20が回転自在に設けられ、その第1巻き軸20に対してフィルム13が予めロール状に巻かれた状態で第1巻き軸20と一体回転可能に支持されている。すなわち、フィルム13は、第1巻き軸20が回転することにより、繰り出し部14から繰り出されて搬送方向の下流側に搬送されるようになっている。そして、第1巻き軸20から繰り出されたフィルム13は、第1ローラー21、第2ローラー22、第3ローラー23、及び第4ローラー24に順次巻き掛けられて搬送方向を変換される。
【0021】
なお、印刷室15内においてプラテン19を挟んで左右方向で対向する第2ローラー22及び第3ローラー23は各々の周面の頂部がプラテン19の上面と同一高さとなるように各々の設置される位置が調整されている。そのため、印刷室15内において第2ローラー22と第3ローラー23との間を下流側に搬送されるフィルム13は、その裏面がプラテン19の上面に摺接するようになっている。そして、プラテン19には、プラテンヒーター(図示略)が埋設されており、プラテン19に支持されたフィルム13を加熱するようになっている。
【0022】
また、図1に示すように、印刷室15内におけるプラテン19の前後両側には、左右方向に延びるガイドレール26(図1では2点鎖線で示す)が対をなすように設けられている。ガイドレール26の上面はプラテン19の上面よりも高くなっており、両ガイドレール26の上面には、矩形状のキャリッジ27が図示しない駆動機構の駆動に基づき両ガイドレール26に沿って左右方向への往復移動可能な状態で支持されている。そして、このキャリッジ27の下面側には支持板28を介して記録ヘッド29が支持されている。
【0023】
この記録ヘッド29は、プラテン19に支持されたフィルム13に対してインクを噴射することにより印刷(記録)を施すと共に、非記録材としての接着液と保護材としての保護液を噴射する記録材付着手段、非記録材付着手段、保護材付着手段として機能する。また、印刷室15内において、第3ローラー23よりも右側となる領域には、非印刷時に記録ヘッド29のメンテナンスを行うためのメンテナンス機構30が設けられている。
【0024】
図1に示すように、保護処理部17には、前後方向に延びる第2巻き軸32が回転自在に設けられ、その第2巻き軸32に対して保護シート33が予めロール状に巻かれた状態で第2巻き軸32と一体回転可能に支持されている。そして、第4ローラー24の右側となる位置には、第2巻き軸32が回転して繰り出した保護シート33の搬送方向を変換する第5ローラー34と、印刷が施されたフィルム13及び保護シート33からなる転写媒体35に付加処理を施すプレス部36とが設けられている。さらに、プレス部36の右側となる位置には、排紙トレイ37が設けられている。
【0025】
図2に示すように、キャリッジ27の下面側に支持された支持板28には複数個(本実施形態では6個)の記録ヘッド29がフィルム13の搬送方向(図2において白抜き矢印で示す方向)と直交する幅方向(前後方向)に亘って千鳥状の配置態様となるように支持されている。そして、各記録ヘッド29の下面となるノズル形成面39には、多数のノズル40により前後方向に沿う複数列(本実施形態では8列)の第1〜第8ノズル列41〜48が左右方向に所定間隔をおいて規則的に形成されている。そして、このように構成された第1〜第8ノズル列41〜48には、各ノズル列41〜48に対応するカートリッジ(図示略)から複数種類の液体がそれぞれ供給されると共に、各ノズル40に対応するように設けられた圧電素子49(図5参照)の振動に伴ってノズル40ごとに噴射されるようになっている。
【0026】
すなわち、第1〜第5ノズル列41〜45には、搬送方向において最も上流側(左側)に位置する第1ノズル列41から順に、シアン,マゼンタ,イエロー,ブラック,ホワイトの各色のインクが供給されるようになっている。さらに、左側から6番目に位置する第6ノズル列46には、メタルインクが供給されるようになっている。そして、第1〜第6ノズル列41〜46から噴射されたインクがフィルム13に付着することにより、パターンとしての着色層51(図3参照)が形成されるようになっている。なお、メタルインクとは、金属性顔料を液体中に分散させたインクであって、フィルム13に付着させることにより金属箔状の着色層51を形成可能なインクである。
【0027】
また、左側から7番目に位置する第7ノズル列47には、接着液が供給されるようになっている。なお、本実施形態における接着液は、接着剤成分を内包したマイクロカプセルを液体中に分散させたものであり、付加処理としての加熱処理及び加圧処理を施してマイクロカプセルを破壊することによって接着性が向上する液体である。そして、フィルム13の搬送方向において最も下流側(右側)に位置する第8ノズル列48には、保護液が供給されるようになっている。
【0028】
図3に示すように、プレス部36は、転写媒体35を支持する樹脂製のプレス台53と、プレス台53の上方位置に設けられたプレス板54と、プレス板54をプレス台53に対して相対移動させる移動装置55とにより構成されている。
【0029】
すなわち、移動装置55は、プレス板54が取り付けられた直方体状の取付板57と、該取付板57に取り付けられた側面視T字状の押し棒58とが、ばね59を介して本体ケース12に固定されたばね受け部60に支持されている。すなわち、移動装置55は、ばね59によって押し棒58を押し上げることにより、取付板57に固定されたプレス板54をプレス台53から離間した離間位置に位置させる。そして、カムモーター62(図5参照)の駆動に基づいて回転するカム63が押し棒58を押し下げることにより、プレス板54は、離間位置とプレス台53に接近する接近位置(図8参照)との間を変位するようになっている。
【0030】
図3及び図4に示すように、プレス板54は、平面視矩形状の孔65を有して枠状に形成されている。そして、プレス板54の右枠部66、左枠部67、前枠部68、後枠部69には、プレスヒーター70が埋設されており、加熱装置71(図5参照)から電流が供給されることにより発熱してプレス板54を加熱するようになっている。
【0031】
また、図4に示すように、プレス板54は、左枠部67の左右方向の幅w1が、右枠部66の左右方向の幅w2よりも大きく形成されていると共に、右枠部66の幅w2は、前枠部68と後枠部69の左右方向の幅w3,w4と同じ幅となるように形成されている。
【0032】
そして、左枠部67の下面67aには、前後方向において転写媒体35の幅よりも大きなカッター72が取り付けられている(図6参照)。なお、このカッター72の上下方向の長さは、プレス板54が接近位置に位置したときに、プレス台53とプレス板54による転写媒体35のプレスを阻害しない程度の長さであって、フィルム13及び保護シート33を切断可能な程度の長さに設定されている。
【0033】
図5に示すように、転写媒体製造装置11には、該転写媒体製造装置11の駆動を統括制御するマイクロコンピューター等からなる制御部74が設けられている。この制御部74は、ユーザーにより操作される操作部75からの入力に基づき、圧電素子49、カムモーター62、加熱装置71、搬送モーター76の駆動を制御する。
【0034】
そこで次に、以上のような転写媒体製造装置11を用いて転写媒体35を製造する場合の製造方法について説明する。
図6に示すように、転写パターンを形成する文字や画像などの印刷データとして、例えばアルファベットのRという印刷データが入力されると、まず制御部74は、インクを付着させる記録材付着領域としての転写領域Aを設定すると共に、転写領域Aとは非連続な非記録材付着領域としての接着領域Bを設定する。
【0035】
すなわち、転写領域Aは、ターゲット77(図9参照)に転写する転写パターンを形成する領域である。なお、本実施形態において製造する転写媒体35は、転写媒体35に形成された転写画像をターゲット77(図9参照)に左右反転して転写するため、転写された転写画像に対して左右反転した転写領域Aを設定する。また、接着領域Bは、プレス部36においてプレス板54とプレス台53によりプレス可能であって、接着領域Bの幅w5がプレス板54の各枠部66〜69の幅w1〜w4よりも細く、且つ転写領域Aの周囲を囲うように設定される。
【0036】
さて、ユーザーによって操作部75が操作されて転写媒体35の製造が開始されると、制御部74は、加熱装置71を駆動してプレスヒーター70に電流を供給する。すると、プレスヒーター70が発熱してプレス板54を加熱する。また、制御部74は、フィルム13における第1印刷領域C1(図6参照)に対して保護液、インク、接着液をそれぞれ付着させる。
【0037】
具体的には、図7(a)に示すように、まず制御部74は、キャリッジ27の移動に合わせて第8ノズル列48に対応する圧電素子49を振動させ、転写領域Aと接着領域Bとに保護液を付着させる。なお、保護液が付着するフィルム13は、プラテンヒーター(図示略)によって加熱されたプラテン19に支持されている。そのため、プラテン19上では、保護液中の溶媒の蒸発が促進され、流動性が低下した第1保護層79,第2保護層80が形成される。また、制御部74は、接着領域Bにおいて単位面積あたりに噴射する保護液の量を、転写領域Aにおいて単位面積あたりに噴射する保護液の量よりも多くすることにより、接着領域Bに形成される第1保護層79の厚みを転写領域Aに形成される第2保護層80の厚みよりも厚く形成する。
【0038】
図7(b)に示すように、続いて制御部74は、キャリッジ27の移動に合わせて第1〜第6ノズル列41〜46に対応する圧電素子49を振動させ、第2保護層80が形成された転写領域Aにインクを噴射して着色層51を形成する(記録材付着段階)。すなわち、例えば箔転写のための転写媒体を製造する場合には、メタルインクを用いて着色層51を形成する。具体的には、まずメタルインクを転写領域Aに付着させ、その後ホワイトインクを転写領域Aに付着させることで、銀色の着色層51を形成する。
【0039】
そして、図7(c)に示すように、制御部74は、キャリッジ27の移動に合わせて第7ノズル列47に対応する圧電素子49を振動させ、第1保護層79が形成された接着領域Bと第2保護層80及び着色層51が形成された転写領域Aとに接着液を付着させる(非記録材付着段階)。すると、接着領域Bと転写領域Aとには、接着液中の溶媒の蒸発が促進され、流動性が低下した第1接着層81,第2接着層82が形成される。なお、本実施形態では、接着液が含有する接着成分はマイクロカプセルに内包されているため、接着層81,82の接着性は低い。また、単位面積あたりに噴射される接着液の量は、転写領域Aよりも接着領域Bにおいて多く、接着領域Bにおいて形成された第1保護層79及び第1接着層81の上下方向の合計の厚みは、転写領域Aにおいて形成された第2保護層80、着色層51、第2接着層82の合計の厚みよりも厚くなっている。
【0040】
フィルム13における第1印刷領域C1に対する印刷が終了すると、制御部74は搬送モーター76を駆動して第1,第2巻き軸20,32、第1〜第5ローラー21〜24,34を回転させてフィルム13及び保護シート33を搬送方向の下流側へ搬送する。
【0041】
図6に示すように、印刷室15では、第1印刷領域C1に続いて第2印刷領域C2へ第1印刷領域C1と同様の印刷を開始する。なお、第2印刷領域C2は、第1印刷領域C1よりも搬送方向の上流側(左側)であって、第1印刷領域C1の左側の接着領域Bと第2印刷領域C2の右側の接着領域Bとの幅w6が、プレス板54の左枠部67の幅w1よりも狭くなるように設定されている。
【0042】
印刷が施された第1印刷領域C1は、フィルム13の搬送に伴って搬送方向の下流側へ移動し、乾燥装置16において乾燥処理が施される。なお、乾燥装置16の温度は、第2接着層82中のマイクロカプセルを破壊しない程度の温度に設定されている。乾燥処理が施されたフィルム13は、保護処理部17において保護シート33が載置され、第1印刷領域C1が保護シート33に被覆された状態でプレス台53上へ搬送される。
【0043】
第1印刷領域C1がプレス台53まで搬送されると、制御部74は、搬送モーター76の駆動を停止し、カムモーター62を駆動する。すると、カム63が回転して離間位置に位置したプレス板54を接近位置に移動させる(図8参照)。
【0044】
すなわち、転写媒体35の第1印刷領域C1のうち接着領域Bが、加熱されたプレス板54とプレス台53とによってプレスされ、加熱処理及び加圧処理が施される(付加処理段階)。すると、熱と圧力が作用する接着領域Bにおいて第1接着層81のマイクロカプセルが破壊されて接着性が発現し、保護シート33を第1接着層81に接着する。
【0045】
一方、転写領域Aは、プレス板54の孔65内に位置して加熱処理及び加圧処理は施されず、熱及び圧力が作用しない第2接着層82は接着性を発現していない状態が維持される。したがって、第2接着層82と保護シート33との密着力は、加熱及び加圧処理が施された第1接着層81と保護シート33との密着力よりも弱い。
【0046】
そして、接着領域Bの第1保護層79と第1接着層81との厚みは、転写領域Aの第2保護層80と着色層51と第2接着層82との厚みよりも厚いため、転写領域Aの第2接着層82と保護シート33との間には隙間が形成されるようになっている。
【0047】
また、第2印刷領域C2の右側の接着領域Bは、第1印刷領域C1のプレス時にプレス板54の左枠部67にかかるように設定されている。したがって、第1印刷領域C1のプレスにおいて、第2印刷領域C2の上流側(右側)の接着領域Bがプレスされ、保護シート33が接着される。
【0048】
また、プレス板54が接近位置に移動すると、カッター72が転写媒体35を裁断する。そして、制御部74は、カムモーター62を駆動してプレス板54を離間位置へ移動させると共に、裁断された転写媒体35を図示しない搬送ローラーによって排紙トレイ37に排紙する。
【0049】
第1印刷領域C1が設定された転写媒体35が排紙されると、制御部74は搬送モーター76を駆動して第2印刷領域C2が設定された転写媒体35をプレス台53上に搬送する。このとき、転写媒体35は、搬送方向の上流側(右側)において保護シート33が接着された状態で搬送されるため、保護シート33がフィルム13の搬送に連れられるようにプレス台53上に移動するようになっている。
【0050】
そこで次に、以上のような転写媒体製造装置11において製造された転写媒体35を用いて、ターゲット77に画像を転写する場合の作用について図9(a)〜(c)に基づいて説明する。
【0051】
まず、図9(a)に示すように、フィルム13上から保護シート33を剥離する。なお、保護シート33と第1接着層81との密着力、及び第1保護層79と第1接着層81との密着力は、フィルム13と第1保護層79との密着力よりも強い。そのため、フィルム13上から保護シート33を剥離したとき、接着領域Bの第1保護層79及び第1接着層81は、保護シート33と共にフィルム13から剥離される。一方、転写領域Aの第2接着層82と保護シート33との密着力は、第1接着層81と保護シート33との密着力よりも弱いため、フィルム13上から保護シート33を剥離したとき、第2保護層80、着色層51、第2接着層82はフィルム13側に残る。
【0052】
そして、図9(b)に示すように、第2接着層82をターゲット77の転写面77aに接触させた状態において、ヒーター(図示略)が内蔵された加熱ローラー84と、従動ローラー85によってターゲット77とフィルム13とを挟圧する。なお、加熱ローラー84は、図示しない付勢手段によって従動ローラー85側に付勢されており、第2接着層82に対してフィルム13側から加圧処理及び加熱処理を施す。したがって、第2接着層82の接着性が向上し、ターゲット77が第2接着層82に接着する。
【0053】
図9(c)に示すように、ターゲット77と第2接着層82とが接着された状態において、剥離ローラー86によってフィルム13を徐々に剥離すると、第2保護層80がフィルム13から剥離する。したがって、着色層51は、透明な第2保護層80に保護された状態でターゲット77に転写される。
【0054】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)転写領域Aの周囲に付着して加熱処理及び加圧処理が施された接着液(第1接着層81)に保護シート33を接着することにより、転写領域Aのサイズに関わらず保護シート33による転写領域Aの被覆状態が確保された転写媒体35を製造することができる。したがって、フィルム13に付着したインク(着色層51)を保護する保護シート33のずれを抑制し、ターゲット77に対して美麗な転写が可能である。
【0055】
(2)転写領域Aに付着した接着液は、転写領域Aの周囲に付着して付加処理としての加熱処理及び加圧処理が施された後の接着液(第1接着層81)よりも保護シート33に対する密着力が弱い。そのため、保護シート33をフィルム13から剥離する場合に、転写領域Aに付着したインクが保護シート33と共に剥離されてしまうのを抑制することができる。
【0056】
(3)転写領域Aの周囲に付着して加熱処理及び加圧処理が施された接着液(第1接着層81)に保護シート33を接着することにより、転写領域Aのサイズに関わらず保護シート33による転写領域Aの被覆状態を確保することができる。したがって、フィルム13に付着したインク(着色層51)を保護する保護シート33のずれを抑制し、ターゲット77に対して美麗な転写が可能である。
【0057】
(4)フィルム13とインクとの間に保護液を付着させることにより、インク(着色層51)の表面を保護液(第2保護層80)により保護し、ターゲット77に転写されたインクの耐久性を向上させることができる。
【0058】
(5)フィルム13と接着液との間に保護液を付着させることにより、加熱処理及び加圧処理を施された接着液とフィルム13とが直接接触することを抑制することができる。すなわち、接着液のフィルム13に対する接着力を弱くすることにより、保護シート33が剥離された場合に、転写領域Aの周囲に付着した接着液も保護シート33と共に剥離させることができる。したがって、ターゲット77に対してインクを転写する場合には、転写領域A外において、接着液がターゲット77に付着して該ターゲット77を汚染する虞を抑制することができる。
【0059】
(6)ターゲット77にインクを転写する場合に用いる第2接着層82と、保護シート33を接着する第1接着層81をそれぞれ非連続に形成することにより、保護シート33とフィルム13とを剥離する場合に、第1接着層81に連れられて第2接着層82が保護シート33と共に剥離してしまう虞を低減することができる。
【0060】
(7)フィルム13と着色層51との間に第2保護層80を形成することにより、フィルム13とインクの相性に関わらず着色層51を形成することができる。すなわち、例えば、撥水性を有する樹脂製のフィルム13上に染料や顔料といった色材によって着色された液体(インク)で印刷を行う場合でも、シリカなどの無機微粒子や膨潤性樹脂を含む透明なコート剤を用いて第2保護層80を形成することにより、インクの定着性を高めることができる。
【0061】
(8)圧電素子49を振動させて接着液を噴射することにより、マイクロカプセルが維持された状態で接着液をフィルム13に付着させることができる。すなわち、接着液の接着力が低減された状態で接着液を噴射することができるため、ノズル40の目詰まりを抑制することができる。
【0062】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・図10に示すように、転写媒体88において接着領域B1は、転写領域A1の周囲を囲う非連続の環状領域であってもよい(第1変形例)。
【0063】
・図11に示すように、転写媒体89において接着領域B2は、転写領域A2の外郭形状に沿って設定してもよい(第2変形例)。
・図12に示すように、転写媒体90において、接着領域B3は、転写領域A3の外郭形状に沿うように、且つ部分的に非連続となるように設定してもよい(第3変形例)。
【0064】
・図13に示すように、転写媒体91において、接着領域B4は、転写領域A4の周囲であって転写領域A4とは非連続となる領域にランダムに複数設定してもよい。そして、各接着領域B4の形状は円形、楕円形、涙形、鉤形など、任意に設定することができ、各接着領域B4同士は連続していてもよい(第4変形例)。
【0065】
・接着液(非記録材)として、紫外線硬化接着剤を用いてもよい。また、転写領域Aと接着領域Bに異なる種類の非記録材を付着させてもよい。すなわち、例えば転写領域A(A1〜A4)には、接着性を有する接着剤をマイクロカプセルに内包した接着液(非記録材)を付着させると共に、接着領域B(B1〜B4)には、紫外線硬化接着剤(非記録材)を付着させ、付加処理として紫外線を照射してもよい。なお、紫外線硬化接着剤は、紫外線と反応して硬化し、保護シート33と接着する。一方、マイクロカプセルは紫外線では破壊されないため、接着液の接着性は低い状態に維持される。そのため、紫外線を印刷領域の全域に照射した場合においても、保護シート33を接着させるための付加処理が施されるのは接着領域B(B1〜B4)に付着した紫外線硬化接着剤のみとなり、転写領域Aに付着した接着液には付加処理が施されない。そして、これによれば、転写領域Aでは、保護シート33との密着力が小さい状態が維持されるのに対し、接着領域Bでは、保護シート33が接着されて密着力が大きくなる。
【0066】
・熱硬化性の樹脂や、熱を加えると軟化し、冷えると硬化する熱可逆性の樹脂などを接着液として用いて、転写領域Aもしくは接着領域Bに塗布してもよい。
・保護液を付着させず、保護層79,80を形成しなくてもよい。また、保護液は転写領域Aと接着領域Bの一方のみに付着させ、第1保護層79,第2保護層80のうち一方のみを形成するようにしてもよい。また、保護層が形成されたフィルムを用いてもよい。
【0067】
・転写媒体35をターゲット77に転写する場合には、第2接着層82をターゲット77の転写面77aに接触させた状態において、例えばアイロンなどの加熱板を押し当てることにより、加熱処理及び加圧処理を行って画像を転写しても良い。また、付加処理として、加熱処理と加圧処理のうち一方の処理によってマイクロカプセルを破壊し、接着液の接着性を発現させてもよい。そして、ターゲット77と第2接着層82とが接着した状態において、フィルム13を剥離する場合には、剥離ローラー86などの器具を用いずに剥離させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
13…フィルム(基材)、33…保護シート、35,88〜91…転写媒体、51…着色層(記録材)、77…ターゲット、79…第1保護層(保護材)、80…第2保護層(保護材)、81…第1接着層(非記録材)、82…第2接着層(非記録材)、A…転写領域(記録材付着領域)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットに対して転写可能な記録材を基材に付着させた転写媒体を製造するための転写媒体製造方法において、
前記基材に対して前記記録材を付着させる記録材付着段階と、
前記基材における前記記録材が付着した記録材付着領域及び該記録材付着領域の周囲に非記録材を付着させる非記録材付着段階と、
前記基材上に前記記録材付着領域を被覆可能な保護シートを載置した状態で、前記記録材付着領域に付着した前記非記録材には該非記録材と前記保護シートとを接着させるための付加処理を施すことなく、前記記録材付着領域の周囲に付着した前記非記録材に対して、該非記録材と前記保護シートとを接着させるための付加処理を施す付加処理段階と
を備えることを特徴とする転写媒体製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の転写媒体製造方法において、
前記付加処理が施される前の前記非記録材と前記保護シートとの密着力は、前記付加処理が施された後の前記非記録材と前記保護シートとの密着力よりも弱いことを特徴とする転写媒体製造方法。
【請求項3】
ターゲットに対して転写可能な記録材を基材に付着させた転写媒体において、
前記基材における前記記録材が付着した記録材付着領域と該記録材付着領域の周囲とに非記録材が付着され、前記記録材付着領域に付着された前記非記録材には該非記録材と前記記録材付着領域を被覆可能な保護シートとを接着させるための付加処理が施されず、前記記録材付着領域の周囲に付着された前記非記録材には該非記録材と前記保護シートとを接着させるための付加処理が施され、該付加処理が施された前記非記録材に前記保護シートが接着されていることを特徴とする転写媒体。
【請求項4】
請求項3に記載の転写媒体において、
前記基材と前記記録材の間には、前記ターゲットに前記記録材が転写された場合に当該記録材の表面を保護するための保護材が付着されていることを特徴とする転写媒体。
【請求項5】
請求項4に記載の転写媒体において、
前記非記録材が付着される前記記録材付着領域の周囲の領域であって前記基材と前記非記録材の間には 前記保護材が付着され、
前記保護材と前記基材との密着力は、前記付加処理が施された前記非記録材と前記保護シートとの密着力よりも小さいことを特徴とする転写媒体。
【請求項1】
ターゲットに対して転写可能な記録材を基材に付着させた転写媒体を製造するための転写媒体製造方法において、
前記基材に対して前記記録材を付着させる記録材付着段階と、
前記基材における前記記録材が付着した記録材付着領域及び該記録材付着領域の周囲に非記録材を付着させる非記録材付着段階と、
前記基材上に前記記録材付着領域を被覆可能な保護シートを載置した状態で、前記記録材付着領域に付着した前記非記録材には該非記録材と前記保護シートとを接着させるための付加処理を施すことなく、前記記録材付着領域の周囲に付着した前記非記録材に対して、該非記録材と前記保護シートとを接着させるための付加処理を施す付加処理段階と
を備えることを特徴とする転写媒体製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の転写媒体製造方法において、
前記付加処理が施される前の前記非記録材と前記保護シートとの密着力は、前記付加処理が施された後の前記非記録材と前記保護シートとの密着力よりも弱いことを特徴とする転写媒体製造方法。
【請求項3】
ターゲットに対して転写可能な記録材を基材に付着させた転写媒体において、
前記基材における前記記録材が付着した記録材付着領域と該記録材付着領域の周囲とに非記録材が付着され、前記記録材付着領域に付着された前記非記録材には該非記録材と前記記録材付着領域を被覆可能な保護シートとを接着させるための付加処理が施されず、前記記録材付着領域の周囲に付着された前記非記録材には該非記録材と前記保護シートとを接着させるための付加処理が施され、該付加処理が施された前記非記録材に前記保護シートが接着されていることを特徴とする転写媒体。
【請求項4】
請求項3に記載の転写媒体において、
前記基材と前記記録材の間には、前記ターゲットに前記記録材が転写された場合に当該記録材の表面を保護するための保護材が付着されていることを特徴とする転写媒体。
【請求項5】
請求項4に記載の転写媒体において、
前記非記録材が付着される前記記録材付着領域の周囲の領域であって前記基材と前記非記録材の間には 前記保護材が付着され、
前記保護材と前記基材との密着力は、前記付加処理が施された前記非記録材と前記保護シートとの密着力よりも小さいことを特徴とする転写媒体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−37014(P2011−37014A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183516(P2009−183516)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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