説明

転写用原盤及びその製造技術

【課題】 転写パターンのさらなる高精細化が進んでも高精度転写を実施可能な転写用原盤の製造技術を提供する。
【解決手段】 平坦基板20へのレジスト31の塗布、露光及び現像により、径方向の異なる位置に周方向に延びる複数の凹凸パターンを有するレジストパターンR1を形成する工程(A)と、レジストパターンR1のパターン線幅を径方向位置の異なるn箇所(n≧2)で測定し、個々の測定線幅Wxについて所望線幅とのずれDxを求め(x=1〜n)、すべての測定箇所のずれDxの平均値Daveを求める工程(B)と、レジストパターンR1に対して、パターン線幅がずれの平均値Dave分細くなる条件で選択的エッチングを実施し、レジストパターンR2とする工程(C)と、レジストパターンR2をマスクとして平坦基板20をエッチングする工程(D)とを順次実施して、転写用原盤基板の型40を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被転写体の表面に所定の信号パターンを磁気転写するために使用される転写用原盤とその製造技術に係り、特に転写用原盤基板の型の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気記録媒体の製造技術として、所定の表面凹凸パターン(転写パターン)を有し少なくとも表面が磁性を有する転写用原盤(マスタ担体)を用い、該転写用原盤の表面に被転写体(スレーブ媒体)を密着させて、被転写体に転写用原盤の表面凹凸パターンに応じた信号パターンを磁気転写する技術がある。転写用原盤としては、表面凹凸パターンを有する転写用原盤基板(マスタ基板)に磁性層が成膜されたものが広く使用されている。
【0003】
転写用原盤基板は、転写用原盤基板の反転パターンを有する型を用いて効率よく製造される。特許文献1には、転写用原盤基板の型の製造方法として、平坦基板の表面にレジストの塗布・露光・現像を実施してレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとして平坦基板をエッチングし、さらに残存レジストを除去して、エッチング部分を凹部とする反転パターンを有する型を製造する方法が開示されている。同文献には、得られた型を用いて電鋳により転写用原盤基板を成形し、転写用原盤基板に磁性層を成膜して転写用原盤を製造する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2001−256644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
磁気記録媒体に対するさらなる高密度記録化の要求は高く、その製造に用いる転写用原盤には転写パターンの高精細化と高精細転写パターンの高精度転写がより一層求められるようになってきている。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、転写パターンのさらなる高精細化が進んでも高精度転写を実施可能な転写用原盤の製造技術、及び該製造技術により製造される転写用原盤を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するべく検討し、転写用原盤基板の型の製造に際しては、平坦基板をエッチングする際のマスクであるレジストパターンのパターン線幅が製造ごとに僅かながらもばらつき、これによって製造される型のパターン線幅が製造ごとに僅かながらもばらつくことを知見した。このことは、転写用原盤の表面凹凸パターンのパターン線幅が型によって僅かながらもばらつくことを意味する。
【0007】
現状の磁気転写では転写用原盤の上記パターン線幅のばらつきが磁気転写に与える影響は特にないが、本発明者は、今後さらなる転写パターンの高精細化(パターン線幅の狭小化等)が進めば、パターン線幅のばらつきが無視できなくなり、磁気転写精度への影響が懸念されることに想到した。
【0008】
転写用原盤の表面凹凸パターンは、パターン線幅及びパターンピッチが転写用原盤の表面全体で一様ではなく、径方向視、内周側から外周側に向けてパターン線幅及びパターンピッチが次第に大きくなるパターンである。すなわち、転写用原盤の表面凹凸パターンは異なるパターン線幅の複数の周方向凹凸パターンからなり、上記レジストパターンもそれに対応したものとなっている。本発明者は、レジストパターンが異なるパターン線幅及びパターンピッチの複数の周方向凹凸パターンからなることを考慮してさらに検討を続け、エッチング工程においてマスクとして機能するレジストパターンのパターン線幅が製造ごとにばらつかないよう制御する手段を見出し、本発明を完成した。
【0009】
本発明の転写用原盤基板の型の製造方法は、被転写体の表面に所定の信号パターンを磁気転写するために使用され、前記信号パターンに応じた表面凹凸パターンを有する転写用原盤基板の上に少なくとも磁性層が積層されてなるディスク状の転写用原盤の前記転写用原盤基板を成形する型の製造方法において、
平坦基板へのレジストの塗布、露光及び現像を実施して、径方向の異なる位置に周方向に延びる複数の凹凸パターン(周方向凹凸パターン)を有するレジストパターンを形成する工程(A)と、
前記レジストパターンのパターン線幅を、径方向位置の異なるn箇所(nは2以上の整数)で測定し、個々の測定線幅WxについてWxより小さい所望線幅WdxとのずれDx=(Wx−Wdx)を求め(xは測定箇所の番号を示す整数、x=1〜n)、すべての測定箇所のずれDx(x=1〜n)の平均値Dave=ΣDx/nを求める工程(B)と、
前記レジストパターンに対して、前記パターン線幅がずれの平均値Dave分細くなる条件で選択的エッチングを実施する工程(C)と、
前記レジストパターンをマスクとして前記平坦基板をエッチングし、エッチング部分を凹部とする、前記表面凹凸パターンと補完的な反転パターンを形成する工程(D)とを順次有することを特徴とするものである。
【0010】
本明細書において、「反転パターン」とは、信号パターンに応じた表面凹凸パターンの凸部に対応する部分が凹部、同表面凹凸パターンの凹部に対応する部分が凸部のパターンである。
【0011】
レジストパターンをなす凸部の側壁は垂直状の場合もあるしテーパ状の場合もあるが、「パターン線幅」は凸部の最大幅と定義する。
【0012】
前記工程(B)においては、前記レジストパターンに対して、少なくとも径方向位置が最内端、最外端、及び該最内端と該最外端との中心である3箇所について前記パターン線幅の測定を実施することが好ましい。
【0013】
本発明の転写用原盤基板の型の製造方法においては、前記レジストパターンの選択的エッチング条件によるパターン線幅の減少量のデータをあらかじめ取得しておき、該データに基づいて、前記工程(C)の前記選択的エッチング条件を決定することが好ましい。
【0014】
本発明の転写用原盤の製造方法は、上記の本発明の転写用原盤基板の型の製造方法により製造された型を用いて転写用原盤基板を成形し、該転写用原盤基板の表面に少なくとも磁性層を積層することを特徴とするものである。
【0015】
本発明の転写用原盤は、上記の本発明の転写用原盤の製造方法により製造されたものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の転写用原盤基板の型の製造方法では、平坦基板へのレジストの塗布、露光及び現像を実施してレジストパターンを形成し(工程(A))、このレジストパターンのパターン線幅を径方向位置の異なる複数の箇所で測定し、個々の測定線幅について所望線幅とのずれを求め、すべての測定箇所のずれの平均値を求め(工程(B))、レジストパターンに対して、パターン線幅がずれの平均値分細くなる条件で選択的エッチングを実施し(工程(C))、その後レジストパターンをマスクとして平坦基板をエッチングする(工程(D))構成としている。
【0017】
かかる構成では、レジストの塗布、露光及び現像の条件が製造ごとに多少ばらついても、エッチング工程(D)においてマスクとして機能するレジストパターン全体のパターン線幅を、常に所望線幅又はそれに近いものとすることができる。エッチング工程(D)においてマスクとして機能するレジストパターンのパターン線幅の製造ごとのばらつきが抑えられるので、転写用原盤基板の型のパターン線幅の製造ごとのばらつきが抑えられる。
【0018】
本発明の製造方法により製造される転写用原盤基板の型を用いることで、転写用原盤の表面凹凸パターンのパターン線幅が型によってばらつくことが抑えられ、転写パターンのさらなる高精細化が進んでも高精度転写を実施可能な転写用原盤を安定的に提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、図面を参照して本発明に係る実施形態について説明する。各図においては、視認しやすくするため実際のものとは縮尺やパターンを異ならせてある。
【0020】
「転写用原盤、磁気転写方法」
本発明は特に転写用原盤基板の型の製造方法が特徴的であるが、はじめに、転写用原盤基板の型を用いて製造される転写用原盤の一例、及びこれを用いた磁気転写方法について簡単に説明する。図1は転写用原盤の平面図、図2は転写用原盤等の周方向(トラック方向)厚み断面図である。
【0021】
図1に示す如く、転写用原盤10は平面視、中心部に開口部を有するディスク状物であり、被転写体13に転写する信号パターンに応じた微細な表面凹凸パターンを有する複数の信号転写領域15と、隣接する信号転写領域15の間に位置し表面凹凸パターンを有しない非信号転写領域16とを有するものである。複数の信号転写領域15は中心側から放射状に延び、隣接する信号転写領域15の間に略扇形の非信号転写領域16がある。転写用原盤10全体の表面凹凸パターンに符号PSを付してある。
【0022】
転写用原盤10は、周方向視、信号転写領域15と非信号転写領域16とを繰り返し有するものであり、表面凹凸パターンPSは径方向の異なる位置に周方向に延びる複数の凹凸パターンX(以下、「周方向凹凸パターンX」と言う。)を有している。複数の周方向凹凸パターンXはパターン線幅及びパターンピッチが一様なものではなく、内周側から外周側に向けて周方向凹凸パターンXのパターン線幅及びパターンピッチが次第に大きくなっている。
【0023】
非信号転写領域16には表面凹凸パターンがないので、本明細書で言う「パターン線幅及びパターンピッチ」は信号転写領域15のパターン線幅及びパターンピッチである。
【0024】
図2(b)に示す如く、転写用原盤10の信号転写領域15は周方向断面視、被転写体13に転写する信号パターンに対応した表面凹凸パターンP1を有する金属製の転写用原盤基板(マスタ基板)11と、その表面形状に沿って積層され、複数の周方向凹凸パターンXからなる表面凹凸パターンPSを有する磁性層12とから構成されている。
【0025】
被転写体13としては、片面又は両面に磁気記録層(図示略)を有するディスク状のスレーブ媒体が使用される。図2(a)に示すように、あらかじめ被転写体13に対して周方向又は厚み方向に磁界Hinを印加し、磁気記録層(図示略)を初期磁化させる(周方向に磁界Hinを印加した場合について図示してある)。この状態で被転写体13を転写用原盤10の表面に供給し、両者を密着させる。次に、図2(b)に示すように、密着させた転写用原盤10及び被転写体13に対して初期磁化方向と略反対方向に転写用磁界Hduを印加する。この際、転写用磁界Hduは、転写用原盤10において、被転写体13と密着した磁性層12の凸部12aにのみ略選択的に吸い込まれる。その結果、面内記録の場合、被転写体13の磁気記録層では、凸部12aに密着した部分の初期磁化は反転せずその他の部分の初期磁化が反転する。垂直記録の場合には逆に、被転写体13の磁気記録層では、凸部12aに密着した部分の初期磁化が反転しその他の部分の初期磁化は反転しない。このようにして、転写用原盤10の表面凹凸パターンPSに対応した磁化パターンが被転写体13に磁気転写され、磁気記録媒体が製造される。
【0026】
「転写用原盤基板の型の製造方法、転写用原盤の製造方法」
次に、図3に基づいて、上記転写用原盤10を製造する場合を例として、本発明に係る実施形態の転写用原盤基板の型の製造方法、及び転写用原盤の製造方法について説明する。図3は図2と同様の周方向厚み断面図である。
【0027】
(転写用原盤基板の型の製造方法)
<工程(A)>
はじめに、図3(a)に示す如く、平坦基板20を用意し、その表面全体にスピンコート法等によりポジ型又はネガ型のレジスト31を塗布する。平坦基板20としては制限されず、以下の工程において半導体技術で使用される装置をそのまま利用できることから、シリコンウエハが好ましく用いられる。
【0028】
次に、レジスト31の露光及び現像を実施し、転写用原盤基板11に形成する表面凹凸パターンP1(転写用原盤10の表面凹凸パターンPS)に対応した図3(b)に示すレジストパターンR1を形成する。レジストパターンR1は、径方向の異なる位置に、転写用原盤10の周方向凹凸パターンXに対応した複数の周方向凹凸パターン(図示略)を有するパターンであり、内周側から外周側に向けて周方向凹凸パターンのパターン線幅及びパターンピッチが次第に大きくなるパターンである。本実施形態では、露光条件等を調整して、レジストパターンR1をなす各周方向凹凸パターンのパターン線幅が所望線幅より大きくなるよう、レジストパターンR1を形成する。
【0029】
レジスト31の露光は、平坦基板20を回動させながらレジスト31に対してレーザ光又は電子線を走査し照射することで、実施できる。レーザ光又は電子線は、用いるレジスト31の種類に応じて、製造される転写用原盤基板11の型において凸部となる部分にレジスト31が残るよう照射する。露光後現像前には、必要に応じて熱処理(PEB:Post Exposure Bake)を実施する。
【0030】
レジスト31としては制限されず、高感度かつ高解像度を有し高精細パターンを形成できることから、化学増幅型レジストが好ましく用いられる。化学増幅型レジストは、電子線等による露光で酸が発生し、露光後に熱処理(PEB)することで発生した酸を触媒としてレジスト反応が進行するものである。
【0031】
<工程(B)>
工程(A)で形成されたレジストパターンR1のパターン線幅Wxを、径方向位置の異なるn箇所(nは2以上の整数)で測定する。すなわち、レジストパターンR1をなすn個の周方向凹凸パターン(図示略、転写用原盤10の周方向凹凸パターンXに対応)のパターン線幅Wxを求める。好ましくは、レジストパターンR1に対して、少なくとも径方向位置が最内端(パターン線幅最小)、最外端(パターン線幅最大)、及び最内端と最外端との中心である3箇所についてパターン線幅Wxを測定する。パターン線幅Wxは、臨界寸法(Critical dimension)を測定可能な走査型電子顕微鏡(CD−SEM)等を用いて測定することができる。
【0032】
本実施形態では、工程(A)において、レジストパターンR1をなす各周方向凹凸パターンのパターン線幅が所望線幅より大きくなるようレジストパターンR1を形成することを述べた。上記測定を実施した後、個々の測定線幅WxについてWxより小さい所望線幅WdxとのずれDx=(Wx−Wdx)を求め(xは測定箇所の番号を示す整数、x=1〜n)、すべての測定箇所のずれDx(x=1〜n)の平均値Dave=ΣDx/nを求める。
【0033】
例えば、径方向位置が最内端(x=1)、最外端(x=2)、及び最内端と最外端との中心(x=3)の3箇所についてパターン線幅W1、W2、W3を測定する場合、個々の箇所における所望線幅とのずれ、すなわちD1=(W1−Wd1)、D2=(W2−Wd2)、D3=(W3−Wd3)を求め、すべての測定箇所のずれの平均値Dave=(D1+D2+D3)/3を求める。
【0034】
<工程(C)>
次に、図3(c)に示す如く、工程(A)で形成したレジストパターンR1に対して、パターン線幅がずれの平均値Dave分細くなる条件で選択的エッチング(トリミングやアッシング等)を実施し、レジストパターンR2とする。
【0035】
パターン線幅の測定箇所xでは、パターン線幅Wxが所望線幅Wdx又はそれに近いものとなる。パターン線幅Wxは複数箇所で測定しているので、レジストパターンR1全体のパターン線幅と所望線幅とのずれが良好に補正され、レジストパターンR2全体のパターン線幅が所望線幅又はそれに近いものとなる。
【0036】
特に、少なくとも径方向位置が最内端(パターン線幅最小)、最外端(パターン線幅最大)、及び最内端と最外端との中心である3箇所についてパターン線幅Wxを測定することで、レジストパターンR1の全体的なパターン線幅と所望線幅とのずれの傾向が補正に反映されることになり、レジストパターンR2全体のパターン線幅を所望線幅又はそれに極めて近いものとすることができる。
【0037】
選択的エッチングは例えば、CF、O、Ar、He、Xe等のガスを用いた、後記エッチング工程(D)よりも低出力条件のプラズマドライエッチングにより実施できる。レジストパターンR1の選択的エッチングに際して、平坦基板20は基本的にはエッチングされないが、後記凹部21が形成されない範囲内で多少エッチングされることは差し支えない。
【0038】
例えば、レジストパターンR1の選択的エッチング条件によるパターン線幅の減少量のデータをあらかじめ取得しておき、このデータに基づいて、レジストパターンR1の選択的エッチング条件を決定することで、パターン線幅がずれの平均値Dave細くなるよう選択的エッチングを実施することができる。
【0039】
<工程(D)>
次に、図3(d)に示す如く、工程(C)で形成したレジストパターンR2をマスクとして平坦基板20をエッチングし、平坦基板20に凹部21を形成する。凹部21は製造される型を用いて得られる転写用原盤基板11の凸部となる部分である。エッチング方法としては制限なく、高精細エッチングが可能なことからドライエッチングが好ましく、特にRIE(リアクティブ・イオン・エッチング)等のプラズマドライエッチングが好ましい。
【0040】
エッチング終了後、図3(e)に示す如く、酸素プラズマアッシング等を実施して残存するレジスト31を除去する。工程(D)終了後、表面凹凸パターンP1と補完的な反転パターンP2を有する型40が製造される。反転パターンP2は、表面凹凸パターンP1の凸部に対応する部分が凹部21、表面凹凸パターンP1の凹部に対応する部分が凸部22のパターンである。
【0041】
(転写用原盤の製造方法)
<工程(E)>
図3(f)に示す如く、転写用原盤基板の型40の上に転写用原盤基板11を成形する。転写用原盤基板11は、型40の表面全体に金属スパッタリング等により導電層51を成膜しその後電鋳を実施することで成形できる。導電層51は、反転パターンP2が壊れないよう薄く成膜する。導電層51は転写用原盤基板11と同一材質(例えばニッケル)で成膜することが好ましい。導電層51は電鋳により転写用原盤基板11の一部となる。
【0042】
<工程(F)>
次に、図3(g)に示す如く、転写用原盤基板11を型40から剥離し、転写用原盤基板11が製造される。
【0043】
上記工程(E)と(F)を繰り返し実施することで、1つの型40から複数の転写用原盤基板11を簡易に効率よく製造できる。
【0044】
<工程(G)>
成形された転写用原盤基板11の表面に磁性材料をスパッタリングするなどして、転写用原盤基板11の表面形状に沿って磁性層12を積層し、図1及び図2(b)に示した転写用原盤10が完成する。磁性層12は、少なくとも転写用原盤基板11の表面凸部の上に成膜すればよい。転写用原盤10の製造にあたっては、磁性層12の他、必要に応じて他の層を成膜することができる。例えば、転写用原盤基板11と磁性層12との間に非磁性層を介在させたり、磁性層12の上に保護層を設けることができる。
【0045】
本実施形態の転写用原盤基板の型40の製造方法では、平坦基板20へのレジスト31の塗布、露光及び現像を実施して、所望線幅より大きいパターン線幅のレジストパターンR1を形成し(工程(A))、このレジストパターンR1のパターン線幅を径方向位置の異なるn箇所で測定し、個々の測定線幅Wxについて所望線幅WdxとのずれDxを求め、すべての測定箇所のずれDxの平均値Daveを求め(工程(B))、レジストパターンR1に対して、パターン線幅がずれの平均値Dave分細くなる条件で選択的エッチングを実施してレジストパターンR2とし(工程(C))、レジストパターンR2をマスクとして平坦基板20をエッチングする(工程(D))構成としている。
【0046】
かかる構成では、レジストパターンR1の形成条件(レジスト31の塗布、露光、現像の条件)が製造ごとに多少ばらついても、エッチング工程(D)においてマスクとして機能するレジストパターンR2全体のパターン線幅を、常に所望線幅又はそれに近いものとすることができる。エッチング工程(D)においてマスクとして機能するレジストパターンR2のパターン線幅の製造ごとのばらつきが抑えられるので、平坦基板20のエッチング幅の製造ごとのばらつきが抑えられ、転写用原盤基板の型40のパターン線幅の製造ごとのばらつきが抑えられる。
【0047】
本実施形態の製造方法により製造される転写用原盤基板の型40を用いることで、転写用原盤10の表面凹凸パターンPSのパターン線幅が型40によってばらつくことが抑えられ、転写パターンのさらなる高精細化が進んでも高精度転写を実施可能な転写用原盤10を安定的に提供することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の技術は、被転写体の表面に所定の信号パターンを磁気転写するために使用される転写用原盤に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】転写用原盤の平面図
【図2】(a)、(b)は転写用原盤の周方向断面図と磁気転写方法を示す図
【図3】(a)〜(g)は本発明に係る実施形態の転写用原盤基板の型の製造方法、及び転写用原盤の製造方法を示す工程図
【符号の説明】
【0050】
10 転写用原盤
11 転写用原盤基板
12 磁性層
13 被転写体
20 平坦基板
21 凹部
31 レジスト
40 転写用原盤基板の型
P1 転写用原盤基板の表面凹凸パターン
P2 反転パターン
PS 転写用原盤の表面凹凸パターン
X 転写用原盤の表面凹凸パターンをなす周方向凹凸パターン
R1 工程(A)後のレジストパターン
R2 工程(C)後のレジストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被転写体の表面に所定の信号パターンを磁気転写するために使用され、前記信号パターンに応じた表面凹凸パターンを有する転写用原盤基板の上に少なくとも磁性層が積層されてなるディスク状の転写用原盤の前記転写用原盤基板を成形する型の製造方法において、
平坦基板へのレジストの塗布、露光及び現像を実施して、径方向の異なる位置に周方向に延びる複数の凹凸パターンを有するレジストパターンを形成する工程(A)と、
前記レジストパターンのパターン線幅を、径方向位置の異なるn箇所(nは2以上の整数)で測定し、個々の測定線幅WxについてWxより小さい所望線幅WdxとのずれDx=(Wx−Wdx)を求め(xは測定箇所の番号を示す整数、x=1〜n)、すべての測定箇所のずれDx(x=1〜n)の平均値Dave=ΣDx/nを求める工程(B)と、
前記レジストパターンに対して、前記パターン線幅がずれの平均値Dave分細くなる条件で選択的エッチングを実施する工程(C)と、
前記レジストパターンをマスクとして前記平坦基板をエッチングし、エッチング部分を凹部とする、前記表面凹凸パターンと補完的な反転パターンを形成する工程(D)とを順次有することを特徴とする転写用原盤基板の型の製造方法。
【請求項2】
前記工程(B)においては、前記レジストパターンに対して、少なくとも径方向位置が最内端、最外端、及び該最内端と該最外端との中心である3箇所について前記パターン線幅の測定を実施することを特徴とする請求項1に記載の転写用原盤基板の型の製造方法。
【請求項3】
前記レジストパターンの選択的エッチング条件によるパターン線幅の減少量のデータをあらかじめ取得しておき、該データに基づいて、前記工程(C)の前記選択的エッチング条件を決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の転写用原盤基板の型の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の転写用原盤基板の型の製造方法により製造された型を用いて転写用原盤基板を成形し、該転写用原盤基板の表面に少なくとも磁性層を積層することを特徴とする転写用原盤の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の転写用原盤の製造方法により製造されたものであることを特徴とする
転写用原盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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