説明

転写用原盤基板の型、及びその製造方法

【課題】 転写用原盤基板の型の製造方法において、転写用原盤と被転写体との密着性を高めることを可能とする。
【解決手段】 被転写体の表面に所定の信号パターンを磁気転写するために使用され、転写用原盤基板の上に少なくとも磁性層が積層された構造を有し、信号パターンに応じた表面凹凸パターンを有する複数の信号転写領域と、隣接する該信号転写領域の間に位置し、表面凹凸パターンを有しない非信号転写領域とを有する転写用原盤の転写用原盤基板を成形する型の製造方法において、信号転写領域に対応する領域21に、信号パターンに応じた表面凹凸パターンと補完的な反転パターンP3を有する表面凹凸基板50を調製する工程(A)と、表面凹凸基板50の非信号転写領域に対応する領域31に、信号パターンに応じた表面凹凸パターンの凸部の高さより大きい厚さの金属マスク52を密着固定する工程(B)とを順次実施する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被転写体の表面に所定の信号パターンを磁気転写するために使用される転写用原盤を構成する転写用原盤基板の型の製造方法、転写用原盤基板の型、及び該型を用いた転写用原盤基板の製造方法、転写用原盤基板、転写用原盤、並びに磁気記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録媒体の製造技術として、所定の表面凹凸パターンを有し、少なくとも表面が磁性を有する転写用原盤(マスタ担体)を用い、該転写用原盤の表面に、被転写体(スレーブ媒体)を密着させて、被転写体に転写用原盤の表面凹凸パターンに応じた信号パターンを磁気転写する技術がある。
【0003】
転写用原盤としては、表面凹凸パターンを有する転写用原盤基板(マスタ基板)の上に磁性層が積層されたものが広く使用されている。また、転写用原盤基板は、転写用原盤基板の反転パターンを有する型を用いて効率よく製造される。
【0004】
特許文献1には、転写用原盤基板の型の製造方法として、平坦基板の表面に、フォトレジストの塗布・露光・現像を実施してレジストパターンを形成し、このレジストパターンをマスクとして、平坦基板をエッチングし、さらに残存レジストを除去し、エッチングされた部分を凹部とする反転パターンを有する型を製造する方法が開示されている。
【0005】
また、同文献には、上記型を用いて転写用原盤基板を成形し、得られた転写用原盤基板の上に磁性層を成膜して転写用原盤を製造する方法が開示されている。
【特許文献1】特開2001−256644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記先行技術で製造される転写用原盤を用いて磁気転写を行う場合、転写用原盤と被転写体との間にはほとんど間隙がないため、転写用原盤と被転写体との間に介在する空気等のガスが抜けにくく、転写用原盤と被転写体との密着性が低下する恐れがある。
【0007】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、磁気転写を行うに際して、転写用原盤と被転写体との間に介在する空気等のガスを抜けやすくし、転写用原盤と被転写体との密着性を高めることが可能な転写用原盤の製造技術を提供することを目的とするものである。
【0008】
本発明はまた、上記製造技術を適用して得られる転写用原盤及び磁気記録媒体を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
転写用原盤は、表面全面に渡って、被転写体に転写する信号パターンに応じた表面凹凸パターンを有するのではなく、信号パターンに応じた表面凹凸パターンを有する信号転写領域と、表面凹凸パターンを有しない非信号転写領域とを有する。本発明者は、転写用原盤の非信号転写領域に、被転写体と密着する際にガスが抜ける凹部を設けることで、上記課題が解決し得ることに着目した。本発明者はさらに、このような転写用原盤を効率よく製造し得る転写用原盤の製造技術を鋭意検討し、本発明を完成した。
【0010】
本発明の転写用原盤基板の型の製造方法は、被転写体の表面に所定の信号パターンを磁気転写するために使用され、転写用原盤基板の上に少なくとも磁性層が積層された構造を有し、前記信号パターンに応じた表面凹凸パターンを有する複数の信号転写領域と、隣接する該信号転写領域の間に位置し、前記表面凹凸パターンを有しない非信号転写領域とを有する転写用原盤の前記転写用原盤基板を成形する型の製造方法において、
前記信号転写領域の前記表面凹凸パターンと補完的な反転パターンを有する表面凹凸基板を調製する工程(A)と、前記表面凹凸基板の前記非信号転写領域に対応する領域に、前記表面凹凸パターンの凸部の高さより大きい厚さの金属マスクを密着固定する工程(B)とを有することを特徴とする。
【0011】
本明細書において、「反転パターン」とは、信号パターンに応じた表面凹凸パターンの凸部に対応する部分が凹部、同表面凹凸パターンの凹部に対応する部分が凸部のパターンである。
【0012】
前記工程(A)には、平坦基板へのフォトレジストの塗布、露光及び現像を実施して、レジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクとして、前記平坦基板をエッチングし、エッチングされた部分を凹部とする前記反転パターンを有する前記表面凹凸基板を調製する工程とが含まれることが好ましい。
【0013】
本発明の転写用原盤基板の型は、上記の本発明の転写用原盤基板の型の製造方法により製造されたことを特徴とする。
【0014】
本発明の転写用原盤基板の製造方法は、上記の本発明の転写用原盤基板の型の製造方法により製造された型を用いて、前記金属マスク部分を凹部とする転写用原盤基板を成形することを特徴とする。
【0015】
本発明の転写用原盤基板は、上記の本発明の転写用原盤基板の製造方法により製造されたことを特徴とする。
【0016】
本発明の転写用原盤は、上記の本発明の転写用原盤基板の表面に、少なくとも磁性層が積層されてなることを特徴とする。
【0017】
本発明の磁気記録媒体は、上記の本発明の転写用原盤を用いて、磁気転写されたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の転写用原盤の製造技術では、転写用原盤基板の型を製造するに際して、転写する信号パターンに応じた表面凹凸パターンの反転パターンを有する表面凹凸基板を調製した後、該表面凹凸基板の非信号転写領域に対応する領域に、表面凹凸パターンの凸部の高さより大きい厚さの金属マスクを密着固定する構成を採用している。したがって、本発明によれば、非信号転写領域に、被転写体に転写する信号パターンに応じた表面凹凸パターンの凸部の高さより深い凹部を有する転写用原盤を簡易に効率よく製造することができる。
【0019】
本発明の転写用原盤の製造技術により製造される転写用原盤では、非信号転写領域に形成される上記凹部が、磁気転写を行うに際して、転写用原盤と被転写体との間に介在する空気等のガスが抜けるガス抜き流路として機能するので、磁気転写を行うに際して、転写用原盤と被転写体との密着性を高めることができる。
【0020】
また、転写用原盤には広範囲に上記凹部が形成されているので、転写用原盤と被転写体との間に塵埃等が介在しても、その多くは凹部内に存在することとなり、塵埃等が転写用原盤と被転写体との接触面に介在する確率を、従来に比して著しく小さくすることができる。そのため、本発明によれば、間に介在する塵埃等による転写用原盤及び被転写体の傷付き等を高レベルに抑えられるという効果も得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
次に、図面を参照し、本発明に係る実施形態について説明する。各図においては、視認しやすくするため、実際のものとは縮尺を異ならせてある。
【0022】
「転写用原盤」
本発明は特に「転写用原盤基板の型」の製造方法が特徴的であるが、はじめに、本発明の転写用原盤基板の型を用いて製造される転写用原盤の実施形態について説明する。図1は転写用原盤の全体平面図、図2は転写用原盤のトラック方向厚み断面図である。
【0023】
図1に示す如く、転写用原盤10は平面視、中心部に開口部を有するディスク状物であり、被転写体に転写する信号パターンに応じた微細な表面凹凸パターンP1を有する複数の信号転写領域20と、隣接する信号転写領域20の間に位置し、表面凹凸パターンP1を有しない非信号転写領域30とを有する(表面凹凸パターンP1は図2を参照)。本実施形態では、複数の信号転写領域20は中心部側から放射状に延び、隣接する信号転写領域20の間に、略扇形の非信号転写領域30がある。すなわち、転写用原盤10は、トラック方向視、信号転写領域20と非信号転写領域30とを繰り返し有する。
【0024】
図2(b)に示す如く、転写用原盤10の信号転写領域20は、断面視、被転写体に転写する信号パターンに応じた表面凹凸パターンP1と略同じ表面凹凸パターンP2を有する金属製の転写用原盤基板(マスタ基板)11と、その表面形状に沿って積層され、表面凹凸パターンP1を有する磁性層12とを備えている。
【0025】
図2(c)に示す如く、転写用原盤10の非信号転写領域30は、断面視、信号転写領域20と同様、転写用原盤基板11と磁性層12との積層構造を有する。ただし、表面凹凸パターンP1を有さず、表面は平坦である。また、図2(a)に示す如く、転写用原盤10の各非信号転写領域30には、全体に渡って、信号転写領域20の表面凹凸パターンP1をなす磁性層12の凸部12aの高さH1より深い凹部32(深さ:H2)が設けられている。つまり、非信号転写領域30の表面は、凹部32の底面に相当し、この面が表面凹凸パターンP1を有しない平坦面となっている。
【0026】
本実施形態では、非信号転写領域30に、信号転写領域20の表面凹凸パターンP1の凸部12aの高さH1より深い凹部32が設けられていることが特徴的である。「背景技術」の項で挙げた先行技術(特許文献1)で製造される転写用原盤では、非信号転写領域の表面は、信号転写領域の表面凹凸パターンをなす凹部の底面と面一となるのに対し(図2(a)の符号33で示す面に相当)、本実施形態では、非信号転写領域30の表面は、信号転写領域20の表面凹凸パターンP1をなす凹部12bの底面より、深さH2下方に位置する。
【0027】
非信号転写領域30に設けられる凹部32は、磁気転写を行うに際して、転写用原盤10と被転写体との間に介在する空気等のガスが抜けるガス抜き流路として機能する。凹部32の深さH2(ここでは、信号転写領域20の表面凹凸パターンP1をなす凹部12bの底面と、凹部32の底面との差(後記する金属マスク52の厚さに相当)と定義する。)は、少なくとも信号転写領域20の磁性層12の凸部12aの高さH1より深く設定される。
【0028】
例えば、転写用原盤基板11の最大厚さが300μmの場合、磁性層12の凸部12aの高さH1は、50〜100nm(0.05〜0.1μm)が好ましい。凹部32の深さH2は、大きくなる程、ガス抜き効率が向上するが、型からの剥離性は低下する傾向にある。したがって、ガス抜き効率と型からの剥離性のバランスを考慮すれば、転写用原盤基板11の最大厚さが300μmの場合、凹部32の深さH2は、10〜200μmが好ましく、50〜150μmがより好ましい。
【0029】
本実施形態の転写用原盤10は以上のように構成されている。
【0030】
「磁気転写方法」
次に、図3に基づいて、上記転写用原盤10を用いた磁気転写方法について説明する。図3は図2(b)に対応する図である。
【0031】
被転写体としては、片面又は両面に磁気記録層を有するスレーブ媒体が使用される。図3(a)に示すように、あらかじめ、被転写体13に対して、トラック方向又は厚み方向に磁界Hinを印加し、磁気記録層(図示略)を初期磁化させる(トラック方向に磁界Hinを印加した場合について図示してある)。この状態で、被転写体13を転写用原盤10の表面に供給し、両者を密着させる。
【0032】
次に、図3(b)に示すように、密着させた転写用原盤10及び被転写体13に対して、初期磁化の方向と略反対方向に転写用磁界Hduを印加する。この際、転写用磁界Hduは、転写用原盤10において、被転写体13と密着した磁性層12の凸部12aにのみ略選択的に吸い込まれる。その結果、面内記録の場合、被転写体13の磁気記録層では、凸部12aに密着した部分の初期磁化は反転せず、その他の部分の初期磁化が反転する。垂直記録の場合には逆に、被転写体13の磁気記録層では、凸部12aに密着した部分の初期磁化が反転し、その他の部分の初期磁化は反転しない。このようにして、転写用原盤10の表面凹凸パターンP1に応じた磁化パターンが被転写体13に磁気転写され、磁気記録媒体が製造される。
【0033】
「転写用原盤の製造方法」
次に、図4〜図6に基づいて、上記転写用原盤10を例として、本発明に係る実施形態の転写用原盤基板の型の製造方法、転写用原盤基板の製造方法、及び転写用原盤の製造方法について説明する。図4は図2(b)に対応する拡大断面図、図5及び図6は図2(a)に対応する全体断面図であり、これらは工程図である。
【0034】
(転写用原盤基板の型の製造方法)
<工程(A)>
<工程(A−1)>
はじめに、図4(a)に示す如く、平坦基板40を用意し、該平坦基板40の表面全体に、スピンコート法等によりフォトレジスト51を塗布する。平坦基板40としては制限されない。ただし、平坦基板40としては、以下の工程において、半導体技術で使用される装置をそのまま利用できることから、シリコンウエハが好ましく用いられる。フォトレジスト51は、ポジ型とネガ型のいずれを用いてもよい。
【0035】
次に、フォトレジスト51の露光及び現像を実施し、複数の信号転写領域20に対応する領域に各々、転写用原盤10に形成する表面凹凸パターンP1に対応した、図4(b)に示すレジストパターンRを形成する。露光は、平坦基板40を回動させながら、フォトレジスト51に対して、転写用原盤10に形成する表面凹凸パターンP1に対応して変調したレーザ光又は電子ビームを照射することで、実施できる。レーザ光又は電子ビームは、用いるフォトレジスト51の種類に応じて、製造される転写用原盤基板11の型において凸部となる部分にフォトレジスト51が残るよう、照射する。
【0036】
<工程(A−2)>
次に、図4(c)に示す如く、レジストパターンRをマスクとして、平坦基板40をエッチングし、平坦基板40に凹部41を形成する。エッチング時にフォトレジスト51の一部が除去される場合もあるし、除去されない場合もある。いずれにせよ、エッチング終了後、図4(d)に示す如く、残存するフォトレジスト51を除去する。
【0037】
平坦基板40のエッチング方法としては、制限されない。ただし、高精細エッチングが可能で、平坦基板40のフォトレジスト51の形成されていない部分を略垂直にエッチングできることから、RIE(リアクティブ・イオン・エッチング)法等が好ましい。
【0038】
図4(a)〜(d)に示すフォトリソグラフィープロセスを経て、複数の信号転写領域20に対応する領域に各々、表面凹凸パターンP1と補完的な反転パターンP3を有する表面凹凸基板50が調製される。反転パターンP3は、表面凹凸パターンP1の凸部に対応する部分が凹部(41)、表面凹凸パターンP1の凹部に対応する部分が凸部(42)のパターンである。
【0039】
表面凹凸基板50は、図5(a)に示す如く、信号転写領域20に対応する領域21に反転パターンP3が形成され、非信号転写領域30に対応する領域31の表面が、反転パターンP3の凸部42の表面と面一なものである。つまり、表面凹凸基板50では、転写用原盤10の非信号転写領域30に設けられる凹部32に対応するものは、未形成である。
【0040】
<工程(B)>
次に、図5(b)に示す如く、表面凹凸基板50の非信号転写領域30に対応する領域31に、転写用原盤10の非信号転写領域30に設けられる凹部32の深さH2と同じ厚みの金属マスク52を密着固定し、転写用原盤基板の型60が完成する。金属マスク52は複数枚用いてもよいが、生産性を考慮すれば、表面凹凸基板50の複数の信号転写領域20に対応する領域21部分が開口した一枚の金属マスクを用いることが好ましい。
【0041】
金属マスク52の材質は制限されず、ニッケル等が好ましい。また、型60から転写用原盤基板11を剥離しやすくするため、金属マスク52は、表面を酸化処理してから、表面凹凸基板50に密着固定することが好ましい。金属マスク52を表面凹凸基板50に密着固定してから、金属マスク52の表面を酸化処理してもよい。
【0042】
金属マスク52の密着固定方法は、後工程(C)で導電層53を良好に成膜できれば特に制限されず、ボルトや冶具等を用いた機械的な固定や、接着剤を用いた接着固定等が挙げられる。
【0043】
(転写用原盤基板の製造方法)
次に、上記製造方法により製造された転写用原盤基板の型60を用いた転写用原盤基板11の製造方法について説明する。
【0044】
<工程(C)>
転写用原盤基板の型60の上に、転写用原盤基板11を形成する。転写用原盤基板11は、図6(a)、(b)に示す如く、型60の表面全体に金属スパッタリング等により、導電層53を成膜し、電鋳を実施することで、形成できる。導電層53は、反転パターンP3が壊れないよう、薄く成膜する。導電層53は、転写用原盤基板11と同一材質(例えば、ニッケル)で成膜することが好ましい。導電層53は、図6(b)に示す如く、転写用原盤基板11の表層となる。
【0045】
<工程(D)>
次に、転写用原盤基板11を型60から剥離し、図2に示したパターンの転写用原盤基板11が製造される。
【0046】
以上のようにして、転写用原盤基板の型60を用いて、金属マスク52部分を凹部32とする転写用原盤基板11を成形することができる。本実施形態によれば、上記工程(C)と(D)を繰り返し実施することで、1つの型60から複数の転写用原盤基板11を簡易に効率よく製造できる。
【0047】
(転写用原盤の製造方法)
<工程(E)>
上記製造方法により製造された転写用原盤基板11の表面に磁性材料をスパッタリングするなどして、転写用原盤基板11の表面形状に沿って磁性層12を積層し、転写用原盤10が完成する。磁性層12は、少なくとも転写用原盤基板11の表面凸部の上に成膜すればよい。
【0048】
転写用原盤10の製造にあたっては、磁性層12の他、必要に応じて他の層を成膜することができる。例えば、転写用原盤基板11と磁性層12との間に非磁性層を介在させたり、磁性層12の上に保護層を設けることができる。
【0049】
「磁気記録媒体」
上記の転写用原盤11を用いて、図3に示したように被転写体13に磁気転写を行うことで、磁気記録媒体が製造される。
【0050】
上記実施形態の転写用原盤10の製造技術では、転写用原盤基板の型60を製造するに際して、転写する信号パターンに応じた表面凹凸パターンP1の反転パターンP3を有する表面凹凸基板50を調製した後、表面凹凸基板50の非信号転写領域30に対応する領域31に、表面凹凸パターンP1の凸部12aの高さH1より大きい厚さの金属マスク52を密着固定する構成を採用している。したがって、上記実施形態によれば、非信号転写領域30に、被転写体13に転写する信号パターンに応じた表面凹凸パターンP1の凸部12aの高さより深い凹部32を有する転写用原盤10を簡易に効率よく製造することができる。
【0051】
上記実施形態の製造技術により製造される転写用原盤10では、非信号転写領域30に形成される凹部32が、磁気転写を行うに際して、転写用原盤10と被転写体13との間に介在する空気等のガスが抜けるガス抜き流路として機能するので、磁気転写を行うに際して、転写用原盤10と被転写体13との密着性を高めることができる。
【0052】
転写用原盤10には広範囲に凹部32が形成されているので、転写用原盤10と被転写体13との間に塵埃等が介在しても、その多くは凹部32内に存在することとなり、塵埃等が転写用原盤10と被転写体13との接触面に介在する確率を、従来に比して著しく小さくすることができる。そのため、上記実施形態によれば、間に介在する塵埃等による転写用原盤10及び被転写体13の傷付き等を高レベルに抑えられるという効果も得られる。
【0053】
また、転写用原盤10を用いることで、転写用原盤10と被転写体13との密着性が高まり、磁気転写精度が良好な磁気記録媒体が製造できる。
【0054】
なお、上記実施形態では、各非信号転写領域30の全体に渡って凹部32を設ける構成としたが、少なくとも一部の非信号転写領域30の少なくとも一部の領域に凹部32を設ける構成すれば、同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の技術は、被転写体の表面に所定の信号パターンを磁気転写するために使用される転写用原盤、及びこれを用いた磁気記録媒体に好ましく適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る実施形態の転写用原盤の全体平面図である。
【図2】図1の転写用原盤のトラック方向厚み断面図である。
【図3】磁気転写方法を示す図である。
【図4】本発明に係る実施形態の転写用原盤基板の型の製造方法を示す工程図である。
【図5】本発明に係る実施形態の転写用原盤基板の型の製造方法を示す工程図である。
【図6】本発明に係る実施形態の転写用原盤基板の製造方法を示す工程図である。
【符号の説明】
【0057】
10 転写用原盤
11 転写用原盤基板
12 磁性層
12a 表面凹凸パターンの凸部
13 被転写体
20 信号転写領域
21 信号転写領域に対応する領域
30 非信号転写領域
31 非信号転写領域に対応する領域
32 非信号転写領域の凹部
40 平坦基板
41 凹部
50 表面凹凸基板
52 金属マスク
60 転写用原盤基板の型
H1 表面凹凸パターンの凸部の高さ
H2 非信号転写領域の凹部の深さ
P1、P2 表面凹凸パターン
P3 反転パターン
R レジストパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被転写体の表面に所定の信号パターンを磁気転写するために使用され、転写用原盤基板の上に少なくとも磁性層が積層された構造を有し、前記信号パターンに応じた表面凹凸パターンを有する複数の信号転写領域と、隣接する該信号転写領域の間に位置し、前記表面凹凸パターンを有しない非信号転写領域とを有する転写用原盤の前記転写用原盤基板を成形する型の製造方法において、
前記信号転写領域の前記表面凹凸パターンと補完的な反転パターンを有する表面凹凸基板を調製する工程(A)と、
前記表面凹凸基板の前記非信号転写領域に対応する領域に、前記表面凹凸パターンの凸部の高さより大きい厚さの金属マスクを密着固定する工程(B)とを有することを特徴とする転写用原盤基板の型の製造方法。
【請求項2】
前記工程(A)には、
平坦基板へのフォトレジストの塗布、露光及び現像を実施して、レジストパターンを形成する工程と、前記レジストパターンをマスクとして、前記平坦基板をエッチングし、エッチングされた部分を凹部とする前記反転パターンを有する前記表面凹凸基板を調製する工程とが含まれることを特徴とする請求項1に記載の転写用原盤基板の型の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の転写用原盤基板の型の製造方法により製造されたことを特徴とする転写用原盤基板の型。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の転写用原盤基板の型の製造方法により製造された型を用いて、前記金属マスク部分を凹部とする転写用原盤基板を成形することを特徴とする転写用原盤基板の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の転写用原盤基板の製造方法により製造されたことを特徴とする転写用原盤基板。
【請求項6】
請求項5に記載の転写用原盤基板の表面に、少なくとも磁性層が積層されてなることを特徴とする転写用原盤。
【請求項7】
請求項6に記載の転写用原盤を用いて、磁気転写されたものであることを特徴とする磁気記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−127663(P2006−127663A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−315962(P2004−315962)
【出願日】平成16年10月29日(2004.10.29)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】