説明

転写調節因子

【課題】ブロモドメインを有する新規な転写調節因子およびその遺伝子、並びにこれらの製造方法およびこれらを利用した医薬品候補化合物のスクリーニング方法を提供する。
【解決手段】既知のブロモドメインモチーフをコードする種々の塩基配列を用い、ESTデーターベースに対してBLAST検索を行った結果、ブロモドメイン遺伝子をコードする可能性のある幾つかのESTを見出した。次いで、これらESTの一つであるEST(W17142)の配列を基にデザインしたプライマーを利用して精巣cDNAのPCRクローニングを行い、さらに該PCR産物をプローブとした精巣cDNAライブラリーのスクリーニングおよび得られたcDNAクローンをプローブとした精巣cDNAライブラリーの再スクリーニングにより、ESTW17142に対する全長cDNAを単離した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロモドメインを有する新規な転写調節因子およびその遺伝子に関する。
【背景技術】
【0002】
ブロモドメインは、転写調節因子に見られる特徴的なアミノ酸のモチーフであり、他の転写調節因子などとの相互作用に関与すると考えられている。ブロモドメインを有するタンパク質は、通常、1個または2個(Tamkun JW et al.(1992). Nuc. Acids. Res., 20, 2603、Haynes SR et al. (1992). Nuc. Acids. Res., 20, 2603)、あるいは5個(Nicolas RH and Goodwin GH. (1996). Gene, 175 (12), 233-240)のブロモドメインモチーフを含んでいる。このモチーフの見られる動物は広範囲にわたっており、例えば、ショウジョウバエ(drosophila)におけるホメオ遺伝子(Digan ME et al.(1986). Dev. Biol., 114, 161-169、Tamkun JW et al.(1992). Cell, 68, 561-572)や酵母(Winston F et al.(1987). Genetics, 115, 649-656、Laurent BC et al.(1991). Proc. Nat. Acad. Sci., USA 88, 2687-2691)および哺乳動物(Denis GV, and Green MR.(1996). Genes and Devel., 10, 261-271、Yang X J et al.(1996). Nature, 382, 319-324)の転写調節遺伝子などで同定されている。最近の報告(Jeanmougin et al.(1997). Trends Biochem. Sci. 22, 151-153)によれば、13のヒトの遺伝子を含む37のブロモドメイン遺伝子がデータベースに登録されている。さらには59-63アミノ酸残基のブロモドメインモチーフに加え、モチーフに近接する配列も構造的に保存されており、それらはさらに長い110アミノ酸に4つのα-ヘリックス(Z, A, B および C)がコードされていることが報告されている。
【0003】
ブロモドメインを有する転写調節因子を比較すると、これらのすべては活発に増殖している細胞でシグナル依存性の転写を調節している(Tamkun JW et al.(1992). Cell, 68, 561-572、Haynes SR et al. (1992). Nuc. Acids. Res., 20, 2603)。この特徴は、ブロモドメインを有するタンパク質をコードする遺伝子の正常な制御が行われない場合に発癌する可能性があることを示唆している。現に6つのヒトブロモドメイン遺伝子との関連が実験的に証明されている。これら遺伝子の中の3つHRX/ALL-1 (Tkachuk et al.(1992). Cell, 71, 691-700、Gu et al.(1992) Cell, 71, 701-708)、TIF1 (Miki et al,(1991) Proc. Nat. Acad. Sci., 88,5167-5171、Le Douarin et al,(1995) EMBO J. 14, 2020-2033) やCBP (Borrow et al. (1996). Nature Genet., 14, 33-41) は白血病の遺伝子切断点と関連している。また、これらの3つのタンパク質は全てC4HC3 (別名PHD/LAP/TRX)ジンクフィンガー(Aasland et al.(1995). Trends Biochem. Sci., 20, 56-59、Koken et al,(1995). CR Acad. Sci. III, 318, 733-739、Saha et al.(1995). Proc. Nat. Acad. Sci.,92, 9737-9741)を保持している。さらに、CBP/P300はp53 (Gu et al.(1997) Nature 387, 819-823、Lill et al.(1997) Nature 387,823-827)や他の様々な転写因子と相互作用しそれらを制御しているという知見もあり、このことはCBPやそれに非常に相同性があるP300が癌においては鍵となる役割を担っていることを示唆するものである。
【0004】
他の3つの遺伝子は様々なかたちで癌との関連が示唆されている。BRG1は癌抑制遺伝子である網膜芽細胞腫タンパクRb (Dunaief et al.(1994) Cell 79, 119-130)と相互作用し、単層化し、増殖が停止した細胞の形成を誘導することによって癌抑制活性を示す。RING3は、ショウジョウバエ(Drosophila)成長制御タンパクfsh (Haynes et al.(1989). Dev. Biol., 134, 246-257)と相同性があり、核内自己リン酸化活性を有するセリン−スレオニンキナーゼである。この活性は慢性と急性リンパ性白血病での増殖期と関連があることが報告されている(Denis and Green,(1996). Genes and Devel., 10, 261-271)。P/CAFについては、E1A とp300/CBPとの相互作用を阻害することが知られている(Yang et al,(1996). Nature, 382, 319-324)。HeLa細胞でP/CAFを外来性に発現させると、細胞周期の進行が阻害される。これはすなわちP/CAFがp300/CBPへ結合することにより、E1Aの転写制御を乱してしまうというメカニズムに由来しているものと考えられる。またp300/CBP (Bannister and Kouzarides,(1996). Nature, 384, 641-643)と同様、P/CAFはヒストンアセチルトランスフェラーゼ活性を持つことも報告されている(Yang et al.(1996). Nature, 382, 319-324)。
【0005】
このようにプロモドメインを有する転写調節因子は、その調節異常が種々の疾患、特に、癌やその他の増殖性疾患と密接に関与していると考えられる。このためブロモドメインを有する転写調節因子は、癌やその他の増殖性疾患の治療のための新しい標的として近年注目されている。
【発明の概要】
【0006】
本発明はブロモドメインを有する新規な転写調節因子およびその遺伝子、並びにこれらの製造方法およびこれらを利用した医薬品候補化合物のスクリーニング方法を提供する。
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく、まず既知のブロモドメインモチーフをコードする種々の塩基配列を用い、ESTデーターベースに対してBLAST検索を行った。その結果、テトラヒメナ サーモフィラ(Tetrahymena thermophila)HAT A1 遺伝子の塩基配列を用いた検索により、ブロモドメイン遺伝子をコードする可能性のあるいくつかのESTを見出した。これらESTの一つである胎児肺cDNAライブラリー由来のEST(W17142)は、未知の遺伝子をコードしていた。そこで、次に、ESTW17142に対する全長cDNAの単離を試みた。具体的には、ESTW17142の配列を基にプライマーをデザインし、精巣のcDNAを鋳型にポリメラーゼ連鎖反応を行って増幅産物を得た。次いで、この増幅産物をプローブとして精巣cDNAライブラリーのスクリーニングを行い、さらに上記ESTの配列を有するcDNAクローンを用いたライブラリーの再スクリーニングを行った。その結果、ESTW17142に対する全長cDNAを単離することに成功した。また、本発明者らは、単離したcDNAがコードするタンパク質の構造につき解析を行い、該タンパク質がブロモドメイン以外に、転写調節因子に保存されたいくつかの領域やドメインを有することを見出した。
【0008】
また、本発明者等は、単離したcDNAがコードするタンパク質が、クロマチン介在転写制御機構の一連の過程に関与していることが示唆されるhSNF2HおよびhSNF2Lや、種々の核受容体(VDR、RAR)のリガンド結合ドメインやウィルス腫瘍タンパク質(oncoprotein)であるSkiと相互作用する転写コアクチベーターNCoA-62/Skipと相互作用することを見出した。
【0009】
本発明者等により見出された転写調節因子およびその遺伝子は、該転写調節因子とこれに相互作用する因子との結合の阻害する化合物やその活性を制御する化合物のスクリーニングへの利用が可能であり、このスクリーニングにより単離される化合物は医薬品への応用が期待される。
【0010】
即ち、本発明は、ブロモドメインを有する新規な転写調節因子およびその遺伝子、並びにそれらの製造およびそれらを利用した関連因子および医薬品候補化合物のスクリーニングに関し、より具体的には、
1. 配列番号:1または10に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質、
2. 配列番号:1または10に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなり、ブロモドメインを有する転写調節因子、
3. 配列番号:1または10に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなり、hSNF2H、hSNF2L、NCoA-62/Skipおよびそれらの他種相同体からなる群より選択されるタンパク質に結合する活性を有するタンパク質、
4. 配列番号:2または9に記載の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズするDNAがコードし、ブロモドメインを有する転写調節因子、
5. 配列番号:2または9に記載の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズするDNAがコードし、hSNF2H、hSNF2L、NCoA-62/Skipおよびそれらの他種相同体からなる群より選択されるタンパク質に結合する活性を有する転写調節因子、
6. (1)から(5)のいずれかに記載の転写調節因子をコードするDNA、
7. 配列番号:2または9に記載の塩基配列のコード領域を含む、(6)に記載のDNA、
8. (6)または(7)に記載のDNAを含むベクター、
9. (6)または(7)に記載のDNAを発現可能に保持する形質転換体、
10. (9)に記載の形質転換体を培養する工程を含む、(1)から(5)のいずれかに記載の転写調節因子の製造方法、
11. (1)から(5)のいずれかに記載の転写調節因子に結合する抗体、
12. (1)から(5)のいずれかに記載の転写調節因子に結合する活性を有する化合物のスクリーニング方法であって、
(a)該転写調節因子と被験サンプルとを接触させる工程、
(b)該転写調節因子と被験サンプルとの結合活性を検出する工程、
(c)該転写調節因子に結合する活性を有する化合物を選択する工程、を含む方法、
13. (1)から(5)のいずれかに記載の転写調節因子と、hSNF2H、hSNF2L、NCoA-62/Skipおよびそれらの他種相同体からなる群より選択されるタンパク質との結合を阻害または促進する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)被検サンプルの存在下で、該転写調節因子とhSNF2H、hSNF2L、NCoA-62/Skipまたはそれらの他種相同体とを接触させる工程、
(b)該転写調節因子とhSNF2H、hSNF2L、NCoA-62/Skipまたはそれらの他種相同体との結合活性を検出する工程、
(c)被検サンプル非存在下で検出した場合(対照)と比較して、該結合活性を低下または増加させる化合物を選択する工程、を含む方法、
14. (13)に記載の方法により単離しうる、(1)から(5)のいずれかに記載の転写調節因子と、hSNF2H、hSNF2L、NCoA-62/Skipおよびそれらの他種相同体からなる群より選択されるタンパク質との結合を阻害する化合物、
15. 配列番号:2または9に記載の塩基配列からなるDNAと特異的にハイブリダイズし、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するDNA、に関する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、「TCoA1」に同定されたドメインの配置を示す。図中の記号は、下記を示す。「CH4C3」;CH4C3 zincフィンガー、「bHLH」;塩基性へリックスループへリックス、「Q-rich」;グルタミンリッチ、「C2HC4」;C2HC4 zincフィンガー、「BDM」;ブロモドメイン、「↑」;LXXLLモチーフ。
【図2】図2は、Aは、染色体第17番に対するモノクロモソームハイブリットセルパネルをプライマーnb15Gとプライマーnb15Hを用いて解析した結果を示す。各々のハイブリッドを含むヒト染色体を示す。133bpの産物はヒト染色体第17番のモノクロモソームであるGM10498細胞系で特異的に増幅された。 Bは、染色体第17番上にある「TCoA1」の位置をGenebridge4放射ハイブリッドパネル解析によって決定した結果を示す。
【図3】図3は、「TCoA1」の正常組織における発現のノーザンブロット解析を示す電気泳動写真である。Aは「TCoA1」、Bはアクチンをプローブにフィルターをハイブリダイズした。また図の右側はサイズマーカーを示している。
【図4】図4.哺乳動物の2ハイブリッド解析系を用いて、TCoA1とhSNF2H、hSNF2L、およびNCoA-62/Skipとの相互作用を検出した結果を示す。
【図5】図5は、TCoA1のC末端領域とNCoA62/SKIP、hSNF2H 、またはhSNF2Lとの相互作用の地図を示す。
【図6】図6は、TCoA1とNCoA62/SKIP との相互作用地図を示す。相互作用最小領域(224-317位)を図下に示した。
【図7】図7は、TCoA1とhSNF2H との相互作用地図を示す。hSNF2Hの相互作用最小領域(921-1017位)を図下に示した。
【図8】図8は、TcoA1との相互作用に関連するタンパク質を示す。確認されていない相互作用を波線で示した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
なお、本発明において「転写調節因子」とは、遺伝子の発現を調節しているタンパク質を指す。また、「ブロモドメイン」とは、シグナル依存的な転写に関連している転写調節因子中で保存されているタンパク質-タンパク質相互作用に関与するアミノ酸のモチーフを指す。
【0013】
本発明は、ブロモドメインを有する新規な転写調節因子に関する。本発明の転写調節因子に含まれる、「TCoA1」と命名されたタンパク質のアミノ酸配列およびそのバリアントのアミノ酸配列をそれぞれ配列番号:1および10に、そのcDNAの塩基配列をそれぞれ配列番号:2および9に示す(以下、特に断らない限り、これらを併せて「TCoA1」と称する)。「TCoA1」は1つのコスミドF26H11のゲノム配列から同定された機能が未知の遺伝子である線虫(C. Elegans )染色体 III遺伝子F26H11.2, F26H11.3aおよびF26H11.3b (Wilson at al.,(1994) Nature, 368, 32-38)の推定タンパク質に最も深い関連がある。これら2つの推定される線虫タンパク質と「TCoA1」タンパク質のアミノ酸配列を比較すると、それらはドメインの配置は異なるものの非常に類似したタンパク質である。
【0014】
多くのブロモドメインタンパク質と同様に、「TCoA1」は一個所のブロモドメインを保持する。TIFファミリー、GCN5とP/CAFの構造と類似して、このドメインはカルボキシ末端に近接して存在する(Jeanmougin et al .(1997). Trends Biochem. Sci. 22, 151-153)。「TCoA1」には、他のブロモドメインタンパク質と同様に、C4HC3ジンクフィンガーが存在する。ブロモドメインとC4HC3ジンクフィンガーの組み合わせは、これまでいくつかの白血病の遺伝子切断点でしばしば発見されたものである(Tkachuk et al.(1992). Cell, 71, 691-700、Gu et al.(1992) Cell, 71, 701-708、Miki et al.(1991) Proc. Nat. Acad. Sci., 88,5167-5171、Le Douarin et al.(1995) EMBO J. 14, 2020-2033、Borrow et al. (1996). Nature Genet., 14, 33-41) 。従って、「TCoA1」は染色体第17番q23に関与する切断遺伝子の候補である。
【0015】
「TCoA1」には、核移行シグナルのモチーフが多数存在する。このことは「TCoA1」タンパク質が核内に局在することを示している。「TCoA1」には、他のブロモドメインタンパク質と同様に、核受容体と相互作用する部位を規定すると予測されるLXXLLモチーフのシリーズが存在する(Heery et al.(1997). Trends Biochem. Sci. 22, 151-153、Torchia et al.(1997). Nature 387, 677-684)。LXXLLドメインを介した、リガンドが結合した受容体との相互作用は、転写コアクチベクターとして「TCoA1」が機能することを示唆する。また、「TCoA1」のカルボキシ末端には非常に広範なグルタミンリッチなドメインが存在する。グルタミンリッチなドメインは、p300/CBP(Shikama et al.(1997) Trends in Cell Biol. 2, 230-236)やショウジョウバエ(drosophila)のfsh (Haynes et al.(1989). Dev. Biol., 134, 246-257)のようなブロモドメインを持つタンパク質を含め、多くの転写調節因子で同定されている。これらの酸性領域は、活性物質としての機能を規定するタンパク−タンパク相互作用に関与することが予測される(Courey et al.(1989) Cell 59, 827-836)。
【0016】
「TCoA1」タンパク質には、このように癌などの増殖性疾患に関連することが知られている他のブロモドメインタンパク質と共通した多くの特徴を有する。従って、「TCoA1」タンパク質もまた癌に関連していることが考えられ、「TCoA1」タンパク質やその遺伝子、「TCoA1」タンパク質の機能を調節する化合物などは、癌や他の増殖性疾患の治療や予防に応用しうる。
【0017】
また、「TCoA1」と相互作用するhSNF2HおよびhSNF2Lがクロマチン介在転写制御機構の一連の過程に関与していることから、該タンパク質がクロマチンが介在する転写制御においてなんらかの役割を果たすことを強く示唆するものである。従って、TCoA1はクロマチン再構成機構に関連することにより、核受容体への転写応答を統合するタンパク質として大きな役割を果していることが考えられる。
【0018】
本発明の転写調節因子は、当業者に公知の方法により、遺伝子組み換え技術を用いて調製される組み換えタンパク質として、また天然のタンパク質として調製することが可能である。組み換えタンパク質であれば、例えば、本発明の転写調節因子をコードするDNA(例えば、配列番号:2または9に記載の塩基配列を有するDNA) を適当な発現ベクターに組み込み、これを宿主細胞に導入して得た形質転換体から精製するなどの方法により調製することが可能である。また、天然のタンパク質であれば、例えば、調製した組み換えタンパク質を小動物に免疫することにより得た抗体を用いたカラムを調製し、本発明の転写調節因子の発現の高い組織や細胞(例えば、精巣や癌細胞など)の抽出物に対し該カラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーを行うなどの方法により調製することが可能である。
【0019】
本発明は、また、「TCoA1」タンパク質(配列番号:1または10)と機能的に同等な転写調節因子を包含する。このような転写調節因子には、「TCoA1」タンパク質(配列番号:1または10)の変異体や種々の生物由来の「TCoA1」タンパク質が含まれる。
【0020】
あるタンパク質と機能的に同等なタンパク質を単離する方法としては、タンパク質中のアミノ酸に変異を導入する方法が当業者によく知られている。即ち、当業者であれば、例えば、PCRによる部位特異的変異誘発システム(GIBCO-BRL社,Gaithersburg,Maryland)、オリゴヌクレオチドによる部位特異的変異誘発法(Kramer,W.and Fritz,HJ (1987) Methods in Enzymol.,154:350-367)などの方法を利用して、配列番号:1または10に記載の「TCoA1」タンパク質の機能に影響を与えないアミノ酸を適宜置換などして、「TCoA1」タンパク質と同等の機能を有する転写調節因子を単離することは通常行いうることである。また、タンパク質中のアミノ酸の変異は自然界においても生じることもある。本発明の転写調節因子には、配列番号:1または10に記載の「TCoA1」タンパク質のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなり、hSNF2H、hSNF2LやNCoA-62/Skipとの結合活性を有するタンパク質、および配列番号:1または10に記載の「TCoA1」タンパク質のアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなり、ブロモドメインを保持している転写調節因子が含まれる。
【0021】
変異するアミノ酸の個数は、「TCoA1」タンパク質の機能が保持される限り特に制限はないが、通常、50アミノ酸以内であり、好ましくは30アミノ酸以内であり、さらに好ましくは、10アミノ酸以内であり、さらに好ましくは3アミノ酸以内である。また、アミノ酸の変異部位も「TCoA1」タンパク質の機能が保持される限り特に制限はない。
【0022】
あるアミノ酸配列に対する1又は複数個のアミノ酸残基の欠失、付加及び/又は他のアミノ酸による置換により修飾されたアミノ酸配列を有するタンパク質がその生物学的活性を維持することはすでに知られている(Mark, D. F. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1984) 81, 5662-5666 、Zoller, M. J. & Smith, M. Nucleic Acids Research (1982) 10, 6487-6500 、Wang, A. et al., Science 224, 1431-1433 、 Dalbadie-McFarland, G. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1982) 79, 6409-6413 )。
【0023】
また、変異するアミノ酸残基においては、アミノ酸側鎖の性質が保存されている別のアミノ酸に変異されることが望ましい。例えばアミノ酸側鎖の性質としては、疎水性アミノ酸(A、I、L、M、F、P、W、Y、V)、親水性アミノ酸(R、D、N、C、E、Q、G、H、K、S、T)、脂肪族側鎖を有するアミノ酸(G、A、V、L、I、P)、水酸基含有側鎖を有するアミノ酸(S、T、Y)、硫黄原子含有側鎖を有するアミノ酸(C、M)、カルボン酸及びアミド含有側鎖を有するアミノ酸(D、N、E、Q)、塩基含有側鎖を有するアミノ離(R、K、H)、芳香族含有側鎖を有するアミノ酸(H、F、Y、W)を挙げることができる(括弧内はいずれもアミノ酸の一文字標記を表す)。
【0024】
「TCoA1」タンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1または10)に複数個のアミノ酸残基が欠失したタンパク質としては、例えば、hSNF2H、hSNF2L、NCoA-62/Skipまたはそれらの他種相同体との結合活性を有する「TCoA1」タンパク質の部分ペプチドが含まれる。実施例6(図5)に記載のように「TCoA1」タンパク質のN末端側アミノ酸残基には、hSNF2H、hSNF2L、NCoA-62/Skipまたはそれらの他種相同体との結合活性が存在する。このようなペプチドは、生体内において「TCoA1」タンパク質と上記したその結合タンパク質との結合を阻害し、「TCoA1」タンパク質の生体内での機能を阻害するために利用することが可能である。
【0025】
「TCoA1」タンパク質のアミノ酸配列(配列番号:1または10)に複数個のアミノ酸残基が付加されたタンパク質としては、例えば、「TCoA1」タンパク質を含む融合タンパク質が挙げられる。融合タンパク質は、「TCoA1」タンパク質と他のペプチド又はタンパク質とが融合したものであり、本発明に含まれる。融合タンパク質を作製する方法は、本発明の「TCoA1」タンパク質をコードするDNAと他のペプチド又はタンパク質をコードするDNAをフレームが一致するように連結してこれを発現ベクターに導入し、宿主で発現させればよく、当業者に公知の手法を用いることができる。本発明のタンパク質との融合に付される他のペプチド又はタンパク質としては、特に限定されない。
【0026】
本発明のタンパク質との融合に付される他のペプチドとしては、例えば、FLAG(Hopp, T. P. et al., BioTechnology (1988) 6, 1204-1210 )、6 個のHis (ヒスチジン)残基からなる6×His、10×His、インフルエンザ凝集素(HA)、ヒトc-myc の断片、VSV-GPの断片、p18HIVの断片、T7-tag、HSV-tag 、E-tag 、SV40T 抗原の断片、lck tag 、α-tubulinの断片、B-tag 、Protein C の断片等の公知のペプチドを使用することができる。また、本発明のタンパク質との融合に付される他のタンパク質としては、例えば、GST (グルタチオン−S−トランスフェラーゼ)、HA(インフルエンザ凝集素)、イムノグロブリン定常領域、β−ガラクトシダーゼ、MBP (マルトース結合タンパク質)等が挙げられる。
【0027】
市販されているこれらペプチドまたはタンパク質をコードするDNAを本発明のタンパク質をコードするDNAと融合させ、これれにより調製された融合DNAを発現させることにより、融合タンパク質を調製することができる。
【0028】
また、あるタンパク質と機能的に同等なタンパク質を単離するための他の方法としては、ハイブリダイゼーション技術(Sambrook,J et al.,Molecular Cloning 2nd ed.9.47-9.58,Cold Spring Harbor Lab.press,1989)を利用する方法が当業者によく知られている。即ち、当業者にとっては、ハイブリダイゼーション技術(Sambrook,J et al.,Molecular Cloning 2nd ed.9.47-9.58,Cold Spring Harbor Lab.press,1989)を用いて、配列番号:2に記載の「TCoA1」タンパク質をコードするDNA配列もしくはその一部を基に、これと相同性の高いDNAを単離して、該DNAから「TCoA1」タンパク質と機能的に同等な転写調節因子を得ることも通常行いうることである。本発明の転写調節因子には、配列番号:2に記載の「TCoA1」タンパク質をコードするDNAとハイブリダイズするDNAがコードし、ブロモドメインを有する転写調節因子も含まれる。機能的に同等な転写調節因子を単離するための生物としては、ヒト以外に、例えば、マウス、ラット、ウシ、サル、ブタなどが挙げられるが、これらに制限されない。機能的に同等な転写調節因子をコードするDNAを単離するためのハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、通常、「42℃、2xSSC、0.1% SDS」程度であり、好ましくは「50℃、2xSSC、0.1% SDS」程度、さらに好ましくは「65℃、2xSSC、0.1% SDS」程度と、温度を上げる程に高い相同性を有するDNAを得ることができる。但し、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度以外にも複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0029】
また、ハイブリダイゼーションにかえて、「TCoA1」タンパク質をコードする配列番号:9に記載のDNA配列の配列情報を基に合成したプライマーを用いる遺伝子増幅法、例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を利用して、「TCoA1」タンパク質と機能的に同等な転写調節因子をコードするDNAを単離することも可能である。
【0030】
これらハイブリダイゼーション技術または遺伝子増幅技術により単離されるDNAがコードするタンパク質は、通常、「TCoA1」タンパク質とアミノ酸配列において高い相同性を有する。高い相同性とは、「TCoA1」タンパク質とアミノ酸配列において、通常、40%以上の相同性、好ましくは60%以上の相同性、さらに好ましくは80%以上の相同性、さらに好ましくは95%以上の相同性を指す。タンパク質の相同性を決定するには、文献(Wilbur, W. J. and Lipman, D. J. Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1983) 80, 726-730)に記載のアルゴリズムにしたがえばよい。
【0031】
このようなハイブリダイゼーション技術や遺伝子増幅技術を利用して単離されるTcoA1タンパク質(配列番号:1または10)と機能的に同等な転写調節因子としては、TcoA1タンパク質(配列番号:1または10)と一次構造において高い相同性を有し、hSNF2H、hSNF2LやNCoA-62/Skipとの結合活性を有する転写調節因子、およびTcoA1タンパク質(配列番号:10)と一次構造において高い相同性を有し、癌に関連した機能の上で重要であると考えられるモチーフであるブロモドメインを保持している転写調節因子が含まれる。
【0032】
これら転写調節因子は、ブロモドメイン以外にも、他のタンパク質との相互作用に関与する配列(例えば、ロイシンジッパー、LXXLLモチーフ)、DNAとの結合などに関与する配列(例えば、ジンクフィンガー)、核移行シグナルなどを有しうる。
【0033】
タンパク質中のブロモドメインの存在は、DNASIS(日立ソフトウェアエンジニアリング社)上のブロモドメインモチーフPROSITEデーターベースを検索することにより決定することが可能である。
【0034】
また、本発明は、本発明の転写調節因子をコードするDNAに関する。本発明のDNAとしては、本発明の転写調節因子をコードしうるものであれば特に制限はなく、cDNA、ゲノムDNA、化学合成DNAなどが含まれる。また、本発明のタンパク質をコードしうる限り、遺伝暗号の縮重に基づく任意の塩基配列を有するDNAが含まれる。本発明のタンパク質をコードするcDNAは、例えば、本発明の転写調節因子をコードするDNAの配列情報(例えば、配列番号:9)を基にプライマーを調製し、プラークPCRを行うことにより調製することが可能である(例えば、文献「Affara NA et al (1994) Genomics,22,205-210」参照)。また、ゲノムDNAであれば、例えば、市販の「Qiagen genomic DNA kits」(Qiagen社,Hilden,Germany)を用いた方法により調製することが可能である。得られたDNAの塩基配列は、市販の「dye terminator sequencing kit」(Applied Biosystems社)などを用いて常法により決定することが可能である。本発明のDNAは、後述するように組み換えタンパク質の製造に用いられる他、遺伝子治療などへの応用が考えられる。
【0035】
また、本発明は、本発明のDNAが挿入されたベクターに関する。本発明のDNAが挿入されるベクターとしては特に制限はなく、本発明の転写調節因子を生体内で発現させるためのベクター、組み換えタンパク質を調製するためのベクターなど目的に応じて種々のベクターが用いられる。本発明の転写調節因子を生体内で発現させるため(特に遺伝子治療のため)に用いられるベクターとしては、各種ウイルスベクターや非ウイルスベクターが挙げられる。ウイルスベクターとしては、例えば、アデノウイルスベクター「pAdexLcw」やレトロウイルスベクター「pZIPneo」などが、非ウイルスベクターとしては、例えば、カチオニックリポソームなどが挙げられる。本発明の転写調節因子を生産する目的においてベクターを使用する場合には、特に、発現ベクターが有用である。発現ベクターとしては、例えば、大腸菌(E.coli)を用いる場合には「pREP4」(Qiagen 社,Hilden,Germany)などが、酵母を用いる場合には「SP-Q01」(Stratagene社,La Jolla,California)などが、昆虫細胞を用いる場合には「BAC-to-BAC baculovirus expression system」(GIBCO-BRL社,Gaithersburg,Maryland)などが好適であるが、これらに制限されない。また、哺乳動物細胞、例えば、CHO細胞、COS細胞、NIH3T3細胞などを用いる場合には、例えば、「LacSwitch II expression system」(Stratagene社,La Jolla,California)などが好適であるが、これらに制限されない。ベクターへの本発明のDNAの挿入は、常法により行うことができる。
【0036】
また、本発明は、本発明のDNAを発現可能に保持する形質転換体に関する。本発明の形質転換体には、本発明のDNAが挿入された上記ベクターを保持するもの、本発明のDNAが宿主ゲノム内に組み込まれているものなどが含まれるが、本発明のDNAを発現可能に保持している限り、その存在形態は問わない。本発明のベクターが導入される細胞としては特に制限はない。例えば、遺伝子治療目的の場合には、疾患に応じて、種々の細胞を標的細胞として用いることが可能である。また、本発明の転写調節因子を製造する目的の場合には、例えば、大腸菌、酵母、動物細胞、昆虫細胞などを宿主として用いることが可能である。細胞へのベクターの導入は、例えば、電気的穿孔法、熱ショックなどの公知の方法で行うことが可能である。
【0037】
組み換えタンパク質を製造するために作製した形質転換体からの該組み換えタンパク質の分離、精製は、常法により行うことが可能である。例えば、形質転換体を回収し、抽出物を得た後、イオン交換、逆相、ゲル濾過などのクロマトグラフィー、あるいは本発明のタンパク質に対する抗体をカラムに固定したアフィニティークロマトグラフィーにかけることにより、または、さらにこれらのカラムを複数組み合わせることにより目的のタンパク質を精製し、調製することが可能である。
【0038】
また、本発明のタンパク質をグルタチオンSトランスフェラーゼタンパク質との融合タンパク質として、あるいはヒスチジンを複数付加させた組み換えタンパク質として宿主細胞(例えば、動物細胞や大腸菌など)内で発現させた場合には、発現させた組み換えタンパク質はグルタチオンカラムあるいはニッケルカラムを用いて精製することができる。融合タンパク質の精製後、必要に応じて融合タンパク質のうち目的のタンパク質以外の領域を、トロンビンまたはファクターXaなどにより切断し、除去することも可能である。
【0039】
また、本発明は、本発明の転写調節因子に結合する抗体に関する。本発明の抗体の形態には、特に制限はなく、ポリクローナル抗体の他、モノクローナル抗体も含まれる。また、ウサギなどに本発明の転写調節因子を免疫して得た抗血清、すべてのクラスのポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体、さらに遺伝子組み換えによるヒト型化抗体、ヒト抗体も含まれる。本発明の抗体は、以下の方法により調製することが可能である。ポリクローナル抗体であれば、例えば、本発明の転写調節因子をウサギなどの小動物に免疫し血清を得て、これを本発明の転写調節因子をカップリングさせたアフィニティーカラムにより、本発明の転写調節因子のみを認識する画分を得て、さらにこの画分から免疫グロブリンGあるいはMを、プロテインA、あるいはプロテインGカラムにより精製することにより調製することができる。また、モノクローナル抗体であれば、本発明の転写調節因子をマウスなどの小動物に免疫を行い、同マウスより脾臓を摘出し、これをすりつぶして細胞にし、マウスミエローマ細胞とポリエチレングリコールなどの試薬により融合させ、これによりできた融合細胞(ハイブリドーマ)の中から、本発明の転写調節因子に対する抗体を産生するクローンを選択する。次いで、得られたハイブリドーマをマウス腹腔内に移植し、同マウスより腹水を回収し、得られたモノクローナル抗体を、例えば、硫安沈殿、プロテインA、プロテインGカラム、DEAEイオン交換クロマトグラフィー、本発明の転写調節因子をカップリングしたアフィニティーカラムなどにより精製することで調製することが可能である。本発明の抗体は、本発明の転写調節因子の精製や検出に用いられる他、本発明の転写調節因子の機能を抑制するための薬剤として用いることも可能である。抗体を薬剤として用いる場合には、免疫原性の点で、ヒト抗体またはヒト化抗体が有効である。ヒト抗体またはヒト化抗体は当業者に公知の方法により調製することができる。例えば、ヒト抗体は、免疫系をヒトと入れ換えたマウスに本発明の転写調節因子を免疫することにより調製することが可能である。また、ヒト化抗体は、モノクローナル抗体産生細胞から抗体遺伝子をクローニングし、その抗原決定部位を既存のヒト抗体に移植するCDRグラフト法により調製することが可能である。
【0040】
また、本発明は、本発明の転写調節因子に結合する化合物のスクリーニング方法に関する。本発明のスクリーニング法は、本発明の転写調節因子と被験サンプルとを接触させ、被験サンプルと本発明の転写調節因子との結合活性を検出し、本発明の転写調節因子に結合する活性を有する化合物を選択する工程を含む。スクリーニングに用いる被検サンプルとしては特に制限はなく、例えば、細胞抽出液、細胞培養上清、合成低分子化合物のライブラリー、精製タンパク質、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成ペプチドのライブラリーなどが挙げられる。
【0041】
本発明の転写調節因子を用いてこれに結合する化合物を単離する方法としては、例えば、以下の方法が当業者によく知られている。本発明の転写調節因子に結合するタンパク質のスクリーニングは、例えば、本発明の転写調節因子と結合するタンパク質を発現してることが予想される組織若しくは細胞(例えば、精巣組織細胞や癌細胞系など)よりファージベクター(λgt11, ZAPなど)を用いたcDNAライブラリーを作製し、これをLB-アガロース上で発現させフィルターに発現させたタンパク質を固定し、本発明の転写調節因子をビオチンラベル、あるいはGSTタンパク質との融合タンパク質として精製し、これを上記フィルターと反応させ、結合するタンパク質を発現しているプラークを、ストレプトアビジン、あるいは抗GST抗体により検出する「ウエストウエスタンブロッテイング法」(Skolnik EY, Margolis B, Mohammadi M, Lowenstein E, Fischer R, Drepps A, Ullrich A, and Schlessinger J (1991)Cloning of PI3 kinase-associated p85 utilizing a novel method for expression/cloning of target proteins for receptor tyrosine kinases. Cell 65, 83-90)により実施することが可能である。また、本発明の転写調節因子に結合するタンパク質またはその遺伝子のスクリーニングは、「2ハイブリッドシステム」(「MATCHMARKER Two-Hybrid System」,「Mammalian MATCHMAKER Two-Hybrid Assay Kit」,「MATCHMAKER One-Hybrid System」(いずれもclontech社)、「HybriZAP Two-Hybrid Vector System」(stratagene社)、文献「Dalton S, and Treisman R (1992) Characterization of SAP-1, a protein recruited by serum response factor to the c-fos serum response element. Cell 68, 597-612」)に従い実施することも可能である。2ハイブリッドシステムにおいては、本発明の転写調節因子をSRF結合領域またはGAL4結合領域と融合させて酵母細胞の中で発現させ、本発明の転写調節因子と結合するタンパク質を発現していることが予想される細胞より、VP16またはGAL4転写活性化領域と融合する形で発現するようなcDNAライブラリーを作製する。これを上記酵母細胞に導入し、検出された陽性クローンからライブラリー由来cDNAを単離する(酵母細胞内で本発明の転写調節因子と結合するタンパク質が発現すると、両者の結合によりレポーター遺伝子が活性化され、陽性のクローンが確認できる)。さらに、該cDNAを大腸菌に導入して、該cDNAによりコードされるタンパク質を発現させ、該タンパク質を回収することができる。
【0042】
本発明の転写調節因子に結合するタンパク質のスクリーニングは、さらに、本発明の転写調節因子を固定したアフィニティーカラムに本発明の転写調節因子と結合するタンパク質を発現していることが予想される細胞の培養上清もしくは細胞抽出物をのせ、カラムに特異的に結合するタンパク質を精製することにより実施することも可能である。
【0043】
また、固定した本発明の転写調節因子に、合成化合物、または天然物バンク、もしくはランダムファージペプチドディスプレイライブラリーを作用させ、結合する分子をスクリーニングする方法や、コンビナトリアルケミストリー技術によるハイスループットを用いたスクリーニング(Wrighton NC; Farrell FX; Chang R; Kashyap AK; Barbone FP; Mulcahy LS;Johnson DL; Barrett RW; Jolliffe LK; Dower WJ., Small peptides as potent mimetics of the protein hormone erythropoietin, Science (UNITED STATES) Jul 26 1996, 273 p458-64、Verdine GL., The combinatorial chemistry of nature. Nature (ENGLAND) Nov 7 1996, 384 p11-13、Hogan JC Jr.,Directed combinatorial chemistry. Nature (ENGLAND) Nov 7 1996, 384 p17-9)により本発明の転写調節因子に結合する、低分子化合物、タンパク質(またはその遺伝子)、ペプチドなどを単離する方法も当業者に周知の技術である。
【0044】
本発明において、結合した化合物を検出又は測定する手段として表面プラズモン共鳴現象を利用したバイオセンサーを使用することもできる。表面プラズモン共鳴現象を利用したバイオセンサーは本発明のタンパク質と被検化合物との間の相互作用を微量のタンパク質を用いてかつ標識することなく、表面プラズモン共鳴シグナルとしてリアルタイムに観察することが可能である(例えばBIAcore、Pharmacia製)。したがって、BIAcore等のバイオセンサーを用いることにより本発明のタンパク質と被験化合物との結合を評価することが可能である。
【0045】
また、本発明は、本発明の転写調節因子とこれに相互作用するタンパク質との結合を阻害または促進する化合物のスクリーニング方法に関する。本発明において、TcoA1タンパク質と、hSNF2H、hSNF2LおよびNCoA-62/Skipとの結合が検出されたことに基づき、このようなスクリーニングを行なうことが可能となった。このスクリーニングは、(a)被検サンプルの存在下で、本発明の転写調節因子とhSNF2H、hSNF2L、NCoA-62/Skipまたはそれらの他種相同体とを接触させる工程、(b)本発明の転写調節因子とhSNF2H、hSNF2L、NCoA-62/Skipまたはそれらの他種相同体との結合活性を検出する工程、および(c)被検サンプル非存在下で検出した場合(対照)と比較して、該結合活性を低下させる化合物を選択する工程、を含む方法により実施することが可能である。
【0046】
被検サンプルとしては特に制限はなく、例えば、細胞抽出液、細胞培養上清、合成低分子化合物のライブラリー、精製タンパク質、遺伝子ライブラリーの発現産物、合成ペプチドのライブラリーなどが挙げられる。また、上記の本発明のタンパク質に結合する化合物のスクリーニングにより単離された化合物を被検試料として用いることも可能である。
【0047】
また、スクリーニングに用いる本発明の転写調節因子としては、完全なタンパク質であっても、hSNF2H、hSNF2L、NCoA-62/Skipまたはそれらの他種相同体との結合領域を含む部分ペプチドであってもよい。また、スクリーニングに用いるhSNF2H、hSNF2L、NCoA-62/Skipまたはそれらの他種相同体としては、完全なタンパク質であってもよく、また、本発明の転写調節因子とのけ都合領域を含む部分ペプチドであってもよい。
【0048】
本発明の転写調節因子とhSNF2H、hSNF2L、NCoA-62/Skipまたはそれらの他種相同体との結合活性の検出は、例えば、以下のように行なうことができる。
【0049】
マイクロプレートに固定した本発明の転写調節因子に被験サンプルとhSNF2H、hSNF2L、NCoA-62/Skipまたはそれらの他種相同体を存在せしめ、hSNF2H、hSNF2L、NCoA-62/Skipまたはそれらの他種相同体 に対するマウスやウサギ抗体を反応させ、さらにペルオキシダーゼやアルカリフォスファターゼなどで標識した抗マウスあるいは抗ウサギ抗体を加えて反応させた後、標識した酵素の基質を添加し、その酵素活性を測定する。この酵素活性が、被検サンプルを添加しなかった場合において検出した酵素活性と比較して、低いまたは高い値を示すような化合物を選択する。これにより、本発明の転写調節因子とhSNF2H、hSNF2L、NCoA-62/Skipまたはそれらの他種相同体との間の結合を阻害または促進する活性を有する化合物を得ることができる。
【0050】
このスクリーニングは、固定するタンパク質をhSNF2H、hSNF2L、NCoA-62/Skipまたはそれらの他種相同体として、被験試料とともに加えるタンパク質を本発明の転写調節因子としてもよい。
【0051】
また、被験サンプルと加える本発明の転写調節因子あるいはhSNF2H、hSNF2L、NCoA-62/Skipまたはそれらの他種相同体を直接にペルオキシダーゼやアルカリフォスファターゼで標識したり、これらの酵素との融合タンパク質としたものを使用してもよい。また、これらの酵素に限らず、ルシフェラーゼやベータギャラクトシダーゼ、GFPタンパク質、などとの融合タンパク質として発現し、被験サンプルによるそれらの酵素活性の阻害あるいは促進を測定することにより本発明の転写調節因子とhSNF2H、hSNF2L、NCoA-62/Skipまたはそれらの他種相同体との間の結合を阻害または活性化する活性を有する化合物を選択することができる。
【0052】
また、本発明の転写調節因子とこれに相互作用するタンパク質との結合を阻害または促進する化合物のスクリーニングは、哺乳動物の2ハイブリッドシステム (Clontech, Palo Alto)を利用して行なうことができる。即ち、2ハイブリッドシステムを利用して、哺乳動物細胞内で本発明の転写調節因子とこれに相互作用するタンパク質とを発現させ、該哺乳動物細胞に被検サンプルを添加して、その後、レポーター活性を検出する。検出されたレポーター活性が、被検サンプルを添加しなかった場合において検出したレポーター活性と比較して、低いまたは高い値を示すような化合物を選択する。これにより、本発明の転写調節因子とhSNF2H、hSNF2L、NCoA-62/Skipまたはそれらの他種相同体 との間の結合を阻害または促進する活性を有する化合物を得ることができる。
【0053】
本発明のスクリーニングにより単離される化合物は、癌および他の増殖性疾患の治療や予防への応用が考えられる。単離される化合物をヒトや哺乳動物、例えばマウス、ラット、モルモット、ウサギ、ニワトリ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ、サル、マントヒヒ、チンパンジーの医薬として使用する場合には、単離された化合物自体を直接患者に投与する以外に、公知の製剤学的方法により製剤化して投与を行うことも可能である。例えば、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤として経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、又は懸濁液剤の注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、薬理学上許容される担体もしくは媒体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤などと適宜組み合わせて、一般に認められた製薬実施に要求される単位用量形態で混和することによって製剤化することが考えられる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
【0054】
錠剤、カプセル剤に混和することができる添加剤としては、例えばゼラチン、コーンスターチ、トラガントガム、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸のような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖又はサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油又はチェリーのような香味剤が用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記の材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用蒸留水のようなベヒクルを用いて通常の製剤実施に従って処方することができる。
【0055】
注射用の水溶液としては、例えば生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液、例えばD-ソルビトール、D-マンノース、D-マンニトール、塩化ナトリウムが挙げられ、適当な溶解補助剤、例えばアルコール、具体的にはエタノール、ポリアルコール、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤、例えばポリソルベート80(TM)、HCO-50と併用してもよい。
【0056】
油性液としてはゴマ油、大豆油があげられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールと併用してもよい。また、緩衝剤、例えばリン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液、無痛化剤、例えば、塩酸プロカイン、安定剤、例えばベンジルアルコール、フェノール、酸化防止剤と配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填させる。
【0057】
患者への投与は、例えば、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射などのほか、鼻腔内的、経気管支的、筋内的、または経口的に当業者に公知の方法により行いうる。投与量は、患者の体重や年齢、投与方法などにより変動するが、当業者であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。また、該化合物がDNAによりコードされうるものであれば、該DNAを遺伝子治療用ベクターに組込み、遺伝子治療を行うことも考えられる。投与量、投与方法は、患者の体重や年齢、症状などにより変動するが、当業者であれば適宜選択することが可能である。
【0058】
例えば、本発明のタンパク質と結合する化合物や本発明のタンパク質の活性を調節する化合物の投与量は、症状により差異はあるが、経口投与の場合、一般的に成人(体重60kgとして)においては、1日あたり約0.1から100mg、好ましくは約1.0から50mg、より好ましくは約1.0から20mgである。
【0059】
非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法によっても異なるが、例えば注射剤の形では通常成人(体重60kgとして)においては、1日あたり約0.01から30mg、好ましくは約0.1から20mg、より好ましくは約0.1から10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0060】
また、本発明は、「TCoA1」タンパク質をコードするDNAと特異的にハイブリダイズし、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するDNAに関する。ここで「特異的にハイブリダイズする」とは、通常のハイブリダイゼーション条件下、好ましくはストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、他のタンパク質をコードするDNAとクロスハイブリダイゼーションが有意に生じないことを指す。このようなDNAには、本発明のタンパク質をコードするDNA又は該DNAと相補的なDNAと特異的にハイブリダイズし得るプローブやプライマー、ヌクレオチド又はヌクレオチド誘導体(例えばアンチセンスオリゴヌクレオチドやリボザイム等)が含まれる。
【0061】
本発明は、例えば、配列番号:2または9に示される塩基配列中のいずれかの箇所にハイブリダイズするアンチセンスオリゴヌクレオチドを含む。このアンチセンスオリゴヌクレオチドは、好ましくは配列番号:2または9に示される塩基配列中の連続する少なくとも15個以上のヌクレオチドに対するアンチセンスオリゴヌクレオチドである。さらに好ましくは、前記連続する少なくとも15個以上のヌクレオチドが翻訳開始コドンを含む、前記のアンチセンスオリゴヌクレオチドである。
【0062】
アンチセンスオリゴヌクレオチドとしては、それらの誘導体や修飾体を使用することができる。このような修飾体として、例えばメチルホスホネート型又はエチルホスホネート型のような低級アルキルホスホネート修飾体、ホスホロチオエート修飾体又はホスホロアミデート修飾体等が挙げられる。
【0063】
ここでいう「アンチセンスオリゴヌクレオチド」とは、DNA又はmRNAの所定の領域を構成するヌクレオチドに対応するヌクレオチドが全て相補的であるもののみならず、DNA またはmRNAとオリゴヌクレオチドとが配列番号:9に示される塩基配列に特異的にハイブリダイズできる限り、1 又は複数個のヌクレオチドのミスマッチが存在していてもよい。
【0064】
このようなDNAとしては、少なくとも15個の連続したヌクレオチド配列領域で、少なくとも70% 、好ましくは少なくとも80% 、より好ましくは90% 、さらに好ましくは95% 以上の塩基配列上の相同性を有するものを示す。なお、相同性を決定するためのアルゴリズムは本明細書に記載したものを使用すればよい。このようなDNAは、後述の実施例に記載するように本発明のタンパク質をコードするDNAを検出若しくは単離するためのプローブとして、又は増幅するためのプライマーとして有用である。
【0065】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体は、本発明のタンパク質の産生細胞に作用して、該タンパク質をコードするDNA 又はmRNAに結合することにより、その転写又は翻訳を阻害したり、mRNA の分解を促進したりして、本発明のタンパク質の発現を抑制することにより、結果的に本発明のタンパク質の作用を抑制する効果を有する。
【0066】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体は、それらに対して不活性な適当な基剤と混和して塗布剤、パップ剤等の外用剤とすることができる。
【0067】
また、必要に応じて、賦形剤、等張化剤、溶解補助剤、安定化剤、防腐剤、無痛化剤等を加えて錠剤、散財、顆粒剤、カプセル剤、リポソームカプセル剤、注射剤、液剤、点鼻剤など、さらに凍結乾燥剤とすることができる。これらは常法にしたがって調製することができる。
【0068】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体は患者の患部に直接適用するか、又は血管内に投与するなどして結果的に患部に到達し得るように患者に適用する。さらには、持続性、膜透過性を高めるアンチセンス封入素材を用いることもできる。例えば、リポソーム、ポリ-L- リジン、リピッド、コレステロール、リポフェクチン又はこれらの誘導体が挙げられる。
【0069】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチド誘導体の投与量は、患者の状態に応じて適宜調整し、好ましい量を用いることができる。例えば、0.1 〜100mg/kg、好ましくは0.1 〜50mg/kg の範囲で投与することができる。
【0070】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドは本発明のタンパク質の発現を阻害し、従って本発明のタンパク質の生物学的活性を抑制することにおいて有用である。また、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを含有する発現阻害剤は、本発明のタンパク質の生物学的活性を抑制することが可能である点で有用である。
【0071】
発明を実施するための最良の形態
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0072】
[実施例1] 「TCoA1」遺伝子の単離
(1)新規ブロモドメインを有する遺伝子の同定
既知のブロモドメインモチーフをコードする種々の塩基配列を用い、ESTデーターベースに対してBLAST検索を行った。テトラヒメナ サーモフィラHAT A1遺伝子(Brownwell et al,(1996) Cell 84, 843-851)の塩基配列を用いた検索結果から、ブロモドメイン遺伝子をコードする可能性のある幾つかのESTを同定した。その内の一つ、胎児肺cDNAライブラリー由来のEST(W17142)は、新規遺伝子を提供することが判明した。
【0073】
(2)全長塩基配列の単離
ESTW17142に対する全長cDNAのクローニングを以下のように行った。まずPCRプライマーnb15U(GGATTATGAGGGGTTGAAGAGGG/配列番号:3)およびプライマーnb15L(AAGGCAACAGAGTCTGTAGCCCAA/配列番号:4)をデザインし、精巣のcDNAを鋳型にポリメラーゼ連鎖反応を行い、119bpの産物を得た。PCR産物は直接QIAquick(Qiagen社)の精製カラムを用いて精製した。このPCR産物をプローブとして、精巣cDNAライブラリー(Clontech社 HL3024a)のスクリーニングを行い、さらに上記ESTの配列をもつcDNAクローンを用いて、ライブラリーのスクリーニングを再度行った。なお、プローブはランダムプライミングにより [α-32P] dCTP で標識し、クロマスピン10カラム (Clontech社)で精製した。ライブラリーフィルターのハイブリダイゼーションは、ExpressHyb ハイブリダイゼーション溶液(Clontech社)を用い、65℃で1時間かけて行った。フィルターを65℃で0.5x SSC、0.1% SDS の最終的ストリンジェンシーになるまで洗浄した。続いてそのフィルターをシグナル強度増大のために-70℃で1−3日間オートラジオグラフィーを行った。同様な操作を、得られたクローンを連結させ、本遺伝子の全コード領域をカバーする塩基配列が得られるまで繰り返し行った。全ての塩基配列は、ABI色素ターミネーター化学を用いてABI377自動配列決定機で決定した。5'端のクローンは非常にGC含有率が高かったため、配列決定の前にプラスミドにサブクローンした。
【0074】
ライブラリーのスクリーニングの結果、全体で9865bpの塩基配列が得られた。この全塩基配列中には、8979番目の塩基で終止する2993アミノ酸をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)が存在し、それに続いてポリAテールまで877 bpの3' UTRが存在した(図1)。この配列は、配列の長さがノーザン分析で示された10.5kbに匹敵すること、および5'端の配列はGCリッチであり、多くの遺伝子の開始点に見られるCpGアイランドが存在することと一致すること (Cross and Bird,(1995) Curr. Opin. Genet. Dev .5,309-314)から、ほぼ完全長であると考えられる。単離されたcDNAの塩基配列を配列番号:2に、該cDNAがコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号:1に示す。
【0075】
(3)相同性および転写因子のモチーフ特性の同定
モチーフはPROSITEにより検索した。タンパク質の比較はGCG.中のBestfitを利用して行った。核移行シグナルの同定はPSORTで行った。モチーフ検索の結果、いくつかの保存された領域やドメインが、予測されたタンパク質のアミノ酸配列中に存在していることが判明した(図1)。これらの保存された部分には、C4HC3ジンクフィンガー(Aasland et al.(1995). Trends Biochem. Sci., 20, 56-59、Koken et al.(1995). CR Acad. Sci. III, 318, 733-739)、塩基性のヘリックス−ループ−ヘリックスドメイン(Murre et al. (1989). Cell, 58, 537-544)、広範な疎水性グルタミンリッチなドメイン、CH2CH3ジンクフィンガーとブロモドメインが存在した。さらに、核受容体との相互作用を与えている可能性があると予測できる3つのLXXLLモチーフ(Torchia et al.(1997). Nature 387, 677-684、Heery et al.(1997) Nature 387, 733-736)が存在した。これら全てのモチーフは、転写調節因子としての機能を示す特性を持つ。PSPORTプログラムの結果、この機能と密接に関連した核位置のコンセンサス配列(Robbins et al. (1991) Cell, 64, 615-23)が全体で8箇所存在することが判明した。遺伝子の機能を表すようにこの遺伝子を「TCoA1」(transcriptional co-activator )と命名した。
【0076】
「TCoA1」の塩基配列をnon-redundant DNAデータベース上で解析すると、「TCoA1」は810残基のタンパク質をコードすると予測されるFAC1遺伝子(Zhu and Bowser,(1996) Biochemica et Biophysica Acta 1309, 5-8)と2,183bpにおいて100%の相同性があることが判明した。FAC1は元来モノクローナル抗体Alz50 (Bowser et al. (1995) Dev. Neuroscience 17, 20-37)を用いた発現ライブラリーの免疫−スクリーニングによって単離されている。FAC1は「TCoA1」とは塩基配列において広範な領域が一致することに加え、転写サイズ(Bowser et al. (1995) Dev. Neuroscience 17, 20-37)や局在 (Zhu and Bowser.(1996) Biochemica et Biophysica Acta 1309, 5-8)においても、FAC1と重なる領域の外側の塩基配列を用いて得られた「TCoA1」の結果と一致していた。即ち、FAC1の2673bp塩基配列は「TCoA1」の5'末端248から2631塩基に相当する部分配列であると考えられる。そこで「TCoA1」の塩基配列とFAC1塩基配列を比較した結果、一塩基欠失のエラー配列(2400の地点でA)がFAC1に存在することが判明し、これによりORFの読み枠のシフトと共に翻訳が早期に終止することが想定された。同様にFAC1の5'末端配列のエラーによって、メチオニン残基の開始点の誤認識を引き起こしていた。
【0077】
「TCoA1」の予測されるアミノ酸配列には、線虫(C. elegans)で推定されるタンパク質F26H11.2, F26H11.3a and F26H11.3b(Wilson at al.(1994). Nature, 368, 32-38)に相同ないくつかの広範な領域があった。「Gene Finder」ソフトウェアーを用いた解析の結果、F26H11コスミドに含まれるゲノム配列を検索することにより、これらのタンパク質をコードする遺伝子の予測が可能であった。「TCoA1」のN末端はF26H11.gに、またC末端はF26H11.Iに塩基配列の一致する部分が存在した。この結果から「TCoA1」とFAC1により予測されるこれら2つのタンパク質がいずれも線虫の単一のタンパク質に相当することが示唆され、「TCoA1」はこのヒトのホモログであると考えられる。
【0078】
[実施例2] 「TCoA1」の染色体地図作製
「TCoA1」の染色体上の位置を決定するために、PCRプライマーnb15G (CCTCAGCTGCAACAAGTCC/配列番号:5)とプライマーnb15H (GCACTGCTTTGCTGAATTTGGA/配列番号:6) を用いて、Coriell Cell Repositories, New Jersey から入手した24 monochromosomal human/rodent somatic cell lines (Dubois and Naylor. (1993) Genomics, 16, 315-319)のそれぞれから得られるDNAを増幅した。その結果、予測通りの133bpのPCR産物が細胞系のGM 10567から増幅され、本遺伝子はヒト第17番染色体に存在する可能性を示唆するものであった(図2A)。
【0079】
また、「TCoA1」の領域座はGeneBridge4放射パネル91ハイブリッド(Walter et al.(1994). Nature Genetics, 7, 22-28) を用いて決定した。再度プライマーGとプライマーHを使い、そのハイブリッドパネルでPCRを行うことによってスクリーニングした。増幅に対して正あるいは負としてそれぞれのハイブリッド評価することによって、生成する2進符号をアドレス(http://www-genome.wi.mit.edu/cgi -bin/contig/rhmapper.pl)にあるサーバを用いてフレムワーク地図を形成するマーカーについての類似コードと比較し、本遺伝子の染色体上の位置を同定した。その結果、「TCoA1」はマーカーD17S1557に存在することが確認された(図2B)。「TCoA1」がD17S1557から離れた場所に位置する可能性を示す11以下のスコアが唯一認められた。この場所はFISHにより染色体第17番q24にFAC1があるという結果(Bowser (1996) Genomics 38, 455-457)と一致する。
【0080】
「TCoA1」の更に正確な位置を知るために、CEPH mega-YACライブラリーを用い、プライマー nb15S(AAGATGTTGTCTTGGAGCCGT/配列番号:7)とプライマーnb15Q(TTTTTTACCATTTGCTTCAGTCCC/配列番号:8)を用いhierarchical PCRでスクリーニングを行った(Jones et al.(1994) Genomics 24, 266-275)。シングルクローン983d12が同定され、CEPH infoclone データーベース(www.cephb.fr/infoclone.html)によってYAC 983d12の地図情報を検索したが、このクローンに関する情報は全く得られなかった。しかし、Alu-PCR産物のハイブリダイゼーションにより、983d12と部分的に重複する2つのクローン(902c10と938f7)は、ともにD17S1557の末端にあるD17S789に対して陽性であることが認められた。これは本発明者らにより得られた放射ハイブリッドによる結果と一致し、細胞遺伝学上「TCoA1」が染色体第17番q23に位置することを示すものであり(Collins et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93, 14771-14775)、FAC1において報告されている染色体第17番q24(Bowser (1996) Genomics 38, 455-457)に僅かながら近接した位置である。
【0081】
[実施例3] 「TCoA1」の発現解析
240 bpのcDNAプローブを用い、16の正常組識をパネルとしてノーザン解析を行った。プローブはランダムプライミングにより [α-32P] dCTP で標識し、クロマスピン10カラム (Clontech社)で精製した。ノーザン分析のためハイブリダイゼーションは ExpressHybハイブリダイゼーション溶液(Clontech社)を用い、65℃で1時間かけて行った。フィルターを65℃で0.5xSSC、0.1% SDSの最終的ストレンジェンシーになるまで洗浄した。続いてそのフィルターをシグナル強度増大のために-70℃で1-3日間オートラジオグラフィーを行った。mRNAブロッドはClontech社から購入し、300-540塩基の領域に相当する240bpのcDNAプローブでハイブリダイズした。その結果、ほとんどの組識で、約10.5kbのmRNAが検出され、この転写産物の大きさは、塩基配列から同定されたORFの大きさと同一で、報告されたFAC1の結果と一致した(図3)。
【0082】
[実施例4] TCoA1 完全長cDNA塩基配列の決定
本発明者等は、完全なcDNAを単離するために、実施例1(2)の119bpのPCR産物をプローブとして精巣cDNAライブラリー(Clontech社 HL3024a)の再スクリーニングを行なった。スクリーニングは、実施例1(2)と同様の条件で行なった。
【0083】
これにより得られたcDNAの塩基配列を解読した結果、開始コドンメチオニンの上流にインフレームの終止コドンが存在する9700塩基の配列であった。このことから、得られたcDNAが、全長配列であることが判明した。単離した完全長cDNAの塩基配列を配列番号:9に、該cDNAがコードするタンパク質のアミノ酸配列を配列番号:10に示す。
【0084】
TCoA1の塩基配列をFAC-1(Zhu and Bowser,(1996) Biochemica et Biophysica Acta 1309, 5-8)と比較すると、FAC-1の57-1519位の塩基配列がTCoA1の461-1917位の塩基配列に、また FAC-1の1898-2622位がTCoA1の1918-2643位にほぼ一致しすることが判明した。しかしFAC-1の1520-1897位は TCoA1の塩基配列には存在しない。TCoA1の塩基配列には2781のアミノ酸をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)が存在するのに対して、FAC-1の塩基配列には開始コドンメチオニンで始まるTCoA1の一部のわずか810アミノ酸に相当するORFが存在するのみである。TCoA1のアミノ酸配列は2つのC4HC3ジンクフィンガー(254-295位のアミノ酸)と1つのブロモドメイン(2684-2747位のアミノ酸)を保持している。さらに広範囲のグルタミンン酸リッチな領域(1840-2400位のアミノ酸)がある。
【0085】
[実施例5] TCoA1 のN末端領域と相互作用するタンパク質の同定
TCoA1のC4HC3 ジンクフィンガーを含む最初の482アミノ酸をコードしているcDNAクローンを用いて、マウス精巣とヒト脳の酵母2ハイブリッドcDNAライブラリー(Clontech社, Palo Alto)をスクリーニングした。また、この酵母2ハイブリッドライブラリースクリーニングにはクローンテックの手法に従って、酵母ベクターPJ69-4A(James P, et al. (1996) Genetics;144(4):1425-36)を用いて行った。
【0086】
その結果、ヒトのcDNA ライブラリーからhSNF2H遺伝子(Aihara T, et al. (1998) Cytogenet Cell Genet;81(3-4):191-3)が単離され、これに対応するマウス遺伝子がマウスのcDNAライブラリーから単離された。
また、hSNF2L遺伝子が、ヒトのcDNAライブラリーから同定された(Aihara T, et al. (1998) Cytogenet Cell Genet;81(3-4):191-3)。
さらに、ヒトのcDNAライブラリーから、転写コアクチベーターであるNCoA-62( Skipとしても知られている)(Baudino TA, et al. (1998) J Biol Chem; 273(26):16434-41、Dahl R, et al. (1998) Oncogene;16(12):1579-86)が単離された。
【0087】
hSNF2H/2LはD.Melanogaster ISWIのヒト相同体である。このISWIタンパク質はクロマチン再構成複合体中で発見されており、この複合体はDNA上でATPase依存性にヌクレオソームを再構成する分子機械であることが報告されている(Varga-Weisz PD, Becker PB. (1998) Curr Opin Cell Biol;10(3):346-53)。hSNF2HやhSNF2Lはこれらの複合体の中でATPaseサブユニットとして働いている。
【0088】
最近、ISWIだけで染色体の再構成の活性がある可能性を示唆する報告もなされている(Corona DF, et al. (1999) Mol Cell 3(2):239-45)。取得したhSNF2Hクローンの全長配列は、データベースの配列(GenBank Accession No.AB010882)と比較するとC末端側50アミノ酸の欠失があり、オルタナティブスプライシングをしていると考えられた。
【0089】
NCoA-62/Skipは、種々の核受容体(VDR、RAR)のリガンド結合ドメインやウィルス腫瘍タンパク質(oncoprotein)であるSkiと相互作用する転写コアクチベーターである。またこのNCoA-62/Skipはエクジソンにより誘導されるショウジョウバエ(Drosophila )のBx42タンパク質に相同性がある。
【0090】
TCoA1と前述のタンパク質との相互作用を確認するために、クローンテックの手法に従っての哺乳動物2ハイブリッドシステムのコンストラクト(Clontech, Palo Alto)を使って解析した。その結果TCoA1とhSNF2Hの間には特異的な相互作用を見つけることができたが(図4)、 hSNF2LやSkipに対してはいかなる相互作用も見られなかった。hSNF2HとhSNF2Lの類似性から判断して、hSNF2Lの相互作用の欠如は驚くべきことで、このシステムでhSNF2Lの発現がなかったことが推測される。
【0091】
[実施例6] TCoA1の相互作用地図
酵母2ハイブリッドシステムを用い、相互作用地図作製の実験を以下のように行った。TCoA1の種々の領域(図5参照)をコードするcDNAをpASベクター (Clontech社) にクローニングした。また、TCoA1の種々の領域との相互作用の検出を行なう3つのタンパク質(hSNF2H, hSNF2LおよびNCoA-62/Skip) をコードするcDNAをpACTベクター(Clontech社)にクローニングした。これらベクターの組み合わせを、酵母宿主(PJ69-4A)に導入し、該宿主内で発現させたタンパク質同士の相互作用をルシフェラーゼをレポーターとして検出した。
【0092】
その結果、hSNF2H、hSNF2L、およびbx42(NCoA-62/Skip)のいずれとも相互作用するTCoA1の領域が明らかになった。即ち、図5で見られるように、これら3つのすべてのタンパク質はTCoA1の85-247アミノ酸と相互作用した。
【0093】
この事実から、さらに、タンパク質相互作用部位として知られているC4HC3 ジンクフィンガーが、これらの3つのタンパク質との相互作用部位から除外されていることが判明した。
【0094】
[実施例7] ブロモドメイン相互作用タンパク質の機能解析
酵母2ハイブリッドスクリーニングで同定したTCoA1が相互作用しているクローン(hSNF2H, hSNF2L, NCoA-62/Skip)は、大きなポリペプチドをコードしている。そこで、本発明者等は、次ぎに、酵母2ハイブリッドシステムを利用して、これらタンパク質中の、TCoA1タンパク質と相互作用する領域の同定を行なった。具体的には、NCoA-62とhSNF2H中の部分的に重なり合う一連のポリペプチドをコードするcDNAを含むpACTベクター(Clontech社)を構築し(図6、図7)、TCoA1タンパク質の1-525位のアミノ酸をコードするcDNAを含むpASベクター(Clontech社)とともに酵母細胞(PJ69-4A)に導入し、該宿主内で発現させたタンパク質同士の相互作用をルシフェラーゼをレポーターとして検出した。
【0095】
NCoA-62についてはそのオリジナルクローンの完全なカルボキシ末端ドメインを含む約450アミノ酸の領域、および該領域における一連の5つの欠失クローンについて検討した(図5)。その結果、NCoA-62中の224-317位のアミノ酸がTCoA1への相互作用領域として同定された。
【0096】
一方、hSNF2Hについては、3つの欠失クローンにつき検討した(図7)。その結果、hSNF2H中のTCoA1タンパク質との相互作用領域は、そのカルボキシ末端側にマッピングされた(921-1017位)。同じ領域を含むもうひとつのクローン(855-1017位)では相互作用がみられなかった。これは、このクローンが特別な二次構造を形成することによる可能性がある。
【0097】
産業上の利用の可能性
本発明の転写調節因子および該転写調節因子をコードするDNAは、癌や他の細胞増殖性疾患の治療や医薬品候補化合物のスクリーニングに用いることが可能である。また、本発明の転写調節因子に結合する抗体や該転写調節因子の機能を調節する化合物、該転写調節因子の他のタンパク質との相互作用を阻害する化合物には、これら疾患の治療薬や予防薬としての利用が考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号:1または10に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質。
【請求項2】
配列番号:1または10に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなり、ブロモドメインを有する転写調節因子。
【請求項3】
配列番号:1または10に記載のアミノ酸配列において1若しくは複数のアミノ酸が置換、欠失、付加、および/または挿入されたアミノ酸配列からなり、hSNF2H、hSNF2L、NCoA-62/Skipおよびそれらの他種相同体からなる群より選択されるタンパク質に結合する活性を有するタンパク質。
【請求項4】
配列番号:2または9に記載の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズするDNAがコードし、ブロモドメインを有する転写調節因子。
【請求項5】
配列番号:2または9に記載の塩基配列からなるDNAとハイブリダイズするDNAがコードし、hSNF2H、hSNF2L、NCoA-62/Skipおよびそれらの他種相同体からなる群より選択されるタンパク質に結合する活性を有する転写調節因子。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の転写調節因子をコードするDNA。
【請求項7】
配列番号:2または9に記載の塩基配列のコード領域を含む、請求項6に記載のDNA。
【請求項8】
請求項6または7に記載のDNAを含むベクター。
【請求項9】
請求項6または7に記載のDNAを発現可能に保持する形質転換体。
【請求項10】
請求項9に記載の形質転換体を培養する工程を含む、請求項1から5のいずれかに記載の転写調節因子の製造方法。
【請求項11】
請求項1から5のいずれかに記載の転写調節因子に結合する抗体。
【請求項12】
請求項1から5のいずれかに記載の転写調節因子に結合する活性を有する化合物のスクリーニング方法であって、
(a)該転写調節因子と被験サンプルとを接触させる工程、
(b)該転写調節因子と被験サンプルとの結合活性を検出する工程、
(c)該転写調節因子に結合する活性を有する化合物を選択する工程、を含む方法。
【請求項13】
請求項1から5のいずれかに記載の転写調節因子と、hSNF2H、hSNF2L、NCoA-62/Skipおよびそれらの他種相同体からなる群より選択されるタンパク質との結合を阻害または促進する化合物をスクリーニングする方法であって、
(a)被検サンプルの存在下で、該転写調節因子とhSNF2H、hSNF2L、NCoA-62/Skipまたはそれらの他種相同体とを接触させる工程、
(b)該転写調節因子とhSNF2H、hSNF2L、NCoA-62/Skipまたはそれらの他種相同体との結合活性を検出する工程、
(c)被検サンプル非存在下で検出した場合(対照)と比較して、該結合活性を低下または増加させる化合物を選択する工程、を含む方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法により単離しうる、請求項1から5のいずれかに記載の転写調節因子と、hSNF2H、hSNF2L、NCoA-62/Skipおよびそれらの他種相同体からなる群より選択されるタンパク質との結合を阻害する化合物。
【請求項15】
配列番号:2または9に記載の塩基配列からなるDNAと特異的にハイブリダイズし、少なくとも15ヌクレオチドの鎖長を有するDNA。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−183291(P2009−183291A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77109(P2009−77109)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【分割の表示】特願2000−547112(P2000−547112)の分割
【原出願日】平成11年4月30日(1999.4.30)
【出願人】(000003311)中外製薬株式会社 (228)
【Fターム(参考)】