説明

転移抑制のためのペプチドエポキシケトンの使用

本発明は、ペプチドエポキシケトンプロテアソーム阻害剤の投与を含む、癌の転移を抑制する方法を提供するものである。更に本方法を、一種以上の付加的な治療薬の投与と組み合わせて行うこともできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、引用をもってその内容全体をここに援用することとする、米国特許商標庁に2009年11月13日に提出された米国出願第61/261,062号に基づく優先権を主張するものである。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
転移は、一つの臓器もしくは部分から別の非隣接臓器又は部分へという疾患の伝播である。それは通常、癌に伴い、この場合の癌細胞は癌が発生した場所(「原発性癌」)から身体の他の部分へと遊走して新たな腫瘍を形成する。新たな腫瘍は初発性腫瘍の「転移性」又は「二次」腫瘍である。従って、乳癌細胞が肺に転移すると、二次腫瘍は転移性乳癌とよばれ、肺癌とは呼ばれない。大半の腫瘍及び他の新生物は転移可能であるため、転移の臨床管理は大変重要である。
【0003】
異常に複雑なプロセスである転移は一連の重要なステップから成る。これらのステップには、原発性腫瘍からの腫瘍細胞の離脱、周囲組織及び基底膜への浸潤、循環、リンパ系もしくは腹腔空間中への進入及び生存、並びに、遠い標的臓器での腫瘍細胞の樹立及び増殖がある。これらのステップの背後にある特定の分子機序は不明のままであり、従って、腫瘍転移を防ぐ又は抑えるための有効な方法を特定することが課題であった。新規な方法が必要である。
【0004】
発明の概要
プロテアソームは、細胞内タンパク質のターンオーバーにおいて一般的な機能を有する一方、サイクリン、カスパーゼ、BCL-2及びnF-kB など、正常及び悪性腫瘍における細胞周期進行及びアポトーシスにとって重要なタンパク質のレベルを制御する。(Kumatori et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1990) 87:7071-7075;
Almond et al., Leukemia (2002) 16: 433-443)。これらのタンパク質の多くは、転移プロセスに関与するステップで鍵となる成分である。従って、プロテアソーム活性の阻害を、転移性腫瘍の防止又は緩解など、多様な疾患状態を処置するための治療法につなげることができる。
【0005】
いくつかの実施態様では、本発明は、ペプチドエポキシケトンプロテアソーム阻害剤を投与するステップを含む、癌の転移性伝播を抑制又は防止する方法に関する。いくつかのこのような実施態様では、ペプチドエポキシケトンプロテアソーム阻害剤はトリペプチドエポキシケトンである。
【0006】
ペプチドエポキシケトンは、多様な形態のいずれによって投与してもよい。いくつかの実施態様では、ペプチドエポキシケトンを経口投与する。
【0007】
本発明のいくつかの実施態様では、ペプチドエポキシケトンプロテアソーム阻害剤を他の治療薬と組み合わせて用いてもよい。付加的な治療薬は本願の時点で公知であるかも知れないが、あるいは、本願日後に明白になるかも知れない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、化合物1の投与による転移性乳腫瘍数の減少を示す。
【0009】
発明の詳細な説明
いくつかの実施態様では、本発明は、ペプチドエポキシケトンを投与するステップを含む、個体における癌の転移を抑制する又は防止する方法に関する。いくつかの実施態様では、前記個体は哺乳動物である。いくつかの好適な実施態様では、前記個体はヒトである。
【0010】
いくつかの実施態様では、ペプチドエポキシケトンは式(I)又はその薬学的に許容可能な塩の構造;

【0011】
【化1】

【0012】

を有し、但し式中、
各Arは個別に、1乃至4個の置換基で任意に置換された芳香族又はヘテロ芳香族基であり;
Lは、存在しないか、又はC=O、C=S、及びSO2から選択され、好ましくはSO2 又はC=Oであり;
X はO、S、NH、及びN-C1-6アルキルから選択され、好ましくは Oであり;
Y は存在しないか、又はC=O 及びSO2から選択され;
Z は存在しないか、又はC1-6アルキルであり;
R1、R2、及びR3 はそれぞれ個別に、いずれかが任意に置換されているC1-6アルキル, C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6アルコキシアルキル、アリール、及びC1-6アラルキルから選択され;
R4 はN(R5)L-Z-R6であり;
R5 は水素、OH、C1-6アラルキル-Y-、及びC1-6アルキル-Y-から選択され、好ましくは水素であり;
R6 は水素、OR7、C1-6アルケニル、Ar-Y-、カルボシクリル、及びヘテロシクリルから選択され;そして
R7 及びR8 は個別に水素、C1-6アルキル、及びC1-6アラルキルから選択され、好ましくは水素である。
【0013】
いくつかの実施態様では、L はC=O、C=S、及びSO2から選択され、好ましくは SO2 又はC=Oである。
【0014】
いくつかの実施態様では、R5
は水素、OH、C1-6アラルキル、及びC1-6アルキルから選択され、好ましくは 水素である。
【0015】
いくつかの実施態様では、R6
は水素、C1-6アルケニル、Ar-Y-、カルボシクリル、及びヘテロシクリルから選択される。
【0016】
いくつかの実施態様では、X はOであり、そしてR1、R2、及びR3 はそれぞれ個別にC1-6アルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、及びC1-6アラルキルから選択される。好適なこのような実施態様では、R1 及び R3 は個別にC1-6アルキルであり、そしてR2 はC1-6アラルキルである。より好適なこのような実施態様では、R1 及びR3 は両者ともイソブチルであり、そしてR2 はフェニルメチルである。
【0017】
いくつかの実施態様では、R5
は水素であり、L はC=O 又はSO2であり、R6 は Ar-Y-であり、そして各 Ar は個別にフェニル、インドリル、ベンゾフラニル、ナフチル、キノリニル、キノロニル、チエニル、ピリジル、ピラジル等から選択される。いくつかのこのような実施態様では、Ar は Ar-Q-で置換されてもよく、但しこの場合のQ は一個の直接結合、-O-、及びC1-6アルキルから選択される。Z が C1-6アルキルであるいくつかの他のこのような実施態様では、Z は置換されていてもよく、例えばフェニルなどのArで置換されていることが好ましい。
【0018】
いくつかの実施態様では、R5
は水素であり、Z は存在せず、L はC=O 又は SO2であり、そしてR6 は Ar-Y 及びヘテロシクリルから選択される。いくつかの好適なこのような実施態様では、ヘテロシクリルはクロモニル、クロマニル、モルホリノ、及びピペリジニルから選択される。いくつかの他の好適なこのような実施態様では、Ar はフェニル、インドリル、ベンゾフラニル、ナフチル、キノリニル、キノロニル、チエニル、ピリジル、ピラジル等から選択される。
【0019】
いくつかの実施態様では、R5
は水素であり、L はC=O 又は SO2であり、Z は存在せず、そしてR6 はC1-6アルケニルであり、但しこの場合のC1-6アルケニルは置換ビニル基であり、この場合の置換基は 好ましくは アリール又はヘテロアリール基であり、より好ましくは 、選択的に一個乃至四個の置換基で置換されたフェニル基であるとよい。
【0020】
いくつかの実施態様では、R7
及び R8
は個別に水素およびC1-6アルキルから選択される。いくつかの好適なこのような実施態様では、R7 及びR8 は個別に水素およびメチルから選択される。より好適なこのような実施態様では、R7
及びR8 は両者とも水素である。
【0021】
いくつかの代替的な実施態様では、ペプチドエポキシケトンは式(II)の構造又はその薬学的に許容可能な塩の構造:
【0022】
【化2】

【0023】
を有し、但し式中、
L はC=O、C=S、及びSO2から選択され、好ましくは C=Oであり;
X はOであり;
Z は存在しないか、C1-6アルキル、又はC1-6アルコキシであり、好ましくは存在せず;
R1、R2、及びR3 はそれぞれ個別に水素、C1-6アルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6アルコキシアルキル、アリール、C1-6アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、C1-6ヘテロシクロアルキル、C1-6ヘテロアラルキル、カルボシクリル、及びC1-6カルボシクロアルキルから選択され;
R4 は水素、C1-6アラルキル、及びC1-6アルキルから選択され;
R5 はヘテロアリールであり;そして
R6 及びR7 は個別に水素、C1-6アルキル、及びC1-6アラルキルから選択される。
【0024】
いくつかの実施態様では、R1、R2、及びR3 は個別に水素、C1-6アルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6アルコキシアルキル、C1-6アラルキル、C1-6ヘテロシクロアルキル、C1-6ヘテロアラルキル、及びC1-6カルボシクロアルキルから選択される。いくつかの実施態様では、R1、R2、及びR3 のいずれかは個別に、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、及びイソブチルから選択されるC1-6アルキルである。いくつかの実施態様では、R1、R2、及びR3 のいずれかは個別にC1-6ヒドロキシアルキルである。 いくつかの好適なこのような実施態様では、R1、R2、及びR3 のいずれかは個別にヒドロキシメチル及びヒドロキシエチルから選択され、好ましくは ヒドロキシメチルである。いくつかの実施態様では、R1、R2、及びR3 のいずれかは個別に C1-6アルコキシアルキルである。いくつかのこのような実施態様では、R1、R2、及びR3 のいずれかは個別にメトキシメチル及びメトキシエチルから選択され、好ましくは メトキシメチルである。いくつかの実施態様では、R1、R2、及びR3 のいずれかは個別にC1-6ヘテロアラルキルである。いくつかのこのような実施態様では、R1、R2、及びR3 のいずれかはイミダゾリルメチル、ピラゾリルメチル、及びチアゾリルメチル及びピリジルメチルから個別に選択され、好ましくはイミダゾール-4-イルメチル、チアゾール-4-イルメチル、2-ピリジルメチル、3-ピリジルメチル、又は4-ピリジルメチルである。いくつかの実施態様では、R1、R2、及びR3 のいずれかは個別に C1-6アラルキルである。 いくつかのこのような実施態様では、R1、R2、及びR3 のいずれかは個別にフェニルメチル(ベンジル)及びフェニルエチルから選択され、好ましくは フェニルメチルである。いくつかの実施態様では、R1、R2、及びR3 のいずれかは個別にC1-6カルボシクロアルキルである。いくつかのこのような実施態様では、R1 はシクロヘキシルメチルである。いくつかの実施態様では R1、R2、及びR3 は全て異なる。いくつかの実施態様では、R1、R2、及びR3 のうちのいずれか二つが同じである。 いくつかの実施態様では、R1、R2、及びR3 は全て同じである。
【0025】
いくつかの実施態様では、R1 及びR2 のうちの少なくとも一つはC1-6ヒドロキシアルキル及びC1-6アルコキシアルキルから選択される。いくつかのこのような実施態様では、R1
及びR2 のうちの少なくとも一つはアルコキシアルキルである。いくつかのこのような実施態様では、R1
及びR2 のうちの少なくとも一つはメトキシメチル及びメトキシエチルから選択される。
【0026】
いくつかの実施態様では、R3 はC1-6アルキル 及びC1-6アラルキルから選択され、好ましくは C1-6アルキルである。いくつかのこのような実施態様では、R3 はメチル、エチル、イソプロピル、sec-ブチル、及びイソブチルから選択される。いくつかのこのような実施態様では、R3
はイソブチルである。いくつかの代替的な実施態様では、R3 はフェニルメチル 及びフェニルエチルから選択され、好ましくは フェニルメチルである。
【0027】
いくつかの実施態様では、R4、R6、及び R7 は個別に水素およびメチルから選択され、好ましくは 水素である。
【0028】
いくつかの実施態様では、R5 は5- 又は6-員環ヘテロアリールである。いくつかのこのような実施態様では、R5 はイソキサゾール、イソチアゾール、フラン、チオフェン、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、又はイミダゾールから選択され、好ましくは
イソキサゾール、フラン、又はチアゾールである。
【0029】
いくつかの実施態様では、R5 は二環式ヘテロアリールである。いくつかのこのような実施態様では、二環式ヘテロアリールはベンズイソキサゾール、ベンズオキサゾール、ベンゾチアゾール、ベンズイソチアゾールから選択される。
【0030】
いくつかの実施態様では、L はC=Oであり、Z は存在せず、そしてR5 iはイソキサゾール-3-イル又はイソキサゾール-5-イルである。いくつかの好適なこのような実施態様では、イソキサゾール-3-イルが置換される場合、それは少なくとも5-位で置換される。いくつかの好適な実施態様では、イソキサゾール-5-イルが置換される場合、それは少なくとも3-位で置換される。
【0031】
いくつかの実施態様では、L はC=Oであり、Z は存在せず、そしてR5 は非置換イソキサゾール-3-イルである。
【0032】
いくつかの実施態様では、L はC=Oであり、Z は存在せず、そしてR5 は置換イソキサゾール-3-イルである。いくつかのこのような実施態様では、R5 は、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルコキシアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、カルボン酸、アミノカルボキシレート、C1-6アルキルアミノカルボキシレート、(C1-6アルキル)2アミノカルボキシレート、C1-6アルキルカルボキシレート、C1-6ヘテロアラルキル、C1-6アラルキル、C1-6ヘテロシクロアルキル、及びC1-6カルボシクロアルキルから選択される置換基で置換されたイソキサゾール-3-イルである。いくつかの好適なこのような実施態様では、R5 は、メチル、エチル、イソプロピル、及びシクロプロピルメチルから選択される置換基で置換されたイソキサゾール-3-イルである。
【0033】
いくつかの実施態様では、L はC=Oであり、Z は存在せず、そしてR5 は、4- 乃至6-員環の含窒素C1-6ヘテロシクロアルキルで置換されたイソキサゾール-3-イルである。いくつかのこのような実施態様では、R5 は、アゼチニジルメチル、好ましくはアゼチジン-1-イル、で置換されたイソキサゾール-3-イルである。いくつかの代替的なこのような実施態様では、L はC=Oであり、Z は存在せず、そしてR5 は、
【0034】
【化3】

【0035】
で置換されたイソキサゾール-3-イルであり、但しこの場合、W はO、NR、又はCH2であり、そしてR はH 又はC1-6アルキルである。いくつかのこのような実施態様では、W はOである。
【0036】
いくつかの実施態様では、L はC=Oであり、Z は存在せず、そしてR5 は5-員環の含窒素C1-6ヘテロアラルキル、例えばピラゾリルメチル、イミダゾリルメチル、トリアゾール-5-イルメチル、好ましくは 1,2,4-トリアゾール-5-イルメチルで置換されたイソキサゾール-3-イルである。
【0037】
いくつかの実施態様では、L はC=Oであり、Zは存在せず、そしてR5 は、C1-6アルコキシ又はC1-6アルコキシアルキル、好ましくは メトキシ、エトキシ、メトキシメチル、又はメトキシエチルで置換されたイソキサゾール-3-イルである。
【0038】
いくつかの実施態様では、L はC=Oであり、Z は存在せず、そしてR5 は、C1-6ヒドロキシアルキル、好ましくは ヒドロキシメチル又はヒドロキシエチルで置換されたイソキサゾール-3-イルである。
【0039】
いくつかの実施態様では、L はC=Oであり、Z は存在せず、そしてR5 は、カルボン酸、アミノカルボキシレート、C1-6アルキルアミノカルボキシレート、(C1-6アルキル)2アミノカルボキシレート、又はC1-6アルキルカルボキシレートで置換されたイソキサゾール-3-イルである。 いくつかのこのような実施態様では、R5 は、メチルカルボキシレート又はエチルカルボキシレート、好ましくは メチルカルボキシレートで置換される。
【0040】
いくつかの実施態様では、LはC=Oであり、Z は存在せず、そしてR5 は非置換イソキサゾール-5-イルである。
【0041】
いくつかの実施態様では、L はC=Oであり、Z は存在せず、そしてR5 は、置換イソキサゾール-5-イルである。いくつかのこのような実施態様では、R5 は、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、C1-6アルコキシアルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、カルボン酸、アミノカルボキシレート、C1-6アルキルアミノカルボキシレート、(C1-6アルキル)2アミノカルボキシレート、C1-6アルキルカルボキシレート、C1-6ヘテロアラルキル、C1-6アラルキル、C1-6ヘテロシクロアルキル、及びC1-6カルボシクロアルキルから選択される置換基で置換されたイソキサゾール-5-イルである。いくつかの好適なこのような実施態様では、R5 は、メチル、エチル、イソプロピル、及びシクロプロピルメチルから選択される置換基で置換されたイソキサゾール-3-イルである。
【0042】
いくつかの実施態様では、L はC=Oであり、Z は存在せず、そしてR5 は、4-乃至6-員環の含窒素C1-6ヘテロシクロアルキルで置換されたイソキサゾール-3-イルである。いくつかのこのような実施態様では、R5 は、アゼチニジルメチル、好ましくはアゼチジン-1-イルメチルで置換されたイソキサゾール-5-イルである。いくつかの代替的なこのような実施態様では、L はC=Oであり、Z は存在せず、そしてR5 は、
【0043】
【化4】

【0044】
で置換されたイソキサゾール-3-イルであり、但しこの場合、 W はO、NR、又はCH2であり、そしてRは H 又はC1-6アルキルである。 いくつかのこのような実施態様では、W はOである。
【0045】
いくつかの実施態様では、L はC=Oであり、Z は存在せず、そしてR5 は、5-員環の含窒素C1-6ヘテロアラルキル、例えばピラゾリルメチル、イミダゾリルメチル、トリアゾール-5-イルメチル、好ましくは 1,2,4-トリアゾール-5-イルメチルで置換されたイソキサゾール-5-イルである。
【0046】
いくつかの実施態様では、L はC=Oであり、Z は存在せず、そしてR5 は、C1-6アルコキシ 又はC1-6アルコキシアルキル、好ましくは メトキシ、エトキシ、メトキシメチル、又はメトキシエチルで置換されたイソキサゾール-5-イルである。
【0047】
いくつかの実施態様では、L はC=Oであり、Z は存在せず、そしてR5 は、C1-6ヒドロキシアルキル、好ましくは ヒドロキシメチル又はヒドロキシエチルで置換されたイソキサゾール-5-イルである。
【0048】
いくつかの実施態様では、L はC=Oであり、Z は存在せず、そしてR5 は、カルボン酸、アミノカルボキシレート、C1-6アルキルアミノカルボキシレート、(C1-6アルキル)2アミノカルボキシレート、又はC1-6アルキルカルボキシレートで置換されたイソキサゾール-3-イルである。いくつかのこのような実施態様では、R5 は、メチルカルボキシレート又はエチルカルボキシレート、好ましくはメチルカルボキシレートで置換される。
【0049】
いくつかの好適な実施態様では、式(II)の化合物は構造;
【0050】
【化5】

【0051】
を有する。
【0052】
定義
用語「Cx-yアルキル」とは、トリフルオロメチル及び2,2,2-トリフルオロエチル等のハロアルキル基を含め、鎖にx個乃至y個の炭素を含有する直鎖アルキル及び分枝アルキル基を含む、置換もしくは非置換の飽和炭化水素基を言う。C0アルキルとは、この基が末端位置にある場合には水素を、内側にある場合には結合を指す。用語「C2-yアルケニル」及び「C2-yアルキニル」とは、上述のアルキルに長さ及び可能な置換の点で似ているが、それぞれ少なくとも一個の二重又は三重結合を含有する置換もしくは非置換不飽和脂肪族の基を言う。
【0053】
用語「アルコキシ」とは、一個の酸素を付着させて有するアルキル基を言う。代表的なアルコキシ基には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert-ブトキシ基等がある。「エーテル」とは、一個の酸素で連結された二つの炭化水素である。従って、アルキルをエーテルにするようなアルキルの置換基はアルコキシであるか、又はアルコキシに似ている。
【0054】
用語「C1-6アルコキシアルキル」とは、アルコキシ基で置換されることで一個のエーテルを形成するようなC1-6アルキル基を言う。
【0055】
用語「C1-6アラルキル」とは、ここで用いられる場合、アリール基で置換されたC1-6アルキル 基を言う。
【0056】
用語「アミン」及び「アミノ」は当業で公知であり、非置換及び置換アミン並びにその塩の両者を言い、例えば一般式:
【0057】
【化6】

【0058】
で表すことのできる部分であり、但しこの場合、R9、R10 及びR10’ はそれぞれ個別に水素、アルキル、アルケニル、- (CH2)m-R8、を表すか、あるいはR9 及びR10 は、これらが結合したN原子と一緒に捉えられると、環構造中に4乃至8個の原子を有する複素環を完成し;R8
はアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、ヘテロシクリル 又はポリシクリルを表し;そしてmはゼロであるか、又は1乃至8の整数である。好適な実施態様では、R9 又はR10 の一方のみがカルボニルであってよく、例えばR9、R10、及び窒素が一緒になってイミドを形成していない。更により好適な実施態様では、R9 及びR10 (及び選択的に R10’)はそれぞれ個別に水素、アルキル、アルケニル、又は-(CH2)m-R8
を表す。 いくつかの実施態様では、アミノ基は塩基性であり、つまりそのプロトン化型はpKa > 7.00を有することを意味する。
【0059】
用語「アミド」及び「アミド」は当業でアミノ置換カルボニルとして公知であり、その中には、一般式:
【0060】
【化7】

【0061】
で表すことのできる部分が含まれ、但しこの場合、R9、R10 は上に定義した通りである。アミドの好適な実施態様は、不安定な可能性のあるイミドは含まれないであろう。
【0062】
ここで用いられる場合の用語「アリール」には、環中の各原子が炭素であるような5-、6-、及び7-員環の置換もしくは非置換単環芳香族基が含まれる。用語「アリール」には更に、二つ以上の炭素が二つの隣り合った環に共通であり、環の少なくとも一方が芳香族であり、例えば他方の環がシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロシクリルであってよいような、二つ以上の環を有する多環系が含まれる。アリール基にはベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フェノール、アニリン等が含まれる。
【0063】
用語「炭素環」及び「カルボシクリル」とは、ここで用いられる場合、環のすべての原子が炭素であるような非芳香族の置換もしくは非置換環を言う。用語「炭素環」及び「カルボシクリル」には更に、二つ以上の炭素が二つの隣り合った環に共通であるような二つ以上の環を有する多環系も含まれ、但しこの場合の環の少なくとも一つは炭素環であり、例えば他方の環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロシクリルであってよい。
【0064】
用語「カルボニル」は当業で公知であり、その中には、一般式:
【0065】
【化8】

【0066】
で表すことができる部分が含まれ、但しこの場合、式中、X は一個の結合であるか、又は、酸素もしくは硫黄を表し、そしてR11 は水素、アルキル、アルケニル、-(CH2)m-R8
又は薬学的に許容可能な塩を表し、R11’ は水素、アルキル、アルケニル 又は-(CH2)m-R8を表し、但しこの場合、式中、m 及びR8 は上に定義した通りである。X が酸素であり、そしてR11 又は R11’ が水素でない場合、この式は「エステル」を表す。X が酸素であり、そしてR11 が水素である場合、この式は「カルボン酸」を表す。
【0067】
ここで用いられる場合の「酵素」とは、触媒的な態様で化学反応を行うことのできる、いずれかの部分的又は完全なタンパク質性分子であってよい。このような酵素は天然酵素、融合酵素、プロ酵素、アポ酵素、変性酵素、ファルネシル化酵素、ユビキチン化酵素、脂肪アシル化酵素、ゲランゲラニル化(原語;gerangeranylated )酵素、GPI-連結酵素、脂質連結酵素、プレニル化酵素、天然発生型又は人工生成型変異酵素、側鎖又は骨格に修飾を持つ酵素、リーダー配列を有する酵素、並びに、プロテオグリカン、プロテオリポソームなど、非タンパク質性物質と複合体形成した酵素であってよい。酵素は、天然の発現、促進された発現、クローニング、多様な溶液ベースの及び固体ベースのペプチド合成、及び当業者に公知の類似の方法を含め、いずれの手段によっても作製することができる。
【0068】
用語「C1-6ヘテロアラルキル」は、ここで用いられる場合、ヘテロアリール基で置換されたC1-6アルキル基を言う。
【0069】
用語「ヘテロアリール」には、環構造が1個乃至4個のヘテロ原子を含む、置換もしくは非置換の芳香族5- 乃至7-員環の環構造、より好ましくは 5- 乃至6-員環が含まれる。 用語「ヘテロアリール」には更に、二つ以上の炭素が二つの隣り合った環に共通であるような二つ以上の環を有する多環系が含まれ、但しこの場合、環のうちの少なくとも一つはヘテロ芳香族であり、例えば他方の環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロシクリルであってよい。ヘテロアリール基には、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、イソキサゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン及びピリミジン等がある。
【0070】
用語「ヘテロ原子」とは、ここで用いられる場合、炭素又は水素以外のいずれかの元素の原子を意味する。好適なヘテロ原子は窒素、酸素、リン、及び硫黄である。
【0071】
用語「ヘテロシクリル」又は「複素環式基」とは、環構造が一個乃至4個のヘテロ原子を含むような、置換もしくは非置換の非芳香族3- 乃至10-員環の環構造、より好ましくは 3-乃至 7-員環の環を言う。用語「ヘテロシクリル」又は「複素環式の基」には更に、二つ以上の炭素が二つの隣り合った環に共通であるような、二つ以上の環を有する多環系も含まれ、但しこの場合の環の少なくとも一つは複素環式であり、例えば他方の環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロシクリルであってよい。ヘテロシクリル基には、例えば、テトラヒドロフラン、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、ラクトン、ラクタム等がある。
【0072】
用語「C1-6ヘテロシクロアルキル」とは、ここで用いられる場合、ヘテロシクリル基で置換されたC1-6アルキル基を言う。
【0073】
用語「C1-6ヒドロキシアルキル」とは、ヒドロキシ基で置換されたC1-6アルキル基を言う。
【0074】
ここで用いられる場合の用語「阻害剤」とは、ある酵素の活性を遮断する又は減少させる(例えば、標準的な蛍光発生性ペプチド基質のタンパク質分解の阻害、20Sプロテアソームの多様な触媒活性の阻害)化合物を描写することを意図している。阻害剤は競合的、不競合的、又は非競合的阻害で作用することができる。阻害剤は可逆的又は非可逆的に結合することができるため、この用語には、酵素の自殺基質である化合物が含まれる。阻害剤を、当該酵素の一か所以上又は活性部位近傍で修飾することができ、あるいは、当該酵素のどこか他の箇所でコンホメーション上の変化を起こさせることもできる。
【0075】
ここで用いられる場合の用語「ペプチド」には、標準的なα-置換基を持つ標準的なアミド結合だけでなく、以下に詳述するように、通常用いられるペプチドミメティック、他の修飾された結合、非天然発生型の側鎖及び側鎖修飾が含まれる。
【0076】
用語「ポリシクリル」又は「多環式」とは、例えばこれらの環が縮合しているなど、二つ以上の炭素が二つの隣り合った環に共通である二つ以上の環を言う(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロシクリル)。ポリシクリルの環のそれぞれは置換されていても、又は非置換でもよい。
【0077】
用語「防止する」は当業で公知であり、局所的再発(例えば疼痛)、癌などの疾患、心不全などの複合症候群などの状態、あるいはいずれか他の医学的状態などと関係して用いられる場合は当業で公知であり、その中には、当該組成物を投与されていない対象に比較して、対象における医学的状態の頻度を減少させる、又は症状発症を遅らせる、組成物の投与が含まれる。従って、癌の防止には、例えば統計上及び/又は臨床上有意な量などで、例えば未処置のコントロール集団に比較したときに、防止処置を受けた患者集団において、検出可能な癌成長数を減少させること、及び/又は、未処置のコントロール集団に比較して処置集団で検出可能な癌成長の出現を遅らせること、が含まれる。感染の防止には、例えば、未処置のコントロール集団に比較したときに、処置を受けた患者集団において、感染診断数を減少させること、及び/又は、未処置のコントロール集団に比較して処置集団で感染症状の発症を遅らせること、が含まれる。疼痛の防止には、例えば、未処置のコントロール集団に比較したときに、処置を受けた集団において、対象の経験する疼痛感覚の程度を低下させること、又は代替的には疼痛感覚を遅らせること、が含まれる。
【0078】
用語「プロドラッグ」は、生理条件下で治療上活性な薬剤に転化される化合物を包含するものである。プロドラックの通常の作製法には、生理条件下で加水分解して所望の分子を露出させる選択された部分を含有させることである。他の実施態様では、プロドラッグは、ホスト動物の酵素活性によって転化される。
【0079】
用語「予防的又は治療的」処置は当業で公知であり、その中には、対象組成物の一つ以上のホストへの投与が含まれる。望ましくない状態(例えばホスト動物の疾患又は他の望ましくない状態)の臨床上の発現前にそれが投与される場合は、処置は予防的であり、(即ち、それは望ましくない状態の発症からホストを防御するものであり)、他方、望ましくない状態の発現後にそれが投与されるのであれば、その処置は治療的である、(即ちそれは、既存の望ましくない状態又はその副作用を減じる、緩和する、又は安定させることを意図している)。
【0080】
用語「プロテアソーム」は、ここで用いられる場合、免疫−及び構成的プロテアソームを包含することが意図されている。
【0081】
用語「抑制する」は当業で公知であり、癌又はいずれか他の医学的状態などの状態に関して用いられる場合は、当業で公知であり、その中には、組成物を投与されていない対象に対して、対象における医学的状態の症状の頻度、又は発症を減らす組成物の投与が含まれる。従って、転移の抑制には、例えば、未処置のコントロール集団に比較した、予防的処置を受けた患者集団における検出可能な転移性癌成長の数の減少、及び/又は、未処置のコントロール集団に対して処置を受けた集団における検出可能な転移性癌成長の出現の、例えば
統計上及び/又は臨床上有意な量による遅延が含まれる。
【0082】
用語「置換された」とは、骨格上の一つ以上の炭素に付いた水素を置換する置換基を有する部分を言う。「置換」又は「置換された」には、このような置換が、置換される原子及び置換基の許容可能な原子価に従ったものであり、再配列、環化、除去等による転換を自発的には行わないなど、置換の結果安定な化合物ができるとう暗黙の前提が含まれるものと理解されよう。ここで用いられる場合の用語「置換された」には、有機化合物のあらゆる許容可能な置換基が含まれるものと考察される。広い局面では、許容可能な置換基には、有機化合物の非環式及び環式、分枝式及び非分枝式、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の置換基が含まれる。
【0083】
許容可能な置換基は、適した有機化合物によっては一つ以上であっても、また同じもしくは異なっていてもよい。本発明の目的のためには、窒素などのヘテロ原子は、水素置換基、及び/又は、ヘテロ原子の原子価を満たす、ここで解説された有機化合物のいずれかの許容可能な置換基を有していてもよい。置換基には、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(例えばカルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、又はアシル)、チオカルボニル(例えばチオエステル、チオアセテート、又はチオホルメート)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、又は芳香族もしくはヘテロ芳香族部分を含めることができる。当業者であれば、炭化水素鎖上で置換される部分はそれら自体、適当であれば置換することができることは理解されよう。
【0084】
当該の処置法に関して、ある化合物の「治療上有効量」とは、所望の投薬計画の一部として(哺乳動物、好ましくはヒト)に投与された場合に、処置しようとする障害又は状態にとって臨床上許容可能な標準に従って、例えばいずれかの医学的処置に適用される妥当な利益/リスク比でなどで、疾患状態の症状を軽減する、状態を緩和する、又は発症を遅延させる、製剤中の化合物量を言う。
【0085】
用語「チオエーテル」とは、上に定義した通り、硫黄部分をそれに結合させて有するアルキル基を言う。好適な実施態様では、「チオエーテル」は-S-アルキルで表される。代表的なチオエーテル基には、メチルチオ、エチルチオ等がある。
【0086】
ここで用いられる場合の用語「処置する」又は「処置」には、症状、臨床上の兆候、及び、ある状態の基礎病理を、対象の状態を向上させる又は安定させる態様で逆行させる、減らす、又は停止させることが含まれる。
【0087】
転移性癌
本発明によれば、ペプチドエポキシケトン又はその薬学的に許容可能な塩を、限定はしないが血液の悪性腫瘍、充実性腫瘍、神経芽腫、又は黒色腫を含む癌の転移の抑制に用いることができる。
【0088】
本発明のいくつかの実施態様では、プロテアソーム阻害剤の投与は、転移性腫瘍が同定された後に開始される。本発明の他の実施態様では、プロテアソーム阻害剤の投与は、原発性癌腫瘍が同定された後に開始される。いくつかの好適な実施態様では、プロテアソーム阻害剤の投与は、原発性腫瘍が同定された後、しかし転移性腫瘍が検出される前に開始される。本発明のいくつかの実施態様では、プロテアソーム阻害剤は、転移性癌に易罹患性の個体に予防的に投与される。
【0089】
いくつかの実施態様では、当該の癌は、びまん性大B細胞リンパ腫 (DLBCL)、T細胞リンパ腫又は白血病(例えば皮膚性T細胞リンパ腫(CTCL)、非皮膚性末梢T細胞リンパ腫、ヒトT細胞リンパ増殖性ウィルス(HTLV)に関連するリンパ腫、及び成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病(例えば急性単球性白血病及び急性前骨髄球性白血病)、慢性リンパ球性白血病(例えば慢性B細胞白血病)、慢性骨髄性白血病、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫(例えばバーキットリンパ腫)、骨髄腫、多発性骨髄腫、及び脊髄異形成症候群から選択される血液の癌である。いくつかの実施態様では、癌は多発性骨髄腫である。いくつかの実施態様では、癌はリンパ腫である。
【0090】
いくつかの実施態様では、癌は、中皮腫、脳神経芽腫、網膜芽細胞腫、 神経膠腫、ウィルムス腫瘍、骨の癌、及び軟組織の肉腫、頭部及び頸部の癌(例えば口腔、喉頭及び食道)、泌尿生殖器の癌(例えば前立腺、膀胱、腎臓、子宮、卵巣、精巣、直腸、結腸直腸及び結腸)、肺癌(例えば扁平細胞癌及び腺癌を含む、小細胞癌及び非小細胞肺癌)、乳癌、膵臓癌、基底細胞癌、転移性皮膚癌、扁平細胞癌(潰瘍性及び乳頭状型の両者を含む)、胃癌、脳の癌、肝臓癌、副腎癌、腎臓癌、甲状腺癌、髄様癌、骨肉腫、軟組織肉腫、ユーイング肉腫、小神経膠腫、及びカポジ肉腫から選択される充実腫瘍、神経芽腫、又は黒色腫である。いくつかの実施態様では、癌は、乳癌、子宮頚癌、結腸直腸癌、腎臓癌、肺癌、黒色腫、卵巣癌(例えば卵巣腺癌)、膵臓癌及び前立腺癌から選択される。
【0091】
いくつかの実施態様では、癌は乳房、子宮頸管、結腸直腸、血液、腎臓、肺、黒色腫、神経、膵臓及び前立腺癌から選択される。
【0092】
更に、ここに記載された癌のいずれかの小児型も含まれる。更に本発明は、薬剤耐性腫瘍の処置方法も提供するものである。いくつかの実施態様では、前記の薬剤耐性腫瘍は多発性骨髄腫である。他の実施態様では、薬剤耐性腫瘍は充実腫瘍である。用語「薬剤耐性」とは、ここで用いられる場合、内因性の耐性又は獲得された耐性を示す状態を言う。
【0093】
用語「内因性の耐性」とは、ここで用いられる場合、限定はしないが、それらの正常な相対物に比較してより急速な癌細胞の成長能に寄与する、アポトーシス、細胞進行及びDNA修復を含む関係する経路における鍵となる遺伝子の、癌細胞における特徴的な発現プロファイルを言う。
【0094】
用語「獲得性耐性」とは、ここで用いられる場合、ある薬物に対する癌細胞の感受性に影響し得る腫瘍形成及び進行で生じる多因子性の現象を言う。獲得性耐性は、限定はしないが:薬物−標的の変化、薬物蓄積の減少、細胞内薬物分布の変化、薬物−標的相互作用の減少、解毒応答の増加、細胞周期の調節不全、損傷したDNAの修復増加、及びアポトーシス性応答の低下などの複数の機序を原因とすると考えられる。これらの機序のいくつかは同時に起きる、及び/又は、相互作用している場合がある。それらの活性化及び/又は不活性化は、遺伝子又は後成的事象が原因であったり、あるいは腫瘍ウィルスタンパク質の存在が原因であったりする。獲得性耐性が個々の薬物に対して起きることもあるが、更により広く、異なる化学構造及び異なる作用機序を持つ多数の異なる薬物に起きることもある。この形の耐性は多剤耐性と呼ばれる。
【0095】
ペプチドエポキシケトンプロテアソーム阻害剤の投与
ここで記載した通りのペプチドエポキシケトンプロテアソーム阻害剤は、当業で公知の通り、処置しようとする障害や、患者の年齢、状態及び体重に応じて多様な形で投与することができる。例えば、当該化合物を経口投与する場合は、それらを、錠剤、カプセル、顆粒、粉末、又はシロップとして調合してもよく、あるいは非経口投与の場合には、それらを注射液(静脈内、筋肉内、又は皮下)、液滴輸注製剤、又は座薬として調合してもよい。眼粘膜経路による適用の場合、それらを目薬又は眼用軟膏として調合してもよい。これらの調合物は従来の集団によって調製することができ、そして必要に応じて、活性成分を、例えば結合剤又は崩壊剤、潤滑剤、矯正薬、可溶化剤、懸濁補助剤、乳濁剤、コーティング剤、シクロデキストリン、及び/又は緩衝液など、いずれの従来の添加剤又は医薬品添加物と混合してもよい。投薬量は患者の症状、年齢、及び体重や、処置又は防止しようとする障害の性質及び重篤度、投与経路及び全体的な薬物の形に応じて様々であろうが、0.01 乃至2000 mg の化合物の一日当たりの投薬量が成人のヒトの患者には推奨され、またこれを一回の用量にして、又は分割した用量にして投与してもよい。一回分の剤形を作製するのに担体材料と配合することのできる活性成分量は、一般的には、治療効果を生じる化合物量であろう。
【0096】
ある患者において処置の効果という点で最も有効な結果を生じるであろう、組成物の投与時点及び/又は量は、特定の化合物の活性、薬物動態、及び生物学的利用能や、患者の生理的条件(年齢、性別、疾患の種類及び段階、全身の健康状態、投薬量への応答性、及び医薬の種類を含む)、投与経路等に依るであろう。しかしながら、上記の指針は、例えば投与の最適な時間及び/量を判断するなど、処置の微調整の基盤として用いることができ、それには、対象の観察並びに投薬量及び/又はタイミングの調節から成る慣例的な実験しか要さないであろう。
【0097】
文言「薬学的に許容可能な」は、ここでは、過剰な毒性、刺激、アレルギー性反応、又は他の問題もしくは合併症もなく、妥当な利益/リスク比でヒト及び動物の組織に接触させて用いるのに適した、健全な医学的判断の範囲内にあるリガンド、材料、組成物及び/又は投薬剤形を言うために用いられている。
【0098】
文言「薬学的に許容可能な担体」とは、ここで用いられる場合、例えば液体もしくは固定の充填剤、希釈剤、医薬品添加物、溶媒又は封入剤など、薬学的に許容可能な材料、組成物、又は賦形剤を意味する。各担体は、当該調合物の他の成分にとって適合性があり、患者に有害でないという意味において「許容可能」でなければならない。薬学的に許容可能な担体として役立てることのできる物質のいくつかの例には:(1)乳糖、ブドウ糖、及びショ糖などの糖類;(2)コーンスターチ、いもでんぷんなどのでんぷん類、及び置換もしくは非置換β-シクロデキストリン;(3)カルボキシメンチるセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロースなどのセルロース及びその誘導体;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)ココアバター及び座薬用ろうなどの医薬品添加物;(9)ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ごま油、オリーブ油、コーン油、及び大豆油などの油類;(10)プロピレングリコールなどのグリコール類;(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコールなどのポリオール;(12)オレイン酸エチル及びラウリル酸エチルなどのエステル類;(13)寒天;(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;(15)アルギン酸;(16)無発熱源水;(17)等張生理食塩水;(18)リンガー液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝生理食塩水;及び(21)薬剤調合で用いられる他の非毒性適合物質がある。いくつかの実施態様では、本発明の医薬組成物は、無発熱源性であり、即ち、患者に投与された場合に著しい温度上昇を誘発しない。
【0099】
用語「薬学的に許容可能な塩」とは、阻害剤の比較的に非毒性の無機及び有機酸添加塩を言う。これらの塩は、阻害剤の最終的な単離及び精製中にインシツーで調製することも、あるいは、精製済み阻害剤をその遊離塩基形で適した有機もしくは無機酸に別々に反応させ、こうして形成された塩を単離することによって調製することもできる。代表的な塩には、臭化水素酸塩、塩化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチル酸塩、メシル酸塩、グルコヘプトネート、ラクトビオネート、ラウリルスルホネート塩、及びアミノ塩等がある。(例えばBerge et al. (1977) “Pharmaceutical Salts”, J. Pharm. Sci. 66: 1-19を参照されたい)。
【0100】
他の実施態様では、本発明の方法において有用なペプチドエポキシケトンプロテアソーム阻害剤は、一種以上の酸性官能基を含有することで、薬学的に許容可能な塩基と一緒に薬学的に許容可能な塩を形成することができるものかも知れない。これらの場合の用語「薬学的に許容可能な塩」とは、阻害剤の比較的に非毒性の無機もしくは有機塩基添加塩を言う。これらの塩は同様に、阻害剤の最終的な単離及び精製中に異質―で調製することもあるいは、精製済み阻害剤をその遊離酸型で、薬学的に許容可能な金属陽イオン、アンモニアの水酸化物、炭酸化物、又は重炭酸化物などの適した塩基、又は、薬学的に許容可能な有機一級、二級、又は三級アミンに別々に反応させることによっても、調製することができる。代表的なアルカリ又はアルカリ土類塩には、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びアルミニウム塩等がある。塩基添加塩の形成に有用な代表的有機アミンには、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン等がある(例えば上記 Berge et al.を参照されたい)。
【0101】
ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳化剤、及び潤滑剤や、着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味料、香味剤及び芳香剤、保存剤及び抗酸化剤も本組成物中に存在することができる。
【0102】
薬学的に許容可能な抗酸化剤の例には:(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等の水溶性の抗酸化剤;(2)アルコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール (BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン
(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロール等の油溶性の抗酸化剤;及び(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸 (EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等の金属キレート剤がある。
【0103】
経口投与に適した調合物は、それぞれが所定量の阻害剤を活性成分として含有する、カプセル、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ(通常はショ糖及びアカシアゴム又はトラガカントである、着香した基剤を用いて)、粉末、顆粒の形で、あるいは、水性もしくは非水性の液体に入れた溶液又は懸濁液として、あるいは水中油もしくは油中水の液体乳液の形、あるいはエリキシルもしくはシロップの形、あるいは香錠の形(例えばゼラチン及びグリセリンなどの不活性のマトリックス、あるいはショ糖及びアカシアゴムを用いて)及び/又は口内洗浄剤等の形であってよい。また組成物は巨丸剤、舐剤、又はペーストとして投与されてもよい。
【0104】
経口投与用の固体剤形(カプセル、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉末、顆粒等)では、活性成分を、例えばクエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウム、及び/又は、以下:(1)でんぷん、シクロデキストリン、乳糖、ショ糖、ブドウ糖、マンニトール、及び/又は珪酸などの充填剤又は増量剤;(2)例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖、及び/又はアカシアゴムなどの結合剤;(3)グリセロールなどの湿潤剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、いも又はタピオカでんぷん、アルギン酸、特定の珪酸塩、及び炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(5)パラフィンなどの溶解遅延剤;(6)四級アンモニウム化合物などの吸収加速剤;(7)アセチルアルコール及びものステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤;(8)カオリン及びベントナイト・クレイなどの吸収剤;(9)ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物などの潤滑剤、並びに(10)着色剤のいずれかなど、一種以上の薬学的に許容可能な担体と混合してもよい。カプセル、錠剤、及び丸剤の場合には、医薬組成物は緩衝剤も含んでもよい。同様な種類の固形組成物を、ラクトース即ち乳糖や高分子量ポリエチレングリコール等の医薬品添加物を用いた軟質及び硬質充填ゼラチンの充填剤として利用してもよい。いくつかの実施態様では、結晶質トリペプチドエポキシケトンをカプセルとして哺乳動物に投与する。他の実施態様では、結晶質トリペプチドエポキシケトンは式(I)の化合物である。より好適な実施態様では、結晶質トリペプチドエポキシケトンは式(II)の化合物である。
【0105】
錠剤は、選択的には一種以上の付属成分を用いて、圧縮又は成型によって作製されよう。圧縮錠剤は結合剤(例えばゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性の希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えばグリコール酸でんぷんナトリウム又は架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤又は分散剤を用いて調製できよう。成型錠剤は、不活性の液体希釈剤で湿らせた粉末状の阻害剤の混合物を適した機械で成型することにより、作製できよう。
【0106】
糖衣錠、カプセル、丸剤、及び顆粒などの錠剤及び他の固形剤形は、選択によっては、切り目を入れたり、あるいは、腸溶コーティングや医薬調合業で公知の他のコーティングなど、コーティング及びシェル剤と一緒に調製したりしてもよい。更にそれらは、様々な比率で所望の放出プロファイルを提供するためのヒドロキシプロピルメチルセルロースなどを用いたり、他のポリマー・マトリックス、リポソーム、及び/又はマイクロスフィアなどを用いたりして、中の活性成分の放出を遅らせる又はコントロールできるように調合されていてもよい。それらは、例えば細菌保持フィルターを通したろ過、あるいは、無禁水、又は他の無菌の注射可能な媒質に使用直前に溶解させることのできる無菌の固形組成物の形の滅菌剤を取り入れることにより、滅菌できよう。更にこれらの組成物は選択的には乳白剤を含有させてもよく、またこれらは、胃腸管の特定部分でのみ、又は優先的に、選択的には遅れて活性成分を放出する組成物であってもよい。用いることのできる包埋組成物の例にはポリマー物質及びろうがある。更に活性成分は、適していれば、一種以上の上記の医薬品添加物を加えたマイクロ封入型であってもよい。
【0107】
経口投与用の液体剤形には、薬学的に許容可能な乳液、マイクロ乳液、溶液、懸濁液、シロップ、及びエリキシルがある。液体剤形には、活性成分に加え、例えば水もしくは他の溶媒など、当業で通常用いられる不活性の希釈剤、可溶化剤、及び、例えばエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油類(特に綿実油、くるみ油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油、及びごま油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにこれらの混合物などの乳化剤を加えてもよい。
【0108】
経口用組成物には、不活性の希釈剤の他に、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味料、着香料、着色剤、芳香剤、及び保存剤などのアジュバントも含めることができる。
【0109】
活性阻害剤に加え、懸濁液には、例えばエチキシル化イソステアリールアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、重水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカント、並びにこれらの混合物などの懸濁剤を含めてもよい。
【0110】
直腸又は膣投与用の調合物を座薬として提供してもよく、この座薬は、一種以上の阻害剤を、室温では固体であるが体温では液体であるために直腸又は膣腔で融解して活性成分を放出するココアバター、ポリエチレングリコール、座薬用ろう又はサリチル酸塩などを含む、一種以上の適した非刺激性医薬品添加物又は担体と混合することにより、調製できよう。膣投与に適した調合物には、更に、適していることが当業で公知のものなどの担体を含有する、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、又はスプレー調合物がある。
【0111】
阻害剤の局所又は経皮投与のための剤形には、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ、及び吸入剤がある。活性成分を無菌条件下で薬学的に許容可能な担体と、そして必要かも知れないいずれかの保存剤、緩衝剤、又は推進薬と混合してもよい。
【0112】
軟膏、ペースト、クリーム、及びゲルは、阻害剤に加え、動物性及び植物性脂肪、油類、ろう、パラフィン、でんぷん、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、珪酸、タルク、及び酸化亜鉛、又はこれらの混合物などの医薬品添加物を含有してもよい。粉末及びスプレーは、阻害剤に加え、乳糖、タルク、珪酸、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム、及びポリアミド粉末、又はこれらの物質の混合物を含むことができる。スプレーは、クロロフルオロハイドロカーボンなどの慣例的な推進薬や、ブタン及びプロパンなどの揮発性の非置換炭化水素を含むことができる。
【0113】
本阻害剤を選択的にはエーロゾルで投与することができる。これは、本組成物を含有する水性のエーロゾル、リポソーム性製剤、又は固形粒子を調製することにより、達成される。非水性(例えばフルオロカーボン推進薬)懸濁液を用いることができよう。音波ネブライザーは、化合物の分解を引き起こし得るせん断力への薬剤の暴露を抑えるため、好ましい。
【0114】
通常、水性のエーロゾルは、薬剤の水溶液又は懸濁液を、従来の薬学的に許容可能な担体及び安定化剤と一緒に調合することにより、作製される。担体及び安定化剤は、特定の組成物の要件に応じて様々であるが、典型的には非イオン性の界面活性剤(Tweens, Pluronics、ソルビタンエステル、レシチン、Cremophors)、ポリエチレングリコールなどの薬学的に許容可能な共溶媒、血清アルブミンなどの無害のタンパク質、オレイン酸、グリシンなどのアミノ酸、緩衝剤、塩類、糖類、又は糖アルコールが含まれる。エーロゾルは一般的には等張の溶液から調製される。
【0115】
経皮パッチは、阻害剤への身体への送達を制御できるという付加的な長所を有する。このような剤形は、適した媒質に薬剤を溶解させる又は分散させることにより、作製することができる。吸収促進剤を用いて、皮膚を横切る阻害剤のフラックスを増加させることもできる。このようなフラックスの速度は、速度制御膜を提供する、又は、阻害剤をポリマー・マトリックスのゲル中に分散させることにより、制御することができる。
【0116】
非経口投与に適した本発明の医薬組成物は、一種以上の阻害剤を、一種以上の薬学的に許容可能な無菌の水性もしくは非水性の溶液、分散液、懸濁液又は乳液と、あるいは、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、調合物を目的のレシピエントの血液と等張にする溶質、あるいは懸濁剤又は増粘剤を含有してもよい、使用直前に無菌の注射可能な溶液又は分散液に再構築し得る無菌粉末と、組み合わせて含む。
【0117】
本発明の医薬組成物中に用いてもよい、適した水性及び非水性の担体の例には、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、及びこれらの混合物、オリーブ油などの植物油、並びに、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルがある。適した流動性は、例えばレシチンなどのコーティング材料を用いたり、分散液の場合には必要な粒子サイズを維持したり、そして界面活性剤を使用するなどにより、維持することができる。
【0118】
これらの組成物にはまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、及び分散剤などのアジュバントを含めてもよい。微生物の活動の防止は、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸等の多様な抗菌剤及び抗カビ剤を含有させることで、確実にできよう。更に、例えば糖類、塩化ナトリウム等の張性調節薬を組成物中に含めることが好ましいこともあろう。加えて、注射可能な薬剤系の吸収を長引かせるには、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなど、吸収を遅らせる薬剤を含有させることにより、可能であろう。
【0119】
場合によっては、薬物の効果を長引かせるために、皮下又は筋肉内注射からの薬物の吸収を遅くすることが好ましい。例えば、非経口投与された薬物型の吸収遅延は、薬物を油性の賦形剤に溶解又は懸濁させることにより、達成される。
【0120】
注射可能なデポー型は、ポリラクチド-ポリグリコリドなどの生分解可能なポリマー中に阻害剤のマイクロカプセル・マトリックスを形成することにより、作製される、薬物対ポリマーの比によって、そして用いる特定のポリマーの性質によって、薬物放出の速度を制御することができる。他の生分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)がある。デポー型の注射可能な調合物はまた、身体組織に適合性あるリポソーム又はマイクロ乳液中に薬物を捕獲することによっても調製される。
【0121】
薬剤の製剤は、経口、非経口、局所、又は直腸投与されてもよい。もちろんそれらは、各投与経路に適した形で与えられる。例えばそれらは、錠剤又はカプセル型で、注射、吸入、眼用ローション、軟膏、座薬、輸注により;ローション又は軟膏により局所で;そして座薬により直腸を通じて、投与される。経口投与が好ましい。
【0122】
文言「非経口投与」及び「非経口的に投与される」とは、ここで用いられる場合、通常は注射により、腸管及び局所投与以外の投与形態を意味し、その中には、限定はしないが、静脈内、筋肉内、動脈内、鞘内、嚢内、眼窩内、心臓内、
皮内、腹腔内、経気管、皮下、角皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内及び胸骨内注射並びに輸注がある。
【0123】
文言「全身投与」、「全身投与される」、「末梢投与」及び「末梢投与される」は、ここで用いられる場合、リガンド、薬物、又は他の物質が患者の全身に入り、従って代謝及び他の同様のプロセスを受けるように、例えば皮下投与など、中枢神経系以外に直接それを投与することを意味する。
【0124】
これらの阻害剤は、スプレーなどにより経口、鼻腔、直腸、膣内、非経口、槽内、及び粉末、軟膏又は頬側及び舌下を含むドロップによる局所を含め、いずれかの適した投与経路により、治療のためにヒト及び他の動物に投与できよう。
【0125】
選択した投与経路に関係なく、適した水和型及び/又は本発明の医薬組成物中で用いてもよい阻害剤は、当業者に公知の従来法で薬学的に許容可能な剤形に調合される。
【0126】
本発明の医薬組成物中の活性成分の実際の投薬レベルは、患者に毒性となることなく、特定の患者、組成、及び投与形態にとって望ましい治療的応答を達成するのに有効な活性成分量が得られるように変更してもよい。
【0127】
薬学的に許容可能な混合物中の開示された化合物の濃度は、投与する化合物の投薬量、用いる化合物の薬物動態上の特徴、及び投与経路を含め、複数の因子に応じて様々であろう。一般的には、本発明の組成物は、非経口投与の場合には、他の物質の中でも、ここで開示した化合物を約0.1-10% w/v 含有する水溶液中に提供されるであろう。典型的な投薬範囲は体重1kg当り一日当り約0.01 乃至約50 mg/kgであり、1乃至4回に分割された用量で与えられる。各分割された用量は、本発明の同じ又は異なる化合物を含有してもよい。投薬量は患者の全身の健康、及び選択された化合物の処方及び投与経路を含む複数の因子に応じた有効量であろう。
【0128】
併用療法
本発明の局面の一つは転移性癌の処置に関し、この場合、ペプチドエポキシケトン又は薬学的に許容可能なその塩を一種以上の他の治療薬と一緒に投与する。このような併用処置は、当該処置の個々の成分の同時、逐次、又は別々の投薬によって達成してもよい。
【0129】
いくつかの実施態様では、一種以上の他の治療薬が、HDAC阻害剤、抗生物質、タキサン、抗増殖性/項有糸分裂性アルキル化剤、プラチナ配位錯体、ステロイド、免疫調節物質、トポイソメラーゼ阻害剤、m-TOR阻害剤、プロテインキナーゼ阻害剤、別のプロテアソーム阻害剤又は放射線治療から選択される。
【0130】
いくつかの実施態様では、他の治療薬はHDAC阻害剤(例えばトリコスタチンA、デプシペプチド、アピシジン、A-161906、スクリプタイド、PXD-101、CHAP、酪酸、デプデシン、オキサムフラチン、フェニルブチレート、ヴァルプロン酸、 SAHA (ヴォリノスタット)、MS275 (N-(2-アミノフェニル)-4-[N-(ピリジン-3-イルメトキシ-カルボニル)アミノメチル]ベンズアミド)、LAQ824/LBH589、CI994、及びMGCD0103)である。
【0131】
いくつかのこのような実施態様では、他の薬剤はSAHA(スベロイルアニリドヒドロキサミン酸)である。
【0132】
いくつかの実施態様では、他の治療薬は抗生物質(例えばダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン、ドキソルビシン及びイダルビシン)である。いくつかのこのような実施態様では、他の治療薬はドキソルビシンを含む。いくつかのこのような実施態様では、他の治療薬はドキシルである。
【0133】
いくつかの実施態様では、他の治療薬はタキサン(例えばパクリタキセル及びドセタキセル)である。
【0134】
いくつかの実施態様では、他の治療薬は、ナイトロジェン・マスタード(例えばメクロレタミン、イフォスファミド、シクロホスファミド及び類似体、メルファラン及びクロラムブシル)などの抗増殖性/抗有糸分裂性アルキル化剤である。いくつかのこのような実施態様では、他の治療薬はシクロホスファミド又はメルファランである。
【0135】
いくつかの実施態様では、他の治療薬はプラチナ配位錯体(例えばシスプラチン及びカルボプラチン)である。いくつかのこのような実施態様では、他の治療薬はカルボプラチンである。
【0136】
いくつかの実施態様では、他の治療薬はステロイド(例えばヒドロコルチゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン及びプレドニゾロン)である。いくつかのこのような実施態様では、他の治療薬はデキサメタゾンである。
【0137】
いくつかの実施態様では、他の治療薬は免疫調節剤(例えばサリドマイド、CC-4047 (アクチノミド)、及びレナリドマイド(レヴリミド)である。いくつかのこのような実施態様では、他の治療薬はレナリドマイドである。
【0138】
いくつかの実施態様では、他の治療薬はトポイソメラーゼ阻害剤(例えばイリノテカン、トポテカン、カンプトテシン、ラメラリンD、及びエトポシド)である。
【0139】
いくつかの実施態様では、他の治療薬はm-TOR
阻害剤(例えばCCI-779、AP23573 及び RAD-001)である。
【0140】
いくつかの実施態様では、他の治療薬はプロテインキナーゼ阻害剤(例えばソラフェニブ、イマチニブ、ダサチニブ、スニチニブ、パゾパニブ、及びニロチニブ)である。いくつかのこのような実施態様では、プロテインキナーゼ阻害剤はソラフェニブである。
【0141】
ペプチドエポキシケトンの投与は数分から数日の範囲の間隔を置いて、他の治療薬の前であっても、又は後であってもよい。いくつかのこのような実施態様では、ペプチドエポキシケトン及び他の治療薬を互いに約1分以内、約5分以内、約10分以内、約30分以内、約60分以内、約2時間以内、約4時間以内、約6時間以内、8時間以内、約10時間以内、約12時間以内、約18時間以内、約24時間以内、約36時間以内、又は更に約48時間以内、又はそれ以上の時間以内で投与してもよい。好ましくは、ペプチドエポキシケトン及び他の治療薬の投与は互いに約1分以内、約5分以内、約30分以内、又は更に約60分以内であるとよい。
【0142】
いくつかの実施態様では、ペプチドエポキシケトン及び他の治療薬を異なる投薬スケジュールで投与してもよく(例えばペプチドエポキシケトンを一日に一回投与し、他の治療薬を3週間毎に一回のみ、投与してもよい)、その結果、場合によっては、ペプチドエポキシケトン及び他の治療薬の投与は互いに約60分以内となり、他の場合では、ペプチドエポキシケトン及び他の治療薬の投与は、互いに数日以内又は数週間以内となるであろう。
【0143】
ここで用いられる場合の用語「計画」とは、癌処置用の一種以上の治療薬の所定のスケジュールである。従って、ある治療薬を「単独で」投与する場合、当該計画には、癌処置用の別の治療薬の使用は含まれない。
【0144】
いくつかの実施態様では、ここで記載した組合せは性質上相乗的であってもよく、つまり、ペプチドエポキシケトン及び他の治療薬の組合せの治療上の効果が、個々の効果の合計よりも大きいことを意味する。
【0145】
いくつかの実施態様では、ここで記載した組合せは性質上、相加的であってもよく、つまり、ペプチドエポキシケトン及び他の治療薬の組合せの治療上の効果が、各薬剤の個々の効果よりも大きい(即ち、治療効果は、個々の効果の合計である)。
【0146】
実施例
実施例1
6−8週齢のメスのBALB/c マウスの乳房の脂肪体に4T1乳癌細胞 (1X105/マウス)で抗原刺激した。処置は腫瘍刺激後3日目に開始した。化合物1をQDX2 又はQDX5の週間スケジュールで30 又は 40 mg/kg にして経口投与した。
【0147】
化合物1処置により、肺内の転移性腫瘍数が約50%、減少した。検査された化合物1の両方の投薬スケジュール及び投薬レベルが、転移を抑制する上で有効であった(図1)。
【0148】
均等物
当業者であれば、ここに記載された化合物及び使用法の数多くの均等物を認識され、又はごく慣例的な実験を用いるのみで確認できることであろう。このような均等物は本発明の範囲内にあるとみなされ、また以下の請求項の包含するところである。
【0149】
上記の参考文献及び公開文献のすべてを、引用をもってここに援用することとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療上有効量のペプチドエポキシケトンプロテアソーム阻害剤又はその薬学的に許容可能な塩を投与するステップを含む、癌の転移を抑制する方法。
【請求項2】
前記ペプチドエポキシケトンが式(I);
【化9】

又はその薬学的に許容可能な塩の構造を有し、但し式中、
各Ar は個別に、選択的に1乃至4個の置換基で任意に置換された芳香族又はヘテロ芳香族基であり;
L はC=O、C=S、及びSO2から選択され;
X はO、S、NH、及びN-C1-6アルキルから選択され;
Y は存在しないか、又はC=O
及びSO2から選択され;
Z は存在しないか、又はC1-6アルキルであり;
R1、R2、及びR3
はそれぞれ個別にC1-6アルキル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6アルコキシアルキル、アリール、及びC1-6アラルキルから選択され、それらのいずれかは任意に置換されており;
R4 はN(R5)L-Z-R6であり;
R5 は水素、OH、C1-6アラルキル-Y-、及びC1-6アルキル-Y-から選択され;
R6 は水素、OR7、C1-6アルケニル、Ar-Y-、カルボシクリル、及びヘテロシクリルから選択され;そして
R7 及びR8 は個別に水素、C1-6アルキル、及び C1-6アラルキルから選択される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ペプチドエポキシケトンは式(II);
【化10】

又はその薬学的に許容可能な塩の構造を有し、但し式中、
L はC=O、C=S、及び SO2から選択され;
X はOであり;
Z は存在しないか、C1-6アルキル、又はC1-6アルコキシであり;
R1、R2、及びR3
はそれぞれ個別に水素、C1-6アルキル、C1-6アルケニル、C1-6アルキニル、C1-6ヒドロキシアルキル、C1-6アルコキシアルキル、アリール、C1-6アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、C1-6ヘテロシクロアルキル、C1-6ヘテロアラルキル、カルボシクリル、及びC1-6カルボシクロアルキルから選択され;
R4 は水素、C1-6アラルキル、及びC1-6アルキルから選択され;
R5 はヘテロアリールであり;そして
R6 及びR7 は個別に水素、C1-6アルキル、及びC1-6アラルキルから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ペプチドエポキシケトンが以下:
【化11】

又は薬学的に許容可能なその塩の構造を有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記癌が乳房、子宮頸管、結腸直腸、血液、腎臓、肺、黒色腫、神経、膵臓又は前立腺である、請求項1乃至4に記載の方法。
【請求項6】
前記ペプチドエポキシケトンが経口投与される、請求項1乃至5に記載の方法。
【請求項7】
一種以上の付加的な治療薬を投与するステップを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
予防上有効量のペプチドエポキシケトンプロテアソーム阻害剤を個体に投与するステップを含む、転移性癌に易罹患性であると同定された個体を処置する方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−510867(P2013−510867A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538988(P2012−538988)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/056395
【国際公開番号】WO2011/060179
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(510094115)オニキス セラピューティクス, インク. (5)
【氏名又は名称原語表記】ONYX THERAPEUTICS, INC.
【Fターム(参考)】