説明

転造装置

【課題】被加工物をセンタで両側から支持する場合でも、転造加工の位相を任意に調整できる転造装置を提供する。
【解決手段】ワークWを支持する一方のセンタである操作センタ53が取り付けられる操作センタスリーブ60に、内壁面の形状がワークWの外周面の形状に合わせて形成される位相合わせガイド64を取り付け、ワークWが位相合わせガイド64の内側に嵌挿されるように操作センタ53でワークWを支持する。そして、ダイス32aとワークWとが同期して回転するようにダイス32aと操作センタスリーブ60とをサーボモータで回転させて転造加工を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の転造装置として、被加工物(ワーク)の外周面をセレーションやスプラインなどの凹凸形状に転造加工する装置であって、両側からワークをセンタで支持し、ダイスを回転させながらワークに押し当てて転造加工するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、センタが取り付けられたセンタ台をワークに対して移動させるサーボモータを設け、ワークを自動的にセンタで支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−254074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の装置のようにワークをセンタで両側から支持するものは、チャックでワークの外周面を把持するものに比して、ワークを精度よく支持して精度良く転造加工を行うことができるものの、転造加工を開始するときには、静止したワークに対してダイスを回転させながら押し当てるため、ワークを複数箇所において転造加工するときに、それぞれの位相を任意に調整することができない。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、被加工物をセンタで両側から支持する場合でも、転造加工の位相を任意に調整できる転造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る転造装置は、
第1の凹凸部を有する被加工物にダイスで転造加工を行い、前記第1の凹凸部とは異なる位置に第2の凹凸部を形成する転造装置であって、
前記被加工物の一端側に位置する第1のセンタと、前記被加工物の他端側に位置する第2のセンタと、を備え、前記第1のセンタと前記第2のセンタとで前記被加工物を両側から挟んで支持する支持手段と、
前記第1の凹凸部が挿通され、前記被加工物の軸方向から見て前記第1の凹凸部の凹凸が所定の配置になるように前記被加工物を案内する、前記被加工物とともに同軸で回転するガイドと、
前記ガイドの回転角と前記ダイスの回転角とのうちの少なくとも一方を制御する制御手段と、
を備える。
【0007】
前記第1の凹凸部は、前記第2の凹凸部の転造加工前に、転造加工されたものであってもよい。
【0008】
前記転造装置は、
前記ガイドが取り付けられる介在部材と、
前記介在部材が取り付けられ回転する回転部材と、をさらに備えてもよく、
前記制御手段は、前記回転部材の回転角を制御することによって、前記ガイドの回転角を制御してもよい。
この場合、前記介在部材は、前記ガイドが取り付けられる部位に孔が形成されてなり、前記ガイドは、前記ガイドの所定の部位から前記孔に所定のピンが嵌挿されて前記介在部材に取り付けられてもよい。
【0009】
前記転造装置は、
前記ガイドが取り付けられ回転する回転部材と、をさらに備えてもよく、
前記制御手段は、前記回転部材の回転角を制御することによって、前記ガイドの回転角を制御してもよい。
この場合、前記回転部材は、前記ガイドが取り付けられる部位に孔が形成されてなり、前記ガイドは、前記ガイドの所定の部位から前記孔に所定のピンが嵌挿されて前記回転部材に取り付けられてもよい。
【0010】
前記第1のセンタは、前記ガイドとともに同軸で回転してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の転造装置によれば、被加工物をセンタで両側から支持する場合でも、転造加工の位相を任意に調整できる転造装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る転造装置の概略構成図である。
【図2】転造装置を図1中A−A方向から見たAA視図である。
【図3】転造装置を図1中B−B方向から見たBB視図である。
【図4】図2中の操作センタ周辺を拡大した拡大図である。
【図5】操作センタ周辺を図1中C−C方向から見たCC視図である。
【図6】位相合わせガイドが取り付けられたときの図2中の操作センタ周辺を拡大した拡大図である。
【図7】位相合わせガイドが取り付けられたときの操作センタ周辺を図1中C−C方向から見たCC視図である。
【図8】変形例の転造装置の操作センタ周辺を拡大した拡大図である。
【図9】変形例の転造装置の操作センタ周辺を図1中C−C方向から見たCC視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る転造装置20の構成図、かつ、転造装置20を上から見た平面図を含む図であり、図2は、転造装置20を図1中A−A方向から見たAA視図であり、図3は、転造装置20を図1中B−B方向から見たBB視図である。図1から図3では、被加工物(ワーク)Wの一端の領域が既に転造加工されて加工部位Wr1が形成され、2カ所目の領域を転造加工して加工部位Wr2を形成する際の様子を示している。なお、図2では、見やすさを考慮して、断面に付すハッチングを適宜省略している。
【0014】
転造装置20は、ベッドS上に設置される。転造装置20は、ダイス32a,32bを回転させながら円柱状のワークWに押し当ててワークWの外周面を転造加工する装置である。転造装置20は、図1から図3に示すように、ダイスを回転させながらワークWに押し当て、ワークWを転造加工して、前記ワークWの外周面の所定位置に凹凸部を形成する加工機構30と、ワークWを支持する支持機構40と、支持機構40やこの支持機構40に支持されたワークWを加工機構30に対して移動させるワーク移動機構70と、転造装置20全体を駆動制御するコンピュータ90とを備える。以下、ワークWに押し当てるためにダイス32a,32bを移動させる方向(図1中、上下方向、図3中、左右方向)を「左右方向」といい、ワーク移動機構70で支持機構40やワークWを移動させる方向(図1および図2中、左右方向)を「前後方向」という。
【0015】
加工機構30は、2つのダイス32a,32bと、ダイス32a,32bの回転軸としてダイス32a,32bを内側から軸支する主軸34a,34bと、この主軸34a,34bを回転可能に支持する主軸台36a,36bと、主軸34a,34bに動力を出力してダイス32a,32bを同一方向に回転駆動するダイス回転用の図示しないサーボモータを備える。2つのダイス32a,32bは、それぞれ、円柱形状であり、その外周面には、ワークWを転造加工するのに用いられる加工歯が形成されている。2つのダイス32a,32bは、それぞれ、主軸34a,34bに着脱可能に取り付けられる。なお、2つのダイス32a及び32bは、一組のダイスを構成するが、この一組のダイスは、ワークWに転造加工して形成したい凹凸部の形状に対応した加工歯をそれぞれ有する。なお、この一組のダイスは、複数組の中から、転造加工したい凹凸部の形状に合わせて選択されて用いられる。主軸台36a,36bは、複数のブロック39a〜39dを備える。主軸台36a,36bは、転造装置20が設置されたベッドS上で左右方向に伸びるレール38a〜38cにブロック39a〜39dが係合するように載置され、ダイス移動用の図示しないサーボモータによってレール38a〜38c上を滑動し、ワークWに対するダイス32a,32bの位置を左右方向に調整可能に構成されている。
【0016】
支持機構40は、ワークWの加工機構30側(図1および図2中の右側、以下、後側という)の一端を支持する後部センタ機構42と、この後部センタ機構42が支持する側とは反対側(図1および図2中の左側、以下、前側という)のワークWの一端を支持する操作センタ機構50と、伸縮機構48と、を備える。後部センタ機構42と操作センタ機構50とは、伸縮機構48を介して連結されており、前後方向に配設されるレール46上を一体に滑動できるように構成されている。また、伸縮機構48は、エアシリンダ48aとシリンダロッド48bとエアシリンダ48aへの空気の供給・排出を行う図示しない空気供給排出機構とを備え、エアシリンダ48aへの空気の供給・排出によって、前後方向に伸縮する(シリンダロッド48bが前後方向に移動する)。この伸縮によって、後部センタ機構42が操作センタ機構50に対して相対的に移動し、ワークWがクランプ・アンクランプされる。
【0017】
後部センタ機構42は、ワークWの後端に当接してワークWを支持する後部センタ43と、レール46に係合されたブロック45と、ブロック45の上面に設けられて後部センタ43が取り付けられる後部センタ台44とから構成される。後部センタ43は、その先端が尖形に形成されており、ダイス32a,32bの回転中心と後部センタ43の先端とがベッドSに対して等しい高さになるよう後部センタ台44に取り付けられる。
【0018】
操作センタ機構50は、ワークWの前端に当接してワークWを支持する操作センタ53と、レール46に係合されたブロック55と、ブロック55の上面に設けられる移動台54と、ブッシュ62と、移動台54に回転自在に軸受されると共にブッシュ62を介して操作センタ53が取り付けられる操作センタスリーブ60と、ブッシュ62に取り付けられる位相合わせガイド64と、プーリ57a,57bと、ベルト58と、プーリ57a,57b及びベルト58を介して操作センタスリーブ60を回転させるスリーブ回転用のサーボモータ59と、を備える。操作センタ53は、後部センタ43と同様に、その先端が尖形に形成されており、ダイス32a,32bの回転中心と操作センタ53の先端とが等しい高さになるようブッシュ62を介して操作センタスリーブ60に取り付けられる。また、操作センタ機構50は、レール46より下部に、ブロック55に連結されたナット56をさらに備える。
【0019】
図4に、位相合わせガイド64がブッシュ62に取り付けられていないときの図2の操作センタ53周辺を拡大した拡大図(断面図)を示し、図5に、このときの操作センタ53を後側(図1中、C−C方向)から見た一例を示す。図4に示すように、実施例の転造装置20では、操作センタスリーブ60は、例えば金属などにより中空の円管状に形成され、内側にブッシュ62が取り付けられる。
【0020】
ブッシュ62は、例えば金属などにより形成され、操作センタ53を内側に支持可能で且つ位相合わせガイド64を内側に取り付け可能な形状として、図4および図5に示すように、一端が、操作センタ53が挿入されるときに空気が抜ける孔を有する閉口端に、他端が、位相合わせガイド64を取り付け可能なように一段拡管された開口端に形成されている。ブッシュ62には、操作センタ53を収納する孔が形成されており、この孔に操作センタ53が収納されることによって、操作センタ53を支持する。本実施形態では、ブッシュ62の外周側から回り止めボルト69を操作センタ53に向かって挿入するものとし、これにより、操作センタ53がブッシュ62に対して空回りするのを効果的に抑制している。
【0021】
このブッシュ62は、操作センタスリーブ60の内側に挿入された状態で6箇所において前後方向にブッシュ62から操作センタスリーブ60に向けてネジ(本実施形態ではボルト)67(図5中、符号67a〜67f)によって、ネジ締めすることにより操作センタスリーブ60に取り付けられ、操作センタスリーブ60の回転に伴って一体に回転する。また、本実施形態では、操作センタスリーブ60の外周側から回り止めピン66(ハッチングは省略した。)をブッシュ62に向かって挿入するものとし、これにより、ブッシュ62が操作センタスリーブ60に対して空回りするのを効果的に抑制している。
【0022】
また、ブッシュ62には、位相合わせガイド64が着脱可能に取り付けられる。図6に、位相合わせガイド64が取り付けられたときの図2の操作センタ53周辺を拡大した拡大図(断面図)を示し、図7に、このときの操作センタ53を後側から見た一例を示す。位相合わせガイド64は、例えば金属などにより、貫通孔を有する形状(略円筒形状)に形成され、貫通孔の内壁面64aが、ワークWの外周面に形成されている凹凸部の形状に合わせた形状に予め形成されている。即ち、例えば、ワークWの一端が既にスプラインやセレーションなどの形状に加工されている場合には、このスプラインやセレーションなどの形状に合わせた形状の内壁面64aから構成される貫通孔を有するものを位相合わせガイド64として用いるのである。なお、スプラインやセレーションなどは、その凹凸が他の部分とはことなる異形状部分を有する。これに対応するため、位相合わせガイド64の内壁面64aは、他の凹凸とは異なる異形状部64aaを有する。
【0023】
位相合わせガイド64は、ブッシュ62の内側に挿入されて4カ所において位相合わせガイド64からブッシュ62に向けてネジ68(図7中、68a〜68d)によってネジ締めすることによりブッシュ62に取り付けられる。このように、操作センタスリーブ60に対して着脱可能なブッシュ62に、操作センタ53や位相合わせガイド64を取り付けるものとすることにより、ブッシュ62を操作センタスリーブ60から外した状態で操作センタ53や位相合わせガイド64を取り付けたり取り外したりすることができ、操作センタ53や位相合わせガイド64の着脱を容易に行うことができる。
【0024】
また、本実施形態では、ブッシュ62と位相合わせガイド64とは、ボルト締めのための孔とは別にそれぞれ1つの位置決め孔62h,64hが設けられ、ブッシュ62に位相合わせガイド64を取り付けるときには、位置決め孔62h,64hが同じ位置となるように配置した状態でピンpを位置決め孔62h,64hに挿入して取り付けるものとした。これにより、位相合わせガイド64の位置決めがなされ、位相合わせガイド64を、ブッシュ62に対して適切な角度で取り付けることができる。上記の構成によって、操作センタスリーブ60、ブッシュ62、位相合わせガイド64は、同軸で一体的に回転する。
【0025】
ワーク移動機構70は、操作センタ機構50の移動台54の下部に連結されたナット56と係合するボールネジ76と、2つのプーリ77a,77bおよびベルト78と、2つのプーリ77a,77bおよびベルト78を介してボールネジ76を回転させる支持機構移動用サーボモータ79とを備え、サーボモータ79を駆動してボールネジ76を回転させることにより、ボールネジ76に係合されたナット56を移動させて操作センタ機構50(つまり、支持機構40全体)を前後方向に移動させる。このように操作センタ機構50を移動させることにより、ワーク移動機構70は、ワークWが支持機構40に支持(クランプ)されているときには、支持機構40と支持機構40に支持されたワークWとを一体に前後方向に移動させることができる。
【0026】
次に、こうして構成された転造装置20を用いて円柱形状のワークWを複数箇所において転造加工する際の動作の一例として、ワークWの一端部を転造加工し、加工部位Wr1(第1の凹凸部)を形成する第1の転造加工を行うと共にダイスを交換して加工部位Wr1とは異なる所望の位置を転造加工して、加工部位Wr2(第2の凹凸部)を形成する第2の転造加工を行う際の動作について説明する。なお、ワークWは、ダイス32a,32bによって両端から支持可能なように両端の中心に凹部が形成された円柱状の部材を用いるものとする。また、コンピュータ90は、プログラムの指示に従って、下記の制御を行うものとする。また、コンピュータ90は、操作センタスリーブ60、ダイス32a,32b等の回転角を、図示しない回転角度検出部を用いて適宜検出して、検出した回転角に基づいて、下記の制御(同期回転、回転角の調整等)を行うものとする。
【0027】
まず、第1の転造加工を行うために、操作者がワークWを操作センタ53と後部センタ43との間に配置すると、コンピュータ90は、操作者の操作入力を契機として、空気供給排出機構を制御して、エアシリンダ48aから空気を排出させ、後部センタ台44を前側に移動させ、ワークWを操作センタ53と後部センタ43とで両側から挟んで支持(クランプ)させる。このとき、操作センタ53と後部センタ43とは、それぞれ、その先端が前記の凹部に入り込み、ワークWの先端又は後端に当接する。第1の転造加工を行うときには、ブッシュ62には、位相合わせガイド64が取り付けられないものとしてもよいし(図4および図5参照)、図示しないカバーなどが取り付けられるものとしてもよい。
【0028】
次に、コンピュータ90は、支持機構移動用のサーボモータ79を駆動してボールネジ76を回転させ、支持機構40とワークWとを転造位置に移動させる。つまり、ダイス32a,32bの位置にワークWの加工部位Wr1を形成したい箇所が位置するように、支持機構40とワークWとを移動させる。そして、コンピュータ90は、ダイス回転用のサーボモータによってダイス32a,32bを同一方向に同期回転させながら、ダイス移動用のサーボモータによってダイス32a,32bをワークWに押し当ててワークWを転造加工する。これによって、ワークWに加工部位Wr1(第1の凹凸部)が形成される。なお、第1の転造加工では、スリーブ回転用のサーボモータ59を駆動してワークWがダイス32a,32bと同期して回転するように操作センタスリーブ60を回転させるものとしてもよいし、サーボモータ59を駆動せずにダイス32a,32bから受ける力によってワークWを回転させるものとしてもよい。
【0029】
ワークWの第1の転造加工が終了すると、コンピュータ90は、ダイス移動用のサーボモータを駆動してワークWからダイス32a,32bを離すと共にダイス回転用のサーボモータの駆動を停止してダイス32a,32bの回転を停止させ、支持機構移動用のサーボモータ79を駆動して支持機構40を初期位置に戻すと共に、空気供給排出機構を制御して、エアシリンダ48aに空気を供給し、ワークWの支持を解除(アンクランプ)する。操作者は、支持機構40からワークWを取り外す。
【0030】
続いて、第2の転造加工を行うために、操作者は、ダイス32a,32bを取り替えると共にブッシュ62に位相合わせガイド64を取り付ける。この位相合わせガイド64としては、内壁面64aの形状が、第1の転造加工で形成されたワークWの加工部位Wr1の凹凸に合わせて形成されたものを用いることになる。また、位相合わせガイド64を取り付けるときには、操作者は、操作センタ53をワークWに押し当てたときに位相合わせガイド64の孔内にワークWの加工部位Wr1が位置するように操作センタ53の位置も適宜調整する。
【0031】
そして、操作者がワークWを位相合わせガイド64に嵌挿すると、コンピュータ90は、操作者の操作入力を契機として、第1の転造加工のときと同様にワークWを操作センタ53および後部センタ43で支持するとともに、ダイス32a,32bの位置にワークWの加工部位Wr2を形成したい箇所が位置するように、支持機構40とワークWとを移動させる。前記の支持により、ワークWの第1の転造加工で形成された加工部位Wr1の凹凸と位相合わせガイド64の内壁面64aとが係合し、ワークWは、位相合わせガイド64が取り付けられている角度に応じた角度で支持機構40に支持される。即ち、ワークWは、位相合わせガイド64によってワークWの軸方向から見て加工部位Wr1の凹凸が所定の配置になるよう案内されるのである。このような支持によって、ワークWは、操作センタスリーブ60(操作センタ53及び位相合わせガイド64)の回転に伴って、操作センタスリーブ60と同軸で一体的に回転する。
【0032】
こうしてワークWが所定の角度で支持された状態(加工部位Wr1の凹凸が所定の配置になる状態)で、第2の転造加工によって加工・形成される加工部位Wr2の凹凸と前記で形成された加工部位Wr1の凹凸との位相差(例えば、各加工部位における異形状部分の、周方向における位置のずれの差)が所望なものとなるように、コンピュータ90は、ダイス回転用のサーボモータとスリーブ回転用のサーボモータ59とを駆動して、ダイス32a,32bとワークWとを適宜回転させ、ダイス32a,32bの回転角とワークWの回転角とを調整する。ワークWと位相合わせガイド64と操作センタスリーブ60とは一体に回転するので、コンピュータ90は、操作センタスリーブ60を適宜回転させて、操作センタスリーブ60の回転角を調整することによって、位相合わせガイド64の回転角やワークWの回転角を調整する。本実施形態では、コンピュータ90は、ダイス32a,32bの回転角とワークWの回転角との調整を、位相合わせガイド64の位置決め孔64hが真下を向くようにサーボモータ59を駆動して操作センタスリーブ60を回転させるとともに(コンピュータ90は、操作センタスリーブ60の回転角が予め設定される規定値の回転角になるように、操作センタスリーブ60を回転させることによって、この制御を行う。)、ダイス32a,32bが所定の角度となるようにダイス回転用のサーボモータを駆動することによって行う。操作センタスリーブ60の目標の回転角やダイス32a,32bの目標の回転角は、第1の転造加工で用いられるダイス32a,32bの加工歯の形状と第2の転造加工で用いられるダイス32a,32bの加工歯の形状とに基づいて予め定めるものとしてもよいし、幾つかのワークWを試し加工して定めるものとしてもよい。
【0033】
コンピュータ90は、この調整を、ワークWとダイス32a,32bとのうちのいずれかを回転させることによって行ってもよい。例えば、所望の位相差が0°でない場合であって、現在の状態(第2の転造加工における初期状態)において、加工部位Wr2の凹凸と加工部位Wr1の凹凸との位相差を0°とするようにダイス32a,32b及びワークWとが配置されている場合、コンピュータ90は、ダイス32a,32b又は操作センタスリーブ60を所望の位相差分(例えば、90°分)だけ回転させ、両者の回転角を調整するものとしてもよい。
【0034】
いずれにしても、上記のような方法等によって、位相合わせガイド64によって規定される加工部位Wr1の凹凸の所定の配置(加工部位Wr1における異形状部分の、周方向における位置)に基づいて、位相合わせガイド64の回転角とダイス32a,32bの回転角とが制御されることになる。いまは、位相合わせガイド64によってワークWの加工部位Wr1の凹凸が所定の配置となるよう案内されているから、このように位相合わせガイド64の回転角とダイス32a,32bの回転角との少なくとも一方を制御することにより、ワークWの加工部位Wr1の凹凸とダイス32a,32bの加工歯との位相差を任意に調整することができる。
【0035】
コンピュータ90は、前記のようにワークWとダイス32a,32bとの角度を調整すると、ワークWとダイス32a,32bとが同期して回転するようにスリーブ回転用のサーボモータ59とダイス回転用のサーボモータとを駆動しながら、ダイス移動用のサーボモータを駆動してダイス32a,32bをワークWに押し当てて第2の転造加工を行う。これによって、ワークWに加工部位Wr2(第2の凹凸部)が形成される。そして、ワークWの第2の転造加工が終わると、コンピュータ90は、第1の転造加工のときと同様に、ワークWからダイス32a,32bを離すと共にダイス32a,32bの回転を停止し、支持機構40を初期位置に戻して支持機構40によるワークWの支持を解除する。その後、操作者は、支持機構40からワークWを取り外す。
【0036】
第2の転造加工では、位相合わせガイド64によってワークWの加工部位Wr1の凹凸が所定の配置となるように支持されるから、位相合わせガイド64とダイス32a,32bとの少なくとも一方の回転角を制御することにより、ワークWの加工部位Wr1の凹凸とダイス32a,32bの加工歯との位相差を任意に調整でき、この状態でワークWとダイス32a,32bとを同期して回転させて転造加工を行うことにより、ワークWに形成される加工部位Wr2の凹凸の位相を任意に調整することができる。これにより、第1の転造加工と第2の転造加工とによって形成される加工部位Wr1の凹凸と加工部位Wr2の凹凸との位相差を精度よく調整することができる。また、転造装置20では、位相合わせガイド64にワークWが嵌挿された状態で操作センタ53と後部センタ43とによってワークWの両端を支持することにより、チャックによってワークWを把持する場合に比してワークWの外周面が傷つくのを抑制することができる。また、回転軸も安定する。
【0037】
なお、こうした第1の転造加工と第2の転造加工とを複数のワークWに対して行う際には、複数のワークWすべてに対して第1の転造加工を行った後に第2の転造加工を行うことが望ましい。こうすることで、2つ目の以降のワークWについては、ワークWとダイス32a,32bとの位相差が調整された状態で第2の転造加工を行うことができ、効率よく複数のワークWを加工することができる。
【0038】
本実施形態では、上記の構成によって、位相合わせガイド64は、加工部位Wr1が挿通され、ワークWの軸方向から見て加工部位Wr1の凹凸が所定の配置になるように(特に、異形状部分の位置が所定の位置になるように)、ワークWを案内してワークWとともに同軸で回転し、コンピュータ90は、位相合わせガイド64の回転角とダイス32a,32bの回転角とのうちの少なくとも一方を制御する。ワークWは、位相合わせガイド64に加工部位Wr1の凹凸が挿通して支持され、位相合わせガイド64が所定の回転角のときにワークWの加工部位Wr1の凹凸が所定の配置となるから、コンピュータ90が、位相合わせガイド64とダイス32a,32bとの回転角を調整することにより、ワークWの第1の転造加工による加工部位Wr1の凹凸と第2の転造加工による加工部位Wr2の凹凸との位相を任意に調整することができる。
【0039】
以上説明した本発明の一実施例としての転造装置20では、操作センタ53と後部センタ43とによりワークWの両端を支持して転造加工をするから、チャックによりワークWの外周面を把持して転造加工するものに比してワークWの形状精度を精度よく加工を行うことができる。また、ワークWの加工部位Wr1の凹凸が挿通されてワークWの軸方向から見て加工部位Wr1の凹凸が所定の配置となるようにワークWを案内する位相合わせガイド64を設け、位相合わせガイド64の回転角とダイス32a,32bの回転角とを制御するから、ダイス32a,32bによってワークWに施される転造加工の位相を任意に調整することができ、特にワークWを複数箇所において転造加工するときに、それぞれ形成される転造加工部の位相差を精度よく調整することができる。
【0040】
上記の転造装置20では、操作センタ53や位相合わせガイド64は、ブッシュ62(介在部材の一例)を介して操作センタスリーブ60(回転部材の一例)に着脱可能に取り付けられるものとした。これによって、操作センタ53、位相合わせガイド64、ブッシュ62を適宜交換できる(例えば、摩耗時)。また、1つのブッシュ62で、複数種の位相合わせガイド64、操作センタ53を取り付けることができる。また、複数種のブッシュ62も取り付けることができる。また、ブッシュ62は、孔を備え、この孔に操作センタ53が入れられる構成によって、同じブッシュ62で操作センタ53の長さ等が異なる複数種の操作センタ53を適宜ブッシュ62に取り付けることができる。このようにして、必要な部品のみを交換することで、複数種の転造加工に効率良く対応できる。特に、操作センタスリーブ60を交換する必要が無くなる。なお、図8および図9に示すように、ブッシュ62を備えずに操作センタスリーブ60に対して直接に操作センタ53や位相合わせガイド64が取り付けられるものとしてもよい。こうすれば、部品点数を減らすことができると共に操作センタ支持機構50の剛性を高くすることができる。また、この場合、操作センタスリーブ60に位置決め孔が設けられ、操作センタスリーブ60に位相合わせガイド64を取り付けるときには、図9に示すように、操作センタスリーブ60の位置決め孔と位相合わせガイド64の位置決め孔64hとが同じ位置となるように配置した状態でピンpを挿入して取り付けるものとしてもよい。こうすれば、位相合わせガイド64の位置決めがなされ、位相合わせガイド64を、操作センタスリーブ60に対して適切な角度で取り付けることができる。
【0041】
上記の転造装置20では、位相合わせガイド64をブッシュ62に取り付けるときに、位相合わせガイド64とブッシュ62とのそれぞれに設けられた位置決め孔64h,62hにピンpを挿入するものとしたが、位相合わせガイド64に、ブッシュ62の位置決め孔62hに挿入される凸部が設けられるものとしてもよいし、こうした位置決め孔62h,64hやピンpを設けないものとしてもよい。また、上記の転造装置20では、操作センタスリーブ60の外周面からブッシュ62に向けて回り止めピン66が挿入されるものとしたが、こうした回り止めピン66が挿入されないものとしても構わない。
【0042】
上記の転造装置20では、位相合わせガイド64を、ワークWがスプラインやセレーションなどの形状に形成された場合を例として説明したが、ワークWの少なくとも外周面の一部に凹凸を備えるものであれば、この凹凸に合わせて位相合わせガイド64の内壁面64aが形成されるものとすればよい。
【0043】
上記の転造装置20では、外周面に加工歯が形成された2つのダイス32a,32bをワークWに押し当てて転造加工を行うものとしたが、外周面に加工歯が形成された少なくとも1つのダイスがワークWに押し当てられて転造加工が行われるものであればよく、外周面に加工歯が形成された1つのダイスがワークWに押し当てられるものとしたり、3つ以上のダイスがワークWに押し当てられるものとしても構わない。
【0044】
操作センタ53は、回転せずに、位相合わせガイド64のみが回転する構成であってもよい。操作センタ53、位相合わせガイド64は、操作センタスリーブ60と同一の材料で、一体的に形成されたものであってもよい。
【0045】
コンピュータ90は、NC装置であってもよく、ベッドS上に設けられるものとしてもよいし、ベッドSから離れた位置に設置されて制御対象と有線または無線で接続されるものとしてもよい。
【0046】
以上、実施例を用いて本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、様々な変更(構成要素の削除等を含む)をなし得ることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0047】
20 転造装置
30 加工機構
32a,32b ダイス
34a,34b 主軸
36a,36b 主軸台
38a〜38c レール
40 支持機構
42 後部センタ機構
43 後部センタ
44 後部センタ台
45 ブロック
46 レール
48 伸縮機構
50 操作センタ機構
53 操作センタ
54 移動台
55 ブロック
56 ナット
57a,57b,77a,77b プーリ
58,78 ベルト
59,79 サーボモータ
60 操作センタスリーブ
62 ブッシュ
64 位相合わせガイド
62h,64h 位置決め孔
67a〜67f,68a〜68d ネジ
76 ボールネジ
S ベッド
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の凹凸部を有する被加工物にダイスで転造加工を行い、前記第1の凹凸部とは異なる位置に第2の凹凸部を形成する転造装置であって、
前記被加工物の一端側に位置する第1のセンタと、前記被加工物の他端側に位置する第2のセンタと、を備え、前記第1のセンタと前記第2のセンタとで前記被加工物を両側から挟んで支持する支持手段と、
前記第1の凹凸部が挿通され、前記被加工物の軸方向から見て前記第1の凹凸部の凹凸が所定の配置になるように前記被加工物を案内する、前記被加工物とともに同軸で回転するガイドと、
前記ガイドの回転角と前記ダイスの回転角とのうちの少なくとも一方を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする転造装置。
【請求項2】
前記第1の凹凸部は、前記第2の凹凸部の転造加工前に、転造加工されたものである、
ことを特徴とする請求項1に記載の転造装置。
【請求項3】
前記ガイドが取り付けられる介在部材と、
前記介在部材が取り付けられ回転する回転部材と、をさらに備え、
前記制御手段は、前記回転部材の回転角を制御することによって、前記ガイドの回転角を制御する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の転造装置。
【請求項4】
前記介在部材は、前記ガイドが取り付けられる部位に孔が形成されてなり、
前記ガイドは、前記ガイドの所定の部位から前記孔に所定のピンが嵌挿されて前記介在部材に取り付けられる、
ことを特徴とする請求項3に記載の転造装置。
【請求項5】
前記ガイドが取り付けられ回転する回転部材と、をさらに備え、
前記制御手段は、前記回転部材の回転角を制御することによって、前記ガイドの回転角を制御する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の転造装置。
【請求項6】
前記回転部材は、前記ガイドが取り付けられる部位に孔が形成されてなり、
前記ガイドは、前記ガイドの所定の部位から前記孔に所定のピンが嵌挿されて前記回転部材に取り付けられる、
ことを特徴とする請求項5に記載の転造装置。
【請求項7】
前記第1のセンタは、前記ガイドとともに同軸で回転する、
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の転造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−45598(P2012−45598A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191432(P2010−191432)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000133593)株式会社ツガミ (28)