説明

軸体

【課題】軸体を把持した際に指や手の平に接する箇所に滑り止めの効果を発揮させる為、密着性を向上させた把持部を提供する。
【解決手段】軸体表面と押圧面との間にファンデルワールス力が発生する構造を軸体表面に配することによって、効果の高い滑り止め効果を得るとともに、方向性のある吸着であることから容易にはく離する機能を持つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性変形可能な表面構造を有する軸体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
軸体には、把持した際に指や手の平に接する箇所に滑り止めの効果を発揮させる為、弾性樹脂や発泡体が配される。滑り止めの効果を向上させる為に、低硬度の弾性体を配して密着性を向上させた把持部や、把持部の表面に指や手の平に吸着する為の吸盤機能を持つ孔を配した把持部が検討されている。
【特許文献1】特開平3−292200号公報
【特許文献2】特開2009−166341号公報
【非特許文献1】Autumn,k.(2006).How gecko toes stick.American Scientist,94,124−132.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の実施例ではゴム硬度の低い弾性体によって接触面積拡大と摩擦抵抗の向上は可能であるが、低硬度弾性体の表面はべたつきがあることから、使用時の不快感や、汚れの付着等の問題がある。
【0004】
また、特許文献2の実施例では凹陥部が変形して指先と凹陥部で形成される閉空間が減圧状態になって指先に吸着するが、減圧状態になるまで変形させる力が必要であり、更にはく離する際にも同等の力が必要になる為、筆記終了や持ち替えの時に余計な力が必要になる問題がある。
【0005】
本発明の目的は、上記問題を鑑み、軸体、特には軸体の把持部において、指先への吸着能力を発揮する表面構造を配した軸体を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、弾性変形可能な表面構造を有する軸体であって、軸体表面と押圧面との間にファンデルワールス力が発生する表面構造を持つ軸体を第1の要旨とし、軸体表面に可撓性のある突起を設け、可撓時に押圧面との間に発生するファンデルワールス力が大きくなる軸体を第2の要旨とし、軸体表面に一方向に対して可撓しやすい突起を設け、可撓時に押圧面との間に発生するファンデルワールス力が大きくなる軸体を第3の要旨とし、更には可撓性のある突起の突起面に更に可撓性のある突起を設けたことを第4の要旨とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、ファンデルワールス力による吸着を発揮する構造を軸体表面に作製することにより、表面のべたつきがないが滑らない軸体、かつ、滑り止め効果を長期間発揮できる軸体を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明を筆記具に使用した実施例1〜3、並びに、実施例5〜実施例9の斜視図である。
【図2】実施例1の把持部の表面拡大断面図である。
【図3】実施例1の把持部を把持した際の表面拡大断面図である。
【図4】実施例2の把持部の表面拡大断面図である。
【図5】実施例2の把持部を把持した際の表面拡大断面図である。
【図6】実施例3の把持部の表面拡大断面図である。
【図7】実施例3の把持部を把持した際の表面拡大断面図である。
【図8】本発明を筆記具に使用した実施例4の斜視図である。
【図9】(a)8の背面図である。 (b) 図9(a)の表面拡大断面図である。 (c) 図9(b)の表面拡大断面図である。
【図10】(a)図8の拡大図である。 (b) 図10(a)の表面拡大断面図である。
【図11】(a) 実施例5の把持部の表面に複数形成した円柱突起の拡大正面図。 (b) 図11(a)の側面図。 (c) 図11(a)の斜視図。
【図12】(a) 実施例6の把持部の表面に複数形成した円柱突起の拡大正面図。 (b) 図12(a)の側面図。 (c) 図12(a)の斜視図。
【図13】(a) 実施例7の把持部の表面に複数形成した円柱突起の拡大正面図。 (b) 図13(a)の側面図。 (c) 図13(a)の斜視図。
【図14】(a)実施例8の把持部の表面に複数形成した円柱突起の拡大正面図。 (b) 図14(a)の側面図。 (c) 図14(a)の斜視図。
【図15】(a) 実施例9の把持部の斜視図。 (b) 図15(a)の縦断面図。 (c) 図15(b)の拡大図。
【図16】(a) 実施例10の把持部の縦断面図。 (b) 図16(a)の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
平滑なガラス面に貼り付き、移動することができるヤモリの足裏に代表される生物の持つ優れた機能を人工的に再現する「バイオミメティックス」の概念から研究されている「ファンデルワールス力を原理とした吸着能力を発揮する表面構造」を軸体表面に作製するものである。軸体表面と押圧面との間にファンデルワールス力が発生する表面構造としては、ヤモリの足裏にある多段階構造が挙げられる。ヤモリの足裏は微細な毛が密集して生え、この毛の先端部は更に枝分かれした細い毛となり、その毛先はヘラ状になっている。このヘラ状の面部分と吸着対象面との間には密着した際、ファンデルワールス力が発生している。一つのヘラの面で発生するファンデルワールス力による吸着力は微小であるが、足裏に密集した無数の毛の先による当接面積は広くなることから発生する吸着力は大きくなり、対象面に吸着することが出来る(非特許文献1)。このヤモリの足裏の構造や、それを簡略化した構造として突起の天面や先端付近の側面に更に微細な突起を形成した構造であればよい。ファンデルワールス力による吸着は表面構造に方向性を持たせることで、荷重方向に応じて吸着力を制御することが可能であり、把持して紙面方向に力をかける筆記具のように、一定方向に力をかける軸体の滑り止めに最適である。突起やその突起の天面や先端付近の側面に設ける微細な突起に方向性を付与することでファンデルワールス力による吸着力に方向性を付与することが出来る。具体的には押圧に対して可撓しやすい角度と可撓時に押圧面に平行な面が形成される状態を作り出すことによって、押圧後、可撓した方向への荷重に対しては当接面積が大きくなるため、発生するファンデルワールス力が強くなることから強い摩擦抵抗を発揮し滑り止め効果をもたらすが、押圧解除方向や可撓の逆方向への荷重には摩擦抵抗が発生しないため容易にはく離することが可能となる。
【0010】
より具体的な形状としては軸体の表面に形成する多数の円柱状や角柱状といった柱状の突起が一方向に倒れやすいように柱状突起の先端部を一定角度でカットした構造や柱状突起そのものを角度を付けて形成してもよい。発生するファンデルワールス力を強くするために、柱状突起の天面や側面に更に細かい突起を形成した構造でもよい。この細かい突起は柱状突起でも、凸板状でもよいが、ファンデルワールス力が働くために適した方向に倒れやすくなるように先端面に角度を付ける等の形状であることが望ましい。また、突起を軸の周状に連接して形成した環状突起の天面や側面に更に細かい突起を形成した構造でもよく、更には環状突起は断絶した箇所があってもよい。細かい突起は突起の天面や側面に全面に施しても、断続的に施してもよく、例えば、環状突起の天面に対し全周を6分割した3箇所に細かい突起を形成すると共に、その他の3箇所には細かい突起を形成せず、そして、それら突起が形成されている個所と突起が形成されていない個所を交互に配してもよい。柱状突起や細かい突起の先端部をカットする角度や、柱状突起や細かい突起そのものの角度に変化をつけることで、一つの軸体に把持する力や持ち方の違いに広く対応することが可能となる。これらの柱状突起、環状突起及びその天面や側面に設ける細かい突起は一つの軸体の中で複数組み合わせてよく、それらの角度、形状や先端面のカット角度、形状も適宜選択すればよい。
【0011】
表面構造に方向性を持たせることで、一定方向へ力が加わった際にはファンデルワールス力を強くして滑り止め効果を発揮させ、別方向に対してはファンデルワールス力を弱くすることで容易にはく離することが可能となる。また、滑り止め効果を発揮させたい方向を各々設定することが可能となる。例として筆記具の軸体においては親指、人差し指、中指の各指に対する表面構造に異なる方向性を持たせることで、筆記時に紙面方向へ力が加わった際にはファンデルワールス力を強くすることで指先に対して滑り止め効果を発揮させ、持ち替えや離すときに指を開く方向に対してはファンデルワールス力を弱くすることが可能であり、滑り止め効果を効率よく発揮する軸体とすることが出来る。
【0012】
軸体表面と押圧面との間にファンデルワールス力が発生する表面構造を作製する方法としては、成形や切削加工、エッヂングなどが挙げられる。また、基材の表面に化学蒸着気相法によってカーボンナノチューブを配向させることで突起を形成する方法や、集束イオンビーム励起反応を用いて突起を形成する方法も採用できるが、軸体表面と押圧面との間にファンデルワールス力が発生する表面構造が形成できればよく、特に限定されない。
【0013】
押圧面との間にファンデルワールス力が発生する表面構造は、材料が軸体として十分な強度を持つ場合には軸体表面に直接作製することが可能である。また、軸体として十分な強度を持たない材料の場合は、作製した部材を把持部として別の軸体に装着してもよく、その構成は特に限定されない。
【0014】
軸体に使用する材料として、樹脂や弾性樹脂が挙げられるが、軸体表面と押圧面との間にファンデルワールス力が発生する表面構造を形成できるものであればよく、特に限定されない。樹脂としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリスチレン樹脂(PS)、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS)、アクリロニトリルスチレンブタジエン樹脂(ABS)、メタクリル樹脂(PMMA)、ポリアセタール樹脂(POM)、ポリアミド樹脂(PA)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリエチレンテレンテレフタレート樹脂(PET)、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ナイロン樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド、弾性樹脂としてはシリコーン樹脂、ジメチル系シリコーン、メチルビニル系シリコーン、メチルフェニルビニル系シリコーン、メチルフルオロアルキル系シリコーン(フロロシリコーン)、フロロ−ジメチル共重合シリコーン、塩化ビニル、ポリウレタン樹脂、エラストマーゲル、ポリエチレンゲル、ウレタンゴム、エチレンアクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、天然ゴム、イソプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ニトリルゴム、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマーなどが挙げられる。これら樹脂及び/または弾性樹脂は1種または2種以上の混合物であってもよい。
【0015】
図1は、本発明の各軸体を筆記具1の把持部2に使用した実施例1〜実施例3、並びに、実施例5〜実施例9の斜視図である。
図2は実施例1の把持部2の表面を拡大した断面図、図3は図2の把持部の表面に指が当接した図である。参照符号1は筆記具、参照符号2は把持部、参照符号3は円柱突起、参照符号4は指、参照符号5はファンデルワールス力が発生する表面である。
【0016】
実施例1として、筆記具1(油性ボールペン)の把持部2をエラストマー(アクティマーAE−2040S、リケンテクノス(株)製、ショアーA硬度:40°)を用いて射出成形で成形した。把持部2の表面には図2に示す円柱突起3を直径1.0mmで複数形成してある。指が把持部に当接した際、円柱突起が一方向に倒れやすいように円柱突起の先端部は一定角度でカットしてある。この場合、筆記具1のペン先方向に倒れやすいように、ペン先側を高くしたカットにしてある。把持部に触れた指先と把持部表面の間にはファンデルワールス力が発生する。把持した際に指先が把持部表面に触れると図3のように一定方向に倒れるとともに、一定角度(45°)でカットされた円柱突起の先端面と指先が触れる面積が増えることから発生するファンデルワールス力が増大するとともに、円柱突起の復元力が働き、筆記具後方への抵抗も発生するので、ペン先方向への指の滑りを防止することが出来る。また、持ち替えや離すときに上方へ指を移動する際には抵抗は緩和されるので軽い力で持ち替えや離すことが出来る。本実施例では、円柱突起の先端部を45°で一定にカットしているが、45°と60°といった異なる角度にカットしてもよく、それらを一定範囲に分けて配したり、交互に配したりしてもよい。先端部を複数の角度にカットした円柱突起を組み合わせることで、様々な持ち方に対してファンデルワールス力が増大する効果を得ることが可能となる。
【0017】
図4は実施例2の把持部2の表面を拡大した断面図、図5は図4の把持部の表面に指が当接した図である。参照符号1は筆記具、参照符号2は把持部、参照符号3は円柱突起、参照符号4は指、参照符号5はファンデルワールス力が発生する表面である。
【0018】
実施例2として、筆記具1(油性ボールペン)の把持部2を(ラバロンME5302C、三菱化学(株)製、ショアーA硬度:60度)を用いて射出成形で成形した。把持部2の表面には図2に示す円柱突起3を直径0.3mmで複数形成してある。指が把持部に当接した際、円柱突起が一方向に倒れやすいように円柱突起を一定角度(20°)傾け、その先端部を一定角度(45°)でカットしてある。この場合、筆記具1のペン先方向に倒れやすいように、ペン先側へ傾斜させかつ、ペン先側を高くしたカットにしてある。把持部に触れた指先と把持部表面の間にはファンデルワールス力が発生する。把持した際に指先が把持部表面に触れると図5のように一定方向に倒れるとともに、一定角度でカットされた円柱突起の先端面と指先が触れる面積が増えることから発生するファンデルワールス力が増大するとともに、円柱突起の復元力が働き、筆記具後方への抵抗も発生するので、ペン先方向への指の滑りを防止することが出来る。また、持ち替えや離すときに上方へ指を移動する際には抵抗は緩和されるので軽い力で持ち替えや離すことが出来る。本実施例では、円柱突起を20°で一定に傾けているが、20°と40°といった異なる角度に傾けてもよく、それらを一定範囲に分けて配したり、交互に配したりしてもよい。また円柱突起の先端部を45°で一定にカットしているが、45°と60°といった異なる角度にカットしてもよく、それらを一定範囲に分けて配したり、交互に配したりしてもよい。複数の角度に傾けた円柱突起や先端部を複数の角度にカットした円柱突起を組み合わせることで、様々な持ち方に対してファンデルワールス力が増大する効果を得ることが可能となる。
【0019】
図6は実施例3の把持部2の表面を拡大した断面図、図7は図6の把持部の表面に指が当接した図である。参照符号1は筆記具、参照符号2は把持部、参照符号3は円柱突起、参照符号4は指、参照符号5はファンデルワールス力が発生する表面、参照符号6は微小突起である。
【0020】
実施例3として、筆記具1(油性ボールペン)の把持部2を(ラバロンME5302C、三菱化学(株)製、ショアーA硬度:60度)を用いて射出成形で成形した。把持部2の表面には図6に示す円柱突起3を直径1.0mmで複数形成してある。指が把持部に当接した際、円柱突起が一方向に倒れやすいように円柱突起を一定角度(20°)傾け、その先端部を一定角度(45°)でカットしてある。そのカットした面には面に対して90°に微小突起6を直径0.3mmで設けてある。この場合、筆記具1のペン先方向に倒れやすいように、ペン先側へ傾斜させかつ、ペン先側を高くしたカットにしてある。把持部に触れた指先と把持部表面の間にはファンデルワールス力が発生する。把持した際に指先が把持部表面に触れると図7のように一定方向に倒れるとともに、一定角度でカットされた微小突起の先端面と指先が触れる面積が増えることから発生するファンデルワールス力が増大するとともに、円柱突起の復元力が働き、筆記具後方への抵抗も発生するので、ペン先方向への指の滑りを防止することが出来る。この時、微小突起の倒れによって指先の接触面積が増えファンデルワールス力が増大するとともに、円柱突起の倒れによる抵抗が発生するため、把持する力によって滑り止めの効果は変化する。つまり、弱い力で把持した際には、微小突起の倒れによる滑り止め効果のみが働き、少し強く把持すると微小突起の倒れに加え円柱突起が倒れるため微小突起のみの滑り止め効果より強い滑り止めとなり、更に強く把持すると微小突起の倒れと円柱突起の倒れが最大となり滑り止め効果も最大となる。また、持ち替えや離すときに上方へ指を移動する際には抵抗は緩和されるので軽い力で持ち替えや離すことが出来る。
【0021】
図8は、本発明の軸体を筆記具1の把持部2に使用した実施例4の正面図である。図9は実施例4の把持部2を拡大した正面図、図10は図9の把持部の背面図である。図9a、図9b、図10aはそれぞれの箇所の拡大図である。参照符号1は筆記具、参照符号2は把持部、参照符号3は円柱突起である。
【0022】
実施例4として、筆記具1(油性ボールペン)の把持部2をジメチル系シリコーンゴム(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製、TSE2570−6U、ショアーA硬度:40°)を用いて成形した。把持部2の表面には図2に示す円柱突起3を直径0.5mmで複数形成してある。筆記具1のペン先方向に対し、正面側に人差し指、親指、背面側に中指が当接することを想定し、各指が筆記時に力を入れたときに倒れやすいように正面側においては、45°の配列で筆記具の中心線を境に傾斜方向を90°変えた対照配置とし、背面側では筆記具の中心線に対し、垂直方向に配列している。指が把持部に当接した際、力が入る方向に倒れやすいように円柱突起の先端部を配列を基準に一定角度(45°)でペン先側を高くしたカットにしてある。把持部に触れた指先と把持部表面の間にはファンデルワールス力が発生する。把持した際に指先が把持部表面に触れると円柱突起が一定方向に倒れるとともに、一定角度でカットされた円柱突起の先端面と指先が触れる面積が増えることから発生するファンデルワールス力が増大するとともに、円柱突起の復元力が働き、筆記具後方への抵抗も発生する。更に各指に対して最適な方向への傾倒と復元力を発揮することで、ペン先方向への指の滑りをより防止することが出来る。また、持ち替えや離すときに上方へ指を移動する際には抵抗は緩和されるので軽い力で持ち替えや離すことが出来る。
【0023】
図11aは実施例5の把持部2の表面に複数形成した円柱突起3の拡大正面図、図11bは図11aの側面図、図11cは図11aの斜視図である。参照符号1は筆記具、参照符号2は把持部、参照符号3は円柱突起、参照符号6は微小突起である。
【0024】
実施例5として、筆記具1(油性ボールペン)の把持部2をジメチル系シリコーンゴム(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製、TSE2570−6U、ショアーA硬度:40°)を用いて成形した。指が把持部に当接した際、円柱突起が一方向に倒れやすいように円柱突起の先端部は一定角度でカットしてある。この場合、筆記具1のペン先方向に倒れやすいように、ペン先側を高くしたカットにしてある。そのカットした面には微小板状突起をペン先方向に対して垂直方向に設けてある。把持部に触れた指先と把持部表面の間にはファンデルワールス力が発生する。把持した際に指先が把持部表面に触れると円柱突起および、微小板状突起は一定方向に倒れ、微小板状突起の先端面と指先が触れる面積が増えることから発生するファンデルワールス力が増大するとともに、円柱突起および、微小板状突起の復元力が働き、筆記具後方への抵抗も発生するので、ペン先方向への指の滑りを防止することが出来る。この時、微小板状突起の倒れによって指先の接触面積が増えファンデルワールス力が増大するとともに、円柱突起の倒れによる抵抗が発生するため、把持する力によって滑り止めの効果は変化する。つまり、弱い力で把持した際には、微小板状突起の倒れによる滑り止め効果のみが働き、少し強く把持すると微小板状突起の倒れに加え円柱突起が倒れるため微小板状突起のみの滑り止め効果より強い滑り止めとなり、更に強く把持すると微小板状突起の倒れと円柱突起の倒れが最大となり滑り止め効果も最大となる。また、持ち替えや離すときに上方へ指を移動する際には抵抗は緩和されるので軽い力で持ち替えや離すことが出来る。
【0025】
図12aは実施例6の把持部2の表面に複数形成した円柱突起3の拡大正面図、図12bは図12aの側面図、図12cは図12aの斜視図である。参照符号1は筆記具、参照符号2は把持部、参照符号3は円柱突起、参照符号6は微小突起である。
【0026】
実施例6として、筆記具1(油性ボールペン)の把持部2をエラストマー(アクティマーAE−2040S、リケンテクノス(株)製、ショアーA硬度:40°)を用いて成形した。指が把持部に当接した際、円柱突起が一方向に倒れやすいように円柱突起の先端部は一定角度でカットしてある。この場合、筆記具1のペン先方向に倒れやすいように、ペン先側を高くしたカットにしてある。そのカットした面には微小板状突起をペン先方向に対して垂直方向から45°傾けて設けてある。把持部に触れた指先と把持部表面の間にはファンデルワールス力が発生する。把持した際に指先が把持部表面に触れると円柱突起は一定方向に倒れるとともに、微小板状突起は45°傾いた方向へ倒れ、微小板状突起の先端面と指先が触れる面積が増えることから発生するファンデルワールス力が増大するとともに、円柱突起および、45°方向の異なる微小板状突起の復元力が働き、筆記具後方への抵抗も発生するので、ペン先方向への指の滑りを防止することが出来る。この時、微小板状突起の倒れによって指先の接触面積が増えファンデルワールス力が増大するとともに、円柱突起の倒れによる抵抗が発生するため、把持する力によって滑り止めの効果は変化する。つまり、弱い力で把持した際には、微小板状突起の倒れによる滑り止め効果のみが働き、少し強く把持すると微小板状突起の倒れに加え円柱突起が倒れるため微小板状突起のみの滑り止め効果より強い滑り止めとなり、更に強く把持すると微小板状突起の倒れと円柱突起の倒れが最大となり滑り止め効果も最大となる。また、持ち替えや離すときに上方へ指を移動する際には抵抗は緩和されるので軽い力で持ち替えや離すことが出来る。
【0027】
図13aは実施例7の把持部2の表面に複数形成した円柱突起3の拡大正面図、図13bは図13aの側面図、図13cは図13aの斜視図である。参照符号1は筆記具、参照符号2は把持部、参照符号3は円柱突起、参照符号6は微小突起である。
【0028】
実施例7として、筆記具1(油性ボールペン)の把持部2をエラストマー(ラバロンME7301C、三菱化学(株)製、ショアーA硬度:70度)を用いて成形した。指が把持部に当接した際、円柱突起が一方向に倒れやすいように円柱突起をペン先方向へ一定角度(20°)傾け、その先端部を一定角度(55°)でカットしてある。この場合、筆記具1のペン先方向に倒れやすいように、ペン先側を高くしたカットにしてある。そのカットした面には面に対して垂直方向に微小突起6を複数設け、微小突起の先端部はペン先方向に対して45°傾けてカットある。把持部に触れた指先と把持部表面の間にはファンデルワールス力が発生する。把持した際に指先が把持部表面に触れると円柱突起は一定方向に倒れるとともに、微小突起は90°傾いた方向へ倒れ、微小突起の先端面と指先が触れる面積が増えることから発生するファンデルワールス力が増大するとともに、円柱突起および、45°方向の異なる微小突起の復元力が働き、筆記具後方への抵抗も発生するので、ペン先方向への指の滑りを防止することが出来る。この時、微小突起の倒れによって指先の接触面積が増えファンデルワールス力が増大するとともに、円柱突起の倒れによる抵抗が発生するため、把持する力によって滑り止めの効果は変化する。つまり、弱い力で把持した際には、微小突起の倒れによる滑り止め効果のみが働き、少し強く把持すると微小突起の倒れに加え円柱突起が倒れるため微小突起のみの滑り止め効果より強い滑り止めとなり、更に強く把持すると微小突起の倒れと円柱突起の倒れが最大となり滑り止め効果も最大となる。また、持ち替えや離すときに上方へ指を移動する際には抵抗は緩和されるので軽い力で持ち替えや離すことが出来る。
【0029】
図14aは実施例8の把持部2の表面に複数形成した円柱突起3の拡大正面図、図14bは図14aの側面図、図14cは図14aの斜視図である。参照符号1は筆記具、参照符号2は把持部、参照符号3は円柱突起、参照符号6は微小突起である。
【0030】
実施例8として、筆記具1(油性ボールペン)の把持部2をエラストマー(アクティマーAE−2040S、リケンテクノス(株)製、ショアーA硬度:40°)を用いて成形した。指が把持部に当接した際、円柱突起が一方向に倒れやすいように、その先端部を一定角度(45°)でカットしてある。この場合、筆記具1のペン先方向に倒れやすいように、ペン先側を高くしたカットにしてある。そのカットした面には面に対して垂直方向に微小突起6を複数設け、微小突起の先端部はペン先方向に対して45°傾けてカットある。把持部に触れた指先と把持部表面の間にはファンデルワールス力が発生する。把持した際に指先が把持部表面に触れると円柱突起は一定方向に倒れるとともに、微小突起は90°傾いた方向へ倒れ、微小板状突起の先端面と指先が触れる面積が増えることから発生するファンデルワールス力が増大するとともに、円柱突起および、45°方向の異なる微小突起の復元力が働き、筆記具後方への抵抗も発生するので、ペン先方向への指の滑りを防止することが出来る。この時、微小突起の倒れによって指先の接触面積が増えファンデルワールス力が増大するとともに、円柱突起の倒れによる抵抗が発生するため、把持する力によって滑り止めの効果は変化する。つまり、弱い力で把持した際には、微小突起の倒れによる滑り止め効果のみが働き、少し強く把持すると微小突起の倒れに加え円柱突起が倒れるため微小突起のみの滑り止め効果より強い滑り止めとなり、更に強く把持すると微小突起の倒れと円柱突起の倒れが最大となり滑り止め効果も最大となる。また、持ち替えや離すときに上方へ指を移動する際には抵抗は緩和されるので軽い力で持ち替えや離すことが出来る。
【0031】
図15は実施例9の把持部2の表面に複数形成した環状突起3の拡大側面図である。参照符号1は筆記具、参照符号2は把持部、参照符号3は環状突起、参照符号6は微小板状突起である。
【0032】
実施例9として、筆記具1(油性ボールペン)の把持部2をエラストマー(アクティマーAE−2040S、リケンテクノス(株)製、ショアーA硬度:40°)を用いて成形した。把持部2の表面には、周状に環状突起が設けられ、その環状突起の先端部には微小環状突起6が周状に複数設けられ、微小環状突起の先端は指が把持部に当接した際、一方向に倒れやすいように一定角度(45°)でカットしてある。この場合、筆記具1のペン先方向に倒れやすいように、ペン先側を高くしたカットにしてある。把持部に触れた指先と把持部表面の間にはファンデルワールス力が発生する。把持した際に指先が把持部表面に触れると環状突起および、微小環状突起は一定方向に倒れ、微小環状突起の先端面と指先が触れる面積が増えることから発生するファンデルワールス力が増大するとともに、環状突起および、微小環状突起の復元力が働き、筆記具後方への抵抗も発生するので、ペン先方向への指の滑りを防止することが出来る。この時、微小環状突起の倒れによって指先の接触面積が増えファンデルワールス力が増大するとともに、円柱突起の倒れによる抵抗が発生するため、把持する力によって滑り止めの効果は変化する。つまり、弱い力で把持した際には、微小環状突起の倒れによる滑り止め効果のみが働き、少し強く把持すると微小環状突起の倒れに加え円柱突起が倒れるため微小環状突起のみの滑り止め効果より強い滑り止めとなり、更に強く把持すると微小環状突起の倒れと円柱突起の倒れが最大となり滑り止め効果も最大となる。また、持ち替えや離すときに上方へ指を移動する際には抵抗は緩和されるので軽い力で持ち替えや離すことが出来る。
【0033】
図16aは実施例10の把持部2の表面に複数形成した円柱突起3の拡大側面図、図16bは図16aの斜視図である。参照符号1は筆記具、参照符号2は把持部、参照符号3は円柱突起である。

【0034】
実施例10として、筆記具1(油性ボールペン)の把持部2をエラストマー(ラバロンMJ6301C、三菱化学(株)製、ショアーA硬度:60度)を用いて射出成形で成形した。把持部2の表面には図16aに示す円柱突起3を直径0.5mmで高さを2.0mmと1.5mmで複数形成してある。指が把持部に当接した際、円柱突起が一方向に倒れやすいように円柱突起の先端部は高さを2.0mmの柱状突起は30°、1.5mm柱状突起は45°の角度でカットしてある。この場合、筆記具1のペン先方向に倒れやすいように、ペン先側を高くしたカットにしてある。把持部に触れた指先と把持部表面の間にはファンデルワールス力が発生する。把持した際に指先が把持部表面に触れると、まず2.0mm、30°の柱状突起が一定方向に倒れる。一定角度でカットされた円柱突起の先端面と指先が触れる面積が増えることから発生するファンデルワールス力が増大するとともに、円柱突起の復元力が働き、筆記具後方への抵抗も発生するので、ペン先方向への指の滑りを防止することが出来る。更に強く把持し2.0mm、30°の柱状突起がある程度倒れると、指先は1.5mm、45°の柱状突起に触れ、1.5mm、45°の柱状突起も一定方向に倒れる。一定角度でカットされた円柱突起の先端面と指先が触れる面積が増えることから発生するファンデルワールス力が更に増大するとともに、円柱突起の復元力が働き、筆記具後方への抵抗も発生するので、ペン先方向への指の滑りを更に防止することが出来る。また、持ち替えや離すときに上方へ指を移動する際には抵抗は緩和されるので軽い力で持ち替えや離すことが出来る。本実施例では、円柱突起の先端部を45°と30°で一定にカットしているが、異なる角度を複数組み合わせてカットしてもよく、それらを一定範囲に分けて配したり、交互に配したりしてもよい。先端部を複数の角度にカットした円柱突起を組み合わせることで、様々な持ち方に対してファンデルワールス力が増大する効果を得ることが可能となる。
【0035】
比較例1として、筆記具1(油性ボールペン)の把持部2をエラストマー(ラバロンT320C、三菱化学(株)製、ショアーA硬度:15度)を用いて表面には突起なく成形した。把持部表面は低硬度のエラストマー特有のべたつきがあるため、把持した際には滑り止め効果は高いが、持ち替えや離すときに指に貼り付いてしまうことから不快感や、余計な力が必要になってしまう。
【0036】
比較例2として、筆記具1(油性ボールペン)の把持部2をジメチル系シリコーンゴム(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン製、TSE2570−6U、ショアーA硬度:40°)を用いて表面にディンプル形状の孔を多数開けた。把持した際にはディンプル内が減圧されるため指に貼り付き滑り止め効果は高いが、持ち替えや離すときに指に貼り付いてしまうことから不快感や、余計な力が必要になってしまう。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、内部に空間がある弾性体において、空間内面に擬似接着性を有する物質を配したこと弾性体に関するものである。その弾性体の利用例としては、クッション、座席シート、マットレス等から、シャープペンシルやボールペン、修正ペンなどの筆記具、カッターや彫刻刀、ドライバーなどの工具類、PDA(パーソナル デジタル アシスタンス)や電子手帳に使用される入力ペン等の軸体の把持部、自転車のハンドルなど多岐にわたる。
【符号の説明】
【0038】
1 筆記具
2 把持部
3 突起
4 指
5 ファンデルワールス力が発生する表面
6 微小突起


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形可能な表面構造を有する軸体であって、軸体表面と押圧面との間にファンデルワールス力が発生する表面構造を持つ軸体。
【請求項2】
軸体表面に可撓性のある突起を設け、可撓時に押圧面との間に発生するファンデルワールス力が大きくなる請求項1に記載の軸体。
【請求項3】
軸体表面に一方向に対して可撓しやすい突起を設け、可撓時に押圧面との間に発生するファンデルワールス力が大きくなる請求項1に記載の軸体。
【請求項4】
可撓性のある突起の突起面に更に可撓性のある突起を設けた請求項1から3に記載の軸体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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