説明

軽圧下ガイドロールセグメント

【課題】軽量化、コンパクト化しても必要とするフレーム剛性の確保が可能な軽圧下ガイドロールセグメントを提供する。
【解決手段】移動する鋳片11の上、下面を挟んで圧下する上、下ロール12、13をそれぞれ回転自由に保持する上、下フレーム14、15と、上、下フレーム14、15の前後の左右両側にそれぞれ設けられ、上、下フレーム14、15を連結する連結軸16を備えた締結手段17〜20とを有し、下フレーム15は設置フレーム22に支持された軽圧下ガイドロールセグメント10において、4本の連結軸16が接続される下フレーム15の直下をそれぞれ第1の支持部材31を介して設置フレーム22に固定し、下ロール13の左右両側をそれぞれ支持する下軸受25が取付けられた下フレーム15の直下を第2の支持部材28を介して設置フレーム22で支持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラブ用やブルーム用の連続鋳造設備におけるガイドロールセグメントに係り、詳しくは、鋳片の中心偏析を軽減するために軽圧下操業を行う軽圧下ガイドロールセグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、スラブ用やブルーム用の連続鋳造設備では、中心偏析等の鋳片内部品質の向上を狙い、鋳片サイズを大きくした大断面鋳片サイズの連続鋳造設備が求められている。そして、これら大断面鋳片サイズの連続鋳造設備においては、中心偏析を抑制するために、上、下ロールで鋳片の凝固部を上下方向から圧下し、未凝固部の溶鋼流動を抑制、もしくは上下の凝固部同士を圧着させることで中心偏析を低減し、鋳巣の少ない鋳片を鋳造する軽圧下操業が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−312955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された発明では、鋳片サイズの大断面化に伴い、軽圧下操業時の鋳片からの圧下反力が増大し、上、下ロールの変位量を小さく抑えるために、上、下ロールをそれぞれ保持する上、下フレームの剛性を高くする設計が必要となっている。特に、下フレームには、下ロールを介して下フレームを下方に押下げる荷重が作用すると共に、上、下フレームを連結する連結軸が接続される下フレームの前後の左右両側の接続部に下フレームを上方に持上げる上向きの荷重が作用して、下フレームには曲げモーメントが作用することになる(図6及び図7(A)参照)。そこで、これら荷重で生じる曲げモーメントによる下フレームの変形を抑制するため、下フレームの断面サイズを増大させることによる下フレームの剛性増大が図られ、下フレームの重量が増加していた。その結果、下フレームを設置するための設置スペースが拡大すると共に、下フレームを製作する素材の重量が増大し、設備費が増大するという問題を招いていた。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、軽量化、コンパクト化しても必要とするフレーム剛性の確保が可能な軽圧下ガイドロールセグメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う本発明に係る軽圧下ガイドロールセグメントは、移動する鋳片の上、下面を挟んで圧下する上、下ロールをそれぞれ回転自由に保持する上、下フレームと、前記上、下フレームの前後の左右両側にそれぞれ設けられ、該上、下フレームを連結する連結軸を備えた締結手段とを有し、前記下フレームは設置フレームに支持された軽圧下ガイドロールセグメントにおいて、
4本の前記連結軸が接続される前記下フレームの直下を、それぞれ第1の支持部材を介して前記設置フレームに固定し、前記下ロールの左右両側をそれぞれ支持する下軸受が取付けられた前記下フレームの直下を、第2の支持部材を介して前記設置フレームで支持している。
【0007】
本発明に係る軽圧下ガイドロールセグメントにおいて、前記連結軸の軸心は平面視して前記第1の支持部材内にあることが好ましい。
【0008】
本発明に係る軽圧下ガイドロールセグメントにおいて、前記連結軸の下部は前記下フレーム及び前記第1の支持部材を貫通し、前記設置フレームに直接固定することもできる。
【0009】
本発明に係る軽圧下ガイドロールセグメントにおいて、前記第2の支持部材は、前記下フレームの前側及び後側の左右にあることが好ましい。
また、前記下フレームの左右にある前記第2の支持部材は、それぞれ一体となっていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る軽圧下ガイドロールセグメントにおいては、4本の連結軸が接続される下フレームの直下をそれぞれ第1の支持部材を介して設置フレームに固定し、下ロールの左右両側をそれぞれ支持する下軸受が取付けられた下フレームの直下を第2の支持部材を介して設置フレームで支持するので、鋳片を上、下ロールで圧下した際に発生する圧下反力により下フレームに曲げモーメントが作用しても、下フレームの変形を抑制することができる。このため、下フレーム自体の剛性を低減させることができ、下フレームの小型化に伴う軽量化が可能になる。その結果、下フレーム(軽圧下ガイドロールセグメント)の製造コストを低減させることができると共に、設置スペースの削減による設置コストの低減も可能になる。
【0011】
本発明に係る軽圧下ガイドロールセグメントにおいて、連結軸の軸心が平面視して第1の支持部材内にある場合、下フレームに曲げモーメントが作用しても、下フレームの変形を確実に抑制することができる。
【0012】
本発明に係る軽圧下ガイドロールセグメントにおいて、連結軸の下部が下フレーム及び第1の支持部材を貫通し、設置フレームに直接固定されている場合、連結軸を介して下フレームの前後の左右両側に作用する曲げモーメントがなくなり、下フレーム自体の剛性を更に低減させることができる。
【0013】
本発明に係る軽圧下ガイドロールセグメントにおいて、第2の支持部材が、下フレームの前側及び後側の左右にある場合、下ロールに加わる圧下反力による下フレームの変形を抑制することができる。
また、下フレームの左右にある第2の支持部材が、それぞれ一体となっている場合、下ロールに加わる圧下反力による下フレームの変形を更に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施の形態に係る軽圧下ガイドロールセグメントを模式的に示す正面図である。
【図2】同軽圧下ガイドロールセグメントを模式的に示す側面図である。
【図3】同軽圧下ガイドロールセグメントの設置フレームと第1及び第2の支持部材との関係を示す図1のA−A矢視断面図である。
【図4】同軽圧下ガイドロールセグメントの設置フレームと第1の支持部材及び変形例に係る第2の支持部材との関係を示す図1のA−A矢視断面図である。
【図5】(A)は同軽圧下ガイドロールセグメントの下フレームと設置フレームとの固定方法を示す説明図、(B)は(A)のP−P矢視断面図である。
【図6】従来技術の軽圧下ガイドロールセグメントを模式的に示す正面図である。
【図7】(A)は従来技術の軽圧下ガイドロールセグメントの下フレームに加わる曲げモーメントの説明図、(B)は本発明の軽圧下ガイドロールセグメントの下フレームに加わる曲げモーメントの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1、図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る軽圧下ガイドロールセグメント10は、移動する鋳片11の上、下面を挟んで圧下する上、下ロール12、13をそれぞれ回転自由に保持する上、下フレーム14、15と、上、下フレーム14、15の前後の左右両側にそれぞれ設けられ、上、下フレーム14、15を連結する連結軸16を備えた締結手段17、18、19、20を有し、下フレーム15は、下部が図示しない連続鋳造設備の基台21に固定された設置フレーム(機械フレーム又はベースフレーム)22に支持されている。
【0016】
上ロール12は、上フレーム14の下面側で左右の連結軸16で挟まれた内側領域に鋳片11の移動(鋳造)方向に沿って、上ロール12の軸心を左右方向(鋳片11の移動方向に直交する方向、すなわち鋳片11の幅方向)に向けて上軸受23を介して取付けられている。なお、上ロール12は、上ロール12の左右両側と軸方向の中間部(図1では1箇所)をそれぞれ上軸受23で支えられ、上軸受23は、前後方向(鋳片11の移動方向)に沿って配置される各上ロール12の軸心の高さ位置が、鋳片11に対して同一となるように、上フレーム14の下面側に設けられた上軸受取付部24に取付けられている。
【0017】
一方、下ロール13は、下フレーム15の上面側で左右の連結軸16で挟まれた内側領域に鋳片11の移動方向に沿って、下ロール13の軸心を左右方向に向けて下軸受25を介して取付けられている。なお、下ロール13は、下ロール13の左右両側と軸方向の中間部(図1では1箇所)をそれぞれ下軸受25で支えられ、下軸受25は、前後方向に沿って配置される各下ロール13の軸心の高さ位置が、鋳片11に対して同一となるように、下フレーム15の下面側に設けられた下軸受取付部26に取付けられている。
なお、複数の上、下ロール12、13中のいずれか1対は図示しない電動機の回転軸と接続し図示しない油圧シリンダーを用い鋳片11に移動力を与える駆動ロールとなっている。ここでは、前後方向の中央に配置されている上、下ロール12、13を駆動ロールとしている。
【0018】
図1〜図3に示すように、4本の連結軸16が接続される下フレーム15の一部であり、接続部の直下に設けられた第1の受け部30は、それぞれ第1の支持部材31(例えばライナー)を介して設置フレーム22に、以下に説明する構造で固定されている。ここで、連結軸16の下部は、下フレーム15の前後の左右両側に、図示しない連結手段(例えば、ねじ又はピン)を用いて固定され、連結軸16の軸心位置は、平面視して第1の支持部材31内に配置されている。また、図5(A)、(B)に示すように、第1の受け部30内に形成され開口部30aを介して外部と連通する空間部30bと、設置フレーム22内に形成され開口部22aを介して外部に連通する空間部22bは、第1の受け部30を第1の支持部材31を介して設置フレーム22に固定させた際に、開口部30a、第1の支持部材31に形成された貫通孔31a、開口部22aが互いに重なり合って、一つの連通空間部が形成されるように開口部30a、貫通孔31a、開口部22aの位置が調整されている。そして、コッターピン32を連通空間部に挿入し、空間部30b内に存在するコッターピン32の上部を、第1の受け部30の側部に形成された挿入孔30cから差し込んだ掛止部材33を用いて第1の受け部30に固定し、空間部22b内に存在するコッターピン32の下部を、設置フレーム22の側部に形成された挿入孔22cから差し込んだコッター34を介して設置フレーム22に固定することで、下フレーム15が設置フレーム22に固定されている。
【0019】
また、図1〜図3に示すように、下フレーム15の前側及び後側にある下ロール13の左右両側をそれぞれ支持する下軸受25が取付けられる下フレームの下軸受取付部26の直下の第2の受け部27は、第2の支持部材28(例えばライナー)を介して、設置フレーム22に支持されている。
なお、図4に示すように、下フレーム15の前側及び後側の第2の受け部27を、一体となった第2の支持部材29を介して設置フレーム22で支持することもできる。これによって、下ロール13に加わる圧下反力による下フレーム15の変形を更に抑制することができる。
【0020】
締結手段17(締結手段18〜20も同様)は、下部が下フレーム15に固定され、上フレーム14に形成された図示しない貫通孔内に下方から挿入される連結軸16と、上フレーム14の上面側に設けられ、貫通孔内に上方から挿入され連結軸16の上部と連結されるシリンダー軸(図示せず)を備えた油圧シリンダー35とを有している。これによって、上フレーム14の左右の前位置にそれぞれ設けられた油圧シリンダー35のシリンダー軸を、上フレーム14の左右の後位置にそれぞれ設けられた油圧シリンダー35のシリンダー軸に対して縮めることで、下フレーム15に対して上フレーム14を前方に下方傾斜させて、上、下ロール12、13間の間隔が鋳片11の入側から出側に向けて徐々に狭まるようにすることができ、上、下ロール12、13間に鋳片11を通過させて、鋳片11の圧下を行うことができる。なお、連結軸16とシリンダー軸との連結は、例えば、ピン、球面座、又はピンと球面座の組合せで行うことにより、傾斜させた際に連結軸16に曲げモーメントが作用しないようにすることができる。
【0021】
続いて、本発明の一実施の形態に係る軽圧下ガイドロールセグメント10の作用について説明する。
図6に従来技術の軽圧下ガイドロールセグメント36を示す。なお、軽圧下ガイドロールセグメント10と同一の構成部材には同一の符号を付し詳細な説明は省略する。ここで、軽圧下ガイドロールセグメント36の下フレーム37では、下フレーム37の前側及び後側にある下ロール13の左右両側をそれぞれ支持する下軸受25が取付けられる下フレームの下軸受取付部26の直下の受け部38が、支持部材39(例えばライナー)を介して、設置フレーム40に支持されている。従って、軽圧下ガイドロールセグメント36では、上、下ロール12、13で鋳片11を軽圧下すると、軽圧下反力が上、下ロール12、13に加わり、上フレーム14には上フレーム14を上方に持上げる荷重が作用する。また、下フレーム37には下フレーム37を下方に押下げる荷重が作用する。更に、連結軸16が接続される下フレーム37の前後の左右両側の接続部には、連結軸16を介して下フレーム37を上方に持上げる上向きの荷重が作用する。これにより、下フレーム37には、図7(A)に示す曲げモーメントMが作用する。
【0022】
しかし、軽圧下ガイドロールセグメント10では、図1〜図3に示すように、連結軸16が接続される下フレーム15の前後の左右両側の接続部の直下の第1の受け部30は、第1の支持部材31を介して設置フレーム22に固定されているため、第1の受け部30は設置フレーム22と機械的に一体化している。このため、下フレーム15に図7(B)に示す曲げモーメントMが作用しても、曲げモーメントMを曲げモーメントMより小さくすることができると共に、下フレーム15の変形が抑制される。これにより、下フレーム15自体の剛性を低下させることができ、下フレーム15がコンパクトになって重量を低減することができる。
【0023】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。
例えば、連結軸の下部を、下フレーム及び第1の支持部材を貫通させて、設置フレームに直接固定させてもよい。これにより、連結軸を介して下フレームを上方に持上げる上向きの荷重の大半を設置フレームで担うことができ、下フレームに作用する曲げモーメントを低減できる。その結果、下フレームの変形が更に抑制され、下フレーム自体の剛性を更に低下させることができ、下フレームのコンパクト化(軽量化)が図られる。
【符号の説明】
【0024】
10:軽圧下ガイドロールセグメント、11:鋳片、12:上ロール、13:下ロール、14:上フレーム、15:下フレーム、16:連結軸、17、18、19、20:締結手段、21:基台、22:設置フレーム、22a:開口部、22b:空間部、22c:挿入孔、23:上軸受、24:上軸受取付部、25:下軸受、26:下軸受取付部、27:第2の受け部、28、29:第2の支持部材、30:第1の受け部、30a:開口部、30b:空間部、30c:挿入孔、31:第1の支持部材、31a:貫通孔、32:コッターピン、33:掛止部材、34:コッター、35:油圧シリンダー、36:軽圧下ガイドロールセグメント、37:下フレーム、38:受け部、39:支持部材、40:設置フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動する鋳片の上、下面を挟んで圧下する上、下ロールをそれぞれ回転自由に保持する上、下フレームと、前記上、下フレームの前後の左右両側にそれぞれ設けられ、該上、下フレームを連結する連結軸を備えた締結手段とを有し、前記下フレームは設置フレームに支持された軽圧下ガイドロールセグメントにおいて、
4本の前記連結軸が接続される前記下フレームの直下をそれぞれ第1の支持部材を介して前記設置フレームに固定し、前記下ロールの左右両側をそれぞれ支持する下軸受が取付けられた前記下フレームの直下を第2の支持部材を介して前記設置フレームで支持することを特徴とする軽圧下ガイドロールセグメント。
【請求項2】
請求項1記載の軽圧下ガイドロールセグメントにおいて、前記連結軸の軸心が平面視して前記第1の支持部材内にあることを特徴とする軽圧下ガイドロールセグメント。
【請求項3】
請求項1及び2のいずれか1項に記載の軽圧下ガイドロールセグメントにおいて、前記連結軸の下部は前記下フレーム及び前記第1の支持部材を貫通し、前記設置フレームに直接固定されていることを特徴とする軽圧下ガイドロールセグメント。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の軽圧下ガイドロールセグメントにおいて、前記第2の支持部材は、前記下フレームの前側及び後側の左右にあることを特徴とする軽圧下ガイドロールセグメント。
【請求項5】
請求項4記載の軽圧下ガイドロールセグメントにおいて、前記下フレームの左右にある前記第2の支持部材は、それぞれ一体となっていることを特徴とする軽圧下ガイドロールセグメント。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−172937(P2010−172937A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−18508(P2009−18508)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【出願人】(390022873)日鐵プラント設計株式会社 (275)