説明

軽重量車両用のタイヤビード

本発明は、リム(J1)及び巻き上げ部(20)を形成するようワイヤ(5)に巻き付けられたカーカスフレームによって補強されているビード(100)を備えたタイヤを含む組立体に関し、ビード(100)は、カーカスフレームの巻き上げ部(20)の外側に、ビードの外側異形材(101)を構成する材料の層を有し、ビード外側異形材(101)は、カーカスフレーム(10)とリムのエッジに接触することができるビード外側異形材の部分との間で測定された距離Aが公式(Z)で定まるようなものであり、Bは、カーカスフレームをカーカスフレームの巻き上げ部(20)の端(21)から隔てる距離であり、ビード(100)は、カーカスフレーム(10)と巻き上げ部(20)との間に位置決めされた第1及び第2の異形材を有し、第1の異形材(1)は、ビードワイヤから延び、第1の異形材(1)は、10%伸び率における割線モジュラスが20MPaよりも大きい材料で作られ、第2の異形材(2)は、第1の異形材の表面(30)及び巻き上げ部(20)と接触関係をなすようにビード内に配置され、第2の異形材(2)は、10%伸び率における割線モジュラスが少なくとも7MPaに等しく、100%伸び率における割線モジュラスが少なくとも4.5MPaに等しい材料で作られている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取り付けリム及び半径方向カーカス補強材を備えたタイヤを含むタイヤ組立体に関し、特に、車両、例えばバンに取り付けられるようになった重量の軽い形式(軽トラック用)のタイヤに関する。本発明は、特に、かかるタイヤ用の新規なビード構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、考慮対象の種類のタイヤは、金属コード又はテキスタイル(繊維)コードの少なくとも1枚のプライで形成されたカーカス補強材を有し、このカーカス補強材は、各ビード内で少なくとも1本のビードワイヤに繋留されていて、折り返し部分を形成している。カーカス補強材は、半径方向上方にクラウン補強材が載せられ、このクラウン補強材は、1枚のプライと次のプライとに関してクロス掛けされていて、周方向と10°〜45°の角度をなす金属コードの少なくとも2枚のプライで構成されている。カーカス補強材の折り返し部分は、半径方向断面平面(これは、タイヤの回転軸線を含む平面を意味している)で見て、タイヤが使用されているときに、ビードの良好な機械的固定状態を保証するようタイヤの回転軸線から適当に遠ざかった距離のところに位置した一端を有する。カーカス補強材と折り返し部分との間には、ゴムコンパウンドを主成分とする1つ又は2つ以上の異形要素が設けられている。
【0003】
このタイヤは、取り付けリムに取り付けられるようになっており、取り付けリムは、タイヤのビードを受け入れるようになった部分(リム受座と呼ばれている)及び各受座の軸方向外側に位置していて、インフレーション時にタイヤのビードの軸方向運動を制限するようになったフランジを有する。1本の軽量トラック又はバン用タイヤを互いに異なるフランジ幾何学的形状を有する多くのリムに取り付けることができるということは周知である。互いに異なる幾何学形状という用語は、この場合、これらリムが種々のフランジ高さ及び種々のリムフック曲率の面で異なっていることにある。リムの高さ及び形状に応じて、応力レベルが特にビードの耐久性及びかくしてタイヤの耐久性を損ねる場合のあることが容易に理解されよう。最も不利な状況は、リム高さが低いこと及びリムフックの曲率半径が小さいことにより生じる。
【0004】
かかるタイヤのビードの耐久性を向上させる解決手段が提案された。具体的に説明すると、米国特許第5433257号明細書は、三角形断面の第1の異形要素が円形断面のビードワイヤに当接し、半径方向外方にテーパしながらカーカス補強材の折り返し部分の端と実質的に同一の高さに位置した箇所まで延びるビード構造体を記載している。この第1の異形要素は、カーカス補強材にしっかりと押し付けられる。さらに、折り返し部分の端の半径方向外側の箇所までの第1の異形要素の延長部として、第2の異形要素が設けられ、この第2の異形要素は、第1の異形要素とカーカス補強材の折り返し部分との間の接触によって連結部を提供している。第1の異形要素は、100%伸び率における弾性率が6MPaに等しい材料で作られ、第2の異形要素は、100%伸び率における弾性率が少なくとも1.5MPaに等しく且つせいぜい3.5MPaに等しい材料で作られている。
【0005】
先行技術の構造では、回転軸線を含む平面を意味する半径方向断面平面で見て、回転軸線までの折り返し部分の端箇所の距離は、タイヤが取り付けられるようになった取り付けリムの箇所の距離よりも長い。最後に、カーカス補強材の補強要素の角度とは異なる角度をなす複数の補強要素を有する追加の補強材が提供され、その目的は、1つには、折り返し部分及びカーカス補強材をビード中に包み込むことにある。また、折り返し部分を追加の補強材から結合解除するためのゴムコンパウンドが設けられている。さらに、異形要素がリムフランジに当接したままであるようにするために追加の補強材の軸方向外側に設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5433257号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この構造は、良好な耐久性を有するにもかかわらず、タイヤに追加の重量を与え、この追加の重量は、新型の軽量トラック及びバンの開発において特に厳密にモニタされる対象であることが知られている。
【0008】
達成すべき目的は、制動の繰り返しの結果としてビードが昇温したときに性能、特に機械的健全性の低下を招くことがなく重量が軽い軽トラック及びバン用のタイヤビード構造体を提供することにある。本出願人の行なった研究結果の示すところによれば、異形要素及びタイヤビードを構成するゴムを主成分とする材料の注意深い選択によって上述のビード構造体を格段に改良することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のため、本発明は、取り付けリム及び半径方向に差し向けられた補強要素(金属又はテキスタイル補強要素)を有する半径方向カーカス補強材を含むタイヤ組立体であって、タイヤは、取り付けリムに接触するようになったビードを有する形式のタイヤ組立体を提案する。この取り付けリムは、受座を有し、受座の軸方向外側の延長部としてリムフランジを形成する部分が設けられ、リムフランジの半径方向最も外側の部分は、タイヤの回転軸線から距離Rrを置いたところに位置する。半径方向断面平面(これは、回転軸線を含む断面平面であることを意味している)で見て、このフランジは、リム受座の延長部としての真っ直ぐな部分で構成され、この真っ直ぐな部分の半径方向外方の延長部として、フック形部分が設けられている。
【0010】
カーカス補強材は、複数本の金属細線で構成された編組ビードワイヤ周りに各ビード内で折り返されており、このビードワイヤは、折り返し部分を形成するよう実質的に円形である断面(この断面は、半径方向断面平面であることを意味している)を有する。半径方向断面平面で見て、この折り返し部分は、同一の半径方向断面平面で見て半径方向最も内側の箇所であるビードワイヤの箇所Kから距離Hcを置いたところに位置する一端を有する。距離Hcは、少なくとも18mmに等しく且つせいぜい26mmに等しい。
【0011】
このビードは、カーカス補強材と折り返し部分との間に配置されたゴムコンパウンドで作られている2つの異形要素を有する。第1の異形要素は、ビードワイヤから折り返し部分に沿って距離Heだけ遠くに位置した箇所まで延び、この距離は、半径方向断面平面で見て、ビードワイヤの半径方向最も内側の箇所に対して測定される。この第1の異形要素とカーカス補強材との間の機械的結合距離は、L1で表され、この長さは、第1の異形要素の半径方向最も外側の端と、ビードワイヤとの軸方向最も内側の接触箇所との間で測定される。この第1の異形要素と折り返し部分の機械的結合距離は、L2で表され、この距離L2は、折り返し部分と接触状態にある半径方向最も外側の箇所と、ビードワイヤとの軸方向最も外側の接触箇所との間で測定される。第1の異形要素の半径方向最も外側の箇所は、ビードワイヤの半径方向最も内側の箇所から距離Hiだけ離れたところに位置する。この第1の異形要素は、10%伸び率における割線モジュラスが20MPaよりも大きく、より好ましくは30MPaよりも大きい材料で作られる。より好ましくは、この第1の異形要素のモジュラスは、少なくとも40MPaに等しく且つせいぜい70MPaに等しい。
【0012】
第2の異形要素が第1の異形要素の一方の面と接触関係をなすと共にHeに等しい高さから外方にカーカス補強材の折り返し部分と接触関係をなすようにビード内に配置されている。この第2の異形要素は、ビードワイヤのベースに対して測定された距離H2のところまで折り返し部分の端を半径方向に越えて大幅に延びている。この第2の異形要素の材料は、10%伸び率における割線モジュラスが少なくとも7MPaに等しく、100%伸び率における割線モジュラスが少なくとも4.5MPaに等しい。
【0013】
この第2の異形要素は、カーカス補強材の折り返し部分の端の付近に、少なくとも1mmであり且つせいぜいビードワイヤの軸方向幅(回転軸線に平行な方向で測定されると共に円形横断面のビードワイヤの場合、このビードワイヤの直径に一致した幅)に等しい厚さBを有する。
【0014】
カーカス補強材の折り返し部分と接触状態にある第1の異形要素の高さHeは、折り返し部分への第1の異形要素の結合長さL2がせいぜい折り返し部分の長さLrの半分に等しいようなものである(この長さLrは、第1及び第2の異形要素と接触状態にある折り返し部分の長さ、即ち、折り返し部分の端からビードワイヤの軸方向最も外側の接触箇所まで測定された接触長さとして測定されている)。
【0015】
このビードは、カーカス補強材の折り返し部分の軸方向外側に、充填異形要素及び保護異形要素を有し、保護異形要素は、充填異形要素の軸方向外側に位置していて、リムフランジに接触するよう設計されている。本発明のタイヤでは、これら保護及び充填異形要素は、カーカス補強材とリムフランジと接触関係をなすことができるビード外側異形要素の部分との間で測定された距離Aが

であるよう適当な厚さを有し、Bは、カーカス補強材をカーカス補強材の折り返し部分の端から隔てる距離であると共にカーカス補強材に垂直であり且つ折り返し部分の端を通る直線に沿って測定される。好ましくは、用いられるリムは、リムフランジの全てのうちで、問題のタイヤを取り付けるよう使用できる最も小さなフランジを有するリムに対応している。
【0016】
有利には、第1の異形要素は、例えば、好ましい含有量が3〜15phr、より好ましくは5〜12phrのメチレン受容体、例えばホルモフェノール樹脂及び好ましい含有量が1〜10phr、より好ましくは3〜7phrのメチレン供与体、例えばヘキサメチレンテトラミン(HMT)又はヘキサメトキシメチルメラミン(HMMM:H3Mとも呼ばれる)で構成された追加の補強樹脂から成るゴムコンパウンドとして選択される(“phr”は、ゴム100部当たりのコンポーネントの単位重量当たりの部の数を意味する)。
【0017】
本発明の一観点では、第2の異形要素の厚さは、同一高さ位置で(特に、カーカス補強材の折り返し部分の端のところで)考慮した充填異形要素の厚さに実質的に等しく、それにより、リムフランジ上における曲げの良好な吸収を可能にし、かくしてフランジに対する摩擦を介してビードの摩耗を減少させる。このようにして選択されたこれら厚さは、折り返し部分が走行中の曲げの際に変形したときに圧縮応力を受けるのを阻止する。
【0018】
本発明の別の観点によれば、カーカス補強材を繋留するビードワイヤは、エラストマー材料の層で包囲され、このエラストマー材料層の割線引っ張り弾性率は、第1の異形要素を構成する材料の割線引っ張り弾性率に実質的に等しい。実質的に等しいという表現は、本明細書では、材料が互いに同一であり又は変形例としてせいぜい10%しか違わないモジュラス値を有することを意味している。
【0019】
定義
【0020】
半径方向外側寄りという表現は、回転軸線に垂直であり且つこの軸線から遠ざかる方向を意味している。軸方向内側という表現は、インフレーション圧力が作用するタイヤの内部キャビティの内側の方に向いた向きを意味している。
【0021】
半径方向断面平面は、回転軸線を含む平面を意味している。
【0022】
有利には、回転軸線に対して半径方向最も外側に位置する第2の異形要素の端は、ビードワイヤの半径方向最も内側の箇所から距離H2のところに位置し、この距離は、折り返し部分の端からビードワイヤの半径方向最も内側の箇所までの距離Hcの少なくとも1倍に等しく且つせいぜい2.5倍に等しい。
【0023】
有利には、第1の異形要素とカーカス補強材の折り返し部分との接触高さを測定して得られた距離Heは、ビードワイヤの軸方向幅に少なくとも等しく且つ折り返し部分の端の距離Hcのせいぜい0.75倍に等しい。
【0024】
カーカス補強材と接触状態にある第1の異形要素の最後の箇所の距離Hiは、第1の異形要素と折り返し部分との間の接触高さを測定して得られた距離Heよりも長い。この距離Hiは、距離Hcの少なくとも0.5倍に等しく且つせいぜい1.25倍に等しい。
【0025】
本発明の特徴は、一実施形態を非限定的な例により示す図面を参照して行なわれる以下の説明により良好に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】バン用のタイヤに関する取り付けリムの多くの輪郭形状の子午線断面図である。
【図2】本発明のビードを通る半径方向平面の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、バン用のタイヤ(特に、本発明によるタイヤであって、図2に示されているタイヤ)のための2つの取り付けリムJ1,J2を部分的に示している。この取り付けリムは、回転軸線YY′の方向に対して5°に等しい角度だけ傾けられたリム受座Sを形成する部分を有し、これらリム受座Sは、タイヤのビードに着座するようになっている。これら受座の軸方向外側にはフランジR1,R2が設けられ、これらフランジの機能は、ビードの軸方向運動を制限することにある。これらフランジは、回転軸線YY′に実質的に垂直な平べったい部分で形成され、かかる平べったい部分の半径方向外方の延長部として、一種のフックの形を形成する湾曲した部分が設けられている。或る特定のバン用タイヤの使用の際の1つの顕著な特徴は、これらタイヤをこれらリムの幾何学的形状の面で互いに異なるリムに取り付けることができるということにある。このリムの公称直径は、フランジの真っ直ぐな部分とリム受座との交差箇所から回転軸線までの距離の2倍であるものとして得られる。
【0028】
図示の場合、リムJ1は、半径方向最も外側の箇所が回転軸線から距離Rrのところに位置するフランジR1を有している。リムJ2は、半径方向最も外側の箇所が回転軸線から距離Rr′のところに位置したフランジR2を有し、この距離Rr′は、距離Rrよりも大きい。図示の場合、これら2つのリムは、同一の幾何学的形状の受座を有し、リムJ1は、他方のリムJ2のフック状部分よりも曲率が極めて大きいリムフックを有している。タイヤのビードが巻き付け状態になる輪郭のこのリムJ1こそがこれらビードの耐久性の面で不利な状態をもたらすことが分かっている。
【0029】
図2は、本発明のサイズ195/75R16のバン用タイヤのビード100を示している。
【0030】
このタイヤは、取り付けリムJ1に取り付けられた状態で示されており、この取り付けリムJ1の技術的名称は、ETRTO規格において6J16である。図1に示されたこのリムは、タイヤビードを最も不利な状態にすると考えられる。公称半径Rsは、203mmに等しく、フランジ状の半径方向最も外側の箇所の半径は、回転軸線から220.3mmの距離Rr離れたところに位置している。6バールの公称圧力までインフレートされたタイヤは、1325kgの荷重に耐えることができるようになっている。
【0031】
このタイヤは、構造12‐15NFの金属補強材で補強された単一のゴムプライで作られているカーカス補強材10を有し、かかる構造12‐15NFの金属補強材は、測定直径が1ミリメートルの15/100である12本の細線を意味している。カーカス補強材のこれら補強要素は、タイヤ中において半径方向に差し向けられており、このことは、1.25mmのピッチで周囲接線方向と90°に等しく又はほぼ90°である角度をなすようになっていることを意味し、このピッチは、繋留ビードワイヤの半径方向最も内側の箇所で測定される。この補強材のゴムコンパウンドは、23℃で測定した10%伸び率における割線モジュラスが8.2MPaである。
【0032】
ビードワイヤ5は、円形コアへの螺旋巻き付けとして得られ、このビードワイヤは、平均直径が少なくとも5mmに等しく且つせいぜい10mmであり、この特定の場合、6.8mmに等しい実質的に円形の断面を有する。このビードワイヤは、この特定の例では、205.5mmに等しい内側半径Rtを有する。この特定の場合、ビードワイヤは、第1の異形要素の構成材料で覆われ、この第1の異形要素は、ビードワイヤの少なくとも半径方向内側部分において実質的に一定である厚さを備えたビードワイヤの丸1回転を形成している。
【0033】
各ビード内のカーカス補強材10は、カーカス補強材10に実質的に平行に且つ回転軸線に対して半径方向外方の延長部として折り返し部分20を形成するようタイヤの内側から外方にビードワイヤ5に巻き付けられている。図の平面に一致した半径方向断面平面で見て、この折り返し部分20は、ビードワイヤ5の半径方向最も内側の箇所Kから距離Hcのところに位置した端21を有し、この距離Hcは、この特定の場合、18.2mm(即ち、取り付けリムのリムフックの高さの1.05倍)に等しい。図面は、説明のために与えられているに過ぎず、必ずしも縮尺通りにはなっていない。
【0034】
カーカス補強材10とその折り返し部分20との間において、第1の異形要素1がビードワイヤ5からこの場合19.1mmに等しい最大距離Hiまで延び、この距離は、半径方向断面平面で見て、ビードワイヤの半径方向最も内側の箇所Kに対して測定されている。この第1の異形要素1は、10.6mmに等しい距離Heのところまで折り返し部分20と接触状態にある(この距離は、ビードワイヤの半径方向最も内側の箇所Kに対して測定されている)。
【0035】
この第1の異形要素1は、23℃において10%伸び率における割線モジュラスが20MPaよりも大きく、この特定の場合、52.4MPaに等しい材料で作られている。この第1の異形要素1は、ビードワイヤ5と接触状態にあると共に長さL2にわたり折り返し部分と接触状態にあり、この長さは、折り返し部分と接触状態にある半径方向最も外側の箇所(高さHeの高さ)とビードワイヤ上の軸方向最も外側の箇所であると定義される箇所Aeとの間で考慮されている。この特定の場合、この長さL2は、実質的に7mmに等しい。
【0036】
さらに、第2の異形要素2が第1の異形要素の一方の面及びカーカス補強材の折り返し部分と箇所Kに対して測定された距離Heのところに位置する箇所から接触関係をなすようビード内に配置されている。カーカス補強材の折り返し部分は、距離Heのところに位置した箇所と回転軸線から半径方向最も遠くに位置する折り返し部分の端21との間でこの第2の異形要素2と接触状態にある。
【0037】
この第2の異形要素2は、ビードワイヤの半径方向最も内側の箇所Kに対して測定された距離H2まで半径方向外方に延びており、この距離は、この特定の場合、39mmに等しい。この第2の異形要素2は、23℃の温度での10%伸び率における割線モジュラスが少なくも7MPaに等しく且つこの特定の場合、7.8MPaに等しく、23℃の温度での100%伸び率における割線モジュラスが少なくとも4.5MPaに等しく、この特定の場合、4.5MPaに等しい材料で作られている。定義上、箇所Kから測定した全ての距離に関し、これら距離は、中心が箇所Kに一致し、位置が箇所Kに関して正確に特定される箇所を通る円の半径に一致している。この特定の場合、折り返し部分20と第1及び第2の異形要素1,2との間の全結合長さLrは、実質的に15.7mmに等しい。第1及び第2の異形要素1,2は、それぞれ、共通の一方の面30を有し、この共通の面30は、第1の異形要素1の半径方向最も外側の箇所12とビードワイヤ5の箇所Kから距離Heのところに位置した同じ第1の異形要素1上の箇所11との間に延びている。
【0038】
本発明のビードワイヤ100の記載では、このビードワイヤは、タイヤが取り付けられてその公称圧力までインフレートされたときのままの状態で示されている。この構成では、ビードは、軸方向外側に位置した保護異形要素4を有し、この保護異形要素は、タイヤが走行しているときにこれがリムフランジに対する屈曲運動に耐えることができるのに適した特性を有する材料で作られている。この材料は、リムの構成金属に対する過度に迅速なビード摩耗に対して保護の役目を果たすといえる。この特定の場合、この保護材料は、23℃での10%伸び率におけるモジュラスが6.6MPaに等しい。この保護異形要素4と折り返し部分20との間には、タイヤの走行に起因して生じる曲げサイクル中、折り返し部分の軸方向外側で生じる応力を吸収することができる充填異形要素3が設けられている。充填異形要素3の材料は、23℃での10%伸び率における弾性率が3.7MPaに等しい。このビード100は、カーカス補強材の折り返し部分20の軸方向外側に、ビードの外部異形要素101を構成する材料の厚みを有している。このビード外部異形要素101の一部だけがリムフランジR1と接触状態にあるのが良い。
【0039】
タイヤを単にインフレートさせたこの形態では、ビードの保護異形要素4は、箇所FまでリムフランジR1と接触状態にあることが注目されよう。カーカス補強材の折り返し部分の端をこの補強材から隔てる距離Bは、3.6mm(カーカス補強材と折り返し部分との間で行なわれた測定)に等しい。カーカス補強材とビードの外側異形要素との間の同一箇所で測定された距離Aは、この特定の場合、11.9mmに等しい。パラメータA,Bは、次の関係式、即ち、

を満足させる(Bは、実際には、図示の例では、2.98mm〜5.95mmである)。
【0040】
タイヤの関連部分が接触パッチを通過するたびに、そのビード100の各々は、少なくとも部分的にフランジに巻き付き、詳細にいえば、一種のフックの形を形成している半径方向外側部分に巻き付く。これらの周期的に応力が加わる状況下において、折り返し部分20は、大きな応力を受け、その上、これら応力は、特に車両の制動要素の温度の上昇の結果として発熱に起因して生じる高い動作温度によって増幅される。
【0041】
安定化された荷重及び速度での走行後、本発明のこのビードの最大温度は、せいぜい90℃に等しく、これに対し、従来構造では、特に、本明細書において説明した先行技術の構造では、ビードの最大温度は、95℃を超える。
【0042】
本発明は、上述した例に限定されるものと解されてはならず、本発明の範囲から逸脱することなく記載した例に対して改造を行なうことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半径方向に差し向けられた補強要素を有する半径方向カーカス補強材及び取り付けリム(J1)で形成された組立体であって、前記タイヤは、前記取り付けリム(J1)に接触するようになったビード(100)を有し、前記取り付けリムは、受座を有し、前記受座の軸方向外側の延長部としてリムフランジ(R1)を形成する部分が設けられ、前記リムフランジの半径方向最も外側の部分は、回転軸線から距離Rrを置いたところに位置し、前記リムフランジは、前記回転軸線を含む断面平面で見て、実質的に円形の形状を有し、各ビード(100)は、繋留ビードワイヤ(5)を有し、前記タイヤは、カーカス補強材(10)によって補強され、前記カーカス補強材は、各ビード内で、折り返し部分(20)を形成するよう前記繋留ビードワイヤ周りに折り返されており、前記折り返し部分は、半径方向断面平面で見て、タイヤをいったんその取り付けリムに取り付けると、前記ビードワイヤ(5)の半径方向最も内側の箇所(K)から距離Hcを置いたところに位置決めされた一端(21)を有し、前記距離Hcは、少なくとも18mmに等しく且つせいぜい26mmに等しく、前記ビード(100)は、カーカス補強材の前記折り返し部分(20)の軸方向外側に、ビードの外側異形要素(101)を構成する材料の厚みを有し、前記ビード外側異形要素は、前記カーカス補強材(10)と前記リムフランジと接触関係をなすことができる前記ビード外側異形要素(101)の部分との間で測定された距離Aが

であるようなものであり、Bは、前記カーカス補強材を前記カーカス補強材の前記折り返し部分の前記端(21)から隔てる距離を意味し、該距離は、前記カーカス補強材に垂直であり且つ前記折り返し部分の前記端を通る直線上で測定され、前記ビードは、前記カーカス補強材(10)と前記折り返し部分(20)との間に位置決めされた第1及び第2の異形要素(1,2)を有し、
‐第1の異形要素(1)は、前記ビードワイヤ(5)から最大距離Hiのところまで延びており、該距離は、子午線断面平面で見て、前記ビードワイヤの半径方向最も内側の箇所に対して測定され、前記第1の異形要素(1)は、距離Heのところまで前記折り返し部分(20)と接触状態にあり、前記第1の異形要素(1)は、10%伸び率における割線モジュラスが20MPaよりも大きい材料で作られ、
‐第2の異形要素(2)は、前記第1の異形要素の一方の面(30)と接触関係をなすと共にHeに等しい高さから外方に前記カーカス補強材の前記折り返し部分(20)と接触関係をなすように前記ビード内に配置され、前記第2の異形要素(2)は、前記ビードワイヤ(5)のベースに対して測定された距離H2のところまで延び、前記第2の異形要素(2)は、10%伸び率における割線モジュラスが少なくとも7MPaに等しく、100%伸び率における割線モジュラスが少なくとも4.5MPaに等しい材料で作られ、
さらに、前記第2の異形要素(2)は、前記カーカス補強材の前記折り返し部分(20)の前記端(21)の付近に、1mmと前記ビードワイヤの軸方向幅との間の厚さを有し、前記カーカス補強材の前記折り返し部分(20)と接触状態にある前記第1の異形要素(1)の前記高さHeは、前記折り返し部分(20)と接触状態にある前記半径方向最も外側の箇所(21)と前記ビードワイヤ(5)との軸方向最も外側の接触箇所Aeとの間で測定された結合長さL2がせいぜい前記折り返し部分(20)の長さLrの半分に等しいようなものであり、前記長さLrは、前記第1及び第2の異形要素と接触状態にある前記折り返し部分の長さ、即ち、前記折り返し部分の前記端(21)から前記ビードワイヤの前記軸方向最も外側の接触箇所Aeまで測定された接触長さとして測定されている、組立体。
【請求項2】
前記第1の異形要素(1)は、10%伸び率における割線モジュラスが少なくとも40MPaに等しく且つせいぜい70MPaに等しい材料で作られている、請求項1記載の組立体。
【請求項3】
前記第1の異形要素(1)を構成する材料は、好ましい含有量が3〜15phrのメチレン受容体、例えばホルモフェノール樹脂及び好ましい含有量が1〜10phrのメチレン供与体、例えばヘキサメチレンテトラミン(HMT)又はヘキサメトキシメチルメラミン(HMMM:H3Mとも呼ばれる)で構成された追加の補強樹脂を含むゴムコンパウンドである、請求項1又は2記載の組立体。
【請求項4】
回転軸線に対して半径方向最も外側に位置する前記第2の異形要素(2)の端(22)は、前記ビードワイヤの前記半径方向最も内側の箇所Kから距離H2のところに位置し、前記距離H2は、前記ビードワイヤの前記半径方向最も内側の箇所Kに対する前記折り返し部分の前記端の距離Hcの1〜2.5倍である、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の組立体。
【請求項5】
前記半径方向最も外側のカーカス補強材と接触状態にある前記第1の異形要素(1)の箇所(12)は、前記第1の異形要素と前記折り返し部分との間の接触高さを測定して得た距離Heよりも大きい距離Hiのところに位置し、前記距離Hiは、前記距離Hcの0.5〜1.25倍であり、前記距離Hi,He,Hcは、前記ビードワイヤ(5)の前記半径方向最も内側の箇所Kに対して考えられている、請求項1〜4のうちいずれか一に記載の組立体。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−510755(P2013−510755A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538267(P2012−538267)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066048
【国際公開番号】WO2011/057889
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(512068547)コンパニー ゼネラール デ エタブリッスマン ミシュラン (169)
【出願人】(508032479)ミシュラン ルシェルシュ エ テクニーク ソシエテ アノニム (499)