説明

軽量で頑丈な薄型可塑性のポリマーでコーティングされた手袋

【課題】高い伸縮および/または運動領域において強化領域を有する軽量で頑丈な薄型可塑性ラテックス手袋を提供する。
【解決手段】 手袋は、221デニール以下を有する第1の糸から作られた複数の編目を有する編み裏地であって、複数の指コンポーネント、親指コンポーネント、および掌コンポーネントを含む編み裏地と、少なくとも1つの指コンポーネントの基部、親指コンポーネントの基部、掌コンポーネント内、またはこれらの組み合わせに位置する少なくとも1つの強化部と、ポリマーラテックスコーティングと、を含む。強化部は、より重いデニールの糸を使用してプレーティングすることによって、および/またはジャカードもしくは目移しを形成することによって、形成することができる。裏地は、70から221デニールナイロンの66マルチフィラメント糸で編むことができる。手袋を製造および使用する方法もまた提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の側面は、高い伸縮位置において優れた強化特性が提供される薄型編み裏地を有し、それによって、編み裏地に部分的に塗布されるラテックス層に加わる伸縮を制限する、頑丈な軽量で薄型可塑性のラテックス手袋商品に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、2007年9月4日出願の、米国特許出願第11/849,566号への優先権を主張し、参照することにより全体として本明細書に組み込まれる。
本発明の側面は、高い伸縮位置において優れた強化特性が提供される薄型編み裏地を有し、それによって、編み裏地に部分的に塗布されるラテックス層に加わる伸縮を制限する、頑丈な軽量で薄型可塑性のラテックス手袋商品に関する。編み裏地は、薄型多孔性または連続的ラテックス層によって被覆および浸透され、それによって、繰り返し屈曲することに耐えるための強化された可塑性および完全性を提供する。高い伸縮領域における編み裏地の強化により、産業使用中の軽量手袋の頑丈さを増加させる。
【0003】
手袋は、産業または家庭環境において手を保護するために一般的に使用される。手袋は着用時汗でいっぱいになり、使用者にはベタベタした感触がある。手袋製造技術の進歩は、手袋が露出される非ラテックス層である編み部分において通気性を有するように、作業側の接着性ラテックス層での繊維編み裏地の部分的コーティングをもたらしてきた。
【0004】
一般的に、編み裏地は、15ゲージ以上の編み針を使用して、319デニール以上(9000メートルの糸のグラム数として定義されるデニール)の比較的厚い頑丈な糸で作られる。編機は、指定の針ゲージを想定して設計される。例えば、15ゲージのVベッド編機は、1インチあたり15本の針となるように、間隔をあけたこれらの15ゲージ針を有する。同様に、10ゲージ針機は、1インチあたり10本の針となるように、間隔をあけた10ゲージ針を有する。15ゲージ針は一般的に、編むために319デニール糸を使用し得る。221デニール糸等のより小さなサイズの糸は、通常18ゲージ針に適している。15ゲージ針を使用して編まれた319デニール糸の編目は、18ゲージ針を使用して編まれた221デニール糸の編目よりもさらに間隔があけられる。使用した針のゲージに関わらず、221デニール糸による編み裏地は、319デニール糸による編み裏地よりもより軽量で、薄型で、かつより可塑性である。より軽量の編み裏地は、軽量手袋を生産するのに必要である。
【0005】
319デニール糸を15ゲージ針で編んだ場合、作られる裏地は厚い。かかる裏地を被覆するラテックス層もまた相応して厚く、限られた可塑性を有する重い感触の手袋をもたらす。通気性を提供するために、発泡化した多孔性ラテックス層を使用した場合、この多孔性ラテックス層の結果として得られる厚みは、一般的に、限られた接触感受性を有する不自然な感触の手袋をもたらす。同等の耐磨耗性に対して、泡沫層は、非発泡層よりも厚くなくてはならない。多くの先行技術の特許が、手袋、ならびに比較的厚い編み裏地、およびラテックス層の厚膜コーティングを使用した、それらの形成方法を扱っている。厚い編み裏地、および厚い発泡化ラテックス層の組み合わせは、手袋の全厚の薄さをもたらさず、結果として得られる手袋は、可塑性、ならびに指および手の容易な可動性を提供しない。さらに、コーティングを有する手袋について、コーティングは、指および親指の基部、ならびに掌領域内等の、高い伸縮および運動領域では、亀裂および劣化しやすい。
【0006】
Johnsonによる米国特許第4,514,460号および第4,515,851号は、滑り抵抗性表面を開示する。Johnsonによる米国特許第4,555,813号および第4,567,612号は、滑り抵抗性手袋を開示する。Johnsonによる米国特許第4,569,707号および第4,589,940号は、発泡化滑り抵抗性表面を製造する方法を開示する。この多孔性表面は、手袋が通気性を有し、吸湿特性を有する作業環境において、作業者にとって特に有用である。表面は、編まれた、または織られた繊維基質にラミネート加工された発泡表面である。ラミネート加工の前に、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、アクリロニトリル、天然ゴム、合成ゴム発泡体を、必要とされる耐磨耗性に応じて異なる量の空気で発泡化してもよい。発泡化は、機械的または化学的手段によってもよい。
【0007】
Watanabeによる米国特許第4,497,072号および第4,785,479号は、多孔性のコーティングされた手袋、および手袋を製造する方法を開示する。破れた気泡は、多孔性表面を形成する。空気細胞は閉孔し、防寒および耐水の性質をもたらす。厚い独立気泡フォームは、織られた、または編まれた縫い布に接着される。その防寒性により、これは最小の可塑性を有する厚い手袋である。
【0008】
Krocheskiによる米国特許第5,581,812号は、耐漏れ性繊維手袋を開示する。綿手袋を耐水または耐油性にするために、綿手袋を裏返し、PVCまたはポリウレタンラテックス溶液に浸漬する。ラテックス層が肌に接触する一方で、綿表面が握り面となるように、手袋を裏返す。肌へのよりよい感触を得るために、ラテックス層を任意にフロック加工してもよい。この手袋に編み裏地はない。塗布されたラテックス層は、耐水または耐油性であるが、通気性を有しない。
【0009】
Yamashitaらによる米国特許第6,527,990号は、ゴム手袋を製造する方法を開示する。熱膨張性マイクロカプセルを含む合成ゴムラテックスの凝固における、手袋の型の連続漬浸によって、ゴム手袋を製造する。合成ゴムラテックスの加硫の間、これらのマイクロカプセルは破裂し、湿潤または乾燥条件下で優れた粘着防止性および握りを提供する。この手袋に編み裏地はなく、ラテックス層が完全に手を包んでいる。
【0010】
Borreaniによる米国特許広報第2002/0076503号は、繊維担体から作られる作業手袋、または保護手袋のような衣料品を開示する。繊維担体は、水性硝酸カルシウムの形で接着プライマーを受け取る。接着プライマーを有する繊維担体は、発泡水性ポリマー、好ましくは脂肪族ポリエーテルウレタン、またはポリエステルウレタンで、全体または部分的にコーティングされる。発泡水性ポリマーのみが、繊維担体の網目を通過することなく、支持体の外側部分に出現する。繊維担体が過度の親水性を有する場合、2〜5%過フッ化炭化水素を水性ラテックス乳液に添加する。繊維担体における糸のサイズは示されていない。特許は、なぜ水性ポリマーが繊維担体の網目に浸透しないのか示していない。水性空気泡の粘度は、1500から3000センチポイズの範囲にあり、この厚い泡は網目に侵入しない可能性があり、非常に局所的な領域において繊維に接触するだけであり、ポリマー層および繊維担体の付着不足を引き起こす。
【0011】
Dillardらによる米国特許広報第2004/0221364号は、発泡手袋を提供するための方法、器具、および製品を開示する。繊維の外形の表面によって部分的に支持されている発泡ポリマーコーティング剤で、繊維の外形をコーティングする。基本ポリマーの密度を、基本ポリマーの初期密度の約10から50%に低下させるために、十分な量の空気を基本ポリマーと混合する。ナイロン、ポリエステル、アラミド、綿、ウール、レーヨン、またはアクリル繊維を使用して、繊維の外形を編む。泡沫細胞は液体を吸収し、それは、発泡ポリマーが握られる対象上の水または油から手を保護しないことを示す。糸は、編まれる繊維の外形のサイズを、薄い外形ではなく厚い外形に固定するShima Seki編機を使用して、15ゲージ針で編まれると述べられている。結果として、発泡手袋は厚い製品となり、可塑性はあまりない。
【0012】
Vベッド機の織技術は、ここ数年で著しく改善している。編機の織針は、本質的に、編まれている糸を補足する揺動可能なラッチを有するフックであったが、この編みループは、前に編まれたループを保持、またはそこへ移動、またはそれと組み合わせることができなかった。Moritaらによる米国特許第6,915,667号は、編機の複合針を開示する。この複合針は、先端にあるフックと、2つの刃を重ねることによって形成されたスライダとを有する針本体を含む。編機の複合針は、針本体に提供される刃溝が、針本体およびスライダが前後方向に別々にスライドし得る際、スライダの刃を支持するように形成される。このスライダは、編まれている糸を固定するラッチとして作用し、ループを後方に押す、ループを保持する、または前に編まれたループに戻すために、糸ループを移動することができる。達成することができる複合パターンは、Shima Seiki社のウェブページhttp://www.shimaseiki.co.jp/product_knite/knite.htmlに詳細が述べられている。この種の複合針は、Shima−Seiki社の市販のホールガーメント編機SWG021/041およびSWG−FIRST機にて利用可能である。SWG−FIRST機は、ゲージレスな編みを提供し、これは、Miyamotoによる米国特許第7,207,194号、名称「Weft knitting with movable yarn guide member」で詳細に述べられるように、針の数が、スプリットステッチ技術を使用することによって、コンピュータ制御アセンブリの下、その場で変更され得ることを意味する。
【0013】
改善された適合のために人の手の解剖学的形状に従って成形される編み裏地が、Hardeeらによる米国特許第6,962,064号、第7,213,419号、および第7,246,509号に開示される。これらの編み裏地は、コンピュータ制御の下で編みループの長さを変更するか、または糸張力を変更することによって、人の手の形状に適合するように製造される。
【0014】
Narasimhanらによる米国特許広報第2007/0022511号は、制御された編目伸縮能力を有する編まれた手袋の選択的な複数の糸強化を開示する。制御された編目伸縮は、可変編目次元によって提供され、1)コンピュータプログラムによって編まれる繊維に編み針が貫通する深さを変えること、2)コンピュータにより制御されるメカニズムによって、ピンチロールとニッティングヘッドとの間の糸の張力を調節すること、および3)コースの追加の編目を閉じるまたは拾うこと、によって達成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、手袋表面の作業接触部分において軽量の編み裏地に塗布されたラテックス層を有する、頑丈で耐久性があり、薄型で軽量で高度に可塑性のラテックス手袋への必要性が、当該技術分野において存在する。繰り返し屈曲することに耐えるための強化された可塑性および完全性を提供する強化部を有する手袋を提供することの必要性も存在する。また、多孔性であり、さらなる通気性、および改善された可塑性をもたらすラテックス層を有することが望ましい。
【0016】
高い伸縮および/または運動領域において強化領域を有する、軽量の糸から形成される手袋を提供する。それを製造および使用する方法もまた提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
手袋の快適性に関して、手袋の可塑性は、手袋の厚みの強い機能であり、厚みの3乗の逆数に応じて増加する。したがって、ラテックス層でコーティングされた手袋などの弾性体の厚みを、30%減少することは、3の因数で可塑性を増加させる。手袋の厚みは、編み裏地の厚み、および粘着して接着されるポリマー層の厚みで構成される。編み裏地は、編み糸のレベルで置き換えることができるので、可塑性は、弾性体計算に基づいて、予想される可塑性よりも大きくなる可能性がある。モノフィラメント糸である代わりに、個々の糸が複数の縒り糸から構成される場合、この因子はさらに大きい。剛性ポリマーが完全に裏地に浸透している場合、この可塑性増加は欠失し得、手袋の剛性は、編み層の硬化により大幅に増加する。
【0018】
一般的に、コーティングされた編み作業手袋に関して、よく使用される編み針は、15ゲージ針である。Shima Seikiは、18ゲージ針など、より細かい針サイズを使用することができる編機を製造する。Spencer DJ.Knitting Technology,p209,1993によると、編機の針のゲージは、使用することができる糸のデニールと明確な関係を有する。例えば、ゲージ15の針は、319デニール糸を使用する。しかしながら、ゲージ18の針は221デニール糸を使用する。デニールは、9000メートルの長さを有する糸のグラム数として定義される。したがって、18ゲージの針で編まれる裏地は、15ゲージ針で編まれる裏地より約30%軽い。また、18ゲージ針で編まれる221デニール糸の小さい直径は、平方単位面積あたり高い充填密度も有し、それによって、ラテックス浸漬に対してより滑らかな表面を与え、より滑らかで厚みが小さいラテックスをもたらす。
【0019】
18ゲージ針の糸の糸サイズが、15ゲージ糸のサイズより小さいことから、18ゲージの薄い編み裏地は、編目および/または糸の間でより小さい間隔を有する。この18ゲージの編み針の使用は、通常、編み裏地における編目および/または糸が、糸の直径の1から3倍の間隔にあけられていることを意味する。そのようなものとして、小さい隙間が、糸および/または縫い目の間に与えられる。ラテックス層を薄い編み裏地に接着するために、ラテックスは、薄い編み裏地の厚みの半分以上を介して浸透しなければならない。厚みの半分未満へのラテックス層の浸透は、通常、付着不足をもたらし、ラテックス層の予期しない分離をもたらす可能性があり得る。しかしながら、全部のラテックス層が、編み裏地に完全に浸透する場合、ポリマーコーティングが手袋着用者の肌に接触することになり、望ましくない効果、また時には炎症をもたらす。この問題は、利用可能な裏地の大きな厚みの理由から、15ゲージ針の糸を使用して処理することができ、またこれまで処理されてきた。
【0020】
作業者が、軽量の221デニール糸(18ゲージ針で編まれた)および接着性ラテックス層を有する手袋を着用し、かつ親指および指の運動を必要とする産業環境において使用される場合、指および親指の基部の手袋の一部分は、この運動によって大幅に伸縮する。この大幅な伸縮により、これらの位置の薄い編み裏地の編目パターンがずれ、薄い編み裏地に接触している薄い接着性ラテックス層に高い応力が加わる。過酷な使用条件の下では、この運動により、接着層部分を島状に弱化させ得、これは、ラテックスの表面摩耗および劣化につながる。本発明の側面は、薄い編み裏地の指および親指の基部の領域ならびに掌領域内等の、高い伸縮および/または運動領域を選択的に強化することによって、この問題に対処する。1つ以上の実施形態において、強化部の編目の間隔は、手袋の他の部分の編目の間隔よりも小さい。
【0021】
一実施形態によると、一般的に「プレーティング」と称される編み技術が使用され、これは、第1の糸と併せて、第2の糸を導入することである。本実施形態において、軽量の糸から作られた複数の編目から形成され、かつ複数の指コンポーネント、親指コンポーネント、および掌コンポーネントを含む、編み裏地が提供され、第2の糸は、伸縮および運動領域に取り入れられ、それによって、単位編目長さあたりより多くの縒り糸を提供する。プレーティングのために使用される第2の糸は、通常、編み裏地に使用されるものよりも軽量の繊維である。編み裏地がこれらの領域で伸縮する際、その中の縒り糸間の距離は依然として小さいままであり、そこに直に接触している接着性の薄いラテックス層への応力移動の低減をもたらし、それによって、頻繁な産業使用においてでさえ、薄型軽量手袋の完全性を保存する。編まれた編目は、薄型編み裏地の選択された位置にて、第2の糸とともに継続するため、このプレーティングは、標準的なVベッド編機を使用して達成することができる。
【0022】
別の実施形態において、319デニール糸等のより大きなデニール糸を使用してこれらの高度に伸縮した領域を編む一方で、薄型編み裏地の残りは、221デニール糸で編まれる。Vベッド編機の針すべては、同一のサイズおよび間隔であるため、319デニール糸は、221デニール糸よりも互いに近い間隔があげられる。したがって、高い伸縮を319デニールの強化部に加えることは、221デニールと比較して、糸間の間隔がより小さいので、接着性ラテックス層へ加わる応力の低減をもたらす。さらに、これらの領域の糸のデニールがより大きいことから、これらの領域のラテックス層は、厚みを増加させてもよく、さらなる頑丈さを提供する。これらの領域におけるより大きなデニール糸のこの変更は、18ゲージ針床を有する標準的なVベッド編機を使用して達成することができる。
【0023】
さらなる実施形態において、ジャカード編みと呼ばれる編み技術(ホールガーメント編み産業において一般的に使用され、目移しとも称される)が、編み裏地の強化部に使用される。これによって、3つ以上の段階的な編目を単一の列に形成することができ、より厚みのある繊維が作られるが、同じ221デニール糸を使用する。このジャカード編み技術は一般的に、編目を移すことができる針配置を使用し、Shima Seiki社のSWG021/041またはSWG−FIRST編機によって達成することができる。両編機は、フックを備える第1の部分と、第1の部分をスライドさせる第2の部分とを有する、2部からなる針を使用する。スライダは、必要に応じて、コンピュータ制御の下で、編まれた編目を移動アームに移動させる一方で、従来のラッチとして機能する。SWG−FIRSTは、ゲージレス編機であり、1インチあたりの編目の数のゲージを、コンピュータ制御の下でその場で変更することができる。ジャカード編み領域は、ジャージ編み等の従来どおりに編まれた編目ほどは伸縮せず、結果として、これらの高応力領域の薄い編み領域と接触する接着性ラテックスが保存される。ジャカード編みは、これらの領域でより厚い裏地をもたらすため、これらの領域に接着するラテックス層はより厚くしてもよく、負荷の大きい業務において、手袋の頑丈さを増加させる。
【0024】
概して記載される、本発明の側面は、指および親指の基部領域等の高い伸縮および運動領域における強化部を有する薄型編み裏地と、ポリマーラテックスコーティング層とを有する手袋を提供する。特定の実施形態において、221デニール以下を有する糸から作られた複数の編目を有する編み裏地であって、複数の指コンポーネント、親指コンポーネント、および掌コンポーネントを含む、編み裏地と、編み裏地の少なくとも1つの指コンポーネント、または親指コンポーネントの基部に位置する、少なくとも1つの強化部と、編み裏地に接着されたポリマーラテックスコーティングと、を提供する。ラテックスコーティング層は、編み層の厚みの約0.75から1.25倍であることが可能であり、ポリマーラテックスコーティングは、厚みの半分以上を介して浸透することができ、編み裏地の少なくとも一部分に対しては、糸サイズは、高い伸縮および運動領域以外の領域では、概して221デニール以下である。
【0025】
使用される221デニール糸は、2プライ/70デニール/103フィラメント、または1プライの2エンド/70デニール/103フィラメントの仕様を有する部分延伸ナイロン66であり、各フィラメントは0.68でニールを有し、一般的に、デニールを有するフィラメントは、1フィラメントあたり1デニール未満である。多くの非常に小さいデニールフィラメントを有する、マルチフィラメント糸のこの束は、非常に高い可塑性を有し、したがって、編み裏地もまた非常に高い可塑性を有する。18ゲージ針は、裏地を編むために、2プライの70デニール糸、もしくは1プライの140デニール糸、または221デニールほどの大きさの糸の単糸を使用することができる。
【0026】
1つ以上の実施形態において、221デニール糸を使用した、この軽量薄型編み裏地は、指または親指コンポーネントのいかなる基部のいかなる部分においても(例えば、指および/または親指コンポーネントが掌コンポーネントと交わる場所)、選択的に強化される。別の強化に適した領域は、掌コンポーネントが使用者の指関節の運動で屈曲する場所等、使用者による伸縮および運動を受ける掌コンポーネント内のどこかである。この強化は、いくつかの編み形状の形態であってもよい。第1の編み形状は、ベース糸に加え、編み裏地の強化部での第2のプレーティング糸の使用を伴う。第2の編み形状では、強化部は、221デニール糸を上回る糸で編まれる。第3の編み形状では、ジャカード編みを使用して、強化部を頑丈にする。
【0027】
1つ以上の実施形態において、ポリマーラテックス層は、一般的に手袋の掌および指領域を含む手袋の選択された部分上のみを被覆するが、手の甲の裏地の部分はポリマーラテックス層では被覆されず、それによって、通気性を促進する。詳細な実施形態では、ポリマーラテックスコーティングは、天然ゴム、合成ポリイソプレン、スチレンブタジエン、カルボキシル化、または非カルボキシル化アクリロニトリルブタジエン、ポリクロロプレン、ポリアクリル酸、ブチルラバー、または水性ポリウレタン(ポリエステル系、またはポリエーテル系)、またはそれらの組み合わせから成る群から選択される。具体的な実施形態では、ポリマーは、水性ラテックス乳液から形成される、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンラテックスを含む。一実施形態において、手袋の全厚は、0.6mmから1.14mmの範囲にある。詳細な実施形態においては、全厚は、約0.70から約0.90mmである。
【0028】
一実施形態では、5から50体積パーセントの範囲のよく分散された気泡を使用して、ポリマーラテック層を発泡化し、ポリマーラテックス層において通気孔により独立気泡、または開放気泡を形成する。独立気泡は、高い可塑性を有し、柔らかく多孔質の耐液体性ポリマーラテックスコーティングをもたらし、適した乾燥および乾燥および湿潤での握りを提供する。独立気泡は、通常、5から15体積パーセントの範囲の空気量と関連する。相互接続された開放気泡は、通常、15〜50%の気積の範囲で発生し、発泡化ポリマーラテックス層を介した手袋の通気性を提供する。開放気泡フォームを有する手袋は、口に当てることによって、ほとんど抵抗性なく、手袋のポリマーラテックスコーティングを介して空気を送ることができるという意味では、通気性を示す。手袋の通気性は、手袋の背面など、発泡化ポリマーラテックス層でコーティングされていない編み裏地の部分を介して、常に得ることができる。この発泡化ポリマーラテックス層はまた、編み裏地の厚みの半分以上に浸透し、編み裏地の少なくとも一部に対しては、ポリマーラテックス層は全層に浸透せず、したがって、ポリマーラテックスの肌接触を実質的に防止する。
【0029】
さらなる側面において、軽量な可塑性手袋を製造するためのプロセスが提供され、該プロセスは、裏地が約221以下のデニールを有する第1の糸から作られる複数の編目を有するように、複数の指コンポーネント、親指コンポーネント、および掌コンポーネントを含む手袋形状の裏地を作るステップと、少なくとも1つの指コンポーネントの基部、親指コンポーネントの基部、掌コンポーネント内、またはこれらの組み合わせに位置する、少なくとも1つの強化部を作るステップと、編み裏地に接着したポリマーラテックスコーティングを提供するステップと、を含む。
【0030】
他の側面は、産業作業を行う方法を含み、該方法は、221デニール以下を有する第1の糸から作られる複数の編目を有する編み裏地であって、複数の指コンポーネント、親指コンポーネント、および掌コンポーネントを含む、編み裏地と、少なくとも1つの指コンポーネントの基部、親指コンポーネントの基部、掌コンポーネント内、またはこれらの組み合わせに位置する、少なくとも1つの強化部と、編み裏地に接着したポリマーラテックスコーティングと、を含む手袋を着用するステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、手袋の異なるコンポーネント、およびプレーティングを用いる強化部を示す、軽量薄型裏地の概略図を示す。
【図2】図2は、手袋の異なるコンポーネント、および手袋の他の部分よりも重いデニールの糸を使用した強化部を示す、軽量薄型裏地の概略図を示す。
【図3】図3は、手袋の異なるコンポーネント、およびジャカードもしくは目移しを用いた強化部を示す、軽量薄型裏地の概略図を示す。
【図4】図4は、編み裏地の厚みの半分以上を介して浸透するポリマーラテックス層を有する、編み裏地の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
高い伸縮および/または運動領域に強化領域を有する軽量糸から形成される手袋を提供する。それを製造および使用する方法もまた提供する。
負荷の高い産業用途等の特定の用途において、薄型裏地および薄型ラテックス接着コーティングを有する軽量手袋は、伸縮および運動に繰り返しさらされる。具体的には、手袋の高度に応力が加わる領域には、指および/または親指部分の基部領域、例えば、指および/または親指部分が手袋の掌部分と交わる場所が含まれる。使用中、編み裏地の編まれた糸間の間隔は、これらの高度に応力が加わる領域で増加する。糸のこの伸縮は、裏地と直接接触している薄い接着性ラテックス層に伝わり、結果として、薄い接着性ラテックス膜は、弱化、例えば、切り離された四角形に分離される可能性がある。軽量手袋の継続的な使用により、手袋の磨耗および劣化をもたらす。これらの高度に応力が加わる領域への選択的な強化は、3つの異なるアプローチによって提供される。これらの高度に応力が加わる領域は、一般的に、4本の指と掌領域との交差部、および親指と掌領域との交差部である。
【0033】
編み裏地に関して、編み裏地は、例えば、手袋を形成する8つの基本コンポーネントを使用する手袋を編むために、針アレイ形態の多くの針、および1つ以上の糸を使用する、Vベッド(フラット)編機を使用して作製することができる。これらの8つのコンポーネントは、5本の指のそれぞれに対する1つのコンポーネントと、上部および下部を含む掌に対する2つのコンポーネントと、手首領域に対する1つのコンポーネントと、を含む。これらのすべての部分は、手の一般的な解剖学的形状を構築する、互いに結合した、円筒形または円錐形の部分である。従来の編みプロセスは、編機を使用して、小指から始まり、薬指および中指、人さし指へと続く、一般的に1度に1本の指を、特定の順序で、これらの領域のそれぞれを編む。針アレイの選択した針のみを使用して、それぞれの指を編んだ後、この指の編みプロセスを停止し、糸を切って結ぶ。編まれた指はホルダーによって保持され、シンカーによって重みを加えられる。次の指を、針アレイの異なる組の針を使用して、一度に1つ、順次編む。4本すべての指をこのように編む際、編機は、ホルダーによって保持される先に編まれた4本の指の編目を拾い、次いで、掌の上部を編む。個々の指を編み、編目を拾って、うまく適合する、より良好に適合するクロッチを有する掌上部を編む方法は、Maedaらによる米国特許第6,945,080号に開示される。適切な長さの上部掌を編んだ後、針アレイの別の組の針を使用して親指部分を開始し、掌の下部を、針アレイのすべての針を使用して編む。最終的に、編機は、手首コンポーネントを所望の長さまで編む。
【0034】
指先で使用される編目は、より多くの圧力が加えられる可能性が高いこの領域の手袋の強度を向上するように、一般的に、手袋の他の場所で使用される編目よりもきつい。手袋を編むために使用される針のサイズ、および糸のデニールに応じて、ある一定のコースを用いて、手袋の8つのコンポーネントのそれぞれを作る。使用される針のゲージが細かいほど、仕上がりが同じサイズの手袋を作るための、それぞれのコンポーネントに対するコースの数が多くなる。針、または糸のデニールを変更することは、継続的なプロセスにおいては極めて困難であり、一般的に、予め選択したデニールの連続した糸、および対応する針サイズが商業的に使用される。したがって、18ゲージ針のアレイ、ならびに221デニール糸を備えたVベッド編機の使用により、高水準の可塑性を有する、薄型の軽量裏地の作製を可能にする。
【0035】
ラテックスコーティングに関して、弾性物の可塑性は、対象物の形状によって強く決定される。中心負荷「P」にさらされる、厚さ「T」、および長さ「L」および幅「B」を有する弾性ビームは、以下の方程式によって得られる負荷点における、最大偏差「δ」を有し、
【0036】
【数1】

【0037】
ここで、「E」は弾性率であり、Iは、以下の方程式によって得られる中心軸の慣性モーメントであり、
【0038】
【数2】

【0039】
ここで、「B」はビームの幅であり、「T」はビームの厚さである。同様の関係が、「P」の他の負荷形状に存在する。すべての場合において、偏差「δ」は、厚さ「T」の3乗に反比例する。したがって、ビームの厚さの30%の減少は、偏差または可塑性の2.91、または3近くの因数での増加をもたらす。
【0040】
手袋ラテックスコーティングなどの、エラストマーコーティングを有する手袋の可塑性は、手袋の厚みを減少することによって増加することができる。手袋は編み裏地を有することから、編み裏地に部分的にのみ浸透し、それによって、編み裏地の糸の間の相対運動、および個々の糸のフィラメントの間の運動によって編み裏地を活用し、可塑性を強化してもよい。この強化された可塑性は、より薄い編み裏地の使用、およびより薄いポリマーコーティングの塗布を必要とする。次に述べるように、これらのアプローチのそれぞれにおいて、課題に直面する。
【0041】
Shima Seikiから供給される編機などの従来の編機は、これまで手袋の裏地を編むために15ゲージ針を使用している。この針は、1993年に発行された、D.J. Spencerによる本「Knitting Technology」の209ページに記載のとおり、319の総糸デニールに適応することができる。デニールは、9000メートルの糸の長さに対する、グラムの糸の重量である。1.13g/cmの密度を有するナイロン66を考慮すると、319グラムの体積は、282cmである。同様に、9000メートルの糸の平均断面積は、0.031mmであり、それによって、0.19mmの平均糸直径を有する糸が得られる。この断面直径の計算は、1つのものフィラメントの糸に対する結果を反映するが、同じデニールのマルチフィラメント糸は、糸の複数のフィラメント間に空間が存在することから、実質的により大きい断面直径を有する場合がある。裏地を形成するためにこれらの糸を編む場合、交差点において、断面直径は、公称0.38mmである。これらの糸は通常、微細フィラメントの複数の縒り糸を撚ることによって製造されるため、糸の直径は、より大きくなる場合があり、相応して、編み裏地も厚くなる場合がある。さらに、編むプロセスは、ある程度の緩みを有し、編み裏地の厚みは、この緩みによってより大きくなる場合がある。例えば、2プライ/70デニール/34フィラメントで、各フィラメントが2.08のデニールを有する2エンドは、280の合計公称デニールを有し、それは、標準の従来技術の手袋を製造するために、ラテックスに浸漬される従来技術の標準裏地を製造するために、15ゲージ針で編むことに適している。かかる糸で作られる糸は、ASTM D1777に従って、Ames Logic Basicの隙間ゲージモデル番号BG1110−1−04を使用して測定された、1.34mmの非圧縮厚さ、および9oz(225グラム)負荷下の1.13mmの圧縮厚さを有する。編み裏地は、167.9±5.3グラム/mmの秤量を有するために測定される。編み裏地をポリマーラテックス乳液でコーティングするとき、糸はまとまる傾向があり、圧縮厚さに近似する編み裏地の厚みを提供する。ポリマーラテックスコーティングの厚みは、編み裏地の厚みに近似する。ポリマーラテックスコーティングで被覆された、2プライ/70デニール/34フィラメントの2エンドから作られる15ゲージの編み裏地は、Ansell 11−800のような、1.15mmから1.5mmの手袋の厚みをもたらす。15ゲージで編まれた手袋である、Ansell 11−600手袋は、完全浸透により溶剤型ポリウレタンで被覆され、約1mmである編み裏地の厚みにほとんど等しい厚みを有する。Showa製品のBO−500もまた、溶剤型ポリウレタンが完全に浸透した、15ゲージの編み裏地を使用しており、約1mmである編み裏地の厚みにほとんど等しい厚みを有する。
【0042】
またShima Seikiも、18ゲージ針を使用することができる編機を有する。したがって、編み裏地を製造するために、より小さいデニール糸を使用してもよい。1993年に発行された、D.J. Spencerによる本「Knitting Technology」の209ページによると、18ゲージ針は、221の総デニールを有する糸を使用することができる。ナイロン66(1.13g/cm)の密度を考慮すると、この糸は、195cmの体積を有する。同様に、9000メートルの糸の平均断面積は、0.021mmであり、それによって、0.16mmの平均糸直径を有する糸をもたらす。しかしながら、140デニール糸を使用する場合、断面積は、0.014mmであるか、または平均糸直径は0.13mmである。したがって、221デニール糸を使用する場合、糸の交差点において、編み裏地は0.32mmの最小厚さを有することになる。実際には、この厚みは、複数のフィラメントの使用によって、大きくなることが予想される。具体例では、0.68デニールの103フィラメントで作られる70デニール糸を使用することができる。編み裏地もまた、ある程度の緩みを有する。1プライの70デニール/103フィラメント糸の2エンドの使用に加えて、プロセスは裏地を編むために、140デニールを有する2プライ/70デニール/103フィラメント糸、または221デニールを使用してもよい。各フィラメントが0.68デニールを有するような、1つの2プライ/70デニール/103フィラメント糸の使用は、ASTM D1777に従って、Ames Basic Logicの隙間ゲージモデル番号BG1110−1−04を使用して、非圧縮状態で0.83mm、および9oz(225グラム)負荷下の圧縮状態で0.67mmである、編み裏地をもたらす。この編み裏地は、142.9±1.3グラム/mの秤量を有するために測定される。編み裏地の厚みに近いラテックス層の厚みを有するポリマーラテックスコーティングで、この18ゲージ針の編み裏地を被覆するとき、手袋は、0.6mmから1.14mmの範囲の最終厚さを有する。詳細な実施形態では、手袋は、約0.70から約0.90mmの厚みを有する。糸は、非常に微細な直径の部分延伸繊維で作られているため、糸の可塑性は非常に良好である。したがって、手袋の厚みは30%を超えて減少し、15ゲージ針から編まれた裏地を有する手袋と比較して、3倍を超える手袋の可塑性の改善をもたらす。ゴム手袋の全重量も、同様により軽い。
【0043】
使用されるゲージ編み針は、通常、使用される糸のデニールに応じて選択される。しかしながら、より小さいデニール糸に対して、より大きなゲージ針を使用することが可能であり、この組み合わせは、編み裏地内の糸の過剰な間隔をもたらし、それは望ましい1から3倍の範囲よりも大きい。これは、15ゲージおよび18ゲージの編み針を使用するとき、編み裏地内の糸の間隔のばらつきによって説明される。隙間の間隔は、一般的に、適切な針ゲージが選択されるとき、裏地を編むために使用される糸の直径の1から3倍の範囲にある。15ゲージ針は、280デニール糸を使用することができ、0.19mmの平均糸直径を有する。18ゲージ針は、140デニール糸を使用することができ、0.13mmの平均糸直径を有する。隙間直径が糸直径の3倍の大きさになることができるように、糸直径と隙間の関係は、裏地を形成機に配置するときに変化する。
【0044】
図面に戻ると、図1は、手袋の異なるコンポーネント、およびプレーティングを使用する強化部を示す、軽量の薄型裏地の概略図を示す。221デニール糸に加え、第2の糸を導入して、これらの高度に応力が加わる領域に改善された質の糸を提供する。これらの領域が伸縮するとき、それらは、糸を非常に遠くには分離せず、したがって、接着性の薄いラテックス層は保存される。図1は、8つの手袋コンポーネントを有する、手袋100を図解する。これらのコンポーネントは、小指コンポーネント101、薬指コンポーネント102、中指コンポーネント103、人さし指コンポーネント104、上掌コンポーネント105、下掌コンポーネント107、親指コンポーネント106、および手首コンポーネント108を含む。強化部111、112、113および114は、小指、薬指、中指、人さし指コンポーネントの基部にそれぞれ位置する。上掌部分の任意の強化部は115に示される。強化部116、117および118は、親指コンポーネントの基部、および下掌コンポーネントを横切って位置する。プレーティングは、111、112、113、114、115、116、117および118領域で行われる。表1は、編まれたコースのそれぞれにおける、コンポーネントおよび糸の使用のそれぞれの典型的なコースのレイアウトを示す。1つ以上の実施形態では、糸1のデニールは70から221であり、糸2のデニールは221未満、例えば、約70から約221の範囲内である。第2の糸の挿入である、このプレーティングは、標準的なVベッド編機で達成することができる。
【0045】
【表1】

【0046】
図2は、手袋の異なるコンポーネント、および手袋の他の部分よりも重いデニールの糸を使用した強化部を示す、軽量薄型裏地の概略図を示し、それによって、強化部を提供する第2のアプローチを図解する。図2は、8つの主要な手袋コンポーネントを有する手袋200を図解する。これらのコンポーネントは、小指コンポーネント201、薬指コンポーネント202、中指コンポーネント203、人さし指コンポーネント204、上掌コンポーネント205、下掌コンポーネント207、親指コンポーネント206、および手首コンポーネント208を含む。領域211、212、213、214、215、216、217および218は、221を上回るデニールを有する糸で編まれるが、編み裏地の残りの部分は、221デニール糸で編まれる。表2は、編まれたコースのそれぞれにおける、コンポーネントおよび糸の使用のそれぞれの典型的なコースのレイアウトを示す。1つ以上の実施形態では、糸1のデニールは70から221であり、糸2のデニールは221を上回る。この糸のサイズの変更は、標準的なVベッド編機で達成することができる。
【0047】
【表2】

【0048】
図3は、手袋の異なるコンポーネント、およびジャカードもしくは目移しを用いた強化部を示す、軽量薄型裏地の概略図を示し、それによって、強化部を提供する第3のアプローチを図解する。領域302は、ジャカード編みを使用して、221デニール糸で編まれる。この種類の編みは、糸移し能力を必要とし、いわゆる「ホールガーメント」編機によって行うことができる。Shima Seiki社は、SWG021/041およびSWG−FIRST機を市販しており、双方とも、目移し能力を提供する、2コンポーネントスライダ編み針を使用する。現在、SWG021/041機は、15ゲージ針でのみ利用可能である。しかしながら、SWG−FIRSTは、ゲージレス針技術を使用し、コースの幅は、コンピュータ制御の下、その場で設定することができる。しかしながら、すべての編機がジャカード編みを提供できるわけではない。標準的なVベッド編機は通常、これには適さないことが一般的に理解されている。軽量編み裏地の残りの部分である領域301は、18ゲージ針を使用して、221デニール糸で編まれる。表3は、2つの部分のそれぞれにおける、編みレイアウトを示す。
【0049】
【表3】

【0050】
薄い編み裏地を、水性ポリマーラテックスでコーティングするとき、技術的問題が存在する。薄い編み裏地へのラテックス層の付着困難、およびラテックス層との接触による特定の使用者の肌への刺激が認められている。そのようなものとして、18ゲージ針の編み裏地はこれまで、水性ポリマーラテックス乳液でコーティングされていなかった。これらの技術的問題に対応するために、本発明の側面に従って、編み裏地の厚みの減少は、ポリマーラテックス乳液が、ポリマーラテックスコーティング、および編み裏地の間の付着を形成するために、約半分以上浸透することを必要とする。編み裏地の少なくとも一部に対しては、ラテックス層は編み裏地の全層に浸透せず、それによって、手袋着用時のポリマーラテックス、および使用者の肌との接触を実質的に軽減する。別の実施形態では、編み裏地の肌接触面は、実質的にポリマーラテックスコーティングを含んでいない。一実施形態では、編み裏地の肌接触面は、ポリマーラテックスコーティングを約75%以上含まない。本発明の側面に従ったアプローチによって、全体の誤差範囲は著しく減少する。
【0051】
Ansell 11−600、またはShowa BO−500などの、15ゲージ針の編み裏地を使用し、溶剤型ポリウレタンが浸透する厚みを有する、より薄い手袋を製造しようとする試みによって、硬質の手袋をもたらす。溶剤型ポリウレタンは、これらの手袋の裏地に完全に浸透することになり、それによって裏地を強化し、その弾性率「E」を増加し、その結果偏差を減少する。また、溶剤型ポリウレタンに使用される薬品は、容易に洗浄することができず、より硬質の手袋をもたらす。これにもかかわらず、本発明の特定の実施形態では、溶剤型ポリウレタンは許容可能な遮断剤であり、編み裏地の半分以上、および少なくとも一部に対して浸透する、ポリマーラテックスコーティングと共に使用することができる。本発明の側面の手袋は、例えば18ゲージ針を使用する糸のサイズに関わらず、この手袋の形状を達成することができる。
【0052】
図4は、編み裏地内の糸の配列、および発泡化または非発泡化されてもよいポリマーラテックスコーティングとのその関係を、概略的に図解する。平均直径Dを有する糸は編み裏地内で編まれ、厚みT1の裏地を形成する。厚みT2のポリマーラテックスコーティングは編み裏地に浸透し、手袋の全厚を形成する。編み裏地の少なくとも一部に対しては、ポリマーラテックスコーティングは、T−T2で定義される距離に浸透せず、浸透の度合いは、比率(T−T2)/T1によって定義される。コーティングが裏地の全層に浸透する場合、編み裏地の厚みT1に関わらず、不浸透領域はゼロである。裏地の外側にあるポリマーラテックスコーティングは、T−T1で示される。したがって、ポリマーラテックスコーティングの厚みT2は、通常、編み裏地の厚みT1の0.75から1.25の範囲にある。比率が0.75のとき、コーティングの表面が繊維とぴったり重なっている場合、ポリマーラテックスコーティングは、裏地の4分の3に浸透する。浸透はより小さくてもよいが、半分以上であることは、繊維の表面の上部に広がるポリマーラテックスコーティングをもたらす。1.25の比率において、4分の3浸透するポリマーラテックスコーティングはなお、編み裏地の外側のポリマーラテックスコーティングの厚みの半分を有する。この範囲において、図4の形状は、編み裏地を覆うが、編み裏地の全層に浸透しないポリマーラテックスコーティングによって達成される。
【0053】
水性ポリマーラテックスから生成されたラテックスコーティング付きの、15ゲージの編み裏地を有するAnsell 11−800手袋、溶剤型ポリウレタンコーティングが完全に浸透した、15ゲージの編み裏地を有するAnsell 11−600、溶剤型ポリウレタンが完全に浸透した、15ゲージの裏地を有するShowa製品BO−500に対して測定された、典型的特性の表4において比較が示される。本発明による典型的な手袋は例Iと呼ばれ、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンラテックスが一部に浸透する、18ゲージ編み裏地を使用し作られ、同様に表4に示される。15ゲージ針の従来製品を、本発明の方法論によって製造される18ゲージ製品と直接比較することから、これらの例は選択された。Ansell 11−800手袋が一般的に、1.15から1.5mmの厚みを有する一方で、本発明による手袋の厚みは、0.60mmから1.14mmである。詳細な実施形態では、手袋は、約0.70から約0.90mmの厚みを有する。したがって、例Iによる手袋は、より可塑性があり、よりよい触感感度を提供する。例Iの一般的なサイズ8の手袋が、平均で14.8グラムの重さを有する一方で、同様のサイズ8の11−800手袋は、19.2から20.7グラムの重さを有する。表4はまた、例Iの製品上の油浸透性への、水性フルオロケミカル(FC)コーティングの効果を示す。
【0054】
【表4】

【0055】
より高いクラーク剛度の数は、より高い剛性の手袋に相当する。ポリウレタンでコーティングされたAnsell 11−600手袋は、ポリウレタンが15ゲージの編み裏地の全層に浸透し、裏地を強化しより高い弾性率「E」を与え、それにより偏差および可塑性を減少することから、その厚みの減少にもかかわらず、7.75cmのクラーク剛度で非常に硬い。11−800手袋が5.25cmのクラーク剛度を有する一方で、例Iによる手袋は、4.2cmのクラーク剛度を有する。
【0056】
軽量薄型可塑性ポリマーでコーティングされた手袋の製造プロセスは、複数のステップを含む。詳細な実施形態では、公称140デニールのナイロン66糸による18ゲージの編み裏地を、手型のセラミックまたは金属形成機に配置し、2〜15wt%の硝酸カルシウム水溶液に浸漬する。硝酸カルシウム凝固剤液は編み裏地の全層に浸透する。この凝固剤でコーティングされた裏地が、水性ポリマーラテックス乳液に接触するとき、乳液を不安定化し、ラテックスをゲル化する。次に、形成機に配置された、凝固剤でコーティングされた編み裏地を、水性ポリマーラテックス乳液に浸漬する。ポリマー水性ラテックスは、250〜5000センチポイズの範囲の粘度を有し、水酸化カリウム、アンモニア、スルフォン酸塩などを含むがそれらに限定されない、一般に使用される安定剤を有する。ラテックスは、界面活性剤、抗菌剤、賦形剤/添加剤などの、他の一般に使用される成分を含んでもよい。糸のより小さい直径により、繊維間の距離は減少し、編み裏地内にピンチ領域を素早く形成し、ポリマーラテックス乳液がこの領域に浸入するとき、ゲル化作用は、ポリマーラテックス乳液が入ることを本質的に阻止し、それによって、編み裏地の厚みへの、ポリマーラテックス乳液の完全浸透を実質的に防止する。この浸透およびゲル化作用は、ポリマーラテックス乳液の粘度、および凝固剤でコーティングされた裏地のある形成機が、ポリマーラテックス乳液タンクに押し下げられる深さに反応しやすい。静水圧が高くなると、ポリマーラテックス乳液は、編み裏地により浸透する。浸漬の深さが小さくなり、ポリマーラテックス乳液の粘度が高くなる場合、ポリマーラテックスコーティングは編み裏地に最低限に浸透し、コーティングの付着不足をもたらす。したがって、2つの制御可能なプロセス変量は、編み裏地が比較的薄いときでさえ、編み裏地へのポリマーラテックスコーティングの浸透を、正確および確実に制御するために使用可能である。これらのプロセス変量は、1)ポリマーラテックス乳液粘度の制御、および2)編み裏地が配置された形成機の浸漬の深さである。編み裏地の厚みの半分以上の深さであるが全層未満の浸透に、この水性ポリマーラテックス乳液を達成するために必要とされる、一般的な浸漬の深さは、ラテックス乳液の粘度に基づいて、0.2から5cmである。手袋のラテックスコーティングは一般的に、手袋の掌および指の領域に与えられるため、ラテックス乳液の内外に型を動かす、複合メカニズムを使用して形成機を連接し、形成機に配置された編み裏地の種々の部分を、徐々に変化する深さに浸漬する。結果として、手袋の一部は、ある程度のラテックス浸透を有してもよいが、編み裏地の75%超は、手袋の肌接触面上のラテックスのしみを示すことなく、半分以上浸透される。プロセスの第1の実施形態は、初めに洗浄し、次にラテックス組成物を加硫するために加熱し、ラテックス乳液の粘度およびぬれ特性を安定化、および制御するために使用される凝固塩、および他のプロセス薬品を除去するために洗浄する、薄い編み裏地上の薄型連続的ラテックスゲル化層を生成する。したがって、製造される手袋は、15ゲージの手袋と比較して、重量および厚さにおいて30%超少なく、3倍超の可塑性を有する。
【0057】
本発明の第2の実施形態では、使用されるポリマーラテックス乳液を発泡化する。空気量は一般的に、体積基準で5から50%の範囲にある。ポリマーラテックス乳液は、ラテックス発泡体を安定化するために、TWEEN 20などの追加の界面活性剤を含んでもよい。一度ラテックスを正しい空気量で発泡化し、粘度を調整すると、初めに最適速度で動く正しい泡立て羽根付き撹拌機を使用して、発泡体の微調整を行い、減速度で動く異なる羽根を使用して、気泡サイズを微調整する。この発泡化ポリマーラテックス乳液は通常より高い粘度を有し、したがって、編み裏地内の糸の隙間に浸透することがより困難であり、配置された編み裏地を有する形成機の、より深い浸漬を必要とする場合がある。繊維間の詰め領域を形成する糸の表面にある凝固剤の作用により、浸透した発泡化ラテックス乳液はすぐにゲル化し、編み裏地の厚みへの発泡化ラテックス乳液のさらなる浸入を防ぐ。気泡は、ポリマーラテックスコーティングの弾性率を減少し、手袋の可塑性を増加する。5〜15の体積百分率の範囲内の空気量は、独立気泡を有する発泡体をもたらし、ポリマーラテックスコーティングは液体を通さない。このコーティングは、スポンジのように軟らかい感触を有する。外部表面に隣接する気泡の一部は開き、粗さの増加をもたらし、握り面から油および水の境界層を除去し、握りの増加をもたらす能力を有する。体積空気量が15〜50%の範囲にあるとき、気泡は互いに隣接し、加硫加熱ステップの間それらは拡大し互いに接触し、開放気泡フォームを形成する。手袋のポリマーラテックスコーティングは通気性を有し、手袋はべとべとしない。
【0058】
詳細にわたり本発明の種々の側面を記載してきたが、かかる詳細に厳密に従う必要はないが、さらなる変更および修正がすべて、追記の請求項によって定義されるような本発明の範囲内で、当業者に提案されてもよいことは理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手袋であって、221デニール以下を有する第1の糸から作られた複数の編目を有する編み裏地であって、複数の指コンポーネント、親指コンポーネント、および掌コンポーネントを含む、編み裏地と、
少なくとも1つの指コンポーネントの基部、前記親指コンポーネントの基部、前記掌コンポーネント内、またはこれらの組み合わせに位置する少なくとも1つの強化部と、
前記編み裏地に接着されたポリマーラテックスコーティングと、を含む手袋。
【請求項2】
前記ポリマーラテックスコーティングは、前記編み裏地の厚みの半分以上を介して浸透し、前記編み裏地の少なくとも一部分に対しては、前記ポリマーラテックスコーティングは、前記編み裏地の全層に浸透せず、前記ポリマーラテックスコーティングは、前記編み裏地の厚みの0.75から1.25倍の範囲の厚みを有する、請求項1に記載の手袋。
【請求項3】
前記第1の糸は、約70から約221の範囲のデニールを有する、請求項1に記載の手袋。
【請求項4】
前記少なくとも1つの強化部は、前記複数の指コンポーネントの基部に沿って位置する、請求項1に記載の手袋。
【請求項5】
前記少なくとも1つの強化部は、前記第1の糸、および約70から約221の範囲のデニールを有する第2の糸からなる複数のプレーテッドステッチを含む、請求項1に記載の手袋。
【請求項6】
221デニール以下を有する第1の糸から作られた前記複数の編目は、前記強化部以外の領域の前記編み裏地に位置し、前記少なくとも1つの強化部は、221を上回るデニールを有する第2の糸を含む、請求項1に記載の手袋。
【請求項7】
前記少なくとも1つの強化部は、複数のジャカードまたは目移しを含む、請求項1に記載の手袋。
【請求項8】
前記ポリマーラテックスコーティングは、天然ゴム、合成ポリイソプレン、スチレンブタジエン、カルボキシル化、または非カルボキシル化アクリロニトリルブタジエン、ポリクロロプレン、ポリアクリル酸、ブチルラバー、水性ポリエステル系ポリウレタンポリエステル系、水性ポリエーテル系ポリウレタン、またはそれらの組み合わせから成る群から選択される、請求項1に記載の手袋。
【請求項9】
前記ポリマーラテックスコーティングは、カルボキシル化アクリロニトリルブタジエンを含む、請求項8に記載の手袋。
【請求項10】
前記第1の糸はナイロン66を含む、請求項1に記載の手袋。
【請求項11】
軽量可塑性手袋を製造するためのプロセスであって、
裏地が約221以下のデニールを有する第1の糸から作られる複数の編目を含むように、複数の指コンポーネント、親指コンポーネント、および掌コンポーネントを含む手袋型の裏地を作るステップと、
少なくとも1つの指コンポーネントの基部、前記親指コンポーネントの基部、前記掌コンポーネント内、またはその組み合わせに位置する少なくとも1つの強化部を作るステップと、
前記編み裏地に接着したポリマーラテックスコーティングを提供するステップと、
を含む、プロセス。
【請求項12】
前記ポリマーラテックスコーティングを提供する前記ステップは、
前記コーティングが前記編み裏地の厚みの半分以上を介して浸透し、前記編み裏地の少なくとも一部分に対しては、前記コーティングが前記編み裏地の全層を浸透しないように、前記コーティングを形成するステップを含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記少なくとも1つの強化部を、前記複数の指コンポーネントの基部に沿って配置するステップを含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項14】
前記第1の糸から作られた前記複数の編目を作る前記ステップは、18ゲージ針を有する編機を使用するステップを含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項15】
編機を使用するステップをさらに含み、前記裏地は全部、前記第1の糸から作られ、前記少なくとも1つの強化部は、前記第1の糸、および約70から約221の範囲のデニールを有する第2の糸からなる複数のプレーテッドステッチから作られる、請求項11に記載のプロセス。
【請求項16】
編機を使用するステップをさらに含み、前記第1の糸から作られる前記複数の編目は、前記少なくとも1つの強化部以外の領域の前記裏地に位置し、前記少なくとも1つの強化部は、221を上回るデニールを有する第2の糸から作られる、請求項11に記載のプロセス。
【請求項17】
編機を使用して、前記裏地を前記第1の糸から全部作り、前記少なくとも1つの強化部を複数のジャカードまたは目移しから作るステップをさらに含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項18】
前記編機はホールガーメント編機である、請求項17に記載のプロセス。
【請求項19】
前記編機はゲージレスである、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
産業作業を行う方法であって、221デニール以下を有する第1の糸から作られる複数の編目を有する編み裏地であって、複数の指コンポーネント、親指コンポーネント、および掌コンポーネントを含む、編み裏地と、少なくとも1つの指コンポーネントの基部、前記親指コンポーネントの基部、前記掌コンポーネント内、またはこれらの組み合わせに位置する、少なくとも1つの強化部と、前記編み裏地に接着したポリマーラテックスコーティングと、を含む手袋を着用するステップを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−538180(P2010−538180A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524123(P2010−524123)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際出願番号】PCT/US2008/075166
【国際公開番号】WO2009/032866
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(598165943)アンセル・ヘルスケア・プロダクツ・エルエルシー (15)
【氏名又は名称原語表記】Ansell Healthcare Products LLC
【Fターム(参考)】