説明

軽量不燃性ダクト

【課題】気密性、断熱性、軽量性、不燃性、耐水性に優れた軽量不燃性ダクトを提供する。
【解決手段】一対の平面部51、51間が縦壁部52により所定の間隔をおいて連結された中空状の合成樹脂製板2の表裏をメタルシートで被覆した複数の単位板材2を、ヒンジ3等の連結部材を介して折り曲げ可能に連結しておき、施工現場で筒状に組み立て、連結部分や接合部分11をアルミ製粘着テープ4等の不燃性シール材で固定かつシールして軽量不燃性ダクト1とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物に設置される空調、排気、換気等のための軽量で不燃性のダクトに関する。
【背景技術】
【0002】
建物に設置される空調、排気、換気等のためのダクトとしては、気密性、不燃性、施工性が重要とされており、一般にアルミ板、鉄板等の金属製のダクトや紙製のダクト等が知られている。紙製ダクトとしては、例えば、波板形の中芯部分を可燃材で形成した芯材の表面又は裏面をアルミ箔で被覆してなり、芯材の被覆面全体とアルミ箔との間に不燃性の断熱層を介在させた不燃性段ボールがある(例えば、特許文献1参照。)。これ以外にも、段ボールダクトの組み立て構造が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
しかし、金属製のダクトは気密性、不燃性に優れるものの、重量が大きいため、保管、輸送、施工性等の面で不利である。また、空調ダクト内を通過する空気の温度条件によっては結露することがあり、また湿度の高い空気が通過すると鉄製のダクトでは水分による錆びが発生してダクトが早期に劣化する可能性がある。一方、紙製のダクトは、金属製のダクトに比べて、極めて軽量で施工性の面では有利であるが、紙自体はもともと燃え易い素材であるため、アルミ箔で被覆しても不燃性が必ずしも十分とはいい難い。また、結露等により水が付着した場合、紙製のダクトでは水分が侵入してカビが発生する等してダクトが早期に劣化する可能性もある。
【0004】
また、空調ダクトとして、結露を防止するためにグラスウール等の保温材料と組み合わせた亜鉛メッキ鋼板製ダクトも使用されているが、これらの材料は多くのエネルギーを使用して作られており、また、グラスウールは廃棄処分にも多くのエネルギーが必要である。そのうえ、鋼板製ダクトの取り付けは専門の作業者が行うが、重量が大きいため、ダクトを適切に取り付けるには熟練の技術が必要となる。
【0005】
【特許文献1】特開2006−1095号公報
【特許文献2】特開2006−29681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、気密性、断熱性、軽量性、不燃性、耐水性、更には施工性にも優れた軽量不燃性ダクトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明では、一対の平面部が縦壁部により連結された中空状の合成樹脂製板の表裏をメタルシートで被覆した、新規な構成のダクト用の不燃性板材を用いた。
【0008】
即ち、本発明に係る軽量不燃性ダクトは、一対の平面部間が縦壁部により所定の間隔をおいて連結された中空状の合成樹脂製板の表裏をメタルシートで被覆した板材を、筒状に形成したものである。前記板材としては、一対の平面部間が縦壁により所定の間隔をおいて連結された中空状の合成樹脂製板の表裏をメタルシートで被覆した複数の単位板材を、連結部材を介して折り曲げ可能に連結しておくことが好ましい。また、前記合成樹脂製板としては、合成樹脂を押出成形したものが好適に使用される。更に、前記合成樹脂製板は、複数の合成樹脂製板がヒンジ部を介して連結された形状に押出成形されたものであってもよい。
【0009】
なお、本発明において不燃性とは、ダクトとして必要とされる不燃性を確認するための試験(発熱性試験、ガス有毒性試験等)で合格基準を超える程度の不燃性を意味している。
【0010】
また、本発明に係る軽量不燃性ダクトの筒状の形状としては、その断面形状が四角形状の他、多角形状等、種々の形状を採用することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の軽量不燃性ダクトは、中空状の合成樹脂製板の表裏をメタルシートで被覆してなる板材を用いたため、気密性、断熱性、軽量性、不燃性、耐水性等に優れる。また、軽量であることから、取り扱い、保管、運搬、更には施工時の作業性もよい。
【0012】
また、前記合成樹脂製板が、複数の単位板材を連結部材で連結したものであれば、板状のままで保管、運搬することができ、保管や運搬のためのスペースや費用を合理化でき、また、組み立て施工時には前記連結部材の位置で折り曲げることで簡単に筒状のダクトを組み立てることができ、施工性に優れる。
【0013】
また、前記合成樹脂製板が合成樹脂を押出成形したものは、ダクトの生産性がよい。更に、前記押出成形した合成樹脂製板が、複数の合成樹脂板がヒンジ部を介して連結された形状に押出成形されたものは、生産性に優れ、また前記ヒンジ部で折り曲げて簡単に筒状のダクトに組み立てることができるので施工性にも優れる。
【0014】
メタルシートとして粘着剤を塗布したアルミニウムシートを用いると、合成樹脂製板への接着が容易で、ダクトの生産性が良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に示した実施形態に基づき本発明を更に詳細に説明する。
図1は、本発明に係る軽量不燃性ダクト1の一実施形態を示す斜視図である。図例の軽量不燃性ダクト1は、4枚の不燃性板材2により、断面四角形状の筒状に形成されているが、不燃性板材2の数やダクト1の断面形状は各種の数及び形状が採用されうる。前記各不燃性板材2同士は、例えば、金属製のヒンジ3、粘着テープ、その他、折り曲げ可能な各種連結手段で連結しておくことができる。図例の軽量不燃性ダクト1は、図2に示すように、4枚の不燃性板材2が、ヒンジ3等の連結部材で連結されており、ダクトの設置時に連結部で折り曲げられて図1に示すような筒状に組み立てられる。このとき、両端に連結された不燃性板材2同士は、一方の板材2の端部内面に他方の板材2の側端面をつき合わせた状態で、アルミ製粘着テープ等のメタルシート等で作製された不燃性シール材でその接合部分が固定され、かつ密閉シールされる。また、各不燃性板材2間の連結部分も、前記と同様のアルミ製粘着テープ4等の不燃性シール材でシールされる。なお、図1に示す実施の形態では、連結部材であるヒンジ3がダクト1の長手方向の数箇所に分かれているが、例えば図3に示すように、ヒンジ3等の連結部材をダクト1の長手方向の全長にわたって設けることもできる。
【0016】
不燃性板材2は、例えば、図4に示すような、中空状合成樹脂板5の表裏にメタルシート6が被覆されたものである。合成樹脂製板5は、図4に示すように、一対の平面部51、51間が、縦壁部52により所定の間隔をおいて平行状態で連結された中空板状である。この合成樹脂製板5は、例えば、熱可塑性樹脂の押出成形により製造され、縦壁部52及び隣接する縦壁部52、52間に形成される中空部53が押出方向に連続した形状に成形される。通常は、縦壁部52及び中空部53が図1に示す軽量不燃性ダクト1の長手方向に伸びるように構成される。なお、図4に示すように、合成樹脂製板5の内面には、補強用のリブ54(長)、55(短)等を適宜形成してもよい。更に、図4に示す不燃性板材2の合成樹脂製板5は、一対の平面部51、51が縦壁部52で直接連結された一層構造であるが、両平面部51、51間に更に単又は複数の平面部のある多層構造であってもよい。また、縦壁部52の数や角度も特に限定されるものではなく、ダクト1のサイズや用途によって適宜の数及び角度を設定すればよい。
【0017】
前記中空状合成樹脂製板5の押出成形に使用する熱可塑性合成樹脂は特に限定されないが、難燃性熱可塑性合成樹脂が、ダクトの不燃性の点から好ましい。前記難燃性熱可塑性樹脂としては、公知の各種難燃剤や不燃剤を合成樹脂に配合したものであり、特に限定はないが、例えば、難燃性ポリエチレン樹脂、難燃性ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
【0018】
また、前記メタルシート6としては、薄肉加工でき、ダクトに用いることができる金属製のシートであればよく、例えば、アルミニウムシート、ステンレスシート、アルミガラスクロス等が挙げられる。
【0019】
メタルシート6は、合成樹脂製板5に粘着剤又は接着剤を介して接着することが好ましい。粘着剤及び接着剤としては、難燃性のものが好ましく、例えば、アクリル系、合成ゴム系、エポキシ系、ウレタン系、シリコン系のもの等が挙げられる。中でも、経済性及び作業性の観点から、メタルシート6としては、粘着剤が塗布されたアルミニウムシートを用いるのが好ましい。
【0020】
また、不燃性の観点から、不燃性板材2の端部もメタルシート等で覆われていることが好ましい。この場合、表裏に接着したメタルシート6の余分な分を板材2の端面に折り返して表裏のメタルシート6同士を固着してもよい。また、不燃性板材2の端部をアルミ製粘着テープ等の不燃性シール材を接着して覆ってもよい。
【0021】
なお、合成樹脂製板5、メタルシート6の大きさや厚みとしては、ダクトとして使用できる範囲であれば、特に限定はないが、その厚みを小さくすることでダクトの軽量化を図ることができる。
【0022】
上記のような不燃性板材2を筒状に組み立てて形成される軽量不燃性ダクト1の大きさにも特に限定はないが、通常、幅が数cm〜数十cm、長さが数十cm〜数m程度の大きさに製造された不燃性板材2を筒状に組み立てたダクト1が、公知の方法、例えば図1に示すように互いの端部同士を付き合わせた状態で、連結部分にアルミ製粘着テープ4等の不燃性シール材を接着して連結固定かつシールされる。また、図5に示すように、軽量不燃性ダクト1同士を連結フレーム7を介して連結し、次いで、連結部分をアルミ製粘着テープ4のような不燃性シール材でシールすることで気密性に優れたダクトを組み立てることができる。連結フレーム7の形状としては、特に限定はなく、図5に示す連結フレーム7のように直線的にする構造の他、各種角度に連結するための連結フレームを用いることで、障害物を避けてダクトを設置する等、種々の連結構造を採用することができる。
【0023】
上記のような本発明に係る軽量不燃性ダクト1は、中空状の合成樹脂製板5の表裏6、更には必要に応じて端面をメタルシート6やアルミ製粘着テープ等の不燃性シール材で被覆してなる不燃性板材2から構成されており、気密性、断熱性、軽量性、不燃性、耐水性等に優れる。また、軽量であることから、取り扱い、保管、運搬、更には施工現場における組み立てや設置時の作業性もよい。また、図2に示すように、複数の不燃性板材2をヒンジ3、その他の連結部材で予め連結しておけば、板状のままで保管、運搬等することができ、保管や運搬のためのスペースや費用を合理化できる。また、ダクトの組み立て、施工に際しては、前記連結部材の位置で折り曲げ、アルミ製粘着テープ4等の不燃性シール材で連結部分を連結固定かつシールすることで、簡単に筒状のダクトを組み立てることができ、施工性に優れる。また、合成樹脂製板5は合成樹脂の押出成形により生産性良く製造できる。
【0024】
図6に示すものは、本発明に係る軽量不燃性ダクトの他の実施形態を示すものである。まず、図6(a)に示すものは、一対の平面部51a、51bが複数の縦壁部52…により所定の間隔をおいて連結された幅の広い合成樹脂製板5を押出成形等により成形し、一方の平面部51aの所定の位置を切断するとともに(カット部8)、該カット部8に対応する他方の平面部51bの内面にハーフカット部9を設けてヒンジ部10を形成し、複数、図例のものでは4枚の単位合成樹脂製板5Aがヒンジ部10…を介して連結されたものである。前記カット部8及びハーフカット部9は、合成樹脂製板5の押出成形時に、そのようなダイス形状のものを用いたり、押出直後に連続してカットして形成してもよい。この実施の形態では、連結された複数の単位合成樹脂製板5Aの表裏がアルミニウム等のメタルシートにより被覆されて、不燃性ダクト1Aが構成される。この不燃性ダクト1Aは、図7(a)に示すように筒状に組み立てられ、ヒンジ部10による連結部分や、両端の単位合成樹脂製板5A、5A同士の接合部分11がアルミ製粘着テープ等の不燃性シール材により連結固定かつシールされる。
【0025】
また、図6(b)に示すものは、同じく複数の単位合成樹脂製板5Bがヒンジ部10を介して連結された形状に押出成形されたものであるが、この実施の形態では、各単位合成樹脂製板5Bの側端面5aを傾斜状、例えば4枚の単位合成樹脂製板5Bを連結して断面四角形状のダクト1Bとする場合には、それぞれの端面5aを平面部51に対して約45°の角度に傾斜させることで、図7(b)に示すように筒状に組み立てた時に、各単位合成樹脂製板5B同士がほぼ直角に連結された状態の不燃性ダクト1Bを組み立てることができ、保形性の良いダクトが得られる。なお、この場合も、合成樹脂製板5Bの表裏がアルミニウム等のメタルシートにより被覆されて、接合部分11は、アルミ製粘着テープ等の不燃性シール材により連結固定かつシールされる。
【0026】
上記図6(a)、(b)に示したものは、複数の単位合成樹脂板5A又は5Bを一連に連結したダクトの実施形態を示したものであるが、必ずしも全ての単位合成樹脂製板が連結されていなくてもよい。例えば、図6(c)に示すものは、2枚の単位合成樹脂製板5C、5Cがヒンジ部10を介して連結された状態に押出成形等により成形され、それぞれ図7(c)に示すようにL字状に折り曲げた2枚の板材を組み合わせて筒状に連結することで、軽量不燃性ダクト1Cとする実施の形態である。この軽量不燃性ダクト1Cの場合にも、合成樹脂製板5Cの表裏がアルミニウム等のメタルシートにより被覆されて、接合部分11は、アルミ製粘着テープ等の不燃性シール材により連結固定かつシールされる。
【0027】
図6、図7に示したように、ダクトを構成する合成樹脂製板が、複数の合成樹脂板がヒンジ部10を介して連結された形状に成形されたものは、板状で保管、輸送することができ、取り扱い性に優れるとともに、施工に際してはヒンジ部10で折り曲げて簡単に筒状のダクトに組み立てることができ、施工性にも優れる。
【0028】
なお、上記した各実施の形態では、不燃性板材2同士の接合部分11はアルミ製粘着テープ4等の不燃性シール材(メタルシート)でシールしているが、予めホッチキス等の固定部材を用いたり、他のシール手段(例えば、接着剤、粘着材)を用いて固定したうえで、アルミ製粘着テープ4等の不燃性シール材でシールすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る軽量不燃性ダクトの実施形態を示す斜視図。
【図2】前記軽量不燃性ダクトを広げた状態の断面図。
【図3】本発明に係る軽量不燃性ダクトの他の実施形態を示す斜視図。
【図4】本発明に係る軽量不燃性ダクトに用いられる不燃性板材の実施形態を示す断面図。
【図5】軽量不燃性ダクトの連結構造の他の実施形態を示す斜視図。
【図6】(a)〜(c)は、他の実施形態の不燃性ダクトの合成樹脂製板の断面図。
【図7】図6(a)〜(c)に示す合成樹脂製板を筒状に組み立てた状態を示す断面図。
【符号の説明】
【0030】
1 軽量不燃性ダクト
2 不燃性板材
3 ヒンジ
4 アルミ製粘着テープ(不燃性シール材)
5 中空状合成樹脂製板
6 メタルシート
7 連結フレーム
8 カット部
9 ハーフカット部
10 ヒンジ部
11 接合部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の平面部間が縦壁部により所定の間隔をおいて連結された中空状の合成樹脂製板の表裏をメタルシートで被覆した板材を、筒状に形成してなる軽量不燃性ダクト。
【請求項2】
前記板材が、一対の平面部間が縦壁部により所定の間隔をおいて連結された中空状の合成樹脂製板の表裏をメタルシートで被覆した複数の単位板材を、連結部材を介して折り曲げ可能に連結したものである請求項1記載の軽量不燃性ダクト。
【請求項3】
前記合成樹脂製板が、合成樹脂を押出成形したものである請求項1又は2に記載の軽量不燃性ダクト。
【請求項4】
前記合成樹脂製板が、複数の単位合成樹脂製板がヒンジ部を介して連結された形状に押出成形されたものである請求項3記載の軽量不燃性シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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