説明

軽量化電気ケーブル

【課題】軽量化の効果が大きく確実である軽量化電気ケーブルを提供する。
【解決手段】導体1上に絶縁体2を被覆した絶縁線心3を2本以上撚り合わせてなると共に、これら絶縁線心3と最外層に施される絶縁シース4との間に形成される隙間に介在物7を介在させてなる電気ケーブル5において、前記介在物7として前記電気ケーブル5の断面径方向に変形可能な中空密閉体を単独もしくは他の介在物6と共に介在させてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導体上に絶縁体を被覆した絶縁線心を2本以上撚り合わせてなると共に、これら絶縁線心と最外層に施される絶縁シースとの間に形成される隙間に介在物を介在させてなる軽量化電気ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、導体上に絶縁体を被覆した絶縁線心を2本もしくは3本撚り合わせてなると共に、最外層に絶縁シースを施してなる所謂2心もしくは3心の電気ケーブルがある。この電気ケーブルにおいては、絶縁シースは撚り合わせられた絶縁線心上に押し出しにより被覆され、断面円形の外形とされることが殆どである。
【0003】
このような電気ケーブルの構造の一例を図4に示す。この例では、導体10上に絶縁体20を被覆した断面円形の絶縁線心30を2本撚り合わせ、最外層に絶縁シース40を押し出しにより均一厚さに被覆して断面円形の外形の電気ケーブル50としている。この例からも明らかなように、絶縁線心数の少ない2心もしくは3心の電気ケーブル50では、絶縁線心間の撚り合わせ間隙が大きいことから、この間隙を埋めない限り、その上に絶縁シース40を施して形成される電気ケーブル50の外形に前記絶縁線心間の撚り目が出てしまう。これを解消するには、前記間隙を埋めるように絶縁シース40を充実押し出しするか、絶縁シース40を押し出す際に前記間隙に介在物60を入れるか、いずれかの方法が採られる。
【0004】
しかしながら、図示しない充実押し出しを採用した場合は、絶縁シースの容量が増加するので、電気ケーブルの重量が大きくなる。加えて、絶縁シースの厚さが大きくなるので、電気ケーブルの屈曲性が悪くなり、電気ケーブルの取り扱い性が非常に悪くなる。特に、サイズの大きい電気ケーブルの場合は、敷設時の取り扱い性が非常に悪くなる。一方、図4に示すように、前記間隙に介在物60を入れる方法を採用した場合は、前者と比較して軽量化の点では有利であるが、介在物60の種類や構造によってはそれほど軽量化できないという課題がある。ちなみに、介在物の密度としては、介在物の種類(材質)にもよるが、充実押し出しの場合(この場合、介在物の材質は絶縁シースと同じである)は約1g/cm3、PP(ポリプロピレン)、紙、ジュート、スフ糸などの介在物を入れる方法の場合でも約1g/cm3である。
【0005】
これに関連し、特許文献1に記載の方法は、予め皺を施した紙を介在物として使用することにより介在物の使用量を低減し、電気ケーブルの軽量化、取り扱い性の向上を図るというものである。しかし、この方法は、軽量化には一定の効果が得られるものの、限界がある。
【0006】
また、特許文献2に記載の方法は、絶縁線心間の撚り合わせ間隙にゴム、エラストマなどの変形可能な軟らかい材料からなる介在物を被覆した光ケーブルを挿入してなる電力光複合ケーブルを対象とするものであり、前記介在物により絶縁線心の撚り合わせに際し前記光ケーブルに無理な張力が加わらないように工夫を施したものである。しかし、この方法は、介在物として使用する材料の比重にもよるが、それだけでは軽量化の効果を期待することができない。
【0007】
【特許文献1】特開2004−103293号公報
【特許文献2】特開平5−166422号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、予め皺を施した紙を介在物として使用する方法では、軽量化には一定の効果が得られるものの限界がある。また、ゴム、エラストマなどの変形可能な軟らかい材料を介在物として使用する方法では、使用する材料の比重にもよるがそれだけでは軽量化の効果を期待することができない。
【0009】
したがって、本発明の目的は、軽量化の効果が大きく、確実に軽量化することができる軽量化電気ケーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、導体上に絶縁体を被覆した絶縁線心を2本以上撚り合わせてなると共に、これら絶縁線心と最外層に施される絶縁シースとの間に形成される隙間に介在物を介在させてなる電気ケーブルにおいて、前記介在物として前記電気ケーブルの断面径方向に変形可能な中空密閉体を単独もしくは他の介在物と共に介在させてなることを特徴とする軽量化電気ケーブルを提供する。
【0011】
このような構成の軽量化電気ケーブルによれば、電気ケーブルの断面径方向に変形可能な中空密閉体を介在物として使用することにより、電気ケーブルの軽量化を容易に達成することができると共に電気ケーブルの屈曲性を良好に維持することができる。
【0012】
請求項2の発明は、前記中空密閉体は、筒状をなし、前記電気ケーブルの長手方向に沿って複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の軽量化電気ケーブルを提供する。
【0013】
このような構成の軽量化電気ケーブルによれば、筒状をなす中空密閉体を介在物として使用することにより、介在物の長さを長く形成することが可能になり、ケーブル製造時における介在物の介挿作業を容易に行うことができる。それに加えて、この介在物をケーブルの長手方向に沿って複数設けることにより、ケーブル切断の際などにおいて介在物の一部が空気が抜けて収縮した場合でもその収縮範囲を小さく限定することができる。
【0014】
請求項3の発明は、前記中空密閉体は、ゴム等の弾性を有する軟質材料からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軽量化電気ケーブルを提供する。
【0015】
このような構成の軽量化電気ケーブルによれば、ゴム等の弾性を有する軟質材料からなる中空密閉体を介在物として使用することにより、いわゆる筒型の風船状の介在物を形成することが可能になり、これにより介在物として好ましい変形性を得ることができる。すなわち、前記介在物として、絶縁線心間の撚り合わせ間隙に介挿される際は断面円形の筒状の中空密閉体であるが、最外層に絶縁シースが施され断面円形の電気ケーブルとして形成される際は前記間隙の形状に沿ってその隙間を埋めるように変形容易なものとすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の介在物を使用すると、軽量化の効果が大きく、確実に軽量化することができると共に、敷設時の取り扱い性も良好な軽量化電気ケーブルを容易に提供することができる。特に、絶縁線心数の少ない2心もしくは3心の電気ケーブルでは、その効果はより大きく発揮される。また、ケーブルの端末処理に際しては、ゴミとして排出される介在物の量が減少するので、ゴミの減量化にも貢献する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好適な一実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0018】
図1に示される構成の電気ケーブル5は、外径1.8mmの導体1上に厚さ0.8mmの絶縁体2を均一な厚さに被覆した断面円形の絶縁線心3を2本撚り合わせてなると共に、最外層に厚さ1.5mmの絶縁シース4を押し出しにより均一な厚さに被覆していわゆる2心の断面円形の外形の電気ケーブル5としている。この電気ケーブル5の2本の絶縁線心3の撚り合わせ外径は6.8mmであり、この電気ケーブル5の外径は10.0mmである。また、この電気ケーブル5の前記撚り合わせられた絶縁線心3と絶縁シース4との間に形成された隙間には、通常使用される介在物6と共に、本発明に係る介在物7として電気ケーブル5の断面径方向に変形可能な筒状の中空密閉体が介在される。この介在物7は、予め使用環境を考慮して定められた所定の強度および弾性を有するゴムを一定の長さに風船状に成形してなるものであり、図3に示すように長さ方向に複数連ねて使用される。このように介在物7を長さ方向に短く区間に区切って使用することにより、ケーブル切断の際などにおいて介在物7の一部が空気が抜けて収縮した場合でもその収縮範囲を一部の箇所に限定することができる。すなわち、収縮による影響を小さく抑えることができる。図2は、電気ケーブル5の製造にあたり、2本の絶縁線心3の撚り合わせ間隙に介在物7を挿入した状態を示している。この状態において介在物7は断面円形をしているが、図1の電気ケーブル5に形成された状態では、介在物7は撚り合わせられた絶縁線心3と絶縁シース4との間に形成された隙間の形状に沿ってその隙間を埋めるように変形している。このことから、ケーブル断面からみた介在物7の大きさ(断面積)としては、前記隙間の大きさ(断面積)以下に設定される。また、介在物7は絶縁シース押し出し時の外圧により変形される。
【0019】
なお、通常使用される介在物6としては、PP(ポリプロピレン)、紙、ジュート、スフ糸などが使用される。この介在物6は補助的なものであり、省略することも可能である。
【0020】
この実施の形態では、介在物7は、図1および図2にみられるように、ケーブル製造時に変形し、絶縁線心間の撚り合わせ間隙を埋める大きさに設けられるが、それよりも細い介在物(筒状の中空密閉体)を多数本使用することにより絶縁線心3の撚り合わせ前に前記間隙を埋めるようにすることも可能である。
【0021】
また、本発明は、この実施の形態に記載の電気ケーブルに限らず、大サイズの電力ケーブルから小サイズの機器用電線まであらゆるサイズの電気ケーブルに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施の形態に係る軽量化電気ケーブルの構造を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る軽量化電気ケーブルの製造過程の一部を示す断面図である。
【図3】本発明の一実施の形態において使用される介在物の形状を示す斜視図である。
【図4】従来の軽量化電気ケーブルの構造を示す断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 導体
2 絶縁体
3 絶縁線心
4 絶縁シース
5 電気ケーブル
6 介在物
7 介在物(中空の密閉体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体上に絶縁体を被覆した絶縁線心を2本以上撚り合わせてなると共に、これら絶縁線心と最外層に施される絶縁シースとの間に形成される隙間に介在物を介在させてなる電気ケーブルにおいて、前記介在物として前記電気ケーブルの断面径方向に変形可能な中空密閉体を単独もしくは他の介在物と共に介在させてなることを特徴とする軽量化電気ケーブル。
【請求項2】
前記中空密閉体は、筒状をなし、前記電気ケーブルの長手方向に沿って複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の軽量化電気ケーブル。
【請求項3】
前記中空密閉体は、ゴム等の弾性を有する軟質材料からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の軽量化電気ケーブル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−295345(P2009−295345A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−145978(P2008−145978)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】