説明

軽量植生基盤材と軽量植生容器及び植生方法

【課題】 培養土を一切使用する事無く、植物の育成に必要な適度な保水性、通気性、保肥力等の機能を兼ね備えた軽量植生基盤材及び軽量植生容器を提供するものである。
【解決手段】軽量植生基盤材及び軽量植生容器の構成素材として、水溶性セルロースエーテル樹脂に加水して含水量を一定にし、植物の育成に必要な栄養素を添加した溶液と湿気硬化型ポリウレタン樹脂とを混合して得られる保水性発泡体構造を基本とする。この保水性発泡体は、水分の蒸散の抑制及び保水性、通気性に優れ、植生に必要な栄養素を予め添加されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観葉植物、花等を育成、栽培するのに適した軽量植生基盤材及び軽量植生容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から植物栽培に用いられる培養土としては、腐食土、洪積土、黒玉土、ボラ土、真砂土等の培土にビートモス、パーライト、バーミュキュライトや有機堆肥等を混合したものが使用されている。
【0003】
また最近では、培養土の軽量化や作業上効率性等の観点より、植物性繊維材料を用いた粒状培養土が使用されるようになってきている。
【0004】
また、吸水性樹脂を培養土と混合する事により、培養土の保水性を維持する方法があるが、この方法は、多量の吸水性樹脂を使用する為コストがかかりすぎる。また、吸水性樹脂自体の高い吸水性により、植物への水分の供給が不足し、培養土自体の通気性を低下させる原因となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開平8−130976号公報
【特許文献2】 特開平5−292833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、一般に使用されている各種培養土等を一切使用する事無く、植物の育成に必要な適度な保水性、通気性、保肥力等の機能を有した衛生的な軽量植生基盤材を提供する事である。
【0007】
また本発明は、倒れても、逆さにしても、水や植物体等が一切こぼれ落ちない、植物体と植木鉢等が一体化する事を目的とする安価に製造可能な軽量植生基盤材を提供する事である。
【0008】
さらに本発明の目的は、軽量植生基盤材の容器として防水性、軽量性、断熱性、保水性、通気性、保肥力等の機能を兼ね備えた、安価に製造可能な軽量植生容器を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の軽量植生基盤材は、水溶性セルロースエーテル樹脂に加水して含水量を一定にし、植物に必要な栄養素を添加した溶液と、湿気硬化型ポリウレタン樹脂とを混合して得られる2〜10倍に発泡した保水性発泡体構造を特徴とする。
【0010】
主成分である水溶性セルロースエーテル樹脂の水に対する添加量が、1〜5%である事を特徴とする。また、2〜4%の添加量が良好な特性を得る上で好ましい。また、水溶性セルロースエーテル樹脂に加水して含水量を一定にした溶液と湿気硬化型ポリウレタン樹脂との比率は、水溶性セルロースエーテル樹脂添加溶液:湿気硬化型ポリウレタン樹脂=10:1〜1:1である事を特徴とする。水溶性高吸水性樹脂添加溶液:湿気硬化型ポリウレタン樹脂=10:1の比率であれば、発泡倍率は2倍と低くなるが、保水量は多くなる。また、水溶性セルロースエーテル樹脂添加溶液:湿気硬化型ポリウレタン樹脂=1:1の比率であれば、発泡倍率は10倍近くと高くなるが、保水量は少なくなる。適度な発泡倍率による軽量性、通気性及び保水性を得るには、水溶性セルロースエーテル樹脂添加溶液:湿気硬化型ポリウレタン樹脂=5:1〜3:1が好ましい。
【0011】
植物に必要な栄養素として、窒素、水溶性リン酸、水溶性カリ、水溶性苦土、水溶性マンガン、水溶性ホウ素等が添加された液体栄養剤を使用する事が出来る。また、培養土等一切使用していないので、微生物等が存在する可能性がかなり低いので衛生的である。
【0012】
本発明の製造方法は、一般的に使用されている各種材質の植木鉢に、水溶性セルロースエーテル樹脂に加水して含水量を一定にし、植物に必要な栄養素を添加した溶液と、湿気硬化型ポリウレタン樹脂とを混合した溶液を入れ、その発泡過程に根に付着した土を取り除いた植物体を植付ける方法なので、樹脂同士が発泡、反応、硬化後は、植物体、軽量植生基盤材、植木鉢が一体化した構造という特徴を持っている。そのような構造の為、植木鉢を倒したり、逆さにしたりしても、水や植物体等がこぼれ落ちたりする事は一切ない。この軽量植生基盤材は、発芽する為に必要な条件を兼ね備えているので、発泡完了時に種子をまいたり、球根を植え込む事も可能である。また、樹脂の硬化が完全終了後、カッターナイフ等を使って軽量植生基盤材を切開し植物体を挿し木しても新たに根が張り出していくので植生が可能である。
【0013】
この軽量植生基盤材は、その表面に樹脂の薄い皮膜が形成されているので、内部に保水された水分の蒸散を抑制していると同時に高い保水能力を兼ね備えているという特徴を持っている。その為、水分の供給も観葉植物の場合で、25℃の室温であれば、1ヶ月に1回の水の供給で十分である。よって水供給に関するメンテナンスは殆どかからない。
【0014】
また、この軽量植生基盤材の材質は、植生容器にも応用できるという特徴を持っている。水溶性セルロースエーテル樹脂に加水して含水量を一定にし、植物に必要な栄養素を添加した溶液と、湿気硬化型ポリウレタン樹脂とを混合した溶液を型枠の中へ流し込み植生容器の形に形成する。次に、その外面をポリウレタン塗膜防水材等で加工して漏水しないようにする。すると、軽量性、断熱性、保水性、通気性、保肥力等の機能を兼ね備えた軽量植生容器を作成することが出来る。この軽量植生容器は、非常に軽量である為、マグネット等を接着剤で軽量植生容器へ接着したものは天井や壁の鉄部へ容易に装着と脱着が可能となる。また、天井や壁へ固定して取り付けるのであれば、接着剤を使用すれば可能である。さらに、軽量植生容器外面へ塗料を塗布又は、紙等貼り付ける事により、軽量植生容器に意匠性を持たせる事も可能である。
【0015】
軽量植生基盤材の植生環境を良くする補助材として、バーミュキュライト、パーライト、ゼオライト、軽石、ロックウール、活性炭、竹繊維等の1種又は2種以上を添加して植物の着生、育成をし易くする事も可能である。また、透明性の有る植生容器へ軽量植生基盤材を入れる時、その軽量植生基盤材の中へ食用顔料等を添加して着色して意匠性を持たせる事も可能である。
【0016】
軽量植生基盤材に使用する水溶性高吸水性樹脂としてカルボキシメチルセルロース架橋体、セルロースーアクリロニトリルグラフト共重合体、澱粉−アクリロ二トリルグラフト共重合体、澱粉−アクリルアミドグラフト共重合体、ポリビニルアルコール架橋体、アクリル酸・ナトリウムービニルアルコール共重合体、N−置換アクリルアミド架橋体の1種又は2種以上を組み合わせて使用しても良い。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、水溶性セルロースエーテル樹脂に加水して含水量を一定にし、植物に必要な栄養素を添加した溶液と、湿気硬化型ポリウレタン樹脂とを混合する事により、植物の育成に必要な適度な保水性、通気性、保肥力等の機能を兼ね備えた軽量植生基盤材を得る事が出来た。この軽量植生基盤材を植木鉢等へ入れ植物体を植え込み固化させる事により、培養土を一切使用しない植物体、軽量植生基盤材、植木鉢が一体化した衛生的な植物栽培を可能にする事ができた。また、水分の蒸散抑制及び保水機能が優れているので、水分供給のメンテナンスが殆どかからず、一体化している為、倒れたり、逆さにしても水等が零れ落ちる事もない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】プラスチック容器へ本発明軽量植生基盤材を入れ植物体を植生した断面図
【図2】本発明軽量植生容器へ軽量植生基盤材を入れ植物体を植生した断面図
【図3】マグネットを装着したプラスチック容器へ本発明軽量植生基盤材を入れ植物体を植生したものを鉄製の壁へ逆さに装着した状態の断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明しますが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではありません。
【0020】
本発明の軽量植生基盤材は、粉末状の水溶性高吸収性樹脂としてメチルセルロースを使用した。また、軽量植生基盤材は、水に対してメチルセルロースを3%添加、液体栄養素を0.1%添加した溶液と湿気硬化型ポリウレタン樹脂とを水溶性高吸収性樹脂添加溶液:湿気硬化型ポリウレタン樹脂=10:3にて混合したものを使用した。また、軽量植生容器は、同じく水溶性高吸収性樹脂添加溶液:湿気硬化型ポリウレタン樹脂=1:1にて混合して容器の形に形成し、外面へポリウレタン塗膜防水材を塗布したものを使用した。
【実施例】
【0021】
実施例1
1リットルのプラスチック容器へ水溶性高吸収性樹脂添加溶液を200g、湿気硬化型ポリウレタン樹脂を60g入れ良く攪拌した。根に付着している土等を除去した植物体パキラを発泡過程において植え付けた。その後約2時間して初期硬化が完了し、パキラ、軽量植生基盤材、容器が一体化した。その後1ヶ月間水の供給なしに放置し、その重量を測定し水分の蒸散量を求めた。比較の為同じ1リットルのプラスチック容器へ水分を十分含ませて培養土を充填した中へ植物体パキラを植え付け、同じように1ヶ月間水の供給なしに放置し、その重量を測定し水分の蒸散量を求めた。1ヶ月間の平均室温が25.7℃という条件で、培養土を使用した場合、305g蒸散していたのに対し、軽量植生基盤材を使用した場合110gの蒸散量だったので約1/3の量に水分量を抑制する事ができた。その後両方に100gの水を供給した。
【0022】
実施例2
軽量植生容器作成用型枠の中へ水溶性高吸収性樹脂添加溶液を50gと湿気硬化型ポリウレタン樹脂を50g計量した後良く攪拌したものを入れ硬化させた。次に、その外面へポリウレタン塗膜防水材を塗布して軽量植生容器を作成した。その軽量植生容器の中へ水溶性高吸収性樹脂添加溶液を100g、湿気硬化型ポリウレタン樹脂を30g入れ良く攪拌した。根に付着した土等を除去した植物体シンゴニウムを発泡過程において植え付けた。その後約2時間して初期硬化が完了し、シンゴニウム、軽量植生基盤材、軽量植生容器が一体化した。その総重量を計量したら250gと超軽量体を得る事が出来た。この超軽量体も実施例1の場合と同様水分供給のメンテナンスが殆ど要しなかった。
【0023】
実施例3
マグネットを装着したプラスチック容器へ水溶性高吸収性樹脂添加溶液を100g、湿気硬化型ポリウレタン樹脂を30g入れ良く攪拌した。根に付着した土等を除去した植物体テーブルヤシを発泡過程において植え付けた。その後約2時間して初期硬化が完了し、テーブルヤシ、軽量植生基盤材、マグネット装着プラスチック容器が一体化した。その超軽量体を鉄製の壁へ逆さに装着しても水等が零れ落ちる事は全く無かった。
【産業上の利用可能性】
【0024】
今迄、一般家庭内において観葉植物を育成する場合水分補給はかなりこまめに行わないと枯らしてしまう心配があった。しかし、この軽量植生基盤材を用いると、多少水分の供給を忘れたり、暫く家を留守にしたりした場合でも植物を枯らす心配が殆どない。また、職場のデスクには、鉢等が倒れたら、水や土等がこぼれて清掃するのに手間を掛けたり、書類等を台無しにしたりする事より観葉植物等を置く事は殆ど不可能であった。しかし、この軽量植生基盤材を用いると、倒れても何もこぼれないので清掃の必要も無く、書類等を台無しにする事もない。また、病院や飲食店等では、衛生上の点から土等を使った植木鉢等は置く事が難しかった。しかし、この軽量植生基盤材を用いると、土等を一切使用していない為、微生物等が発生する事が少ないのでそのような場所でも置ける可能性がある。今までは、造花等で対応している。このように今までフラワーショップで取り扱っている商品では対応出来なかった場所や用途開発が可能となり、新規顧客開拓もできる。
【符号の説明】
【0025】
1 植物体
2 軽量植生基盤材
3 プラスチック容器
4 軽量植生容器
5 マグネットを装着したプラスチック容器
6 マグネット
7 鉄製の壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明は、粉末状の水溶性セルロースエーテル樹脂に加水して含水量を一定にし、植物に必要な栄養素を添加した溶液と、湿気硬化型ポリウレタン樹脂とを混合して得られる2〜10倍に発泡した保水性発泡体構造を特徴とする軽量植生基盤材である。この軽量植生基盤材は、植物の育成に必要な適度な保水性、通気性、保肥力等の機能を有し、一般的に使用されている培養土を一切使用しない為、衛生的である事を特徴とする。
【請求項2】
本発明は、一般的に使用されている各種類材質の植木鉢に、粉末状の水溶性セルロースエーテル樹脂に加水して含水量を一定にし、植物に必要な栄養素を添加した溶液と、湿気硬化型ポリウレタン樹脂とを混合した溶液を入れ、その発泡過程に根等に付着した土を取り除いた植物体を植え付け、固化させる事により植物体、軽量植生基盤材、植木鉢が一体化した事を特徴とする軽量植生基盤材である。また、植物体は種子や球根状のものであっても良い。また、植物体の植え付けは、発泡硬化が完全終了後、カッターナイフ等を使って軽量植生基盤材を切開し植物体を挿し木しても新たに根が張るので植生が可能となり、植生の時期を選定する必要がない。
【請求項3】
本発明は、「請求項1」、「請求項2」記載の2〜10倍に発泡した軽量植生基盤材を植生容器の形に形成し、その外面をポリウレタン塗膜防水材等加工してなる、軽量性、断熱性、保水性、通気性、保肥力等の機能を兼ね備えた事を特徴とする軽量植生容器である。この軽量植生容器は、非常に軽量である為、マグネット等を接着剤で軽量植生容器へ接着したものは天井や壁の鉄部へ容易に装着と脱着が可能となる。また、天井や壁へ固定して取り付けるのであれば、接着剤を使用すれば可能である。さらに、軽量植生容器外面へ塗料を塗布し、又は紙等貼り付ける事により、意匠性を持たせる事も可能である。
【請求項4】
本発明は、「請求項1」、「請求項2」記載の軽量植生基盤材の中へ補助材として、バーミュキュライト・パーライト・ゼオライト・軽石・ロックウール・活性炭・竹繊維等の1種又は2種以上を添加して植物の着生、育成をし易い環境にした事を特徴とする軽量植生基盤材である。また、意匠性を持たせる為に、食用顔料等を添加して着色する事も可能である。
【請求項5】
本発明は、使用する水溶性高吸水性樹脂としてカルボキシメチルセルロース架橋体、セルロースーアクリロニトリルグラフト共重合体、澱粉−アクリロニトリルグラフト共重合体、澱粉−アクリル酸グラフト共重合体、澱粉−アクリルアミドグラフト共重合体、ポリビニルアルコール架橋体、アクリル酸・ナトリウムービニルアルコール共重合体、N−置換アクリルアミド架橋体の1種又は2種以上を使用する事を特徴とする「請求項1」、「請求項2」記載の軽量植生基盤材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−90614(P2012−90614A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−252295(P2010−252295)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(510294542)
【Fターム(参考)】