説明

軽量気泡コンクリートの製造方法

【課題】 強度等の諸物性に優れ、建築材料として好適なALCを、安定して製造することができる方法を提供する。
【解決手段】 珪酸質原料と石灰質原料を主原料とする軽量気泡コンクリートの製造方法において、珪酸質原料である珪石中に、粒径100〜500μmの珪石が20重量%以上60重量%以下含まれている。また、上記100〜500μmの粒径を有する粗粒域の珪石は、150〜300μmに粒径のピークを持つことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の壁、屋根、床などに使用される軽量気泡コンクリート(ALC)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軽量気泡コンクリート(ALC)は、内部に気泡と細孔を含み、絶乾かさ比重が0.5程度と非常に軽量でありながら、強度が比較的高いという優れた性質を有している。このように、ALCは軽量であると同時に、比較的強度が高く、耐火性、断熱性、施工性にも優れているため、建築材料などとして広く使用されている。
【0003】
ALCの製造は、珪石等の珪酸質原料とセメントや生石灰等の石灰質原料を主原料とし、これら主原料の微粉末に水及び発泡剤としてのアルミニウム粉末等の添加物を加えてスラリー状とした後、型枠に投入してアルミニウム粉末の反応により発泡させ、且つ石灰質原料の反応により半硬化させる。次に、所定寸法に切断し、オートクレーブによる高温高圧水蒸気養生を行って、ALCが製造されている。
【0004】
ALCの強度を発現させているのは、オートクレーブによる高温高圧水蒸気養生である。この養生過程において、珪石等の珪酸質原料とセメントや生石灰等の石灰質原料から、珪酸カルシウム水和物のトバモライトが生成する。トバモライトの生成過程であるオートクレーブ中では、珪石の溶解が反応を律速することが広く知られている。
【0005】
従って、珪石の粒度、単結晶サイズ、純度、不純物の種類と含有量などが、得られるALCの物性値に大きな影響を持っている。特に珪石の粒度については、微粒分による結晶核の生成、中粒分による結晶の成長、粗粒分が残存することによる骨材効果など、それぞれ物性値に影響を与えることが分っている。そのため、珪石の粒度を規定することによって、物性的に優れたALCを製造する方法が種々検討されている。
【0006】
例えば、特開昭59−128254公報には珪石の粒度を重量平均径で15μm以下とする方法が記載され、特開平4−197605号公報には珪砂を2000〜2,500ブレーンと6,000〜12,000ブレーンにピークを有する分布とする方法が記載されている。また、特開2001−019571号公報には、平均石英結晶粒径が10μm未満の珪石と10〜500μmの珪石を混合し、その混合珪石の平均石英結晶粒径を15〜300μmとすると共に、10μm未満の珪石の混合割合を60重量%以下とする方法が提案されている。
【0007】
しかしながら、これら従来の方法においては、ALC製造で使用される珪酸質原料の珪石について、粒径が100μm以上の粗粒域の珪石量を調整し又は制御することは行われていない。
【特許文献1】特開昭59−128254号公報
【特許文献2】特開平4−197605号公報
【特許文献3】特開2001−019571号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、圧縮強度等の諸物性に優れたALCを安定して製造することができる方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明が提供する軽量気泡コンクリートの製造方法は、珪酸質原料と石灰質原料を主原料とする軽量気泡コンクリートの製造方法において、該珪酸質原料である珪石中に粒径100〜500μmの珪石を20重量%以上60重量%以下含むことを特徴とする。かかる本発明による軽量気泡コンクリートの製造方法においては、前記珪石が150〜300μmに粒径のピークを持つことが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、珪酸質原料である珪石中の粗粒域の粒度を調整するだけで、強度等の諸物性に優れたALCを安定して製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ALCの強度発現に寄与するのは、高温高圧の水蒸気養生過程において珪石等の珪酸質原料とセメントや生石灰等の石灰質原料とから生成する珪酸カルシウム水和物のトバモライトである。トバモライトは、化学式では5CaO・6SiO・5HOであり、Ca/Siモル比の理論値は5/6=0.83である。
【0012】
しかし、ALCの工業生産では、オートクレーブ養生に要する時間を短縮するため、Ca/Siモル比は理論値0.83よりも小さめに、即ち0.3〜0.7の範囲に設定されることがほとんどである。その理由は、珪石等の珪酸質原料を多くすることで、トバモライトの生成に寄与しなかった未反応の珪石がALCマトリックス中にそのまま残存し、その骨材効果によって強度物性面の向上に寄与するからである。
【0013】
本発明者は、未反応のまま残存する珪石の骨材効果に着目し、粒径が100μm以上の粗粒域の珪石量が異なる様々な条件において製造したALCサンプルを評価した。その結果、粒径100〜500μmの粗粒域の分布によって、ALCの強度物性が大きく変動することを見出した。即ち、原料の珪石中に粒径100〜500μmの粗粒域の珪石が20〜60重量含まれるとき、得られるALCの圧縮強度が高くなることを見出した。
【0014】
更に、上記粒径100〜500μmの粗粒域の珪石が、150〜300μmに粒径のピークを持つ場合において、特に高い圧縮強度のALCが得られることが分った。尚、このような珪石の粗粒域における粒径の調整は、粒度の異なる2種類以上の珪石を混合して簡単に調整することができる。
【実施例】
【0015】
珪酸質原料として国内5箇所の鉱山から産出する珪石を使用し、単独または混合して、主に粗粒域の粒度が異なる珪石原料を用意した。即ち、下記表1に示すように、珪石原料中における粒径100〜500μmの粗粒域の珪石量、並びに、その粗粒域の珪石のピーク粒径について、実施例1〜6及び比較例1〜4の条件の異なる各珪石を用意した。
【0016】
これらの珪石と、生石灰、普通ポルトランドセメント、繰り返し原料を混合して、全原料配合中のCa/Siモル比が0.50となるように調整した。次に、これらの固体原料の合計100重量部に、水60重量部と少量のアルミニウム粉末及び界面活性剤を加え、混練してスラリーを作製した。
【0017】
上記各スラリーを型枠に注入し、発泡させると共に半硬化させ、切断した後、180℃、10気圧のオートクレーブにおいて6時間の高温高圧水蒸気養生を施した。得られた各ALCブロックを、100mm角の立方体に成形し、JISA5416に準じて圧縮強度を測定した。得られた圧縮強度を、下記表1に併せて示した。
【0018】
【表1】

【0019】
ALCの圧縮強度のJISA5416における規格値は3.0N/mm以上であるが、通常は安全側管理として4.0N/mm以上の確保を目安とし、更に5.0N/mm以上であれば好ましいとされている。そこで、圧縮強度の評価の判定は、4.0N/mm未満を「不適」、4.0N/mm以上5.0N/mm未満を「適」、5.0N/mm以上を「良」と判定した。
【0020】
上記表1から、粗粒域における珪石の粒径を調整することにより、ALCの圧縮強度が大きく変動することが分る。即ち、原料の珪石中における粒径100〜500μmの珪石量について、20重量%未満か若しくは60重量%を超えるとALCの圧縮強度が4.0N/mm未満となるのに対し、20〜60重量%の範囲ではALCの圧縮強度が4.0N/mm以上と良好であった。
【0021】
加えて、圧縮強度が4.0N/mm以上の実施例1〜6の中でも、粗粒域の珪石のピーク粒径が150〜300μmの範囲にある実施例3〜5では、圧縮強度が5.0N/mmを超える極めて高強度のALCを得ることができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
珪酸質原料と石灰質原料を主原料とする軽量気泡コンクリートの製造方法において、該珪酸質原料である珪石中に粒径100〜500μmの珪石を20重量%以上60重量%以下含むことを特徴とする軽量気泡コンクリートの製造方法。
【請求項2】
前記珪石が150〜300μmに粒径のピークを持つことを特徴とする、請求項1に記載の軽量気泡コンクリートの製造方法。