説明

較正されたデジタル・ヘッドセット及び前記ヘッドセットによる聴力検査方法

【課題】
従来の聴力検査の場合、受検者は、熟練した検査提供者、典型的には医療関係者によって、アナログ検査機器の高価且つ複雑な部分を使用して評価されることが必要であり、アナログ検査機器のシステム全体は、まとめて較正されなければならず、ヘッドセット及びトーン発生器の両方を現場から離れた認定較正研究室に送り、長時間にわたって運転休止することを必要とした。
【解決手段】
本発明に係るヘッドセット・システムは、各スピーカーの正確な周波数及びボリューム応答をアナログ入力信号に関連付ける、記憶された較正基準を含み、所期音響を生成するのに必要とされる所要アナログ信号を割り出すために、マイクロプロセッサが較正基準にアクセスし、搭載されたデジタル−アナログ変換器が、所要アナログ信号を生成し、スピーカーに伝送し、電子ユーザー聴覚プロフィールの生成を可能にするソフトウェアに基づく聴力検査方法とともに使用される。検査方法は自分で実施するか、又は医療関係者によって実施することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、聴力検査及び分析の分野に関する。より具体的には、本発明は、自分で実施するか又は熟練した検査提供者、例えば医療関係者又は企業内検診担当者によって実施することができる、コンピュータに基づく聴力検査とともに使用するための較正されたデジタル・ヘッドセットに関する。ヘッドセットを使用した聴力検査の方法、及び特定の聴取者の聴覚障害を考慮するために音声放射装置の出力を調節する方法も開示される。
【背景技術】
【0002】
コンベンショナルな聴力検査の場合、受検者は、熟練した検査提供者、典型的には医療関係者によって、アナログ検査機器の高価且つ複雑な部分を使用して評価されることが必要である。アナログ検査機器は、アナログ・ヘッドセットと、いくつかの検査周波数及びボリューム・レベルで純音信号を発生させることができるアナログ・トーン発生器とを含んでなる較正されたシステムから成っている。検査周波数及びボリューム・レベルは、検査が行われる管轄区域における関連検査基準によって規定されている通りである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
アナログ・システム全体は、まとめて較正されなければならず、選択された較正検査周波数における使用に対してしか認定することはできない。このことは、ヘッドセット及びトーン発生器の両方を現場から離れた認定較正研究室に送り、長時間にわたって運転休止することを必要とし、また、このシステムで実施される検査を規定の周波数だけに制限する。従って、聴覚損失領域をより良好に識別するために中間周波数で検査する手だてはない。加えて、アナログ機器の較正はしばしば1つのラウドネス・レベルでしか実施されず、他のボリュームでは不正確なラウドネス・レベルを生成する機器を潜在的にもたらす。特定のヘッドセットの較正を定期的にチェックする手段はなく、また現場外での再較正の間の較正状態におけるドリフトを補償する手段もない。特定のヘッドセットが不具合になってきた場合、予め較正されたトーン発生器に対してヘッドセットを入れ替えることはできない。検査は、聴覚損失領域を識別するため、そして適切な補聴器又はその他の適切な措置を特定するために、医療関係者によって実施され解釈されなければならない。聴覚自己検査を特に家庭内で実施する手だてはなく、また、自己検査データを医療関係者と共有する手段もない。特に典型的な現実世界環境における受検者に対する補聴器の効果を模倣する手だては現在のところなく、また、音響が受検者によってどのように知覚されるかを第三者(例えば:受検者の配偶者又はパートナー)のために模倣する手だてもない。特定の聴覚障害聴取者の聴取経験を改善するために、デジタル音声放射装置(例えば携帯電話機、MP3プレイヤー、IPod、コンピュータなど)の音声出力を調節する手だては今のところない。
【0004】
この技術分野における前記問題点のうちのいくつか又は全てに対処するためには、改善された聴力検査装置、改善された聴力検査方法、及び聴力の欠陥を考慮するために音声放射装置を較正する改善された方法が依然として必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、聴力検査に使用するためのデジタル・ヘッドセット・システムであって:少なくとも1つのスピーカーと;コンピュータと接続するためのデジタル・データ・インターフェースと;スピーカーに関連する固有較正基準を記憶するための電子メモリー・モジュールと;所期音響出力を放射するためにスピーカーに供給されるべき所要アナログ信号を割り出すために較正基準に電子的にアクセスすることができる、所期音響出力に対応するデジタル・データを処理するマイクロプロセッサと;所要アナログ信号をスピーカーに提供するためのデジタル−アナログ変換器と、を含んでなる、聴力検査に使用するためのデジタル・ヘッドセット・システムが提供される。
【0006】
ヘッドセットは複数のスピーカーを含んでよく、また、ユーザーの耳上又は耳内にスピーカーを設置するのに適した頭部装着可能なハウジング内部に、各耳に対して1つ又は2つ以上のスピーカーが任意に配置されていてよい。スピーカーは、このような純音信号又は純音音響に対する許容周波数公差内に至るまでの可聴周波数範囲内の純音音響出力(種々のその他の音響出力とともに)を放射することができる。固有較正基準は、アナログ電気入力信号を、スピーカーからの音響出力の周波数特性及びボリューム特性と関連付ける。例えば較正基準は、上記入力及び出力情報に関連するテーブルを含んでいてよい。テーブル自体を電子メモリー・モジュール上に記憶することができ、或いは、別の記憶場所からテーブルを検索するのに使用するために固有識別子を記憶することができる。複数のスピーカーがある場合、スピーカー毎に固有較正基準を提供することができ、或いは、スピーカー毎のエントリーを有する単独の較正基準を提供することもできる。
【0007】
電子メモリー・モジュールは好ましくは、メモリー・モジュールへの電力が中断されたときにデータ記憶装置を維持し、そしてユーザーによって再プログラミング可能であってよい。例えば、電子メモリー・モジュールは読み出し専用メモリー(ROM)チップ、例えば電気的消去可能・プログラミング可能な読み出し専用メモリー(EEPROM)チップ、フラッシュ・メモリー・チップなどを含んでいてよい。ユーザーによってアップロードされた情報、例えば後でより詳細に説明するように、ユーザー聴覚プロフィール内部の1つ又は2つ以上の聴覚損失を自動的に補償するカスタマイズされたデジタル音声ヘッドセットとして機能するようにヘッドセットを再プログラミングするのに使用するためのユーザー聴覚プロフィールに関連する情報を受信して記憶するために、付加的な電子メモリー・モジュールが設けられてよい。
【0008】
デジタル・データ・インターフェースは、ケーブル接続部又は無線接続部を含んでいてよい。デジタル・データ・インターフェースは、ヘッドセットが聴力検査装置として機能するのを可能にするのに十分な速度でヘッドセットにデジタル信号を送ることができる。デジタル・データ・インターフェースは、コンピュータとのUSB接続部又はその他の好適な接続部を含んでいてよい。デジタル・データ・インターフェースは、無線接続を完成させるのに使用するための、ヘッドセットから分離することができる構成部分、例えばBluetooth(登録商標)無線プロトコルを介してデジタル・データ信号をヘッドセットに伝送するためにコンピュータのUSBポートに取り付けるためのUSB Bluetooth(登録商標)ドングルを含んでいてよい。
【0009】
マイクロプロセッサは、1つ又は2つ以上のランダム・アクセス・メモリー(RAM)モジュールと相互接続することができる。このモジュールは、コンピュータからデジタル・データを先ず受信し、そしてマイクロプロセッサによって必要とされるような時までこれを記憶するデータ・バッファとして機能する(ナノ秒からミリ秒までの時間スケール)。RAMモジュールは、マイクロプロセッサによって一時可変ストレージのために使用することもできる。
【0010】
デジタル−アナログ変換器(DAC)は当業者に知られているように、8ビット、16ビット、24ビット又は浮動型であってよい。DACは、マイクロプロセッサによって供給されたデジタル信号を、スピーカーへの供給に適したアナログ電気信号へ変換する。デジタル信号プロセッサ(DSP)が任意には、マイクロプロセッサとDACとの間に設けられていてよく、或いは、DSPの機能がマイクロプロセッサ又はDACの内部に内蔵されていてもよい。1実施態様の場合、電子メモリー・モジュール、DAC、デジタル・データ・インターフェースの少なくとも一部、及び任意にはマイクロプロセッサ及び/又は任意の所望のバッファ又はDSPは、頭部装着可能なハウジング上に配置されるか、又はハウジングの近くにこれと電子的に連通した状態で配置された小さな密閉容器内部に設けられている。例えば、ケーブル付きヘッドセットの場合、密閉容器は、デジタル・データ・インターフェース・ケーブルに沿って設けられていてよく、無線ヘッドセットの場合、密閉容器は、デジタル・データ・インターフェースの別個の又は分離可能なハードウェア部分、例えばUSBドングルとして設けられていてよい。別の実施態様の場合、マイクロプロセッサ及び任意の所要のバッファ又はDSPは、ヘッドセットが接続されたコンピュータ内部に設けられることにより、全ヘッドセット・システムを完結する。ハウジング上に配置されるときには、密閉容器は、ヘッドセットの装着及び使用を妨害しないように軽量で邪魔にならないことが好ましい。サイズを小さくして性能をシンプルにするためには、マイクロプロセッサ、DAC、DSP、バッファ、又はデジタル・データ・インターフェースの機能のうちのいくつか又は全てを、密閉容器内部に配置された1つ又は2つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)によって提供することができる。システムの要素は、電気的に相互接続された別個の物品の内部に物理的に配置されてよい。例えば、ハウジング、密閉容器、及びコンピュータはそれぞれ、システムの要素を含有してよい。システムは従って、ハウジング、密閉容器、及びコンピュータのうちの1つ又は2つ以上を含んでなるキットの形態で、これらの相互接続のための指示書及び任意には必要なケーブル又は付属機器と共に、特に提供しやすい。
【0011】
デジタル・ヘッドセットは、システム全体ではなくヘッドセットだけが較正されればよい点、そして任意の特定のコンピュータベースのシステムに対して複数のヘッドセットを使用し且つ/又は入れ替えることができる点で有利である。さらに、ヘッドセットは、カスタマイズされたデジタル音声ヘッドセットとして機能するように再プログラミングすることができ、或る特定の用途におけるユーザー聴覚損失に対する即時の補正を可能にする(例えば、デジタル・マルチメディア内容、例えば音楽又は映画、及びIP電話を介した声の聴取)。
【0012】
本発明の別の観点によれば、較正されたデジタル・ヘッドセット・システムを使用した聴力検査方法であって、方法が:i)少なくとも1つのスピーカーと;ii)コンピュータと接続するためのデジタル・データ・インターフェースと;iii)スピーカーに関連する固有較正基準を記憶するための電子メモリー・モジュールと;iv)所期音響出力を放射するためにスピーカーに供給されるべき所要アナログ信号を割り出すために較正基準に電子的にアクセスすることができる、所期音響出力に対応するデジタル・データを処理するマイクロプロセッサと;v)所要アナログ信号をスピーカーに供給するためのデジタル−アナログ変換器とを含んでなる、較正されたデジタル・ヘッドセット・システムを用意し;デジタル・データ・インターフェースをコンピュータと相互接続し;予め特定された周波数特性及び/又はボリューム特性を有する第1音響出力集合の放射を含んでなる、ヘッドセットを使用した、ソフトウェアで生成される聴力検査を施し;第1音響出力集合の可聴性に関するユーザー・フィードバックをコンピュータ内に受信し;そして1回又は2回以上の聴覚検査の結果に基づいたユーザー聴覚プロフィールを、コンピュータを使用して生成することを含んでなる、較正されたデジタル・ヘッドセット・システムを使用した聴力検査方法が提供される。聴覚プロフィールは、受検者によって聴かれた音響の周波数・ボリューム情報を、聴力検査システムによって放射された音響の周波数・ボリューム情報と関連付ける。
【0013】
この方法は、さらに:ユーザー聴覚プロフィール内部の聴力損失領域をさらに特徴付けするための、コンピュータ及び/又は医療関係者によって選択された周波数特性及び/又はボリューム特性を有する第2音響出力集合の放射を含んでなる、ヘッドセットを使用したフォローアップ音響検査を施し;第2音響出力集合の可聴性に関するユーザー・フィードバックをコンピュータ内に受信し;そして1回又は2回以上のフォローアップ聴覚検査の結果に基づいたユーザー聴覚プロフィールを、コンピュータで精緻化することを含んでなる。第2音響出力集合は、2つ又は3つ以上の標準検査周波数間に位置する聴覚損失領域をさらに特徴付けるために、第1音響出力集合内で採用された周波数間から選択された複数の不連続の周波数を含んでよい。このことは、ユーザー又は医療従事者が、聴覚損失を補正するために必要とされる補聴器特性を、さもなければ標準アナログ技術を用いて可能となるであろうよりも正確に計画するのを可能にする。
【0014】
この方法はさらに、少なくとも1つの聴覚損失領域を割り出すために、ユーザー聴覚プロフィールをコンピュータで分析し;聴覚損失領域内の所要の周波数増幅を、コンピュータを使用して割り出し;デジタル・データ・インターフェースを使用してヘッドセットに所要の増幅をアップロードし;そしてマイクロプロセッサによってアクセス可能なデータ・フォーマットで、デジタル・ヘッドセット上の所要増幅を電子的に記憶することによって、カスタマイズされたヘッドセットとして機能するように、ユーザー聴覚プロフィールを使用して、デジタル・ヘッドセット・システムを再プログラミングすることを含んでよい。再プログラミングされたデジタル・ヘッドセット・システムは、或る特定の用途のための即時の聴覚損失補正を行う際に有用であり、そしてこの方法は、1つ又は2つ以上のデジタル・ヘッドセット上でユーザーによって有利に行うことができる。
【0015】
この方法はさらに、少なくとも1つの聴覚損失領域を割り出すために、ユーザー聴覚プロフィールをコンピュータで分析し;聴覚損失領域内の所要の周波数増幅を、コンピュータを使用して割り出し;音声放射デジタル装置に所要の増幅をアップロードし;そして装置の音声処理回路によってアクセス可能なデータ・フォーマットで、音声放射デジタル装置上の所要増幅を電子的に記憶することによって、カスタマイズされた音声放射デジタル装置として機能するように、ユーザー聴覚プロフィールを使用して、音声放射デジタル装置を再プログラミングすることを含んでよい。音声放射デジタル装置は、デジタル音楽プレイヤー、例えばiPod又はMP3プレイヤー、電話機、デジタル・ディクタフォン、補聴器、家庭用ステレオ又はカーステレオ、又はテレビ受像機などを含んでよい。
【0016】
この方法はさらに、ユーザー聴覚プロフィールを、予め割り出されたパートナー聴覚プロフィールと、コンピュータを使用して比較することにより、少なくとも1つの聴覚損失領域を割り出すために、ユーザー聴覚プロフィールをコンピュータで分析し;パートナー聴覚プロフィールに関して、パートナー聴覚プロフィールをユーザー聴覚プロフィールと一致させるために、聴覚損失領域内の周波数の所要の増幅又は減幅を、コンピュータを使用して割り出し;そしてデジタル・ヘッドセット・システムを使用して、所要の増幅又は減幅によって修正された一連の音響を、このような音響がユーザーによってどのように知覚されるかをパートナーのために音声的に模倣するために放射することを含んでよい。本明細書において使用する「模倣」という用語は、シミュレーション、モデリング、又はユーザーが体験した音響を、パートナーのためにその他の形で再現することを含むものと当業者によって理解される。パートナー、例えば配偶者又は医療関係者が、ユーザーによって音響がどのように知覚されているかを体験するのを可能にすることは、ユーザーによって体験される困難を理解すること、及びユーザーが聴覚損失にうまく対処するのをパートナーが助けることを可能にすることに役立つ。加えて、模倣機能は、予め記録された音響クリップ、ユーザーによって記録された音響クリップを用いて実演することができ、或いは、ユーザーによって知覚される日常生活の音響をパートナーが体験するのを可能にするために、リアルタイムで用いることもできる。この方法はさらに、コンピュータを使用してユーザー知覚プロフィールの視覚的表示を生成することを含んでよい。視覚的表示は、知覚損失の場所を色で示し、そして任意にはパートナーの聴覚プロフィール又は正常(損傷されていない)聴覚プロフィールを異なる色でオーバーレイする蝸牛のダイヤグラムを含んでよい。ユーザー聴覚プロフィールとともに、ユーザーの外耳部位、外耳道、鼓膜などの検査から集められたオトスコープ画像を記憶することができ、これらのオトスコープ画像は、聴覚損失の視覚的表示を生成する際に使用することができる。ユーザーの耳及び/又は外耳道の三次元モデルをコンピュータによって生成することができる。このことは、聴覚損失のタイプ及び/又は場所、又は正常な聴覚がどのように働くかを視覚的に示すのに有用であり、そして聴覚損失を補正するための好適な補聴器のサイズ決め及びフィッティングにも有用であり得る。
【0017】
ユーザー聴覚プロフィールは、中央データ保管場所内に記憶することができ、そして、ユーザー、パートナー、別の医療関係者、又は補聴器製造業者によるアクセスのために、中央サーバー上にアップロード又はインデックスすることができる。このことは、ユーザー聴覚プロフィールに基づく、カスタマイズされた補聴器のさらなる診断及び電子的な注文を容易にする。
【0018】
この方法はさらに、コンピュータに音響情報をデジタル供給するためにA/D変換器と相互接続されたマイクロフォンを用意し;マイクロフォンを使用してスピーカー出力をデジタル記録し;そしてヘッドセット・システムの再較正の必要性を割り出すために、デジタル記録された出力をベースラインと比較することを含んでよい。上記のように行われる比較から得られたデジタル補正値は、ヘッドセット再較正の必要性を打ち消すために、コンピュータ又はヘッドセット内部に適用することができ、これにより、再較正間の期間を延長し、また音響再生精度を改善することができる。
【0019】
本発明のさらに別の観点によれば、ユーザー聴覚プロフィールを使用して音声放射装置の音声出力を変調する方法であって、この方法が:少なくとも1つの聴覚損失領域を割り出すために、ユーザー聴覚プロフィールをコンピュータで分析し;聴覚損失領域内の所要の周波数増幅を、コンピュータを使用して割り出し;そして音声放射装置の音声出力に所要の増幅を適用することを含んでなる、ユーザー聴覚プロフィールを使用して音声放射装置の音声出力を変調する方法が提供される。1実施態様の場合、この方法はさらに、音声放射デジタル装置に所要の増幅をアップロードし;装置の音声処理回路によってアクセス可能なデータ・フォーマットで、音声放射デジタル装置上の所要増幅を電子的に記憶し;そして装置の音声処理回路を使用して、音声放射装置の音声出力に所要の増幅を適用することを含んでよい。別の実施態様の場合、この方法はさらに、音声伝送ネットワーク上のサーバーに所要の増幅をアップロードし;所要の増幅を、サーバーによって受信することができる人物識別子と関連付け;そしてネットワークを介して、人物識別子を提供するユーザーに伝送された信号に、所要の増幅を適用することを含んでよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を要約したところで、本発明の好ましい実施態様を添付の図面を参照しながら以下に説明する。
【0021】
図1を参照して、本発明による全聴力検査システムを全体的に説明する。
【0022】
聴力検査は、自分で実施されるか又は熟練した検査提供者、例えば医療関係者又は企業内検診担当者などによって実施される。医療関係者によって行われる場合には、検査実施前に、受検者(或いはここではユーザー又は被検者とも呼ばれる)は先ず、聴覚損失を引き起こし得る顕著な状態、例えば感染、ワックス、異物閉塞などをチェックするために、オトスコープを使用して耳内を検査される。電子オトスコープが使用される場合、医療関係者は、外耳道及び鼓膜のデジタル画像記録を、被検者の検査結果とともにコンピュータ内に維持することができる。被検者は、医療関係者が病歴、生活様式、活動、及び聴覚に影響を与えるおそれのある趣味、例えば射撃又は身体的スポーツに基づいて、被検者の可聴力を全体的に評価するのを可能にするために、質問に答える。質問はまた、聴覚検査に影響を与えるかもしれない大きい騒音に対する曝露を明らかにするために、直近24乃至48時間の被検者の活動にも及ぶ。被検者には次いで、聴覚検査がどのように行われるかの明確な指示が与えられる。被検者は、下記文言:
「あなたが聴くことができる最も小さな音を測定することによって、あなたの聴力を検査します。音(トーン)が聴こえたら、応答ボタンを押してください。音がどのようなものであっても、また音がどんなにかすかなものであっても、音が聴こえたと思ったらすぐにボタンを押してください。」
又は類似のものを使用して、音(トーン)が最初に聴こえたらそれを知らせるように指示される。
【0023】
これらの指示は、加えて又は代わりに、受検者によって読まれるべきコンピュータ・スクリーン上に表示することができる。医療関係者は被検者にヘッドフォンを装着し、そして検査システムが放射することになるタイプの音響(例えば純音)を実演し、そして例えば、コンピュータに接続された任意の好適なI/O装置を使用してコンピュータに直接に入力を提供することによって、被検者が音を聴いたときにどのように応答するべきかを実演する。医療関係者は次いで、検査が実施される管轄区域に応じて、種々異なる検査のための適用基準に定められた周波数及び強度の検査信号を生成するために、自動化検査を始める。
【0024】
検査は、x軸上にトーン周波数を、そしてy軸上に強度(ラウドネス)を示すオーディオグラムとして知られる被検者聴力のグラフィック表示を生成する。使用される検査周波数(各耳当たり最大で約11)に対する被検者の応答が、グラフ上の点として示され、これらの点は線によってつなげられる。例えば、同様の年齢及び性別の被検者の代表的な「健常」聴覚プロフィール、又は損傷部位を示すために色でオーバーレイされた蝸牛画像を含む、別のグラフィック表示が提供されてもよい。
【0025】
コンピュータは、顧客及び医療関係者から集められた情報を記憶して使用することができる。ネットワーク・システムを使用することにより、聴覚損失、補聴器販売、及び顧客フィードバックに関する有用な人口統計を蓄積することが可能である。被検者がこのシステムを使する医療関係者を初めて訪れたときには、被検者は、詳細な質問に答えるように求められ、この答えは次いで固有キー識別子を使用して中央知識データベースに加えられる。続く訪問時に、この情報は、その間に被検者に生じたかもしれない聴覚関連の変化を考慮するために検索され、更新される。
【0026】
3つの情報領域が集められ、保持される。すなわち:
1. 被検者、その年齢、健康状態、聴覚の事柄又は問題、補聴器、職業、及び趣味などに関する全般的な情報;
2. 実施された聴覚検査、及び、(この被検者に対する任意の既存のプロフィールに加えられた)デジタル聴覚プロフィール、必要な場合にはオトスコープ画像を含む結果に対して特有の情報、更なる検査又は相談の紹介に関する情報;及び
3. 聴覚の事柄に関するより全般的な情報を確かめるために、中央機関からシステムへ制御されダウンロードされた特定の質問に関する、人口統計的且つ社会経済的な、年齢、性別及び地理的観点から生じる情報。
【0027】
このように被検者を検査することによって、被検者の聴覚に関連するデジタル聴覚プロフィールを正確に定義し保持することが可能である。このユーザー聴覚プロフィールは次いで、聴覚をさらに損なうことなしにユーザーの聴覚を改善することになる最適調節値を計算するために使用され、このことは、損失領域をデジタル調節することと、経験及びフィードバックの結果として微調整を施すこととの組み合わせによって行われる。
【0028】
ユーザー聴覚プロフィールは任意には、個々の顧客に対する音響のカスタマイズ及び調節を可能にするように、デジタル・ヘッドセット及び/又は任意の音声放射デジタル装置にアップロードすることができる。この技術の好適な用途の例は、個人向けエンターテインメント・システム、電話機(携帯及び固定ライン)、並びに業務用途及び業務上の必要条件、例えばコールセンターなどにおける使用を含む。ユーザー聴覚プロフィールは任意には中央サーバーにアップロードされ、そして伝送ネットワークを介して提供され、例えばユーザー聴覚プロフィールは、電話ネットワークを介して特定のユーザーの電話機へ提供される信号を調節するために、電話会社によって使用されてよい。個人化されたアクセスコードをダイアルすることにより、ネットワーク上の特定のユーザーによって使用される電話機が、そのユーザー聴覚プロフィールでカスタマイズされた音声信号を次いで放出することになる。
【0029】
ユーザー聴覚プロフィールが生成された後、聴覚の問題を補正するのに適した補聴器の基本デザインを完成し、そしてデジタル・ヘッドセットを介してユーザーによってすぐにテストすることができる。ユーザーはどのタイプの音を聴きたいか、そして音を聴くときにどのタイプの聴取環境にいる可能性が高いかを選択(及び比較)することができる。聴取環境の例は、屋外、静かな場所での屋内、騒々しいパーティなどを含む。聴取環境が選ばれたら、ユーザーは、聴覚プロフィールを調節する「前」と「後」との差を音声的に聴くことができる。現時点でこのことは、既存のアナログ検査装置の機能性が制限されているため、ほとんどの検査システムにおいて行うことはできない。本発明は有利には、ユーザーが、選択された聴取環境内での補聴器の効果をすぐに体験するのを可能にし、また、実際の補聴器を注文する前に、より効果的に機能させるためにデザインに変更又は補正を加えることを示唆するのを可能にする。
【0030】
聴力検査を受ける人々はしばしば配偶者又はパートナーを連れてくる。パートナーも検査を受け、パートナー聴覚プロフィールを記録させることができる。本発明の方法を用いると、パートナーが、ユーザーによって知覚された音を体験し、そして好適な補聴器を調えたならばユーザーが実現することになる改善を体験するのを可能にするように、パートナー及びユーザーの聴覚プロフィールをオーバーレイすることが可能である。聴覚の専門家がこれらの固有聴覚プロフィールをオーバーレイし、そして付加的な診断の目的で、ユーザーの聴覚の質を聴くことも可能である。
【0031】
これらの付加的な便宜の全ては、ユーザー及びパートナーが、聴覚検査及び模倣プロセスにより深く関与し、問題及び解決のより明らかなイメージを獲得し、そして彼らの聴覚の質、ひいては生活様式をいかに改善できるかを体験できることを意味する。このことは、ユーザー及びパートナーが、より多くの情報を得た上で、より即座に補聴器購入を決意するのを助け、これにより現在の平均的な購入準備時間を短くすることになる。
【0032】
なお、念のために述べておくと、前記説明は医療関係者によって実施される検査を参照しているが、この方法のコンピュータ化された性質は、ユーザーによって直接に実施することに役立つ。コンピュータで生成されたプロンプトが、規定された形で検査を実施するようにユーザーに指示し、そしてコンピュータが、聴覚損失のタイプが既知のパラメータの範囲内に入るかどうか、又は更なる分析が熟練専門家によって必要とされるかどうかを割り出すために、結果を自動的に分析することになる。検査手順の自動化はこのシステムを、公共及び/又は在宅診断用途にとって利用しやすいセルフサービス式キオスクに適応したものにする。本発明の更なる潜在的な用途は、企業環境を含む。このような環境において、工学の損害賠償請求を後で受けるおそれを回避するために聴覚損失を早期発見するスクリーニング・ツールとして、本発明を用いることもできる。
【0033】
全体を見渡したところで、システムの重要な観点をここでより詳細に説明する。図2を参照すると、聴力検査を実施する際に、(例えば第1級聴力計基準に従った)検査プロトコルによって規定された周波数及びラウドネス・レベルの所期音響又はトーンは、ソフトウェアによってデータとしてデジタル式にコードされる。トーンは特注ソフトウェアを使用して生成される。このソフトウェアは、任意の予め定義された手動又は自動で生成される検査順序で、任意の波形及び振幅又はその組み合わせを生成する。所期音響に関連するデジタル・データは次いで、好ましくは聴力検査品質を有する少なくとも1つのスピーカーを含んでなる較正されたデジタル・ヘッドセット又はヘッドフォンに送られる。デジタル・ヘッドセットの別の実施態様は例えば、骨振動子、耳音響放射を提供する手段又は脳幹応答を測定する手段を含む。システムはまた、一方の耳においてマスキング音を生成することができるのに対して、他方の耳は、例えば受検者の他方の耳を使用して検査音が聴かれるのを防止するように手動又は自動で選択されたマスキング・レベルで検査されることになる。検査を受ける被検者は、ヘッドセットを通して受容されたトーンに対する聴覚の閾値を示す信号をコンピュータにフィードバックする。このことは、各耳に対応する音声周波数バンド全体にわたる被検者の聴覚閾値のプロフィールを示すグラム又はオーディオグラムを生成する。オーディオグラムは、被検者に関する任意の付加的な所期データに加えて、データベース内に局所的に記憶され、このデータベースは任意には、コンピュータ・ネットワークが利用可能なときに中央データ保管場所にアップロードされる。
【0034】
システムに送られるラウドネス・レベル及びトーンは、自動及び手動双方で制御され、国際聴覚検査/スクリーニング基準、プロトコル、又は方法に合わせて容易に設定することができる。ヘッドセットは、ボリュームが最大120dBHL及び(必要な場合には)これを超える音響を放射することができる。周波数及びラウドネス・レベルの集合は、特定された領域(例えば聴覚閾値の急激変化領域)内の聴覚プロフィールに関与するより高い分解能情報を得るように、被検者の以前のフィードバックに基づいて選択することができる。これは、2つ又は3つ以上の特定された検査周波数の間の聴覚損失領域をさらに特徴づけるのに特に有用であり、そして正確な聴覚損失領域がデジタル識別されるのを可能にする。システムは、被検者が最も重度の聴覚損失を有する音響周波数バンド域をターゲットとして、トーンを自動的に細分化することができる。このことは、聴覚損失/障害のより正確な診断を可能にし、そしてまた、補聴器及びその他の聴覚向上機器がより良好に調整され、そして被検者によって必要とされる正確な周波数及び増幅レベルに調整されるのを可能にする。
【0035】
コンピュータは、数多くの較正された音響及び/又は振動再生システムを並行して操作・制御し、ひいては、同時に多くの被検者の聴力検査及びデータ捕捉を並行して行うために使用することができる。この特徴は、企業内又は組織内聴力スクリーニング、又は多くの被検者が検査される必要のある聴覚診療所に特に適している。
【0036】
デジタル・ヘッドセットの較正は、正確な検査結果を得るのに重要なファクターである。ヘッドセットは通常は、認定された検査・測定基準研究所で較正されるが、しかし現場の較正を好適な可搬装置で行うこともできる。較正は、変化するアナログ電気入力信号に対するスピーカーの周波数・ボリューム応答を測定することから成る。アナログ電気入力信号は、時間又は周波数で識別される可変電圧信号を含んでなる。デジタル・ヘッドセットは、その動作範囲内の任意の周波数及びボリューム・レベルに対して手動で較正することができる。一実施態様の場合、ヘッドセットは、ヘッドセット上又はこれが接続されているコンピュータ上に記憶されたデジタル基準を用いて、それぞれの聴覚検査前及び後の両方を含む任意のインターバルで自動的に再較正する再較正手段を含む。再較正手段は任意には、再較正が必要な場合には操作者に警告するための警告インジケータを含む。再較正手段は、例えばマイクロフォン又は複数のマイクロフォン、好ましくは較正されたマイクロフォンを含んでなる。マイクロフォンは、ヘッドセットのスピーカーからの音響出力を受容し、そしてこれらの音響出力をアナログ−デジタル(A/D)変換器を介してコンピュータに提供する。マイクロフォン入力は、ヘッドセット較正の直後に確立された、予め記録されたベースラインとデジタル比較される。閾値許容差を超える比較差は、ヘッドセットの再較正の必要性を警告するために利用することができる。比較結果の対数は、いつ較正を実施するべきかを予測するための動向分析のために維持することができる。こうして、ヘッドセットの較正状態は、聴力検査結果の品質管理を保証するために定期的にモニタリングすることができる。
【0037】
聴力計、ヘッドセット、電気的導線などがシステム全体として較正を必要とする現行の聴力計とは異なり、本発明では、デジタル・ヘッドセットだけが較正を必要とする。任意の数のヘッドセットを、任意の特定のコンピュータに対して入れ替えることができるので、2つ以上の較正済ヘッドセットが手元にある限りは、検査機器を再較正中に作動中止にする必要は必ずしもない。加えて、デジタル補正は、較正ドリフトの作用を或る程度阻止するために適用することもできる。デジタル補正値は、上記再較正手順で得られたデジタル比較に基づいて割り出され、そして較正許容範囲内に入るように放射音響を修復するために、コンピュータがヘッドセットへの指示を修正するようにする。このデジタル補正は、ヘッドセットが聴覚プロフィールとの関連において使用される場合に特に有用である。それというのもデジタル補正はこの場合、認定された較正間のインターバルを長くするために、聴覚損失領域をターゲットとすることができるからである。
【0038】
ここで図3を参照すると、電子ユーザー聴覚プロフィールを生成するために、オーディオグラムを自動分析する際に、コンピュータは先ず最新のオーディオグラムを、被検者の任意の以前のオーディオグラムと比較し、そして聴覚損失/損傷の重症度から手動及び/又は自動診断が行われる。適切な場合には、聴力測定データは、中央サーバーにアップロードされ、更なる分析のために適切な医療関係者が利用できるようになる。
【0039】
図4を参照すると、音響がユーザーによってどのように知覚されるかをパートナーのために模倣する際に、ユーザー聴覚プロフィールは、パートナー聴覚プロフィール上にオーバーレイされ、そしてこれら2つのプロフィールが比較される。コンピュータは次いで、パートナー聴覚プロフィールをユーザー聴覚プロフィールと一致させるために必要とされる特定周波数の増幅及び減幅の所要量を割り出すことができる。これらの増幅は次いで、予め記録された音響を用いて、又は(生の発話に特に有用である)リアルタイムにおいて、音響がユーザーによってどのように知覚されるかをパートナーのために模倣する上で使用することができる。模倣能力は、補聴器が先ず製造されるのを待つ必要無しに、ユーザーが補聴器の効果をすぐに体験するのをも可能にする。模倣能力はまた、補聴器デザインを注文前に微調整しようという努力において、種々様々な音響環境のための任意の周波数のより高い又はより低い程度の増幅がユーザーによって体験されるのを可能にする。システムは、例えば供給元によって提供されるような商業的に入手可能な補聴器の仕様を用いて、種々異なるタイプの補聴器を模倣することができる。このことは、被検者聴取体験を最適化するように、補聴器又はその他の音響向上機器がプログラミングされるのを可能にする。
【0040】
被検者及び/又はパートナーの利益のために、システムは被検者聴覚損失を視覚的に表示し、そして任意の特定のタイプの補聴器によって被検者の聴覚が改善されることを視覚的に表示する。この聴覚損失表示は、被検者の内耳又は蝸牛に関連して視覚的に実演することができ、これによりオーディオグラム検査結果に対する実際の損傷の関係を強調することができる。改善の聴覚的及び視覚的双方の表示を同時に体験することができる。これらの模倣及び視覚的表示の特徴は、補聴器購入の見込みを高め、また、受検者及びパートナー双方に即時の比較フィードバックを提供することにより総売上サイクル準備時間を短くすると期待される。
【0041】
何らかの聴覚損失を有するが、しかし補聴器が必要となる段階にはまだ達していない人がかなりの数で存在する。結果として、これらの人々は、日常生活において全帯域の音響を体験することはできない。彼らはこの不都合を受け入れるか、或いは音響生成装置のボリュームを上げ、これにより彼らの聴覚損傷を悪化させ、そして潜在的には周りの人々に損害や不快感を与える傾向がある。
【0042】
聴覚プロフィールは、受検者が聴いた音響の周波数・ボリューム情報を、聴力検査システムによって放射された音の周波数・ボリューム情報と関連付ける。較正基準は、アナログ電気入力信号を、スピーカーからの音響出力の周波数・ボリューム特性と関連付ける。聴覚プロフィールは従って、受検者が聴いた音響の周波数・ボリューム情報を、音響を生成するために必要となるアナログ電気入力信号と関連付けるために、較正基準とともに使用することができる。アナログ電気入力信号に加える補正値は、ヘッドセットが受検者によって聴かれるのに十分なボリューム・レベルで音響を放射することになるように、受検者の聴覚損失範囲内の周波数に対して計算することができる。この補正値は、ヘッドセット又は任意のその他の好適な音声放射装置にアップロードすることができ、ヘッドセット又は装置がユーザーの聴覚損失を補償するのを可能にする。聴覚補正情報のアップロードは、聴覚検査を実施してユーザー聴覚プロフィールを生成するために使用されたコンピュータから達成するか、又はネットワークを介して達成することができる。或る特定の用途、例えばIP電話を介した声の場合、アップロードされた聴覚補正情報を含有するヘッドセット又はその他の音声放射装置によってではなく、コンピュータによって、又はコンピュータ・ネットワークを介して、聴覚修正が実施されることがしばしば望ましい。この場合、聴覚プロフィール及び/又は音響補正情報は、通信ネットワークを介してアクセス可能なサーバー上に記憶し、そして人物識別子、例えばピン・コード又はその他のアクセス・コードに関連してインデックスすることができる。人物識別子が入力されると、その聴取者の特定の必要に合わせて調整された音声出力を生成するために、伝送ネットワークを介した音響情報の全ての更なる放送を、サーバーによって補正することができる。
【0043】
図5を参照すると、デジタル・ヘッドセットの種々の要素及びこれら相互の接続部が概略的に示されている。コンピュータで実行される適切なソフトウェアが、デジタル・データ・インターフェース(例えばUSBポート、無線接続部など)を介してヘッドセットにデジタル信号を提供する。これらのデジタル信号は、ソフトウェアがヘッドセットに正確に再生するように指示している音響を表す。一実施態様の場合、これらのデジタル信号は、ヘッドセット上に配置されたメモリー・モジュール(例えばEEPROM)内部に記憶された固有較正基準を使用して、コンピュータ内部に配置されたマイクロプロセッサによって予め補正される。別の実施態様の場合、デジタル信号は任意には、デジタル・データ・バッファ内に記憶され、そして最終的には、ヘッドセット上に配置されたマイクロプロセッサによって受信される。マイクロプロセッサは、コンピュータによって要求された音響の、スピーカーからの正確な再生を導き出すのに必要となるアナログ信号を割り出すために、固有較正基準を使用する。この割り出し中に、マイクロプロセッサによって一時可変記憶バッファが利用される。較正基準は、アナログ入力信号を可聴出力信号と関連付ける実際の情報、又は別の記憶場所からこのような情報を検出するのに使用するための固有識別子を含んでなる。デジタル信号プロセッサ(DSP)が、任意にはマイクロプロセッサとデジタル−アナログ変換器との間に設けられているか、又はマイクロプロセッサと一体化されており、そして所要アナログ信号を割り出すのに利用される。マイクロプロセッサ及び/又はDSPは次いでデジタル−アナログ変換器に、アナログ信号をスピーカーに供給するように指示する。デジタル−アナログ変換器は任意の好適な形態(例えば8ビット、16ビット、24ビットなど)を有することができる。スピーカーは次いで、コンピュータによって要求された音響を正確に再生したものを放射する。聴力検査中に使用される場合、この音響は純音、又は検査目的に適した任意の他の音響であることが可能である。ヘッドセットが聴覚補正装置として使用される場合、ユーザー聴覚プロフィール及びユーザー聴覚プロフィールから導出された補正情報は、ヘッドセット上(例えばメモリー・モジュール内部又はその目的のために提供された別のメモリー・モジュール内部)に記憶されるか、或いは、コンピュータ上に記憶され、そして、ヘッドセットから正確な音響を要求するためにデジタル信号を形成する際にソフトウェアによって利用される。個々の物理的要素に関連して説明したが、前記機能のうちのいくつか又は全ては、1つ又は2つ以上のASICによって提供することができる。物理的要素は、ヘッドセット自体の上、例えばヘッドセットの頭部装着可能なハウジング上に配置されるか、或いは、デジタル・データ・インターフェースとハウジングとの間でインラインに配置された小さな密閉容器内部に配置される。後者の密閉容器は、コンピュータとヘッドセットとの間のケーブル付き接続に特に適応しやすく、これに対して前者のハウジングは無線の実施態様に特に適応しやすい。
【0044】
ヘッドセット・システムの要素はまた、少なくとも密閉容器、及び密閉容器とハウジングとコンピュータとの相互接続のための指示書を含んでなるキットの部分として提供される。キットは任意には、ハウジング、コンピュータ、及び/又はソフトウェアを、これらの使用のための指示書とともに含んでなる。
【0045】
上記には本発明の好ましい実施態様が説明されており、本発明の他の特徴及び実施態様が当業者には明らかである。本発明に関わる特許請求の範囲は、上記を参照しながら広く解釈されるべきであり、また、例えば明確に主張されていなくても、他の変更形及び副結合を含むものと、本発明者によって意図される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】図1は、コンピュータと、本発明による較正されたデジタル・ヘッドセットとを含んでなる聴覚検査システムを示す概略図である。
【図2】図2は、本発明による聴力検査を実施する際のステップを示す概略図である。
【図3】図3は、聴覚損失のコンピュータ診断、及び検査結果のコンピュータ分析を行う際のステップを示す概略図である。
【図4】図4は、ユーザー聴覚プロフィール及びパートナー聴覚プロフィールの両方に基づいて、音響がユーザーによってどのように知覚されるかを模倣する際のステップを示す概略図である。
【図5】図5は、デジタル・ヘッドセットの要素の相互接続関係を示す概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
聴力検査に使用するためのデジタル・ヘッドセット・システムであって:
a) 少なくとも1つのスピーカーと;
b) コンピュータと接続するためのデジタル・データ・インターフェースと;
c) 前記スピーカーに関連する固有較正基準を記憶するための電子メモリー・モジュールと;
d) 所期音響出力を放射するために前記スピーカーに供給されるべき所要アナログ信号を割り出すために前記較正基準に電子的にアクセスすることができる、所期音響出力に対応するデジタル・データを処理するマイクロプロセッサと;
e) 前記所要アナログ信号を前記スピーカーに提供するためのデジタル−アナログ変換器とを含んでなる、聴力検査に使用するためのデジタル・ヘッドセット・システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つのスピーカーが、頭部装着可能なハウジング内部に、各耳に対して1つずつ配置された、少なくとも2つのスピーカーを含んでなる請求項1に記載のヘッドセット・システム。
【請求項3】
前記マイクロプロセッサが、前記インターフェースを介して前記コンピュータからデジタル・データを受信する請求項1又は2に記載のヘッドセット・システム。
【請求項4】
前記マイクロプロセッサが、前記コンピュータ内部に配置されている請求項1又は2に記載のヘッドセット・システム。
【請求項5】
前記固有較正基準が、アナログ電気入力信号を、各スピーカーからの音響出力の周波数特性及びボリューム特性と関連付ける請求項1から4までのいずれか1項に記載のヘッドセット・システム。
【請求項6】
前記電子メモリー・モジュールが、EEPROM又はフラッシュ・メモリー・チップを含んでなる請求項1から5までのいずれか1項に記載のヘッドセット・システム。
【請求項7】
前記マイクロプロセッサが、デジタル信号プロセッサ(DSP)を含んでなるか、又はデジタル信号プロセッサ(DSP)と相互接続されている請求項1から6までのいずれか1項に記載のヘッドセット・システム。
【請求項8】
前記ヘッドセット・システムは、前記マイクロプロセッサ、前記デジタル−アナログ変換器、バッファ、又は前記デジタル・データ・インターフェースの一部、のうちの1つ又は2つ以上を含んでなるASICを含む請求項1から7までのいずれか1項に記載のヘッドセット・システム。
【請求項9】
前記ヘッドセット・システムは、カスタマイズされた形で機能するように、前に割り出されたユーザー聴覚プロフィールを使用して再プログラミング可能である請求項1から8までのいずれか1項に記載のヘッドセット・システム。
【請求項10】
さらに、予め記録されたベースラインとデジタル比較するために、前記スピーカーから前記コンピュータへ音響出力を提供するマイクロフォンを含んでなる自動再較正手段を含んでなる請求項1から9までのいずれか1項に記載のヘッドセット・システム。
【請求項11】
前記デジタル比較に基づいて前記コンピュータによってデジタル補正値が割り出され、前記デジタル補正値は、前記インターフェースを介して提供された前記デジタル・データを修正するために前記コンピュータによって適用される請求項10に記載のヘッドセット・システム。
【請求項12】
較正されたデジタル・ヘッドセット・システムを使用した聴力検査方法であって、該方法が:
a) i)少なくとも1つのスピーカーと;
ii)コンピュータと接続するためのデジタル・データ・インターフェースと;
iii)前記スピーカーに関連する固有較正基準を記憶するための電子メモリー・モジュールと;
iv)所期音響出力を放射するために前記スピーカーに供給されるべき所要アナログ信号を割り出すために前記較正基準に電子的にアクセスすることができる、所期音響出力に対応するデジタル・データを処理するマイクロプロセッサと;
v)前記所要アナログ信号を前記スピーカーに供給するためのデジタル?アナログ変換器と
を含んでなる、較正されたデジタル・ヘッドセット・システムを用意し;
b) 前記デジタル・データ・インターフェースを前記コンピュータと相互接続し;
c) 予め特定された周波数特性及び/又はボリューム特性を有する第1音響出力集合の放射を含んでなる、前記ヘッドセットを使用した、ソフトウェアで生成される聴力検査を施し;
d) 前記第1音響出力集合の可聴性に関するユーザー・フィードバックを前記コンピュータ内に受信し;そして
e) 1回又は2回以上の聴覚検査の結果に基づいたユーザー聴覚プロフィールを、前記コンピュータを使用して生成する
ことを含んでなる、較正されたデジタル・ヘッドセット・システムを使用した聴力検査方法。
【請求項13】
前記方法がさらに:
f) 前記ユーザー聴覚プロフィール内部の聴力損失領域をさらに特徴付けするための、前記コンピュータによって選択された周波数特性及び/又はボリューム特性を有する第2音響出力集合の放射を含んでなる、前記ヘッドセットを使用したフォローアップ音響検査を施し;
g) 前記第2音響出力集合の可聴性に関するユーザー・フィードバックを前記コンピュータ内に受信し;そして
h) 1回又は2回以上のフォローアップ聴覚検査の結果に基づいたユーザー聴覚プロフィールを、前記コンピュータで精緻化する
ことを含んでなる請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第2音響出力集合が、前記第1音響出力集合内で採用された周波数間から選択された複数の不連続の周波数を含んでなる請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記方法がさらに、
f) 少なくとも1つの聴覚損失領域を割り出すために、前記ユーザー聴覚プロフィールを前記コンピュータで分析し;
g) 前記聴覚損失領域内の所要の周波数増幅を、前記コンピュータを使用して割り出し;
h) 前記デジタル・データ・インターフェースを使用して前記ヘッドセットに所要の増幅をアップロードし;そして
i) 前記マイクロプロセッサによってアクセス可能なデータ・フォーマットで、前記デジタル・ヘッドセット上の所要増幅を電子的に記憶する
ことによって、カスタマイズされたヘッドセットとして機能するように、ユーザー聴覚プロフィールを使用して、前記デジタル・ヘッドセット・システムを再プログラミングすることを含んでなる請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記方法がさらに、
f) 少なくとも1つの聴覚損失領域を割り出すために、前記ユーザー聴覚プロフィールを前記コンピュータで分析し;
g) 前記聴覚損失領域内の所要の周波数増幅を、前記コンピュータを使用して割り出し;
h) 音声放射デジタル装置に所要の増幅をアップロードし;そして
i) 前記装置の音声処理回路によってアクセス可能なデータ・フォーマットで、前記音声放射デジタル装置上の所要増幅を電子的に記憶する
ことによって、カスタマイズされた音声放射デジタル装置として機能するように、ユーザー聴覚プロフィールを使用して、音声放射デジタル装置を再プログラミングすることを含んでなる請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記方法はさらに:
f) 少なくとも1つの聴覚損失領域を割り出すために、前記ユーザー聴覚プロフィールを前記コンピュータで分析し;
g) 前記ユーザー聴覚プロフィールを、予め割り出されたパートナー聴覚プロフィールと、前記コンピュータを使用して比較し;
h) 前記パートナー聴覚プロフィールに関して、前記パートナー聴覚プロフィールを前記ユーザー聴覚プロフィールと一致させるために、前記聴覚損失領域内の周波数の所要の増幅又は減幅を、前記コンピュータを使用して割り出し;そして
i) 前記デジタル・ヘッドセット・システムを使用して、所要の増幅又は減幅によって修正された一連の音響を、このような音響がユーザーによってどのように知覚されるかをパートナーのために音声的に模倣するために放射する
ことを含んでなる請求項12に記載の方法。
【請求項18】
前記方法がさらに:
f) 前記コンピュータに音響情報をデジタル供給するためにA/D変換器と相互接続されたマイクロフォンを用意し;
g) 前記マイクロフォンを使用してスピーカー出力をデジタル記録し;そして
h) 前記ヘッドセット・システムの再較正の必要性を割り出すために、前記デジタル記録された出力をベースラインと比較する
ことを含んでなる請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記方法がさらに、ステップh)で実施された比較からデジタル補正値を得、そしてヘッドセット・システムの再較正の必要性を打ち消すために、前記コンピュータ又は前記ヘッドセット内部に前記デジタル補正値を適用することを含んでなる請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記方法がさらに、前記ユーザー聴覚プロフィールの視覚的表示を生成することを含んでなる、請求項12から19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記方法がさらに、医療関係者にとってアクセス可能な中央サーバーに、ユーザー聴覚プロフィールをアップロードすることを含んでなる、請求項12から20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記方法がさらに、補聴器製造業者にとってアクセス可能な中央サーバーに、ユーザー聴覚プロフィールをアップロードし、そして前記ユーザー聴覚プロフィールに基づいて、カスタマイズされた補聴器を電子的に注文することを含んでなる、請求項12から21までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
ユーザー聴覚プロフィールを使用して音声放射装置の音声出力を変調する方法であって、前記方法が
a) 少なくとも1つの聴覚損失領域を割り出すために、前記ユーザー聴覚プロフィールを前記コンピュータで分析し;
b) 前記聴覚損失領域内の所要の周波数増幅を、前記コンピュータを使用して割り出し;そして
c) 前記音声放射装置の音声出力に所要の増幅を適用する
ことを含んでなる、ユーザー聴覚プロフィールを使用して音声放射装置の音声出力を変調する方法。
【請求項24】
前記方法がさらに:
d) 音声放射デジタル装置に所要の増幅をアップロードし;
e) 前記装置の音声処理回路によってアクセス可能なデータ・フォーマットで、前記音声放射デジタル装置上の所要増幅を電子的に記憶し;そして
f) 前記装置の音声処理回路を使用して、前記音声放射装置の音声出力に所要の増幅を適用する
ことを含んでなる請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記方法がさらに:
d) 音声伝送ネットワーク上のサーバーに所要の増幅をアップロードし;
e) 前記所要の増幅を、前記サーバーによって受信することができる人物識別子と関連付け;そして
f) 前記ネットワークを介して、前記人物識別子を提供するユーザーに伝送された信号に、前記所要の増幅を適用する
ことを含んでなる請求項23に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−532148(P2009−532148A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503463(P2009−503463)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際出願番号】PCT/EP2007/002774
【国際公開番号】WO2007/112918
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(508294619)クリアトーン テクノロジイズ リミテッド (1)
【Fターム(参考)】