説明

輝尽性蛍光体含有塗布液の製造方法

【課題】輝尽性蛍光体含有塗布液中の蛍光体粒子の凝集がほとんどなく、実用性に優れた輝尽性蛍光体含有塗布液を提供する。
【解決手段】輝尽性蛍光体粒子を含有する輝尽性蛍光体含有塗布液の製造方法であって、圧力50MPa以上で、かつ、流速60m/sec以上の条件で、前記輝尽性蛍光体粒子を含む粗分散液を分散させる分散工程を含むことを特徴とする輝尽性蛍光体含有塗布液の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線像変換パネルを作製する際に使用される輝尽性蛍光体含有塗布液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線、γ線、電子線等の放射線や紫外線等により励起すると、近紫外領域から青色領域に発光(瞬時発光)を示す二価ユーロピウム賦活フッ化ハロゲン化バリウム蛍光体(BaFX:Eu2+,但し、Xはフッ素以外のハロゲン原子を表す。)が知られており、X線撮影等に利用される放射線増感スクリーン用の蛍光体として使用されている。
【0003】
さらに近年では、蛍光体にX線、γ線、電子線等の放射線や紫外線等を照射した後、可視光線から赤外線に及ぶ波長領域の電磁波(励起光)で励起すると、近紫外領域から青色領域に及ぶ波長領域の発光(輝尽発光)を示すことが見出され、このような蛍光体は、放射線撮影において、従来の放射線写真法に代替する放射線像変換技術に有用な蛍光体として、非常に注目されている。
【0004】
この放射線像変換技術は、支持体上に輝尽性蛍光体を含有する蛍光体層が設けられた放射線像変換パネル(蓄積性蛍光シート)を利用するものであり、被写体を透過した放射線又は被写体から発せられた放射線をパネル上の輝尽性蛍光体に吸収させた後、輝尽性蛍光体を可視光線から赤外線に及ぶ波長領域より選ばれる電磁波(励起光)を用いて時系列的に励起することによって、輝尽性蛍光体中に蓄積されている放射線エネルギーを蛍光(輝尽発光)として放出させ、光電的に読み取ることにより電気信号を得、得られた電気信号を画像化するものである。
【0005】
この放射線像変換パネルを用いることにより、従来の放射線写真法に比べ、少ない被爆量で画像形成することが可能となり、また、得られた画像をコンピュータにより画像処理することができるため、さらに情報量の豊富な放射線画像を得ることができるとともに、撮影不良画像の救済も可能となる。
【0006】
このような放射線像変換パネルの製造方法としては、種々のものが知られている。特許文献1では、大小2種類の蛍光体粒子の粒子径差もしくは粒子径比を特定の範囲とすることで、高感度で、鮮鋭性および粒状性の優れた放射線像変換パネルの製造方法が提案されている。しかし、一般的に、粒子径の小さい粒子は凝集しやすいため、小粒子と大粒子とを混合した場合、分散が不十分だと蛍光体粒子が均一に分散されず、十分な画質向上効果が得られないという問題がある。なお、従来の塗布液の製造においては、蛍光体粒子の分散方法についての特別な研究はなく、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、プロペラミキサーなどが適宜使用されているにすぎない。
【0007】
また、特許文献2では、蛍光体粒子の凝集を解くために、乾燥させた蛍光体粒子を、運動する容器内で回転する解砕刃を用いて解砕する方法が提案されている。しかし、この方法では、塗布液中に分散させる際に凝集してしまうため、実用的ではない。
【特許文献1】特開平9−269400号公報
【特許文献2】特開2002−294229号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明では、上記従来の課題を解決することを目的とする。すなわち、本発明は、輝尽性蛍光体含有塗布液中の蛍光体粒子の凝集がほとんどなく、実用性に優れた輝尽性蛍光体含有塗布液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者等は、下記本発明に想到し、当該課題を解決できることを見出した。
すなわち、本発明は、輝尽性蛍光体粒子を含有する輝尽性蛍光体含有塗布液の製造方法であって、圧力50MPa以上で、かつ、流速60m/sec以上の条件で、前記輝尽性蛍光体粒子を含む粗分散液を分散させる分散工程を含むことを特徴とする輝尽性蛍光体含有塗布液の製造方法である。
【0010】
本発明の輝尽性蛍光体含有塗布液の製造方法では、前記粗分散液中に含有される輝尽性蛍光体粒子が、メジアン径が4μm以下の小粒径輝尽性蛍光体粒子であり、前記分散工程後に、メジアン径が4μmを超える大粒径輝尽性蛍光体粒子を混合する混合工程を含むことが好ましい。
【0011】
また、本発明の輝尽性蛍光体含有塗布液の製造方法では、前記粗分散液中に含有される輝尽性蛍光体粒子が、メジアン径が4μm以下の小粒径輝尽性蛍光体粒子およびメジアン径が4μmを超える大粒径輝尽性蛍光体粒子であることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、輝尽性蛍光体含有塗布液中の蛍光体粒子の凝集がほとんどなく、実用性に優れた輝尽性蛍光体含有塗布液を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[輝尽性蛍光体含有塗布液の製造方法]
輝尽性蛍光体含有塗布液は、圧力50MPa以上で、かつ、流速60m/sec以上の条件で、輝尽性蛍光体粒子を含む粗分散液を分散させる分散工程を経て製造される。以下、分散工程を始めとした種々の工程について説明する。なお、本発明における上記粗分散液とは、本発明に係る分散工程を経る前の輝尽性蛍光体粒子含有液をいう。
【0014】
(分散工程)
分散工程では、上記粗分散液を50MPa以上の圧力下で、かつ、60m/sec以上の流速下とする、いわゆる高圧高速流の状態におく。かかる状態におくことで、分散性の低かった粗分散液における輝尽性蛍光体粒子の分散性を向上させることができる。そして、この高分散な塗布液を使用すれば、蛍光体粒子が均一に存在する蛍光体層が形成できるため実用性に優れ、DQE(検出量子効率)や消去特性を良好な状態とすることができる。
【0015】
上記圧力は、実用性を考慮して50〜150MPaとすることが好ましく、さらに、輝尽性蛍光体における消去特性を考慮して、50〜90MPaとすることがより好ましい。なお、50MPa未満では、装置の安定性が低くなるため好ましくない。
【0016】
本発明において、上記のような高圧高速流を実施するのに用いられる固体分散装置およびその技術については、例えば『分散系レオロジーと分散化技術』(梶内俊夫、薄井洋基 著、1991、信山社出版(株)、P357〜P403)、『化学工学の進歩第24集』(社団法人 化学工学会東海支部 編、1990、槙書店、P184〜P185)、等に詳しいが、本発明での分散法は、上記粗分散液を高圧ポンプ等で加圧して配管内に送入した後、配管内に設けられた細いスリットを通過させ、この後に分散液に急激な圧力降下を生じさせることにより微細な分散を行う方法が挙げられる。
【0017】
本発明の製造方法に関連する高圧ホモジナイザーについて、一般には、(a)分散質が狭間隙を高圧、高速で通過する際に生じる『せん断力』、(b)分散質が高圧下から常圧に解放される際に生じる『キャビテーション力』、等の分散力によって微細な粒子への分散が行われると考えられている。この種の分散装置としては、古くはゴーリンホモジナイザーが挙げられるが、この装置では高圧で送られた被分散液が円柱面上の狭い間隙で高速流に変換され、その勢いで周囲の壁面に衝突し、その衝撃力で乳化・分散が行われる。使用圧力は一般には100〜600kg/cm、流速は数m/秒〜30m/秒の範囲であり、分散効率を上げるために高流速部を鋸刃状にして衝突回数を増やすなど工夫の施されたものも考案されている。これに対して、近年更に高圧、高流速での分散が可能となる装置が開発されてきており、その代表例としては、マイクロフルイダイザー(マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション社)、ナノマイザー(吉田機械興業(株)、特殊機化工業(株))などが挙げられる。
【0018】
本発明に適した分散装置としては、マイクロフルイデックス・インターナショナル・コーポレーション社製マイクロフルイダイザーM−110S−EH(G10Zインタラクションチャンバー付き)、M−110Y(H10Zインタラクションチャンバー付き)、M−140K(G10Zインタラクションチャンバー付き)、HC−2000(T50ZまたはM250Zインタラクションチャンバー付き)、HC−5000(L30ZまたはH230Zインタラクションチャンバー付き)、HC−8000(E230ZまたはL30Zインタラクションチャンバー付き)、吉田機械興業(株)製YsナノマイザーYSNM−2000AR等が挙げられる。
【0019】
これらの装置を用い、粗分散液を高圧ポンプ等で加圧して配管内に送入した後、配管内に設けられた細いスリットを通過させることにより所望の圧力を印加し、この後に配管内の圧力を大気圧に急速に戻す等の方法で分散液に急激な圧力降下を生じさせることにより本発明の効果は検証された。
【0020】
本発明においては、流速を60m/s以上とする。流速が60m/s未満であると、流速が60m/s未満であると、液の抵抗により処理の安定性が低くなるため、十分な分散効果を得られず好ましくない。流速、圧力降下時の差圧と処理回数の調節によって、輝尽性蛍光体粒子を均一に分散することが可能である。流速は60〜135m/s、圧力降下時の差圧が50〜150MPaの範囲が好ましく、流速が60〜90m/s、圧力降下時の差圧が50〜90MPaの範囲であることが更に好ましい。
【0021】
分散処理回数は必要に応じて選択できるが、通常は1回〜10回の処理回数が選ばれる。生産性の点からは1回〜3回程度の処理回数が好ましく、1回がより好ましい。高圧下でこのような分散液を高温にすることは、分散性点から好ましくなく、90℃を超えるような高温では分散不良のために均一な分散状態が得られにくくなる傾向がある。従って、本発明では前記の高圧、高速流に変換する前の工程もしくは、圧力降下させた後の工程、あるいはこれらの両工程に冷却工程を含み、このような分散液の温度が冷却工程により5〜90℃の範囲に保たれていることが好ましく、更に好ましくは5〜80℃の範囲、特に5〜65℃の範囲に保たれていることが好ましい。
【0022】
平均粒径(メジアン径)の異なる輝尽性蛍光体粒子を含有する輝尽性蛍光体含有塗布液の製造に、本発明の製造方法を適用してもよい。大小2種類の輝尽性蛍光体粒子のメジアン径を特定の範囲とすることで、高感度で、鮮鋭性および粒状性の優れた放射線像変換パネルを作製することができる。この場合、当該製造方法としては、以下の第1の方法および第2の方法が挙げられる。
【0023】
第1の方法は、粗分散液中にはメジアン径が4μm以下の小粒径輝尽性蛍光体粒子が含有させ、分散工程後に、メジアン径が4μmを超える大粒径輝尽性蛍光体粒子を混合する混合工程を含むものである。当該方法によれば、大粒径輝尽性蛍光体粒子を高圧・高速流の状態としないため、蛍光体粒子の欠けや変形を防ぐことができる。なお、大粒径輝尽性蛍光体粒子の混合方法としては、高圧・高速流として混合する手段以外の公知の手段を適用することができる。例えば、プロペラミキサを使用して混合することができる。
【0024】
第2の方法は、粗分散液中に、メジアン径が4μm以下の小粒径輝尽性蛍光体粒子とメジアン径が4μmを超える大粒径輝尽性蛍光体粒子とを含有させて、記述の分散工程による分散を行う方法である。小粒径輝尽性蛍光体粒子だけを分散工程による分散を行うと、大粒径輝尽性蛍光体粒子を混合するまでに、一部が凝集し分散性が低下する場合がある。これに対し、分散工程の段階でこれらを一緒に処理すれば、そのような問題が生じることはない。また、混合工程が不要となるため第1の方法よりも生産性を高めることができる。
【0025】
小粒径輝尽性蛍光体粒子および大粒径輝尽性蛍光体粒子のメジアン径の測定は、レーザ回折式粒度分布測定器を用いて行うことができる。小粒径輝尽性蛍光体粒子のメジアン径は2.0〜4.0μm、大粒径輝尽性蛍光体粒子のメジアン径は6.0〜15.0μmであることが、画質(鮮鋭度、粒状性など)と感度の両方が良好な放射線像変換パネルを得るためには好ましい。ここで、メジアン径Dmは、各蛍光体粒子群について粒径と頻度とからなる分布曲線を得たときに積算分布が全粒子数の50%を示す粒径(分布の中心値)を意味する。
【0026】
粗分散液に含有される輝尽性蛍光体粒子は、市販品を使用することができるが、例えば、下記焼成工程を経て製造されるものを使用してもよい。
【0027】
(焼成工程)
焼成工程は、蛍光体原料粉体を焼成して輝尽性蛍光体粒子を得る工程である。ここで、「蛍光体原料粉体」とは、輝尽性蛍光体粒子を製造するための蛍光体原料の混合物であって、焼成する直前の状態のものを言う。なお、蛍光体原料の混合物には、微量成分等が含まれる場合もあるが、「蛍光体原料粉体」と言う場合には、蛍光体原料の混合物に含まれる成分のうち、最終的な輝尽性蛍光体粒子の生成に供される粉体状の成分のみを指す。また、混晶化した輝尽性蛍光体粒子を得ようとするとき、蛍光体原料の混合物には複数種類の結晶成分が含まれるが、この場合には、各結晶成分を「蛍光体原料粉体」という。
【0028】
前記蛍光体原料としては、下記原料(1)〜(5)を挙げることができる。
(1)BaF、BaCl、BaBr、BaI、BaFBr、BaFClおよびBaFIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲン化バリウム。ただし、少なくとも1つはFを含む材料である。
(2)CaF、CaCl、CaBr、CaI、SrF、SrCl、SrBr、SrI、MgF、MgCl、MgBr及びMgIからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属ハロゲン化物。
(3)CsCl、CsBr、CsI、NaCl、NaBr、NaI、KCl、KBr、KI、RbCl、RbBr、RbI、RbF、CsF、NaF、KF、LiF、LiCl、LiBr及びLiIからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属のハロゲン化物。
(4)Al、SiO及びZrOからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属酸化物。
(5)ハロゲン化物、酸化物、硝酸塩、硫酸塩等の希土類元素化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物。
所望により、さらにハロゲン化アンモニウム(NHX’,但し、X’はF、Cl、Br又はIを表す。)等をフラックスとして使用してもよい。
【0029】
前記蛍光体原料粉体は、前記原料(1)〜(5)のそれぞれの中から所望の原料を任意に選択し、所望の組成比となるように化学量論的に秤量、混合して、調製する。
【0030】
前記蛍光体原料粉体の調製方法としては、公知の混合方法の中から適宜選択して行うことができ、例えば、下記(i)〜(iv)の方法により、蛍光体原料粉体を調製してもよい。
(i)前記蛍光体原料(1)〜(5)を秤量し、単に混合する調製方法。
(ii)前記蛍光体原料(1)〜(4)を秤量、混合し、この混合物を100℃以上の温度で数時間加熱した後、得られた熱処理物に前記蛍光体原料(5)を混合する調製方法。
(iii)前記蛍光体原料(1)〜(5)を混合し、この混合物を100℃以上の温度で数時間加熱して調製する調製方法。
(iv)前記蛍光体原料(1)〜(4)を懸濁液の状態で混合し、この懸濁液を加温下で、好ましくは50〜200℃の下で減圧乾燥、真空乾燥、噴霧乾燥等により乾燥した後、得られた乾燥物に前記蛍光体原料(5)を混合する調製方法。
【0031】
また、前記調製方法(iv)の変法として、前記蛍光体原料(1)〜(5)を懸濁液の状態で混合し、この懸濁液を乾燥する調製方法(iv−2)、前記蛍光体原料(1)及び(5)を含有する懸濁液を、加温、好ましくは50〜200℃に加温した後又は前記加温下で減圧乾燥、真空乾燥、噴霧乾燥等により乾燥した後、得られた混合物中に前記蛍光体原料(2)〜(4)を添加混合する調製方法(iv−3)、等も好適に挙げることができる。
【0032】
また、特開平7−233369号公報及び特開平10−195431号公報に記載の、粒子形状と粒子アスペクト比を制御した14面体型の希土類賦活アルカリ土類金属フッ化ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の製造方法、即ち、前記蛍光体原料粉体の調製方法(i)〜(iv−4)に加えて、さらに、蛍光体原料の混合に際して、剪断力を付与しうる手段を利用した調製方法(v)、各蛍光体原料の添加、混合のタイミング等の種々条件を制御しうる手段を利用した調製方法(vi)により調製することもできる。
【0033】
前記調製方法(v)及び(vi)での混合に用いる混合装置としては、公知の混合装置の中から適宜選択して行うことができ、例えば、各種ミキサー、V型ブレンダー、ボールミル、ロッドミル等を挙げることができる。
【0034】
輝尽発光量、消去性能等をさらに改良する目的で、下記のような種々添加成分を添加することもできる。
例えば、特開昭57−23673号公報に記載のB、特開昭57−23675号公報に記載のAs、特開昭59−27980号公報に記載のテトラフルオロホウ酸化合物、特開昭59−47289号公報に記載のヘキサフルオロ化合物、特開昭59−56480号公報に記載のV,Cr,Mn,Fe,Co,Ni等の遷移金属、又は特開昭59−75200号公報に記載のBeX”(但し、X”は、F、Cl、Br及びIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲン原子を表す)を挙げることができる。
前記添加成分を添加する場合、該添加成分は蛍光体原料を秤量、混合する際又は焼成前に添加し、混合される。
【0035】
得られた蛍光体原料粉体は、焼成されて、輝尽性蛍光体粒子となる。
焼成温度としては、500〜1100℃の範囲とすることが好ましく、700〜1000℃の範囲とすることがより好ましく、また当該範囲中で一定温度とすることがさらに好ましい。
前記焼成温度が、500℃未満では、母体結晶中での賦活剤元素の拡散や輝尽中心の源となるFの生成が不十分となることがあり、1100℃を超えると、母体結晶が溶融してしまうことがある。
【0036】
前記焼成時の焼成時間としては、蛍光体原料粉体の充填量、焼成温度又は炉からの取出温度(移動工程への移行に際しての温度)等によっても異なるが、一般に、1〜10時間が好ましく、1〜5時間がより好ましい。
【0037】
前記焼成時における炉芯管内の雰囲気としては、中性又は僅かに酸化性の雰囲気ガスを用いた雰囲気とすることが好ましい。前記中性の雰囲気ガスとしては、例えば、He、Ne、Ar、N等の不活性ガスが挙げられる。
焼成後の冷却は、最終的に焼成物の温度が200℃以下になるまで行うことが好ましく、100℃以下になるまで行うことがより好ましい。
【0038】
上記のような輝尽性蛍光体粒子を含有する粗分散液は、下記調液工程を経て調製することができる。
【0039】
(調液工程)
調液工程は、少なくとも、輝尽性蛍光体粒子および結合剤を、溶剤に分散させる工程である。調液工程において用いられる結合剤は、特に限定されるものではないが、例としては、ゼラチン等の蛋白質、デキストラン等のポリサッカライド、またはアラビアゴムのような天然高分子物質;および、ポリビニルブチラール、ポリ酢酸ビニル、ニトロセルロース、エチルセルロース、塩化ビニリデン・塩化ビニルコポリマー、ポリアルキル(メタ)アクリレート、塩化ビニル・酢酸ビニルコポリマー、ポリウレタン、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール、線状ポリエステルなどような合成高分子物質などにより代表される結合剤を挙げることができる。このような結合剤のなかで特に好ましいものは、ニトロセルロース、線状ポリエステル、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(ポリウレタンエラストマー)、ニトロセルロースと線状ポリエステルとの混合物、およびニトロセルロースとポリアルキル(メタ)アクリレートとの混合物である。なお、これらの結合剤は架橋剤によって架橋されたものであってもよい。
【0040】
調液工程において用いられる輝尽性蛍光体粒子は、既述の焼成工程を経て得られた輝尽性蛍光体粒子であっても、他の工程で得られたものや市場から入手したものであっても構わない。
【0041】
調液工程において用いられる輝尽性蛍光体粒子は、先に述べたように放射線を照射した後、励起光を照射すると輝尽発光を示す蛍光体の粉体であるが、実用的な面からは波長が400〜900nmの範囲にある励起光によって300〜500nmの波長範囲の輝尽発光を示す輝尽性蛍光体の粉体であることが望ましい。
【0042】
放射線像変換パネルにおいて好ましく用いられる輝尽性蛍光体粒子の例としては、二価ユーロピウム賦活アルカリ土類金属ハロゲン化物系蛍光体およびセリウム賦活希土類オキシハロゲン化物蛍光体が挙げられ、高輝度の輝尽発光を示すので特に好ましい。但し、本発明においては、これらの輝尽性蛍光体粒子に限られるものではなく、放射線を照射したのちに励起光を照射した場合に輝尽発光を示す輝尽性蛍光体の粉体であればいかなるものであってもよい。
【0043】
粗分散液調製用の溶剤の例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなどの低級アルコール;メチレンクロライド、エチレンクロライドなどの塩素原子含有炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル;ジオキサン、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル;そして、それらの混合物を挙げることができる。
【0044】
粗分散液における結合剤と輝尽性蛍光体粒子との混合比は、目的とする放射線像変換パネルの特性、蛍光体の種類などによって異なるが、一般には1:1乃至1:100(質量比)の範囲から選ばれ、そして特に1:8乃至1:40(質量比)の範囲から選ぶのが好ましい。粗分散液のおける輝尽性蛍光体粒子の分散方法としては、公知の分散方法を適用することが可能で、プロペラミキサなどで分散させることができる。
【0045】
なお、粗分散液には、その他の成分として、該塗布液中における輝尽性蛍光体粒子の分散性を向上させるための分散剤、また、形成後の蛍光体層中における結合剤と輝尽性蛍光体粒子との間の結合力を向上させるための可塑剤などの種々の添加剤が混合されていてもよい。そのような目的に用いられる分散剤の例としては、フタル酸、ステアリン酸、カプロン酸、親油性界面活性剤などを挙げることができる。そして可塑剤の例としては、燐酸トリフェニル、燐酸トリクレジル、燐酸ジフェニルなどの燐酸エステル;フタル酸ジエチル、フタル酸ジメトキエチルなどのフタル酸エステル:グリコール酸エチルフタリルエチル、グリコール酸ブチルフタリルブチルなどのグリコール酸エステル;そして、トリエチレングリコールとアジピン酸とのポリエステル、ジエチレングリコールとコハク酸とのポリエステルなどのポリエチレングリコールと脂肪族二塩基酸とのポリエステルなどを挙げることができる。
【0046】
[放射線像変換パネルの製造方法]
本発明の製造方法により得られる輝尽性蛍光体含有塗布液を用いた放射線像変換パネルの製造方法について、説明する。まず、必要に応じて、支持体上に反射層を形成する(反射層形成工程)。それとは別に、仮支持体上に輝尽性蛍光体含有塗布液を塗布し仮支持体から剥離することで蛍光体材料を含有する蛍光体シートを作製する(蛍光体シート作製工程)。次に、蛍光体シートを反射層上に貼り合わせて蛍光体層を形成する(蛍光体層形成工程)。そして、所望の大きさに裁断して(裁断工程)、放射線像変換パネルが製造される。以下、各工程について説明する。
【0047】
(反射層形成工程)
反射層形成工程における反射層の形成はまず、既述の光反射性物質およびエポキシ基含有化合物等の黄変防止のための化合物と結合剤とを適当な溶剤に加え、これを十分に混合して、結合剤溶液に光反射性物質の粒子および黄変防止のための化合物の粒子が均一に分散された塗布液を調製する。次いで、塗布液を支持体表面(あるいは、その上に設けられた接着性付与層表面)に均一に塗布して塗膜を形成した後、この塗膜を加熱乾燥することにより、支持体上に形成することができる。
【0048】
反射層の結合剤および溶剤としては、蛍光体層形成のための結合剤および溶剤として用いられるものの中から選ぶことができる。また光反射性物質が中空ポリマー粒子である場合には、結合剤としてアクリル酸共重合体などの水性の高分子物質を用いてもよい。さらに、塗布液には後述の蛍光体層形成用塗布液に用いられる各種の分散剤、可塑剤、着色剤などが含有されていてもよい。
【0049】
塗布液における結合剤と光反射性物質との混合比は、一般に1:1乃至1:50(質量比)の範囲から選ばれ、好ましくは1:2乃至1:20(質量比)の範囲である。また、黄変防止のための化合物の添加量は、光反射性物質の種類および使用量、結合剤の種類などによっても異なるが、該化合物が亜燐酸エステル、有機スズ化合物または有機酸金属塩である場合には一般に光反射性物質に対して0.0001〜3質量%の範囲にあることが好ましく、0.003〜0.3重量%の範囲にあることがより好ましい。エポキシ基含有化合物である場合には一般に光反射性物質に対して0.001〜10重量%の範囲にあることが好ましく、0.03〜3重量%の範囲にあることがより好ましい。反射性層の層厚は5乃至100μmとするのが好ましい。さらに、特開昭58−200200号公報に記載されているように、画像の鮮鋭度を向上させる目的で反射層の蛍光体層が設けられる側の表面には微小の凹凸が設けられてもよい。
【0050】
(蛍光体シート作製工程)
当該工程は、仮支持体上に輝尽性蛍光体材料からなる層を形成し仮支持体から剥離することで蛍光体材料を含有する蛍光体シートを作製する工程である。蛍光体層は、塗布法などを始めとした公知の方法により仮支持体上に形成することができる。
【0051】
塗布法においては、輝尽性蛍光体含有塗布液を支持体の表面に均一に塗布することにより塗膜を形成する。この塗布操作は、通常の塗布手段、たとえば、ドクターブレード、ロールコーター、ナイフコーターなどを用いることにより行うことができる。
【0052】
蛍光体層の層厚は、目的とする放射線像変換パネルの特性、蛍光体の種類、結合剤と蛍光体との混合比などによって異なり、20μm〜1mm程度とするのが一般的であるが、50μm〜500μmとすることがより好ましい。なお、仮支持体としては、ポリエチレンテレフタレートシート等を使用することができる。
【0053】
(蛍光体層形成工程)
当該工程は、蛍光体シートを反射層上に貼り合わせて蛍光体層を形成する工程である。貼り合わせの際には、圧力付与処理を施すことが好ましい。圧力を付与しながら貼り合わせることで、放射線像変換パネルの表面をより硬くすることが可能となる。圧力付与処理を伴う貼り合わせ方法としては、カレンダ処理による貼り合わせを適用することが好ましい。
【0054】
カレンダ処理を行う場合、カレンダーロールのロール径は100〜400mmφ、荷重は、100N/cm〜2000N/cmとすることが好ましい。また、ロールの温度は、主たる結合剤の軟化温度と同等あるいは高い温度にすることが好ましく、通常は、40℃〜100℃とすることが好ましい。さらに、ロールの送り速度は、0.1〜5m/minであることが好ましい。上記のような条件範囲とすることで、蛍光体へのダメージを少なくして蛍光体層の充填密度を増大させることができる。
【0055】
(裁断工程)
当該工程は、外形サイズに対応した凸型打ち抜き刃或いはギロチン型の刃を用いて放射線像変換パネルの所望の形状にする工程である。
【0056】
以上のような工程のほかに、保護層を形成する工程など種々の工程を適宜設けることができる。また、支持体上への反射層、蛍光体層などの形成方法としては、既述のような態様のほかに、順次層を積層する方法を適用してもよい。
【実施例】
【0057】
以下に、本発明を実施例および比較例を挙げてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例により限定されるものではない。
【0058】
[実施例1]
(1)蛍光体シートの作製
下記組成の材料をメチルエチルケトン(MEK)75gに加え、プロペラミキサを用いて3000rpmで60分間混合分散して、粘度4.0Pa・sの粗分散液(結合剤/輝尽性蛍光体粒子の重量比:1/40)を調製した。
【0059】
「輝尽性蛍光体粒子」・・・14面体型のBaF(Br0.85I0.15):Eu2+小粒径輝尽性蛍光体粒子(密度ρ:5.2g/cm、平均粒子径Dmaは下記表1に記載) 600g
「結合剤」・・・ポリウレタンエラストマー(パンデックスT−5265HM[固形]、大日本インキ化学工業(株)製)のMEK溶液[固形分13重量%] 86.2g
「黄変防止剤」・・・エポキシ樹脂(エピコート#1001[固形]、油化シェルエポキシ(株)製) 4g
【0060】
この粗分散液を、高圧分散機(商品名:YsナノマイザーYSNM−2000AR、吉田機械興業株式会社製、ジェネレータ径100μm)の圧力を1530kg/cm(150MPa)、流速を130m/secに設定して5回処理を行い、分散液を作製した。その際、発熱による分散媒の蒸発を防ぐため、ジェネレーター後に蛇管式熱交換器を装着し、冷却水を流すことで冷却を行った。
【0061】
この分散液を含む、下記組成の材料をメチルエチルケトン(MEK)10gに加え、プロペラミキサを用いて3000rpmで60分間混合分散して、粘度5.0Pa・sの塗布液(結合剤/蛍光体の重量比:1/40)を調製した。
【0062】
「蛍光体分散液」・・・上記のもの 765g
「輝尽性蛍光体粒子」・・・14面体型のBaF(Br0.85I0.15):Eu2+大粒径輝尽性蛍光体粒子(密度ρ:5.2g/cm、平均粒子径Dmbは下記表1に記載) 1400g
「結合剤」・・・ポリウレタンエラストマー(パンデックスT−5265HM[固形]、大日本インキ化学工業(株)製)のMEK溶液[固形分20重量%] 211g
「黄変防止剤」・・・エポキシ樹脂(エピコート#1001[固形]、油化シェルエポキシ(株)製) 8.8g
【0063】
この塗布液(輝尽性蛍光体含有塗布液)を、一定流量送液しながら、シリコーン系離型剤が塗布されたポリエチレンテレフタレートシート(仮支持体、厚み:188μm)の表面に塗布し、乾燥し、冷却をして、仮支持体上に蛍光体層(層厚:400μm)が形成された蛍光体シートを得た(蛍光体シート作製工程)。
【0064】
(2)接着層及び反射層の形成
「樹脂」・・・飽和ポリエステル樹脂(バイロン300、東洋紡(株)製)のMEK溶液[固形分30重量%] 200g
「硬化剤」・・・ポリイソシアネート(タケネートD−140N[固形分75%]、三井武田ケミカル(株)製) 6.6g
「導電剤」・・・SnO(Sbドープ)針状微粒子(長軸:0.2〜2μm、短軸:0.01〜0.02μm、FS−10P、石原産業(株)製)のMEK分散体[固形分30重量%] 500g
【0065】
上記組成の材料をMEK50gに加え、混合分散して粘度約0.02〜0.05Pa・sの塗布液を調製した。この塗布液をポリエチレンテレフタレートシート(支持体、厚み:188μm、ヘイズ度:約27、ルミラーS−10、東レ(株)製)の表面に、塗布し乾燥して、接着層(層厚:4μm)を形成した。
【0066】
次に、下記組成の材料をMEK930gに加え、混合分散して粘度2〜3Pa・sの塗布液(結合剤/光反射性物質の重量比:約1/22)を調製した。この塗布液を接着層の表面に490mmの幅で塗布し乾燥して、反射層(層厚:約100μm)を形成した(反射層形成工程)。
【0067】
「光反射性物質」・・・高純度アルミナ微粒子(平均粒子径:0.4μm、UA−5105、昭和電工(株)製) 1000g
「結合剤」・・・軟質アクリル樹脂(クリスコートP−1018GS[20%トルエン溶液]、大日本インキ化学工業(株)製) 225g
「表面処理剤」・・・シランカップリング剤(KBE903、信越化学工業(株)製) 10g
「着色剤」・・・群青(SM−1、第一化成工業(株)製) 5g
【0068】
(3)蛍光体層の形成(熱圧縮処理)
支持体の反射層表面に、上記蛍光体シートを塗布形成時の裏面(仮支持体側)が接するようにして重ね、これをカレンダー機を用いて圧力480kg/cm、上側ロール温度45℃、下側ロール温度45℃、送り速度0.3m/分にて熱圧縮した。これにより、蛍光体層は光反射層に完全に融着した(蛍光体層形成工程)。熱圧縮後の蛍光体層の層厚330μm、輝尽性蛍光体粒子の充填密度3.61g/cmであった。
【0069】
(4)保護層の形成
下記組成の材料をMEK69gに加え、混合溶解して塗布液を調製した。この塗布液を蛍光体層の表面に塗布し乾燥して、保護層(層厚:3μm)を形成した。
【0070】
「高分子物質」・・・フルオロオレフィン・ビニルエーテル共重合体(ルミフロンLF−200[30%キシレン溶液]、旭硝子(株)製) 167g
「架橋剤」・・・ポリイソシアネート(タケネートD−140N[固形分75%]、三井武田ケミカル(株)製)23.1g
「触媒」・・・ジブチルチンジラウレート(KS1260、共同薬品(株)製) 0.35mg
【0071】
得られた積層体を200mm×250mmのサイズに裁断して(裁断工程)、図1に示すように、支持体11上に、接着層12、反射層13、蛍光体層14、および保護層15が順次形成された放射線像変換パネルを作製した。
【0072】
なお、ここで、輝尽性蛍光体粒子のメジアン径の測定には、レーザー回折式粒度分布測定装置(SALD−7000,島津製作所製)を用いた。溶媒にはメタノールを使用し、出力40Wの超音波発信機を用いて分散した後装置内に導入し、フローセルを用いて循環させながら測定を行った。
【0073】
[実施例2]
実施例1において、小粒径輝尽性蛍光体粒子のメジアン径を下記表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして、放射線像変換パネルを製造した。
【0074】
[実施例3]
(1)蛍光体シートの作製
下記組成の材料をMEK137.5gに加え、プロペラミキサを用いて6000rpmで30分間混合分散して、粘度4.5Pa・sの粗分散液(結合剤/蛍光体の重量比:1/30)を調製した。
【0075】
「輝尽性蛍光体粒子」・・・メジアン径が異なる二種類の14面体型のBaF(Br0.85I0.15):Eu2+を大粒子と小粒子との重量比が7:3となるように混合した輝尽性蛍光体粒子(密度ρ:5.2g/cm、平均粒子径Dmは下記表1に記載) 合計1375g
「結合剤」・・・ポリウレタンエラストマー(パンデックスT−5265HM[固形]、大日本インキ化学工業(株)製)のMEK溶液[固形分13重量%] 282.5g
「黄変防止剤」・・・エポキシ樹脂(エピコート#1001[固形]、油化シェルエポキシ(株)製) 9.2g
【0076】
この粗分散液を、高圧分散機(商品名:YsナノマイザーYSNM−2000AR、吉田機械興業株式会社製、ジェネレータ径100μm)の圧力を714kg/cm(70MPa)、流速を75m/secに設定して1回処理を行い、塗布液を作製した。その際、発熱による分散媒の蒸発を防ぐため、ジェネレーター後に蛇管式熱交換器を装着し、冷却水を流すことで冷却を行った。
【0077】
この塗布液(輝尽性蛍光体含有塗布液)を、一定流量送液しながら、シリコーン系離型剤が塗布されたポリエチレンテレフタレートシート(仮支持体、厚み:188μm)の表面に塗布し、乾燥し、冷却をして、仮支持体上に蛍光体層(層厚:400μmが形成された蛍光体シートを得た(蛍光体シート作製工程)。
【0078】
(2)接着層及び反射層の形成
「樹脂」・・・飽和ポリエステル樹脂(バイロン300、東洋紡(株)製)のMEK溶液[固形分30重量%] 200g
「硬化剤」・・・ポリイソシアネート(タケネートD−140N[固形分75%]、三井武田ケミカル(株)製) 6.6g
「導電剤」・・・SnO(Sbドープ)針状微粒子(長軸:0.2〜2μm、短軸:0.01〜0.02μm、FS−10P、石原産業(株)製)のMEK分散体[固形分30重量%] 500g
【0079】
上記組成の材料をMEK50gに加え、混合分散して粘度約0.02〜0.05Pa・sの塗布液を調製した。この塗布液をポリエチレンテレフタレートシート(支持体、厚み:188μm、ヘイズ度:約27、ルミラーS−10、東レ(株)製)の表面に、塗布し乾燥して、接着層(層厚:4μm)を形成した。
【0080】
次に、下記組成の材料をMEK930gに加え、混合分散して粘度2〜3Pa・sの塗布液(結合剤/光反射性物質の重量比:約1/22)を調製した。この塗布液を接着層の表面に塗布し乾燥して、光反射層(層厚:約100μm)を形成した(反射層形成工程)。
【0081】
「光反射性物質」・・・高純度アルミナ微粒子(平均粒子径:0.4μm、UA−5105、昭和電工(株)製) 1000g
「結合剤」・・・軟質アクリル樹脂(クリスコートP−1018GS[20%トルエン溶液]、大日本インキ化学工業(株)製) 225g
「表面処理剤」・・・シランカップリング剤(KBE903、信越化学工業(株)製) 10g
「着色剤」・・・群青(SM−1、第一化成工業(株)製) 5g
【0082】
(3)蛍光体層の形成(熱圧縮処理)
支持体の光反射層表面に、上記蛍光体シートを塗布形成時の裏面(仮支持体側)が接するようにして重ね、これをカレンダー機を用いて圧力480kg/cm、上側ロール温度45℃、下側ロール温度45℃、送り速度0.3m/分にて熱圧縮した。これにより、蛍光体層は光反射層に完全に融着した。熱圧縮後の蛍光体層の層厚330μm、輝尽性蛍光体粒子の充填密度3.54g/cmであった。
【0083】
(4)保護層の形成
下記組成の材料をMEK69gに加え、混合溶解して塗布液を調製した。この塗布液を蛍光体層の表面に塗布し乾燥して、保護層(層厚:3μm)を形成した。
【0084】
「高分子物質」・・・フルオロオレフィン・ビニルエーテル共重合体(ルミフロンLF−200[30%キシレン溶液]、旭硝子(株)製) 167g
「架橋剤」・・・ポリイソシアネート(タケネートD−140N[固形分75%]、三井武田ケミカル(株)製)23.1g
「触媒」・・・ジブチルチンジラウレート(KS1260、共同薬品(株)製) 0.35mg
【0085】
得られた積層体を200mm×250mmのサイズに裁断して(裁断工程)、図1に示すように、支持体11上に、接着層12、反射層13、蛍光体層14、および保護層15が順次形成された放射線像変換パネルを作製した。
【0086】
[実施例4]
実施例3において、小粒径輝尽性蛍光体粒子のメジアン径を下記表1に示すように変更した以外は実施例3と同様にして、放射線像変換パネルを製造した。
【0087】
[比較例1]
実施例1において、分散工程を省略するように変更したこと以外は実施例1と同様にして、放射線像変換パネルを製造した。
【0088】
[放射線像変換パネルの性能評価]
得られた各放射線像変換パネルについて、以下のようにして放射線画像の画質の評価を行った。
【0089】
放射線像変換パネルをカセッテに収容し、その表面に、MTFチャートを介してタングステン管球、管電圧80kVpのX線(10mR相当)を照射した後、半導体レーザ光(波長:660nm)をパネル面上の励起エネルギーが5J/mとなるように照射して、パネル表面から放出された輝尽発光光を受光器(分光感度S−5の光電子増倍管)で受光した。受光した光を電気信号に変換し、これを画像再生装置によって画像に再生して表示装置上に画像を得た。得られた画像から鮮鋭度を測定した。パネルの表面に一様にX線(10mR相当)を照射した後、同様にして粒状値のウィナースペクトルを求めた。得られた鮮鋭度と粒状値から、空間周波数1サイクル/mmにおける検出量子効率(DQE10mR、%)を算出した。10mRでのDQEは、構造モトルを反映した粒状性を示しており、輝尽性蛍光体粒子の分散性を評価する1つの指標となる。
【0090】
【表1】

【0091】
上記に示した結果から、蛍光体粒子の分散に特定の高圧分散機を用いた本発明によって製造された放射線像変換パネル(実施例1〜4)は、当該分散機を用いない比較のための放射線像変換パネル(比較例1)に比べて、DQE(10mR)が高く、構造モトルを反映した粒状性(分散性)が優れていることがわかる。
【0092】
[実施例5〜7]
プロペラミキサーでの混合を3000rpmで1時間とし、分散工程における圧力を下記表2のようにした以外は、実施例3と同様にして、放射線像変換パネルを作製した。
【0093】
実施例3、実施例5〜7および比較例1の放射線像変換パネルについて、80KVpのX線を照射した後、照射エネルギー4.3J/mのLD(波長650nm)を走査して励起させ、輝尽性蛍光体から放射された輝尽発光光をフィルター(B−410)を通して光電子増倍管で受光して、輝尽性蛍光体の初期輝尽発光量を測定した。初期発光量を測定した後、UVカットフィルターが装着された蛍光灯を用いて各輝尽性蛍光体上に16秒間、さらに黄色フィルターを通した光を11秒間照射することにより消去操作を行い、次いで再度レーザ照射して、輝尽性蛍光体の消去後の輝尽発光量(消去値)を測定した。消去値は小さい程消去特性に優れる。結果を下記表2に示す。
【0094】
【表2】

【0095】
ナノマイザーYSNM2−L200ARを用いた場合、処理圧力が50MPa未満の領域においては、駆動動力であるエア圧力不足により装置の安定処理が進まなかった。90MPaを超える領域では消去特性が劣化した。より高圧(150MPa)で処理を行うと、感度が低下した。すなわち、未処理(比較例1)を100とした場合に、90MPa(実施例6)で100、150MPa(実施例7)で85であった。
【0096】
上記表2から、処理圧力が高いほど消去特性が低下する傾向にあることがわかった。従って、ある程度処理圧力を低く設定する(好ましくは、50〜90MPa)方が輝尽性蛍光体粒子の損傷を防ぐ面からも望ましいと考えられる。なお、実施例7も含め、すべての実施例の放射線像変換パネルは、実用上問題はない。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】放射線変換パネルの層構成を例示する概略断面図である。
【符号の説明】
【0098】
11 支持体
12 接着層
13 光反射層
14 蛍光体層
15 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
輝尽性蛍光体粒子を含有する輝尽性蛍光体含有塗布液の製造方法であって、
圧力50MPa以上で、かつ、流速60m/sec以上の条件で、前記輝尽性蛍光体粒子を含む粗分散液を分散させる分散工程を含むことを特徴とする輝尽性蛍光体含有塗布液の製造方法。
【請求項2】
前記粗分散液中に含有される輝尽性蛍光体粒子が、メジアン径が4μm以下の小粒径輝尽性蛍光体粒子であり、
前記分散工程後に、メジアン径が4μmを超える大粒径輝尽性蛍光体粒子を混合する混合工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の輝尽性蛍光体含有塗布液の製造方法。
【請求項3】
前記粗分散液中に含有される輝尽性蛍光体粒子が、メジアン径が4μm以下の小粒径輝尽性蛍光体粒子およびメジアン径が4μmを超える大粒径輝尽性蛍光体粒子であることを特徴とする請求項1に記載の輝尽性蛍光体含有塗布液の製造方法。


【図1】
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【公開番号】特開2007−332172(P2007−332172A)
【公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−162090(P2006−162090)
【出願日】平成18年6月12日(2006.6.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】