説明

農作業トラクタ−に装備される耕耘作業機の昇降制御装置

【目的】 乗用トラクタに装着した耕耘作業機に培土装置を取り付けるときに、耕耘作業機の自動昇降制御が不測に行なわれずに培土差業を的確に行なうことを目的とする。
【構成】 乗用トラクタの後部に油圧装置で昇降される耕耘作業機であって、この耕耘作業機のリヤ−カバ−の動きにより当該耕耘作業機を昇降制御されるものにおいて、このリヤ−カバ−に設けた切欠部に培土装置を嵌合させて取り付けるにあたり、この培土装置取付け時に耕耘作業機の自動昇降制御がおこなわれないよう自動制御停止機構を設けた農作業トラクタ−に装備される耕耘作業機の昇降制御装置。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、農作業トラクタ−に装備される耕耘作業機の昇降制御装置に関する。
【0002】
【従来技術】従来、農業用トラクタ−の後部に油圧装置で昇降制御されるリンク機構に耕耘作業機を装着し、この耕耘作業機のロ−タリを、固定の上部カバ−とこの後端部側に回動自在に取り付けられたリヤ−カバ−とで被う構成となし、このリヤ−カバ−の上下回動の動きで前記油圧装置の切替弁を切替て耕耘作業機自体を昇降制御させるものは周知であった。また、このリヤ−カバ−の左右中間部を後方側から前方側へV字状に切り開いて、この切欠部に培土装置を嵌合し、耕耘作業機側の適所に固着して畦立て作業をする構成のものも周知であった。然るに、この培土装置を取り付けた状態では、リヤ−カバ−を上方側へ跳ね上げた状態になり、自動昇降制御が行なわれると、確実な畦立て作業ができなくなる。したがって、この場合には自動制御機構が作動しない状態にセットすることが必要であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前述の従来技術では、自動制御機構を働かせないようにセットするのを忘れて、自動昇降制御が効く状態で培土装置を装着する場合があり、確実な培土作動ができなくなる欠点があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】この発明は、前述の課題を解消するために次の技術的な手段を講じた。即ち、農業用の乗用トラクタ1に装備された油圧装置で作動する昇降機構を介して耕耘作業機11を装着し、この耕耘作業機11の耕耘ロ−タリの上部を被う上部カバ−13aの後部に上下回動自在なリヤ−カバ−18を設け、このリヤ−カバ−18の下端部側で耕耘後の表土面を押圧しながら均平にするよう構成した耕耘装置において、このリヤ−カバ−自体の上下回動により前記油圧装置の切替弁24を作動して耕耘作業機11の上下高さを自動制御ならしめる自動昇降制御機構を設け、前記リヤ−カバ−自体に培土装置20を嵌入して耕耘装置側にセットできる培土装置嵌合用の切欠部(イ)を設け、この切欠部(イ)に前記培土装置20を嵌合するとき、前記自動昇降制御機構が自動的にカットされて制御されなくなる自動制御停止機構を設けたことを特徴とする農作業トラクタ−に装備される耕耘作業機の昇降制御装置とした。
【0005】
【実施例】この発明の一例を図面に基づき詳細に説明する。1は乗用トラクタの本体であり、図例ではその後端部側のリヤ−ミッションケ−ス2の部分を開示する。3は左右一対の駆動後輪、4は座席である。5はリヤ−ミッションケ−ス2の上部に一体的に設けられたリヤ−ケ−スで、内部に油圧シリンダ−装置等が組み込まれている。
【0006】6はロア−リンクで、前記ミッションケ−ス2の後端側左右両側に基端部が枢結されて自由端部が後方側へ延設されている。7は駆動ア−ムで、前記リヤ−ケ−ス5に設けられた回動駆動軸8に基部側が連結されて上下回動されるように設けられ、左右両側で後方へ向けて突出されている。
【0007】9は吊下ロッドで、前記駆動ア−ム7と前記ロア−リンク6との間を連結している。10トップリンクで、作業機側を連結するリンクである。11は耕耘作業機で、伝動ケ−ス12の下部側に固定の上部カバ−13aを一体的に取付け、この上部カバ−13aの左右一側に前記伝動ケ−ス12からの動力を耕耘軸14に伝えるチエンケ−ス15を下側向けて構成し、上部カバ−13aの他端側の側部カバ−13bには前記耕耘軸14の他端側を軸受するメタル16が取り付けられている。17は耕耘刃であり、耕耘軸14に一体的に取り付けられている。
【0008】18はリヤ−カバ−で、前記上部カバ−13aの後端側に基部が枢着されて自由端が垂れ下がるよう構成されている。そして、このリヤ−カバ−18の左右中間部の後側に、背面視が山形状の切欠部(イ)を形成し、通常は、この部分を蓋板19で塞いでいる。即ち、この蓋板19を除くと、この部分に培土装置が後方から前側へ向けて挿入できて畦立て作業ができる構成にしている。
【0009】20が培土装置で、左右中央部分の前側が溝切刃縁になっていてこれに続く左右両側が左右後方へ拡がった培土板になっている。この培土装置20の左右中央部には上方へ突出する支軸21が設けられ、これを前記耕耘作業機11のフレ−ム側に連結枠22を介して取り付ける構成になっている。耕耘作業機11の昇降制御機構について第5図により説明すると、油圧ポンプ23から油圧切替弁24を経て作動オイルが複動型の油圧シリンダ−装置25へ送られる構成になっており、このシリンダ−装置25で前述の駆動ア−ム7が作動される。
【0010】この油圧切替弁24は、トラクタ−の操縦席側に設けた油圧操作レバ−26の操作及びサ−ボモ−タ27の駆動で切替可能に構成されている。図中28はリリ−フ弁、29は油圧タンクである。サ−ボモ−タ27は、ステッピングスイッチ30によって正転、逆転されると共の、その回転角度も決定される。そして、このステッピングスイッチ30は、前記リヤ−カバ−18に連接されていて、リヤ−カバ−18の上下回動角度により作動される。
【0011】即ち、具体的には、ステッピングスイッチ30のスイッチア−ム30aとリヤ−カバ−18とをロッド31で連結し、リヤ−カバ−18の上下回動角度によってサ−ボモ−タ27を介して油圧切替弁24を切替るようになっている。リヤ−カバ−18が上方側へ高く振り上げ回動されると耕耘作業機11が上昇されるよう切替られ、逆に下方へ垂れ下がり回動されっると耕耘作業機11が下降されるよう構成されている。
【0012】尚、ステッピングスイッチの代わりに、リヤ−カバ−18の上下回動を受けて作動される可変抵抗器による電子制御用のピックアップ機構を使用して、このピックアップ機構から送信された電流値で前記サ−ボモ−タ27を駆動して切替弁24を切替る構成とするもよい。更に、サ−ボモ−タ27の代わりに作動ストロ−クが可変に構成された電磁シリンダ−を設け、この電磁シリンダ−により油圧切替弁24を切替る構成であってもよい。
【0013】32は切替ア−ムで、前記リヤ−カバ−18の切欠部(イ)の外周部近傍のカバ−18に、長さ方向中間部が軸33で枢着され、一端側が該切欠部(イ)内に側面側から入り込むよう構成されている。34は連繋用の移動ピンで、リヤ−カバ−18の外壁面部で一端側へバネ35で引張られる板体36に植設され、この板体36と前記切替ア−ム32とがレリ−ズワイヤ−37で連繋されている。したがって、切替ア−ム32が切欠部(イ)内面で上方側へ押し上げられて回動すると、ワイヤ−37が引っ張られてピン34が板体36と一体でバネ35に抗して移動されるようになっている。
【0014】38はカム板で、この板には背面視が略ト字形状のカム孔(ロ)を穿ち、このカム孔内に前記ピン34を挿通する。そして、このカム板38を前記ロッド31の下端側にボ−ルジョイントを介して連結している。また、このカム板38は上下方向にのみ可動できるようリヤ−カバ−18に装着されている。したがって、ピン34が横方向に向かう長孔内に位置しているときはリヤ−カバ−18の上下回動でロッド31を介して昇降制御が行なわれるが、上下方向に向かう長孔内に位置しているときは、リヤ−カバ−18が上下作動してもピン34を上下に作動する力が働かず自動昇降制御が行なわれない。
【0015】次に、上例の作用について詳述する。耕耘培土作業をしない普通の耕耘作業時には、蓋板19でリヤ−カバ−18の切欠部(イ)を被い耕耘作業をする。このとき、カバ−18と蓋体19とで形成された側方部分に形成されたスリット(ハ)から切替ア−ム32が外方へ突出した格好になり、該切替ア−ム32は自由に回動自在に保持される。したがって、バネ35の張力でワイヤ−37が引っ張られ、ピン36は第2図紙面の右側方へ移動される。このとき、カム板38に穿たれたカム孔(ロ)の右方向側に伸びる長孔内にピン36が入り該ピン34を介してリヤ−カバ−18とカム板38とが一体状態に保持される。
【0016】したがって、耕耘作業時に深く耕耘させすぎると、リヤ−カバ−18が耕耘後の表土圧を受けて上方へ押し上げられるとロッド31及びスイッチア−ム30aを介してステッピングスイッチ30が切替られ、所定の電気信号によってサ−ボモ−タ27が該リヤ−カバ−18の動き量に応じて回動し、油圧切替弁24を切替ることになる。即ち、油圧シリンダ−装置25のピストンヲ突出させて駆動ア−ム7を上方へ回動しロア−リンク6及びトップリンク10を介して装着された耕耘作業機11を上昇させて適性な耕耘深さに制御する。
【0017】逆に、耕耘状態が浅くなりすぎると、リヤ−カバ−18が下動し油圧切替弁24を逆側に切替て油圧シリンダ−のピストンを引き込ませ耕耘作業機11を下降させて適性な耕耘深さに制御する。次に、耕耘培土作業をする場合には、蓋板19を取外して、リヤ−カバ−18の切欠部(イ)に培土装置20を第3図の通り挿入して耕耘作業機11側に取り付ける。
【0018】このとき、培土装置20の前側部分で切替ア−ム32が自動的に押し上げられるからワイヤ−37がバネ35に抗して引っ張られ、ピン34がカム板38の上下方向に穿たれた長孔部分に嵌入する。したがって、この状態になるとカム板38とリヤ−カバ−18とが切り離された状態になってリヤ−カバ−18の上下動によってステッピングスイッチ30が作動されることがない。
【0019】このため、耕耘作業機11の自動昇降制御が自動的に切り状態に保持されて、培土作業を確実に行なうことができる。尚、第7図の別実施例を説明すると、リヤ−カバ−18と油圧切替弁24とをロッド39、レバ−40、ワイヤ−41でもって連動し、該リヤ−カバ−18の上下回動作動により油圧装置の切替弁24を切替て耕耘作業機11を昇降制御するものにおいて、ロッド39の構成を伸縮自由な状態と伸縮不能あるいはバネを介在した弾持状態での伸縮可能な状態とに切替できる構成とし、前記培土装置20を装備するときには切替弁24側が切替られない伸縮自由状態にすれば便利である。具体的な実施例としては、上側ロッド39aと下側ロッド39bとの間をパイプ39cで連結し、その上下一方側のロッド39aを割ピン42で固着し、他方側ロッド39bをヘアピン43で固定して伸縮不能状態とヘアピン43を抜き外して伸縮自由状態とに切替る構成にしている。
【0020】別実施例として第8図のように屈折自在な状態と屈折不能な状態とにロッド機構を構成してもよい。この実施例では、板状ロッド39dと板状ロッド39eとの自由端側を重ね合わせ、この両者をバネ44で弾持包合できるU字ピン45とこのU字ピン45と一体的に設けたL字折曲板46で両ロッドが第8図で示した屈折しない状態と、U字ピン45の自由端側を矢印(ニ)方向へ引き抜いてL字折曲板46共々移動させて90度回動させてL字折曲板46の立上り板部がロッド39dの裏側に当たってピン45が抜出保持された屈折自在状態とに構成し、この屈折自在状態に切替ておけば前述第7図実施例の伸縮自在状態に切替た場合と同じことになる。
【0021】
【発明の作用及び効果】この発明によれば、耕耘作業機のリヤ−カバ−に形成した切欠部に培土装置を装着するとき、自動的に耕耘作業機の昇降制御がカットされるため培土作業時に昇降制御が不測に行なわれて培土機能が損なわれる事態が起こらない効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】側面図
【図2】要部の平面図
【図3】培土装置を取り付けた状態の要部の側面図
【図4】要部の斜面図
【図5】油圧回路図
【図6】要部の背面図
【図7】別例の要部の側面図
【図8】別例の要部の斜面図
【符号の説明】
1 乗用トラクタ
11 耕耘作業機
13a 上部カバ−
18 リヤ−カバ−
20 培土装置
24 油圧切替弁
イ 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 農業用の乗用トラクタ1に装備された油圧装置で作動する昇降機構を介して耕耘作業機11を装着し、この耕耘作業機11の耕耘ロ−タリの上部を被う上部カバ−13aの後部に上下回動自在なリヤ−カバ−18を設け、このリヤ−カバ−18の下端部側で耕耘後の表土面を押圧しながら均平にするよう構成した耕耘装置において、このリヤ−カバ−自体の上下回動により前記油圧装置の切替弁24を作動して耕耘作業機11の上下高さを自動制御ならしめる自動昇降制御機構を設け、前記リヤ−カバ−自体に培土装置20を嵌入して耕耘装置側にセットできる培土装置嵌合用の切欠部(イ)を設け、この切欠部(イ)に前記培土装置20を嵌合するとき、前記自動昇降制御機構が自動的にカットされて制御されなくなる自動制御停止機構を設けたことを特徴とする農作業トラクタ−に装備される耕耘作業機の昇降制御装置。

【図1】
image rotate


【図3】
image rotate


【図2】
image rotate


【図4】
image rotate


【図5】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate