説明

農作業機

【課題】効率の良い耕耘作業が行なえる農作業機を提供することを課題としている。
【解決手段】耕耘爪22を備えたロータリ6と、耕耘作業時に耕耘深さを維持する耕深維持装置と、該耕深維持装置を機体側に支持するブラケット14とを備え、耕耘爪22をブラケット14側面側に配置し、ブラケット14が側面視で耕耘爪22の回転軌跡と重複するように配置された農作業機において、耕耘爪22を先端部がブラケット14側面に向かって順次接近するように傾斜させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリを備えた歩行型管理機等の農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
耕耘爪を備えた耕耘用のロータリと、耕耘作業時に耕耘深さを維持する耕深維持装置としてのゲージ輪と、該ゲージ輪を支持するブラケットとを備え、耕耘爪をブラケット側面側に配置し、ブラケットが側面視で耕耘爪の回転軌跡と重複するように位置決めされた農作業機(例えば特許文献1)が公知となっている。
【特許文献1】特開2006−61076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記文献の農作業機の耕深維持装置(ゲージ輪)は一端が機体のロータリ内乃至ロータリに近接した位置に支持され、他端が耕耘作業位置に接することにより、機体のバランスを保ちながら農作業機の耕耘深さを維持する。上記構成により耕深維持装置を支持するブラケット側面に近接してロータリの耕耘爪が配置される。このため耕耘作業時に耕耘爪によって掻き上げられた石等が耕耘爪側面とブラケット側面との間に入り込んで両側面に挟み込まれ、ロータリの回転が妨げられ又は停止される等、耕耘作業の効率が低下するという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため本発明の農作業機によれば、耕耘爪22を備えたロータリ6と、耕耘作業時に耕耘深さを維持する耕深維持装置と、該耕深維持装置を機体側に支持するブラケット14とを備え、耕耘爪22をブラケット14側面側に配置し、ブラケット14が側面視で耕耘爪22の回転軌跡と重複するように配置された農作業機において、耕耘爪22を先端部がブラケット14側面に向かって順次接近するように傾斜させたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0005】
以上のように構成される本発明の農作業機によれば、ブラケットの側面側に配置された耕耘爪の側面はブラケット側面に対して先端部のみが近接し、基端部側に向かって順次広くなる空間が形成されるので、耕耘作業時に耕耘爪によって掻き上げられた石等が耕耘爪側面とブラケット側面との間に挟み込まれることが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1は本発明を適用した農作業機である歩行型管理機の側面図、図2は平面図である。機体フレームを構成するミッションケース1の後部下側には車軸2が、前部にはロータリ軸3が左右に突出してそれぞれ設けられている。
【0007】
車軸2には走行用の車輪4が軸支されている。ロータリ軸3には耕耘用のロータリ6が軸支されている。ロータリ6の上方乃至後方上部はロータリカバー7によって覆われている。前端が前方側の持ち手を兼用するカバーフレーム8がミッションケース1側に固定され、上記ロータリカバー7はカバーフレーム8に取り付けられている。
【0008】
ミッションケース1の上方にはエンジン9が設置されており、エンジン9とミッションケース1との間には、エンジン9からミッションケース1内に構成されたトランスミッションに駆動力を伝動する伝動ケース11が設けられている。上記トランスミッションは車輪4用の走行変速機構と、ロータリ6用のロータリ変速機構とを備えている。ミッションケース1からは車輪4及びロータリ6の駆動変速を操作する主操作レバー12が突設されている。
【0009】
ロータリ6の前方には、ゲージ輪13が設けられている。ゲージ輪13はミッションケース1側に取り付けられたブラケット14に、アーム16を介して上下揺動調節可能に支持されている。アーム16にはゲージ輪13の上下揺動調節用のレバー17が設けられている。
【0010】
ミッションケース1の後方側にはハンドルフレーム18を介して、後方斜め上方に向かってハンドル19が取り付けられている。ハンドル19には伝動ケース11内のクラッチの入切を操作するクラッチ操作レバー21が設けられている。
【0011】
図3は本歩行型管理機の要部平断面図である。ロータリ6は、複数の耕耘爪22を備えている。耕耘爪22はロータリ軸3の中央部に取り付けられた耕耘量の少ない内爪22aと、ロータリ軸3の左右両側に取り付けられた耕耘量の多い外爪22bとにより構成されている。
【0012】
ミッションケース1前部の左右の側面側にはそれぞれ、1個づつ内爪22aが配置されている。内爪22a,22aの形状は側面視で略長方形で、背面視ヘの字形のプレートからなり、取付状態で先端部が機体内側に向かって順次傾斜する傾斜面23を形成し、先端がミッションケース1の側面に近接している。上記傾斜面23は図3に図示する例では平坦であるが、僅かに湾曲させてもよい。
【0013】
各内爪22aの機体外側には、先端が機体内側に向かって湾曲した外爪22bが配置されている。そして上記各外爪22bのさらに機体外側には、互いに対向するようにJ字状に湾曲した2個の外爪22b,22bがそれぞれ設けられている。
【0014】
上記の各内爪22a及び各外爪22bはロータリ軸3に軸装されている。このロータリ軸3は両外側の外爪22bを正逆回転させる回転軸3bと、内爪22aを回転軸3bに対して常に反対方向に回転させる反転軸3aとを同軸上に配して構成されている。回転軸3bは、その中央にスプロケット24を軸装し、ミッションケース1内から巻き掛けられるチェーン26を介して全体が一体回転するが、ミッションケース1に対してはスプロケット24両側に回転自在に軸支されたスリーブ状の反転軸3a内に回転自在に挿通して軸支されている。
【0015】
他方スプロケット24の両側には外向きの傘歯車27が一体的に軸装され、上記各反転軸3a内端に形成された内向きの傘歯車28との間にはベベルギア29が両傘歯車27,28と噛み合う状態で軸支して設けられ、回転軸3bの回転に対して反転軸3aは常に逆向きに回転する機構が形成されている。各反転軸3aにはフランジ31を介して3個の内爪22aが等角度に配置されている。
【0016】
図4は本歩行型管理機の要部側面図である。前述のブラケット14はカバーフレーム8に一体的に固定され、左右の内爪22a,22aの間に配置されており、側面視で内爪22aの回転軌跡の一部と重複している。このため内爪22a,22aの回転時、内爪22a,22aの先端側はブラケットの側面に周期的に近接する。図3に示すように、各内爪22aの先端がブラケット14側面に近接している際にも、内爪22aとブラケット14側面との間には先端部から基端部側に向けて順次広くなる空間Sが形成される。
【0017】
ブラケット14の前端32は、図4に示すように側面視で内爪22aの回転軌跡との重複部分が斜め上方に向かう傾斜端をなし、この部分に対し、内爪22aによって掻き揚げられた石等を前方に案内しながら放出する機構となっている。
【0018】
ゲージ輪13のアーム16の基端部と中途部には左右に突出する支点軸33と位置決めピン34がそれぞれ突設されている。これに対し左右のブラケット14には上記支点軸33を回動自在に収容する支点溝36と、上記位置決めピン34を収容し、支点軸33を支点としたアーム16の上下回動を案内する円弧状のガイド溝37とが切抜形成されている。
【0019】
上記位置決めピン34は円形断面の両側を平行に切除した太鼓型断面のものを回動可能に取り付けたもので、ガイド溝37内を移動する際はガイド溝37の溝幅と上記切除面とを対応させ、ガイド溝28内に複数個設けた何れかの円形の位置決め部37aではこれを90°回動させることによりアーム16の位置決め固定を行う。この操作によってゲージ輪13の回動位置の選択ができる。
【0020】
ゲージ輪13は上記のようにしてブラケット14に支持されており、位置決めピン34のガイド溝37内の固定位置を変えることにより、ゲージ輪13の位置をレバー17で上下に調整することができる。このゲージ輪13は耕耘深維持装置であり、上下調整によってロータリ6による耕耘深さを調整できる。なお、耕深維持装置は上記ゲージ輪13に限定されるものではなく、ブラケット14に固定され耕す深さを維持できるものであればよい。
【0021】
本歩行型管理機は以上のように構成されており、車輪4とゲージ輪13を接地させて作業者がハンドル19をもち、エンジン9を作動させ、クラッチ操作レバー21によってエンジン9からトランスミッションに駆動力を伝動させることによって、主操作レバー12により変速操作しながら車輪4の駆動により機体を走行させ、この機体の走行に伴って回転するロータリ6により耕耘作業を行う。
【0022】
通常の耕耘作業では機体を前進させ、耕耘爪22のうち耕耘量の多い外爪22bを機体の進行方向に対して正回転(図1における反時計回りに回転)させ、耕耘量の少ない内爪22aを機体の進行方向に対して逆回転(図4における時計回りに回転)させる。内爪22aの逆回転により、機体のダッシング現象が防止される。
【0023】
また、各内爪22aは基端部から先端部に向かってミッションケース1側面側に傾斜し、先端がミッションケース1側面に近接しているため、ロータリ6中央部での内爪22aの占有率は低くなり、ロータリ3の中央部に迫る位置にまで耕耘量の多い外爪22bを配置できる。このため、外爪22bをロータリ3中央部から左右両側に亘って満遍なく配置することが可能になり、所望の耕耘量が確保される。
【0024】
そして、耕耘作業時の内爪22aの逆回転によって、側面視においてブラケット14と重複しない位置にある内爪22aは、回転に伴いブラケット14の前端32に徐々に近づく。この際ブラケット14の前端32に対向する内爪の対向端38や、外爪22bが石等を掻き揚げ、その一部が内爪22aとブラケット14との間に入り込むが石等は内爪22aの側面と、ブラケット14の側面との間に形成された空間Sから機体外へ円滑に排出される。
【0025】
以上の各種作用によって、耕耘作業時にブラケット14と内爪22aとの間に圃場内の石等が噛み込まれてロータリ6の回転が妨げられ、又は停止させられることが防止されるため、効率の良い耕耘作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】歩行型管理機の側面図である。
【図2】歩行型管理機の平面図である。
【図3】歩行型管理機の要部平断面図である。
【図4】歩行側管理機の要部側面図である。
【符号の説明】
【0027】
6 ロータリ
14 ブラケット
22 耕耘爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘爪(22)を備えたロータリ(6)と、耕耘作業時に耕耘深さを維持する耕深維持装置と、該耕深維持装置を機体側に支持するブラケット(14)とを備え、耕耘爪(22)をブラケット(14)側面側に配置し、ブラケット(14)が側面視で耕耘爪(22)の回転軌跡と重複するように配置された農作業機において、耕耘爪(22)を先端部がブラケット(14)側面に向かって順次接近するように傾斜させた農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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