農作業機
【課題】農作物が搬送部上を転がり落ちることを防止できるとともに、土等を十分に除去できる農作業機を提供する。
【解決手段】農作業機１は、農作物Ｗを掻き込んで後方に送る掻込手段７と、農作物Ｗを上斜め後方に搬送する搬送手段５とを備える。搬送手段５の搬送始端側を掻込手段７の下方に配設する。搬送手段５は、農作物Ｗを上斜め後方に搬送する前低後高の傾斜状の搬送部21を有する。搬送手段５は、搬送部21のうち掻込手段７と対向する部分を振動させる振動部22を有する。
【解決手段】農作業機１は、農作物Ｗを掻き込んで後方に送る掻込手段７と、農作物Ｗを上斜め後方に搬送する搬送手段５とを備える。搬送手段５の搬送始端側を掻込手段７の下方に配設する。搬送手段５は、農作物Ｗを上斜め後方に搬送する前低後高の傾斜状の搬送部21を有する。搬送手段５は、搬送部21のうち掻込手段７と対向する部分を振動させる振動部22を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、農作物が搬送部上を転がり落ちることを防止できるとともに、土等を十分に除去できる農作業機に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、例えばいも類等の農作物を上斜め後方に搬送する前低後高の傾斜状の搬送部と、搬送部の往路部分を振動させる複数のカム軸からなる振動部と、搬送部から搬出される農作物を収容する収容部とを備えた農作業機が知られている（例えば、特許文献１参照）。
【特許文献１】特開平２−１３２０１０号公報（第４図）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
しかしながら、上記従来の農作業機では、例えば農作物の種類等によっては、振動部により搬送部が振動すると、農作物が搬送部上を転がり落ちる。また、農作物が転がり落ちないように、搬送部の振動を小さくすると、土等の除去が不十分となる。
【０００４】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、農作物が搬送部上を転がり落ちることを防止できるとともに、土等を十分に除去できる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
請求項１記載の農作業機は、農作物を掻き込んで後方に送る掻込手段と、この掻込手段の下方に搬送始端側が配設され、農作物を上斜め後方に搬送する搬送手段とを備え、前記搬送手段は、農作物を上斜め後方に搬送する前低後高の傾斜状の搬送部と、この搬送部のうち前記掻込手段と対向する部分を振動させる振動部とを有するものである。
【０００６】
請求項２記載の農作業機は、請求項１記載の農作業機において、搬送部は、互いに離間対向する回行可能な左右対をなす無端体と、これら両無端体間に架設され、回行方向に間隔をおいて並ぶ複数の搬送体とを有し、振動部は、前記無端体の往路部の上方に配設された上側回転体と、前記無端体の往路部の下方に配設され、前記上側回転体との間で前記無端体の往路部を挟持して曲げる下側回転体とを有するものである。
【発明の効果】
【０００７】
本発明によれば、搬送手段の搬送部のうち掻込手段と対向する部分が振動して農作物が搬送部上を転がり落ちようとしても、掻込手段にてその農作物の転げ落ちを防ぐことができるため、農作物が搬送部上を転がり落ちることを防止できるとともに、土等を十分に除去できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００８】
本発明の農作業機の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【０００９】
図１および図２において、１は農作業機で、この農作業機１は、圃場上を前方（図中、矢印方向）に移動しながら、圃場の畝ａの土中で生育した収穫物である農作物Ｗを畝ａの土中から取り上げて、容器であるコンテナｂ内に収容する自走式の収穫機である。なお、圃場の農作物Ｗは、例えば畝ａに生育した玉葱である。
【００１０】
農作業機１は、クローラ部３を左右両側の下部に有する自走式の作業機本体２を備えている。
【００１１】
作業機本体２には、持上コンベヤ装置等にて構成された傾斜状の搬送手段５が搬送手段５の搬送終端側の左右方向の軸６を中心として搬送始端側が昇降するように上下回動可能に設けられている。搬送手段５の搬送始端側には、掻込コンベヤ装置等にて構成された掻込手段７が設けられている。
【００１２】
また、作業機本体２と搬送手段５との間には、搬送手段５を軸６を中心として回動させて搬送手段５の傾斜角度を設定する角度設定手段８が設けられている。この角度設定手段８は、シリンダ本体９およびこのシリンダ本体９内に出入りするロッド10を有するシリンダ装置11にて構成され、ロッド10の先端部が搬送手段５の被取付部5aに回動可動に取り付けられ、シリンダ本体９の基端部が作業機本体２の被取付部2aに回動可能に取り付けられている。
【００１３】
掻込手段７は、圃場の農作物Ｗを掻き込んで後方に送り搬送手段５の搬送始端部とともに農作物Ｗを上斜め後方に搬送するもので、搬送手段５の搬送始端部の上方に配設されている。
【００１４】
掻込手段７は、互いに離間対向する回行可能な左右対をなす無端体であるチェーン13を有している。チェーン13は、複数の回転体であるスプロケット14に掛け渡され、エンジン等の動力源に接続された動力伝達手段15からの動力に基づいて所定方向に略楕円の軌跡を描くように回行する。
【００１５】
両チェーン13間には、チェーン13の回行方向に等間隔をおいて並ぶ複数の支持体16が架設されている。各支持体16には、チェーン13の回行時にチェーン13とともに前後方向にやや長手状の略楕円を描くように回行しながら、農作物Ｗを掻き込んで後方に送る弾性変形可能な板状の掻込弾性体である掻込弾性板17が取り付けられている。掻込弾性板17の先端部には、複数の切欠凹部18が形成されている。
【００１６】
搬送手段５は、掻込手段７の掻込弾性板17との協働により農作物Ｗを畝ａの土中から掘り取って受け入れこの受け入れた農作物Ｗを上斜め後方に所望位置まで載置搬送するものである。
【００１７】
搬送手段５は、掻込弾性板17との協働により農作物Ｗを受け入れて上斜め後方に載置搬送する前低後高の傾斜状の搬送部21と、この搬送部21のうち掻込手段７の下方に位置してこの掻込弾性板17の先端部と近接対向する部分である搬送始端部を上下に振動させる振動部22とを有している。
【００１８】
搬送部21は、図３および図４に示すように、互いに離間対向する回行可能な左右対をなす無端体であるチェーン23を有している。チェーン23は、複数の回転体であるスプロケット24に掛け渡されかつ支持体25にて支持され、エンジン等の動力源に接続された動力伝達手段20からの動力に基づいて所定方向に回行する。
【００１９】
両チェーン23間には、チェーン23の回行方向に等間隔をおいて並ぶ左右方向に細長い棒状の複数の搬送体26が架設されている。すなわち、両チェーン23間には、チェーン23の回行時にチェーン23とともに回行しながら、掻込弾性板17からの農作物Ｗを受け入れて上斜め後方に載置搬送する複数の搬送体26が設けられている。また、回行方向に隣り合う搬送体26間には間隙27があり、農作物Ｗの搬送時にその間隙27から土、茎葉くず等が圃場上に落下する。
【００２０】
なお、図３に示されるように、チェーン23は互いに回動自在に連結された複数のチェーン構成部材28にて構成されており、所定の一のチェーン構成部材28には１本の搬送体26の端部が連結され、所定の他のチェーン構成部材28には２本の搬送体26の端部が連結されている。
【００２１】
振動部22は、搬送部21のうち掻込手段７の下方に位置する搬送始端部の一部を上下に振動させるもので、図３および図４に示すように、搬送部21の左右の各チェーン23の上側部分である往路部23aの上方に左右方向の軸31aを中心として回転可能に配設された上側回転体31と、各チェーン23の往路部23aの下方に左右方向の軸32aを中心として回転可能に配設され上側回転体31との間でチェーン23の往路部23aを上下から挟持して往路部23aの一部が凹凸状になるように往路部23aを折り曲げる下側回転体32とを有している。つまりこれら上側回転体31と下側回転体32とでチェーン23の往路部23aが挟持されて凹凸状になると、その往路部23aの凹凸状の部分では搬送体26が上下動し、この搬送体26の上下動により搬送部21の搬送始端部の一部が上下に振動する。
【００２２】
上側回転体31は、例えばスプロケットにて構成されている。そして、上側回転体31の下部がチェーン23の往路部23aに係合して接触し、この上側回転体31はチェーン23に追従して従動回転する。
【００２３】
下側回転体32は、上側回転体31より前方に配設され上側回転体31との間でチェーン23の往路部23aを挟持して曲げる前下側回転部材33と、上側回転体31より後方に配設され上側回転体31との間でチェーン23の往路部23aを挟持して曲げる後下側回転部材34とにて構成されている。そして、下側回転体32が前後の下側回転部材33，34にて構成されているため、各チェーン23の往路部23aがそれぞれ２箇所で挟持されて凹凸状になり、この凹凸状の部分で搬送体26が上下動し、この搬送体26の上下動により搬送部21の搬送始端部の一部が上下振動する。
【００２４】
前下側回転部材33および後下側回転部材34は、いずれも同じボールベアリングにて構成されている。そして、各下側回転部材33，34の上部がチェーン23の往路部23aに係合して接触し、この各下側回転部材33，34はチェーン23に追従して従動回転する。
【００２５】
なお、１つの上側回転体（スプロケット）31とこの上側回転体31より外径寸法が小さい２つの前後の下側回転部材（ボールベアリング）33，34とにて、振動回転部35が構成されている。この振動回転部35は搬送部21の搬送始端部の左右両側にそれぞれ配設されている。
【００２６】
また、前低後高の傾斜状の搬送部21の側方部は側板41にて覆われ、側板41の前端部にはガイド板42が取り付けられ、このガイド板42の案内作用により作業機本体２が畝ａに沿って移動するようになっている。
【００２７】
また、図１および図２に示されるように、作業機本体２には、搬送手段５の搬送部21の搬送終端部から搬出される農作物Ｗを受けて搬送して製品コンテナであるコンテナｂ内に落下させるスクリーン手段44が設けられている。スクリーン手段44は、前後方向長手状の複数の棒状部材45にて構成されている。また、搬送手段５の搬送部21上には、農作物Ｗをスクリーン手段44側に向けて案内する案内手段である案内板46が設けられている。
【００２８】
さらに、作業機本体２にはコンテナ載置台51および空コンテナ載置台52が設けられ、コンテナ載置台51にはコンテナｂ内が載置され、空コンテナ載置台52には空のコンテナｂが載置されている。
【００２９】
また、作業機本体２には作業椅子55およびステップ台56が設けられている。作業椅子55に座った作業者は、搬送手段５の搬送部21にて搬送されてきた茎葉くず、腐った農作物Ｗ等を選別して例えばステップ台56上に載せたコンテナｂ内に入れる。なお、作業者は、茎葉くず等をコンテナｂ内には入れず、圃場上に捨てるようにしてもよい。
【００３０】
さらに、作業機本体２にはハンドル58および操作パネル59等が設けられている。操作パネル59は、例えば農作物Ｗが収容されたコンテナｂをコンテナ載置台51から降ろす作業をする作業者によって操作される。
【００３１】
次に、上記農作業機１の作用等を説明する。
【００３２】
クローラ部３の作動によって作業機本体２が圃場上を畝ａに沿って移動すると、圃場の農作物Ｗは、掻込手段７の掻込弾性板17にて掻き込まれて後方に送られ、搬送手段５の搬送部21の搬送体26上に載って上斜め後方に搬送される。
【００３３】
すなわち、掻込手段７の掻込弾性板17と搬送手段５の搬送部21の搬送体26との両方の力によって圃場の農作物Ｗが圃場の畝ａの土中から持ち上げられるように掘り取られ、この掘り取られた農作物Ｗは、搬送部21の搬送体26にて上斜め後方に向けて載置搬送される。
【００３４】
この際、搬送手段５の搬送部21のうち掻込弾性板17の先端部と近接対向する部分の搬送体26は、振動部22の作用によって上下に振動する。
【００３５】
このため、農作物Ｗに付着した土や、農作物Ｗとともに搬送部21上に載置された土や土塊、茎葉くず等は、農作物Ｗから分離除去され、隣り合う搬送体26間の間隙27から圃場に落下する。
【００３６】
また、搬送部21の掻込弾性板17と対向する部分の振動、つまり搬送部21の搬送始端側に位置する搬送体26の振動に基づいて農作物Ｗが搬送部21上を転げ落ちようとしても、農作物Ｗは、掻込弾性板17との接触により移動規制されるため、搬送部21上を転がり落ちることはない。
【００３７】
また、農作物Ｗは、搬送手段５の搬送部21の搬送体26にて載置搬送された後、スクリーン手段44上を経て、コンテナｂ内に落下して収容される。
【００３８】
そして、このような農作業機１によれば、搬送手段５の搬送部21のうち掻込手段７と対向する部分が振動して農作物Ｗが搬送部21上を転がり落ちようとしても、掻込手段７にてその農作物Ｗの転げ落ちを防ぐことができるため、農作物Ｗが搬送部21上を下方側へ転がり落ちることを防止でき、農作物Ｗの傷付き等を防ぐことができるとともに、従来に比べて振動幅を大きくすることができ、土や茎葉くず等を十分に除去できる。
【００３９】
なお、振動部22の振動回転部35が１つの上側回転体（スプロケット）31と、下側回転体32を構成する前後２つの下側回転部材（ボールベアリング）33，34とを有する構成には限定されず、例えば図５に示すように、上側回転体31を構成する前後２つの上側回転部材（ボールベアリング）61，62と、１つの下側回転体（スプロケット）32とを有する構成等でもよい。
【００４０】
また、例えば図６に示すように、振動部22が周縁の一部に凸部63を形成したカム64を有する構成等でもよい。
【００４１】
さらに、掻込手段７の掻込弾性体は、ゴム製或いは樹脂製の板状の掻込弾性板17には限定されず、例えば複数本の掻込弾性棒からなるもの等でもよい。
【００４２】
また、農作業機１による収穫対象物である農作物Ｗは、圃場の畝ａ上に地干された玉葱でもよく、また玉葱には限らず、じゃがいも、さつまいも等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【００４３】
【図１】本発明の一実施の形態に係る農作業機の側面図である。
【図２】同上農作業機の平面図である。
【図３】同上農作業機の要部側面図である。
【図４】同上農作業機の要部平面図である。
【図５】本発明の他の実施の形態に係る農作業機の要部側面図である。
【図６】本発明のさらに他の実施の形態に係る農作業機の要部側面図である。
【符号の説明】
【００４４】
１ 農作業機
５ 搬送手段
７ 掻込手段
21 搬送部
22 振動部
23 無端体であるチェーン
23a 往路部
26 搬送体
31 上側回転体
32 下側回転体
Ｗ 農作物
【技術分野】
【０００１】
本発明は、農作物が搬送部上を転がり落ちることを防止できるとともに、土等を十分に除去できる農作業機に関するものである。
【背景技術】
【０００２】
従来、例えばいも類等の農作物を上斜め後方に搬送する前低後高の傾斜状の搬送部と、搬送部の往路部分を振動させる複数のカム軸からなる振動部と、搬送部から搬出される農作物を収容する収容部とを備えた農作業機が知られている（例えば、特許文献１参照）。
【特許文献１】特開平２−１３２０１０号公報（第４図）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００３】
しかしながら、上記従来の農作業機では、例えば農作物の種類等によっては、振動部により搬送部が振動すると、農作物が搬送部上を転がり落ちる。また、農作物が転がり落ちないように、搬送部の振動を小さくすると、土等の除去が不十分となる。
【０００４】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、農作物が搬送部上を転がり落ちることを防止できるとともに、土等を十分に除去できる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００５】
請求項１記載の農作業機は、農作物を掻き込んで後方に送る掻込手段と、この掻込手段の下方に搬送始端側が配設され、農作物を上斜め後方に搬送する搬送手段とを備え、前記搬送手段は、農作物を上斜め後方に搬送する前低後高の傾斜状の搬送部と、この搬送部のうち前記掻込手段と対向する部分を振動させる振動部とを有するものである。
【０００６】
請求項２記載の農作業機は、請求項１記載の農作業機において、搬送部は、互いに離間対向する回行可能な左右対をなす無端体と、これら両無端体間に架設され、回行方向に間隔をおいて並ぶ複数の搬送体とを有し、振動部は、前記無端体の往路部の上方に配設された上側回転体と、前記無端体の往路部の下方に配設され、前記上側回転体との間で前記無端体の往路部を挟持して曲げる下側回転体とを有するものである。
【発明の効果】
【０００７】
本発明によれば、搬送手段の搬送部のうち掻込手段と対向する部分が振動して農作物が搬送部上を転がり落ちようとしても、掻込手段にてその農作物の転げ落ちを防ぐことができるため、農作物が搬送部上を転がり落ちることを防止できるとともに、土等を十分に除去できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【０００８】
本発明の農作業機の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【０００９】
図１および図２において、１は農作業機で、この農作業機１は、圃場上を前方（図中、矢印方向）に移動しながら、圃場の畝ａの土中で生育した収穫物である農作物Ｗを畝ａの土中から取り上げて、容器であるコンテナｂ内に収容する自走式の収穫機である。なお、圃場の農作物Ｗは、例えば畝ａに生育した玉葱である。
【００１０】
農作業機１は、クローラ部３を左右両側の下部に有する自走式の作業機本体２を備えている。
【００１１】
作業機本体２には、持上コンベヤ装置等にて構成された傾斜状の搬送手段５が搬送手段５の搬送終端側の左右方向の軸６を中心として搬送始端側が昇降するように上下回動可能に設けられている。搬送手段５の搬送始端側には、掻込コンベヤ装置等にて構成された掻込手段７が設けられている。
【００１２】
また、作業機本体２と搬送手段５との間には、搬送手段５を軸６を中心として回動させて搬送手段５の傾斜角度を設定する角度設定手段８が設けられている。この角度設定手段８は、シリンダ本体９およびこのシリンダ本体９内に出入りするロッド10を有するシリンダ装置11にて構成され、ロッド10の先端部が搬送手段５の被取付部5aに回動可動に取り付けられ、シリンダ本体９の基端部が作業機本体２の被取付部2aに回動可能に取り付けられている。
【００１３】
掻込手段７は、圃場の農作物Ｗを掻き込んで後方に送り搬送手段５の搬送始端部とともに農作物Ｗを上斜め後方に搬送するもので、搬送手段５の搬送始端部の上方に配設されている。
【００１４】
掻込手段７は、互いに離間対向する回行可能な左右対をなす無端体であるチェーン13を有している。チェーン13は、複数の回転体であるスプロケット14に掛け渡され、エンジン等の動力源に接続された動力伝達手段15からの動力に基づいて所定方向に略楕円の軌跡を描くように回行する。
【００１５】
両チェーン13間には、チェーン13の回行方向に等間隔をおいて並ぶ複数の支持体16が架設されている。各支持体16には、チェーン13の回行時にチェーン13とともに前後方向にやや長手状の略楕円を描くように回行しながら、農作物Ｗを掻き込んで後方に送る弾性変形可能な板状の掻込弾性体である掻込弾性板17が取り付けられている。掻込弾性板17の先端部には、複数の切欠凹部18が形成されている。
【００１６】
搬送手段５は、掻込手段７の掻込弾性板17との協働により農作物Ｗを畝ａの土中から掘り取って受け入れこの受け入れた農作物Ｗを上斜め後方に所望位置まで載置搬送するものである。
【００１７】
搬送手段５は、掻込弾性板17との協働により農作物Ｗを受け入れて上斜め後方に載置搬送する前低後高の傾斜状の搬送部21と、この搬送部21のうち掻込手段７の下方に位置してこの掻込弾性板17の先端部と近接対向する部分である搬送始端部を上下に振動させる振動部22とを有している。
【００１８】
搬送部21は、図３および図４に示すように、互いに離間対向する回行可能な左右対をなす無端体であるチェーン23を有している。チェーン23は、複数の回転体であるスプロケット24に掛け渡されかつ支持体25にて支持され、エンジン等の動力源に接続された動力伝達手段20からの動力に基づいて所定方向に回行する。
【００１９】
両チェーン23間には、チェーン23の回行方向に等間隔をおいて並ぶ左右方向に細長い棒状の複数の搬送体26が架設されている。すなわち、両チェーン23間には、チェーン23の回行時にチェーン23とともに回行しながら、掻込弾性板17からの農作物Ｗを受け入れて上斜め後方に載置搬送する複数の搬送体26が設けられている。また、回行方向に隣り合う搬送体26間には間隙27があり、農作物Ｗの搬送時にその間隙27から土、茎葉くず等が圃場上に落下する。
【００２０】
なお、図３に示されるように、チェーン23は互いに回動自在に連結された複数のチェーン構成部材28にて構成されており、所定の一のチェーン構成部材28には１本の搬送体26の端部が連結され、所定の他のチェーン構成部材28には２本の搬送体26の端部が連結されている。
【００２１】
振動部22は、搬送部21のうち掻込手段７の下方に位置する搬送始端部の一部を上下に振動させるもので、図３および図４に示すように、搬送部21の左右の各チェーン23の上側部分である往路部23aの上方に左右方向の軸31aを中心として回転可能に配設された上側回転体31と、各チェーン23の往路部23aの下方に左右方向の軸32aを中心として回転可能に配設され上側回転体31との間でチェーン23の往路部23aを上下から挟持して往路部23aの一部が凹凸状になるように往路部23aを折り曲げる下側回転体32とを有している。つまりこれら上側回転体31と下側回転体32とでチェーン23の往路部23aが挟持されて凹凸状になると、その往路部23aの凹凸状の部分では搬送体26が上下動し、この搬送体26の上下動により搬送部21の搬送始端部の一部が上下に振動する。
【００２２】
上側回転体31は、例えばスプロケットにて構成されている。そして、上側回転体31の下部がチェーン23の往路部23aに係合して接触し、この上側回転体31はチェーン23に追従して従動回転する。
【００２３】
下側回転体32は、上側回転体31より前方に配設され上側回転体31との間でチェーン23の往路部23aを挟持して曲げる前下側回転部材33と、上側回転体31より後方に配設され上側回転体31との間でチェーン23の往路部23aを挟持して曲げる後下側回転部材34とにて構成されている。そして、下側回転体32が前後の下側回転部材33，34にて構成されているため、各チェーン23の往路部23aがそれぞれ２箇所で挟持されて凹凸状になり、この凹凸状の部分で搬送体26が上下動し、この搬送体26の上下動により搬送部21の搬送始端部の一部が上下振動する。
【００２４】
前下側回転部材33および後下側回転部材34は、いずれも同じボールベアリングにて構成されている。そして、各下側回転部材33，34の上部がチェーン23の往路部23aに係合して接触し、この各下側回転部材33，34はチェーン23に追従して従動回転する。
【００２５】
なお、１つの上側回転体（スプロケット）31とこの上側回転体31より外径寸法が小さい２つの前後の下側回転部材（ボールベアリング）33，34とにて、振動回転部35が構成されている。この振動回転部35は搬送部21の搬送始端部の左右両側にそれぞれ配設されている。
【００２６】
また、前低後高の傾斜状の搬送部21の側方部は側板41にて覆われ、側板41の前端部にはガイド板42が取り付けられ、このガイド板42の案内作用により作業機本体２が畝ａに沿って移動するようになっている。
【００２７】
また、図１および図２に示されるように、作業機本体２には、搬送手段５の搬送部21の搬送終端部から搬出される農作物Ｗを受けて搬送して製品コンテナであるコンテナｂ内に落下させるスクリーン手段44が設けられている。スクリーン手段44は、前後方向長手状の複数の棒状部材45にて構成されている。また、搬送手段５の搬送部21上には、農作物Ｗをスクリーン手段44側に向けて案内する案内手段である案内板46が設けられている。
【００２８】
さらに、作業機本体２にはコンテナ載置台51および空コンテナ載置台52が設けられ、コンテナ載置台51にはコンテナｂ内が載置され、空コンテナ載置台52には空のコンテナｂが載置されている。
【００２９】
また、作業機本体２には作業椅子55およびステップ台56が設けられている。作業椅子55に座った作業者は、搬送手段５の搬送部21にて搬送されてきた茎葉くず、腐った農作物Ｗ等を選別して例えばステップ台56上に載せたコンテナｂ内に入れる。なお、作業者は、茎葉くず等をコンテナｂ内には入れず、圃場上に捨てるようにしてもよい。
【００３０】
さらに、作業機本体２にはハンドル58および操作パネル59等が設けられている。操作パネル59は、例えば農作物Ｗが収容されたコンテナｂをコンテナ載置台51から降ろす作業をする作業者によって操作される。
【００３１】
次に、上記農作業機１の作用等を説明する。
【００３２】
クローラ部３の作動によって作業機本体２が圃場上を畝ａに沿って移動すると、圃場の農作物Ｗは、掻込手段７の掻込弾性板17にて掻き込まれて後方に送られ、搬送手段５の搬送部21の搬送体26上に載って上斜め後方に搬送される。
【００３３】
すなわち、掻込手段７の掻込弾性板17と搬送手段５の搬送部21の搬送体26との両方の力によって圃場の農作物Ｗが圃場の畝ａの土中から持ち上げられるように掘り取られ、この掘り取られた農作物Ｗは、搬送部21の搬送体26にて上斜め後方に向けて載置搬送される。
【００３４】
この際、搬送手段５の搬送部21のうち掻込弾性板17の先端部と近接対向する部分の搬送体26は、振動部22の作用によって上下に振動する。
【００３５】
このため、農作物Ｗに付着した土や、農作物Ｗとともに搬送部21上に載置された土や土塊、茎葉くず等は、農作物Ｗから分離除去され、隣り合う搬送体26間の間隙27から圃場に落下する。
【００３６】
また、搬送部21の掻込弾性板17と対向する部分の振動、つまり搬送部21の搬送始端側に位置する搬送体26の振動に基づいて農作物Ｗが搬送部21上を転げ落ちようとしても、農作物Ｗは、掻込弾性板17との接触により移動規制されるため、搬送部21上を転がり落ちることはない。
【００３７】
また、農作物Ｗは、搬送手段５の搬送部21の搬送体26にて載置搬送された後、スクリーン手段44上を経て、コンテナｂ内に落下して収容される。
【００３８】
そして、このような農作業機１によれば、搬送手段５の搬送部21のうち掻込手段７と対向する部分が振動して農作物Ｗが搬送部21上を転がり落ちようとしても、掻込手段７にてその農作物Ｗの転げ落ちを防ぐことができるため、農作物Ｗが搬送部21上を下方側へ転がり落ちることを防止でき、農作物Ｗの傷付き等を防ぐことができるとともに、従来に比べて振動幅を大きくすることができ、土や茎葉くず等を十分に除去できる。
【００３９】
なお、振動部22の振動回転部35が１つの上側回転体（スプロケット）31と、下側回転体32を構成する前後２つの下側回転部材（ボールベアリング）33，34とを有する構成には限定されず、例えば図５に示すように、上側回転体31を構成する前後２つの上側回転部材（ボールベアリング）61，62と、１つの下側回転体（スプロケット）32とを有する構成等でもよい。
【００４０】
また、例えば図６に示すように、振動部22が周縁の一部に凸部63を形成したカム64を有する構成等でもよい。
【００４１】
さらに、掻込手段７の掻込弾性体は、ゴム製或いは樹脂製の板状の掻込弾性板17には限定されず、例えば複数本の掻込弾性棒からなるもの等でもよい。
【００４２】
また、農作業機１による収穫対象物である農作物Ｗは、圃場の畝ａ上に地干された玉葱でもよく、また玉葱には限らず、じゃがいも、さつまいも等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【００４３】
【図１】本発明の一実施の形態に係る農作業機の側面図である。
【図２】同上農作業機の平面図である。
【図３】同上農作業機の要部側面図である。
【図４】同上農作業機の要部平面図である。
【図５】本発明の他の実施の形態に係る農作業機の要部側面図である。
【図６】本発明のさらに他の実施の形態に係る農作業機の要部側面図である。
【符号の説明】
【００４４】
１ 農作業機
５ 搬送手段
７ 掻込手段
21 搬送部
22 振動部
23 無端体であるチェーン
23a 往路部
26 搬送体
31 上側回転体
32 下側回転体
Ｗ 農作物
【特許請求の範囲】
【請求項１】
農作物を掻き込んで後方に送る掻込手段と、
この掻込手段の下方に搬送始端側が配設され、農作物を上斜め後方に搬送する搬送手段とを備え、
前記搬送手段は、
農作物を上斜め後方に搬送する前低後高の傾斜状の搬送部と、
この搬送部のうち前記掻込手段と対向する部分を振動させる振動部とを有する
ことを特徴とする農作業機。
【請求項２】
搬送部は、
互いに離間対向する回行可能な左右対をなす無端体と、
これら両無端体間に架設され、回行方向に間隔をおいて並ぶ複数の搬送体とを有し、
振動部は、
前記無端体の往路部の上方に配設された上側回転体と、
前記無端体の往路部の下方に配設され、前記上側回転体との間で前記無端体の往路部を挟持して曲げる下側回転体とを有する
ことを特徴とする請求項１記載の農作業機。
【請求項１】
農作物を掻き込んで後方に送る掻込手段と、
この掻込手段の下方に搬送始端側が配設され、農作物を上斜め後方に搬送する搬送手段とを備え、
前記搬送手段は、
農作物を上斜め後方に搬送する前低後高の傾斜状の搬送部と、
この搬送部のうち前記掻込手段と対向する部分を振動させる振動部とを有する
ことを特徴とする農作業機。
【請求項２】
搬送部は、
互いに離間対向する回行可能な左右対をなす無端体と、
これら両無端体間に架設され、回行方向に間隔をおいて並ぶ複数の搬送体とを有し、
振動部は、
前記無端体の往路部の上方に配設された上側回転体と、
前記無端体の往路部の下方に配設され、前記上側回転体との間で前記無端体の往路部を挟持して曲げる下側回転体とを有する
ことを特徴とする請求項１記載の農作業機。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【公開番号】特開２００９−１８９３３６（Ｐ２００９−１８９３３６Ａ）
【公開日】平成２１年８月２７日（２００９．８．２７）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００８−３５８３９（Ｐ２００８−３５８３９）
【出願日】平成２０年２月１８日（２００８．２．１８）
【出願人】（０００１８８００９）松山株式会社 (285)
【出願人】（０００００１０５２）株式会社クボタ (4,415)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２１年８月２７日（２００９．８．２７）
【国際特許分類】
【出願日】平成２０年２月１８日（２００８．２．１８）
【出願人】（０００１８８００９）松山株式会社 (285)
【出願人】（０００００１０５２）株式会社クボタ (4,415)
【Ｆターム（参考）】
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