説明

農作業機

【課題】石等の異物の噛み込みによる弾性板の破損を抑制できる農作業機を提供する。
【解決手段】農作業機1は、フレーム部6を有する作業機本体2を備える。作業機本体2には、回転しながら耕耘作業をする耕耘体31を設ける。農作業機1は、耕耘体31の上方部を覆う弾性板36を備える。フレーム部6には、弾性板36の下面を部分的に支持する支持体37を脱着可能に取り付ける。弾性板36の少なくとも前端部が支持体37に対してこの支持体37上を前後方向にスライド移動可能となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石等の異物の噛み込みによる弾性板の破損を抑制できる農作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に記載された農作業機が知られている。
【0003】
この従来の農作業機は、トラクタ等の走行車の後部に連結される作業機本体と、作業機本体に回転可能に設けられ回転しながら耕耘作業をするロータリ式の耕耘体と、耕耘体の上方部を覆うシールドカバーとを備えている。そして、シールドカバーの下面には、ゴムカバーである弾性板が貼り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−8201号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の農作業機では、弾性板がシールドカバーの下面に貼り付けられた構成であるため、例えば石等の異物がシールドカバーと耕耘体との間に噛み込み、この異物の噛み込みにより弾性板が破損するおそれがある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、石等の異物の噛み込みによる弾性板の破損を抑制できる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の農作業機は、フレーム部を有する作業機本体と、この作業機本体に回転可能に設けられ、回転しながら耕耘作業をする耕耘体と、この耕耘体の上方部を覆う弾性板と、前記フレーム部に取り付けられ、前記弾性板の下面を部分的に支持する支持体とを備え、前記弾性板の少なくとも一部が、前記支持体に対して移動可能となっているものである。
【0008】
請求項2記載の農作業機は、請求項1記載の農作業機において、弾性板の少なくとも前端部が、支持体に対してこの支持体上を前後方向にスライド移動可能となっているものである。
【0009】
請求項3記載の農作業機は、請求項2記載の農作業機において、作業機本体のフレーム部は、支持体が取り付けられた被取付部分を有し、弾性板は、少なくとも前端部に前後方向長手状の長孔部を有し、前記被取付部分が前記長孔部に遊挿されているものである。
【0010】
請求項4記載の農作業機は、請求項1ないし3のいずれか一記載の農作業機において、支持体は、互いに間隔をおいて左右方向に並ぶ複数の支持部材にて構成されているものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によれば、弾性板の少なくとも一部が支持体に対して移動可能となっているため、石等の異物が弾性板と耕耘体との間に噛み込みにくく、石等の異物の噛み込みによる弾性板の破損を抑制できる。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、弾性板の少なくとも前端部が支持体に対してこの支持体上を前後方向にスライド移動可能となっているため、石等の異物の噛み込みによる弾性板の破損を適切に抑制できる。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、作業機本体のフレーム部の被取付部分が弾性板の長孔部に遊挿されているため、被取付部分が長孔部内において弾性板に対して相対的に移動でき、石等の異物の噛み込みによる弾性板の破損を効果的に抑制できる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、互いに間隔をおいて左右方向に並ぶ複数の支持部材にて弾性板の下面を部分的に支持できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態に係る農作業機の側面図である。
【図2】同上農作業機のフレーム部の平面図である。
【図3】同上農作業機のフレーム部の側面図である。
【図4】同上農作業機の弾性板の平面図である。
【図5】同上農作業機の支持部材の側面図および平面図である。
【図6】同上農作業機の要部断面図である。
【図7】同上農作業機の要部平面図である。
【図8】同上農作業機の作用を説明するための側面図である。
【図9】(a)および(b)は同上農作業機の作用を説明するための要部断面図である。
【図10】同上農作業機の作用を説明するための側面図である。
【図11】本発明の他の実施の形態に係る農作業機の弾性板の平面図である。
【図12】同上農作業機のフレーム部の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の農作業機の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1において、1は農作業機で、この農作業機1は、走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結され、トラクタの走行により圃場を前方(図1中、左方向)に移動しながら耕耘整地作業等を行なうものである。
【0018】
農作業機1は、図示しないトラクタが後部に有する3点リンクヒッチ部(作業機昇降支持部)に連結された作業機本体2を備えている。
【0019】
作業機本体2は、トラクタの3点リンクヒッチ部に連結された走行車連結部であるトラクタ連結部(図示せず)を有し、このトラクタ連結部は中央のトップマストおよび左右1対のロワアーム等にて構成されている。
【0020】
また、作業機本体2は、左右方向長手状で断面略円形状のフレームパイプ部4を有し、このフレームパイプ部4の長手方向中央部にはミッションケース等の軸保持部が設けられている。この図示しない軸保持部にはトラクタからの動力を入力する略前後方向の入力軸が回転可能に軸支され、この入力軸はトラクタのPTO軸に動力伝達手段を介して接続されている。
【0021】
さらに、作業機本体2は、フレームパイプ部4の長手方向一端部である左端部に設けられた伝動ケース部であるチェーンケース部5と、フレームパイプ部4の長手方向他端部である右端部に設けられた支持部であるブラケット部(図示せず)とを有している。
【0022】
また、作業機本体2は、チェーンケース部5の上下方向中間部とブラケット部の上下方向中間部とに架設されたフレーム部6を有している。
【0023】
フレーム部6は、図2および図3に示されるように、例えば枠状に形成されたもので、すなわち例えば平面視で左右方向長手状の略矩形環状をなすものである。つまり、フレーム部6は、互いに離間対向する前後方向長手状の左右1対の側板フレーム11と、両側板フレーム11の前端部同士を連結する左右方向長手状の前フレーム12と、両側板フレーム11の後端部同士を連結する左右方向長手状の後フレーム13とを有している。
【0024】
前フレーム12は、左右方向長手状で断面略矩形状の筒状部16を有し、この筒状部16の互いに間隔をおいて左右方向に並ぶ複数箇所には、略円筒状の被取付部分である雌ねじ部17が固設されている。つまり、前フレーム12は、互いに間隔をおいて左右方向に並ぶ複数のカラー等の雌ねじ部17を有し、各雌ねじ部17の内周面にねじ溝18が形成され、各雌ねじ部17の下端部は筒状部16の下面から下方に向って突出している(図6参照)。
【0025】
後フレーム13は、複数箇所で折り曲げられた左右方向長手状の板状部21を有し、この板状部21の後端部の互いに間隔をおいて左右方向に並ぶ複数箇所には、略円形状の取付用孔部22が形成されている。つまり、後フレーム13は、前フレーム12の雌ねじ部17に対応して位置し互いに間隔をおいて左右方向に並ぶ複数の取付用孔部22を有している。
【0026】
また一方、農作業機1は、図1に示されるように、作業機本体2に回転可能に設けられ所定方向(例えばアップカット方向またはダウンカット方向)に回転しながら耕耘作業をするロータリ式の耕耘体31と、作業機本体2に上下方向に回動可能に設けられ耕耘体31の後方で整地作業をする略板状の整地体32とを備えている。
【0027】
耕耘体31は、チェーンケース部5の下端部とブラケット部の下端部とに架設された左右方向の回転軸33を有し、この回転軸33にはこの回転軸33とともに回転しながら耕耘作業をする複数の耕耘爪(図示せず)が取り付けられている。
【0028】
なお、耕耘体31の回転軸33には入力軸からの動力を伝達する動力伝達手段(図示せず)が接続されており、この動力伝達手段はフレームパイプ部4内の伝動シャフト、チェーンケース部5内のチェーンおよびスプロケット等にて構成されている。
【0029】
そして、耕耘体31の上方部が、前後方向中央側が上方に向って膨出した略湾曲面状のゴムカバー等の弾性板36にて覆われている。つまり、農作業機1は、図1に示されるように、耕耘体31の上方部を覆うことで耕耘体31にて跳ね上げられる土の上方への飛散を防止する弾性変形可能なゴム製の弾性板36と、作業機本体2のフレーム部6に脱着可能に取り付けられ弾性板36の下面を弾性板36が下方に撓まないように部分的に支持する金属製の支持体37とを備えている。
【0030】
弾性板36は、例えば鉄板等に比べて土が付着しにくい比較的硬質な合成ゴム板からなるもので、図4に示されるように、平面視で左右方向長手状の略矩形板状をなすものである。弾性板36の前端部の互いに間隔をおいて左右方向に並ぶ複数箇所には、前後方向長手状の長孔部38が形成されている。弾性板36の後端部の互いに間隔をおいて左右方向に並ぶ複数箇所には、長孔部38に対応して対応して位置する略円形状の取付用孔部39が形成されている。
【0031】
支持体37は、互いに間隔をおいて左右方向に並ぶ前後方向長手状で板状の複数の押え金具等の支持部材41にて構成されている。各支持部材41は複数箇所で折り曲げられた長手状の金属板からなるもので、各支持部材41の前後端部には、図5に示されるように、略正方形状の取付用孔部42,43が形成されている。
【0032】
そして、図1に示されるように、支持部材41の前端部は、フレーム部6の前フレーム12の雌ねじ部17の下面に取付手段であるボルト45にて取り付けられている。
【0033】
つまり、図6および図7に示されるように、前フレーム12の雌ねじ部17の下端部(突出部分44)が弾性板36の前端部の長孔部38にこの長孔部38に沿って移動可能に遊挿され、この遊挿された雌ねじ部17に対して支持部材41の取付用孔部42に挿通されたボルト45の軸部45aが螺合締付されている。その結果、弾性板36の弾性変形等に基づいて、弾性板36の前端部が支持部材41の前端部に対してこの支持部材41の上面上を前後方向(水平方向に対して傾斜した略前後方向も含む)に長孔部38に応じた量だけスライド移動可能となっている。
【0034】
なお、弾性板36の厚さ寸法Aは、支持部材41の上面と前フレーム12の筒状部16の下面との間の距離(突出部分44の突出長さ寸法)Bよりも小さく、弾性板36の上面と筒状部16の下面との間にわずかな間隙40がある(図6参照)。
【0035】
また、図1に示されるように、支持部材41の後端部は、フレーム部6の後フレーム13の板状部21の後端部下面に、弾性板36の後端部を介して取付手段、すなわち例えばボルト46およびナット47にて固定的に取り付けられている。
【0036】
つまり、後フレーム13の板状部21の取付用孔部22と弾性板36の取付用孔部39と支持部材41の取付用孔部43とが上下に一致し、これら一致した3つの取付用孔部22,39,43にはボルト46の軸部46aが挿通され、この挿通された軸部46aの先端側にナット47が螺合締付されている。その結果、弾性板36の後端部が支持部材41および後フレーム13に対して固定されている。すなわち、弾性板36の前端部は前フレーム12に対して前後方向に移動可能であるが、弾性板36の後端部は後フレーム13に対して固定されて移動不可能となっている。
【0037】
なお、弾性板36の下面は複数の支持部材41にて部分的に覆われており、弾性板36の上面は前端部が前フレーム12にて覆われかつ後端部が後フレーム13にて覆われており、弾性板36の上面のうち前後端部を除く部分は、上方に向って露出した露出部分36aとなっている。
【0038】
一方、整地体32の上端部は、作業機本体2のフレーム部6の後フレーム13に蝶番51を介して左右方向の軸部50を中心として回動可能に取り付けられている。蝶番51は、後フレーム13の板状部21に取付手段、すなわち例えばボルト52およびナット53にて固定的に取り付けられている。
【0039】
次に、農作業機1の作用等を説明する。
【0040】
農作業機1をトラクタの走行により前方に移動させると、耕耘体31が回転しながら耕耘作業を行い、この耕耘体31の後方では整地体32が圃場面に追従するように軸部50を中心として上下回動しながら整地作業を行う。
【0041】
ここで、例えば耕耘整地作業時において、図8に示すように、石や土塊等の異物aが弾性板36と耕耘体31の耕耘爪との間に入り込んだ場合には、図9(a)および(b)に示すように、弾性板36が異物aにて押されて上方に弾性変形し、この弾性変形に基づいて弾性板36の前端部が前フレーム12の雌ねじ部17の突出部分44に当たるまで支持部材41に対して後方にスライド移動する。
【0042】
このため、石等の異物aは、弾性板36と耕耘体31の耕耘爪との間に噛み込まず、異物aの噛み込みが回避される。
【0043】
なお、異物aが弾性板36と耕耘体31との間から抜け出ると、弾性板36は、自重および弾性復元力によって前端部が支持部材41に対して前方にスライド移動することにより、支持部材41にて下方から支持された図1に示す元の状態に復帰する。
【0044】
また、例えば図10に示すように、耕耘体31にて跳ね上げられた泥土等の土bが、弾性板36の下面のうち支持部材41にて支持されていない部分に多く付着した場合には、作業者は、弾性板36の露出部分36aを上方から叩いて下方に弾性変形させることにより、その土bを弾性板36の下面から落す。この際、弾性変形に基づいて弾性板36の前端部が前フレーム12の雌ねじ部17の突出部分44に当たるまで支持部材41に対して後方にスライド移動する。
【0045】
そして、このように上記農作業機1によれば、弾性板36の前端部が支持体37の支持部材41に対して前後方向に移動可能となっているため、弾性板36と耕耘体31との間への石等の異物aの噛み込みを回避でき、石等の異物aの噛み込みによる弾性板36の破損を適切に抑制できる。
【0046】
また、弾性板36の露出部分36aを上方から叩いて弾性変形させることによって、弾性板36の下面に付着した泥土等の土bを容易かつ効率的に落下除去でき、掃除の簡素化を図ることができ、しかも、弾性板36の上面全体が鉄板にて覆われた構成等に比べて軽量である。
【0047】
さらに、作業機本体2のフレーム部6の雌ねじ部17が弾性板36の長孔部38に遊挿されているため、雌ねじ部17が長孔部38内において弾性板36に対して相対的に移動でき、石等の異物aの噛み込みによる弾性板の破損を効果的に抑制できる。
【0048】
また、支持部材41をフレーム部6から取り外すことにより弾性板36をフレーム部6から外すことができるので、弾性板36の交換作業やメンテナンス作業等を容易に行うことができる。
【0049】
なお、上記一実施の形態では、弾性板36の前端部が支持部材41の前端部に対してこの支持部材41上を前後方向にスライド移動可能で、かつ弾性板36の後端部が支持部材41の後端部に対して固定された構成について説明したが、例えば弾性板36の前端部が支持部材41の前端部に対してこの支持部材41上を前後方向にスライド移動可能で、かつ弾性板36の後端部が支持部材41の後端部に対してこの支持部材41上を前後方向にスライド移動可能である構成でもよい。
【0050】
この他の実施の形態に係る農作業機1は、図11に示す弾性板36を備え、この弾性板36の前後端部に長孔部38がそれぞれ形成されている。また、この農作業機1の後フレーム13の板状部21には、図12に示すように、前フレーム12と同一構成のフレーム部材61が固着され、このフレーム部材61が筒状部16および雌ねじ部17を有している。
【0051】
そして、フレーム部材61の雌ねじ部17の下端部(突出部分44)が弾性板36の後端部の長孔部38にこの長孔部38に沿って移動可能に遊挿され、この遊挿された雌ねじ部17に対して支持部材41の取付用孔部43に挿通されたボルト46の軸部46aが螺合締付されている。その結果、弾性板36の前端部と同様、弾性板36の後端部が支持部材41の後端部に対してこの支持部材41の上面上を前後方向(水平方向に対して傾斜した略前後方向も含む)に長孔部38に応じた量だけスライド移動可能となっている。
【0052】
また、農作業機1は、例えば弾性板36の前端部が支持部材41の前端部に対して固定され、かつ弾性板36の後端部が支持部材41の後端部に対してこの支持部材41上を前後方向にスライド移動可能である構成でもよい。
【0053】
さらに、支持体37は、複数の板状の支持部材41にて構成されたものには限定されず、例えば複数の棒状の支持部材にて構成されたもの等でもよく、また支持部材の数は任意である。
【符号の説明】
【0054】
1 農作業機
2 作業機本体
6 フレーム部
17 被取付部分である雌ねじ部
31 耕耘体
36 弾性板
37 支持体
38 長孔部
41 支持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム部を有する作業機本体と、
この作業機本体に回転可能に設けられ、回転しながら耕耘作業をする耕耘体と、
この耕耘体の上方部を覆う弾性板と、
前記フレーム部に取り付けられ、前記弾性板の下面を部分的に支持する支持体とを備え、
前記弾性板の少なくとも一部が、前記支持体に対して移動可能となっている
ことを特徴とする農作業機。
【請求項2】
弾性板の少なくとも前端部が、支持体に対してこの支持体上を前後方向にスライド移動可能となっている
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項3】
作業機本体のフレーム部は、支持体が取り付けられた被取付部分を有し、
弾性板は、少なくとも前端部に前後方向長手状の長孔部を有し、
前記被取付部分が前記長孔部に遊挿されている
ことを特徴とする請求項2記載の農作業機。
【請求項4】
支持体は、互いに間隔をおいて左右方向に並ぶ複数の支持部材にて構成されている
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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