説明

農作物保護性と施工性の高い農業用防虫、防鳥ネット

【課題】農業用防虫、防鳥ネットによる農作物の損傷の危険性を低減し、且つ敷設展張等の作業性を向上する。
【解決手段】経方向にループを鎖状に連結した経糸を非ループ状態である緯糸で緯方向に繋いで編成された構成糸間空隙の大きい編物からなる、支柱等に展張するネットであって、緯糸が平面的なフラットヤーンのままのテープヤーンである農業用防虫、防鳥ネットを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作物や虫或は鳥類に損傷を与えることの少なく、さらに又、展開敷設し易く、且つ取り外し易いものであり、農業用の支柱等に展張して用いる防虫、防鳥ネットに関するものである
【背景技術】
【0002】
野菜、果物などの農作物に対する防虫、防鳥ネットすなわち柱による囲いや柱、樹木そのもの或は梁などの要するに支柱等に展張して用いる虫や鳥の侵入を防ぐためのネットは、透光性や通風性が備わっている(遮光率30%以下)ものであるが故に構成糸間空隙が大きく、ネットの作物への寄り掛かりや、作物の成長によるネット構成糸部への接触により、作物の損傷が懸念されるものである。特に、樹木そのものを支柱がわりとして、それに引掛けて展張する場合においては作物や樹木との接触の可能性が高まるので、予めの対策が必要である。又、基本的に農業用ネットである限り農作物を傷めないこと、そして、虫や鳥に対しても損傷を与えないことが要求される筈である
【0003】
しかしながら、この要求に対して満足する従来製品はなく、又、出願公開されている特許、実用新案の公報においても、光の反射や蛍光、香り、味による虫、鳥の忌避効果等を利用して、虫、鳥の飛来を防ぐ技術などが下記の通り数多く提案されているが、薬剤加工や張り合わせ加工など必要であり、経済的でなく、又、ネットそのものが農作物へ接触した場合における損傷について、配慮されている技術はない。例えば、実開昭61−2042、実開平5−48686、特開平9−21047、特開平9−300505、特開2000−166456、特開2000−217497、実用新案登録第3046247号。
又、織製法によるものは、クッション性に乏しく、農作物や虫、鳥に対する損傷を与えないものというところからは遠い。例えば、特開平9−275881、実用新案登録第3043378号、特開平10−44273、特開2001−251976、特開2001−352844、登録実用新案第3046247号。
【0004】
さらに、編み製法によるものも、農作物に損傷を与えない技術は示されておらず、記載されている内容からは、農産物に損傷を与える危険性が高いものであり、さらに、折畳むことができる等の扱い易さは備えていないものである。例えば、特開平1−104118、特開2003−328257。
【0005】
尚、基本的に、これらのネットは使う人にとって扱いやすくあるべきであり、農業従事者の高齢化や兼業化に於いては尚更であって、又、一坪農園と呼ばれる農地などは一区画を細かく区切られたりしているため狭く、なるべく他人の敷地内に掛らないで作業することも求められる。又、素人でも、或は老若男女が誰でも、一人でも作業しやすいものが望ましい。しかしながら、やはりこの要求に対しても満足できる従来製品や公知技術はなく、せいぜい、支柱等に装着するときのしやすさ程度であって、老若男女誰もが一人でも作業しやすいための配慮などのはされているものではない。例えば、特開2002−339207。
【0006】
そして、農業用ネットは従来、原反幅のまま広幅ロールに巻きつけたものか、縦横広いネットをロール巻きせず折畳んだものしかなく、一人で誰もが、展張するにはやりづらいものだった。すなわち、ネットで囲む圃場は整地されていても、ネット外となる地面は狭かったり、傾斜がついていたりして、足場としては不安定であったり、ましてネットを地面に広げることは困難であることが多いがそのための方策に関する技術は無い。
【特許文献1】実開昭61−2042号公報
【特許文献2】実開平5−48686号公報
【特許文献3】特開平9−21047号公報
【特許文献4】特開平9−300505号公報
【特許文献5】特開2000−166456号公報
【特許文献6】特開2000−217497号公報
【特許文献7】実用新案登録第3046247号公報
【特許文献8】特開平9−275881号公報
【特許文献9】実用新案登録第3043378号公報
【特許文献10】特開平10−44273号公報
【特許文献11】特開2001−251976号公報
【特許文献12】特開2001−352844号公報
【特許文献13】特開平1−104118号公報
【特許文献14】特開2003−328257号公報
【特許文献15】特開2002−339207号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする課題は、ネットそのものによる農作物への損傷の危険性が高く、又、ネットが誰もが或は一人で敷設しやすいものではない点、又、ネット外が狭かったり傾斜がついていたりする場合の作業性に配慮したものでない点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の農業用防虫、防鳥ネットは、経方向にループを鎖状に連結した経糸を非ループ状態である緯糸で緯方向につないで編成された構成糸間空隙の大きい編み物からなる支柱等に展張するネットであって、緯糸が平面的なフラットヤーンのままのテープヤーンであることを特徴とする。尚、支柱等に展張するとは、支柱やその代替となる樹木に縛るなどして留めて広げて張るというだけでなく、ロープを介してどこかに縛り付けることで広げて張ることも含むものである。要するに、地面にベタ置きすることなく、どこかに引っ掛けて張る、吊るということである。
【0009】
請求項2の発明については、上記経糸もテープヤーンであることを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明については、上記ネットの幅両端或はその近傍域において、扁平状なテープヤーンが経方向に紐として挿入されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4の発明については、上記紐が両端でない経方向にも一本以上挿入されたものであることを特徴とする。
【0012】
請求項5の発明については、上記ネットの幅両端或はその近傍域に挿入された両紐が、他部位と且つ、互いが異なる色調であることを特徴とする。
【0013】
請求項6の発明については、上記ネットの経方向の所定間隔において、ネットに目印をつけたものであることを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明については、上記ネットの広幅原反が緯方向に折畳まれて、元の原反幅より狭い巻付けロールに巻付けられたものであることを特徴とする。
【0015】
請求項8の発明については、上記巻付けロールのロール幅が200〜250mmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
テープヤーンを平面的なフラットヤーンのままで経糸を繋ぐ緯糸とすることで、経方向に帯状になったループ状立体部分の列同士を、フラットヤーンでなる薄い折れ易い部分が繋ぐので、その薄いフラットヤーン部分で折ることで扁平に折畳み易くなり、ネット幅の何分の一かの幅のロールにネットを巻きつけることや、幅狭く折畳むことが可能となり、又、薄いフラットヤーンは折畳まれても折り癖を残すことなく容易に展開できるので、ネット幅の何分の一かの幅のロールに巻きつけられたロール巻き品や、同じくネット幅の何分の一かに折畳まれた折畳み品を用いて、農地に立てられた支柱に展張したり、取り外したりするときに地面に広げる必要なく、又、取り外し時のロールへの巻き戻しや、折畳みが可能或は容易になるので、敷設地以外の場所をあまり用いることなく作業ができることになる、或は作業性が高まる。よって、限られた敷地を有効に圃場としたいとき、周囲が傾斜地などの非整備地であるときは、敷地の有効活用性や作業の安全性において利用価値が高い。特に、一区画を細かく区割りした家庭菜園など、直接他人の農地と隣り合って、隣地に入り込んで他人の作物を損傷する可能性が高い場合には、意義が大きい。又さらに、取り外し作業性が高まることで、作業時間も短縮できる。
【0017】
また、テープヤーン以外の非扁平なモノフィラメントやマルチフィラメントなどに比べてのテープヤーンの薄肉化による折れ曲がり易さ、延び、幅広さによって、幅狭のものに見られる農作物への食い込み力が弱くなり、さらにクッション性が増して農作物への損傷を低減、予防する。
【0018】
さらに、テープヤーンの幅広さは幅狭い非扁平モノフィラメント状糸などに比べて虫、鳥の目に留まり易く、テープヤーンの幅広さ、薄肉さ、柔軟さは、風を受ける面積あたりの軽量化も伴い、風による揺れ易さを増すことになるので、いっそう鳥、虫の目に留まり易くなって、虫、鳥の衝突回避を喚起することになる。
【0019】
さらに経糸もテープヤーンとすることで、薄肉化によるテープの折れ曲がり易さから、ループ状部が当接方向に対して柔軟になり、農作物への当りを和らげ、又、ループ状部の構成する線の幅が非扁平なモノフィラメント等に比べて広くなることで、さらに目立ち易くなり、鳥、虫の衝突回避を喚起させ易くする。
【0020】
又、同じ理由で経方向には鎖の各ループ間で折れ易くなって、ネット全体として当たりが弱くなり、クッション性がさらに向上することになり、農作物損傷の予防或は低減の効果を増すことになる。
【0021】
又、ロールへのネット巻付け時には、経方向に柔軟になることで巻付け易くなり、さらにロールへの巻き戻しでない折畳み時にも折畳み易くなり、取り外し時の作業性、省スペース性が増す。要するに、さらに柔らかくなるので、初回展張時、再展張時などにも扱い易くなるのである。
【0022】
尚、緯糸のテープヤーンがネットの流れに対する直角方向である横幅方向にあるとき、ネット製造時のネット原糸巻きつけボビンから巻付けを開放されて生じる撚り分程度に撚り捩れがあるならば、光の反射方向が一定でなく僅に捩れることになり、鳥や虫にとって真正面に並んでフィルム面が正対するときよりも、反射光が見え易くなり、ネットへの衝突回避を喚起することになる。尚、この時、捩れが大きすぎると、テープヤーンがネット正面から見て寝ていたものが立ってくるので、光の反射方向がネット面の正面に向く割合が少なくなって、虫、鳥への注意喚起効果が無くなってしまう。さらに撚り捩れが大きくなる程、撚り紐に近くなって、緯方向の折り曲げ易さが阻害されることになり、発明の目的から外れてくる。すなわち、経糸間を繋ぐ緯糸一単位長当たり、90度以内の捻れであることが望ましい。
【0023】
ネットの取扱い易さのためにネット幅両端側に紐としてマルチフィラメント等状のロープを挿入したものは従来からあるが、ロープを扁平状なテープヤーンと替えることで、挿入後も厚みを大きく増さないので幅方向でネットを折畳む時の障害にならず、又、幅の直角方向である長さ方向すなわち経方向でネットを折畳む時にも厚みある非扁平マルチフィラメントやモノフィラメントに比して折り曲げやすいので、ネットを折畳む時の障害になり難くなる。
【0024】
また、モノフィラメント状やマルチフィラメント状のものに比べて剛直性が低減するので、厚み方向に折り曲げ、折畳み易くなり、紐自身同士端部を結ぶ、縛るなどするときは、上記マルチフィラメント状やモノフィラメント状のものより、作業し易くなる。
尚、テープヤーン自身を幅方向に扁平状に折重ねたものをロープ代替とするのであるが、自身の厚み増加による剛直性増加も、同一デシテックスであるモノフィラメントやマルチフィラメントに比べて剛直性が低く納まるので、ネットの巻付けや、折畳み、或は自身の縛りの作業性を損ねることにはならない。
【0025】
挿入ロープの代替として使用する紐としてのテープヤーンは、折重ねた層間において透明度を減じ、光の乱反射性による白色度を増すことになるので、折重ねた紐は総じて、多層でないテープヤーンやモノフィラメントに比べて光の反射性を増すことになり、虫や鳥に対して目立ち易くなる。尚、マルチフィラメントにおいてもフィラメント間の多層化は生じるので、光の反射度は向上するが、ロープ化するために撚って緊締されることで層間が緊密となり、各層間の乱反射の生じ方は少なく、ロープとしての、光乱反射度上昇はテープヤーンを折り重ねてのものよりかなり劣る。又、上記モノフィラメントやマルチフィラメントのような断面円形状のものより、テープヤーンを折り重ねての断面方形状のものの方が、虫や鳥がネットの正面側にあることを考えた場合、目立ちやすいことは言うまでもない。
又、異型断面のモノフィラメントよりテープヤーンを折重ねたものの方が目立ちやすいことも言うまでもない。
さらに尚、着色した場合においても、各糸形と比較しての相対的な光反射性は変わらないことは言うまでもない。
【0026】
扁平な紐をもう一本以上増やして両端でない経方向に挿入するならば、例えば、ネットを防虫、防鳥する区域に垂直にネットの流れ方向に張っていく場合、横方向一定高さにネット敷設用の支柱を結ぶ横棒を設けてある場合には、その横棒に沿わせてその紐を当接すれば、横棒を扁平なテープヤーンが包む様に面で確り当接することになり、他の形状のロープのような線状に接するだけである為にずれるという様なことがなく、ネットの敷設が容易となる。
【0027】
又、アーチ状に支柱を組んでかまぼこ形ドーム上にネットを敷設しようとする時、ドームの稜線に沿って扁平な紐部分を這わせていくならば、支柱のアーチ頂点にテープ幅分の面で確り当接するので、非扁平なモノフィラメントやマルチフィラメントのような円形断面のロープ稜線部に於いて点で接するだけの為に、滑り落ちてずれやすいという様なことがなく、ネット敷設が容易となる。
【0028】
ネットの幅両端部が他部位と、且つ、左右が互いに異なる色調であるならば、巻付けロールから、或はたんなる纏りから開く時、敷設時における上下或は両端左右が判別し易いので、展開及び敷設の作業が容易となる。
【0029】
各テープヤーンが延伸されて結晶性を増したものであるならば、引っ張り強度が増すのは勿論、結晶性の低いものに比べて滑りがよくなり、特に挿入紐とネット間の滑りがよくなるので、挿入紐を引っ張ってネットを絞る、或は片側端部挿入紐両端を引っ掛けてネットを吊るした場合のカーテン式開閉が容易となり、便利である。
さらに又、延伸によって曲げ弾性率が増加して曲げ難くなるのであるが、それでも、同じデシテックス、同じ延伸倍率の場合、非扁平なモノフィラメントに比べてテープヤーンは曲がりやすく、ネット敷設が困難になることもなく、クッション性も大きく損なわれることなく、農作物への損傷の危険性は増加しない。
【0030】
又、このテープヤーンの曲げやすさはネット端にて束ねる、挿入紐を用いて縛るなどの場合に非扁平なモノフィラメント、マルチフィラメント及び撚り紐などに比べて、束ね易く、縛り易いことになり、便利である。
【0031】
又、結晶性を増すことにより、光の反射度が増すので、虫や鳥に目立ち易くなり、前記従来技術のようなアルミ蒸着加工や金属顔料の配合も必要なくなる。
【0032】
尚、延伸化によっての結晶性増加は、配向性上昇を伴うことになるので、テープヤーンの幅方向への折畳み易さを増すことになり、テープヤーンを折重ねたものを挿入紐とするとき、折重ねられた各層の角がモノフィラメントのような剛直性を起因とする反発によるアール状の膨らみをほとんど持たずに折れるので、折重ねたものの厚みは特別増すことなく、紐挿入も容易であり、結果としてより多層な形でのテープを挿入することが可能となるので、層の多さが関係する光の反射効果増加にも寄与することになる。
又、光の反射性は延伸化されて結晶性を増した方が増すので、虫や鳥への目立ち易さが増すことは言うまでも無い。
【0033】
ネット経方向の所定間隔において、ネットに目印をつけるならば、支柱を同じ所定間隔に立てるなどして、目印部分と支柱を縛り付けることで、ネットの弛みによる張り状態の乱れも見苦しくない程度にネット敷設ができる。或は、農地において寸法を測りながら支柱設置もできる。目印をつける方法としては、他色糸の挿入、印刷糸の挿入、或はネット上への印刷等の加工、ピッチ毎に目印となる組織を入れる方法などが挙げられる。
【0034】
経方向にループを鎖状に連結した経糸を、非ループ状態である緯糸で緯方向に繋いだネットは、立体的になるので通常折畳み難くなる理由からか、折畳んでロールに巻きつけたものを見たことはない。又、小さく折畳んだ物もない。折畳まないでロールに巻いたものはあるが、背丈或はそれ以上の幅のロールからネットを展開していくのは、本発明と異なる用途である地面敷設のときのような地面への転がしての展開はいざ知らず、垂直に立てる方向で横に展開していくのが容易ではないのは明白である。何故なら一人で背丈以上のロールの両端を持つことは手が届かないので無理であるし、背丈より短くても背丈に近いと、ロールに顔が着いてしまい、ロールを扱い難いことこの上ないからである。
【0035】
本発明のネットは、緯糸が平面的なフラットヤーンのままのテープヤーンであることにより、前に繰り返し述べたテープヤーン部の折畳み易さから、ネット幅方向すなわち緯方向に折畳み易くなることで、従来無かった、折ってのロールへの巻付けが可能となる。又、小さく折畳むことも可能になる。よって、狭小幅でのロール巻付けや、そのロールからの展開、さらに巻き戻し、或は小さい折畳み、その折畳み品からの展開、さらに再折畳みが可能になる。これらのことは狭い場所での作業が容易になることを意味する。
【0036】
ネットを広幅原反が幅方向すなわち緯方向に折畳まれて元の原反幅より狭く巻付けロールに巻きつけられたものとするならば、例えばネットを巻いたロールの幅が作業する人の臀部高さから肩部高さ程度ならば、ロールを上下に立て置く形でロール下端を地面に当て、ロール上端を肩位置下乃至臀部高さ位置にして掌部で押さえてロールを回して行く事等で、よりネットを展開しやすくなり、一人での作業性が向上することになる。あるいは、両手でロール両端を持ってネットを展開していくことも可能になる。
【0037】
そしてさらに、ネット展張時の容易さを求めるならば、ネットを巻きつけたロールの幅はロールを扱う上で無理の無い様に設定するのがよく、老若男女全てが、ロールを手に持って、ネットを展張しようとするならば、そのロール幅はせいぜい150〜300mmが適当であり、望ましいのは200〜250mmである。
【0038】
何故なら、ロールは上腕を腹部脇に当てて、すなわち脇を固めて持つのが最も疲れず、さらに、上腕は肘部より少し手首側を狭くするのが疲れない。さらに又、手は甲が上腕の線のほぼ延長線上にあるのが、やはり疲れず、手首を外側に開くような持ち方を継続するならば疲れる。そして、手指は第二関節及び又は第三関節を内屈し、ネットの巻付けロールが紙管などの管状の芯を使用しているなら、手指を管内に挿入し、手指第二関節腹側乃至掌と手指との交点腹側を巻き芯内側角部に当てて押さえるのが良い。何故なら、ネットを巻きつけたロールの回転を妨げず、コントロールも出来るからである。
【0039】
このためのロール幅は、乳児、幼児を除いた老若男女が使用できることを前提とするならば、せいぜい150〜300mmが良く、200〜250mmが最も適当である。そしてこの程度のロール幅と重量なら、2m高さに対し2m幅にネットを展開して行くために、ロールを腰位置ないし胸位置に構えて持てば、ネット幅2mのほぼ中間でロールからネットが展開して行くので、ネットの貼り具合に歪み無く展張し易くなり、作業が疲れず、楽に出来ることになり、作業時間の短縮に繋がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0040】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
本発明に用いられる経糸及び緯糸の材質は、合成樹脂であれば何でも良いが、本発明の目的である農作物や虫、鳥に対して当りが柔らかいと言うことからは、柔らかい材質が好ましく、価格面も含めて考えるならば、ポリエチレンまたはポリプロピレンが適当であり、その場合の必要強度をえるためには、延伸加工されたものが良い。その製法はTダイ法等どのようなものでも良いが、細かい寸法精度は必要としないので、インフレーション法によりフィルム化して縦方向に割いた物が安価に済むので良い。
【0041】
ネットにするには、既存の経編機、特にラッセル編機に依るのが適当である。
【0042】
図1は本発明の一実施形態のネット1を展開した全体図である。経方向にループを鎖状に連結した経糸2を、非ループ状態である緯糸3で緯方向に繋いで編成された編物であって、幅方向両端に紐4−1、4−2が挿入されている。編物本体と2本の紐はそれぞれ色調が異なっている。材質は各素材とも高密度ポリエチレンであり、インフレーション法により製膜延伸され、ヤーン状に割かれたものであり、淡緑色に着色されている。
【0043】
ネット反物の幅は2mであり、長さは18mであり、本体重量400gである。巻付け紙管込み重量520gである。
【0044】
図2は図1のネットの経糸と緯糸との関係を分かりやすくなるように組織部分を拡大した図である。
紐を除く各糸は共通のものを使用しており、糸幅1mm、厚さ0.025mmである。
目はラッセル網で格子形状をしており、ピッチは経緯とも20mmである。一経ピッチ内ループ数は6である。
又、両端の紐は、厚さは同じ0.025mmであるが、幅35mmのものを折り重ねて幅5〜7mm、厚さ0.2〜0.16mmとなっていて、一方の紐は青色に着色され、もう一方の紐は無色だが折り重ねられて白色に見える。
【0045】
図3は紙管の巻付けロールに巻かれたネットを展開する時の開き方を表現する模式図である。2m幅のネットが緯糸で折畳まれ、隣り合うループ列はロール厚み方向に重なることなくロール幅方向にずれることで、幅約35mm、厚さ約4mmに収束された束となり、その束は隣り合う束と一部重なるように並行にずれるようにロールに巻きつけられているものである。
幅230mmのロール幅のほぼ全幅を使って、ほぼ9束の列が一段となり、その段の上に又、同じように束の列が巻き重ねられている。外径80mmの紙管に2m幅18m長のネットを巻きつけたものは外径約140mmであった。
【0046】
前述図1〜3に示すネットを用いたものを実施例1及び2として実験1及び実験2を行った。
実験1について述べる。比較例1として、防鳥ネットのうち、最も一般的な従来技術である経糸、緯糸ともモノフィラメントである市販の防鳥ネットを用いた。糸径0.25mmであり、結節ピッチは45mmであり、蛙又網と呼ばれる結節網の編み方がされていて、径緯方向形状としては菱形の目形状をしている。材質はポリエチレンである。組織部分を図4に示す。
【0047】
比較例2として、経糸、緯糸ともポリエチレンのモノフィラメントであって、糸径0.25mm、ラッセル網で格子形状であり、ピッチは経緯とも16mmであり、1経ピッチ内ループ数は8であるネットを用いた。組織部分を図5に示す。
【0048】
各例とも300mm×300mmにカットし、図6に示すように、200mm×200mmの枠に張り、そのネットの上に桃各1個(250g)を載せて静置し、1日経過後のそれぞれの桃の損傷の有無を確認した。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
比較例1のネット上に載せたものは、45mm角の正方形の細い線状痕がついており、ネットの目の模様と同じであった。比較例2のネット上に載せたものはアラビア数字の7と似た形の線状痕がついており、左縦向き5mm長さ、上横向き16mm長さ、右縦向き32mm長さで構成されるアラビア数字7に似た形の線状痕がついていた。32mm長の痕は太く、又、黒ずんでいた。
【0051】
これに対して、実施例1のネット上に載せたものは、ネット上から下ろした瞬間は網目がついていたように見えたが、直ぐにわからなくなり、探しても痕跡が全く無かった。以上の結果から、農作物に当接して傷をつける危険性がモノフィラメント糸にはあり、これを平面的なフラットヤーンのままのテープヤーンに替えることで、この危険性が低減するだろうことが立証できた。
【0052】
次に、実験2について述べる。図7に示す周囲18mの圃場に、次に述べる実施例2、比較例3及び、比較例4のネットを用い、展張して張り終える時間等について比較測定した。三例のネットとも幅2m、長さ18mであり、幅方向両端にロープ又はフラットヤーンの紐が挿入されている。
実施例2のものは、実験1における実施例1のものと同じものであり、比較例3のものも同じく実験1における比較例1のものと同じものである。
比較例4のネットは、市販のネットであり、経糸、緯糸ともポリエチレンのモノフィラメントであって、糸径0.25mm、ラッセル網の格子形状であり、ピッチが経緯とも9mm、一経ピッチのループ数が3である。組織を図8に示す。
尚、各ネットは使用前、実施例2のネットは、前述の通りロールに巻かれているが、比較例3は束ねられ、比較例4は折畳まれている。
【0053】
実験を行う場所について説明する。図6のように、圃場に4.5m角に区切るように、角に4本、中間に4本の計8本の地上高さ2mの支柱を立てた場所である。
【0054】
次に、作業の手順について述べる。先ず、巻かれた或は畳まれたネットを地面に置き、ネット幅両端の2本の紐を若干引き出しておく。そして、予め立てられた2m高さの8本の支柱内の一本の頂部に一方の紐を、地面近くである底部にもう一本の紐を縛りつける。次に、支柱で囲まれた枠の外側を廻って囲いにネットを展張して行く。各支柱とネットは支柱頂部と底部に他の紐で縛りつけられる。尚、ネットを最初に縛り付けた支柱と最後に縛り付けた支柱は同一であり、この支柱に対してはネット幅両端の2本の紐を縛りつけるが、支柱中間に他の紐でも縛りつける。尚、この実験では、4.5m角の区切りの天井への展張は省略した。
【0055】
測定した各作業時間の範囲は次の通りとする。地面に置いたネットの両端紐を捜すべくネットに手を触れた時から、ネットと支柱に縛り付け終えた時までを展張の所要時間とする。
【0056】
次に、支柱に展張され縛り付けられたネットに対し、各紐を外すことで、支柱からネットを取り外して袋に入れるか折畳み戻す迄を、すなわち、紐を外すべく、展張されたネットに手を触れた時から、巻き戻して袋に収納する、或は折畳み戻す作業を終えた時までを回収の所要時間とする。
【0057】
尚、実施例2で元の紙管に巻き戻さず、袋入れする実験も行ったのは、次の理由による。すなわち、張り終えて空になった紙管を、数ヶ月以上も圃場に置かれるもののために保管しておくのは非現実的であり、捨ててしまい、いざ必要のときに代用となるものを使用するだろうということであり、それが作業性も良く嵩張らないなら、それが当たり前だろうということである。
又、比較例3、4を実施例2と同様に袋に入れることをしなかったのは次の理由による。比較例3は袋に入れやすいが、纏めるなど整理して入れないと再展張のために取り出そうとする時、絡み合って端緒が捉え難く時間が掛ってしまうこと、比較例4は袋に入れるために折るにはとても折りにくく反発して、袋から飛び出してしまい、折畳んでから出ないと袋に入らないからである。つまり、袋入れには、余分な時間が掛るということである。
【0058】
回収の後、同一作業者が再度ネットの前記展張作業を行うのを再展張とする。
【0059】
さらにこの後、同じく同一作業者が前記と同様な回収作業を行うのを再回収とする。
【0060】
各作業とも、作業者A、次いで作業者Bが行った。
【0061】
結果を表2に示す。比較例3及び比較例4に比べて、実施例2が展張、回収とも所要時間の短いことがわかる。
【0062】
【表2】

【0063】
この差がどの部分の作業でつくのか、作業全体を細かく分析した。
展張時については作業全体で、差がついている。実施例2と比較例3は特に差が大きくて比較例3は実施例2の2〜3倍の時間を要しているのがわかる。言い換えれば、実施例2では比較例3の2分の1乃至3分の1に短縮されるということである。又、比較例4に対しても、17〜42%の時間短縮となっている。
【0064】
展張作業については、細かい作業毎に所要時間を分けることは困難だったので、作業者の受けた感覚的な所要時間の差と、その差を生じる考えられる原因を整理すると、比較例3はネットそのものを解すのに時間が掛り、比較例4は、比較的重く嵩張っているので軽く抱えて周囲に廻らすということができず、一旦地面に広げ、周囲に這わせてから張って行ったので時間が掛ったことと、特に折畳まれることで屈曲されて癖付けられた剛直な緯糸が、屈曲を元に戻されるのに力と時間が掛ることで、作業時間が多く掛ったようである。
【0065】
一方、実施例2では、紐2本を支柱の頂部と底部に結びつけてそのまま、ネットを地面に下ろすことも無く、周囲を一周巡ってから、緯方向一端を各支柱の頂部に縛り、もう一端を各支柱の底部側に縛り付けることで済んだので、時間が掛らなかった。このとき、幅両端に色の異なる紐が挿入されていたので、天地間違えず、開いて支柱に縛って行きやすかった。
【0066】
回収時については、ネットを支柱から外す作業と、ネットを畳んで纏める作業とを分けて測定できた。比較例3は他の例と比べて、畳み纏めに時間が掛らないのに、外しに時間が掛り、又、次の展張に時間がかかる。
比較例4は、外し作業が実施例2と同程度なのに、畳んで纏める作業では他より大きく時間が掛かる。
実施例2は、外しながら袋入れしても、比較例3の畳み纏めより若干余分に時間が掛る程度で済むし、先に全部外したものを袋入れした場合には、30秒と極めて短時間で済む。又、先に外したものを紙管に巻き戻した場合は、2分13秒と多く掛かるが、比較例4より1〜2分短く、回収トータルでは、実施例2の他の二つの方法によるものとほぼ同じ所要時間であった。
【0067】
比較例3はこんがらかりやすいことで、外しや再展張に時間が掛り、比較例4は剛直性があることで畳み纏めに時間が掛るのに対し、実施例2はこんがらかりにくくもあるし、畳み纏めも袋入れも、或は紙管巻きも問題なく行えることがわかった。尚、比較例2のネットは、展張時も、外す時も、さらに畳んで纏める時も囲いの周囲地面、幅2mに降ろして作業せざるを得ないことも確認できた。
【0068】
以上、本発明の実施例である農業用防虫、防鳥ネットは従来技術の農業用防虫、防鳥ネットに比較して支柱等に展張するときも、展張したものを外すときも問題なく、速く作業出来ることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施例のネット1を展開した全体図である。
【図2】図1のネットの経糸と緯糸との関係を示す組織部分を拡大した図である。
【図3】紙管の巻付けロールに巻かれたネットを展開する時の開き方の模式図である。
【図4】比較例1に用いたネットの組織部分を示す図である。
【図5】比較例2に用いたネットの組織部分を示す図である。
【図6】実験1の実験方法を示す図である。
【図7】実験2での、実施例、比較例のネットを展張した状態を表す図である。
【図8】比較例4に用いたネットの組織部分を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1 ネット1
2 経糸
3 緯糸
4−1 紐
4−2 紐
5 ループ
6 支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
経方向にループを鎖状に連結した経糸を非ループ状態である緯糸で緯方向に繋いで編成された構成糸間空隙の大きい編物からなる、支柱等に展張するネットであって、緯糸が平面的なフラットヤーンのままのテープヤーンである農業用防虫、防鳥ネット
【請求項2】
経糸もテープヤーンである請求項1記載の農業用防虫、防鳥ネット
【請求項3】
ネットの幅両端或いはその近傍域において、扁平状なテープヤーンが経方向に紐として挿入されている請求項1又2に記載の農業用防虫、防鳥ネット
【請求項4】
上記紐が、両端でない経方向にも一本以上挿入されたものである請求項3記載の農業用防虫、防鳥ネット
【請求項5】
ネットの幅両端或はその近傍域に挿入された両紐が、他部位と、且つ互いが異なる色調である請求項3又は4記載の農業用防虫、防鳥ネット
【請求項6】
ネット経方向の所定間隔において、ネットに目印をつけたものである請求項1乃至5のいずれかに記載の農業用防虫、防鳥ネット
【請求項7】
ネットの広幅原反が緯方向に折畳まれて、元の原反幅より狭い巻付けロールに巻きつけられたものである請求項1乃至6のいずれかに記載の農業用防虫、防鳥ネット
【請求項8】
巻付けロールのロール幅が200〜250mmである請求項7記載の農業用防虫、防鳥ネット

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−43933(P2007−43933A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−230488(P2005−230488)
【出願日】平成17年8月9日(2005.8.9)
【出願人】(000218409)ネクスタ株式会社 (7)
【Fターム(参考)】