説明

農園芸用支柱

【課題】軽量で且つ廃棄処理も容易な農園芸用支柱1を提供する。
【解決手段】農園芸用支柱1は、中空の支柱本体2の両端に上栓3及び下栓4が設けられてなる。支柱本体2は汎用合成樹脂で形成されていて、複数本の補強線材5が周方向に間隔をおいて埋設されている。補強線材5は支柱本体2と同系統の合成樹脂による溶融成形材を一軸延伸して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農園芸用支柱に関する。
【背景技術】
【0002】
農園芸用支柱は、地面や鉢の土に差し、倒れやすい植物の茎をひもなどで数か所結びつけて支えるために、或いは、つる植物のつるを這わせるために使用され、或いは植物を保護するネット等を張るために使用される。
【0003】
上記農園芸用支柱としては、金属管を合成樹脂で被覆してなるものが一般に広く採用されている(例えば、特許文献1参照)。このような支柱が廃棄物となるときは、資源の再利用や、廃棄物処理の容易化のために、金属管から樹脂を剥離してそれらを別個に処理することが好ましい。しかし、樹脂が金属管に密着しているため、その剥離は困難であり、廃棄処理に多大な労力と費用がかかる、或いは埋め立て用廃棄物にせざるを得ないという問題がある。
【0004】
これに対して、特許文献2では、木質ファイバーを樹脂バインダーと共に圧縮成形してなる農園芸用支柱が提案されている。また、特許文献3では、合成樹脂管内に木製角材を挿入してなる農園芸用支柱が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2895439号公報
【特許文献2】特開平9−163872号公報
【特許文献3】特開2008−121257公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、木質ファイバー製支柱の場合、木質ファイバーを樹脂バインダーと共に混練しこれを成形型に投入して圧縮成形する必要があり、製造に手間がかかる。また、合成樹脂管内に木製角材を挿入してなる支柱の場合、その合成樹脂管を製造した後、その樹脂管に木製角材を圧入していく必要があり、製造に手間がかかるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、製造容易で且つ廃棄処理も容易な農園芸用支柱を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために、中空の合成樹脂製支柱本体に同じく合成樹脂製の補強線材を埋設する構成を採用した。
【0009】
すなわち、本発明に係る農園芸用支柱は、合成樹脂よりなる中空の支柱本体に複数本の補強線材が埋設されてなる合成樹脂製であって、
上記複数本の補強線材各々は、合成樹脂によって形成されていて、支柱長手方向に延びており、上記支柱本体に対して周方向に間隔をおいて埋設されていることを特徴とする。
【0010】
かかる農園芸用支柱によれば、中空の支柱本体に埋設された複数本の補強線材によって植物や保護ネット等を支える強度が確保される。そうして、この農園芸用支柱は、支柱本体及び補強線材が共に合成樹脂によって形成され、金属部分を有しない非金属製であるから、軽量であり、取り扱いが容易になるとともに、不用になったときは、所謂燃えるゴミとして廃棄することができ、また、サーマルリサイクルを含む焼却処理、或いは原料樹脂の回収をする場合の処理も容易になる。
【0011】
上記補強線材は、上記支柱本体との接着性(密着性)ないしは一体化が高くなるように、該支柱本体と同じ系統の合成樹脂で形成することが好ましい。その場合、上記補強線材は一軸延伸によって上記支柱本体よりも高強度にすることができる。例えば、上記支柱本体は、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル樹脂、ポリスチレンなどの汎用合成趣旨によって成形し、上記補強線材は、上記支柱本体と同系統の汎用合成樹脂材を一軸延伸することによって形成することができる。
【0012】
好ましいのは、上記支柱本体をポリエチレン製とし、上記補強線材として、エチレン単独重合体又はエチレン・α−オレフィン共重合体の溶融成形材を一軸延伸してなるものを採用することである。
【0013】
上記支柱本体と補強線材とは異種の合成樹脂によって形成することもできる。例えば、上記支柱本体を汎用合成樹脂製とし、上記補強線材を、ポリアセタール、ポリアミド、ポリブチレンテレフタレート、超高分子量ポリエチレン、ポリフェニレンスルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド等の引張強度が49.0MPa以上、曲げ弾性率が2.4GPa以上のエンジニアリングプラスチックで形成することもできる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、中空の合成樹脂製支柱本体に複数本の合成樹脂製補強線材が埋設されてなり、金属を使用することなく支柱の強度を確保するようにしたから、軽量化が図れ、取り扱いが容易になるとともに、所謂燃えるゴミとして廃棄することができ、或いはリサイクルする場合の処理も容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る農園芸用支柱を一部省略して示す斜視図である。
【図2】同農園芸用支柱を一部省略して示す縦断面図である。
【図3】別の実施形態に係る農園芸用支柱を一部省略して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0017】
図1に示す農園芸用支柱1において、2は両端が開口した中空の支柱本体、3は上栓、4は下栓である。支柱本体2には複数本の補強線材5が支柱本体2の周方向に等間隔をおいて埋設されている。支柱本体2の外周面には複数の環状凸部6が支柱本体2の全長にわたって上下に間隔をおいて設けられている。図2に示すように、上栓3は、下方へ突出した小径の嵌合凸部3aを有し、この嵌合凸部3aが支柱本体2の上端開口部に嵌っている。下栓4は、上方へ突出した小径の嵌合凸部4aを有し、この嵌合凸部4aが支柱本体2の下端開口部に嵌っている。下栓4は、農園芸用支柱1を地面等に差し込み易くするために先細に形成されている。
【0018】
本実施形態に係る支柱本体2、上栓3及び下栓は、汎用合成樹脂であるポリエチレンによって形成されている。一方、本実施形態に係る補強線材5は、支柱本体2と同系統の合成樹脂であるエチレン・α−オレフィン共重合体、具体的には密度0.942以上の高密度エチレン・プロピレン共重合体によって形成されている。すなわち、上記高密度エチレン・プロピレン共重合体を押出機のノズルより溶融押出し、冷却水槽で冷却固化して未延伸線条とし、これを加熱延伸することによって補強線材5が得られる。延伸倍率は例えば5〜20倍とする。
【0019】
そうして、上記補強線材5で補強された支柱本体2は次のようにして成形することができる。すなわち、その成形は、円筒状の樹脂流路を有する押出成形型と、該押出成形型に溶融ポリエチレンを加圧供給する樹脂供給機と、該押出成形型に複数本の補強線材を供給する線材供給機とを用いて行なう。具体的には、複数本の補強線材5を周方向に間隔をおいた状態で上記円筒状樹脂流路に連続的に送って押出成形型の吐出口から出す一方、該樹脂流路に溶融ポリエチレンを供給して上記吐出口から押し出すようにする。これにより、複数本の補強線材5が周方向に間隔をおいて配置された円筒状の支柱材が得られる。この支柱材を上記押出成形型から連続的に引き取っていき、そして、所定長さで順次切断していくことにより、補強線材5で補強された支柱本体2を得ることができる。支柱本体2の外周面の環状凸部6は、上記支柱材の引き取りを間欠的に短時間停止させることによって形成することができる。
【0020】
以上により得られる農園芸用支柱1は、その支柱本体2に複数本の補強線材5が周方向に間隔をおいて埋設されているから、支柱としての必要な強度が確保される。また、その補強線材5は支柱本体2と同じく合成樹脂によって形成されているから、当該農園芸用支柱1は軽量であり取り扱いも容易になる。しかも、この農園芸用支柱1は金属を使用していないから、不用になったときは、所謂燃えるゴミとして廃棄することができ、焼却処理、或いは合成樹脂をリサイクルする場合の処理も容易になる。
【0021】
図3は他の実施形態に係る農園芸用支柱1の一部を示す。この支柱1では、その支柱本体2の外周面に、上記環状凸部6に代えて多数の突起7が形成されている。このような突起7は次のようにして形成することができる。すなわち、上記押出成形型の円筒状吐出口の外周面側に周方向に間隔をおいて複数の溝を形成しておく。これにより、押出成形型の吐出口から押し出される支柱材の外周面に支柱長手方向に延びる複数の突条が周方向に間隔をおいて形成される。そして、この支柱材が硬化する前に各突条に歯車状の型を回転させながら押し付け、該突条に一定間隔で陥没部を形成すれば、上記突起7が得られる。
【符号の説明】
【0022】
1 農園芸用支柱
2 支柱本体
3 上栓
4 下栓
5 補強線材
6 環状凸部
7 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂よりなる中空の支柱本体に複数本の補強線材が埋設されてなり、
上記複数本の補強線材各々は、合成樹脂によって形成されていて、支柱長手方向に延びており、上記支柱本体に対して周方向に間隔をおいて埋設されていることを特徴とする合成樹脂製農園芸用支柱。
【請求項2】
請求項1において、
上記補強線材は、上記支柱本体と同系統の合成樹脂によって形成され、且つ一軸延伸によって、上記支柱本体よりも高強度にされていることを特徴とする合成樹脂製農園芸用支柱。
【請求項3】
請求項2において、
上記支柱本体はポリエチレン製であり、
上記補強線材は、エチレン単独重合体又はエチレン・プロピレン共重合体の溶融成形材を一軸延伸してなることを特徴とする合成樹脂製農園芸用支柱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−170367(P2012−170367A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33697(P2011−33697)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(598082938)株式会社近久 (1)
【Fターム(参考)】