説明

農業機械用のフィードチェーン

【課題】フィードチェーンは、ピンのまわりに内プレートが相対回転することにより屈曲するから、内プレートの孔の内周面が軸受面積となり、軸受面積が小さいことにより耐久性が十分なく、バーリングタイプは、実質的な軸受面積を増大させることができるが、バーリング高さに加工上の限界があり、十分な耐久性を実現することが困難である。各ピンをブッシュに相対回転自在に挿通することによって、十分な耐久性を容易に実現することができる農業機械用のフィードチェーンを提供する。
【解決手段】ブッシュ21、21を介して連結する内プレート11、11と、ブッシュ21、21に挿通するピン22、22を介して連結する外プレート12、12とを交互に屈曲自在に連結し、各ブッシュ21に対してローラ23を相対回転自在に装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンバインなどの農業機械において、穀稈の搬送用などに広く使用されている農業機械用のフィードチェーンに関する。
【背景技術】
【0002】
農業機械用のフィードチェーンは、日本工業規格(JIS)にも制定されている(JIS B 9204)。
【0003】
JISに制定されているフィードチェーンは、ピンを介して左右の内プレート、外プレートを交互に屈曲自在に連結し、各ピンには、ローラが回転自在に装着されている。内プレート、外プレートは、それぞれ片側の一辺を同方向の山形に形成し、各ピンの両端は、外プレートの両端部のピン孔に挿通して相対回転不能にかしめられている。また、各内プレートは、両端部の孔に各ピンを相対回転自在に挿通することにより、ピン上のローラを介して各外プレートの直近内側に位置決めされている。なお、JISには、各内プレートの孔を内側にバーリング加工するバーリングタイプも併せて制定されている。
【非特許文献1】JIS B 9204−1994
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる従来技術によるときは、フィードチェーンは、ピンのまわりに内プレートが相対回転することにより屈曲するから、内プレートの孔の内周面が軸受面積となり、軸受面積が小さいことにより耐久性が十分でないという問題があった。なお、バーリングタイプは、実質的な軸受面積を増大させることができるが、バーリング高さに加工上の限界があり、十分な耐久性を実現することが困難である。
【0005】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、各ピンをブッシュに相対回転自在に挿通することによって、十分な耐久性を容易に実現することができる農業機械用のフィードチェーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、両端部のブッシュを介して連結する左右の内プレートと、ブッシュに相対回転自在に挿通するピンを介して連結する左右の外プレートとを交互に屈曲自在に連結してなり、内プレート、外プレートは、それぞれ片側の一辺を同方向の山形に形成し、各ブッシュには、ローラを相対回転自在に装着することをその要旨とする。
【0007】
なお、各ブッシュは、内プレートの外面に突出する先端を介して、内プレート、外プレートの間に介装するシール材を保持することができ、シール材は、Oリングとすることができる。
【発明の効果】
【0008】
かかる発明の構成によるときは、左右の内プレートは、ブッシュを介して連結され、外プレート側のピンをブッシュに相対回転自在に挿通させることにより、左右の外プレートに対して屈曲自在に連結され、したがって、内プレート、外プレートを交互に連結するフィードチェーンは、全体として屈曲自在に構成されている。なお、ブッシュの両端は、内プレートのブッシュ孔に圧入され、相対回転不能になっており、ピンの両端は、外プレートのピン孔に圧入され、相対回転不能にかしめられている。そこで、内プレートは、ブッシュがピンのまわりに回転することになり、ブッシュの内周面の全体が軸受面積となるから、内プレートの孔の内周面を軸受面積とする従来のものに対し、少なくとも10倍以上30倍程度の軸受面積を実現し、2〜5倍程度の耐久性を容易に実現することができる。
【0009】
また、軸受面積が十分大きいので、内プレートが内側に過大に傾いて外プレートとの間に土砂を噛み込んだり、それによって屈曲性が劣化したり、走行中に大きな横曲がりを生じてガイドレールから脱線したりするおそれがない。なお、フィードチェーンは、組み合わせるスプロケットが小径であるために内プレート、外プレートの屈曲角度が極端に大きい上、穀稈の搬送時に内プレートが外プレートに強く押し付けられるため、屈曲時に過大な摩擦抵抗や騒音を生じ易い。そこで、この発明では、各ブッシュの先端を内プレートの外面に少なくとも0.3〜0.5mm程度突出させて内プレート、外プレートの間に適切な隙間を形成することにより、屈曲時の摩擦抵抗や騒音を大幅に低減させることができる。
【0010】
内プレートの外面に突出する各ブッシュの先端を介してシール材を保持することにより、ブッシュとピンとの間に封入する潤滑用のオイルの散逸を防ぎ、全体としての耐久性をさらに向上させることができる。なお、シール材は、ブッシュの外径に適合するOリングであってもよく、内プレート、外プレートの間に挟み込んで軽く弾性変形させることにより、ブッシュ内のオイルを封じることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0012】
農業機械用のフィードチェーンは、左右の内プレート11、11、左右の外プレート12、12を交互に屈曲自在に連結してなる(図1、図2)。
【0013】
各内プレート11、外プレート12は、片側の一辺を同方向に同一高さの二等片三角形の山形11b、12bに突出させている。左右の内プレート11、11は、両端部のブッシュ21、21を介して連結されており、左右の外プレート12、12は、ブッシュ21、21に相対回転自在に挿通する両端部のピン22、22を介して連結されている。なお、各ブッシュ21には、ローラ23が相対回転自在に装着されている。各ブッシュ21の先端は、内プレート11のブッシュ孔11aに圧入して相対回転不能になっており、各ピン22の先端は、外プレート12のピン孔12aに圧入されて相対回転不能にかしめられている。また、各ブッシュ21の先端、各ピン22の先端は、それぞれ内プレート11の外面、外プレート12の外面に突出している。そこで、隣接する内プレート11、外プレート12の間には、内プレート11の外面に突出するブッシュ21の先端を介し、顕著な隙間dが形成されている。
【0014】
かかる農業機械用のフィードチェーンは、ブッシュ21がピン22のまわりに相対回転することにより屈曲する。また、ブッシュ21の内周面の全部が大きな軸受面積を形成するから、耐久性を十分高くすることができる上、内プレート11が内側に過大に倒れたりすることがない。また、隣接する内プレート11、外プレート12の間に隙間dを有するため、屈曲時に過大な摩擦抵抗や騒音を生じるおそれもない。
【他の実施の形態】
【0015】
内プレート11、外プレート12の間の隙間dには、内プレート11の外面に突出するブッシュ21の先端を介し、リング状のシール材24を介装して保持することができる(図3、図4)。
【0016】
シール材24は、たとえばOリングであって、内プレート11、外プレート12の間に挟み込んで軸方向に軽く弾性変形させることにより、ブッシュ21、ピン22の間に注油する潤滑用のオイルを封止して保持することができる。なお、シール材24は、ブッシュ21、ピン22を介して内プレート11、外プレート12が相対回転する際に過大な摩擦抵抗を生じないものとし、Oリングに代えて、適切な弾性材料により単純な平ワッシャ形または短管形に形成してもよい。
【0017】
この発明に係るフィードチェーンの耐久試験データの一例を図5に示す。ただし、図5において、実施例1、2は、それぞれ図1、図2のフィードチェーン、図3、図4のフィードチェーンであり、比較例1、2は、それぞれJIS B 9204のスタンダードタイプ、バーリングタイプである。また、図5の試験条件は、図6に一括して示すとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】要部構成平面図
【図2】要部構成側面図
【図3】他の実施の形態を示す図1相当図
【図4】図3の要部拡大図
【図5】試験データを示す線図
【図6】試験条件を示す図表
【符号の説明】
【0019】
11…内プレート
11b…山形
12…外プレート
12b…山形
21…ブッシュ
22…ピン
23…ローラ
24…シール材

特許出願人 株式会社 江沼チヱン製作所
代理人 弁理士 松 田 忠 秋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部のブッシュを介して連結する左右の内プレートと、前記ブッシュに相対回転自在に挿通するピンを介して連結する左右の外プレートとを交互に屈曲自在に連結してなり、前記内プレート、外プレートは、それぞれ片側の一辺を同方向の山形に形成し、前記各ブッシュには、ローラを相対回転自在に装着することを特徴とする農業機械用のフィードチェーン。
【請求項2】
前記各ブッシュは、前記内プレートの外面に突出する先端を介して、前記内プレート、外プレートの間に介装するシール材を保持することを特徴とする請求項1記載の農業機械用のフィードチェーン。
【請求項3】
前記シール材は、Oリングであることを特徴とする請求項2記載の農業機械用のフィードチェーン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−225745(P2009−225745A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77371(P2008−77371)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000143260)株式会社江沼チヱン製作所 (14)
【Fターム(参考)】