農業用ハウスの被覆フィルム及び農業用ハウス
【課題】内部に空気を保持し空気層を確実に形成して保温性に優れた農業ハウスを形成することができる農業用ハウスの被覆フィルム及び農業用ハウスを提供する。
【解決手段】農業用ハウスの被覆フィルム１は、農業用ハウスＡの支柱２、２間に張設されて用いられる農業用ハウスの被覆フィルムであって、周方向に継ぎ目のない筒状に形成され、扁平状にして上記農業用ハウスの支柱２、２間に張設され且つ内部に空気を供給させて用いられることを特徴とするので、農業用ハウスの被覆フィルム１にはその周方向に接合部が存在せず、よって、農業用ハウスの被覆フィルム１内に供給される空気を確実に保持して空気層を形成することができ、保温性に優れた農業用ハウスＡを形成することができる。
【解決手段】農業用ハウスの被覆フィルム１は、農業用ハウスＡの支柱２、２間に張設されて用いられる農業用ハウスの被覆フィルムであって、周方向に継ぎ目のない筒状に形成され、扁平状にして上記農業用ハウスの支柱２、２間に張設され且つ内部に空気を供給させて用いられることを特徴とするので、農業用ハウスの被覆フィルム１にはその周方向に接合部が存在せず、よって、農業用ハウスの被覆フィルム１内に供給される空気を確実に保持して空気層を形成することができ、保温性に優れた農業用ハウスＡを形成することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、保温性に優れた農業用ハウスを形成することができる農業用ハウスの被覆フィルム及びこの農業用ハウスの被覆フィルムを用いた農業用ハウスに関する。
【背景技術】
【０００２】
従来から、農作物を栽培するにあたって農業用ハウスが用いられている。この農業用ハウスは、門形状に形成された複数個の支柱を所定間隔毎に配設すると共に、これら支柱間に合成樹脂製の被覆フィルムを張設することによって形成されており、農業用ハウス内の保温性を向上させるために被覆フィルムを二枚重ね合わせた状態にして張設することが行われていた。
【０００３】
しかしながら、被覆フィルムを二枚重ね合わせた状態で支柱間に張設することは作業上、面倒であり、農業用ハウスの被覆作業の効率が悪いといった問題点を有していた。
【０００４】
そこで、特許文献１には、二重構造となっている空気膜形成フィルムの少なくとも両側長手方向端辺は熱溶着または接着により密閉形態とした農業ハウス被覆用のフィルムが提案されている。
【０００５】
ところが、上記農業ハウス被覆用のフィルムは、別体の二枚の空気膜形成フィルムを重ね合わせ、これら二枚の空気膜形成フィルムの幅方向の対向端部同士を熱溶着或いは接着させて製造されたものであることから、フィルム同士の熱溶着や接着が不充分な場合が多々発生し、又、農業ハウス被覆用のフィルム内に空気を供給した際にフィルム同士の熱溶着部或いは接着部が内圧に耐えきれなくなることもあり、空気膜形成フィルム同士の接合部が部分的に離間し、農業ハウス被覆用のフィルム内に供給した空気が外部に漏出し、農業ハウスの保温性が低下してしまうといった問題点を有していた。
【０００６】
しかも、上記農業ハウス被覆用のフィルムは、その空気膜形成フィルムとして防曇剤を塗布したもの若しくは防曇剤練込製品を用い、該防曇剤塗布面又は防曇剤練り込み面が同方向に向くように配設してなる（請求項４）。
【０００７】
従って、空気膜形成フィルム同士の接合部に防曇剤層が介在した状態となり、空気膜形成フィルム同士の接合が不充分となって上述したような空気の漏出がより生じやすくなっていた。
【０００８】
【特許文献１】特開２００４−１４１０１７号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００９】
本発明は、内部に空気を保持し空気層を確実に形成して保温性に優れた農業ハウスを形成することができる農業用ハウスの被覆フィルム及びこの農業用ハウスの被覆フィルムを用いた農業用ハウスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
本発明の農業用ハウスの被覆フィルムは、農業用ハウスの支柱間に張設されて用いられる農業用ハウスの被覆フィルムであって、周方向に継ぎ目のない筒状に形成され、扁平状にして上記農業用ハウスの支柱間に張設され且つ内部に空気を供給させて用いられることを特徴とする。
【００１１】
そして、上記農業用ハウスの被覆フィルムにおいて、農業用ハウスの支柱間に偏平状に張設した状態において、農業用ハウス内に面するフィルム部の外面に防曇層が設けられている一方、農業用ハウス外に面するフィルム部の外面には防曇層が設けられていないことを特徴とする。
【００１２】
又、上記農業用ハウスの被覆フィルムにおいて、農業用ハウスの被覆フィルムが複数の合成樹脂層を内外方向に積層一体化させてなり、最も外側の合成樹脂層には防曇剤を含有させていないと共に、最も内側の合成樹脂層には防曇剤を含有させていることを特徴とする。
【００１３】
そして、本発明の農業用ハウスは、所定間隔毎に配設してなる複数個の門形状の支柱間に農業用ハウスの被覆フィルムを張設して形成された農業用ハウスであって、上記農業用ハウスの被覆フィルムは、その周方向に継ぎ目のない筒状に形成され、両端開口部が閉塞された扁平状にて上記支柱間に張設されており、上記農業用ハウスの被覆フィルム内に空気を供給、充満可能に構成されていることを特徴とする。
【００１４】
又、上記農業用ハウスは、農業用ハウス内に面する農業用ハウスの被覆フィルムのフィルム部の外面に防曇層が設けられている一方、農業用ハウス外に面する農業用ハウスの被覆フィルムのフィルム部の外面には防曇層が設けられていないことを特徴とする。
【００１５】
更に、上記農業用ハウスは、農業用ハウスの被覆フィルムが複数の合成樹脂層を内外方向に積層一体化させてなり、最も外側の合成樹脂層には防曇剤を含有させていないと共に、最も内側の合成樹脂層には防曇剤を含有させていることを特徴とする。
【発明の効果】
【００１６】
本発明の農業用ハウスの被覆フィルムは、農業用ハウスの支柱間に張設されて用いられる農業用ハウスの被覆フィルムであって、周方向に継ぎ目のない筒状に形成され、扁平状にして上記農業用ハウスの支柱間に張設され且つ内部に空気を供給させて用いられることを特徴とするので、農業用ハウスの被覆フィルムにはその周方向に接合部が存在せず、よって、農業用ハウスの被覆フィルム内に供給される空気を確実に保持して空気層を形成することができ、保温性に優れた農業用ハウスを形成することができる。
【００１７】
そして、農業用ハウスの被覆フィルムは、その周方向に継目のない筒状に形成されており、従来技術の如く、別体の二枚のフィルムの対向端部同士を熱溶着或いは接着する必要はなく、インフレーション成形などの成形方法を用いて連続的に製造することができ、製造効率に優れ且つ均質なものとなっている。
【００１８】
又、上記農業用ハウスの被覆フィルムにおいて、農業用ハウスの支柱間に偏平状に張設した状態において、農業用ハウス内に面するフィルム部の外面に防曇層が設けられている一方、農業用ハウス外に面するフィルム部の外面には防曇層が設けられていないことを特徴とするので、農業用ハウス内に植物の栽培のために散布される水分に起因した結露によって被覆フィルムが曇るのを確実に防止して、農業用ハウス内の植物への日光の照射を充分に行うことができ、農業用ハウス内の植物の成長をより良好なものとすることができる。
【００１９】
更に、農業用ハウスの被覆フィルムが複数の合成樹脂層を内外方向に積層一体化させてなり、最も外側の合成樹脂層には防曇剤を含有させていないと共に、最も内側の合成樹脂層には防曇剤を含有させている場合には、農業用ハウスの被覆フィルムの内周面にのみ防曇剤をブリードアウトさせて防曇層を形成することができる一方、農業用ハウスの被覆フィルムの外周面、特に、農業用ハウスの被覆フィルムにおける農業用ハウス外に面するフィルム部の外面に防曇層が形成されないようにすることができる。
【００２０】
従って、農業用ハウス内外の温度差に伴って生じる結露によって被覆フィルム表面が曇ることを防止することができると共に、農業用ハウスの被覆フィルムにおける農業用ハウス外に面するフィルム部に防曇剤に起因した汚れの付着を防止して農業用ハウスの被覆フィルムの透明性を長期間に亘って確保しており、農業用ハウス内に充分な量の日光を供給して植物の栽培を円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２１】
本発明の農業用ハウスの被覆フィルムの一例を図面を参照しつつ説明する。農業用ハウスの被覆フィルム１は、可撓性を有する透明な合成樹脂フィルムから形成され、図１に示したように、長尺状にして筒状に形成されており、周方向に熱融着部や接着部などの継ぎ目が存在していない。
【００２２】
上記農業用ハウスの被覆フィルム１を構成している合成樹脂としては、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリエチレン系樹脂、ホモポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体などのプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂；ポリ塩化ビニル系樹脂；ポリエステル系樹脂；ポリメチルメタクリレート系樹脂；ポリカーボネート系樹脂などが挙げられ、これらは単独で使用されても、二種以上が併用されてもよい。上記合成樹脂としては、これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリエチレン系樹脂がより好ましく、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。
【００２３】
又、農業用ハウスの被覆フィルム１は、図１のように単層のフィルムであっても、図２に示したように、複数層（図２では三層）の合成樹脂層1a、1b、1c・・・が内外方向に層状に積層一体化されてなるものであってもよいが、複数層の合成樹脂層1a、1b、1c・・・が内外方向に層状に積層一体化されてなるものが好ましい。
【００２４】
特に、農業用ハウスの被覆フィルム１が複数層の合成樹脂層1a、1b、1c・・・を内外方向に層状に積層一体化させてなる場合には、最も外側の合成樹脂層に防曇剤を含有させないと共に、最も内側の合成樹脂層1aには防曇剤を含有させることが好ましい。なお、複数層の合成樹脂層1a、1b、1c・・・のうち、最も外側の合成樹脂層及び最も内側の合成樹脂層を除いた残余の合成樹脂層には防曇剤が含有されていても含有されていなくてもよいが、防曇剤が含有されていないことが好ましい。
【００２５】
このように構成することによって、最も内側の合成樹脂層1a中に含有させた防曇剤を農業用ハウスの被覆フィルム１の内周面にブリードアウトさせることによって防曇層を形成する一方、合成樹脂層1a中に含有させた防曇剤が、最も外側にある合成樹脂層によって被覆フィルム１の外周面にブリードアウトするのを防止し或いは遅らせており農業用ハウスの被覆フィルム１の使用中に農業用ハウスの被覆フィルム１の外周面に防曇剤がブリードアウトしないようにしている。
【００２６】
従って、後述するように、農業用ハウスの被覆フィルム１を農業用ハウスＡの支柱２、・・・間に扁平状にして張設した状態において、農業用ハウスの被覆フィルム１の農業用ハウス外に面したフィルム部12に防曇剤に起因して汚れが付着するのを防止し、農業用ハウスの被覆フィルム１の透明性を長期間に亘って確保することができる。
【００２７】
上記防曇剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、グリセリンステアリン酸エステル、ジグリセリンステアリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステル、ソルビトールグリセリンステアリン酸エステルなどの多価アルコール飽和脂肪酸エステル；グリセリンオレイン酸エステル、ジグリセリンオレイン酸エステルなどの多価アルコール不飽和脂肪酸エステルなどが挙げられ、単独で用いられても、二種以上が併用されてもよい。
【００２８】
そして、農業用ハウスの被覆フィルム１は、偏平な状態とされた上で、後述する農業用ハウスＡの支柱２，２間に張設されるが、この偏平な状態において、互いに重ね合わせられた状態となる一対のフィルム部11、12のうちの一方のフィルム部11の外面11a にはその全面に亘って防曇剤が塗布されることによって防曇層11b が一体的に設けられている一方、他方のフィルム部12の外面12a にはその全面に亘って防曇層が設けられていない。
【００２９】
このように、農業用ハウスの被覆フィルムにおけるフィルム部11の外面11a には、防曇剤の塗布による防曇層11b が一体的に設けられているが、この防曇層11b は、フィルム中に含有させた防曇剤のブリードアウトによって形成された防曇層と異なり、略均一にして充分な厚さを有しており、非常に高い防曇効果を発揮する。
【００３０】
よって、農業用ハウスＡ内は、その内部において栽培される植物のためにまかれる水の影響で湿度が高くなっているものの、上述した農業用ハウスの被覆フィルムにおける防曇剤の塗布による防曇層11b の存在によってフィルム部11の外面11a に生じた結露によってフィルム部11が曇ってしまうのが効果的に防止され、農業用ハウスＡ内に充分な量の日光を供給することができる。
【００３１】
上記防曇層11b を構成している防曇剤としては、公知のものを用いることができ、例えば、コロイダルシリカやコロイダルアルミナに代表される無機酸化物ゾル、界面活性剤を主成分とする液、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、多糖類、ポリアクリル酸などの親水性樹脂が挙げられる。なお、コロイダルシリカやコロイダルアルミナを主成分とする無機酸化ゾルには、必要に応じて、界面活性剤、合成樹脂を添加してもよい。
【００３２】
次に、上記農業用ハウスの被覆フィルム１の製造方法について説明する。農業用ハウスの被覆フィルム１の製造方法としては、例えば、次のようなインフレーション成形を用いる方法が挙げられる。具体的には、先ず、農業用ハウスの被覆フィルムを構成する合成樹脂を押出機に供給し、この押出機の先端に取付けたサーキュラダイから円筒状に押出すと共に、サーキュラーダイの中心部から圧縮空気を供給して周方向に延伸して長尺状の円筒状フィルムを製造する。この円筒状フィルムを扁平な状態とし、この扁平な状態の円筒状フィルムにおける互いに重ね合わせられた一対のフィルム部のうちの一方のフィルム部の外面全面に防曇剤を塗布することによって長尺状の農業用ハウスの被覆フィルムを製造することができる。
【００３３】
又、農業用ハウスの被覆フィルム１が複数層の合成樹脂層を積層一体化させたものである場合には、複数機の押出機を用意し、これらの押出機を一のサーキュラダイに接続してなる製造装置を用意する。そして、各押出機に互いに異なる合成樹脂を供給する。
【００３４】
この際、最も内側の合成樹脂層を構成する合成樹脂が供給された押出機には防曇剤が供給されるが、最も外側の合成樹脂層を構成する合成樹脂が供給された押出機には防曇剤は供給されない。なお、複数層の合成樹脂層のうち、最も内側の合成樹脂層及び最も外側の合成樹脂層を除く残余の合成樹脂層を構成する合成樹脂が供給された押出機には防曇剤が供給されてもされなくてもよいが、防曇剤が供給されないことが好ましい。
【００３５】
各押出機に供給された合成樹脂は押出機内にて溶融混練された上で押出機の先端に取付けたサーキュラダイに供給され、サーキュラダイ内にて溶融状態の合成樹脂を内外方向に層状に積層した上でサーキュラダイから円筒状に押出すと共に、サーキュラーダイの中心部から圧縮空気を供給して周方向に延伸して長尺状の円筒状フィルムを製造する。そして、この円筒状フィルムを扁平な状態とし、この扁平な状態の円筒状フィルムにおける互いに重ね合わせられた一対のフィルム部のうちの一方のフィルム部の外面全面に防曇剤を塗布することによって農業用ハウスの被覆フィルムを製造することができる。
【００３６】
上記防曇剤をフィルム部の外面に塗布する方法としては、例えば、グラビアコーターなどのロールコート法、バーコード法、ディップコート法、スプレー法、はけ塗り法などが挙げられる。
【００３７】
次に、上記農業用ハウスの被覆フィルム１を用いて農業用ハウスＡを形成する要領について説明する。先ず、農業用ハウスＡの骨組みとなる門形状の支柱２、２・・・を複数個、所定間隔毎に地上に配設する。なお、複数個の門形状の支柱２、２・・・同士は、それらの上端部同士が長尺状の連結部材（図示せず）によって連結されている。
【００３８】
そして、図３及び図４に示したように、複数枚の長尺状の農業用ハウスの被覆フィルム１、１・・・をその長さ方向の全長に亘って扁平な状態とし、これらの扁平な農業用ハウスの被覆フィルム１、１・・・をそれらの長さ方向が支柱２、２・・・の配設方向に合致した状態にして外側から支柱２、２・・・間に張設すると共に、互いに隣接する農業用ハウスの被覆フィルム１、１の対向端部同士を重ね合わせた上で支柱２、２・・・に一体的に設けられた接続具３、３・・・を用いて接続一体化する。この際、農業用ハウスの被覆フィルム１の防曇層11b が農業用ハウスＡ内となるように調整する。
【００３９】
更に、各農業用ハウスの被覆フィルム１の両端開口部を全面的に閉塞して各農業用ハウスの被覆フィルム１内を空気充満部14とすると共に、複数枚の農業用ハウスの被覆フィルム１、１・・・で形成されたドーム状の両開口端部を別途用意した公知な農業用フィルム４で被覆して、門形状の支柱２、２・・・を複数枚の農業用ハウスの被覆フィルム１、１・・・及び農業用フィルム４、４・・・で全面的に被覆して農業用ハウスＡを形成する。なお、農業用ハウスの被覆フィルム１の両端開口部を閉塞する方法としては、特に限定されず、熱融着や接着による方法の他に、別途用意した閉塞具でもって閉塞してもよい。
【００４０】
又、上記接続具３は、図５に示したように、断面コ字状の溝部31a を備えた長尺状の溝部材31と、この溝部材31の溝部31a に着脱自在に嵌め込まれる波形状に形成された止め金具32とからなる。
【００４１】
そして、上記溝部材31は、その長さ方向を支柱２、２・・・の配設方向に合致させつつ支柱２、２・・・を跨いだ状態にして支柱２の長さ方向に所定間隔毎に配設一体化されており、この溝部材31の溝部31a 内に互いに隣接する農業用ハウスの被覆フィルム１、１の対向端部同士を重ね合わせた状態にして挿入した上で溝部材31の溝部31a 内に止め金具32を着脱自在に嵌め込むことによって、互いに隣接する農業用ハウスの被覆フィルム１、１同士を隙間なく接続一体化している。
【００４２】
更に、上述のように配設された各農業用ハウスの被覆フィルム１における一方のフィルム部11に、このフィルム部11を内外方向に貫通した状態に円筒状の空気取り入れ口13を一体的に設け、この空気取り入れ口13、13・・・同士を一つの接続管５で連結、連通させ、この接続管５の端部に接続したポンプＰを作動させることによって、上記接続管５及び空気取り入れ口13を通じて各農業用ハウスの被覆フィルム１の空気充満部14内に空気を供給することができるように構成されている。
【００４３】
そして、図６に示したように、空気充満部14内に空気を供給、充満された各農業用ハウスの被覆フィルム１は、その内部に空気層Ｂが形成され、この空気層Ｂが断熱層として作用し、農業用ハウスＡは優れた保温性を有する。又、上記農業用ハウスの被覆フィルム１は、その周方向に接合部や接着部などの継ぎ目が形成されていないことから、農業用ハウスの被覆フィルム１内に供給した空気圧によって農業用ハウスの被覆フィルムが破損してしまうようなことはなく、農業用ハウスの被覆フィルム１内に空気を保持して空気層Ｂを確実に形成し、農業用ハウスＡ内を良好に保温することができる。
【００４４】
更に、農業用ハウスＡ内は、植物の栽培のために散水されることから湿気が高い状態となっているが、農業用ハウスの被覆フィルム１のフィルム部11は、農業用ハウスの被覆フィルム１内に形成された空気層Ｂの存在によって、農業用ハウスＡ外の外気に直接、接触することがないと共に、農業用ハウスの被覆フィルム１のフィルム部11の外面11a には防曇剤の塗布による防曇層11b が全面的に設けられており、よって、農業用ハウスの被覆フィルム１のフィルム部11の防曇層11b 上には結露が生じにくく、農業用ハウスの被覆フィルム１のフィルム部11の防曇層11b 上に結露が生じた場合には、この結露は円滑に下方に向かって流下し、農業用ハウスの被覆フィルム１のフィルム部11が曇るようなことはなく、農業用ハウスＡ内に農業用ハウスの被覆フィルム１を透して充分な量の日光を供給することができる。
【００４５】
又、農業用ハウスの被覆フィルム１内に形成された空気層Ｂに含有された水分に起因して、農業用ハウスＡの内外温度差に伴って農業用ハウスの被覆フィルム１の内周面上に結露が生じる場合があるが、このような場合にあっても、農業用ハウスの被覆フィルム１の内周面の全面には合成樹脂層中に含有させた防曇剤をブリードアウトさせることにより防曇層が形成されており、この防曇層によって結露は円滑に下方に向かって流下し、農業用ハウスの被覆フィルム１の内周面が曇るようなことはなく、農業用ハウスＡ内に農業用ハウスの被覆フィルム１を透して充分な量の日光を供給することができる。
【００４６】
以上の如く、本発明の農業用ハウスの被覆フィルム１を用いて得られた農業用ハウスＡは、農業用ハウスの被覆フィルム１内に形成された空気層によって優れた保温性を有していると共に、農業用ハウスの被覆フィルム１の曇り及び汚れの付着を概ね防止し、農業用ハウスの被覆フィルム１を透して農業用ハウスＡ内の植物に充分に日光を供給することができ、農業用ハウスＡ内において植物を安定的に栽培することができる。
【図面の簡単な説明】
【００４７】
【図１】本発明の農業用ハウスの被覆フィルムを示した端面図である。
【図２】本発明の農業用ハウスの被覆フィルムの他の一例を示した端面図である。
【図３】本発明の農業用ハウスの被覆フィルムを用いて形成された農業用ハウスを示した斜視図である。
【図４】本発明の農業用ハウスの被覆フィルムを用いて形成された農業用ハウスを示した断面図である。
【図５】農業用ハウスの被覆フィルム同士の接合部を示した断面図である。
【図６】農業用ハウスの被覆フィルム同士の接合部を示した断面図である。
【符号の説明】
【００４８】
１ 農業用ハウスの被覆フィルム
1a、1b、1c 合成樹脂層
11、12 フィルム部
11b 防曇層
２ 支柱
Ａ 農業用ハウス
Ｂ 空気層
【技術分野】
【０００１】
本発明は、保温性に優れた農業用ハウスを形成することができる農業用ハウスの被覆フィルム及びこの農業用ハウスの被覆フィルムを用いた農業用ハウスに関する。
【背景技術】
【０００２】
従来から、農作物を栽培するにあたって農業用ハウスが用いられている。この農業用ハウスは、門形状に形成された複数個の支柱を所定間隔毎に配設すると共に、これら支柱間に合成樹脂製の被覆フィルムを張設することによって形成されており、農業用ハウス内の保温性を向上させるために被覆フィルムを二枚重ね合わせた状態にして張設することが行われていた。
【０００３】
しかしながら、被覆フィルムを二枚重ね合わせた状態で支柱間に張設することは作業上、面倒であり、農業用ハウスの被覆作業の効率が悪いといった問題点を有していた。
【０００４】
そこで、特許文献１には、二重構造となっている空気膜形成フィルムの少なくとも両側長手方向端辺は熱溶着または接着により密閉形態とした農業ハウス被覆用のフィルムが提案されている。
【０００５】
ところが、上記農業ハウス被覆用のフィルムは、別体の二枚の空気膜形成フィルムを重ね合わせ、これら二枚の空気膜形成フィルムの幅方向の対向端部同士を熱溶着或いは接着させて製造されたものであることから、フィルム同士の熱溶着や接着が不充分な場合が多々発生し、又、農業ハウス被覆用のフィルム内に空気を供給した際にフィルム同士の熱溶着部或いは接着部が内圧に耐えきれなくなることもあり、空気膜形成フィルム同士の接合部が部分的に離間し、農業ハウス被覆用のフィルム内に供給した空気が外部に漏出し、農業ハウスの保温性が低下してしまうといった問題点を有していた。
【０００６】
しかも、上記農業ハウス被覆用のフィルムは、その空気膜形成フィルムとして防曇剤を塗布したもの若しくは防曇剤練込製品を用い、該防曇剤塗布面又は防曇剤練り込み面が同方向に向くように配設してなる（請求項４）。
【０００７】
従って、空気膜形成フィルム同士の接合部に防曇剤層が介在した状態となり、空気膜形成フィルム同士の接合が不充分となって上述したような空気の漏出がより生じやすくなっていた。
【０００８】
【特許文献１】特開２００４−１４１０１７号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００９】
本発明は、内部に空気を保持し空気層を確実に形成して保温性に優れた農業ハウスを形成することができる農業用ハウスの被覆フィルム及びこの農業用ハウスの被覆フィルムを用いた農業用ハウスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【００１０】
本発明の農業用ハウスの被覆フィルムは、農業用ハウスの支柱間に張設されて用いられる農業用ハウスの被覆フィルムであって、周方向に継ぎ目のない筒状に形成され、扁平状にして上記農業用ハウスの支柱間に張設され且つ内部に空気を供給させて用いられることを特徴とする。
【００１１】
そして、上記農業用ハウスの被覆フィルムにおいて、農業用ハウスの支柱間に偏平状に張設した状態において、農業用ハウス内に面するフィルム部の外面に防曇層が設けられている一方、農業用ハウス外に面するフィルム部の外面には防曇層が設けられていないことを特徴とする。
【００１２】
又、上記農業用ハウスの被覆フィルムにおいて、農業用ハウスの被覆フィルムが複数の合成樹脂層を内外方向に積層一体化させてなり、最も外側の合成樹脂層には防曇剤を含有させていないと共に、最も内側の合成樹脂層には防曇剤を含有させていることを特徴とする。
【００１３】
そして、本発明の農業用ハウスは、所定間隔毎に配設してなる複数個の門形状の支柱間に農業用ハウスの被覆フィルムを張設して形成された農業用ハウスであって、上記農業用ハウスの被覆フィルムは、その周方向に継ぎ目のない筒状に形成され、両端開口部が閉塞された扁平状にて上記支柱間に張設されており、上記農業用ハウスの被覆フィルム内に空気を供給、充満可能に構成されていることを特徴とする。
【００１４】
又、上記農業用ハウスは、農業用ハウス内に面する農業用ハウスの被覆フィルムのフィルム部の外面に防曇層が設けられている一方、農業用ハウス外に面する農業用ハウスの被覆フィルムのフィルム部の外面には防曇層が設けられていないことを特徴とする。
【００１５】
更に、上記農業用ハウスは、農業用ハウスの被覆フィルムが複数の合成樹脂層を内外方向に積層一体化させてなり、最も外側の合成樹脂層には防曇剤を含有させていないと共に、最も内側の合成樹脂層には防曇剤を含有させていることを特徴とする。
【発明の効果】
【００１６】
本発明の農業用ハウスの被覆フィルムは、農業用ハウスの支柱間に張設されて用いられる農業用ハウスの被覆フィルムであって、周方向に継ぎ目のない筒状に形成され、扁平状にして上記農業用ハウスの支柱間に張設され且つ内部に空気を供給させて用いられることを特徴とするので、農業用ハウスの被覆フィルムにはその周方向に接合部が存在せず、よって、農業用ハウスの被覆フィルム内に供給される空気を確実に保持して空気層を形成することができ、保温性に優れた農業用ハウスを形成することができる。
【００１７】
そして、農業用ハウスの被覆フィルムは、その周方向に継目のない筒状に形成されており、従来技術の如く、別体の二枚のフィルムの対向端部同士を熱溶着或いは接着する必要はなく、インフレーション成形などの成形方法を用いて連続的に製造することができ、製造効率に優れ且つ均質なものとなっている。
【００１８】
又、上記農業用ハウスの被覆フィルムにおいて、農業用ハウスの支柱間に偏平状に張設した状態において、農業用ハウス内に面するフィルム部の外面に防曇層が設けられている一方、農業用ハウス外に面するフィルム部の外面には防曇層が設けられていないことを特徴とするので、農業用ハウス内に植物の栽培のために散布される水分に起因した結露によって被覆フィルムが曇るのを確実に防止して、農業用ハウス内の植物への日光の照射を充分に行うことができ、農業用ハウス内の植物の成長をより良好なものとすることができる。
【００１９】
更に、農業用ハウスの被覆フィルムが複数の合成樹脂層を内外方向に積層一体化させてなり、最も外側の合成樹脂層には防曇剤を含有させていないと共に、最も内側の合成樹脂層には防曇剤を含有させている場合には、農業用ハウスの被覆フィルムの内周面にのみ防曇剤をブリードアウトさせて防曇層を形成することができる一方、農業用ハウスの被覆フィルムの外周面、特に、農業用ハウスの被覆フィルムにおける農業用ハウス外に面するフィルム部の外面に防曇層が形成されないようにすることができる。
【００２０】
従って、農業用ハウス内外の温度差に伴って生じる結露によって被覆フィルム表面が曇ることを防止することができると共に、農業用ハウスの被覆フィルムにおける農業用ハウス外に面するフィルム部に防曇剤に起因した汚れの付着を防止して農業用ハウスの被覆フィルムの透明性を長期間に亘って確保しており、農業用ハウス内に充分な量の日光を供給して植物の栽培を円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００２１】
本発明の農業用ハウスの被覆フィルムの一例を図面を参照しつつ説明する。農業用ハウスの被覆フィルム１は、可撓性を有する透明な合成樹脂フィルムから形成され、図１に示したように、長尺状にして筒状に形成されており、周方向に熱融着部や接着部などの継ぎ目が存在していない。
【００２２】
上記農業用ハウスの被覆フィルム１を構成している合成樹脂としては、特に限定されず、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリエチレン系樹脂、ホモポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体などのプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂；ポリ塩化ビニル系樹脂；ポリエステル系樹脂；ポリメチルメタクリレート系樹脂；ポリカーボネート系樹脂などが挙げられ、これらは単独で使用されても、二種以上が併用されてもよい。上記合成樹脂としては、これらの中でも、ポリオレフィン系樹脂が好ましく、ポリエチレン系樹脂がより好ましく、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体が特に好ましい。
【００２３】
又、農業用ハウスの被覆フィルム１は、図１のように単層のフィルムであっても、図２に示したように、複数層（図２では三層）の合成樹脂層1a、1b、1c・・・が内外方向に層状に積層一体化されてなるものであってもよいが、複数層の合成樹脂層1a、1b、1c・・・が内外方向に層状に積層一体化されてなるものが好ましい。
【００２４】
特に、農業用ハウスの被覆フィルム１が複数層の合成樹脂層1a、1b、1c・・・を内外方向に層状に積層一体化させてなる場合には、最も外側の合成樹脂層に防曇剤を含有させないと共に、最も内側の合成樹脂層1aには防曇剤を含有させることが好ましい。なお、複数層の合成樹脂層1a、1b、1c・・・のうち、最も外側の合成樹脂層及び最も内側の合成樹脂層を除いた残余の合成樹脂層には防曇剤が含有されていても含有されていなくてもよいが、防曇剤が含有されていないことが好ましい。
【００２５】
このように構成することによって、最も内側の合成樹脂層1a中に含有させた防曇剤を農業用ハウスの被覆フィルム１の内周面にブリードアウトさせることによって防曇層を形成する一方、合成樹脂層1a中に含有させた防曇剤が、最も外側にある合成樹脂層によって被覆フィルム１の外周面にブリードアウトするのを防止し或いは遅らせており農業用ハウスの被覆フィルム１の使用中に農業用ハウスの被覆フィルム１の外周面に防曇剤がブリードアウトしないようにしている。
【００２６】
従って、後述するように、農業用ハウスの被覆フィルム１を農業用ハウスＡの支柱２、・・・間に扁平状にして張設した状態において、農業用ハウスの被覆フィルム１の農業用ハウス外に面したフィルム部12に防曇剤に起因して汚れが付着するのを防止し、農業用ハウスの被覆フィルム１の透明性を長期間に亘って確保することができる。
【００２７】
上記防曇剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、グリセリンステアリン酸エステル、ジグリセリンステアリン酸エステル、ポリグリセリンステアリン酸エステル、ソルビトールグリセリンステアリン酸エステルなどの多価アルコール飽和脂肪酸エステル；グリセリンオレイン酸エステル、ジグリセリンオレイン酸エステルなどの多価アルコール不飽和脂肪酸エステルなどが挙げられ、単独で用いられても、二種以上が併用されてもよい。
【００２８】
そして、農業用ハウスの被覆フィルム１は、偏平な状態とされた上で、後述する農業用ハウスＡの支柱２，２間に張設されるが、この偏平な状態において、互いに重ね合わせられた状態となる一対のフィルム部11、12のうちの一方のフィルム部11の外面11a にはその全面に亘って防曇剤が塗布されることによって防曇層11b が一体的に設けられている一方、他方のフィルム部12の外面12a にはその全面に亘って防曇層が設けられていない。
【００２９】
このように、農業用ハウスの被覆フィルムにおけるフィルム部11の外面11a には、防曇剤の塗布による防曇層11b が一体的に設けられているが、この防曇層11b は、フィルム中に含有させた防曇剤のブリードアウトによって形成された防曇層と異なり、略均一にして充分な厚さを有しており、非常に高い防曇効果を発揮する。
【００３０】
よって、農業用ハウスＡ内は、その内部において栽培される植物のためにまかれる水の影響で湿度が高くなっているものの、上述した農業用ハウスの被覆フィルムにおける防曇剤の塗布による防曇層11b の存在によってフィルム部11の外面11a に生じた結露によってフィルム部11が曇ってしまうのが効果的に防止され、農業用ハウスＡ内に充分な量の日光を供給することができる。
【００３１】
上記防曇層11b を構成している防曇剤としては、公知のものを用いることができ、例えば、コロイダルシリカやコロイダルアルミナに代表される無機酸化物ゾル、界面活性剤を主成分とする液、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、多糖類、ポリアクリル酸などの親水性樹脂が挙げられる。なお、コロイダルシリカやコロイダルアルミナを主成分とする無機酸化ゾルには、必要に応じて、界面活性剤、合成樹脂を添加してもよい。
【００３２】
次に、上記農業用ハウスの被覆フィルム１の製造方法について説明する。農業用ハウスの被覆フィルム１の製造方法としては、例えば、次のようなインフレーション成形を用いる方法が挙げられる。具体的には、先ず、農業用ハウスの被覆フィルムを構成する合成樹脂を押出機に供給し、この押出機の先端に取付けたサーキュラダイから円筒状に押出すと共に、サーキュラーダイの中心部から圧縮空気を供給して周方向に延伸して長尺状の円筒状フィルムを製造する。この円筒状フィルムを扁平な状態とし、この扁平な状態の円筒状フィルムにおける互いに重ね合わせられた一対のフィルム部のうちの一方のフィルム部の外面全面に防曇剤を塗布することによって長尺状の農業用ハウスの被覆フィルムを製造することができる。
【００３３】
又、農業用ハウスの被覆フィルム１が複数層の合成樹脂層を積層一体化させたものである場合には、複数機の押出機を用意し、これらの押出機を一のサーキュラダイに接続してなる製造装置を用意する。そして、各押出機に互いに異なる合成樹脂を供給する。
【００３４】
この際、最も内側の合成樹脂層を構成する合成樹脂が供給された押出機には防曇剤が供給されるが、最も外側の合成樹脂層を構成する合成樹脂が供給された押出機には防曇剤は供給されない。なお、複数層の合成樹脂層のうち、最も内側の合成樹脂層及び最も外側の合成樹脂層を除く残余の合成樹脂層を構成する合成樹脂が供給された押出機には防曇剤が供給されてもされなくてもよいが、防曇剤が供給されないことが好ましい。
【００３５】
各押出機に供給された合成樹脂は押出機内にて溶融混練された上で押出機の先端に取付けたサーキュラダイに供給され、サーキュラダイ内にて溶融状態の合成樹脂を内外方向に層状に積層した上でサーキュラダイから円筒状に押出すと共に、サーキュラーダイの中心部から圧縮空気を供給して周方向に延伸して長尺状の円筒状フィルムを製造する。そして、この円筒状フィルムを扁平な状態とし、この扁平な状態の円筒状フィルムにおける互いに重ね合わせられた一対のフィルム部のうちの一方のフィルム部の外面全面に防曇剤を塗布することによって農業用ハウスの被覆フィルムを製造することができる。
【００３６】
上記防曇剤をフィルム部の外面に塗布する方法としては、例えば、グラビアコーターなどのロールコート法、バーコード法、ディップコート法、スプレー法、はけ塗り法などが挙げられる。
【００３７】
次に、上記農業用ハウスの被覆フィルム１を用いて農業用ハウスＡを形成する要領について説明する。先ず、農業用ハウスＡの骨組みとなる門形状の支柱２、２・・・を複数個、所定間隔毎に地上に配設する。なお、複数個の門形状の支柱２、２・・・同士は、それらの上端部同士が長尺状の連結部材（図示せず）によって連結されている。
【００３８】
そして、図３及び図４に示したように、複数枚の長尺状の農業用ハウスの被覆フィルム１、１・・・をその長さ方向の全長に亘って扁平な状態とし、これらの扁平な農業用ハウスの被覆フィルム１、１・・・をそれらの長さ方向が支柱２、２・・・の配設方向に合致した状態にして外側から支柱２、２・・・間に張設すると共に、互いに隣接する農業用ハウスの被覆フィルム１、１の対向端部同士を重ね合わせた上で支柱２、２・・・に一体的に設けられた接続具３、３・・・を用いて接続一体化する。この際、農業用ハウスの被覆フィルム１の防曇層11b が農業用ハウスＡ内となるように調整する。
【００３９】
更に、各農業用ハウスの被覆フィルム１の両端開口部を全面的に閉塞して各農業用ハウスの被覆フィルム１内を空気充満部14とすると共に、複数枚の農業用ハウスの被覆フィルム１、１・・・で形成されたドーム状の両開口端部を別途用意した公知な農業用フィルム４で被覆して、門形状の支柱２、２・・・を複数枚の農業用ハウスの被覆フィルム１、１・・・及び農業用フィルム４、４・・・で全面的に被覆して農業用ハウスＡを形成する。なお、農業用ハウスの被覆フィルム１の両端開口部を閉塞する方法としては、特に限定されず、熱融着や接着による方法の他に、別途用意した閉塞具でもって閉塞してもよい。
【００４０】
又、上記接続具３は、図５に示したように、断面コ字状の溝部31a を備えた長尺状の溝部材31と、この溝部材31の溝部31a に着脱自在に嵌め込まれる波形状に形成された止め金具32とからなる。
【００４１】
そして、上記溝部材31は、その長さ方向を支柱２、２・・・の配設方向に合致させつつ支柱２、２・・・を跨いだ状態にして支柱２の長さ方向に所定間隔毎に配設一体化されており、この溝部材31の溝部31a 内に互いに隣接する農業用ハウスの被覆フィルム１、１の対向端部同士を重ね合わせた状態にして挿入した上で溝部材31の溝部31a 内に止め金具32を着脱自在に嵌め込むことによって、互いに隣接する農業用ハウスの被覆フィルム１、１同士を隙間なく接続一体化している。
【００４２】
更に、上述のように配設された各農業用ハウスの被覆フィルム１における一方のフィルム部11に、このフィルム部11を内外方向に貫通した状態に円筒状の空気取り入れ口13を一体的に設け、この空気取り入れ口13、13・・・同士を一つの接続管５で連結、連通させ、この接続管５の端部に接続したポンプＰを作動させることによって、上記接続管５及び空気取り入れ口13を通じて各農業用ハウスの被覆フィルム１の空気充満部14内に空気を供給することができるように構成されている。
【００４３】
そして、図６に示したように、空気充満部14内に空気を供給、充満された各農業用ハウスの被覆フィルム１は、その内部に空気層Ｂが形成され、この空気層Ｂが断熱層として作用し、農業用ハウスＡは優れた保温性を有する。又、上記農業用ハウスの被覆フィルム１は、その周方向に接合部や接着部などの継ぎ目が形成されていないことから、農業用ハウスの被覆フィルム１内に供給した空気圧によって農業用ハウスの被覆フィルムが破損してしまうようなことはなく、農業用ハウスの被覆フィルム１内に空気を保持して空気層Ｂを確実に形成し、農業用ハウスＡ内を良好に保温することができる。
【００４４】
更に、農業用ハウスＡ内は、植物の栽培のために散水されることから湿気が高い状態となっているが、農業用ハウスの被覆フィルム１のフィルム部11は、農業用ハウスの被覆フィルム１内に形成された空気層Ｂの存在によって、農業用ハウスＡ外の外気に直接、接触することがないと共に、農業用ハウスの被覆フィルム１のフィルム部11の外面11a には防曇剤の塗布による防曇層11b が全面的に設けられており、よって、農業用ハウスの被覆フィルム１のフィルム部11の防曇層11b 上には結露が生じにくく、農業用ハウスの被覆フィルム１のフィルム部11の防曇層11b 上に結露が生じた場合には、この結露は円滑に下方に向かって流下し、農業用ハウスの被覆フィルム１のフィルム部11が曇るようなことはなく、農業用ハウスＡ内に農業用ハウスの被覆フィルム１を透して充分な量の日光を供給することができる。
【００４５】
又、農業用ハウスの被覆フィルム１内に形成された空気層Ｂに含有された水分に起因して、農業用ハウスＡの内外温度差に伴って農業用ハウスの被覆フィルム１の内周面上に結露が生じる場合があるが、このような場合にあっても、農業用ハウスの被覆フィルム１の内周面の全面には合成樹脂層中に含有させた防曇剤をブリードアウトさせることにより防曇層が形成されており、この防曇層によって結露は円滑に下方に向かって流下し、農業用ハウスの被覆フィルム１の内周面が曇るようなことはなく、農業用ハウスＡ内に農業用ハウスの被覆フィルム１を透して充分な量の日光を供給することができる。
【００４６】
以上の如く、本発明の農業用ハウスの被覆フィルム１を用いて得られた農業用ハウスＡは、農業用ハウスの被覆フィルム１内に形成された空気層によって優れた保温性を有していると共に、農業用ハウスの被覆フィルム１の曇り及び汚れの付着を概ね防止し、農業用ハウスの被覆フィルム１を透して農業用ハウスＡ内の植物に充分に日光を供給することができ、農業用ハウスＡ内において植物を安定的に栽培することができる。
【図面の簡単な説明】
【００４７】
【図１】本発明の農業用ハウスの被覆フィルムを示した端面図である。
【図２】本発明の農業用ハウスの被覆フィルムの他の一例を示した端面図である。
【図３】本発明の農業用ハウスの被覆フィルムを用いて形成された農業用ハウスを示した斜視図である。
【図４】本発明の農業用ハウスの被覆フィルムを用いて形成された農業用ハウスを示した断面図である。
【図５】農業用ハウスの被覆フィルム同士の接合部を示した断面図である。
【図６】農業用ハウスの被覆フィルム同士の接合部を示した断面図である。
【符号の説明】
【００４８】
１ 農業用ハウスの被覆フィルム
1a、1b、1c 合成樹脂層
11、12 フィルム部
11b 防曇層
２ 支柱
Ａ 農業用ハウス
Ｂ 空気層
【特許請求の範囲】
【請求項１】
農業用ハウスの支柱間に張設されて用いられる農業用ハウスの被覆フィルムであって、周方向に継ぎ目のない筒状に形成され、扁平状にして上記農業用ハウスの支柱間に張設され且つ内部に空気を供給させて用いられることを特徴とする農業用ハウスの被覆フィルム。
【請求項２】
農業用ハウスの支柱間に偏平状に張設した状態において、農業用ハウス内に面するフィルム部の外面に防曇層が設けられている一方、農業用ハウス外に面するフィルム部の外面には防曇層が設けられていないことを特徴とする請求項１に記載の農業用ハウスの被覆フィルム。
【請求項３】
農業用ハウスの被覆フィルムが複数の合成樹脂層を内外方向に積層一体化させてなり、最も外側の合成樹脂層には防曇剤を含有させていないと共に、最も内側の合成樹脂層には防曇剤を含有させていることを特徴とする請求項１又は請求項２に記載の農業用ハウスの被覆フィルム。
【請求項４】
所定間隔毎に配設してなる複数個の門形状の支柱間に農業用ハウスの被覆フィルムを張設して形成された農業用ハウスであって、上記農業用ハウスの被覆フィルムは、その周方向に継ぎ目のない筒状に形成され、両端開口部が閉塞された扁平状にて上記支柱間に張設されており、上記農業用ハウスの被覆フィルム内に空気を供給、充満可能に構成されていることを特徴とする農業用ハウス。
【請求項５】
農業用ハウス内に面する農業用ハウスの被覆フィルムのフィルム部の外面に防曇層が設けられている一方、農業用ハウス外に面する農業用ハウスの被覆フィルムのフィルム部の外面には防曇層が設けられていないことを特徴とする請求項４に記載の農業用ハウス。
【請求項６】
農業用ハウスの被覆フィルムが複数の合成樹脂層を内外方向に積層一体化させてなり、最も外側の合成樹脂層には防曇剤を含有させていないと共に、最も内側の合成樹脂層には防曇剤を含有させていることを特徴とする請求項４又は請求項５に記載の農業用ハウス。
【請求項１】
農業用ハウスの支柱間に張設されて用いられる農業用ハウスの被覆フィルムであって、周方向に継ぎ目のない筒状に形成され、扁平状にして上記農業用ハウスの支柱間に張設され且つ内部に空気を供給させて用いられることを特徴とする農業用ハウスの被覆フィルム。
【請求項２】
農業用ハウスの支柱間に偏平状に張設した状態において、農業用ハウス内に面するフィルム部の外面に防曇層が設けられている一方、農業用ハウス外に面するフィルム部の外面には防曇層が設けられていないことを特徴とする請求項１に記載の農業用ハウスの被覆フィルム。
【請求項３】
農業用ハウスの被覆フィルムが複数の合成樹脂層を内外方向に積層一体化させてなり、最も外側の合成樹脂層には防曇剤を含有させていないと共に、最も内側の合成樹脂層には防曇剤を含有させていることを特徴とする請求項１又は請求項２に記載の農業用ハウスの被覆フィルム。
【請求項４】
所定間隔毎に配設してなる複数個の門形状の支柱間に農業用ハウスの被覆フィルムを張設して形成された農業用ハウスであって、上記農業用ハウスの被覆フィルムは、その周方向に継ぎ目のない筒状に形成され、両端開口部が閉塞された扁平状にて上記支柱間に張設されており、上記農業用ハウスの被覆フィルム内に空気を供給、充満可能に構成されていることを特徴とする農業用ハウス。
【請求項５】
農業用ハウス内に面する農業用ハウスの被覆フィルムのフィルム部の外面に防曇層が設けられている一方、農業用ハウス外に面する農業用ハウスの被覆フィルムのフィルム部の外面には防曇層が設けられていないことを特徴とする請求項４に記載の農業用ハウス。
【請求項６】
農業用ハウスの被覆フィルムが複数の合成樹脂層を内外方向に積層一体化させてなり、最も外側の合成樹脂層には防曇剤を含有させていないと共に、最も内側の合成樹脂層には防曇剤を含有させていることを特徴とする請求項４又は請求項５に記載の農業用ハウス。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【図２】
【図３】
【図４】
【図５】
【図６】
【公開番号】特開２００７−２０２４２６（Ｐ２００７−２０２４２６Ａ）
【公開日】平成１９年８月１６日（２００７．８．１６）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００６−２２１４３（Ｐ２００６−２２１４３）
【出願日】平成１８年１月３１日（２００６．１．３１）
【出願人】（５９６１１１２７６）積水フイルム株式会社 (133)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１９年８月１６日（２００７．８．１６）
【国際特許分類】
【出願日】平成１８年１月３１日（２００６．１．３１）
【出願人】（５９６１１１２７６）積水フイルム株式会社 (133)
【Ｆターム（参考）】
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