説明

農業用ハウス用暖房内壁

【課題】農業用ハウス内の温度分布ムラを減らし、且つハウス内の保温効果を高めて、燃料費を削減する。
【解決手段】農業用ハウス11内に設置された暖房機からの加熱空気が送気される農業用ハウス用暖房内壁100であって、農業用ハウス11の長手方向に沿う側壁19と略同一面積を有し、農業用ハウス内で両側壁19,19に対面して懸吊され、上下長辺部が閉塞して面内が複数箇所で溶着された二重の樹脂シート材からなり、長手方向一端が加熱空気の供給される給気開口37を残して閉塞されるとともに、長手方向他端が開放される。また、農業用ハウス用暖房内壁は、方形樹脂シート材が半分に折り曲げられ折り曲げ辺部が下長辺部となるとともに、反対側の辺部同士が溶着されて上長辺部となり、重ねられた樹脂シート材の面内が複数の線状溶着部43にて溶着されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用ハウス内の空気を加熱して吹き出す暖房機が設置された農業用ハウスに好適に用いることのできる農業用ハウス用暖房内壁に関する。
【背景技術】
【0002】
農業用ハウスは、葉野菜、根野菜、花卉、果樹類等の栽培時の保温において、ガラス温室に比べ軽量であり、設置費用も安価であることから、産業上高い利用性を有している。このように優れた利点を有する農業用ハウスであるが、冬季や気温低下時には、さらに暖房機を設置することにより、ハウス内を暖めて、より良い作物の育成環境を作る場合がある。
【0003】
暖房機としては、一般的に、農業用ハウス内に設置され、吸気したハウス内の空気を加熱して吹き出す温風吹出式のものが用いられる。ハウス室内にはダクト(例えば、特許文献1参照)が巡らされ、このダクトに加熱空気を送気することで、ダクトに穿設された小孔より温風を送り出し、ハウス内温度を上昇させる。通常、これら、ダクトは、床面に這わせたり、天井より吊り下げられていた。また、ハウス内においては、温度ムラが起きないよう、循環用のファンが併用されることもある。
【0004】
暖房機は、ハウス内に設けられた温度センサにて自動運転される。したがって、所望の設定温度よりハウス内温度が低ければ稼働し、ハウス内の温度が設定温度に達すると、温度センサにて検出され、制御手段にて暖房機の運転が停止された。そして、農業用ハウス全体からの放熱、換気、出入口、隙間等からの熱損失によりハウス内温度が設定温度より下がれば、再び制御手段にて暖房機が稼働され、設定温度となるまで暖房機が稼働された。
【特許文献1】特開2005−17号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、農業用ハウスの外壁は、1枚の樹脂シート材又はガラスのみからなるため、外気との断熱性、遮蔽性が低く、ハウス内の環境を均等に保つことが困難であった。このため、従来、農業用ハウスでは、側壁に沿って、温風ダクトを配置して温度低下を防いだり、側壁部分にビニルシートを二重に張り、外気の影響を受け難くするよう工夫がなされていた。特に、左右側部と妻面部においては外気温低下の影響を受け易く、開花結実しないなど作物の生育に影響の生じる問題があった。一方、左右側部と妻面部における温度を高めるため、暖房機の設定温度を高くすれば、左右側部と妻面部の温度は上昇するものの、ハウス中央部の温度が高くなりすぎ、暖房機の稼働時間が長くなり、燃料費を増大させた。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、農業用ハウス内の温度分布のムラが減り、且つハウス内の保温効果が高まる農業用ハウス用暖房内壁を提供し、もって、暖房機の稼働時間を減らし、燃料費の削減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の農業用ハウス用暖房内壁は、農業用ハウス11内に設置され吸気した該農業用ハウス11内の空気を加熱して吹き出す暖房機25からの加熱空気が送気される農業用ハウス用暖房内壁100であって、
前記農業用ハウス11の長手方向と妻面部に沿う側壁19と略同一面積を有し該農業用ハウス11内で両側壁19,19に対面して懸吊され上下長辺部31が閉塞して面内が複数箇所で溶着された二重の樹脂シート材35からなり長手方向及び妻面部の一端が前記加熱空気の供給される給気開口37を残して閉塞されるとともに長手方向及び妻面部の他端が開放されることを特徴とする。
【0008】
この農業用ハウス用暖房内壁では、給気開口37から加熱空気が送気されることで、農業用ハウス側壁19や妻面部とハウス内部の間に、高温の内壁が介在することとなり、農業用ハウス11内の温度分布のムラが減り、且つハウス内の保温効果が高まる。農業用ハウス11の外壁に加え、側壁及び妻壁がさらに1枚増える。側壁19及び妻壁に近い作物に対しては、外気との遮蔽性が従来より高まる。
【0009】
請求項2記載の農業用ハウス用暖房内壁は、1枚の方形樹脂シート材35が半分に折り曲げられ折り曲げ辺部が前記下長辺部33となるとともに、該折り曲げ辺部と反対側の一対の辺部同士が溶着されて前記上長辺部31となり、重ねられた該二重の樹脂シート材35の面内が千鳥状に配置された複数の線状溶着部43にて溶着されたことを特徴とする。
【0010】
この農業用ハウス用暖房内壁では、折り曲げ辺部によって下長辺部33の溶着が省略され、且つ溶着不良による強度低下の虞がなくなる。
【0011】
請求項3記載の農業用ハウス用暖房内壁は、前記農業用ハウス11内で前記側壁19に沿って立設される複数の支柱47に内側面100aが当接されたことを特徴とする。
【0012】
この農業用ハウス用暖房内壁では、加熱空気が送気されると、二重の樹脂シート材35が溶着部以外の部分で離反して膨張する。二重の樹脂シート材35のうち農業用ハウス11内側の樹脂シート材35が支柱47に当接し、農業用ハウス内側への内壁100の膨出が規制される。
【0013】
請求項4記載の農業用ハウス用暖房内壁は、前記樹脂シート材35には前記加熱空気を排出する複数の小孔が穿設されたことを特徴とする。
【0014】
この農業用ハウス用暖房内壁では、給気開口37から加熱空気が送気されることで、内壁100内が正圧となり、加熱空気の一部が小孔から農業用ハウス11内へ排出される。
【0015】
請求項5記載の農業用ハウス用暖房内壁は、前記小孔が、前記二重の樹脂シート材35,35の双方に穿設されたことを特徴とする。
【0016】
この農業用ハウス用暖房内壁では、外側の樹脂シート材35の小孔から排出される暖気によって外部との温度勾配が小さくなる。また、内側の樹脂シート材35の小孔から排出される暖気によって、ハウス内が暖かい多数の微小排気流によって撹拌される。
【0017】
請求項6記載の農業用ハウス用暖房内壁は、前記小孔が、前記二重の樹脂シート材35のうち農業用ハウス内側の樹脂シート材35のみに穿設されたことを特徴とする。
【0018】
この農業用ハウス用暖房内壁では、内側の樹脂シート材35の小孔から排気される暖気によって、ハウス内が撹拌される。外側の樹脂シート材35には小孔が穿設されないことで、内壁内に送気される加熱空気の洩れ量が少なくなり、搬送熱量の低下が抑止される。
【0019】
請求項7記載の農業用ハウス用暖房内壁は、前記下長辺部33には、複数のドレン孔が該下長辺部33に沿って穿設されたことを特徴とする。
【0020】
この農業用ハウス用暖房内壁では、温度差で生じた結露水が二重の樹脂シート材35,35の間からドレン孔を介して、重力により自然に外部へ排水される。
【0021】
請求項8記載の農業用ハウス用暖房内壁は、前記二重の樹脂シート材35,35の前記下長辺部33又は高さ方向中途位置には、該二重の樹脂シート材35,35を巻回する水平方向の巻き上げ用パイプが長辺部に沿って設けられたことを特徴とする。
【0022】
この農業用ハウス用暖房内壁では、暖房不要時、巻き上げ用パイプが回転・上昇されることで、二重の樹脂シート材35,35が巻き上げられ、農業用ハウス側壁19に設けられた換気口等が表出する。
【発明の効果】
【0023】
本発明に係る請求項1記載の農業用ハウス用暖房内壁によれば、農業用ハウス側壁・妻面と略同一面積を有しこの農業用ハウス四方側壁に対面して懸吊され上下長辺部が閉塞して面内が複数箇所で溶着された二重の樹脂シート材からなり長手方向一端が加熱空気の供給される給気開口を残して閉塞されるとともに長手方向及び妻面部他端が開放されるので、給気開口から加熱空気を送気することで、農業用ハウス側壁・妻面とハウス内部の間に、高温の内壁が介在することとなり、農業用ハウス内の温度分布のムラが減り、且つハウス内の保温効果が高まる。この結果、ハウス全体の暖房運転時間を減らすことができ、燃料費を削減することができる。また、農業用ハウスの外壁に加え、側壁がさらに1枚増えたことで、隙間風などの流入をより確実に防ぐことができ、ハウス内の環境を均等に保つことができる。さらに、側壁に近い作物に対しては、外気との遮蔽性が従来より高まり、低温障害が生じず、作物の良好な生育が可能となる。
【0024】
請求項2記載の農業用ハウス用暖房内壁によれば、一枚の方形樹脂シート材が半分に折り曲げられ折り曲げ辺部が下長辺部となるとともに、反対側の一対の辺部同士が溶着されて上長辺部となり、重ねられた二重の樹脂シート材の面内が千鳥状に配置された線状溶着部にて溶着されるので、折り曲げ辺部によって下長辺部の溶着を省略しながら強度を高めることができ、各溶着部分によって区画されずに流路を形成して、また、溶着部分が千鳥状であることで送気時にシートの断面が円筒状に膨張せず、少ない溶着部で安価に、且つ耐久性の高い農業用ハウス用暖房内壁を見栄え良く製作することができる。
【0025】
請求項3記載の農業用ハウス用暖房内壁によれば、農業用ハウス内で側壁・妻面に沿って立設される複数の支柱に内側面が当接されるので、加熱空気の送気による膨張によっても、支柱によって農業用ハウス内側への内壁の膨出が規制され、作物との干渉を確実に防止できる。
【0026】
請求項4記載の農業用ハウス用暖房内壁によれば、樹脂シート材には加熱空気を排出する複数の小孔が穿設されるので、ハウス内の暖房をムラなく高効率に行うことができる。
【0027】
請求項5記載の農業用ハウス用暖房内壁によれば、小孔が、二重の樹脂シート材の双方に穿設されるので、外側の樹脂シート材の小孔から排出される暖気によって外部との温度勾配を小さくして保温性を高めることができるととも、内側の樹脂シート材の小孔から排出される暖気によって、ハウス内の暖房をムラなく行うことができる。
【0028】
請求項6記載の農業用ハウス用暖房内壁によれば、小孔が、二重の樹脂シート材のうち農業用ハウス内側の樹脂シート材のみに穿設されるので、内側の樹脂シート材の小孔から排出される暖気によって、ハウス内の暖房をムラなく行うことができ、外側の樹脂シート材には小孔が穿設されないことで、内壁内に送気される加熱空気の洩れ量を少なくし搬送熱量の低下を抑止して、暖房内壁としての保温効果を高めることができる。
【0029】
請求項7記載の農業用ハウス用暖房内壁によれば、下長辺部には、複数のドレン孔が穿設されるので、温度差で生じる結露水を二重の樹脂シート材間から自然に排水除去することができる。
【0030】
請求項8記載の農業用ハウス用暖房内壁によれば、二重の樹脂シート材の下長辺部又は高さ方向中途位置に、二重の樹脂シート材を巻回する水平方向の巻き上げ用パイプが設けられるので、暖房不要時には巻き上げ用パイプによって二重の樹脂シート材を巻き上げて収納でき、農業用ハウス側壁に設けられた換気口等によって換気を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明に係る農業用ハウス用暖房内壁の好適な実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係る農業用ハウス用暖房内壁を備えた農業用ハウスの正面図である。
農業用施設ハウス11は、支柱パイプ、アーチパイプ、桁パイプ等の骨組み13に塩化ビニル系樹脂やポリオレフィン系樹脂フィルム等からなるシート材15を展張したものであり、例えば屋根部17が正面視三角形状の合掌型や、正面視半円形の蒲鉾型に形成され、図1に示す単棟型や図4に示す連棟型として設置される。農業用ハウス11は、奥行き方向(図1の紙面垂直方向)が施工現場の面積によって、例えば100m前後で設置される。本実施の形態では骨組み13にシート材15を展張するものを例に説明するが、本発明はガラス張りハウスにも適用可能なものである。農業用ハウス11内の両側壁19,19の上部近傍には奥行き方向に延在するパイプ又は番線等の懸吊部材21,21が設けられている。なお、図1中、23は作物を植えつけるために間隔をおいて土を筋状に盛り上げた畝を示す。
【0032】
図2は図1に示した農業用ハウスの平面図である。
農業用ハウス11内の長手方向一端側である前面側(図2の下側)には暖房機25が設置され、暖房機25は吸気した農業用ハウス内の空気を加熱して左右及び上下の親ダクト27,27へ加熱空気を吹き出す。親ダクト27,27にはハウス奥行き方向へ延在する小断面積の分岐ダクト29,29、…が複数接続され、分岐ダクト29には不図示の多数の小孔が穿設されている。
【0033】
暖房機25は、ハウス内に設けられた不図示の温度センサを備えた制御手段にて自動運転される。所望の設定温度よりハウス内温度が低ければ稼働し、ハウス内の温度が設定温度に達したことが温度センサにて検出されれば、不図示の制御手段にて運転が停止される。暖房機25が稼働すると、加熱空気が親ダクト27,27を介して各分岐ダクト29へ送気され、加熱空気が分岐ダクト29の小孔から吹き出されることで、ハウス内温度を上昇させる。分岐ダクト29は、床面に這わせたり、天井より吊り下げて配置してもよい。本実施の形態では親ダクト27,27、分岐ダクト29が床面に配置される。自動停止した暖房機25は、農業用ハウス内温度が設定温度より下がると、再び制御手段にて稼働され、設定温度となるまで継続運転される。
【0034】
図3は図1に示した農業用ハウス用暖房内壁の正面視を(a)、側面視を(b)で表した構成図、図4は発明に係る農業用ハウス用暖房内壁が設けられた連棟型農業用ハウスの斜視図である。なお、図3(a)は図3(b)のA−A断面を表す。
上記した懸吊部材21,21には本実施の形態による農業用ハウス用暖房内壁(以下、「暖房内壁」とも言う。)100が垂れた状態に吊され(懸吊され)ている。暖房内壁100は、農業用ハウス11の長手方向に沿う側壁19と略同一面積を有し、農業用ハウス内で両側壁19,19に対面して懸吊される。懸吊部材21に対しては、暖房内壁100の上縁を不図示の掛止手段を用いて固定できる。暖房内壁100は、農業用ハウス11が図4に示す連棟型農業用ハウス11Aの場合には、最も外側の左右両側壁19,19、すなわち外気との境となる側壁に対面して配設される。
【0035】
暖房内壁100は、上下長辺部31,33が閉塞して面内(方形外形の内側)が複数箇所で溶着された二重の樹脂シート材35,35からなる。長手方向一端は、加熱空気の供給される給気開口37を残して接合部39にて閉塞されるとともに、長手方向他端は開放口41となって開放される。樹脂シート材35は、厚さ0.05〜0.075mmの透明度のある、例えばポリオレフィン系フィルムを使用することができる。ポリオレフィン系フィルムとしては、農業用ポリエチレンフィルム、農業用エチレン・酢酸ビニル共同体樹脂フィルム、農業用ポリオレフィン系特殊フィルムを用いることができる。
【0036】
暖房内壁100は、例えば1枚の方形樹脂シート材35を半分に折り曲げて製作することができる。この場合、折り曲げ辺部が下長辺部33となるとともに、折り曲げ辺部と反対側の一対の辺部同士が溶着されて上長辺部31となる。重ねられた二重の樹脂シート材35,35の面内は、千鳥状に配置された複数の線状溶着部43にて溶着される。本実施の形態では、上下方向が2箇所の線状溶着部43にて溶着されることで、図3(a)に示すように、上下方向に3つの送気路45a,45b,45cが形成され、それぞれの送気路45a,45b,45cは連通され流路となる。
【0037】
本実施の形態のように、一枚の方形樹脂シート材35が半分に折り曲げられて製作された暖房内壁100によれば、折り曲げ辺部によって下長辺部33の溶着を省略しながら強度を高めることができる。これにより、少ない溶着部で安価に、且つ耐久性に優れた暖房内壁100を見栄え良く製作することができる。
【0038】
暖房内壁100からの親ダクト27,27は、通常下部に接続するが、設置場所に応じて、高さ位置のどの位置でも接続可能となる。その場合には、端部の接合部39(綴じ代)を変えて接着すればよい。なお、接合部39は、粘着テープ、ホッチキス(商品名)等にて接合する。また、親ダクト27の端部は挿入のみとし、固定しなくてもよい。
【0039】
暖房内壁100は、側壁19に沿って立設される複数の支柱47に内側面100aが当接されてもよい。暖房内壁100は、加熱空気が送気されると、二重の樹脂シート材35,35が溶着部以外の部分で離反して膨張する。二重の樹脂シート材35,35のうち農業用ハウス内側の樹脂シート材(内側面100a)が支柱47に当接し、農業用ハウス内側への暖房内壁100の膨出が規制される。これにより、作物との干渉を確実に防止することができる。なお、支柱47以外には、ネットや紐、ベルト等が使用されてもよい。また、図2に示すように、側壁19から妻面部に沿って中途で屈曲し、構成することとしてもよい。
【0040】
樹脂シート材35には加熱空気を排気する複数の小孔が穿設されていることが好ましい。給気開口37から加熱空気が送気されることで、暖房内壁100内が正圧となり、加熱空気の一部がこの小孔から農業用ハウス内へ排気される。これにより、ハウス内の暖房をムラなく高効率に行うことができる。
【0041】
小孔は、二重の樹脂シート材35,35の双方に穿設することができる。この場合、外側の樹脂シート材35の小孔から排気される暖気によって外部との温度勾配が小さくなる。つまり、保温性を高めることができる。また、内側の樹脂シート材35の小孔から排気される暖気によって、ハウス内が暖かい多数の微小排気流によって撹拌される。これにより、ハウス内の暖房をムラなく行うことができる。
【0042】
また、小孔は、二重の樹脂シート材35,35のうち農業用ハウス内側の樹脂シート材35のみに穿設されてもよい。この場合、内側の樹脂シート材35の小孔から排気される暖気によって、ハウス内が撹拌される。外側の樹脂シート材35には小孔が穿設されないことで、暖房内壁100内に送気される加熱空気の洩れ量が少なくなり、搬送熱量の低下が抑止される。これにより、暖房内壁としての保温効果を高めることができる。
【0043】
なお、暖房内壁100は、小孔を設けず、温かい壁面のみとしてもよい。この場合、暖気は暖房内壁100を通過して開放口41から排気されるのみとなる。また、開放口41を閉鎖し、二重の樹脂シート材35,35の一方又は双方に小孔を設ける構成としてもよい。この場合、小孔の総面積を調整することで、暖房内壁100を加熱空気によって膨張させた状態に維持することができ、少ない送気量で、温かい保温壁面を形成することができる。
【0044】
また、暖房内壁100は、下長辺部33に、複数のドレン孔(不図示)を、下長辺部33に沿って穿設することができる。これにより、温度差で生じる結露水を二重の樹脂シート材35,35の間から自然に排水除去することができる。
【0045】
さらに、暖房内壁100の下長辺部33、又は高さ方向中途位置には、暖房内壁100を巻回する水平方向の巻き上げ用パイプ(不図示)を長辺部に沿って設けてもよい。これにより、暖房不要時やハウス内換気を行う際には巻き上げ用パイプによって暖房内壁100を巻き上げて収納でき、農業用ハウス側壁19に設けられた換気口(不図示)等によって換気を行うことができる。
【0046】
したがって、上記構成の農業用ハウス用暖房内壁100によれば、農業用ハウス側壁19と略同一面積を有し、この農業用ハウス両側壁19,19に対面して懸吊され、上下長辺部31,33が閉塞して面内が複数箇所で溶着された二重の樹脂シート材35,35からなり、長手方向一端が加熱空気の供給される給気開口37を残して閉塞されるとともに長手方向他端が開放されるので、給気開口37から加熱空気を送気することで、農業用ハウス側壁19とハウス内部の間に、高温の内壁が介在することとなり、すなわち外気とハウス内との境に、側壁19と加熱空気を含んだ側壁(暖房内壁100)とが介在することとなり、農業用ハウス内の温度分布のムラが減り、且つハウス内の保温効果が高まる。この結果、ハウス全体の暖房運転時間を減らすことができ、燃料費を削減することができる。
【0047】
また、農業用ハウス11の外壁に加え、側壁がさらに1枚増えたことで、隙間風などの流入をより確実に防ぐことができ、ハウス内の環境を均等に保つことができる。さらに、側壁19に近い作物に対しては、外気との遮蔽性が従来より高まり、低温障害が生じず、作物の良好な生育が可能となり、収穫率・収穫量の向上、及び品質が向上する。
【実施例】
【0048】
次に、上述した実施の形態における、具体的な実施例について説明する。
この実施例においては、農業用ハウス内に、上記実施の形態の暖房内壁100を設けた場合のハウス内温度変化と、暖房内壁100を設けていない場合のハウス内温度変化について、冬季の夕刻17時より翌朝8時(1月31日〜2月1日)までのハウス内に設置された温度計による計測グラフを図5に示す。
このグラフによれば、暖房内壁を設けていない状態(暖房内壁無し:破線)を示す温度変化の線に比べ、暖房内壁100を設けた状態(暖房内壁有り:実線)を示した温度変化の線は、山谷の数が小さく、すなわち、暖房機の運転回数が減り、且つ、ハウス内維持温度が1度前後高い値を示している。このことから、ハウス内の保温効果を高めていることがわかり、また、暖房運転の総時間が減り、すなわち、暖房機の燃料費を削減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る農業用ハウス用暖房内壁を備えた農業用ハウスの正面図である。
【図2】図1に示した農業用ハウスの平面図である。
【図3】図1に示した農業用ハウス用暖房内壁の正面視を(a)、側面視を(b)で表した構成図である。
【図4】発明に係る農業用ハウス用暖房内壁が設けられた連棟型農業用ハウスの斜視図である。
【図5】本発明の暖房内壁を設けた場合と設けていない場合のハウス内温度変化のグラフである。
【符号の説明】
【0050】
11…農業用ハウス
19…側壁
25…暖房機
31…上長辺部
33…下長辺部
35…樹脂シート材
37…給気開口
43…線状溶着部
47…支柱
100…農業用ハウス用暖房内壁
100a…内側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
農業用ハウス内に設置され吸気した該農業用ハウス内の空気を加熱して吹き出す暖房機からの加熱空気が送気される農業用ハウス用暖房内壁であって、
前記農業用ハウスの長手方向に沿う側壁と略同一面積を有し該農業用ハウス内で両側壁に対面して懸吊され上下長辺部が閉塞して面内が複数箇所で溶着された二重の樹脂シート材からなり長手方向一端が前記加熱空気の供給される給気開口を残して閉塞されるとともに長手方向他端が開放されることを特徴とする農業用ハウス用暖房内壁。
【請求項2】
1枚の方形樹脂シート材が半分に折り曲げられ折り曲げ辺部が前記下長辺部となるとともに、該折り曲げ辺部と反対側の一対の辺部同士が溶着されて前記上長辺部となり、重ねられた該二重の樹脂シート材の面内が千鳥状に配置された複数の線状溶着部にて溶着されたことを特徴とする請求項1記載の農業用ハウス用暖房内壁。
【請求項3】
前記農業用ハウス内で前記側壁に沿って立設される複数の支柱に内側面が当接されたことを特徴とする請求項1又は2記載の農業用ハウス用暖房内壁。
【請求項4】
前記樹脂シート材には前記加熱空気を排出する複数の小孔が穿設されたことを特徴とする請求項1,2,3のいずれか1つに記載の農業用ハウス用暖房内壁。
【請求項5】
前記小孔が、前記二重の樹脂シート材の双方に穿設されたことを特徴とする請求項4記載の農業用ハウス用暖房内壁。
【請求項6】
前記小孔が、前記二重の樹脂シート材のうち農業用ハウス内側の樹脂シート材のみに穿設されたことを特徴とする請求項4記載の農業用ハウス用暖房内壁。
【請求項7】
前記下長辺部には、複数のドレン孔が該下長辺部に沿って穿設されたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の農業用ハウス用暖房内壁。
【請求項8】
前記二重の樹脂シート材の前記下長辺部又は高さ方向中途位置には、該二重の樹脂シート材を巻回する水平方向の巻き上げ用パイプが長辺部に沿って設けられたことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の農業用ハウス用暖房内壁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−207410(P2009−207410A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53462(P2008−53462)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(596131470)シーアイマテックス株式会社 (1)
【Fターム(参考)】