説明

農業用ヒータ

【課題】面状発熱シートより放射される熱を効率よく培養基に伝えることができて省エネルギー化に資することができ、しかも土壌栽培や水耕栽培に使用可能な適用範囲の広い農業用ヒータを提供する。
【解決手段】農業用ヒータ1を、一側面に赤外線反射構造を設けた面状発熱シートよりなるヒータ部材3と、同ヒータ部材3を装着できるようにしてなる半円筒状本体2とで構成し、ヒータ部材3の表裏両面から放射される熱を、赤外線反射構造を設けていない一側面だけから放射させて、培養基を効率よく加温することができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寒冷地もしくは冬場において農作物を栽培する際に、畑の土等の培養基の温度を栽培する作物に適した温度に調整するために用いる農業用ヒータに関し、より詳しくは、土壌栽培、さらには水耕栽培でも使用可能な農業用ヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、寒冷地で農作物を栽培する際は、面状発熱シートを土の上に敷いてこの面状発熱シートで土を暖め、土の温度を栽培に適した温度に調整して作物を栽培している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、この土の上に敷いた面状発熱シートで土の中を暖めた場合、土の表面側に位置する面状発熱シートの下面からの熱は土中に伝わるが、面状発熱シートの上面は空気(冷気)と接しているため、この面状発熱シートの上面からの熱は土中に伝わることがない。
【0004】
そして、この空気(冷気)と接している面状発熱シートの上面は常に空気(冷気)によって冷却されているので、面状発熱シートの下面だけで土の温度を一定に保つには、空気(冷気)によって冷却され続ける面状発熱シートの上面から奪われる熱を補いながら面状発熱シートの下面で土の中を暖めるので、面状発熱シートによる土の加温は効率が悪く、多くの無駄な電力を消費し、省エネルギー化に抗するものであった。
【0005】
【特許文献1】実開平7−31341号公報(第1〜3頁、図1〜図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、面状発熱シートより放射される熱を効率よく土等の培養基に伝えることができるようにし、また、土壌栽培さらには水耕栽培でも使用可能な農業用ヒータを提供できるようにした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明に係る農業用ヒータは、面状発熱シートよりなるヒータ部材と、同ヒータ部材を内外いずれか一側面に装着できるようにしてなる半円筒状本体とを備え、前記面状発熱シートの一側面に赤外線反射構造を設けて構成したものとしてある。
【0008】
また前記ヒータ部材を、6〜14μmの波長の遠赤外線を放射できる面状発熱シートで構成したものとしてある。
【0009】
また前記半円筒状本体に、同半円筒状本体の内外いずれか一側面を覆う保護カバーを設け、半円筒状本体と保護カバーとの間に前記ヒータ部材を挟み込んで構成したものとしてある。
【0010】
さらに前記保護カバーは、同保護カバーの長手方向の一側辺が前記半円筒状本体の一側辺に接続されて他側辺側が開閉できるフラップ状に設けられ、また保護カバーと半円筒状本体の他側辺どうしを係着可能に設けて構成したものとしてある。
【0011】
また前記係着部は、前記半円筒状本体の他側辺が折り返されてなる折り返し端部を有し、同折り返し端部の隙間に前記保護カバーの他側辺を嵌入して挿着できるように構成したものとしてある。
【0012】
また前記ヒータ部材における赤外線反射構造を設けた一側面を、前記半円筒状本体の外側面に当接させてヒータ部材からの熱が半円筒状本体の外側に放射されるように構成したものとしてある。
【0013】
また前記ヒータ部材における赤外線反射構造を設けていない他側面を、前記半円筒状本体の外側面と当接させてヒータ部材からの熱が半円筒状本体の内側に放射されるように構成したものとしてある。
【発明の効果】
【0014】
本発明の農業用ヒータによれば、ヒータ部材の赤外線反射構造を設けた面から放射される熱(赤外線)がこの赤外線反射構造によって反射され、この反射された熱がヒータ部材の赤外線反射構造を設けていない他側面から放射される熱とともにその他側面側の土等の培養基に放射されるので、土等の培養基の加温を効率よく行うことができる。
【0015】
そして、ヒータ部材の表裏両面より放射される熱の多くを、この熱を必要とする方向の土等の培養基へ放射できるので、従来に比してヒータ部材の電力消費量を小なるものとすることができ、したがって省エネルギー化に貢献できる。
【0016】
また、ヒータ部材に、生育光線、健康光線と呼ばれる6〜14μmの波長の遠赤外線を放射できる面状発熱シートを用いることにより、作物の細胞の代謝が活発になって生育が促進されるので、収穫量増加とともに品質も向上する。
【0017】
さらに、ヒータ部材を、半円筒状本体に配設する保護カバーとの間に挟み込んで設置することで、農業用ヒータに作物の手入れ中の道具が接触した場合、この保護カバーが道具の接触からヒータ部材を保護するので安全が向上する。
【0018】
そして、本農業用ヒータの使用に際し、赤外線反射構造を設けた一側面を半円筒状本体の外側面に当接させてヒータ部材をセットすることで、ヒータ部材からの熱が半円筒状本体の外側に放射されるので、したがって畝での埋設使用に適する形態になる。
【0019】
また本ヒータの使用に際し、赤外線反射構造を設けていない他側面を半円筒状本体の外側面に当接させてヒータ部材をセットすることで、ヒータ部材からの熱が半円筒状本体の内側に放射されるので、半円筒状本体を上下逆さに反転させ、この反転させた半円筒状本体の筒内に水を張れば水耕栽培での使用に適する形態になる。
【0020】
したがって、ヒータ部材の表裏のセット方向を変更することにより、容易に農業用ヒータの使用形態を選択することができ、広範な用途に対して好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の農業用ヒータを添付図面に基づいて説明する。また、添付図面ではヒータ部材3における電源ケーブル等の電気配線の図示は省略する。
図1は、本発明に係る農業用ヒータの一例を示す斜視図であり、農業用ヒータ1は、半円筒状本体2の外側面とこの半円筒状本体2に配設する保護カバー4との間にヒータ部材3を挟着している。
【0022】
ヒータ部材3の半円筒状本体2における配置は、図2に示すように、半円筒状本体2の外側面の保護カバー4の基部4a付近と、半円筒状本体2の折り返し端部2a付近との間に位置するように配置している。
【0023】
また、保護カバー4の構造は、同じく図2に示すように、基部4aを支点に開閉できるようにしていて、ヒータ部材3を半円筒状本体2に配置した後、図3に示すように、保護カバー4の自由端部を半円筒状本体2の折り返し端部2aに嵌め入れて、図4に示すように、ヒータ部材3の一側面を半円筒状本体2に、かつ他側面も保護カバー4に接するようにして固定できるようにしている。
【0024】
また、半円筒状本体2の湾曲面において、添付図面に示すものはその全体を同じ曲率で形成しているが、略逆U字状に形成する場合もある。
【0025】
また、保護カバー4は、半円筒状本体2の湾曲面とほぼ同じか少し大の曲率で形成したり、あるいは軟質素材でほぼ平坦に形成して保護カバー4の装着動作によって半円筒状本体2に配置するヒータ部材3面に接していくように構成したりする場合もある。
【0026】
前記半円筒状本体2の素材は、適宜な素材を用いればよく、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)素材を用いる。またPVC素材を用いる場合、図3(a)、図3(b)および図4に示すように、可動部や防水性を要する部位等には軟質PVC(軟質部2d)を付加する場合がある。
【0027】
前記ヒータ部材3は図5に示すように、面状発熱シート3aをフィルム3b、3cで表裏両面側から被覆していて、また、アルミ蒸着等の赤外線反射構造(赤外線反射部3d)をその被覆フィルム3cのヒータ部材3と接する面側に配設している。
【0028】
上述のように構成した本発明のヒータは、図6に示すように、畝5の土6に埋設して使用したり、図7に示すように、半円筒状本体2を上下逆さにして水耕栽培に使用したりするのに好適である。
【0029】
そして、図6のように、畝5の土6に埋設して使用する場合は、ヒータ部材3における赤外線反射部3dを設けたフィルム3c面を、半円筒状本体2の外側面に当接させてヒータ部材3を装着している。
【0030】
これにより、ヒータ部材3から放射される熱はフィルム3b、保護カバー4を通過して、図6中の矢印のように、土6中に向かって放射される。
【0031】
また、図7のように、水耕栽培における水路兼用で使用する場合は、ヒータ部材3におけるフィルム3b面を、半円筒状本体2の外側面に当接させて装着している。
【0032】
これにより、ヒータ部材3から放射される熱はフィルム3b、本体部2を通過して、図7中の矢印のように、培養水7中に向かって放射される。
なお、図7中の符号8は、本体部2を支える支柱である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る農業用ヒータの一例を示す斜視図。
【図2】農業用ヒータの正面図。
【図3】農業用ヒータの一部拡大正面図。
【図4】農業用ヒータの一部拡大正面図。
【図5】ヒータ部材の正面図。
【図6】農業用ヒータの一使用例を示す図。
【図7】農業用ヒータの一使用例を示す図。
【符号の説明】
【0034】
1 農業用ヒータ
2 半円筒状本体
2a 折り返し端部
2b 軟質部
3 ヒータ部材
3a 面状発熱シート
3b フィルム
3c フィルム
3d 赤外線反射部
4 保護カバー
4a 基部
5 畝
6 土
7 培養水
8 支柱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面状発熱シートよりなるヒータ部材と、同ヒータ部材を内外いずれか一側面に装着できるようにしてなる半円筒状本体とを備え、前記面状発熱シートの一側面に赤外線反射構造を設けてなる農業用ヒータ。
【請求項2】
前記ヒータ部材を、6〜14μmの波長の遠赤外線を放射できる面状発熱シートで構成してなる請求項1に記載の農業用ヒータ。
【請求項3】
前記半円筒状本体に、同半円筒状本体の内外いずれか一側面を覆う保護カバーを設け、半円筒状本体と保護カバーとの間に前記ヒータ部材を挟み込んでなる請求項1に記載の農業用ヒータ。
【請求項4】
前記保護カバーは、同保護カバーの長手方向の一側辺が前記半円筒状本体の一側辺に接続されて他側辺側が開閉できるフラップ状に設けられ、また保護カバーと半円筒状本体の他側辺どうしを係着可能に設けてなる請求項3に記載の農業用ヒータ。
【請求項5】
前記係着部は、前記半円筒状本体の他側辺が折り返されてなる折り返し端部を有し、同折り返し端部の隙間に前記保護カバーの他側辺を嵌入して挿着できるように構成してなる請求項4に記載の農業用ヒータ。
【請求項6】
前記ヒータ部材における赤外線反射構造を設けた一側面を、前記半円筒状本体の外側面に当接させてヒータ部材からの熱が半円筒状本体の外側に放射されるように構成してなる請求項1に記載の農業用ヒータ。
【請求項7】
前記ヒータ部材における赤外線反射構造を設けていない他側面を、前記半円筒状本体の外側面と当接させてヒータ部材からの熱が半円筒状本体の内側に放射されるように構成してなる請求項1に記載の農業用ヒータ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2008−79572(P2008−79572A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−266432(P2006−266432)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(503466727)株式会社シンク (1)
【出願人】(593130876)株式会社丸昌 (1)
【出願人】(506330977)株式会社 照和樹脂 (1)
【Fターム(参考)】