説明

農業用収穫作業機

【課題】作業機のオペレータが一人でコンテナ、特に大型のコンテナの載置から収穫、収穫後のコンテナの降ろしまで、一連の作業を効率よく行なえる農業用収穫作業機を提供する。
【解決手段】一対の走行体115を備える走行装置110と、前方に位置し野菜1等を刈る切断部120と、刈り取り後の野菜1等を後方に搬送する搬送部130と、搬送部130から落下する野菜1等を収容するコンテナ200を着脱可能に載置するコンテナ載置部140と、コンテナ載置部140を上下に傾倒可能な傾倒機構150を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜等の収穫に好適な農業用収穫作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、圃場内を自走しながら、圃場内の畝に植えられた根菜野菜を引き抜いて収穫する野菜収穫機の例(例えば特許文献1や特許文献2参照)や、枝豆をもぎとって収穫する枝豆収穫機の例(例えば特許文献3参照)が知られている。
【0003】
前者の野菜収穫機は、クローラを下部に備える走行装置と、圃場内の畝に植えられた根菜野菜を掻き込む掻き込み部と、掻き込まれた根菜野菜を後方に搬送する搬送部と、複数の空コンテナを搭載したコンテナ台を備え、搬送部上を搬送される根菜野菜は、コンテナ台から搬送部の後方に配置される空コンテナに収容され、一杯になったコンテナは作業員の手で圃場内に降ろされるか、運搬場所まで運ばれるようになっている。
【0004】
後者の枝豆収穫機は、回転する一対の枝豆もぎ取り体を前方に備え、枝豆もぎ取り体によりもぎ取られた枝豆を搬送ベルトにより後方に搬送し、搬送ベルト終端下方の収穫箱に収容され、一杯になった収穫箱は前者と同様に作業員の手で圃場内に降ろされるか、運搬場所まで運ばれるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-90788号公報
【特許文献2】特開2010-63394号公報
【特許文献3】特開平5−103526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、特許文献2の野菜収穫機や特許文献3の枝豆収穫機は、一杯になったコンテナや収穫箱を人力で運搬車の荷台に積み込んだり、空のコンテナや収穫箱を運搬車の荷台から降ろして収穫機まで運んだりしなければならず、人力による運搬作業は多大な労力を必要とした。特に近年の農業就労者は、女性や高齢者が多く重労働であった。また、大型のコンテナを利用する場合、コンテナの積み降ろしにはフォークリフトやクレーン等の装備が別途必要であった。
【0007】
一方、野菜類は収穫後の時間経過とともに鮮度に影響を及ぼし、大規模農場では、特に収穫、運搬手段に効率化を図る必要があった。そのため、フォークリフトやクレーンのような機械器具を必要とせず、省力化されて、収穫作業機のオペレータが一人で収穫から積み降ろしまで実現できる収穫作業機が要望されていた。
【0008】
この場合、上述の野菜収穫機や枝豆収穫機では、コンベア(搬送部)が高い位置にあるので、大型コンテナをリフト(昇降)させようとすると、収穫機後方に重心が移動し、安定性が大きく損なわれる問題がある。しかも、後者の枝豆収穫機は、コンベアの下方にエンジンが配置されているので、エンジンからの排熱や排気ガスが上昇してコンベア上の野菜の鮮度を損ない、またエンジンが低位置で圃場に近く、圃場からの埃・泥にまみれ、故障が多く耐久性に問題があり、さらにコンベア下部は窮屈でエンジンのメンテナンス性も悪かった。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、収穫作業機のオペレータが一人でコンテナ、特に大型のコンテナの載置から収穫、収穫後のコンテナの降ろしまで、一連の作業を効率よく行なえる農業用収穫作業機を提供することを目的とする。また、運搬車の荷台に対するコンテナ、特に大型のコンテナの積み降ろしをオペレータ一人で実現し、作業の労力軽減と省力化をより一層図れる農業用収穫作業機を提供することを目的とする。さらには、大型コンテナの載置に伴って生じる収穫作業の不安定性を改善し得る農業用収穫作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る農業用収穫作業機は、一対の走行体を備える走行装置と、前方に位置し被収穫物を刈る切断部と、刈り取り後の収穫物を後方に搬送する搬送部と、搬送部から落下する収穫物を収容するコンテナを着脱可能に載置するコンテナ載置部と、コンテナ載置部を上下に傾倒可能な傾倒機構を備えていることを最も主要な特徴とする。
【0011】
本発明によると、傾倒機構によりコンテナ載置部の先端を下向きに傾倒させて、例えば地面上に仮置きされたコンテナに対し、走行装置を後退させることにより、同コンテナをコンテナ載置部に載置し、さらに、コンテナ載置部の先端を水平姿勢に復帰させて、コンテナを収容位置に持上げ可能である。また、収穫後は、傾倒機構によりコンテナ載置部の先端を再び下向きに傾倒させて、収穫物で一杯のコンテナを例えば地面上に接地させ、走行装置を前進させることにより、コンテナ載置部からコンテナを降ろし可能である。これにより、収穫作業機のオペレータが一人でコンテナの載置から収穫、収穫後のコンテナの降ろしまで、一連の作業を効率よく行なうことができる。
【0012】
本発明に係る農業用収穫作業機は、コンテナ載置部がコンテナの下面に差込可能な複数の差込部材を備えることを第2の特徴とする。
【0013】
本発明に係る農業用収穫作業機は、コンテナ載置部を昇降させる昇降機構を備えることを第3の特徴とする。
【0014】
本発明に係る農業用収穫作業機は、走行装置に架設された門型フレームの上部に収穫作業機の動力源が配置され、この動力源の下方に位置して前記門型フレームの内側を通るように搬送部が配置されていることを第4の特徴とする。
【0015】
本発明に係る農業用収穫作業機は、収穫作業機の動力源の燃料タンクおよび油圧作動油タンクが前記動力源および搬送部の下方に位置して前記門型フレームの下部に配置されていることを第5の特徴とする。
【0016】
本発明に係る農業用収穫作業機は、動力源が収穫作業機の前後方向略中央に位置し、動力源の燃料タンクおよび油圧作動油タンクが収穫作業機の前後方向略中央に位置することを第6の特徴とする。
【0017】
本発明に係る農業用収穫作業機は、切断部が、前方の被収穫物の下部を切断するカッター部と、切断された収穫物を後方へ掻き込む掻き込み部とを備えることを第7の特徴とする。
【0018】
本発明に係る農業用収穫作業機は、地面からの切断部による切断高さを調節する高さ調整機構を備えることを第8の特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明に係る農業用収穫作業機によると、収穫作業機のオペレータが一人でコンテナ、特に大型のコンテナの載置から収穫、収穫後のコンテナの降ろしまで、一連の作業を効率よく行なうことができ、作業の労力軽減と省力化を図ることができるという優れた効果を奏する。
【0020】
また、本発明に係る農業用収穫作業機によると、傾倒機構に加えて昇降機構を設けたことにより、収穫作業機のオペレータが一人で運搬車の荷台へのコンテナ、特に大型のコンテナの積み降ろしまでの一連の作業を行うことができ、作業の労力軽減と省力化をより一層図ることができる。
【0021】
さらに、本発明に係る農業用収穫作業機によると、収穫作業機の動力源を収穫作業機の前後方向略中央に位置させ、動力源の燃料タンクおよび油圧作動油タンクを収穫作業機の前後方向略中央に位置させたことにより、収穫作業機の走行安定性が向上し、大型コンテナの載置に伴って生じる不安定性を改善して、収穫作業の安定性を確保できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態を示すもので、乗用型の農業用収穫作業機の側面図、
【図2】図1に示す農業用収穫作業機の平面図、
【図3】図1に示す農業用収穫作業機の正面図、
【図4】図1に示す農業用収穫作業機の背面図、
【図5】図1に示す農業用収穫作業機の作用を示すもので、コンテナを積み込み高さまで上昇させた様子を示す側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1ないし図5において、符号100は農業用収穫作業機を示している。
【0024】
農業用収穫作業機100は、図1に示すように、圃場G内を走行する走行装置110と、圃場G内で栽培された野菜等を刈り取る切断部120と、刈り取った野菜等を後方に搬送する搬送部130と、搬送された野菜等を収容するコンテナ200を載置するコンテナ載置部140を備えている。
【0025】
走行装置110は、走行装置110に架設される門型フレーム111の上部に搭載されたエンジン112により回転駆動される油圧ポンプ113と走行モータ114の静油圧式変速機で独立して駆動される一対のクローラ115、115を下部に備え、左右のクローラ115、115を圃場Gの1または数条の畝等に跨がらせて圃場G内を畝に沿って走行するようになっている。走行装置110の門型フレーム111の上部には、前方寄りに操縦席116と走行ハンドル117が設置され、走行ハンドル117の前方には制御盤118が設置されている。制御盤118には、エンジン112の制御機器及び計器類が装備されている。エンジン112は、操縦席116の直後であって、走行装置110の前後方向および左右方向の中央、すなわち走行装置110の重心位置に配置されている。
【0026】
切断部120は、圃場G内で栽培された野菜1等を刈り取るもので、走行装置110の進行方向前方に配置されている。切断部120は、支持フレーム121が門型フレーム111の前部に支持軸(図示せず)を介して上下動可能に支持されている。支持フレーム121の前端には左右に延在するバリカン刃122Aを備えるカッター部122が取り付けられている。また、支持フレーム121の前方には左右のアタッチメント123を介して掻き込みローラ124の回転軸124Aが回転可能に支持されている。さらに、左右のアタッチメント123から前方にガイド部材125が延びている。
【0027】
支持フレーム121は、左右のアタッチメント126を介して地面G1に設置される高さ調整ローラ127を下部に備えており、油圧シリンダ128のロッド128Aの伸長により回転自在な高さ調整ローラ127を地面G1に接地させ、これによりカッター部122の切断高さを所定高さに設定可能とされている。高さ調整ローラ127はアタッチメント126の取付角度を任意に調整可能であり、これによりカッター部122の切断高さを任意に設定可能である。なお、油圧シリンダ128はエンジン112により駆動される油圧ポンプにより作動する。
【0028】
高さ調整ローラ127の機能について詳述すると、油圧シリンダ128はフロートタイプの油圧バルブが採用されている。すなわち、高さ調整ローラ127により予め設定された地面レベルに対し、地面の凹凸により高さ調整ローラ127にかかる負荷が設定圧力よりも大きくなると、油圧シリンダ128の油圧が設定値よりも大きくなり、油圧が設定値と等しくなるように油圧シリンダ128のロッド128Aが縮小し、高さ調整ローラ127にかかる負荷が設定圧力よりも小さくなると、油圧シリンダ128の油圧が設定値よりも小さくなり、油圧が設定値と等しくなるように油圧シリンダ128のロッド128Aが伸長し、その結果、切断部120は、走行作業中、圃場Gの地面レベルに倣って自動昇降し、これに連動してカッター部122のバリカン刃122Aも圃場Gの地面レベルに倣って自動昇降する。これにより地面に凹凸が有っても高さ調整ローラ127が凹凸を吸収する結果、カッター部122の切断高さが常に地面レベルに対し一定となる。
【0029】
カッター部122は、前方の野菜1等を、油圧モータ129により左右に往復動する上下のバリカン刃122Aによって、野菜1等の下部、すなわち根元付近を残して切断するもので、切断された野菜1等は、掻き込みローラ124の回転により後方の搬送部130に送られるようになっている。掻き込みローラ124は、回転軸124Aの周囲に幅方向略中央位置から左右対称に螺旋状に延在する棒状の掻き込み部材124Bが配置され、油圧モータ129により掻き込みローラ124が回転することにより、切断後の野菜1等を後方の搬送部130へ向けて掻き込んで送るようになっている。ガイド部材125は、掻き込みローラ124の前方左右端に位置し、前方の地面G1上の野菜1等をカッター部材122および掻き込みローラ124へ向けて案内する役目をする。
【0030】
搬送部130は、カッター部122により切断された野菜1等を油圧モータ133により後方のコンテナ200へ搬送するもので、前部コンベア131と後部コンベア132を備える。前部コンベア131は支持フレーム121の内側に一体に配置されるとともに、前端がカッター部122の近傍に位置しかつ後端が門型フレーム111の前部の内側かつ低位置でクローラ115の上側に配置されている。後部コンベア132は、エンジン112の下方に配置され、前端が門型フレーム111の前部の内側の低位置に位置し、本体部が後部の内側を斜め上方に通過して、後端が門型フレーム111の後方まで達している。そして、カッター部122により切断された野菜1等は、前部コンベア131、後部コンベア132上を後方に搬送され、後部コンベア132の後端からコンテナ200内に落下し、収容されるようになっている。なお、油圧モータ129、133はエンジン112により駆動される。
【0031】
後部コンベア132の下方、すなわち、図1に示すように、門型フレーム111の、クローラ115上面と後部コンベア132下面に囲まれた空間Sには、エンジン112用の燃料タンク171及び油圧シリンダ、油圧モータ用等の油圧作動油タンク172が搭載されている。これらの燃料タンク171および油圧作動油タンク172は、図1および図2に示すように、エンジン112の直下に配置されると共に、走行装置110の前後方向中央に位置している。なお、図1中、符号173はバックミラー、符号174は天蓋を示している。
【0032】
コンテナ載置部140は、搬送部130により後方に搬送され落下された野菜等を収容するコンテナ200を着脱可能に載置するもので、門型フレーム111の後方に位置する載置フレーム141が、傾倒機構150および昇降機構160を介して門型フレーム111の後部に吊下げ支持されている。載置フレーム141は、コンテナ200の側面に当接される垂直フレーム部142と、垂直フレーム部142の下部から地面G1に沿って水平に延びる2本の水平フォーク143、143とから構成されている。2本の水平フォーク143、143は、コンテナ200の下面に設けられた2列の挿入部201、201の各差込口201A、201Aに対し挿入可能とされている。なお、符号144は垂直支持フレーム151と水平部材152の接合部の補強材である。
【0033】
コンテナ載置部140は、傾倒機構(チルト機構)150により、載置フレーム141全体を所定角度(図示例では水平面に対し±15度)傾倒可能とされている。傾倒機構150は、垂直支持フレーム151の下部に固定された水平部材152に対しヒンジ153を介して垂直フレーム部142が支持され、また、垂直フレーム部142の上部と垂直支持フレーム151の上部との間に油圧シリンダ154が介在されている。これにより、油圧シリンダ154のロッド154Aを伸長させて載置フレーム141全体を下向きに傾倒させ、油圧シリンダ154のロッド154Aを縮小させて載置フレーム141全体を上向きに傾倒させるようになっている。なお、油圧シリンダ154の伸長・縮小動作は、操縦席116に着座したオペレータMからの遠隔操作により可能とされている。
【0034】
コンテナ載置部140は、昇降機構160により、載置フレーム141全体を、水平姿勢を保持したまま昇降可能とされている。昇降機構160は、左右一対の平行リンク機構を備えている。平行リンク機構は、門型フレーム111の上部に取り付けられた垂直部材161と、傾倒機構150の垂直支持フレーム151との間に、2本の互いに平行な上下のアーム162、162の両端がヒンジ結合されており、下のアーム162の途中と門型フレーム111の下部との間に油圧シリンダ163が介在されている。また、門型フレーム111の上部の後部にはフード164がヒンジ結合されている。フード164は、後部コンベア132上の野菜1等を後端からコンテナ200の上面開口部へ風などの影響を受けずにコンテナ200内に収まるように案内する役目をする。フード164の一部と下のアーム162の途中には、アーム162の下方への回動によりフード164を閉動作させ、アーム162の上方への回動によりフード164を開動作させるリンクアーム165の両端がピン結合されている。かかる昇降機構160は、油圧シリンダ163のロッド163Aを伸長させて載置フレーム141全体をその姿勢を保持したまま安定的に上昇させ、油圧シリンダ163のロッド163Aを縮小させて載置フレーム141全体をその姿勢を保持したまま安定的に下降させるようになっている。なお、油圧シリンダ163の伸長・縮小動作は、操縦席116に着座したオペレータMからの遠隔操作により可能とされている。
【0035】
コンテナ200は、後部コンベア132の後端から落下される野菜1等を収容する大型(例えば空重量が60kg〜90kgで、野菜が入ると300kg程度)のもので、一度に大量の野菜1等を収容できる。コンテナ200の下面には、2本の水平フォーク143、143が差し込まれる差込口201A、201Aを備える2列の差込部201、201が取り付けられている。
【0036】
次に、上記構成の農業用収穫作業機100を用いて、圃場G内に栽培されている野菜1の収穫方法について説明する。
【0037】
まず、圃場G内の地面G1上にある空のコンテナをすくい上げて載置し、一杯になったコンテナを再び地面G1上に降ろす場合について説明する。
【0038】
この場合、エンジン112を始動させ、圃場G内の地面G1上にある空のコンテナ200に対し、操縦席116のオペレータMからの遠隔操作により、傾倒機構150の油圧シリンダ154のロッド154Aを伸長させて水平フォーク143、143の先端を下向きに傾倒させ、収穫作業機100を後退させる。2本の水平フォーク143、143が空のコンテナ200の差込部201、201の差込口201A、201Aに差し込まれたら、油圧シリンダ154のロッド154Aを縮小させて水平フォーク143、143を水平姿勢に戻し、空のコンテナ200を地面G1から持ち上げる。
【0039】
次に、収穫作業機100を圃場G内のスタート地点に移動させ、油圧シリンダ128のロッド128Aを伸長させて、高さ調整ローラ127を地面G1に接地させる。これにより、地面G1上に植えられた野菜1等に合わせてカッター部122の切断高さを調整する。そして、切断部120、搬送部130を始動させ、収穫作業機100をスタート地点から畝に沿って低速走行させる。
【0040】
収穫作業機100の低速走行中、畝前方に植えられた野菜1は、先頭の左右端に位置するガイド部材125、125により後方のカッター部122へと案内され、カッター部122のバリカン刃122Aにより根元付近が切断され、切断された野菜1等は、回転する掻き込みローラ124により後方の前部コンベア131上に送られる。前部コンベア131上に送られた野菜1等は、さらに後部コンベア132へ搬送され、後部コンベア132の後端からコンテナ200内に落下され収容される。
【0041】
収穫作業機100による作業中、コンテナ200内に収容された野菜が前後いずれか(例えば後方寄り)に偏在する場合がある。コンテナ200内で収容野菜が偏在すると、収穫作業機100の走行安定性、ひいては収穫作業安定性(カッター部122の切断安定性等)に影響する。そこで、傾倒機構150を利用し、オペレータMからの遠隔操作により、油圧シリンダ154のロッド154Aの伸長と縮小を繰り返し、載置フレーム141全体を所定角度(例えば、±10度の範囲で)繰り返し上下に傾倒させ、コンテナ200内の収容野菜の偏在を解消する。このようにして、コンテナ200内が一杯になるまで、収穫作業を継続する。
【0042】
コンテナ200が収穫した野菜1で一杯になったら、コンテナ200を適当な場所に降ろす。水平フォーク143、143の先端を下向きに傾倒させてコンテナ200を地面G1に接地させ、収穫作業機100を前進させて水平フォーク143、143をコンテナ200の差込部201、201から抜き出す。そして、再び空のコンテナ200に対し差込部201、201に水平フォーム143、143を差し込んで、空のコンテナ200を持上げ、次の収穫作業に戻る。これにより、連続的な収穫作業が可能である。
【0043】
次に、運搬車の荷台にある空のコンテナを載置して、一杯になったコンテナを再び運搬車の荷台に積み込む場合について説明する。
【0044】
この場合、エンジン112を始動させ、運搬車の荷台上の空のコンテナ200に対し、オペレータMからの遠隔操作により、昇降機構160を作動させ、水平フォーク143、143を積み込み高さまで上昇させる。具体的には、油圧シリンダ163のロッド163Aの伸長により、上下のアーム162、162に吊下げ支持された垂直支持フレーム151を上昇させ、垂直支持フレーム151により支持された載置フレーム141を水平姿勢のまま上昇させ、水平フォーク143、143をコンテナ200の積み込み高さまで上昇させる。なお、載置フレーム141の上昇に連動して、コンテナ200上方のフード164が大きく開動作し、コンテナ200の上昇時にコンテナ200との干渉が回避される。
【0045】
そして、収穫作業機100を後退させながら、傾倒機構150の作動により、水平フォーク143、143の先端を下向きに傾倒させて、水平フォーク143、143を荷台上の空のコンテナ200の差込口201A、201Aに差し込む。次に、水平フォーク143、143を水平姿勢に戻してコンテナ200を持上げ、収穫作業機100を前進させ、昇降機構160の作動により、空のコンテナ200を所定の高さまで下降させる。最後に、収穫作業機100を圃場G内のスタート地点に移動させる。
【0046】
後は前述したように、収穫作業機100をスタート地点から畝に沿って低速走行させ、コンテナ200が野菜1で一杯になるまで収穫作業を続ける。
【0047】
コンテナ200が野菜1で一杯になったら、運搬車への積み込み場所まで移動し、運搬車の荷台にそのまま積み込む。すなわち、オペレータMの遠隔操作により、図5に示すように、昇降機構160、具体的には、油圧シリンダ163のロッド163Aの伸長により載置フレーム141を水平姿勢のまま積み込み高さまで上昇させ、積み込み高さに横付けされた運搬車の荷台に対し収穫作業機100を後退させる。そして、傾倒機構150の作動により水平フォーク143、143の先端を下向きに傾倒させて、コンテナ200を運搬車の荷台に接地させ、収穫作業機100を前進させて、水平フォーク143、143をコンテナ200の差込口201A、201Aから外し、コンテナ200を荷台上に降ろす。このようにコンテナ200を直接積み込むことができる。
【0048】
なお、運搬車に積み込まれたコンテナ200の野菜1は、コンテナ200ごと野菜工場等に運ばれる。また、野菜工場等からは空のコンテナ200が再び圃場G内に持ち込まれる。
【0049】
本実施形態の収穫作業機100によると、以下の効果が得られる。
【0050】
(1)搬送部130の後方に大型のコンテナ200を載置するコンテナ載置部140を設けたので、一度に大量の野菜1等を収容することができ、野菜1等の収穫効率が向上し、新鮮な野菜1等を効率よく低コストで収穫し、速やかに野菜工場等に運搬することができる。
(2)傾倒機構150の採用により、収穫作業機100上のオペレータMが遠隔操作により一人で、地面G1上の大型のコンテナ200を搬送部130の後方に容易に載置させることができるようになった。また、収穫作業時に、コンテナ200内に収容野菜の偏在があるときは、傾倒機構150を作動させて、偏在状態を解消することができる。これにより、収穫作業機100の姿勢を安定させ、収穫作業を安定して行える。
【0051】
(3)昇降機構160と傾倒機構150により、収穫作業機100上のオペレータMが遠隔操作により一人で、大型のコンテナ200を運搬車の荷台に直接積み込むことができるようになったので、大型で重量のあるコンテナ200を運搬車の荷台に積み込む労力が大幅に軽減されるようになった。また、圃場に待機するトラクタのアタッチメントであるフォークリフトやクレーンが装備された運搬車が不要となり、機械設備の省力化が図れるようになった。
(4)間に低い位置の搬送部130を挟んで、上側にエンジン112を、下側に燃料タンク171および油圧作動油タンク172をそれぞれ配置したので、収穫作業機100の走行時のバランス、安定性が向上した。
【0052】
(5)特に、上側のエンジン112と下側の燃料タンク171、油圧作動油タンク172は、収穫作業機100全体の前後方向略中央に配置したので、収穫作業機100の前後のバランスがよくなり、収穫作業機100の走行安定性が一層向上し、高さ位置調整ローラ127および傾倒機構150の作用(コンテナ200内の偏在解消作用)とも相まって、野菜1等の収穫作業を安定的かつ能率的に行うことができる。
(6)エンジン112を門型フレーム111の上部に搭載した結果、低い位置にある搬送部130上を搬送される野菜1等に対するエンジン112からの排ガスや排熱の影響を最小限に抑えることができ、収穫された野菜1等の鮮度を保つことができる他、エンジン112のメンテナンス性が向上する、野菜1等に付着された埃・泥によるエンジン112の故障がなくなる、エンジン熱による搬送コンベアの劣化を抑えることができる(材質が樹脂製の場合)等のメリットが生まれた。
【0053】
本発明に係る農業用収穫作業機は、前記実施形態で説明した農業用収穫作業機100の構造に限定されない。また、前記実施形態で説明した乗用型に限定されず、小型の一畝用の歩行型収穫機などにも広く適用可能である。収穫作業機の動力源には上に述べたエンジンだけでなく、バッテリーで駆動される電気モータ等も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、野菜やシキミ等の収穫作業に用いる機械として、乗用型、歩行型の他、幅広く利用可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 野菜
100 農業用収穫作業機
110 走行装置
111 門型フレーム
112 エンジン(動力源)
113 油圧ポンプ
114 走行モータ
115 クローラ(走行体)
116 操縦席
117 走行ハンドル
118 制御盤
120 切断部
121 支持フレーム
121A 支持軸
122 カッター部
122A バリカン刃
123、126 アタッチメント
124 掻き込みローラ
124A 回転軸
124B 掻き込み部材
125 ガイド部材
127 高さ調整ローラ
128、154、163 油圧シリンダ
128A、154A、163A ロッド
129、133 油圧モータ
130 搬送部
131 前部コンベア
132 後部コンベア
140 コンテナ載置部
141 載置フレーム
142 垂直フレーム部
143 水平フォーク(差込部材)
144 カバー
150 傾倒機構
151 垂直支持フレーム
152 水平部材
153 ヒンジ
160 昇降機構
161 垂直部材
162 アーム
164 フード
165 リンクアーム
171 燃料タンク
172 油圧作動油タンク
173 バックミラー
174 天蓋
200 コンテナ
201 差込部
201A 差込口
G 圃場
G1 地面
M オペレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の走行体を備える走行装置と、前方に位置し被収穫物を刈る切断部と、刈り取り後の収穫物を後方に搬送する搬送部と、搬送部から落下する収穫物を収容するコンテナを着脱可能に載置するコンテナ載置部と、コンテナ載置部を上下に傾倒可能な傾倒機構を備えていることを特徴とする農業用収穫作業機。
【請求項2】
コンテナ載置部がコンテナの下面に差込可能な複数の差込部材を備えることを特徴とする、請求項1記載の農業用収穫作業機。
【請求項3】
コンテナ載置部を昇降させる昇降機構を備えることを特徴とする、請求項1または請求項2記載の農業用収穫作業機。
【請求項4】
走行装置に架設された門型フレームの上部に収穫作業機の動力源が配置され、この動力源の下方に位置して前記門型フレームの内側を通るように搬送部が配置されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の農業用収穫作業機。
【請求項5】
収穫作業機の動力源の燃料タンクおよび油圧作動油タンクが前記動力源および搬送部の下方に位置して前記門型フレームの下部に配置されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の農業用収穫作業機。
【請求項6】
収穫作業機の動力源が収穫作業機の前後方向略中央に位置し、前記動力源の燃料タンクおよび油圧作動油タンクが収穫作業機の前後方向略中央に位置することを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の農業用収穫作業機。
【請求項7】
切断部が、前方の被収穫物の下部を切断するカッター部と、切断された収穫物を後方へ掻き込む掻き込み部とを備えることを特徴とする、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の農業用収穫作業機。
【請求項8】
地面からの切断部による切断高さを調節する高さ調整機構を備えることを特徴とする、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の農業用収穫作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−70645(P2012−70645A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216241(P2010−216241)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(592264237)松元機工株式会社 (16)
【Fターム(参考)】