説明

農業用被覆材

【課題】 間引きや追肥・雑草取りなど本来の作業時間以外に、被覆材開閉に多くの時間と労力が必要となり、適宜適切な管理が苦痛で困難となるが、無農薬等での農作物栽培には、防虫ネット等のトンネル被覆資材は、必需品であるはんめん重労働のあまり、使用を控える傾向にもある。しかし、それら開閉や設置及び撤去に労力をかけず使用可能な農業用被覆資材であって、防虫・防寒対策資材を提供する。
【解決手段】既存の帯体にワイヤ等を通しそれを帯体の両端で杭に結束帯等で固定する事で、被覆材全体の固定や、設置及び管理時等に簡便に開閉出来る事を可能としたループを設けた被覆材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
田畑の畝等の耕作地を被覆するネット及びシート等の被覆材に関する。
【背景技術】
【0002】
防虫ネットや保温シート等のトンネル被覆資材を用いた施工方法として、従来は、谷や畝などの土を掘り、土よせをし、土に埋めこむ事で、固定をしていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
間引きや雑草取りなど本来の作業時間以外に、被覆材開閉に多くの時間と労力を要する土への埋め込み作業が必要であり、多少の雑草や害虫を発見した時においても、見て見ないふりをし、適宜適切な管理が苦痛と重労働で困難になっている。しかし減農薬や無農薬での農作物栽培には、防虫ネット等のトンネル被覆資材は、必需品であるが、その被覆材開閉が重労働のあまり、防虫剤や殺虫剤および殺菌剤等の農薬剤散布を行い、被覆資材の使用を控える傾向にある。
【0004】
特に、家庭菜園においては、無農薬栽培が望まれ、被覆資材の使用は必須となる。また、一度にすべての作物を収穫せず、必要とする量の収穫しかしない為、収穫の度に、被覆資材を掘り起し開き、収穫等の作業後に、再び、土に埋め込み閉じなければならない。
【0005】
従来の被覆資材は、固定の為、土に埋めなければならない部分が必要となるが為、被覆資材の幅のすべてが地上部で有効に使用出来ない。
【0006】
土への被覆資材埋め込み量が不足した場合、風でめくれ、その被覆資材で近隣作物をたたき傷めてしまう事や、風に飛ばされ道路に出ると交通障害となり、また、電線にまきつけば、停電事故を発生させうる事となるなど、それらの原因となっている。
【0007】
また、風の吹きつけを気にするあまり埋め込み量を多くすると、トンネル内容積の減少や開閉に要する労力と時間が増大し、本来の目的である農作物栽培を補助すべき被覆資材が、目的に反し、邪魔をする資材となる。
【0008】
また、固定用土として、谷や隣接の畝の土を使う事で、多品種栽培を行っている場合にあっては、相性の良くない作物の土が混ざり合う事で起りうる育成障害や、同種を続けて栽培する事で起こる、連作障害等の障害リスクが高まるなど、問題の発生が少なくない。
【0009】
隣接畝で谷の土に埋め込み使用する場合、被覆材が重なり合ってしまう事から、谷の幅を広くするなど、畝と畝の間隔を広く取らなければならず、耕作の出来ない無駄な用地・間隔が多く出来てしまう。その事により、畝数が制約・制限され耕作量と収量が減少する。
【0010】
従来の防虫ネット等被覆資材は、本来の作業時間以外に、開閉作業に多くの時間と労力を必要とする為、それら労力削減の為の代用品として、薬剤が用いられる事となるが、薬剤においても、散布のタイミングと、天候や風向き等、多くの制約を受けるとともに、その薬剤散布は、複数回行わなければならず、必要回数のその時間と労力を必要とするだけでなく、その都度、薬剤費用も発生し、必要となる。
【0011】
また、農作物に害虫が飛来付着すれば、害虫による食害以外にも、病原菌媒介などの飛来害虫に関連する、病害が発生し、被害を受ける事があるだけでなく、時には、壊滅状態になる場合もあり、その為、殺菌剤等の農薬剤の使用も必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するためになされた本発明は、帯体と、帯体の両縁に設けられたループを備えた農業用被覆材であり、その帯状被覆材は、好ましくは、ネットであり、あるいは、シート樹脂であってもよく、あるいは、不織布等で、作られた被覆材であってもよい。
【発明の効果】
【0013】
防虫ネット等トンネル被覆資材を土に埋める事なく気密性を保ち密着固定できる為、従来の様に、土への埋め込み固定や掘りおこし作業の、それらに要する労力と時間が生じない為、大幅に時間短縮が出来る。
【0014】
これにより、より多くの作物が、減農薬や無農薬栽培においても、害虫の攻撃・被害を受けにくくなるだけでなく、簡便に開閉出来る為、従来使用を控えていた作物でも使用可能となるほか、間引きや追肥・雑草取りなどの適宜、適切な管理が行え、使用範囲も広がる。
【0015】
特に家庭菜園の場合においては、一度にすべての作物を収穫するのではないので、防虫ネット等の被覆資材を簡便に開閉出来る事は、大切な事で、大きな効力を発揮する。
【0016】
防虫ネットを用いた場合、基本的には無農薬栽培である為、防虫剤や殺虫剤等の農薬剤購入費用及び、それら散布に関する一切の労力(心労も含む)と時間を、必要としなくなる。
【0017】
また、最初から防虫ネットを用いれば、大幅に害虫付着を抑制出来る事から、害虫による食害以外に害虫飛来による病原菌媒介に関連する病害からも、作物を守れ、その為、殺虫剤や殺菌剤など農薬剤使用を、控える事が可能となり、基本的に不要となる。
【0018】
土へ埋め込み固定する必要が生じない為、被覆資材の幅のそのすべてが、地上部で有効的に使用できる。
【0019】
この事で、従来より小さなサイズの被覆資材でも、同じ容積を確保しつつ、確実に固定可能な為、安心して安全に使用できる為、使用範囲が広がる。また、被覆資材経費等の削減も可能となる。
【0020】
強風が予測され、補強固定が必要となれば、ペグ等により簡単に補強固定出来るため、強風が予想させる場合でも、被覆資材を使用し続けられる為、害虫や冷気等にさらされる事を防げる。
【0021】
従来の様に土に埋め込まない為、隣接畝の被覆材と重なり合ってしまう事がないだけで無く、畝の間隔を広く取る必要性も無く、耕作の出来ない無駄な用地の必要性もなくなり、畝数を多くとれる、その為同じ面積でもより多くの作物が作れ、収穫量の増量が見込める。
【0022】
被覆材固定に用土を使用しない為、隣接畝の土が混ざりあう事が、基本的に発生しない為、隣接畝で相性のよくない作物の栽培を行っても、栽培が可能なるなど、制約をうけない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態に係る被覆材が示された平面図である。
【図2】図1の被覆材が示された正面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る被覆材が示された正面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る被覆材が示された正面図である。
【図5】図1の被覆材の使用時の正面図(断面図)である。
【図6】図1の被覆材の使用時の側面図である。
【図7】図3及び図4を使用した使用時の正面図(断面図)である。
【図8】従来の土への埋め込み使用時の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
トンネル栽培用ネット又は保温用シートなどの被覆資材の、図1図2に示す様に帯状形状(長手方向)に沿う両側縁部に、筒状ループ2を2つ備えている。
【0025】
図1に示す被覆資材の帯状形状(長手方向)の長さは0.5m以上300m程度のものであって、その幅は0.5mから6m位であるが、好ましくは、0.6から2.5m位が一般的である。
【0026】
図2に示すループ2へワイヤ3等を通し、図6に示す、畝7の両端に杭5をしっかり打ち込み、それに引き留め固定するが、被覆材1の端を束ね結束帯もしくは、結束線等で、その杭5に固定する。それにより被覆材1のトンネル全体の固定が可能となった。その時には、図5、図6に示す様に、畝や谷の土に密着させ気密性を確保する。
【0027】
図5に示すワイヤ3は、単線あるいは多芯のものでもよいが、好ましくは、シース(被覆)付硬質メッセンジャー(亜鉛めっき鋼線7本より線)で太さは5.5Sq〜38Sq程度のものを使用すればよいが、8Sq〜14Sqがより好ましく、適度な弾力性を有するワイヤである為、施工性の向上と気密・密着性や復元性が得られ、トンネルの防虫や防寒への信頼が増す。
【0028】
図5の使用例では、ワイヤ3と、しているが、これにかえて、パイプ等で代用してもよい。
【0029】
図6に示すトンネル支柱6は、竹などで加工したもの、もしくは、市販のもので、その材質は、金属質・木質・樹脂やその他繊維質の一切を問わず、使いやすいものでよい。また、その支柱は0.5mから2m位間隔で畝をまたぐ様に立て、そこに本発明の被覆材1をそのトンネル支柱6に被う様にかぶせる。この作業は既存技術の従来製品と、ほぼ違いはないが、図8で示す様に従来製品は、土を掘り図8の12で示す様に、地中に埋め込んで固定していた。しかし、本発明は、図5に示す様に地中に埋めるところがないが、従来の地中埋め込み固定方式と同等に気密性を保つ事が可能となっただけでなく、それに加え、被覆資材の開閉に要する労力及び時間は、従来製品とは比べ物にならず少なく、極わずかな時間で、簡便に被覆資材の開閉が出来る。その為、収穫時もちろん、雑草取りや追肥・間引き等の管理時にも大きな効力を発揮する。
【0030】
従来品では、図8の12で示す様に、土を掘り地中に埋め込んで固定していた。そのため、作業をするためには、一旦、図8の12で示す埋込み部上部の土をのけ、掘り起さなければ、本来の作業に、とりかかれなかったが、本発明では、図5に示す様に、土へ埋め込まず、地上部のみで使用する為、土をのける作業を必要とせず、縁であるループ2とワイヤ3をめくり上げるだけで各種作業が行える。作業後は、土を掘り、埋め込む作業も必要なく、めくりあげた縁を下ろすだけで、被覆作業が完了する。
【0031】
栽培地の土に凹凸があり、密着しにくい場合や、風により被覆材1のループ2が浮き上がる様な場合には、適宜、図6に示すペグ10など杭を打ち、ワイヤ部3及びループ2を押え固定する。これにより、被覆資材のトンネル内容量を減少させることなく、風に対し強くなり、また、被覆材が強風で、はがされなくなるので、作物が無防備に露出する事が防げ、害虫などから作物を守る事ができる。また、風でめくれた被覆資材で近隣作物をたたき傷める事や、風でとび回る事で起こる他の事故も防げる。
【0032】
図1、図2の被覆材の縁のループ2に、図3、図4に示す様に、エンペラ(スカート)8もしくは、9を、取付けてもよい。
【0033】
図7に示す、エンペラ(スカート)8及び、エンペラ(スカート)9は、図3の8及び図4の9の実施形態の正面図(断面図)である。このエンペラ(スカート)8及び9は、栽培地に細かな凹凸があり、ループ2が地面に密着しにくい場合、害虫侵入の阻止や、被覆材1が、保温用シートで使用する場合、エンペラ(スカート)8及び、エンペラ(スカート)9が、地面との密着性を上げ、気密を保ち、冷気の侵入をより強く防ぐ働きをする。
【0034】
図8は、本発明がなされるまでの防虫用ネット等被覆材の一般的な使用例の断面図である。 図8で示す様に従来の被覆材11は、土を掘り、被覆材11に、土をかけ、その重みで被覆材11の縁を、土埋め固定部12とし、固定している。その為、土埋め固定部12となる長さが不十分であったり、被せる土の量が適切でない場合、風で被覆材11が、はぎとられ、被覆材とての役を果さなくなる事が多発する。その為、土埋め固定部12を長くすると、土の量が多くなるなど、固定に要する労力と、時間が増大するが、それだけでなく、被覆材の内容量(有効断面積)も減少する事になる。また、土埋め固定部12の長さは、被覆に使用できない幅となるが、本発明の被覆材は、図8の土埋め固定部12に、該当する部分がない。したがって、従来の被覆材と、本発明の被覆材と同じ幅であるならば、図2の被覆材1及びループ2の幅のほぼすべてが、被覆材の有効幅であり、図5に示す様に土埋めする事なく使用する本発明の被覆材では、内容量(有効断面積)の大きなトンネルができる。そのため大きく育つ作物など、より多くの作物の栽培で使用が可能となった。
【0035】
従来の被覆材は、多くの場合1人での作業は困難であった、その上、風が少しでも吹けば、よりいっそう困難さが増すが、本発明品は、1人でも被覆作業が可能となるばかりか、多少の風があろうとも、ループ2にワイヤ3を、通し使用するので、その弾性と重みで、作業を行う事が可能となった。
【0036】
図1の被覆材では、両縁にループ2が設けられているが、両縁の片方になくてもよい。
【0037】
図2の被覆材では、ループ2に、ワイヤ3が通されているが、ループを使用せず直接被覆材にワイヤ3を取付けてもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 被覆材
2 本体(ループ)
3 ワイヤ
4 中心線(図面上のみ)
5 杭
6 トンネル支柱
7 畝
8 エンペラ(スカート)
9 エンペラ(スカート)
10 ペグ
11 従来の防虫ネット(被覆材)
12 従来方式での土埋め固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯体と帯体の両縁の少なくとも一方に設けられたループを備えた農業用被覆材。
【請求項2】
上記帯体が、ネットである請求項1に記載の被覆材。
【請求項3】
上記帯体が、シート樹脂である請求項1に記載の被覆材。
【請求項4】
上記帯体が、不織布もしくは、織布である請求項1に記載の被覆材。
【請求項5】
請求項1と共にエンペラを備えた、請求項1に記載の被覆材。
【請求項6】
上記帯体が、ネットとシート樹脂との複合体、シート樹脂と不織布、織布との複合体、ネットと不織布、織布との複合体又は、ネットとシート樹脂と不織布、織布との複合体である請求項1に記載の被覆材。
【請求項7】
請求項2のネットのその材質は金属、化学繊維、天然繊維もしくは、樹脂又は、その複合材である、請求項2に記載の被覆材。
【請求項8】
帯体と帯体の縁に設けられたループを1つ以上備えた農業用被覆材と、このループに通されるワイヤとの組み合わせ。
【請求項9】
帯体と帯体の両縁の少なくとも一方に、ワイヤが直接取付けられた農業用被覆材と、そのワイヤとの組み合わせの。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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