説明

農耕用鎮圧ローラー

【課題】ローラーが回転進行して鎮圧接地から離れる際に圃場地面の持ち上げ、掘り返しを抑える農耕用鎮圧ローラーを提供する。
【解決手段】ローラー本体の円周外表面に対向する軟質円筒カバー体の内周面に、先端をローラー本体の円周外表面に当接する突起部を一体形成し、突起部を有する軟質円筒カバー体が回転により鎮圧接地面から離れる際に突起部の弾発変形により原形復元して地面を押圧するようにした。軟質円筒カバー体の内周面に一体形成する突起部に代えて、ローラー本体とゴム軟質円筒カバー体間の中空間隙に弾力性中間円筒体をサンドイッチ状に挟んだ重合体に形成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等に牽引される鎮圧機に取付けて回転しながら圃場を鎮圧する農耕用鎮圧ローラーに関し、詳細には、ローラーが圃場地面を回転進行しながら鎮圧接地から離れる際に圃場地面を押圧する構造の農耕用鎮圧ローラーに関する。
【背景技術】
【0002】
農場などの膨軟な地面を固結する鎮圧機は、図1に示すようにトラクタ等に牽引される作業機2の枠体7に複数の鎮圧ローラー組立体3を回転進行可能に取付け、播種後の土の鎮圧や小麦発芽後の鎮圧などに使用される。
従来のこの種の鎮圧ローラー1は、図20、図21に示すように、鉄やコンクリートなどの硬い円筒又は円柱からなるローラー本体1aの外側を、ゴムなどの柔軟な素材からなる円筒ゴムカバー体1bで円形の中空間隙部10を介在させて被覆した構造のものが多用されている。この構造の鎮圧ローラーは接地の際にローラー本体1aと円筒ゴムカバー体1b間の中空間隙部10が圧縮されて潰れ、回転進行に伴って接地から離れるときに中空間隙部10が復元するときの変形作用を利用して接地面の土が円筒ゴムカバー体に付着しないようにする試みがなされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来のような上記構造の鎮圧ローラー1は、内側の硬質のローラー本体1aと外側の円筒ゴムカバー体1bの径寸法が異なるため回転進行するにつれて円筒ゴムカバー体1bの回転に遅れが生ずる。
他方、ローラー本体1aと円筒ゴムカバー体1bは図22に示すように、回転方向に対してはフリーではなく固定されているため、回転が遅れた外側の円筒ゴムカバー体1bは中心側(内側)のローラー本体1aに固定された部分に引張られるようにして前進側がたるむ。こうなると円筒ゴムカバー体1bは接地から離れる際に中空間隙部10をもった元の状態に戻ろうとする変形の余地がなくなるため、表面に土が付着して地面から剥ぎ取られ、土の付着防止効果が著しく低下してしまう。
【0004】
鎮圧ローラーは上記のように、膨軟な地面を固結させる目的で使用されるものであるが、農耕用に使用される場合は圃場の地面が土木用と違って固結の固さがそれほど固くないことに加えて、播種後の鎮圧や小麦の発芽後の鎮圧(いわゆる麦踏み作用)などに使用されるため、ローラー表面への付着は、土の付着そのものよりも接地から離れる瞬間に接地面を蹴り上げ、土を剥ぎ取ってしまうという現象が問題となる。
すなわち、ローラーが接地から離れる瞬間に土を持ち上げて剥ぎ取ってしまうと播種した種が掘り返されたり、麦の根が土とともに破断してしまうという弊害が生ずる。
【0005】
本発明はこのような問題を解決することを意図してなされたもので、その目的とするところは、ローラーが鎮圧接地から離れる際に外側の円筒ゴムカバー体の変形復元力を確保して圃場地面の剥ぎ取りや掘り返しを効果的に防止することができる農耕用鎮圧ローラーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の農耕用鎮圧ローラーは、ローラー本体の円周外表面に、ゴム等の軟質円筒カバー体を所定の中空間隙を介して外嵌した鎮圧ローラーにおいて、ローラー本体の円周外表面に対向する前記軟質円筒カバー体の内周面に、先端をローラー本体の円周外表面に当接する突起部を一体形成し、突起部を有する軟質円筒カバー体が回転により鎮圧接地面から離れる際に突起部の弾発変形により原形復元して地面を押圧するようにしたことを特徴とする。
【0007】
軟質円筒カバー体の内周面突起部は、複数の局部的半球状突起、内周横方向の突条、内周縦方向の突条又は内周斜め方向の突条、その他、内周面を凹凸に形成し、凸部先端がローラー本体に弾発的に当接する構造のものであればよい。
【0008】
また、本発明の上記目的は、ローラー本体の円周外表面とゴム等の軟質円筒カバー体を所定の中空間隙を介して外嵌した鎮圧ローラーの中空間隙に発泡スポンジその他の弾力性中間円筒体をサンドイッチ状に挟んだ重合体に形成し、回転により鎮圧接地面から離れる際に弾力性中間円筒体の弾発力により、軟質円筒カバー体が原形復元して地面を押圧するようにしたことを特徴とする農耕用鎮圧ローラーによって達成することもできる。
【発明の効果】
【0009】
上記の構造により、本発明の鎮圧ローラーは鎮圧接地面が回転進行により地面から離れる瞬間に円筒ゴムカバー体の突起部が圧縮から解放されて弾発力により中空間隙を保持した元の形状に戻るように変形する。このため、円筒ゴムカバー体は表面の接地面が地表を押さえながらローラー本体よりも遅れて離れるので、鎮圧接地から離れる際に土を持ち上げたり、掘り返したりすることがない。従って、播種後の鎮圧、小麦発芽後の鎮圧が安定し、また、ローラーに土が付着する弊害も防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を添付の図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の鎮圧ローラー1を使用した鎮圧機2の一例を示す全体図であり、図2は、鎮圧機2に取付けられる鎮圧ローラー組立体3の拡大図である。
鎮圧ローラー組立体3は鎮圧機2への連結部材4を有する支持枠体5に鎮圧ローラー1を回転可能に枢着してなり、鎮圧機2は、図1に示すように、トラクタなどの牽引車(図は省略)へのヒッチ6を有する共通の枠体7にこれら複数の鎮圧ローラー組立体3を連結した構成になっている。
【0011】
図3は、本発明の一実施例による鎮圧ローラー1を示すもので、この鎮圧ローラー1は、鉄あるいはコンクリートなどの硬い材質の円筒部材からなるローラー本体1a(図4参照)の円周外表面9に、ゴム、合成ゴムなどの比較的軟らかい材質の円筒カバー体1b(図5参照)を嵌合した構成になっている。
【0012】
軟質円筒カバー体(ここでは円筒ゴムカバー体)1bは図5及び図6に示すように、円筒内周面に複数の突起部8を一体に形成してあり、ローラー本体1aの円周外表面9にこの円筒カバー体1bを外嵌したときに、図7及び図8に示すように、突起部8の先端がローラー本体1aの円周外表面9に当接するとともに、突起部8以外の凹面とローラー本体1aの円周外表面9の間に中空間隙10が形成されるようにして重合されている。
【0013】
図3乃至図8の実施例は、円筒カバー体1bの突起部8を半球その他の円形凸部に形成し、複数の円形凸部からなる複数の突起部8が円筒カバー体1bの内周面に、好ましくは、平均密度で一様に配設してある。
【0014】
鎮圧ローラー1は、ローラー本体1aの左右両側辺を内側に傾斜させた係合面11に形成するとともに、円筒カバー体1bの左右両側縁辺を内側湾曲部12に形成し、この湾曲部12をローラー本体1aの傾斜係合面11に嵌め合わせて一体に係着させてある。
【0015】
上記鎮圧ローラー1は、図9に示すように、鎮圧ローラー1の中空内部に組付けたフレーム14に支軸15と軸受16を介して前記支持枠5に回転可能に支持され、図2に示す鎮圧ローラー組立体3として組付けられる。
【0016】
次に、上記のように組付けられた本発明の鎮圧ローラー1の作用を図10により説明する。
鎮圧ローラー1が矢印方向へ転動すると、内側のローラー本体1aと外側の円筒カバー体1bの径の違いで円筒カバー体1bは回転速度の遅れでローラー本体1aの回転に引張られはするが内周面の突起部8よって円筒カバー体1bの絞りが規制されるため、前進側にたるみが生じない。
他方、鎮圧接地の後方では、鎮圧ローラー1が鎮圧接地から離れる際に円筒カバー体1bの突起部8が張力的な復元力により変形して円筒カバー体1bを元の中空状態に戻そうとする力が働く。このためローラー本体1aが鎮圧接地から離れる際は円筒カバー体1bは圧縮されていた突起部8が完全に復元するまで地面を押圧し続け、回転が進むにつれて円筒カバー体1bは次第に地面から離れる。
このため、鎮圧ローラー1が接地面から離れる際の跳ね上げが円筒カバー体1bの突起部8の弾力復帰により緩衝されるので地面の持ち上げや撹拌が抑制されるとともに、結果としてローラーへの土の付着も予防されることになる。
【0017】
図11乃至図13は本発明の他の実施例を示すもので、この実施例は、円筒カバー体1bの突起部8として円筒カバー体1bの内周面に横方の突条8aを形成し、内周面全面をこの横方向の突条8aによる凹凸面に形成したもので、この構成でも図13に示すように、図10と同様の作用が働く。
【0018】
図14乃至図16は本発明のさらに他の実施例を示すもので、この実施例は、円筒カバー体1bの突起部8として内周面に円周方向の複数の突条8bを形成し、内周面全面をこの縦方向の突条8bによる凹凸面に形成したもので、この構成でも図16に示すように、図10と実質的に同様の作用が得られる。
【0019】
なお、図は省略したが、円筒カバー体1bの内周面に形成する突起部8は図の実施例に限らず、円筒カバー体1bの内面横方向へ傾斜して直線又は湾曲状に延びるスパイラル突条、その他、鎮圧接地の圧縮から離反時に変形して原形に復元されるものであればよい。
【0020】
図17乃至図19は本発明の課題を解決する別の態様を示すもので、この実施例は、前記ローラー本体1aと軟質円筒カバー体1b間の円形中空間隙にスポンジ、ゴムなどの弾力的復元力を有する材質からなる弾性円筒体13をサンドイッチ状に挟んで三重に重ね合わせた構成になっている。
【0021】
この実施例の鎮圧ローラー1は、弾性円筒体13はローラー本体1aの円周外表面に接しているが、ローラー本体1aとは独立の部材である。
従って、図19に示すように、ローラー本体1aの回転進行時の遅れにより引張られるが鎮圧ローラー1の接地前方では弾性円筒体13の介在によりたるみが生ずることがなく、また鎮圧接地から離れる際は弾性円筒体13の材質の復元力によりローラー本体1aから独立して外側に膨出しようとする力が働き、鎮圧ローラー1の表面層である円筒カバー体1bを外側に押圧する。このため、図10と同様に、鎮圧ローラー1が鎮圧接地から離れる瞬間の土の蹴り上げ、掘り起こしなどの現象が抑制される。
【産業上の利用可能性】
【0022】
鎮圧ローラーが回転進行により鎮圧接地面から離れ、円筒カバー体がローラー本体の圧接から解放される際に突起部又は別体の弾性円筒体の復元力により地面を押圧するので地面を安定した状態に鎮圧される。従って、特に農耕用鎮圧ローラーの作業効率改善に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】農耕用鎮圧機の全体図
【図2】鎮圧機に取付けられる鎮圧ローラー組立体
【図3】本発明の実施例による鎮圧ローラーの斜視図
【図4】図3実施例のローラー本体の斜視図
【図5】図3実施例の円筒カバー体の斜視図
【図6】図5の円筒カバー体の軸方向断面図
【図7】図3実施例の軸方向断面図
【図8】図3実施例の径方向断面図
【図9】図3実施例の鎮圧ローラーを使用した鎮圧ローラー組立体の軸方向断面図
【図10】図3実施例による鎮圧ローラーの作用説明図
【図11】本発明の他の実施例による鎮圧ローラーの円筒カバー体斜視図
【図12】図11実施例の円筒カバー体を使用した鎮圧ローラーの径方向断面図
【図13】図12実施例による鎮圧ローラーの作用説明図
【図14】本発明の他の実施例による鎮圧ローラーの円筒カバー体斜視図
【図15】図14実施例の円筒カバー体を使用した鎮圧ローラーの軸方向断面図
【図16】図15実施例による鎮圧ローラーの作用説明図
【図17】本発明の他の実施例による鎮圧ローラーの径方向断面図
【図18】図17実施例の鎮圧ローラーの軸方向断面図
【図19】図17実施例による鎮圧ローラーの作用説明図
【図20】従来の鎮圧ローラーの径方向断面図
【図21】従来の鎮圧ローラーの軸方向断面図
【図22】図20の鎮圧ローラーの作用説明図
【符号の説明】
【0024】
1…鎮圧ローラー
1a…ローラー本体
1b…円筒カバー体
2…鎮圧機
3…鎮圧ローラー組立体
4…連結部材
5…支持枠体
6…ヒッチ
7…枠体
8…突起部
8a、8b…突条
9…円周外表面
10…中空間隙
11…係合面
12…湾曲部
13…弾性円筒体
14…フレーム
15…支軸
16…軸受

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラー本体の円周外表面に、ゴム等の軟質円筒カバー体を所定の中空間隙を介して外嵌した鎮圧ローラーにおいて、ローラー本体の円周外表面に対向する前記軟質円筒カバー体の内周面に、先端をローラー本体の円周外表面に当接する突起部を一体形成し、突起部を有する軟質円筒カバー体が回転により鎮圧接地面から離れる際に突起部の弾発変形により原形復元して地面を押圧するようにしたことを特徴とする農耕用鎮圧ローラー
【請求項2】
軟質円筒カバー体の突起部が、複数の局部的半球状突起、内周横方向の突条、内周縦方向の突条又は内周斜め方向の突条であることを特徴とする請求項1記載の農耕用鎮圧ローラー
【請求項3】
ローラー本体の円周外表面とゴム等の軟質円筒カバー体を所定の中空間隙を介して外嵌した鎮圧ローラーの中空間隙に発泡スポンジその他の弾力性中間円筒体をサンドイッチ状に挟んだ重合体に形成し、回転により鎮圧接地面から離れる際に弾力性中間円筒体の弾発力により、軟質円筒カバー体が原形復元して地面を押圧するようにしたことを特徴とする農耕用鎮圧ローラー

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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