説明

農薬化合物の調製方法

【課題】置換ピラゾール系農薬化合物の調製に有用な中間体化合物を製造するための新規の合成経路の提供。
【解決手段】プロトン源と反応させることにより化合物(I)[式中、RはCNまたはCSNHであり;Rは水素または塩化物であり;Rは、ハロゲンまたはハロアルキルまたはハロアルコキシまたはSFである]を調製する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、置換されたピラゾール化合物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
5−アミノ−1−アリール−3−シアノピラゾール化合物およびそれらの誘導体、例えばフィプロニル(Fipronil)等のピラゾール化合物は、重要な一群の殺虫剤を形成している。特定の置換された5−N−アルキル−N−アルコキシアセチルアミノ−1−アリール−3−シアノピラゾール化合物は、国際公開第00/35884号および米国特許第5,556,873号に開示されているように、貴重な農薬特性を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第00/35884号
【特許文献2】米国特許第5,556,873号明細書
【発明の概要】
【0004】
我々は、置換ピラゾール系農薬化合物の調製に有用な中間体化合物を製造するための新規の合成経路を開発した。
【0005】
従って、本発明は、一般式(I)
【0006】
【化1】

[式中、
はCNまたはCSNHであり;
は水素または塩化物であり;
は、ハロゲンまたはハロアルキルまたはハロアルコキシまたはSFである]
の化合物を調製する方法を提供し、当該方法は、化学式(II)
【0007】
【化2】

[式中、R、RおよびRは上記で定義されている通りのものである]
の化合物をプロトン源と反応させることを含む。
【0008】
本発明の方法で使用されるプロトン源は、例えば塩化水素水溶液等の酸性水溶液であるのが好ましい。
【0009】
適切には、この反応は、適した溶媒中で、または、水と部分的に混和性であるかまたは混和性でなくてもよい溶媒中で実施する。適する溶媒としては、トルエンまたはキシレン等の炭化水素溶媒等を挙げることができる。
【0010】
この反応で使用されるプロトン源の量は、0.1当量〜2当量が適しており、0.5当量〜1.0当量が好ましい。
【0011】
この反応は、マイナス50℃〜200℃の範囲の温度で実施されるのが適しており、50℃〜100℃が好ましい。
【0012】
、RおよびRに関しては、好ましくはRはCNであり、好ましくはRは塩化物であり、好ましくはRはハロアルキルであり、特にはトリフルオロメチルである。
【0013】
化合物(II)は新規の合成経路で調製し得、本発明の別の態様では、上記で定義されている通りの化合物(II)を調製する方法が提供される。当該方法は、一般式(III)
【0014】
【化3】

[式中、R、RおよびRは、上記で定義されている通りのものである]
の化合物を第四級アンモニウム塩と反応させることを含む。
【0015】
この第四級アンモニウム塩は、ヨウ化物または臭化物等のハロゲン化テトラアルキルアンモニウムであってよく、臭化テトラアルキルアンモニウムであるのが好ましい。適する臭化テトラアルキルアンモニウムとしては、臭化テトラブチルアンモニウム等を挙げることができる。上述の反応で使用されるこのハロゲン化物塩の量は、0.01当量〜2当量が適しており、0.1当量〜0.5当量が好ましい。
【0016】
この反応は、水と部分的に混和性であるかまたは混和性でなくてもよい有機溶媒の存在下で実施し得る。適する溶媒としては、トルエンまたはキシレン等の炭化水素溶媒等を挙げることができる。この反応は、50℃〜100℃の範囲の温度で実施されるのが適している。
【0017】
上記で定義されている通りの化合物(III)は、化学式(IV)
【0018】
【化4】

で表されるフィプロニルとして既知のピラゾール化合物を、オルトギ酸トリメチルと反応させるステップを含む、既知の合成経路によって調製し得る。この反応は、酸性触媒の存在下で実施し得る。適する触媒としては、パラトルエンスルホン酸等を挙げることができる。
【0019】
また、化合物(III)を第四級アンモニウム塩で処理し、続いて、酸で処理することにより、化合物(II)を単離することなく、化合物(I)を直接的に生成し得る。
【0020】
更に、化合物(I)は、フィプロニル(化合物IV)をホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド三量体またはその化学的均等物と反応させて、中間体化合物(V)
【0021】
【化5】

[式中、R、RおよびRは、上記で定義される通りのものである]
を生成させることによっても調製できる。
【0022】
その後、この中間体化合物(V)を還元剤と反応させることにより、化合物(I)を得ることができる。適切な還元剤としては、ホウ水素化ナトリウム等を挙げることができる。この還元剤は、1当量〜5当量の量で存在していてよい。
【0023】
化学式(II)、(III)および(V)で表される特定の化合物は新規の化合物であり、特に、本発明の他の態様により、以下の新規の化合物が提供される:
3−シアノ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−5−N−ホルミル−N−メチルアミノ−4−トリフルオロメチルスルフィニルピラゾール(化合物II);
3−シアノ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−5−メトキシメチリデンアミノ−4−トリフルオロメチルスルフィニルピラゾール(化合物III)。
【0024】
3−シアノ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−5−ヒドロキシメチルアミノ−4−トリフルオロメチルスルフィニルピラゾール(化合物V)。
【0025】
本発明の方法により調製される化合物(I)は、一般式(VI)
【0026】
【化6】

[式中、
はCNまたはCSNHであり;
XはNまたはCRであり;
およびRは、それぞれ独立的に、水素または塩素であり;
は、ハロゲン、ハロアルキル、ハロアルコキシまたは−SFであり;
およびRは、それぞれ独立的に、アルキル基であり;
nは、0、1、または2である]
により定義され、農薬特性を有することが知られている更なる重要なピラゾールの出発材料として使用することができる。
【0027】
化合物(I)からこの化合物を調製する方法は、参照により本明細書に組み入れられる国際公開第00/35884号から既知である。特に、化合物(I)をトリエチルアミンの存在下でエトキシアセチルクロリドと反応させることにより、化合物(VI)を得る。
【0028】
次に、本発明を、以下の非制限的な実施例を参照することにより説明する。
【実施例】
【0029】
実施例1
実質的にモル過剰量のオルトギ酸トリメチルを、0.5当量のパラトルエンスルホン酸と共に、還流下でフィプロニル(化合物IV)と反応させることにより、3−シアノ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−5−メトキシメチリデンアミノ−4−トリフルオロメチルスルフィニルピラゾール(化合物III)が得られる。
【0030】
この生成物を、直ちに、摂氏100度で、キシレン中における0.1当量のヨウ化テトラブチルアンモニウムで5時間処理することにより、3−シアノ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−5−(N−ホルミル−N−メチルアミノ)−4−トリフルオロメチルスルフィニルピラゾール(化合物II)が得られる。この媒質を直ちに塩化水素水溶液と反応させることにより、最終生成物(化合物I)として、3−シアノ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−5−メチルアミノ−4−トリフルオロメチルスルフィニルピラゾールが得られる。
【0031】
実施例2
3mLのメタノール中における0.437gのフィプロニル(Fipronil)と1.4当量のパラホルムアルデヒドの懸濁液に5当量のナトリウムメチラート(メタノール中における30%溶液)を急速に加えることにより、20℃で3時間および60℃で1時間の後、3−シアノ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−5−ヒドロキシメチルアミノ−4−トリフルオロメチルスルフィニルピラゾール(化合物V)を得た。次いで、この媒質に1当量のホウ水素化ナトリウムを加えた後、古典的な抽出とクロマトグラフィーによる分離を行うことにより、3−シアノ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−5−メチルアミノ−4−トリフルオロメチルスルフィニルピラゾール(化合物I)を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

[式中、RはCNまたはCSNHであり;Rは水素または塩化物であり;Rは、ハロゲンまたはハロアルキルまたはハロアルコキシまたはSFである]の化合物を調製する方法であって、化学式(II)
【化2】

[式中、R、RおよびRは上記で定義されている通りのものである]の化合物をプロトン源と反応させる事を含む調製方法。
【請求項2】
がCNであり、Rが塩化物であり、Rがトリフルオロメチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記プロトン源が酸性水溶液である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記酸性水溶液が塩化水素水溶液である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
溶媒の存在下で実施される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒がトルエンまたはキシレンである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
請求項1に記載された化合物(II)を調製する方法であって、一般式(III)
【化3】

[式中、R、RおよびRは請求項1で定義されている通りのものである]の化合物を第四級アンモニウム塩と反応させる事を含む調製方法。
【請求項8】
前記第四級アンモニウム塩がハロゲン化テトラアルキルアンモニウムである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ハロゲン化テトラアルキルアンモニウムが臭化テトラアルキルアンモニウムである、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
有機溶媒の存在下で実施される、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒がトルエンまたはキシレンである、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
請求項1で定義されている化合物(I)を調製する方法であって、請求項6で定義されている化合物(III)を第四級アンモニウム塩と反応させ、続いて、酸を付加することを含む、調製方法。
【請求項13】
請求項1で定義されている化合物(I)の調製方法であって、フィプロニルをホルムアルデヒドまたはホルムアルデヒド三量体またはその化学的均等物と反応させて、次の中間体化合物(V)
【化4】

[式中、R、RおよびRは請求項1で定義されている通りのものである]を生成させる第一の工程と;化合物(V)を還元剤と反応させる第二の工程;を含む、調製方法。
【請求項14】
前記還元剤がホウ水素化ナトリウムである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
新規の化合物、3−シアノ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−5−N−ホルミル−N−メチルアミノ−4−トリフルオロメチルスルフィニルピラゾール。
【請求項16】
新規の化合物、3−シアノ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−5−メトキシメチリデンアミノ−4−トリフルオロメチルスルフィニルピラゾール。
【請求項17】
新規の化合物、3−シアノ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−5−ヒドロキシメチルアミノ−4−トリフルオロメチルスルフィニルピラゾール。

【公開番号】特開2012−136525(P2012−136525A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−25809(P2012−25809)
【出願日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【分割の表示】特願2002−501865(P2002−501865)の分割
【原出願日】平成13年6月7日(2001.6.7)
【出願人】(506368729)メリアル・リミテツド (2)