説明

農薬微粒剤用組成物、微粒状農薬製剤、並びに、微粒状農薬製剤の製造方法

【課題】優れた微粒状農薬製剤を提供すること
【解決手段】吸油能 1〜50ml/100gかつ粒径が45〜212μmである微粒状鉱物質担体、粒径が0.1〜20μmである微粉状農薬組成物、及び、凝固点が30〜100℃である熱溶融性結合剤を含有する農薬微粒剤用組成物を用いることにより、優れた微粒状農薬製剤を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬微粒剤用組成物、微粒状農薬製剤、並びに、微粒状農薬製剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農薬製剤には種々の形態が存在し、使用場面に応じた形態の農薬製剤が供されている。その製剤形態として、直接散布を行う固体製剤の場合には例えば、粉剤や粒剤のほかに、微粒状の農薬製剤として微粒剤及び微粒剤Fが知られている。これらの微粒状農薬製剤は、粉剤と比較して、1)粒径が大きいため目的地域外へのドリフトが少ない、2)稲体などへの散布時にその株元への到達性がよい、3)吸入、付着等による安全性上の問題が少ない等の利点はあるものの、その製造後の剥離等の問題により、必ずしも充分に満足できるものではなかった。
【0003】
【非特許文献1】日本農薬学会 農薬製剤・施用法研究会編、”農薬製剤ガイド”、社団法人 日本植物防疫協会発行
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、優れた微粒状農薬製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、優れた微粒状農薬製剤を提供すべく検討の結果、吸油能 1〜50ml/100gかつ粒径が45〜212μmである微粒状鉱物質担体、粒径が0.1〜20μmである微粉状農薬組成物、及び、凝固点が30〜100℃である熱溶融性結合剤を含有する農薬微粒剤用組成物を用いることにより、優れた微粒状農薬製剤を提供できることを見出し、本発明に至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下の〔1〕〜〔12〕の通りである。
〔1〕 吸油能 1〜50ml/100gかつ粒径が45〜212μmである微粒状鉱物質担体、粒径が0.1〜20μmである微粉状農薬組成物、及び、凝固点が30〜100℃である熱溶融性結合剤を含有する農薬微粒剤用組成物。
〔2〕 微粒状鉱物質担体100重量部に対して、微粉状農薬組成物が0.1〜10重量部、熱溶融性結合剤0.1〜10重量部の含有割合である〔1〕記載の農薬微粒剤用組成物。
〔3〕 熱溶融性結合剤が、分子量1000〜20000のポリエチレングリコールである〔1〕又は〔2〕記載の農薬微粒剤用組成物。
〔4〕 微粒状鉱物質担体の粒径が、45〜150μmである〔1〕〜〔3〕いずれか一項記載の農薬微粒剤用組成物。
〔5〕 微粉状農薬組成物が、殺菌活性化合物、殺虫活性化合物及び微粉状固体担体を含有する組成物である〔1〕〜〔4〕いずれか一項記載の農薬微粒剤用組成物。
〔6〕 微粉状農薬組成物が、クロチアニジン及び微粉状固体担体を含有する組成物である〔1〕〜〔4〕いずれか一項記載の農薬微粒剤用組成物。
〔7〕 微粒状鉱物質担体が、硅砂である〔1〕〜〔6〕いずれか一項記載の農薬微粒剤用組成物。
〔8〕 〔1〕〜〔7〕いずれか一項記載の農薬微粒剤用組成物を、熱溶融性結合剤の凝固点より1〜10℃低いバレル温度で、連続式2軸押出混練機で造粒する工程を有してなる微粒状農薬製剤の製造方法。
〔9〕 〔1〕〜〔7〕いずれか一項記載の農薬微粒剤用組成物を、無溶媒条件下に熱溶融性結合剤の凝固点より1〜10℃低いバレル温度で、連続式2軸押出混練機で造粒する工程を有してなる微粒状農薬製剤の製造方法。
〔10〕 吸油能 1〜50ml/100gかつ粒径が45〜212μmである微粒状鉱物質担体に、凝固点が30〜100℃である熱溶融性結合剤と粒径が0.1〜20μmである微粉状農薬組成物とが保持されてなる微粒状農薬製剤。
〔11〕 微粒状鉱物質担体の粒径が、45〜150μmである〔10〕記載の微粒状農薬製剤。
〔12〕 粒径が63〜212μmである農薬微粒子の含有割合が、90〜100重量パーセントである〔11〕記載の微粒状農薬製剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明の農薬微粒剤用組成物を用いることにより、優れた微粒状農薬製剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の農薬微粒剤用組成物は、吸油能 1〜50ml/100gかつ粒径が45〜212μmである微粒状鉱物質担体、粒径が0.1〜20μmである微粉状農薬組成物、及び、凝固点が30〜100℃である熱溶融性結合剤を含有するものである。
【0009】
本発明において、微粒状鉱物質担体としては、日本工業規格(JIS)K−5101試験におけるアマニ油の吸油量が、担体100gあたり1〜50ml程度となる鉱物質担体が用いられる。かかる鉱物質担体としては、例えば、硅砂、炭酸カルシウムが挙げられる。本発明には、実質的に粒径が45〜212μm、好ましくは45〜150μmの鉱物質担体、詳しくは本発明に用いられる鉱物質担体全量の95重量%以上が前記した粒径を有する鉱物質担体が用いられる。
【0010】
本発明に用いられる微粉状農薬組成物は、微粉状の農薬有効成分を単独で用いることができ、また1種の微粉状の農薬有効成分と微粉状の固体担体及び/又は他の1種以上の微粉状の農薬有効成分との混合物を用いることもできる。さらに、1種の農薬有効成分と固体担体及び/又は他の1種以上の農薬有効成分との混合物を、ジェットミル等により粉砕して得られる粉砕混合物を用いることもできる。かかる微粉状農薬組成物としては、実質的にその粒径が通常0.1〜20μm、好ましくは0.1〜10μm程度で微粉状物質、詳しくは本発明に用いられる微粉状農薬組成物全量の95重量%以上が前記した粒径を有する微粉状物質であるものが用いられる。なお、かかる粒径とは、例えばMALVERN社製のMASTERSIZER(登録商標)2000等のレーザー回折式粒子径測定装置により測定される平均粒径が用いられる。かかる微粉状農薬組成物に含有される微粉状の固体担体としては、例えば、カオリン、ベントナイト、酸性白土、クレー、タルク等の鉱物質担体、ホワイトカーボン、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫安、塩化カリウム等の無機物質粉末、ラクトース(乳糖)、グルコース、ショ糖等の糖類、並びに尿素が挙げられる。
【0011】
本発明に用いられる微粉状農薬組成物に含有される農薬有効成分としては、具体的には例えば以下の農薬有効成分が挙げられる。
【0012】
ジメチルビンフォス、ベンタイオカルブ、NAC、MIPC、ベンスルタップ、ジフルベンズフロン、テフルベンズフロン、クロルフルアズロン、ブプロフェジン、フェノキシカルブ、ピリダベン、クロフェンテジン、ヘキシチアゾクス、フィプロニル、エチプロール、クロチアニジン、イミダクロプリド、チアクロプリド、カルタップ塩酸塩、ニテンピラム、ジノテフラン及びアセフェート等の25℃で固体の殺虫活性有効成分;
【0013】
チウラム、テクロフタラム、カルプロパミド、ジクロシメット、トリシクラゾール、フサライド、クレソキシムメチル、トリフロキシストロビン、メトミノストロビン、ベノミル、トリアジン、フェリムゾン、フルスルファミド、プロベナゾール、キャプタン、ジエトフェンカルブ、ジクロメジン、TPN、イプロジオン、トリアジメホン、ヘキサコナゾール、フラメトピル、フルトラニル、メプロニル、オキソリニック酸、ピリメタニル、メパニピリム及びバリダマイシンA等の25℃で固体の殺菌活性有効成分。
【0014】
本発明には結合剤として、20℃付近では固体であり、凝固点が30〜100℃である熱溶融性結合剤が用いられる。かかる凝固点が30〜100℃である熱溶融性結合剤としては、例えばポリエチレングリコール、パラフィンワックス、ポリエチレンポリプロピレンブロックポリマー、高級脂肪酸(例えば、ステアリン酸)が挙げられる。ポリエチレングリコールとして詳しくは、平均分子量が1000〜20000程度であるポリエチレングリコールが挙げられ、具体例としては、PEG−6000S(凝固点:62℃、平均分子量:8300、三洋化成工業株式会社製)等が挙げられる。
【0015】
本発明の農薬微粒剤用組成物には、吸油能 1〜50ml/100gかつ粒径が45〜212μmである微粒状鉱物質担体、粒径が0.1〜20μmである微粉状農薬組成物、及び、凝固点が30〜100℃である熱溶融性結合剤のほかに、本発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、さらに他の成分を含有することができる。かかる他の成分としては、界面活性化剤、安定化剤、防腐剤、着色料、香料等が挙げられる。
【0016】
本発明に任意に用いられる界面活性剤としては、通常の非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられ、これらの1種又は2種類以上が用いられる。
【0017】
かかる界面活性剤のうち、非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンアルキルフェノールホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシングリセリルモノ脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、高級脂肪酸グリセリンエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アルキロールアミド及びポリオキシエチレンアルキルアミンが挙げられ、
陽イオン性界面活性剤の具体例としては、ドデシルアミン塩酸塩等のアルキルアミン塩酸塩;アルキル四級アンモニウム塩、ドデシルトリメチルアンモニウム塩等のアルキルトリメチル四級アンモニウム塩;アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、アルキルピリミジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、ジアルキルモルホリニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ポリアルキルビニルピリジニウム塩が挙げられ、
陰イオン性界面活性剤の具体例としては、パルミチン酸ナトリウム等の脂肪酸ナトリウム;ポリオキシエチレンラウリルエーテルカルボン酸ナトリウム等のエーテルカルボン酸ナトリウム;ラウロイルサルコシンナトリウム、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウム等の高級脂肪酸のアミノ酸縮合物;高級アルキルスルホン酸塩;ラウリン酸エステルスルホン酸塩等の高級脂肪酸エステルスルホン酸塩;ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のジアルキルスルホサクシネート塩;オレイン酸アミドスルホン酸塩等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸塩;ジイソプロピルナフタレンスルホン酸塩;アルキルアリルスルホン酸塩ホルマリン縮合物;アルケニルスルホン酸塩;ペンタデカン−2−スルフェート塩等の高級アルコール硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンドデシルエーテル硫酸ナトリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩;ジポリオキシエチレンドデシルエーテルリン酸エステル塩等のポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩;スチレン−マレイン酸共重合体の塩;アルキルビニルエーテル−マレイン酸共重合体の塩が挙げられ、
両性界面活性剤の具体例としては、N−ラウリルアラニン、N、N、N−トリメチルアミノプロピオン酸、N、N、N−トリヒドロキシエチルアミノプロピオン酸、N−ヘキシル−N、N−ジメチルアミノ酢酸、1−(2−カルボキシエチル)ピリジニウムベタインが挙げられる。
【0018】
本発明に任意に用いられる安定化剤としては、例えば、エポキシ基を有する化合物又は抗酸化剤、リン酸、PAP(イソプロピルアシッドフォスフェート)助剤等が挙げられる。
【0019】
エポキシ基を有する化合物としては、例えばエポキシ化植物油が挙げられ、より具体的には例えば、エポキシ化アマニ油、エポキシ化キリ油、エポキシ化エノ油等のエポキシ化乾性油;エポキシ化大豆油、エポキシ化綿実油、エポキシ化ゴマ油、エポキシ化ナタネ油等のエポキシ化半乾性油;エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化オリーブ油、エポキシ化ツバキ油、エポキシ化ラッカセイ油、エポキシ化ヤシ油等のエポキシ化不乾性油が挙げられる。
【0020】
抗酸化剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、テトラキス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル〕メタン(Irganox 1010)、2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)メシチレン(Ionox 330)、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、クエン酸イソプロピルが挙げられる。
防腐剤としては、例えば、ブチルパラベン、ソルビン酸、ソルビン酸カリが挙げられる。
【0021】
増量剤としては、通常は粒径が0.1〜20μm程度のものが用いられるが、詳しくは例えば、滑石粉、ロウ石等のタルク類、珪藻土粉、雲母粉等のシリカ類及びクレー類などの鉱物性粉末、炭酸カルシウム、硫黄粉末、並びに、尿素粉末のほか、農薬製剤に用いられる通常の増量剤が挙げられ、これらの増量剤は単独で、または2種以上の混合物で用いることができる。
着色料としては、シアニングリーン、ブリリアントブルー、黄色1号等が挙げられる。
香料としては、d−リモネン等が挙げられる。
【0022】
本発明の微粒状農薬製剤は、吸油能 1〜50ml/100gかつ粒径が45〜212μmである微粒状鉱物質担体、粒径が0.1〜20μmである微粉状農薬組成物、及び、凝固点が30〜100℃である熱溶融性結合剤を含有する本発明の農薬微粒剤用組成物を連続式2軸押出混練機を用いて造粒することにより製造することができる。かかる連続式2軸押出混練機は、通常、バレルと呼ばれる筒、出口に相当するダイ、及び、種々のスクリューエレメントを搭載したスクリューから主に構成される。
【0023】
バレルは通常複数あり、その中をスクリューが貫通している。スクリューエレメントには、台形スクリューエレメント、台形カットスクリューエレメント、台形リバースカット、ボールスクリューエレメント、ニーディングパドル(ニーディングディスク)等のタイプがあり、その組合せは任意に行うことができる。バレル内に送られた本発明の農薬微粒剤用組成物は、スクリューによりバレル内に移動し、バレル内でニーディングパドル等のスクリューエレメントにより剪断、混合等の処理がなされ、ダイから押出される。通常、各バレル及びダイは独立して温度調節ができるようになっている。
【0024】
本発明においては、食品分野やプラスチック分野等で一般に使用されている原料の搬送機能、混合機能、剪断機能、圧縮機能、粉砕機能及び加熱機能等の基本性能を備えた連続式2軸押出混練機であれば、そのまま使用することができる。
【0025】
また、連続式2軸押出混練機には、非噛み合い異方向又は同方向回転混練押出機や完全又は一部噛み合い型異方向又は同方向回転混練押出機など種々のタイプのものが存在するが、本発明においては、完全噛み合い型同方向回転連続式2軸混練押出機が好ましく、具体的には例えば、KRCニーダ(株式会社栗本鐵工所製)が挙げられる。
【0026】
連続式2軸混練押出機での一括処理は、連続式2軸混練押出機の全バレル内で必ずしも行われなければならないものではなく、あるバレル内以降において一括処理されれば、十分に本発明の微粒状の農薬製剤を製造することができる。ここで一括処理とは、本発明の農薬微粒剤用組成物の各成分の全てを混合、混練して造粒する処理のことをいう。
【0027】
連続式2軸混練押出機で一括処理する方法としては、例えば次の(1)、(2)、(3)及び(4)の方法が挙げられる。
(1) 吸油能 1〜50ml/100gかつ粒径が45〜212μmである微粒状鉱物質担体、粒径が0.1〜20μmである微粉状農薬組成物、及び、凝固点が30〜100℃である熱溶融性結合剤を含有する本発明の農薬微粒剤用組成物の全ての原料を予め単純に混合し、これを連続式2軸混練押出機の主供給孔から供給して一括処理する方法
(2) 本発明の農薬微粒剤用組成物の各成分のうち、一部の複数成分を予め混合し、これを連続式2軸混練押出機の主供給孔から供給して残りの成分を補助供給孔から供給して一括処理する方法
(3) 本発明の農薬微粒剤用組成物の各成分のうち、いずれか単一成分を連続式2軸混練押出機の主供給孔から供給し、残りの成分を補助供給孔から供給して一括処理する方法
(4) 吸油能 1〜50ml/100gかつ粒径が45〜212μmである微粒状鉱物質担体と、凝固点が30〜100℃である熱溶融性結合剤とを連続式2軸混練押出機で混練して微粒状複合体を製造し、次いで、該微粒状複合体と粒径が0.1〜20μmである微粉状農薬組成物を含む残りの成分とを再度、連続式2軸混練押出機に予め混合して、或いは、それぞれ主供給孔及び補助供給孔から供給して一括処理する方法
ここで主供給孔とは、バレル内へ原料を供給する最も基本的な供給孔といい、補助供給孔とは、補助成分等を補助的にバレル内に供給することができる主供給孔以外の供給孔をいう。
【0028】
ここで、本発明の農薬微粒剤用組成物の全ての原料、若しくは、一部の複数成分の混合は、ニーダ−ミキサー、V型混合機、二重円錐型混合機、立方体型混合機、リボン型混合機などの機械や手動により行われる。
【0029】
バレル内への原料の供給は、手動により、又は使用する連続式2軸混練押出機に一般に装備されている原料供給機によって行うことができるが、一定速度での原料の供給し得る装置であれば特に制限なく行うことができる。かかる装置としては、例えば、スクリューフィーダー、テーブルフィーダー、スラリーフィーダー、圧送フィーダー、ベルトコンベア式定量供給機、電磁フィーダーなどを挙げることができる。
【0030】
続いて連続式2軸混練押出機の処理条件について説明する。
連続式2軸混練押出機のバレル温度は、通常は連続式2軸混練押出機に配設されているバレルの周囲を循環する循環装置の水温により制御されるものであり、用いられる熱溶融性結合剤の種類に応じて適宜設定することができる。通常は用いられる凝固点が30〜100℃である熱溶融性結合剤のうち、凝固点未満ないし凝固点より30℃低い温度、好ましくは熱溶融性結合剤の凝固点より1〜10℃低い温度に設定することができる。連続式2軸混練押出機が複数のバレルより構成される場合には、全てのバレルが前記のバレル温度と同一であってもよいが、本発明の農薬微粒剤用組成物が実質的に一括処理される1以上のバレルが前記のバレル温度であれば、残りのバレルは前記のバレル温度より低い温度であってもよい。
【0031】
スクリューの回転数(処理速度)は、連続式2軸混練押出機の機種や種類、原料、スクリューの形状等によって適宜設定することができ、使用する連続式2軸混練押出機の許容範囲内で設定することができる。バレルの全長が長い程、混合や剪断等の処理能力が高いため、バレルの全長が長い連続式2軸混練押出機ほど回転数を上げることができる。具体的には30rpm以上が適当であり、30〜300rpmが好ましい。
【0032】
使用しうるスクリューエレメントの形状及びその組合せは、特に制限なく選択することができるが、混練作用及び剪断作用の強いニーディングパドル(ニーディングディスク)を1つ以上使用することが好ましい。
【0033】
前記の操作により得られる本発明の微粒状農薬製剤は、粒径が63〜212μmである農薬微粒子の含有割合が高く、粉粒剤、特に微粒剤Fに適したものである。本発明の微粒状農薬製剤は必要に応じてさらに整粒、篩分け等の操作により、例えば粒径が63〜212μmである農薬微粒子の含有割合が90〜100重量パーセント等の所望の粒度分布を有する微粒状農薬製剤とすることもできる。
【0034】
また前記の操作は、実質的には無溶媒の条件下で行うことができるので、乾燥工程等を経ることなく本発明の微粒状農薬製剤を提供することができる。
【0035】
本発明に用いられる微粉状農薬組成物は、微粒状鉱物質担体100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の含有割合であり、熱溶融性結合剤は、微粒状鉱物質担体100重量部に対して、通常0.1〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部の含有割合である。
【0036】
本発明の農薬微粒剤用組成物における含有量は、微粒状鉱物質担体が通常50〜99重量%、好ましくは70〜95重量%であり、微粉状農薬組成物が0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜10重量%であり、熱溶融性結合剤が通常0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量パーセントである。
【0037】
本発明の微粒状農薬製剤は、含有する農薬有効成分や使用目的に応じて、例えば水田、乾田、育苗箱、畑地、果樹園、桑畑、温室、露地等の農耕地、森林、芝生、ゴルフ場、街路樹、道路、路肩、湿地などの非農耕地、池、貯水池、川、水路、下水道などの水系等で使用することができ、例えば、イネ、トウモロコシ、甜菜、綿、野菜(例えば、キャベツ、ハクサイ、ダイコン、キュウリ、ジャガイモ、ナス)、果樹(例えば、ミカン、ナシ、モモ)、茶及びタバコ等の対象作物において、病害虫が発生した時期に施用することにより該病害虫を防除することができる。また、対象作物に予め施用することにより、長期間にわたり病害虫の発生を防ぐこともできる。
本発明の微粒状農薬製剤の使用にあたっては、本発明の微粒状農薬製剤を単独で用いることができるが、適宜その用途により他の剤、例えば、農薬粒剤、粒状肥料、粒状培土、粒状植物栄養剤、粒状植物調整制御剤、粒状ホルモン剤、種子等の粒状農業資材等を混合して用いることもできる。
【0038】
本発明の微粒状農薬製剤は、微粒状農薬製剤が一般的に施用される方法によって施用することができ、例えば、手で直接散布する方法や、背負い式散粒機、パイプ散粒機、空中散粒機、動力散粒機、育苗箱用散粒機、トラクター搭載型散粒機、多口ホース散粒機、散粒機を搭載した田植機等による方法を挙げることができる。
本発明の微粒状農薬製剤が水田や畑地において使用される場合には、その施用量は1000m2あたり、通常0.1〜10kg、好ましくは0.25〜5kgである。
【0039】
本発明の微粒状農薬製剤の施用には、通常の農薬粉剤及び農薬粒剤と同様の形態が適用可能であり、例えば、茎葉散布、水面施用、育苗箱施用、田植時施用、育苗期施用、播種期施用、発芽時施用等が挙げられる。本発明の微粒状農薬製剤が育苗箱施用(イネが発芽し生育している育苗箱に農薬粒剤を散粒する方法をさす)される場合には、その施用量は育苗箱(通常、面積0.16m2程度)1枚あたり、通常5〜300g、好ましくは25〜100gであり、その際の施用方法としては、例えば手で直接施用する方法、及び育苗箱用散粒機を用いて施用する方法が挙げられる。
また、本発明の微粒状農薬製剤が播種期に施用される場合には、例えば苗床を作成する際に床土と覆土の間に種子と本発明の微粒状農薬製剤との層を形成するように本発明の微粒状農薬製剤が施用される。かかる苗床は通常育苗箱に作成されるものであり、その施用量は育苗箱(通常、面積0.16m2程度)1枚あたり、通常5〜300g、好ましくは25〜100gである。その際の施用方法としては、例えば手で直接施用する方法、ホッパー付き播種機により施用する方法が挙げられる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を製造例、試験例等の実施例により詳しく説明するが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0041】
まず本発明の微粒状農薬製剤の製剤例を示す。なお、部とは重量部を示す。
【0042】
製剤例1
ポリエチレングリコール(商品名:PEG−6000S、三洋化成工業株式会社製)1部及び硅砂(ネオライト興産株式会社製)25部をポリエチレン袋に入れて手作業で混合し、該混合物をKRCニーダ(型番S1、株式会社栗本鐵工所製)の供給孔より供給速度27.1〜36.9g/minで供給し、回転数200rpm、バレル温度55.1〜56.8℃の条件下で混練押出し、微粒状複合体を得た。次いで、この微粒状複合体95.56部、フェリムゾンのジェットミル粉砕物(平均粒子径5μm;以下、フェリムゾン粉砕物と記す。)2.14部、フサライドのジェットミル粉砕物(平均粒子径4μm;以下、フサライド粉砕物と記す。)1.56部、及び、クロチアニジンと粒剤用クレー(商品名:勝光山クレーS、勝光山鉱業所株式会社製)との重量比7:3の混合物のターボミル乾式粉砕物(平均粒子径15μm、以下、クロチアニジン/クレー粉砕混合物と記す。)0.74部をポリエチレン袋に入れて手作業で混合し、該混合物をKRCニーダ(型番S1、株式会社栗本鐵工所製)の供給孔より供給速度30.5〜37.4g/minで供給し、回転数50rpm、製造温度56.9〜57.2℃の条件下で混練押出し、本発明の微粒状農薬製剤(以下、本発明農薬製剤(1)と記す。)を得た。
【0043】
製剤例2
フェリムゾン粉砕物2.14部、フサライド粉砕物1.56部、クロチアニジン/クレー粉砕混合物0.74部、ポリエチレングリコール(商品名:PEG−6000S、三洋化成工業株式会社製)3.68部、硅砂(ネオライト興産株式会社製)91.88部をポリエチレン袋を用いて手作業で混合し、該混合物をKRCニーダ(型番S1、株式会社栗本鐵工所製)の供給孔より供給速度30.5〜34.4g/minで供給し、回転数50rpm、バレル温度57.0〜57.2℃の条件下で混練押出し、本発明の微粒状農薬製剤(以下、本発明農薬製剤(2)と記す。)を得た。
【0044】
製剤例3
ポリエチレングリコール(商品名:PEG−6000S、三洋化成工業株式会社製)1部及び炭酸カルシウム(商品名:寒水#65150−K、日東粉化工業株式会社製)25部をポリエチレン袋に入れて手作業で混合し、該混合物をKRCニーダ(型番S1、株式会社栗本鐵工所製)の供給孔より供給速度32.5〜33.8g/minで供給し、回転数200rpm、バレル温度56.4〜57.3℃の条件下で混練押出し、微粒状複合体を得た。次いで、この微粒状複合体95.56部、フェリムゾン粉砕物2.14部、フサライド粉砕物1.56部、及び、クロチアニジン/クレー粉砕混合物0.74部をポリエチレン袋に入れて手作業で混合し、該混合物をKRCニーダ(型番S1、株式会社栗本鐵工所製)の供給孔より供給速度31.6〜33.0g/minで供給し、回転数50rpm、バレル温度56.9〜57.8℃の条件下で混練押出し、本発明の微粒状農薬製剤(以下、本発明農薬製剤(3)と記す。)を得た。
【0045】
製剤例4
ポリエチレングリコール(商品名:PEG−6000S、三洋化成工業株式会社製)1部及び硅砂(ネオライト興産株式会社製)25部をポリエチレン袋に入れて手作業で混合し、該混合物をKRCニーダ(型番S2、株式会社栗本鐵工所製)の供給孔より供給速度172〜266g/minで供給し、回転数100rpm、バレル温度57℃の条件下で混練押出し、微粒状複合体を得た。次いで、この微粒状複合体95.46部、フェリムゾン粉砕物2.14部、フサライド粉砕物1.56部、クロチアニジン/クレー粉砕混合物0.74部、及び、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(商品名:ニューカルゲンEX−70、竹本油脂株式会社製)0.1部をポリエチレン袋に入れて手作業で混合し、該混合物をKRCニーダ(型番S2、株式会社栗本鐵工所製)の供給孔より供給速度113〜263g/minで供給し、回転数100rpm、バレル温度58℃の条件下で混練押出し、本発明の微粒状農薬製剤(以下、本発明農薬製剤(4)と記す。)を得た。
【0046】
製剤例1乃至4に用いた硅砂及び炭酸カルシウムの粒度分布(単位:重量パーセント)及び吸油能は、〔表1〕の通りである。
【0047】
【表1】

【0048】
次に試験例を示す。
【0049】
試験例1
本発明農薬製剤(2)乃至(4)の各々を、目開き212μm及び63μmの篩で篩別した。目開き212μmの篩を通過しかつ63μmの篩を不通過であった供試微粒状農薬製剤10gを各々農薬有効成分含量を測定した後、供試微粒状農薬製剤10gを内蔵されているフィルター(直径 40mm)が水平になるように設置されたグラスフィルター(11G−2)のフィルター上に平らになるように載置し、グラスフィルターの下部より風量30リットル/分で2分間通気した。その後、グラスフィルター内の供試微粒状農薬製剤を回収して農薬有効成分含量を測定し、下式(A)により剥離率を求めた。


1:供試前の農薬有効成分含量(重量%)
2:供試後の農薬有効成分含量(重量%)

その結果を、〔表2〕に示す。
【0050】
【表2】

【0051】
試験例2
本発明農薬製剤(1)乃至(4)の各々を、目開き212μm及び63μmの篩で篩別した。供試農薬製剤のうち、目開き212μmの篩を通過しない微粒状農薬微粒子の含有割合(重量比)を測定し、造粒時の農薬微粒子の製造効率を下記の通り6段階評価した。

製造効率評価 評価基準
(目開き212μmの篩を不通過の農薬微粒子の含有割合)
+++ : 10重量%未満
++ : 10〜20重量%
+ : 20〜40重量%
− : 40〜60重量%
−− : 60〜80重量%
−−− : 80重量%超

その結果を〔表3〕に示す。
【0052】
【表3】

【0053】
試験例1の結果から明らかな通り、本発明の微粒状農薬組成物は、製造後の各農薬有効成分の剥離率が10パーセント未満に抑制された良好な性状を有するものであることが確認できる。また試験例2の結果から、特に吸油能 1〜50ml/100gかつ粒径が45〜150μmである微粒状鉱物質担体を用いた場合に、微粒剤に適した粒度分布、具体的には63μm〜212μmの粒径の農薬微粒子を多く含む微粒状農薬組成物を容易に提供できることが確認できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸油能 1〜50ml/100gかつ粒径が45〜212μmである微粒状鉱物質担体、粒径が0.1〜20μmである微粉状農薬組成物、及び、凝固点が30〜100℃である熱溶融性結合剤を含有する農薬微粒剤用組成物。
【請求項2】
微粒状鉱物質担体100重量部に対して、微粉状農薬組成物が0.1〜10重量部、熱溶融性結合剤0.1〜10重量部の含有割合である請求項1記載の農薬微粒剤用組成物。
【請求項3】
熱溶融性結合剤が、分子量1000〜20000のポリエチレングリコールである請求項1又は2記載の農薬微粒剤用組成物。
【請求項4】
微粒状鉱物質担体の粒径が、45〜150μmである請求項1〜3いずれか一項記載の農薬微粒剤用組成物。
【請求項5】
微粉状農薬組成物が、殺菌活性化合物、殺虫活性化合物及び微粉状固体担体を含有する組成物である請求項1〜4いずれか一項記載の農薬微粒剤用組成物。
【請求項6】
微粉状農薬組成物が、クロチアニジン及び微粉状固体担体を含有する組成物である請求項1〜4いずれか一項記載の農薬微粒剤用組成物。
【請求項7】
微粒状鉱物質担体が、硅砂である請求項1〜6いずれか一項記載の農薬微粒剤用組成物。
【請求項8】
請求項1〜7いずれか一項記載の農薬微粒剤用組成物を、熱溶融性結合剤の凝固点より1〜10℃低いバレル温度で、連続式2軸押出混練機で造粒する工程を有してなる微粒状農薬製剤の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜7いずれか一項記載の農薬微粒剤用組成物を、無溶媒条件下に熱溶融性結合剤の凝固点より1〜10℃低いバレル温度で、連続式2軸押出混練機で造粒する工程を有してなる微粒状農薬製剤の製造方法。
【請求項10】
吸油能 1〜50ml/100gかつ粒径が45〜212μmである微粒状鉱物質担体に、凝固点が30〜100℃である熱溶融性結合剤と粒径が0.1〜20μmである微粉状農薬組成物とが保持されてなる微粒状農薬製剤。
【請求項11】
微粒状鉱物質担体の粒径が、45〜150μmである請求項10記載の微粒状農薬製剤。
【請求項12】
粒径が63〜212μmである農薬微粒子の含有割合が、90〜100重量パーセントである請求項11記載の微粒状農薬製剤。

【公開番号】特開2009−184994(P2009−184994A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−28694(P2008−28694)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】