説明

農薬粒剤組成物

【課題】優れた農薬粒剤組成物を提供すること
【解決手段】式(1)


〔式中、Aはハロゲン原子、C1−C3アルキル基及びC1−C3ハロアルキル基からなる群より選ばれる1種以上の基で置換されていてもよい5員複素環基を表し、Rはハロゲン原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−C3アルキル基又はハロゲン原子で置換されていてもよいC1−C3アルコキシ基を表し、nは1〜3の整数を表す。ただし、nが2又は3である場合、Rは互いに同一又は相異なる。〕で示される化合物、炭酸カルシウム、pHが3〜8である固体担体、水溶性結合剤及び非イオン性界面活性剤を含有する農薬粒剤組成物は優れた性能を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農薬粒剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
式(1)

〔式中、Aはハロゲン原子、C1−C3アルキル基及びC1−C3ハロアルキル基からなる群より選ばれる1種以上の基で置換されていてもよい5員複素環基を表し、Rはハロゲン原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−C3アルキル基又はハロゲン原子で置換されていてもよいC1−C3アルコキシ基を表し、nは1〜3の整数を表す。ただし、nが2又は3である場合、Rは互いに同一又は相異なる。〕
で示されるアニリド化合物が農薬活性成分として知られている(例えば、特許文献1参照。)。
また、水稲育苗箱における農薬製剤の施用により、水田移植後の生育時以降まで水稲の病害を防除する、省力化された水稲の栽培方法も提案されている。しかしながら、かかる栽培方法に用いられる農薬製剤には、防除効果を低減させることなく、一方では、発芽の抑制や薬害の発生等の症状を回避する性能が求められるため、従来の農薬製剤では必ずしも十分満足できるものではなかった。
【0003】
【特許文献1】特表2001−522840
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、優れた性能を有する農薬粒剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、優れた性能を有する農薬粒剤組成物を見出すべく検討の結果、式(1)

〔式中、Aはハロゲン原子、C1−C3アルキル基及びC1−C3ハロアルキル基からなる群より選ばれる1種以上の基で置換されていてもよい5員複素環基を表し、Rはハロゲン原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−C3アルキル基又はハロゲン原子で置換されていてもよいC1−C3アルコキシ基を表し、nは1〜3の整数を表す。ただし、nが2又は3である場合、Rは互いに同一又は相異なる。〕で示されるアニリド化合物、炭酸カルシウム、pHが3〜8である固体担体、水溶性結合剤、及び、非イオン性界面活性剤を含有する農薬粒剤組成物が優れた効果を有することを見出し、本発明に至った。
【0006】

すなわち、本発明は以下の〔1〕〜〔10〕の通りである。
〔1〕 式(1)

〔式中、Aはハロゲン原子、C1−C3アルキル基及びC1−C3ハロアルキル基からなる群より選ばれる1種以上の基で置換されていてもよい5員複素環基を表し、Rはハロゲン原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−C3アルキル基又はハロゲン原子で置換されていてもよいC1−C3アルコキシ基を表し、nは1〜3の整数を表す。ただし、nが2又は3である場合、Rは互いに同一又は相異なる。〕
で示されるアニリド化合物、炭酸カルシウム、pHが3〜8である固体担体、水溶性結合剤、及び、非イオン性界面活性剤を含有する農薬粒剤組成物。
〔2〕 農薬粒剤組成物全量に対して、アニリド化合物が0.1〜5重量パーセント、炭酸カルシウム及びpHが3〜8である固体担体が合計量で80〜99.3重量パーセント、水溶性結合剤が0.5〜10重量パーセント、非イオン性界面活性剤が0.1〜5重量パーセントの含有割合である〔1〕記載の農薬粒剤組成物。
〔3〕 炭酸カルシウム1重量部に対して、pHが3〜8である固体担体が0.3〜30重量部の含有割合である〔2〕記載の農薬粒剤組成物。
〔4〕 アニリド化合物が、2’−シアノ−3,4−ジクロロイソチアゾール−5−カルボキシアニリド、3’−クロロ−4,4’−ジメチル−1,2,3−チアジアゾール−5−カルボシアニリド及び2’,6’−ジブロモ−2−メチル−4’−トリフルオロメトキシ−4−トリフルオロメチル−1,3−チアゾール−5−カルボキシアニリドからなる群より選ばれる少なくとも1種である〔1〕〜〔3〕いずれか一項記載の農薬粒剤組成物。
〔5〕 アニリド化合物が、2’−シアノ−3,4−ジクロロイソチアゾール−5−カルボキシアニリドである〔1〕〜〔3〕いずれか一項記載の農薬粒剤組成物。
〔6〕 pHが3〜8である固体担体が、ロウ石、酸性白土、含水珪酸マグネシウム及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも1種である〔1〕〜〔5〕いずれか一項記載の農薬粒剤組成物。
〔7〕 水溶性結合剤が、ポリビニルアルコール及びアルファー化デンプンからなる群より選ばれる少なくとも1種である〔1〕〜〔6〕いずれか一項記載の農薬粒剤組成物。
〔8〕 非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル又はポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体である〔1〕〜〔7〕いずれか一項記載の農薬粒剤組成物。
〔9〕 炭酸カルシウムが、重質炭酸カルシウムである〔1〕〜〔8〕いずれか一項記載の農薬粒剤組成物。
〔10〕 水稲育苗箱用である〔1〕〜〔9〕いずれか一項記載の農薬粒剤組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の農薬粒剤組成物を水稲育苗箱に処理することにより、水稲の苗を植物病害から保護し、かつ薬害を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の農薬粒剤組成物は、式(1)

〔式中、Aはハロゲン原子、C1−C3アルキル基及びC1−C3ハロアルキル基からなる群より選ばれる1種以上の基で置換されていてもよい5員複素環基を表し、Rはハロゲン原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−C3アルキル基又はハロゲン原子で置換されていてもよいC1−C3アルコキシ基を表し、nは1〜3の整数を表す。ただし、nが2又は3である場合、Rは互いに同一又は相異なる。〕で示されるアニリド化合物(以下、本化合物と記す。)、炭酸カルシウム、pHが3〜8である固体担体、水溶性結合剤、及び、非イオン性界面活性剤を含有する農薬粒剤組成物である。
【0009】
本化合物は、特表2001−522840、ザ ペスティサイド マニュアル第12版(The Pesticide Manual(12th Edition))等に記載される化合物であり、例えば特表2001−522840に記載の方法に準じて製造するか、市販品より入手できる。
【0010】
式(1)において、Aとしては、好適には、いずれもC1−C4アルキル基(例えば、メチル基)及びハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子)からなる群より選ばれる少なくとも1種の基で置換されていてもよい、イソチアゾリル基、チアゾリル基及び1,2,3−チアジアゾリル基が挙げられ、より好適には、3,4−ジクロロイソチアゾリル基、2−メチル−4−トリフルオロメチル−1,3−チアゾリル基及び4−メチル−1,2,3−チアジアゾリル基が挙げられる。
式(1)において、

で示される基としては、好適には、2−シアノフェニル基、3−クロロ−4−メチルフェニル基及び2,6−ジブロモ−トリフルオロメトキシフェニル基が挙げられる。
【0011】
本化合物の具体例としては、例えば、2’−シアノ−3,4−ジクロロイソチアゾール−5−カルボキシアニリド、3’−クロロ−4,4’−ジメチル−1,2,3−チアジアゾール−5−カルボシアニリド及び2’,6’−ジブロモ−2−メチル−4’−トリフルオロメトキシ−4−トリフルオロメチル−1,3−チアゾール−5−カルボキシアニリドが挙げられる。
【0012】
本発明の農薬粒剤組成物には、本化合物が通常0.1〜5重量パーセント、好ましくは0.5〜3重量パーセント程度含有される。
【0013】
本発明の農薬粒剤組成物には、本化合物以外に殺虫化合物、殺菌化合物等の農薬活性化合物を含有することができる。本発明の農薬粒剤組成物が本化合物以外の農薬活性化合物を含有する場合、その含有量は本発明の効果を損なわない限り特に限定されるものではないが、通常0.01〜5重量パーセント、好ましくは0.5〜3重量パーセント程度である。
【0014】
かかる本化合物以外の農薬活性化合物としては、例えば以下のものが挙げられる。
殺虫化合物としては、デルタメトリン、トラロメトリン、アクリナトリン、テトラメトリン等のピレスロイド系化合物;プロポキサー、イソプロカルブ、キシリルカルブ、メトルカルブ、XMC、カルバリル、ピリミカルブ、カルボフラン、メソミル、フェノキシカルブ等のカーバメート系化合物;アセフェート、トリクロルホン、テトラクロルビンホス、ジメチルビンホス、ピリダフェンチオン、アジンホスエチル、アジンホスメチル等の有機リン系化合物;ジフルベンズロン、クロルフルアズロン、ルフェヌロン、ヘキサフルムロン、フルフェノクスロン、フルシクロクスロン、シロマジン、ジアフェンチウロン、ヘキシチアゾクス、ノヴァルロン、テフルベンズロン、トリフルムロン、4−クロロ−2−(2−クロロ−2−メチルプロピル)−5−(6−ヨード−3−ピリジルメトキシ)ピリダジン−3(2H)−オン、1−(2,6−ジフルオロベンゾイル)−3−[2−フルオロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル]ウレア、1−(2,6−ジフルオロベンゾイル)−3−[2−フルオロ−4−(1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロポキシ)フェニル]ウレア、2−tert−ブチルイミノ−3−イソプロピル−5−フェニル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2H−1,3,5−チアジアゾン−4−オン、1−(2,6−ジフルオロベンゾイル)−3−[2−フルオロ−4−(1,1,2,2−テトラフルオロエトキシ)フェニル]ウレア等のウレア系化合物;イミダクロプリド、アセタミプリド、クロチアニジン、ニテンピラム、ジアクロデン等のクロロニコチル系化合物;カルタップ、ブプロフェジン、チオシクラム、ベンスルタップ、フェノキシカルブ、フェナザキン、フェンピロキシメート、ピリダベン、ヒドラメチルノン、チオジカルブ、クロルフェナピル、フェンプロキシメート、ピメトロジン、ピリミジフェン、テブフェノジド、テブフェンピラド、トリアザメート、インドキサカーブ、スルフルラミド、ミルベメクチン、アベルメクチン、ホウ酸、パラジクロロベンゼン等が挙げられる。
【0015】
殺菌化合物としては、ベノミル、カルベンダジム、チアベンダゾール、チオファネートメチル等のベンズイミダゾール系化合物;ジエトフェンカルブ等のフェニルカーバメート系化合物;プロシミドン、イプロジオン、ビンクロゾリン等のジカルボキシイミド系化合物;ジニコナゾール、プロペナゾール、エポキシコナゾール、テブコナゾール、ジフェノコナゾール、シプロコナゾール、フルシラゾール、トリアジメフォン等のアゾール系化合物;メタラキシル等のアシルアラニン系化合物;フラメトピル、メプロニル、フルトラニル、ボスカリド等のカルボキシアミド系化合物;トルクロホスメチル、フォセチルアルミニウム、ピラゾホス等の有機リン系化合物;ピリメサニル、メパニピリム、シプロジニル等のアニリノピリミジン系化合物;フルジオキソニル、フェンピクロニル等のシアノピロール系化合物;ブラストサイジンS、カスガマイシン、ポリオキシン、バリダマイシン等の抗生物質;アゾキシストロビン、クレソキシムメチル、メトミノストロビン等のメトキシアクリレート系化合物;クロロタロニル、マンゼブ、キャプタン、フォルペット、トリシクラゾール、ピロキロン、プロベナゾール、フサライド、シモキサニル、ジメトモルフ、アシベンゾラル−S−メチル、ファモキサドン、オキソリニック酸、フルアジナム、フェリムゾン、ジクロシメット、クロベンチアゾン、イソバレジオン、テトラクロオロイソフタロニトリル、チオフタルイミドオキシビスフェノキシアルシン、3−アイオド−2−プロピルブチルカーバメイト、パラヒドロキシ安息香酸エステル、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸カリウム等が挙げられる。
【0016】
本発明の農薬粒剤組成物に含有される炭酸カルシウムとしては、重質炭酸カルシウム及び軽質炭酸カルシウムのいずれかを単独で、又はこれらを混合して用いることができるが、好ましくは重質炭酸カルシウムが用いられる。
【0017】
本発明の農薬粒剤組成物に含有されるpHが3〜8の固体担体における、pHとは下記のpH測定方法により求められる値である。
<pH測定方法(20%水懸濁液)>
1.蒸留水を硬質三角フラスコにとり、10分間煮沸後に炭酸ガスを遮って約20℃に冷却する。
2.冷却後の蒸留水80mlを100mlの共栓フラスコにとり、ここに速やかに試料(固体担体)20gを加え、密栓をして1分間振り混ぜた後に5分間静置する。
3.静置後の20%水懸濁液をろ過することなく、その中にガラス電極を入れて水素イオン濃度を測定する。
4.測定された水素イオン濃度の値(〔H+〕)から、下式(a)によりpHを求める。

pH=−log10〔H+〕 (a)
【0018】
かかるpHが3〜8である固体担体としては、例えば、カオリナイト、ディッカナイト、ナクライト、ハロサイト等のカオリン鉱物、クリソタイル、リザータイト、アンチコライト、アメサイト等の蛇紋石、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、ハイデライト等のスメクタイト、パイロフィライト、タルク、ロウ石、白雲母、フェンジャイト、セリサイト、イライト等の雲母、クリストバライト、クォーツ等のシリカ、アタパルジャイト、セピオライト等の含水珪酸マグネシウム、石膏等の硫酸塩鉱物、ドロマイト、ギプサム、ゼオライト、沸石、凝灰石、バーミキュライト、ラポナイト、軽石、珪藻土、酸性白土、活性白土等の鉱物質担体;トウモロコシ穂軸粉、クルミ殻粉、籾殻、小麦粉、木粉、糠、ふすま、大豆粉等の植物系担体;尿素、乳糖、ショ糖、食塩、芒硝等の水溶性固体担体、好ましくはロウ石、酸性白土、含水珪酸マグネシウム及びシリカが挙げられ、これらの1種を単独で、又は、2種以上を混合して用いることができる。
【0019】
本発明の農薬粒剤組成物には、炭酸カルシウムとpHが3〜8である固体担体とが合計で80〜99.3重量パーセント程度含有され、炭酸カルシウム1重量部に対して、pHが3〜8である固体担体が0.3〜30重量部、好ましくは0.3〜20重量部の割合で含有される。
【0020】
本発明の農薬粒剤組成物には、pHが3〜8である固体担体が通常20〜96.1重量パーセント程度含有され、炭酸カルシウムが通常5〜60重量パーセント程度含有される。
【0021】
本発明の農薬粒剤組成物に含有される水溶性結合剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、トラガントガム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、アルファー化デンプン、デキストリン、アルギン酸及びアルギン酸ナトリウム、好ましくはポリビニルアルコール、アルファー化デンプン及びアルギン酸ナトリウムが挙げられる。
本発明の農薬粒剤組成物には、かかる水溶性結合剤が0.5〜10重量パーセント、好ましくは1〜8重量パーセント程度含有される。
【0022】
本発明の農薬粒剤組成物に含有される非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリルモノ脂肪酸エステル、ポリオキシプロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、高級脂肪酸グリセリンエステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アルキロールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン等、好ましくはポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル又はポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体が挙げられる。
本発明の農薬粒剤組成物には、かかる非イオン性界面活性剤が0.1〜5重量パーセント、好ましくは0.5〜3重量パーセント程度含有される。
【0023】
本発明の農薬粒剤組成物は、実質的に粒径が300〜2000マイクロメートルの粒状物(すなわち、目開きが300マイクロメートルの篩を通過せず、かつ目開きが2000マイクロメートルの篩を通過する粒状物)、好ましくは500〜1500マイクロメートルの粒状物である。
【0024】
本発明の農薬粒剤組成物は、本化合物、炭酸カルシウム、pHが3〜8である固体担体、水溶性結合剤、非イオン性界面活性剤、並びに、必要に応じて用いられる本化合物以外の農薬活性化合物等を含有する混合物に、水を加えて混練し、得られた混練物を造粒し、得られた造粒物を乾燥し、必要により解砕、篩分、整粒等を行い製造することができる。混練の際に用いられる水の量は、前記混合物100重量部に対して、通常3〜50重量部の割合である。本発明の農薬粒剤組成物は、特に押出造粒機を用いた押出造粒する際の造粒性が良好であり、所望の効果を示す農薬粒剤組成物を簡便に製造することができる。
【0025】
本発明の農薬粒剤組成物に含有される本化合物の安定性の点から、本発明の農薬粒剤組成物中の水分含有量は、通常0.1〜3重量パーセント程度である。かかる水分含有量は、例えば、本発明の農薬粒剤組成物を秤量した後、50〜70℃程度の恒温器内にその重量減少が無くなるまで保存し、保存前の重量と保存後の重量との差分を水分含有量とみなして、これを保存前の本発明の農薬粒剤組成物の重量で除することにより求められる。
【0026】
混練物を押出造粒する際は、通常0.5〜2.0mmφ、好ましくは0.7〜1.5mmφのスクリーンを用いて行われる。押出造粒された後の造粒物は、通常30〜90℃、好ましくは30〜80℃で乾燥される。乾燥された後の本発明の農薬粒剤組成物の粒長は、通常0.5〜6.0mm、好ましくは0.7〜4.0mmである。なお、本発明における粒長とは、粒が取り得る最大長さを意味する。
【0027】
本発明の農薬粒剤組成物を製造する際に用いられる練合機としては、ニーダー、ナウターミキサー、レディゲミキサー等が挙げられる。押出造粒機としては、スクリュー型押出造粒機、ロール型押出造粒機、ディスクペレッター型押出造粒機、ペレットミル型押出造粒機、バスケット型押出造粒機、プレード型押出造粒機、オシレーティング型押出造粒機、ギア式押出造粒機、リングダイス式押出造粒機等が挙げられ、具体的には不二パウダル(株)のツインドームグラン、シングルドームグラン等を用いることができる。
【0028】
本発明の農薬粒剤組成物は、イネの育苗箱への播種時や発芽後から水田への移植前のイネの育苗時に育苗箱に施用される。その施用量は、本化合物の含有量や水稲育苗箱の大きさなどにより変動し得るものであるが、例えば30cm×60cmの大きさの水稲育苗箱1枚あたり、本化合物として0.05〜2.5g程度である。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を製造例、試験例等の実施例により一層詳細に説明するが、本発明はこれらの例のみに限定されるものではない。
【0030】
まず、本発明の農薬粒剤組成物の製造例を示す。
【0031】
製造例1
2’−シアノ−3,4−ジクロロイソチアゾ−ルー5−カルボキシアニリド(以下、イソチアニルと記す。)2.0重量部、アルファー化デンプン(アミロックスNo.1A、日本コーンスターチ製)5.0重量部、重質炭酸カルシウム(SS#80、日東粉化工業製)10.0重量部及びロウ石(勝光山クレーS、勝光山鉱業所製)82.0重量部の混合物に、非イオン系界面活性剤(ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、Sorpol T-20、東邦化学工業製)1.0重量部を含有する水を加えて、混練した。得られた混練物の約1.5kgを0.9mmφのスクリーン付きバスケット型押出造粒機(HU−G型畑式造粒機、畑製作所製)に投入し、まず10秒間だけ該造粒機を運転した。10秒間で得られた造粒物を取り除いた後、該造粒機の運転を再開し、30秒間で得られた造粒物を取得し、該造粒物を70℃で30分間乾燥して、本発明の農薬粒剤組成物(以下、本発明組成物1と記す。)を得た。
15gの本発明組成物1を赤外線水分測定装置(株式会社ケット科学研究所製、型式FD−600)にセットし、60℃で10分間測定することにより本発明組成物1の水分含有量(0.82重量パーセント)を求めた。
【0032】
製造例2〜4
製造例1記載の方法に準じて、下記〔表1〕の含有量(重量部)で各成分を用いて本発明組成物2、3及び4を製造した。また、本発明組成物1と同様に水分含有量を求めた。
【0033】
【表1】


*1:アミロックスNo.1A、日本コーンスターチ製
*2:重質炭酸カルシウム(SS#80、日東粉化工業製)
*3:ロウ石(勝光山クレーS、勝光山鉱業所製)
*4:ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル(Sorpol T-20、東邦化学工業製)
【0034】
参考例1〜3
製造例1記載の方法に準じて、下記〔表2〕の含有量(重量部)で各成分を用いて比較用の農薬粒剤組成物(以下、各々を比較組成物1、2及び3と記す。)を製造した。
【0035】
【表2】


*1:アミロックスNo.1A、日本コーンスターチ製
*2:重質炭酸カルシウム(SS#80、日東粉化工業製)
*3:ロウ石(勝光山クレーS、勝光山鉱業所製)
*4:ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル(Sorpol T-20、東邦化学工業製)
*5:ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(Runox 100、東邦化学工業製)
【0036】
次に本発明の農薬粒剤組成物が有する効果を試験例に示す。
【0037】
試験例1 水稲の播種時覆土前処理によるイネに対する薬害試験
水稲育苗箱(30cm×60cm)の播種前覆土前に供試粒剤組成物を100g/育苗箱の割合で処理し、湿籾(品種:ヒノヒカリ)を160g播種した。育苗器(終日30℃)で3日間発芽させた後、屋外に移動させて育苗を行った。播種1週間後に下記の薬害調査基準に従い、薬害発現状況を目視により調査した(2連制)。
≪薬害調査基準≫
− :薬害症状なし
± :薬害の兆候が認められるが実用上問題なし
+ :薬害が認められ、実用上問題あり
++:激しい薬害が認められ、実用性なし

各々の粒剤組成物における調査結果を〔表3〕に示す。
【0038】
【表3】

【0039】
試験例2 水稲の播種時覆土前処理によるいもち病防除効果試験
水稲育苗箱(30cm×60cm)の播種前覆土前に供試粒剤組成物を50g/育苗箱の割合で処理し、湿籾(品種:ヒノヒカリ)を160g播種した。育苗器(終日30℃)で3日間発芽させた後、屋外に移動させ21日間の育苗を行った後、4条植えの乗用田植機にて圃場の所定区画内(約40m2)に移植した。移植29日後にいもち病罹病苗を隣接接種し発病を促した。接種13日後に各区100株(50株×2連制)に下記の基準で発病指数を与え、以下の計算式にて発病度(*6)および防除価(*7)を算出した(調査対象葉:未展開葉を除く上位3葉)。
≪発病指数≫
0:発病なし
1:1株当たり病斑数が1〜10個
2:1株当たり病斑数が11〜20個
4:1株当たり病斑数が21〜50個
6:1株当たり病斑数が51個を超える
8:ズリ込み
9:枯死

*6)発病度={Σ(全調査株×発病指数)/(全調査株数×9)}×100
*7)防除価={(無処理区の発病度−処理区の発病度)/無処理区の発病度}×100

各々の粒剤組成物における調査結果を〔表4〕に示す。
【0040】
【表4】

【0041】
試験例3 安定性試験
供試粒剤組成物 50gをアルミ内装クラフト袋に入れ、54℃の恒温器で2週間保存する。保存後、供試粒剤組成物を取り出し、8mlの内部標準溶液と供試粒剤組成物1gとを42mlのアセトンに懸濁し、該懸濁液を超音波条件に付して抽出した後、高速液体クロマトグラフィーに付し、内部標準法により本化合物含有量を求める。
その結果、本発明組成物1における本化合物含有量は、保存前が2.01%であるのに対し、保存後が2.00%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)

〔式中、Aはハロゲン原子、C1−C3アルキル基及びC1−C3ハロアルキル基からなる群より選ばれる1種以上の基で置換されていてもよい5員複素環基を表し、Rはハロゲン原子、シアノ基、ハロゲン原子で置換されていてもよいC1−C3アルキル基又はハロゲン原子で置換されていてもよいC1−C3アルコキシ基を表し、nは1〜3の整数を表す。ただし、nが2又は3である場合、Rは互いに同一又は相異なる。〕
で示されるアニリド化合物、炭酸カルシウム、pHが3〜8である固体担体、水溶性結合剤、及び、非イオン性界面活性剤を含有する農薬粒剤組成物。
【請求項2】
農薬粒剤組成物全量に対して、アニリド化合物が0.1〜5重量パーセント、炭酸カルシウム及びpHが3〜8である固体担体が合計量で80〜99.3重量パーセント、水溶性結合剤が0.5〜10重量パーセント、非イオン性界面活性剤が0.1〜5重量パーセントの含有割合である請求項1記載の農薬粒剤組成物。
【請求項3】
炭酸カルシウム1重量部に対して、pHが3〜8である固体担体が0.3〜30重量部の含有割合である請求項2記載の農薬粒剤組成物。
【請求項4】
アニリド化合物が、2’−シアノ−3,4−ジクロロイソチアゾール−5−カルボキシアニリド、3’−クロロ−4,4’−ジメチル−1,2,3−チアジアゾール−5−カルボシアニリド及び2’,6’−ジブロモ−2−メチル−4’−トリフルオロメトキシ−4−トリフルオロメチル−1,3−チアゾール−5−カルボキシアニリドからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3いずれか一項記載の農薬粒剤組成物。
【請求項5】
アニリド化合物が、2’−シアノ−3,4−ジクロロイソチアゾール−5−カルボキシアニリドである請求項1〜3いずれか一項記載の農薬粒剤組成物。
【請求項6】
pHが3〜8である固体担体が、ロウ石、酸性白土、含水珪酸マグネシウム及びシリカからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜5いずれか一項記載の農薬粒剤組成物。
【請求項7】
水溶性結合剤が、ポリビニルアルコール及びアルファー化デンプンからなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1〜6いずれか一項記載の農薬粒剤組成物。
【請求項8】
非イオン性界面活性剤が、ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル又はポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体である請求項1〜7いずれか一項記載の農薬粒剤組成物。
【請求項9】
炭酸カルシウムが、重質炭酸カルシウムである請求項1〜8いずれか一項記載の農薬粒剤組成物。
【請求項10】
水稲育苗箱用である請求項1〜9いずれか一項記載の農薬粒剤組成物。

【公開番号】特開2009−19034(P2009−19034A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−150246(P2008−150246)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】