説明

近接センサ

【課題】 ノイズ光を拾いにくくすることができる近接センサを提供すること。
【解決手段】 近接センサA1は、発光体2と、発光体2と第1方向(x方向)に並んで位置し、発光体2を出射して外部の物体で反射した光を受ける受光体3と、受光体3を覆う第1透光部材4と、第1透光部材4を覆い、第1透光部材4の表面の一部を光入射面41として露出させる第1開口部61を有する遮光部材6と、を備える。光入射面41は、第1開口部61の内周壁610の外側端縁611より深さ方向奥側に設けられている。第1開口部61の内周壁610は、深さ方向奥側になるほど開口中心側へと近づく傾斜状の面からなる。内周壁610は、x方向において発光体2から遠くなるほど深さ方向に対する傾斜角が大きくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近接した物体を光学的に検知するための近接センサに関する。
【背景技術】
【0002】
図16は、従来の近接センサの一例を示している(たとえば特許文献1参照)。同図に示す近接センサXは、基板91、発光体92、受光体93、第1透光部材94、第2透光部材95、および遮光部材96を備えている。基板91には、発光体92および受光体93がx方向に並んで搭載されている。発光体92は、赤外光を発する。受光体93は、発光体92を出射して外部の物体で反射した赤外光を受ける。受光体93は、受光量に応じた電気信号を出力する。第1透光部材94は、基板91上において受光体93を覆っている。第1透光部材94は、表面の一部に凸面状の光入射面940を有する。第2透光部材95は、基板91上において発光体92を覆っている。第2透光部材95は、表面の一部に凸面状の光出射面950を有する。遮光部材96は、基板91上において第1透光部材94および第2透光部材95を遮断するとともに、これらを一体に覆っている。遮光部材96は、第1開口部961および第2開口部962を有する。第1開口部961は、光入射面940をx方向に直交するz方向に向けて露出させている。第2開口部962は、第1開口部961と同一方向に向けて光出射面950を露出させている。光入射面940および光出射面950の最頂部は、第1開口部961および第2開口部962の深さ方向(z方向)においてこれらの外縁と同じ高さ位置に設定されている。
【0003】
近接センサXは、たとえばタッチパネル方式の携帯電話端末に組み込まれる。近接センサXは、携帯電話端末における液晶表示部Dの近傍に配置され、この液晶表示部Dとともにアクリル製などの透光カバーCによって覆われる。発光体92から出射した赤外光Lは、光出射面950を通って透光カバーCの方へと進む。さらに赤外光Lは、透光カバーCを透過し、その外側に位置する物体Mに当たって反射する。物体Mで反射した赤外光Lは、再び透光カバーCを透過する。最終的に赤外光Lは、光入射面940を通って受光体93に受光される。受光体93は、受光量に応じた電気信号を図外の制御部に出力する。制御部は、受光体93の出力レベルがあらかじめ設定されたしきい値を超えると、液晶表示部Dに近接する物体Mがあると認識する。すなわち、携帯電話端末では、たとえば通話を行うために液晶表示部D付近に頬を近づけると、近接センサXにより頬が検知される。これにより、通話時には、液晶表示部Dを用いたタッチパネル操作が無効とされ、通話中の誤動作が防止される。通話時にはまた、液晶表示部Dが消灯状態とされ、バッテリの電力消費が抑えられる。
【0004】
しかしながら、図16に示すように、近接センサXは、透光カバーCとの間にある程度間隔を設けて配置される。そのため、光出射面950を出る赤外光には、透光カバーCに対して比較的入射角が大きくなる光も存在する。このような赤外光は、透光カバーCの内側の表面で反射し、ノイズ光L’となる。光入射面940に入射したノイズ光L’は、受光体93によって受光されうる。したがって、従来の近接センサXは、近接する物体が無いにもかかわらず誤検知してしまうおそれがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−34189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、誤検知を招きにくくすることができる近接センサを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明により提供される近接センサは、発光体と、上記発光体と第1方向に並んで位置し、上記発光体を出射して外部の物体で反射した光を受ける受光体と、上記受光体を覆う第1透光部材と、上記第1透光部材を覆い、当該第1透光部材の表面の一部を光入射面として露出させる第1開口部を有する遮光部材と、を備えた近接センサであって、上記光入射面は、上記第1開口部の内周壁の外側端縁より深さ方向奥側に設けられていることを特徴としている。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1開口部の内周壁は、深さ方向奥側になるほど開口中心側へと近づく傾斜状の面からなる。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1開口部の内周壁は、上記第1方向において上記発光体から遠くなるほど深さ方向に対する傾斜角が大きくなっている。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1開口部の内周壁は、上記第1方向において上記発光体に最も遠い部分の深さ方向に対する傾斜角が15°以上である。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1透光部材は、上記第1開口部内に配置される第1凸部を有し、上記光入射面は、上記第1凸部の端面である。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1凸部の端面は、平面状に形成されている。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1凸部は、上記第1開口部の内周壁との間に隙間を設けて配置される。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記発光体および受光体を上記第1方向に並べて搭載する基板と、上記発光体を覆う第2透光部材と、を備え、上記遮光部材は、上記基板上において上記第1透光部材および第2透光部材を遮断するとともにこれらを一体に覆い、上記第2透光部材の表面の一部を光出射面として露出させる第2開口部を上記第1開口部と同一側に有している。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記光出射面は、上記第2開口部の内周壁の外側端縁より深さ方向奥側に設けられている。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第2開口部の内周壁は、深さ方向奥側になるほど開口中心側へと近づく傾斜状の面からなる。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記遮光部材は、上記第1開口部と上記第2開口部との間に光散乱領域を有する。
【0018】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第1開口部および第2開口部の深さ方向は、上記第1方向と直交しており、上記光散乱領域には、上記第1開口部および第2開口部の深さ方向および第1方向の双方と直交する第2方向に延びる複数の溝が形成されている。
【0019】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記複数の溝は、上記第1方向に対して傾斜した複数の斜面を有する。
【0020】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記斜面は、上記第1方向に対する傾斜角が50°〜70°に設定されている。
【0021】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第2透光部材は、上記第2開口部内に配置される第2凸部を有し、上記光出射面は、上記第2凸部に含まれる。
【0022】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記光出射面は、凸面状に形成されている。
【0023】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第2凸部は、上記第1方向の両端側に、上記光出射面に連続した一対の平坦な切り欠き面を有する。
【0024】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記第2開口部の内周壁は、上記受光体から遠い側の上記切り欠き面を上記第1方向に向けて露出させる一方、上記受光体に近い側の上記切り欠き面に対して対向した部分を有する。
【0025】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記受光体に近い側の上記切り欠き面は、上記第2開口部の内周壁との間に隙間を設けて配置される。
【0026】
本発明の好ましい実施の形態においては、上記発光体は、赤外光を発するLEDである。
【0027】
このような構成の近接センサでは、たとえば光入射面に対向して透光カバーが配置される。発光体から出射された光は、透光カバーの方へと進む。このとき、光の一部は、透光カバーの内側の表面で反射してノイズ光となる。ノイズ光は、第1開口部の方へと進むが、第1開口部の深さ方向に対して斜めに進行する。これにより、ノイズ光は、第1開口部の深さ方向奥側に位置する光入射面に対して入射し難い。したがって、本発明に係る近接センサによれば、ノイズ光を拾いにくく、誤検知を招きにくい。
【0028】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の第1実施形態に係る近接センサの斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図1のIII−III線に沿う断面図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図1に示す近接センサの平面図である。
【図6】図5のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】図5のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】図1に示す近接センサに備えられた受光体の平面図である。
【図9】図8に示す受光体の光検出部を模式的に示す等価回路図である。
【図10】近接センサの一製造工程を説明するための断面図である。
【図11】近接センサの作用を説明するための断面図である。
【図12】近接センサの作用を説明するための断面図である。
【図13】近接センサの要部における光ノイズの低減効果を説明するための図表である。
【図14】近接センサの要部における光ノイズの低減効果を説明するための図表である。
【図15】本発明の第2実施形態に係る近接センサの断面図である。
【図16】従来の近接センサの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0031】
図1〜12は、本発明の第1実施形態に係る近接センサを示している。図2によく示すように、近接センサA1は、基板1、発光体2、受光体3、第1透光部材4、第2透光部材5、および遮光部材6を備えている。
【0032】
図2〜4に示すように、基板1は、搭載面10と、これとは反対側の背面11とを有する。搭載面10および背面11は、x方向を長辺とし、y方向を短辺とした矩形状の面をなす。搭載面10および背面11には、配線パターン(図示略)が形成されている。図2に示すように、搭載面10には、発光体2および受光体3がx方向に並んで搭載されている。
【0033】
発光体2は、赤外光を発するLEDチップからなる。発光体2は、搭載面10上の配線パターンにボンディングワイヤ(図示略)を介して接続されている。発光体2は、たとえば0.35mm角の方形状からなる。発光体2は、搭載面10とは反対側に向けてある程度放射状に赤外光を発する。
【0034】
受光体3は、可視光および赤外光を受光可能な光半導体チップからなる。受光体3は、搭載面10上の配線パターンにボンディングワイヤ(図示略)を介して接続されている。受光体3は、たとえば1.6×1.8mm角の方形状である。
【0035】
図8に示すように、受光体3は、半導体基板30、可視光検出部31、赤外光検出部32、機能素子部33、および積層光学膜34を有する。なお、同図において、積層光学膜34については、便宜上ハッチングにより示している。
【0036】
半導体基板30には、可視光検出部31、赤外光検出部32、および機能素子部33が半導体素子として造り込まれている。可視光検出部31および赤外光検出部32は、半導体基板30の中央部に位置する。機能素子部33は、可視光検出部31および赤外光検出部32の周囲に位置する。半導体基板30上には、半導体素子に導通する配線層が多層形成されている(図示略)。半導体基板30上の配線層のうち、赤外光検出部32および機能素子部33と対応する部分は、積層光学膜34により覆われている。配線層において可視光検出部31と対応する部分は、積層光学膜34に覆われることなく露出している。
【0037】
可視光検出部31は、複数のフォトダイオードPDA1,PDA2,PDA3,PDB1,PDB2,PDB3を有する。フォトダイオードPDA1,PDA2,PDA3は、半導体基板30内の所定の深さ位置にpn接合領域を設けることにより形成されている。これより、フォトダイオードPDA1,PDA2,PDA3は、可視光および赤外光を受光し、その受光量に応じた光電流を光電変換により出力する。フォトダイオードPDA1,PDA2,PDA3は、面積が比較的大きく形成されている。一方、フォトダイオードPDB1,PDB2,PDB3は、半導体基板30内において先のフォトダイオードPDA1,PDA2,PDA3より深い位置にpn接合領域を設けて形成されている。すなわち、フォトダイオードPDB1,PDB2,PDB3は、分光感度特性のピークが長波長側にシフトされている。これにより、フォトダイオードPDB1,PDB2,PDB3は、赤外光のみを受光し、その受光量に応じた光電流を光電変換により出力する。フォトダイオードPDB1,PDB2,PDB3は、面積が比較的小さく形成されている。
【0038】
図9(A)に示すように、一対のフォトダイオードPDA1,PDB1は、第1受光ユニット311を構成している。一対のフォトダイオードPDA2,PDB2は、第2受光ユニット312を構成している。一対のフォトダイオードPDA3,PDB3は、第3受光ユニット313を構成している。第1受光ユニット311のフォトダイオードPDA1,PDB1は、電源電位Vccと接地電位との間に直列に接続されている。第2受光ユニット312のフォトダイオードPDA2,PDB2、および第3受光ユニット313のフォトダイオードPDA3,PDB3も、電源電位Vccと接地電位との間に直列に接続されている。第1ないし第3受光ユニット311〜313において対をなすフォトダイオードPDA1,PDB1:PDA2,PDB2:PDA3,PDB3の組は、それぞれ異なる面積比に設定されている。
【0039】
第1受光ユニット311においては、フォトダイオードPDA1,PDB1間から電流I1が出力される。この電流I1は、フォトダイオードPDA1の可視光成分および赤外光成分を含む光電流からフォトダイオードPDB1の赤外光成分を含む光電流を差し引いたものとなる。すなわち、第1受光ユニット311は、フォトダイオードPDA1,PDB1の面積比に応じた受光量の差分に対応する電流I1を出力する。同様に、第2受光ユニット312では、フォトダイオードPDA2,PDB2間からそれらの面積比に応じた受光量の差分に対応する電流I2が出力される。第3受光ユニット313では、フォトダイオードPDA3,PDB3間からそれらの面積比に応じた受光量の差分に対応する電流I3が出力される。
【0040】
赤外光検出部32は、フォトダイオードPDCを有する。フォトダイオードPDCは、半導体基板30内において前述したフォトダイオードPDB1,PDB2,PDB3と同程度の深さ位置にpn接合領域を設けることにより形成されている。これより、フォトダイオードPDCは、赤外光のみを受光し、その受光量に応じた光電流を光電変換により出力する。フォトダイオードPDCは、可視光検出部31のフォトダイオードPDA1などと比べて面積が相当大きく形成されている。図9(B)に示すように、フォトダイオードPDCは、電源電位Vccに接続され、赤外光の受光量に応じた光電流Icを出力する。
【0041】
機能素子部33には、アナログ回路およびデジタル回路が造り込まれている。機能素子部33は、第1受光ユニット311、第2受光ユニット312、および第3受光ユニット313、ならびにフォトダイオードPDCから電流I1〜I3,Icを取り込む。機能素子部33は、フォトダイオードPDCからの光電流Icに基づき、赤外光の受光量をデジタル値として算出する。赤外光の受光量があらかじめ設定されたしきい値を超えると、機能素子部33は、近接する物体があることを示す近接信号を外部に出力する。機能素子部33は、第1受光ユニット311、第2受光ユニット312、および第3受光ユニット313からの電流I1〜I3に基づき、可視光の受光量をデジタル値として算出する。機能素子部33は、可視光の受光量に応じた照度を示す照度信号を外部に出力する。
【0042】
積層光学膜34は、赤外光に対応する長波長域に対してのみ透光性を有する樹脂からなる。赤外光検出部32および機能素子部33は、積層光学膜34により覆われているため、可視光を受けることなく赤外光のみを受ける。一方、可視光検出部31は、積層光学膜34により覆われていないため、可視光を確実に受ける。
【0043】
図2に示すように、第1透光部材4は、搭載面10上において受光体3を覆っている。第1透光部材4は、可視光から赤外光までの波長域に対して透光性を有する透明な樹脂からなる。第1透光部材4は、z方向を向く表面において、受光体3の可視光検出部31および赤外光検出部32と対向する部分に第1凸部40を有する。第1凸部40は、円柱状を呈しており、たとえば外径が1mmである。第1凸部40は、z方向を向く端面として光入射面41を有する。光入射面41は、平面状に形成されている。
【0044】
図2に示すように、第2透光部材5は、搭載面10上において発光体2を覆っている。第2透光部材5は、第1透光部材4と同一材料からなる。第2透光部材5は、第1透光部材4とともに、一次モールド樹脂成型工程を経て形成される。第2透光部材5は、z方向を向く表面において、発光体2と対向する部分に第2凸部50を有する。第2凸部50は、光出射面51と、一対の切り欠き面52A,52Bとを有する。光出射面51は、z方向に膨出した凸面状のレンズ面をなす。図5に示すように、光出射面51のy方向両側には、平面視円弧状の最外縁が形成される。最外縁間となる光出射面51の最大径は、たとえば0.44mmである。一対の切り欠き面52A,52Bは、x方向の両端側において、光出射面51に連続した平坦な面をなす。切り欠き面52A,52Bは、概ねx方向を向いている。切り欠き面52Aは、受光体3に対して近い側に位置する。切り欠き面52Bは、受光体3に対して遠い側に位置する。
【0045】
図2に示すように、遮光部材6は、第1透光部材4および第2透光部材5ならびに搭載面10全体を覆っている。搭載面10上においてz方向に沿う遮光部材6の厚み寸法は、たとえば1mmである。遮光部材6は、第1透光部材4および第2透光部材5をx方向に遮断している。遮光部材6は、可視光および赤外光を通さない非透光性を有する樹脂からなる。遮光部材6は、一次モールド樹脂成型工程の後、二次モールド樹脂成型工程を経て形成される。図1に示すように、遮光部材6は、全体的に方形状に形成される。図1および図5に示すように、遮光部材6は、第1面6A、一対の第2面6B,6C、および一対の第3面6D,6Eを有する。第1面6Aは、全体的にz方向を向いた面をなす。第1面6Aは、たとえばx方向に沿う長辺が5mm、y方向に沿う短辺が2.5mmである。第2面6B,6Cは、概ねx方向を向いた面をなす。第2面6Bは、発光体2に対して近い側に位置する。第2面6Cは、受光体3に対して近い側に位置する。第3面6D,6Eは、概ねy方向を向いた面をなす。
【0046】
図1および図2によく示すように、第1面6Aには、第1開口部61と第2開口部62とが設けられている。第1開口部61および第2開口部62は、互いにx方向に並んでおり、z方向を深さ方向とする。第1開口部61および第2開口部62の深さ寸法は、たとえば0.42mmである。第1開口部61は、内部に第1凸部40が配置され、光入射面41をz方向に向けて露出させる。第2開口部62は、内部に第2凸部50が配置され、光出射面51をz方向に向けて露出させる。図5に示すように、第1開口部61は、平面視円形状の内周壁610を有する。第1開口部61の内径は、たとえば1.3mmである。同図に示す平面視において、第2開口部62は、光出射面51の最外縁および切り欠き面52Aに沿った形状の内周壁620を有する。第2開口部62のy方向に沿う最大内径は、たとえば0.59mmである。図2および図3に示すように、第1凸部40は、内周壁610との間に隙間を設けて配置される。光入射面41は、内周壁610の外側端縁611より深さ方向奥側に位置する。図2および図4に示すように、第2凸部50は、内周壁620との間に隙間を設けて配置される。光出射面51の最頂部は、内周壁620の外側端縁621より深さ方向奥側に位置する。
【0047】
図6および図7に示すように、内周壁610は、深さ方向奥側になるほど開口中心側へと近づく傾斜状の面からなる。内周壁610の深さ方向に対する傾斜角は、x方向において発光体2から遠ざかるほど大きくなっている。たとえば、内周壁610には、発光体2に対して最も近い第1部分610Aと、中間に位置する第2部分610Bと、最も遠い第3部分610Cとがある。第1部分610Aの傾斜角はほとんど無い。第1部分610Aと第2部分610Bとの間の部分は、第1部分610Aから第2部分610Bへと進むにつれて傾斜角が次第に大きくなる。第2部分610Bの傾斜角α1は、たとえば7.5°である。さらに第2部分610Bと第3部分610Cとの間の部分は、第2部分610Bから第3部分610Cへと進むにつれて傾斜角が次第に大きくなる。第3部分610Cの傾斜角α2は、最大傾斜角としてたとえば15°に設定されている。なお、最大傾斜角は、第1開口部の深さ寸法や内径などに応じて15°以上に設定してもよい。
【0048】
図2および図4に示すように、内周壁620は、深さ方向奥側になるほど開口中心側へと近づく傾斜状の面からなる。内周壁620の深さ方向に対する傾斜角は、全周にわたり概ね一様な角度に設定されている。図1および図5に示すように、内周壁620は、一対の第1部分620Aと、第2部分620Bとを有する。第1部分620Aは、平面視円弧状を呈し、光出射面51の最外縁に沿っている。第2部分620Bは、平面状を呈し、切り欠き面52Aに対向している。内周壁620は、x方向において受光体3から遠い側に壁面を形成せずに開放されている。これにより、内周壁620は、x方向に向けて切り欠き面52Bを露出させている。図1および図2に示すように、第2面6Bは、第2開口部62に続く開放部6bを有し、この開放部6bにおいて第2透光部材5の一部を露出させている。
【0049】
図1および図2に示すように、第1面6A全体には、y方向に延びる多数の溝63が形成されている。特に第1開口部61と第2開口部62との間には、複数の溝63によって光散乱領域LSが形成される。図6によく示すように、複数の溝63は、x方向に対して傾斜した複数の斜面630を有する。斜面630のx方向に対する傾斜角βは、50°〜70°に設定されている。なお、図5においては、溝63を省略している。本実施形態では、第1面6A全体に複数の溝63を形成しているが、第1開口部61と第2開口部62との間にのみ溝63を形成するようにしてもよい。
【0050】
図10に示すように、製造時において、遮光部材6を二次モールド樹脂成型工程により形成する際には、第1開口部61や第2開口部62の形状に応じた筒状部分70を有する金型7が用いられる。同図には、第1開口部61に対応する筒状部分70を示している。金型7の筒状部分70は、第1凸部40の周囲や第2凸部50の周囲に配置され、樹脂硬化後に取り除かれる。その結果、第1凸部40に接することなく第1開口部61の内周壁610が形成される。これにより、光入射面41には、遮光部材6を構成する樹脂の付着が防止される。同様に、第2凸部50に接することなく第2開口部62の内周壁620が形成され、光出射面51には、遮光部材6を構成する樹脂の付着が防止される。
【0051】
次に、近接センサA1の光学的な作用について説明する。
【0052】
図11および図12に示すように、近接センサA1は、たとえば液晶タッチパネル方式の液晶表示部Dを備えた携帯電話端末に組み込まれる。近接センサA1は、液晶表示部Dの近傍に配置され、液晶表示部Dとともにアクリル製などの透光カバーCによって覆われる。近接センサA1は、透光カバーCとの間に間隔dを設けて配置される。間隔dは、たとえば0.25〜1mm程度である。本実施形態の近接センサA1は、受光体3の可視光検出部31によって照度を検出するほか、発光体2の赤外光Lを用いて液晶表示部Dに近接する物体を検知する。
【0053】
発光体2から出射した赤外光Lは、光出射面51を通って透光カバーCの方へと進む。さらに赤外光Lは、透光カバーCを透過し、その外側に位置する物体Mに当たって反射する。物体Mで反射した赤外光Lの一部は、再び透光カバーCを透過する。最終的に赤外光Lの一部は、光入射面41を通って受光体3の赤外光検出部32に受光される。透光カバーCの外側に物体が無い場合、外側に向けて透光カバーCを透過した光は、そのまま進むことによって赤外光検出部32に受光されない。
【0054】
赤外光検出部32は、赤外光Lの受光量に応じた光電流Icを機能素子部34に出力する。機能素子部34は、光電流Icがあらかじめ設定されたしきい値を超えると、液晶表示部Dに近接する物体Mがあると認識し、近接信号を外部に出力する。
【0055】
一方、光出射面51を出た赤外光Lには、透光カバーCに対して比較的入射角が大きくなる光も存在する。このような赤外光Lは、透光カバーCの内側の表面で反射し、ノイズ光L’となる。ノイズ光L’の一部は、光散乱領域LSや第1開口部61の方へと向かう。
【0056】
このとき、第2開口部62においては、光出射面51が内周壁620の外側端縁621より深さ方向奥側に位置する。そのため、光出射面51から透光カバーCに対してより大きい入射角となる方向に進む光は、内周壁620により効果的に遮られる。これにより、透光カバーCの内側の表面で第1開口部61の方に向けて反射するノイズ光L’が低減される。
【0057】
また、第2開口部62においては、切り欠き面52Bからも赤外光Lが出射する。この赤外光Lは、内周壁620に当たることなくx方向において第1開口部61の反対側へとそのまま進む。これによっても、第1開口部61の方に向けて進むノイズ光L’が低減される。
【0058】
光散乱領域LSにおいては、ノイズ光L’の一部が溝63の斜面630で反射する。これにより、ノイズ光L’は、x方向において第2開口部62の方へと進みやすくなる。したがって、光散乱領域LSによれば、第1開口部61の方に向けて進むノイズ光L’が低減される。
【0059】
図13は、シミュレーションにより、近接センサA1と透光カバーCとの間隔dに対し、斜面630の傾斜角に応じて受光体3により受光される光ノイズL’の受光量を相対値で表した図表である。同図においては、第1面を平坦な面とした場合における受光体の出力レベルを光ノイズの基準値として「1」としている。同図によれば、斜面630の傾斜角を50°、60°、70°とした場合、間隔dが0.25〜1mmの範囲で変化しても、受光体3により受光される光ノイズL’が効果的に低減されるのが理解される。
【0060】
第1開口部61においては、光入射面41が内周壁610の外側端縁611より深さ方向奥側に位置する。そのため、光入射面41に入射しようとするノイズ光L’の一部を内周壁610の外側端縁611により遮ることができる。これにより、光入射面41を通って受光体3に達するノイズ光L’が低減される。
【0061】
図12に示すように、第1開口部61においては、その内部にノイズ光L’の一部が進入する。第1開口部61内に進入したノイズ光L’の一部は、内周壁610の第3部分610Cに当たって反射する。第3部分610Cは、深さ方向奥側になるほど光入射面41の方に近づき、深さ方向(z方向)に対して比較的大きく傾斜している。そのため、ノイズ光L’の一部は、光入射面41から逸れて第1部分610Aの方へと進む。したがって、光入射面41に入射するノイズ光L’を減少させることができる。
【0062】
図14は、シミュレーションにより、内周壁610の第3部分610Cの傾斜角α2に対し、受光体3により受光される光ノイズL’の受光量を相対値で表した図表である。同図においては、内周壁を全周にわたって傾斜角0°とした場合における受光体の出力レベルを光ノイズの基準値として「100%」としている。同図によれば、傾斜角α2が15°以上であれば、光ノイズL’が概ね下限レベルまで低減されることが理解される。
【0063】
したがって、第1実施形態に係る近接センサA1によれば、透光カバーCで覆われた状態において、ノイズ光L’を拾いにくくすることができる。これにより、携帯電話端末に組み込まれた近接センサA1では、液晶表示部D付近に近接する物体が何も無い場合、ノイズ光L’によってあたかもあるように振る舞う誤検知を少なくすることができる。
【0064】
図15は、本発明の第2実施形態に係る近接センサを示している。同図に示す近接センサA2では、第1面6A全体に断面矩形状の多数の溝63が形成されている。なお、近接センサA2は、その他の点において先述した第1実施形態による近接センサA1と同様である。光散乱領域LSにおいては、断面矩形状の複数の溝63によってもノイズ光L’が効果的に散乱される。これにより、第1開口部61の方に向けて進むノイズ光L’を低減することができる。
【0065】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る近接センサの具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0066】
A1,A2 近接センサ
LS 光散乱領域
1 基板
2 発光体
3 受光体
4 第1透光部材
40 第1凸部
41 光入射面
5 第2透光部材
50 第2凸部
51 光出射面
52A,52B 切り欠き面
6 遮光部材
61 第1開口部
610 内周壁
611 外側端縁
62 第2開口部
620 内周壁
621 外側端縁
63 溝
630 斜面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光体と、
上記発光体と第1方向に並んで位置し、上記発光体を出射して外部の物体で反射した光を受ける受光体と、
上記受光体を覆う第1透光部材と、
上記第1透光部材を覆い、当該第1透光部材の表面の一部を光入射面として露出させる第1開口部を有する遮光部材と、
を備えた近接センサであって、
上記光入射面は、上記第1開口部の内周壁の外側端縁より深さ方向奥側に設けられていることを特徴とする、近接センサ。
【請求項2】
上記第1開口部の内周壁は、深さ方向奥側になるほど開口中心側へと近づく傾斜状の面からなる、請求項1に記載の近接センサ。
【請求項3】
上記第1開口部の内周壁は、上記第1方向において上記発光体から遠くなるほど深さ方向に対する傾斜角が大きくなっている、請求項2に記載の近接センサ。
【請求項4】
上記第1開口部の内周壁は、上記第1方向において上記発光体に最も遠い部分の深さ方向に対する傾斜角が15°以上である、請求項3に記載の近接センサ。
【請求項5】
上記第1透光部材は、上記第1開口部内に配置される第1凸部を有し、上記光入射面は、上記第1凸部の端面である、請求項1ないし4のいずれかに記載の近接センサ。
【請求項6】
上記第1凸部の端面は、平面状に形成されている、請求項5に記載の近接センサ。
【請求項7】
上記第1凸部は、上記第1開口部の内周壁との間に隙間を設けて配置される、請求項5または6に記載の近接センサ。
【請求項8】
上記発光体および受光体を上記第1方向に並べて搭載する基板と、
上記発光体を覆う第2透光部材と、を備え、
上記遮光部材は、上記基板上において上記第1透光部材および第2透光部材を遮断するとともにこれらを一体に覆い、上記第2透光部材の表面の一部を光出射面として露出させる第2開口部を上記第1開口部と同一側に有している、請求項1ないし7のいずれかに記載の近接センサ。
【請求項9】
上記光出射面は、上記第2開口部の内周壁の外側端縁より深さ方向奥側に設けられている、請求項8に記載の近接センサ。
【請求項10】
上記第2開口部の内周壁は、深さ方向奥側になるほど開口中心側へと近づく傾斜状の面からなる、請求項8または9に記載の近接センサ。
【請求項11】
上記遮光部材は、上記第1開口部と上記第2開口部との間に光散乱領域を有する、請求項8ないし10のいずれかに記載の近接センサ。
【請求項12】
上記第1開口部および第2開口部の深さ方向は、上記第1方向と直交しており、上記光散乱領域には、上記第1開口部および第2開口部の深さ方向および第1方向の双方と直交する第2方向に延びる複数の溝が形成されている、請求項11に記載の近接センサ。
【請求項13】
上記複数の溝は、上記第1方向に対して傾斜した複数の斜面を有する、請求項12に記載の近接センサ。
【請求項14】
上記斜面は、上記第1方向に対する傾斜角が50°〜70°に設定されている、請求項13に記載の近接センサ。
【請求項15】
上記第2透光部材は、上記第2開口部内に配置される第2凸部を有し、上記光出射面は、上記第2凸部に含まれる、請求項8ないし14のいずれかに記載の近接センサ。
【請求項16】
上記光出射面は、凸面状に形成されている、請求項15に記載の近接センサ。
【請求項17】
上記第2凸部は、上記第1方向の両端側に、上記光出射面に連続した一対の平坦な切り欠き面を有する、請求項16に記載の近接センサ。
【請求項18】
上記第2開口部の内周壁は、上記受光体から遠い側の上記切り欠き面を上記第1方向に向けて露出させる一方、上記受光体に近い側の上記切り欠き面に対して対向した部分を有する、請求項17に記載の近接センサ。
【請求項19】
上記受光体に近い側の上記切り欠き面は、上記第2開口部の内周壁との間に隙間を設けて配置される、請求項18に記載の近接センサ。
【請求項20】
上記発光体は、赤外光を発するLEDである、請求項1ないし19のいずれかに記載の近接センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−150022(P2012−150022A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9366(P2011−9366)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】