近赤外線吸収フィルター
【課題】他の近赤外線吸収色素と混合しても吸収極大がシフトしない近赤外線吸収フィルターを提供する。
【解決手段】下記一般式(1)
(一般式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立に1価の基である。X1およびX6は炭素原子、酸素原子、窒素原子およびケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する1価の基である。)で表される化合物を少なくとも一種類以上含有する。
【解決手段】下記一般式(1)
(一般式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立に1価の基である。X1およびX6は炭素原子、酸素原子、窒素原子およびケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する1価の基である。)で表される化合物を少なくとも一種類以上含有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は近赤外線吸収フィルター、特に可視光線領域の透過率が高く、近赤外線を有効に遮断する近赤外線吸収フィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、近赤外線吸収色素を含有した樹脂からなるプラスチック性近赤外線吸収フィルターはよく知られており、その用途としては、サングラス、溶接用眼鏡、ビルや自動車、電車、飛行機の窓、あるいは情報読み取りのための光学読み取り装置等が挙げられる。
また、最近では、大型薄型の壁掛けテレビとして注目されているプラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」という)が、近赤外線を発生して、コードレスホン、近赤外線リモコンを使うビデオデッキ等、周辺にある電子機器に作用し誤動作を起こすことから、PDP用フィルターとしても800nm〜1100nmの近赤外線を吸収する赤外線吸収色素を含有したフィルターの要求がある。
【0003】
上述のような近赤外線吸収フィルターとしては、銅や鉄などの金属イオンを含有させたもの、ニトロソ化合物及びその金属錯塩、シアニン系化合物、スクアリリウム系化合物、ジチオール系金属錯体化合物、アミノチオフェノール系金属錯体化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、トリアリルメタン系化合物、インモニウム系化合物、ジインモニウム系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、アミノ化合物、アミニウム塩系化合物等の近赤外線吸収色素を含有させたものなど各種検討がなされているが、実際に用いられているものは、限定されたジチオール系金属錯体化合物、フタロシアニン化合物及びジインモニウム系化合物の一部にすぎない。
【0004】
特に、電子ディスプレイ用に用いるためには、耐熱性、耐光性に優れていること、溶媒に対する溶解性が高いこと、800〜1000nm付近に吸収極大をもちつつ、可視光領域に大きな吸収がないことが必須となる。特許文献1には、下記構造を持つ化合物が、近赤外色素としてPDPフィルターに用いられている。
【特許文献1】特開2003−262719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のジチオール金属錯体は、他のニッケル金属錯体系近赤外色素と混合して、800−1000nmの吸収をカットしようとすると、配位子交換がおこり別の化合物が生成し、吸収極大がシフトすることが明らかとなった。すなわち、近赤外線吸収フィルターを設計する際に、所定の吸収特性を有する2種以上の近赤外線吸収色素を混合すると、極大吸収が変化してしまい、目的とする近赤外線吸収フィルターが得られないという問題がある。
【0006】
以上のことから、本発明においては、目的とする800−1000nm付近に吸収極大を有し、かつ、他の近赤外線吸収色素、特に、ニッケル金属錯体系近赤外色素と混合しても、配位子交換が起こらず吸収極大がシフトしない化合物群を設計、合成し、耐光性、耐熱性等に優れ、かつ、溶媒に対する溶解性を向上させた近赤外線吸収フィルター、特には電子ディスプレイ用近赤外線吸収フィルターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、一般式(1)で示されるジチオレート金属錯体中のアリール基のオルト位に立体的に嵩高い官能基を導入し、硫黄原子への分子間置換反応を阻止することで、配位子交換を抑えることができるジチオレート金属錯体群を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は下記一般式(1)
【0008】
【化1】
【0009】
(一般式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立に1価の基である。
X1およびX6は炭素原子、酸素原子、窒素原子およびケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する1価の基である。
X2〜X5及びX7〜X10はそれぞれ独立に1価の基であって、隣り合う基が連結基を介
して結合してもよい。M1は金属原子を示す。)で表される化合物を少なくとも一種類以
上含有する層を有することを特徴とする近赤外線吸収フィルターに存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、他の金属錯体と混合しても配位子交換を起こさないジチオレート金属錯体と他の近赤外線吸収色素とを組み合わせることで、耐光性、耐熱性、耐湿熱性に優れ、かつ、750−1050nm付近の近赤外線領域を広範囲にカットする近赤外線吸収フィルターが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明するが、本発明の実施の形態は以下の形態に制限されるものではない。
1.一般式(1)で表される化合物;
前記一般式(1)において、R1及びR2はそれぞれ独立に1価の置換基である。
1価の置換基としては、水素原子、置換されていても良い炭化水素基、置換されていても良いカルボニル基、置換されていても良い炭化水素チオ基、置換されていても良いシリル基、置換されていても良い炭化水素アミノ基、置換されていても良い炭化水素オキシ基、シアノ基またはハロゲン原子が挙げられる。
【0012】
上記炭化水素基としては、1)脂肪族炭化水素基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、ネオペンチル基、2−エチルブチル基、イソプロピル基、2−ブチル基、シクロヘキシル基、3−ペンチル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルプロピル基等の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基;2−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2,4−ペンタジエニル基等のアルケニル基;エチニル基等のアルキニル基が挙げられる。このうち好ましくは炭素数10以下のアルキル基である。2)アリール基;フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フルオレニル基、フェナンスレニル基、アズレニル基、メタロセン環基などが挙げられる。このうち好ましくは炭素数12以下の単環又は縮合2環式アリール基である。更に好ましくは、炭素数12以下の単環かつアリール基のオルト位に置換基を有さないアリール基である。
3)複素環基;チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、インドールイル基、キノキサリニル基、アクリジニル基、チアゾリル基、ピラジニル基などがあげられる。このうち好ましくは、炭素数12以下の単環又は2環式5員環複素環基である。
【0013】
上記カルボニル基としては、アシル基(−COR)、カルバモイル基(−CONRR’)、アルコキシカルボニル基(−C(O)OR)、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基があげられ、各々さらに具体的には、アシル基(−COR)のR、及び、カルバモイル基(−CONRR’)のR、R’は、先にあげた脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものがあげられ、アルコキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげた脂肪族炭化水素基の具体例と同様のものがあげられ、アリールオキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげたアリール基の具体例と同様のものがあげられ、複素環オキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげた複素環基の具体例と同様のものがあげられ、または、アルデヒド基があげられる。
【0014】
上記炭化水素チオ基としては、1)アルキルチオ基;n−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、2−メチルプロピルチオ基、2−メチルブチルチオ基、3−メチルブチルチオ基、シクロヘキシルメチルチオ基、ネオペンチルチオ基、2−エチルブチルチオ基、イソプロピルチオ基、2−ブチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、3−ペンチルチオ基、1,1−ジメチルプロピルチオ基等の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基などがあげられ、このうち好ましくは炭素数10以下のアルキルチオ基、特に好ましくは、炭素数10以下の分岐鎖のアルキルチオ基である。2)アルケニルチオ基;プロペニルチオ基、ビニルチオ基、イソプロペニルチオ基、スチリルチオ基などがあげられ、このうち好ましくは炭素数12以下のアルケニルチオ基である。3)アルキニルチオ基;エチニルチオ基、1−ペンテニルチオ基、フェネチニルチオ基、t−ブチルエチニル基などがあげられ、このうち好ましくは炭素数12以下のアルキニルチオ基である。4)アリールチオ基;フェニルチオ基、p−tert−ブチルフェニルチオ基、o−トリルチオ基、メシチルチオ基、キシリルチオ基、クメニルチオ基、ナフチルチオ基などがあげられ、好ましくは炭素数12以下の単環又は2員環からなるアリールチオ基である。5)複素環チオ基;チエニルチオ基、フリルチオ基、ピラゾリルチオ基、ピロリイルチオ基、イソオキサゾリルチオ基、ピリジルチオ基、インドールイルチオ基などがあげられ好ましくは炭素数10以下の5員環からなる複素環チオ基である。
【0015】
上記シリル基としては、トリメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、n−ブチルジメチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、トリイソプリピルシリル基などが挙げられ、好ましくは炭素数18以下のシリル基である。
上記炭化水素オキシ基(−OR)のRとしては、先にあげた脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものがあげられ、または、水酸基があげられる。
【0016】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素があげられるが、特に好ましくは、フッ素原子、塩素原子である。
これらの基のうち、置換基を有してもよい基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、アシル基、アミノアシル基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、イミド基及びシリル基などが挙げられる。
【0017】
具体的にはメチル基、エチル基などの炭素数1〜6程度のアルキル基;エチニル基、プロピレニル基などの炭素数1〜6程度のアルケニル基;アセチレニル基など炭素数1〜6程度のアルキニル基;フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜20程度のアリール基;チエニル基、フリル基、ピリジル基などの炭素数3〜20程度のヘテロアリール基;エトキシ基、プロポキシ基などの炭素数1〜6程度のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基などの炭素数6〜20程度のアリールオキシ基;ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基などのなどの炭素数3〜20程度のヘテロアリールオキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基などの炭素数1〜6程度のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基などの炭素数6〜20程度のアリールチオ基;ピリジルチオ基、チエニルチオ基などのなどの炭素数3〜20程度のヘテロアリールチオ基;ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの炭素数1〜20程度の置換基を有していても良いアミノ基;アセチル基、ピバロイル基などの炭素数2〜20程度のアシル基;アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基などの炭素数2〜20程度のアシルアミノ基;3−メチルウレイド基などの炭素数2〜20程度のウレイド基;メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基などの炭素数1〜20程度のスルホンアミド基;ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基などの炭素数1〜20程度のカルバモイル基;エチルスルファモイル基などの炭素数1〜20程度のスルファモイル基;ジメチルスルファモイルアミノ基などの炭素数1〜20程度のスルファモイルアミノ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭素数2〜6程度のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基などの炭素数7〜20程度のアリールオキシカルボニル基;ピリジルオキシカルボニル基などの炭素数6〜20程度のヘテロアリールオキシカルボニル基;メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、取りフルオロメタンスルホニル基などの炭素数1〜6程度のアルキルスルホニル基;ベンゼンスルホニル基、モノフルオロベンゼンスルホニル基などの炭素数6〜20程度のアリールスルホニル基;チエニルスルホニル基などの炭素数3〜20程度のヘテロアリールオキシスルホニル基;フタルイミドなどの炭素数4〜20程度のイミド基;又は、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で3置換されているシリル基などが挙げられる。
【0018】
R1およびR2として特に好ましくは、総炭素数10以下の、置換基を有しても良いアルキル基又はハロアルキル基、総炭素数10以下の、置換基を有しても良いアルキルチオ基、総炭素数12以下の、置換基を有しても良い単環アリール基、総炭素数12以下置換基を有しても良い単環アリールチオ基、総炭素数10以下の、置換基を有していても良い5員環複素環基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、もしくは水素原子である。
【0019】
X1およびX6は炭素原子、酸素原子、窒素原子およびケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する1価の基である。
X1およびX6としては、炭素原子、酸素原子、窒素原子およびケイ素原子のうち少なくとも1種類の原子が鎖状に3以上連結した基が好ましい。ここで、鎖状に3以上連結した基とは、ベンゼン環に結合した原子から数えて3以上の原子を含む鎖状の基、またはベンゼン環に結合した原子を含めて4以上の原子を含む環状の基を意味する。
【0020】
このような基としては、例えば脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基、オキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、置換基を有するアミノ基、および置換基を有するシリル基等が挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基としては、n−プロピル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−ブチル基、3−ペンチル基、ネオペンチル基、2−メチルブチル基、2−エチルブチル基、3−メチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基等の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、より好ましくは、炭素数3〜10程度の直鎖状、分岐鎖状脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0021】
上記アリール基としては、フェニル基、p−トリル基、ベンジル基、フェニルエチル基、3,4−キシリル基、2−エチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基等のアリール基、より好ましくは、炭素数6〜12程度の単環式アリール基が挙げられる。
上記複素環基としては、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、インドールイル基などの複素環基、より好ましくは、炭素数5〜10程度の単環式複素環基が挙げられる。
【0022】
上記脂肪族炭化水素オキシ基としては、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソプロポキシ基、シクロヘキシルオキシ基、2−ブトキシ基、アミルオキシ基、t−ブトキシ基等の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素オキシ基、より好ましくは、炭素数2〜10程度の直鎖状、分岐鎖状脂肪族炭化水素オキシ基が挙げられる。
【0023】
上記アリールオキシ基としては、(−OR)のRが先にあげたアリール基の具体例と同様のものがあげられる。
上記複素環オキシ基としては、(−OR)のRが先にあげた複素環基の具体例と同様のものがあげられる。
上記置換基を有するアミノ基としては、(−NRR’)のR、R’が先にあげた脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものがあげられる。
【0024】
上記置換基を有するシリル基としては、トリエチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、n−ブチルジメチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、トリイソプリピルシリル基などのシリル基が挙げられ、好ましくは炭素数2〜18程度のシリル基があげられる。
これらの中でも特に好ましくは、総炭素数3〜10程度の置換基を有していても良いアルキル基、又は、総炭素数6〜12程度の置換基を有しても良い単環アリール基、又は、総炭素数2〜10程度の置換基を有しても良いアルコキシ基、総炭素数6〜12程度の置換基を有しても良いアリールオキシ基である。
【0025】
X2〜X5及びX7〜X10はそれぞれ独立に1価の基であり、隣り合う基が連結基を介して結合してもよい。
該1価の基としては、金属錯体の安定性に悪影響を及ぼさない基であれば特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、アシル基、アミノアシル基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、イミド基及びシリル基などが挙げられる。
【0026】
具体的にはメチル基、エチル基などの炭素数1〜6程度のアルキル基;エチニル基、プロピレニル基などの炭素数1〜6程度のアルケニル基;アセチレニル基など炭素数1〜6程度のアルキニル基;フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜20程度のアリール基;チエニル基、フリル基、ピリジル基などの炭素数3〜20程度のヘテロアリール基;エトキシ基、プロポキシ基などの炭素数1〜6程度のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基などの炭素数6〜20程度のアリールオキシ基;ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基などのなどの炭素数3〜20程度のヘテロアリールオキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基などの炭素数1〜6程度のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基などの炭素数6〜20程度のアリールチオ基;ピリジルチオ基、チエニルチオ基などのなどの炭素数3〜20程度のヘテロアリールチオ基;ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの炭素数1〜20程度の置換基を有していても良いアミノ基;アセチル基、ピバロイル基などの炭素数2〜20程度のアシル基;アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基などの炭素数2〜20程度のアシルアミノ基;3−メチルウレイド基などの炭素数2〜20程度のウレイド基;メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基などの炭素数1〜20程度のスルホンアミド基;ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基などの炭素数1〜20程度のカルバモイル基;エチルスルファモイル基などの炭素数1〜20程度のスルファモイル基;ジメチルスルファモイルアミノ基などの炭素数1〜20程度のスルファモイルアミノ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭素数2〜6程度のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基などの炭素数7〜20程度のアリールオキシカルボニル基;ピリジルオキシカルボニル基などの炭素数6〜20程度のヘテロアリールオキシカルボニル基;メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、取りフルオロメタンスルホニル基などの炭素数1〜6程度のアルキルスルホニル基;ベンゼンスルホニル基、モノフルオロベンゼンスルホニル基などの炭素数6〜20程度のアリールスルホニル基;チエニルスルホニル基などの炭素数3〜20程度のヘテロアリールオキシスルホニル基;フタルイミドなどの炭素数4〜20程度のイミド基;又は、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で3置換されているシリル基などが挙げられる。
【0027】
隣り合う基が連結基を介して結合した結果形成される基としては、−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−、CH2−CH2−CH2−CH2−、−CH(Ph)−CH2−、−CH(Me)−CH2−等で置換されていても良いアルキレン基;−CH=CH−、−C(Me)=CH−、−CH=CH−CH2−CH2−CH=CH−等の、置換されていても良いアルケニレン基;−CH2−S−CH2−、−CH2−O−CH2−、−CH2−C(=O)−CH2−、−CH2−CH2−S−CH2−CH2−、−CH2−CH2−O−CH2−CH2−等が好ましく挙げられる。
【0028】
これらの中でも、X2および/またはX4、ならびにX7および/またはX10が、炭素原子、酸素原子、窒素原子、およびケイ素原子のうち少なくとも1種類以上の原子を合計2以上有する基であるのが好ましい。
これらは、ベンゼン環上を立体的にかさ高くすることで、配位子交換反応を起こりにくくすると同時に、有機溶媒への溶解性を向上させることを可能にする基である。
【0029】
なかでも該原子を合計3以上有する基であるのがより好ましい。具体的には、X1およびX6であげた基が挙げられる。
特に好ましくは、総炭素数2〜10程度の置換基を有していても良いアルキル基、又は、総炭素数10以下の置換基を有しても良いアルコキシ基である。
上記X3及びX8として特に好ましくは、総炭素数10以下の置換基を有しても良いアルキル基、又は、ハロアルキル基、総炭素数10以下の置換基を有しても良いアルキルチオ基、又は、総炭素数12以下置換基を有しても良い単環アリール基、又は、総炭素数12以下置換基を有しても良い単環アリールチオ基、又は、総炭素数10以下の置換基を有していても良い5員環複素環基、又は、シアノ基、又は、フッ素原子、又は、塩素原子、又は、水素原子である。
【0030】
X1〜X10の中で、置換基を有してもよい基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、アシル基、アミノアシル基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、イミド基及びシリル基などが挙げられる。
【0031】
具体的にはメチル基、エチル基などの炭素数1〜6程度のアルキル基;エチニル基、プロピレニル基などの炭素数1〜6程度のアルケニル基;アセチレニル基など炭素数1〜6程度のアルキニル基;フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜20程度のアリール基;チエニル基、フリル基、ピリジル基などの炭素数3〜20程度のヘテロアリール基;エトキシ基、プロポキシ基などの炭素数1〜6程度のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基などの炭素数6〜20程度のアリールオキシ基;ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基などのなどの炭素数3〜20程度のヘテロアリールオキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基などの炭素数1〜6程度のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基などの炭素数6〜20程度のアリールチオ基;ピリジルチオ基、チエニルチオ基などのなどの炭素数3〜20程度のヘテロアリールチオ基;ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの炭素数1〜20程度の置換基を有していても良いアミノ基;アセチル基、ピバロイル基などの炭素数2〜20程度のアシル基;アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基などの炭素数2〜20程度のアシルアミノ基;3−メチルウレイド基などの炭素数2〜20程度のウレイド基;メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基などの炭素数1〜20程度のスルホンアミド基;ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基などの炭素数1〜20程度のカルバモイル基;エチルスルファモイル基などの炭素数1〜20程度のスルファモイル基;ジメチルスルファモイルアミノ基などの炭素数1〜20程度のスルファモイルアミノ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭素数2〜6程度のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基などの炭素数7〜20程度のアリールオキシカルボニル基;ピリジルオキシカルボニル基などの炭素数6〜20程度のヘテロアリールオキシカルボニル基;メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、取りフルオロメタンスルホニル基などの炭素数1〜6程度のアルキルスルホニル基;ベンゼンスルホニル基、モノフルオロベンゼンスルホニル基などの炭素数6〜20程度のアリールスルホニル基;チエニルスルホニル基などの炭素数3〜20程度のヘテロアリールオキシスルホニル基;フタルイミドなどの炭素数4〜20程度のイミド基;又は、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で3置換されているシリル基などが挙げられる。
【0032】
また、上記一般式(1)で表される化合物において、R1及びR2、X2〜X5及びX7〜X10のうち、特には、それぞれ同一でも異なっていても良いが、同一である方がより好ましい。
M1は、4配位の形態をとりうる金属原子であれば特に限定されないが、好ましくはNi、Pd又はPtの10族金属原子;Co;Fe;Cu;Au;Cr又はMnが挙げられ、より好ましくは10族金属原子であり、特に好ましくはNi又はPdである。
【0033】
ここで、上記一般式(1)の、リガンド部分の分子量は通常1000以下、好ましくは600以下である。また、モル吸光係数は、通常8000以上、好ましくは10000以上の物である。
加えて、上記一般式(1)で表される化合物のトルエン等芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒から選ばれる溶媒に対する溶解度としては、通常0.1%以上、好ましくは0.5%以上である。
【0034】
本発明の近赤外線吸収フィルターに用いられる化合物の好ましい具体例としては、例えば、以下に例示されるものが挙げられる。ただし、以下の化合物に限定されるものではない。
【0035】
【化2】
【0036】
【化3】
【0037】
【化4】
【0038】
【化5】
【0039】
【化6】
【0040】
このような一般式(1)で表される化合物は、例えば、Mol. Cryst. Liq. Crst.(Lett), 56巻、249頁(1980年)記載の公知の方法などで1,3−ジチオール−2−オン誘導体を得た後、含金属化し、対称型金属錯体を得ることができる。また、その吸収極大波長が750nm〜980nm程度のものである。
2.一般式(2)〜(9)で表される近赤外線吸収化合物)
本発明の近赤外線吸収フィルターには、さらに下記一般式(2)〜(9)で表される化合物からなる群より選ばれる化合物を少なくとも1種類以上含有することにより、750〜1050nmの範囲の近赤外線領域を幅広く吸収できるため、特に電子ディスプレイ用フィルターに用いる場合には好ましい。
【0041】
特に(5)、(6)および(8)の色素と混合するときに従来の色素に対して配位子交換しづらいので好ましい。
【0042】
【化7】
【0043】
【化8】
【0044】
前記一般式(2)において、A及びA’は、それぞれ独立して、置換基を有していても良いアリール基又は置換基を有していても良いヘテロアリール基を示す。
R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いアリール基又は置換基を有していても良いヘテロアリール基を示す。ここで、R5とR6は、互いに直接的に又は連結基を介して結ばれていても良い。M2は、M1で記載したのと同様の金属を用いることができる。
【0045】
上記A及びA’のアリール基及びヘテロアリール基を構成する骨格としては、好ましくは6員の単環又はその縮合環であり、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基又はフルオレニル基等のアリール基;又は、チエニル基、フリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラジニル基又はピラゾリル基等のヘテロアリール基が挙げられる。このうち好ましくは、アリール基、より好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環のような単環又は2員環式アリール基である。
【0046】
上記A及びA’のアリール基及びヘテロアリール基の置換基としては、先のX3及びX8の置換基としてあげたものと同様の置換基が挙げられるが、中でも好ましくは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していても良いヘテロアリール基、置換基を有していても良いアルコキシ基、置換基を有していても良いアリールオキシ基又は置換基を有していても良いアミノ基があげられる。より具体的には、塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;メチル基、エチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、トリフルオロメチル基などのハロゲン原子又はアリール基置換されていても良い炭素数1〜10のアルキル基;フェニル基、トリル基等の炭素数6〜10のアリール基;ピリジル基、チエニル基等の炭素数4〜8のヘテロアリール基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシ基;フェノキシ基、メチルフェノキシ基などの炭素数6〜10のアリールオキシ基;または、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基などのアルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良いアミノ基が挙げられる。
【0047】
また、A及びA’上の隣り合う2個の置換基が一体となって、−(CH2)3−又は−(CH2)4−等の炭素数2〜5程度のアルキレン基、−OCH2O−又は−O(CH2)2O−等の炭素数1〜4程度のアルキレンジオキシ基等を形成していても良い。
上記R5とR6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、ネオペンチル基、2−エチルブチル基、イソプロピル基、2−ブチル基、シクロヘキシル基、3−ペンチル基、1,1−ジメチルプロピル基等の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基が挙げられる。このうち好ましくは炭素数10以下の1級又は2級アルキル基、特に好ましくは炭素数10以下の1級アルキル基である。
上記R5とR6のアルキル基の置換基としては、先のX3及びX8の置換基としてあげたものと同様の置換基が挙げられるが、特に好ましくは,無置換、ハロゲン原子(特に好ましくはフッ素原子)、シアノ基、アルコキシ基及びアリール基である。
上記R5とR6のアリール基及びヘテロアリール基としてはフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基又はフルオレニル基、チエニル基、フリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラジニル基又はピラゾリル基等の5員又は6員単環若しくはそれらの縮合環が挙げられる。このうち好ましくは、置換基を有していても良いアリール基、より好ましくは、置換基を有していても良いフェニル基である。
【0048】
【化9】
【0049】
さらに、置換基を有しても良いフェニル基のうち、特に好ましくは、上記R5及びR6が結合している窒素原子と結合する炭素原子に隣接する炭素原子が、置換基R43及びR44を有する場合である。R43及びR44は、1価の置換基を示す。上記R43及びR44としては、色素の安定性に悪影響を与えない基であれば特に限定されないが、より好ましくは、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアルコキシ基、置換基を有しても良いアリール基、置換基を有しても良いアリールオキシ基、置換基を有しても良い複素環基、置換基を有しても良い複素環オキシ基、置換されていても良いアルキルチオ基、置換されていても良いアリールチオ基及び置換されていても良い複素環チオ基からなる群より選ばれる置換基のように立体障害性の高い基であるか、または、Hammettの置換基定数smが0.00<sm<0.90となるような電子吸引性基が挙げられる。
上記電子吸引性基としては、例えば、J.Med.Chem.,16,1207(1973)やJ.Med.Chem.,20,304(1977)に記載されているようなものが挙げられるが、より具体的には、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、ハロアリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ハロアルキルスルホニル基、ハロアリールスルホニル基等が挙げられる。
【0050】
R5及びR6が芳香環の場合、芳香環上の置換基同士は、隣り合う2個の置換基が一体となって、−(CH2)3−又は−(CH2)4−等の炭素数2〜5程度のアルキレン基、−OCH2O−又は−O(CH2)2O−等の炭素数1〜4程度のアルキレンジオキシ基等を形成していても良い。
Xは、15族原子を表し、特に好ましくは、窒素原子、または、リン原子である。R’、R''、R''’、R''''は、それぞれ独立に、置換されていても良いアルキル基又は置換されていてもよいアリール基であり、上記アルキル基及びアリール基の置換基としては、X3及びX8の置換基としてあげたものと同様の置換基が挙げられる。R’、R''、R''’、R''''として、中でも好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基などのハロアルキル基;フェニル基;ベンジル基などの、フェネチル基などのアラルキル基があげられる。
好ましくは、塩を形成しているものより、塩を形成していないものの方がよい。
【0051】
一般式(2)で表される色素の好ましい具体例としては、下記構造式で表される化合物が上げられる。
【0052】
【化10】
【0053】
【化11】
【0054】
【化12】
【0055】
前記一般式(3)において、B及びB’は、それぞれ独立して、置換基を有していても良いアリール基又は置換基を有していても良いヘテロアリール基を示す。
R7及びR8は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いアリール基又は置換基を有していても良いヘテロアリール基を示す。ここで、R7とR8は、互いに直接的に又は連結基を介して結ばれていても良い。M3は、M1で記載したのと同様の金属を用いることができる。
【0056】
上記B及びB’のアリール基及びヘテロアリール基を構成する骨格としては、好ましくは6員の単環又はその縮合環であり、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基又はフルオレニル基等のアリール基;又は、チエニル基、フリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラジニル基又はピラゾリル基等のヘテロアリール基が挙げられる。このうち好ましくは、アリール基、より好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環のようなアリール基である。
【0057】
上記B及びB’のアリール基及びヘテロアリール基の置換基としては、先のX3及びX8の置換基としてあげたものと同様の置換基が挙げられるが、中でも好ましくは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していても良いヘテロアリール基、置換基を有していても良いアルコキシ基、置換基を有していても良いアリールオキシ基又は置換基を有していても良いアミノ基があげられる。より具体的には、塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;メチル基、エチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、トリフルオロメチル基などのハロゲン原子又はアリール基置換されていても良い炭素数1〜10のアルキル基;フェニル基、トリル基等の炭素数6〜10のアリール基;ピリジル基、チエニル基等の炭素数4〜8のヘテロアリール基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシ基;フェノキシ基、メチルフェノキシ基などの炭素数6〜10のアリールオキシ基;または、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基などのアルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良いアミノ基が挙げられる。
【0058】
また、B及びB’上の隣り合う2個の置換基が一体となって、−(CH2)3−又は−(CH2)4−等の炭素数2〜5程度のアルキレン基、−OCH2O−又は−O(CH2)2O
−等の炭素数1〜4程度のアルキレンジオキシ基等を形成していても良い。
上記R7及びR8のアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基としては、先のR5及びR6のアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基であげたものと同様のものがあげられる。上記R7及びR8のアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基の置換基としては、先のX3及びX8の置換基としてあげたものと同様の置換基があげられるが、特に好ましくは、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基及びアリールオキシ基である。
【0059】
R7及びR8は、直接、あるいは、連結基を介して互いに結ばれていても良いが、特に下図のような場合が好ましい。
【0060】
【化13】
【0061】
R45〜R54として好ましい具体例としては、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;水酸基;ニトロ基;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基、フェネチル基などのハロゲン原子又はアリール基置換されていても良い炭素数1〜10のアルキル基;フェニル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシ基;フェノキシ基、メチルフェノキシ基などのアルキル基で置換されていても良い炭素数6〜10のアリールオキシ基が挙げられる。R45〜R54の隣り合う2個の置換基が一体となって、−(CH2)3−又は−(CH2)4−等の炭素数2〜5程度のアルキレン基、−OCH2O−又は−O(CH2)2O−等の炭素数1〜4程度のアルキレンジオキシ基等を形成していても良い。
【0062】
このうち好ましくは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、ハロアリールオキシ基等の電子吸引性基、もしくは、水素原子が挙げられ、R45〜R54の中で、少なくともひとつは水素原子でないものである。さらにはR45〜R54の少なくとも1つがフッ素原子、塩素原子またはシアノ基であり、残りは水素原子であるのが好ましい。
【0063】
Xは、15族原子を表し、特に好ましくは、窒素原子、または、リン原子である。R’、R''、R''’、R''''は、それぞれ独立に、置換されていても良いアルキル基又は置換されていてもよいアリール基であり、上記アルキル基及びアリール基の置換基としては、X3及びX8の置換基としてあげたものと同様の置換基が挙げられる。R’、R''、R''’、R''''として、中でも好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基などのハロアルキル基;フェニル基;ベンジル基などの、フェネチル基などのアラルキル基があげられる。
【0064】
好ましくは、塩を形成しているものより、塩を形成していないものの方がよい。
前記一般式(3)で表される色素の好ましい具体例として、下記構造式で表される物が挙げられる。
【0065】
【化14】
【0066】
【化15】
【0067】
前記一般式(4)において、C及びC’は、それぞれ独立して、置換基を有していても良いアリール基又は置換基を有していても良いヘテロアリール基を示す。
R3、R4、R9及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いアリール基又は置換基を有していても良いヘテロアリール基を示す。ここで、R3とR4、及び、R9とR10は、互いに直接的に又は連結基を介して結ばれていても良い。M4は、M1で記載したのと同様の金属を用いることができる。
【0068】
上記C及びC’のアリール基及びヘテロアリール基を構成する骨格としては、6員の単環又はその縮合環であり、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基又はフルオレニル基等のアリール基;又は、チエニル基、フリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラジニル基又はピラゾリル基等のヘテロアリール基が挙げられる。このうち好ましくは、アリール基、より好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環のようなアリール基である。
【0069】
上記C及びC’のアリール基及びヘテロアリール基の置換基としては、先のX3及びX8の置換基としてあげたものと同様の置換基が挙げられるが、中でも好ましくは、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していても良いヘテロアリール基、置換基を有していても良いアルコキシ基、置換基を有していても良いアリールオキシ基又は置換基を有していても良いアミノ基があげられる。より具体的には、塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;メチル基、エチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、トリフルオロメチル基などのハロゲン原子又はアリール基置換されていても良い炭素数1〜10のアルキル基;フェニル基、トリル基等の炭素数6〜10のアリール基;ピリジル基、チエニル基等の炭素数4〜8のヘテロアリール基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシ基;フェノキシ基、メチルフェノキシ基などの炭素数6〜10のアリールオキシ基;または、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基などのアルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良いアミノ基が挙げられる。
【0070】
また、C及びC’上の隣り合う2個の置換基が一体となって、−(CH2)3−又は−(CH2)4−等の炭素数2〜5程度のアルキレン基、−OCH2O−又は−O(CH2)2O−等の炭素数1〜4程度のアルキレンジオキシ基等を形成していても良い。
上記R3、R4、R9及びR10のアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基としては
、先のX3及びX8のアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基であげたものと同様のものがあげられる。上記R3、R4、R9及びR10のアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基の置換基としては、先のX3及びX8の置換基としてあげたものと同様の置換基があげられるが、特に好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、ニトロ基、アルコキシ基、アリール基及びアリールオキシ基である。
【0071】
また、式(4)は、塩型を形成してもよく、Xは、15族原子を表し、特に好ましくは、窒素原子、または、リン原子である。R’、R''、R''’、R''''は、それぞれ独立に、置換されていても良いアルキル基又は置換されていてもよいアリール基であり、上記アルキル基及びアリール基の置換基としては、X3及びX8の置換基としてあげたものと同様の置換基が挙げられる。R’、R''、R''’、R''''として、中でも好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基などのハロアルキル基;フェニル基;ベンジル基などの、フェネチル基などのアラルキル基があげられる。
【0072】
好ましくは、塩を形成しているものより、塩を形成していないものの方がよい。
前記一般式(4)で表される色素の好ましい具体例として、下記構造式で表される物が挙げられる。
【0073】
【化16】
【0074】
前記一般式(5)において、D及びD’は、それぞれ独立して、置換基を有していても良いアリール基を示す。
M5は、M1で記載したのと同様の金属を用いることができる。
上記D及びD’のアリール基を構成する骨格としては、好ましくは6員の単環又はその縮合環であり、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基が挙げられる。より好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環のようなアリール基である。
【0075】
上記D及びD’のアリール基の置換基としては、先のX3及びX8の置換基としてあげたものと同様の置換基が挙げられるが、中でも好ましくは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していても良いヘテロアリール基、置換基を有していても良いアルコキシ基、置換基を有していても良いアリールオキシ基又は置換基を有していても良いアミノ基があげられる。より具体的には、塩素原子、臭素原子、フッ素原子などのハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;メチル基、エチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、トリフルオロメチル基などのハロゲン原子又はアリール基置換されていても良い炭素数1〜10のアルキル基;フェニル基、トリル基等の炭素数6〜10のアリール基;ピリジル基、チエニル基等の炭素数4〜8のヘテロアリール基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシ基;フェノキシ基、メチルフェノキシ基などの炭素数6〜10のアリールオキシ基;または、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基などのアルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良いアミノ基が挙げられる。
【0076】
また、D及びD’上の隣り合う2個の置換基が一体となって、−(CH2)3−又は−(CH2)4−等の炭素数2〜5程度のアルキレン基、−OCH2O−又は−O(CH2)2O−等の炭素数1〜4程度のアルキレンジオキシ基等を形成していても良い。
また、式(5)は、塩型を形成してもよく、Xは、15族原子を表し、特に好ましくは、窒素原子、または、リン原子である。R’、R''、R''’、R''''は、それぞれ独立に、置換されていても良いアルキル基又は置換されていてもよいアリール基であり、上記アルキル基及びアリール基の置換基としては、X3及びX8の置換基としてあげたものと同様の置換基が挙げられる。R’、R''、R''’、R''''として、中でも好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基などのハロアルキル基;フェニル基;ベンジル基などの、フェネチル基などのアラルキル基があげられる。
【0077】
一般式(5)は、塩を形成しているものも塩を形成していないものも好ましい。
一般式(5)で表される色素の好ましい具体例として、下記構造式で表される物が挙げられる。
【0078】
【化17】
【0079】
前記一般式(6)において、R11〜R14は、それぞれ独立して、水素原子、シアノ基、置換されていても良いカルボニル基、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアリール基、又は、置換されていてもよいヘテロアリール基である。特に好ましくは、水素原子、置換されていても良いアリール基である。M6は、上記M1で記載したのと同様の金属を用いることができる。
【0080】
上記アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基及びカルボニル基の置換基としては、上記X3及びX8で記載したのと同様の基が挙げられる。
また、上記R11〜R14の脂肪族炭化水素基及びアリール基及びヘテロアリール基の置換基が、一体となって、−(CH2)3−又は−(CH2)4−等の炭素数2〜5程度のアルキレン基、−OCH2O−又は−O(CH2)2O−等の炭素数1〜4程度のアルキレンジオキシ基等を形成していても良い。
【0081】
また、式(6)は、塩型を形成してもよく、Xは、15族原子を表し、特に好ましくは、窒素原子、または、リン原子である。R’、R''、R''’、R''''は、それぞれ独立に、置換されていても良いアルキル基又は置換されていてもよいアリール基であり、上記アルキル基及びアリール基の置換基としては、X3及びX8の置換基としてあげたものと同様の置換基が挙げられる。R’、R''、R''’、R''''として、中でも好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基などのハロアルキル基;フェニル基;ベンジル基などの、フェネチル基などのアラルキル基があげられる。
【0082】
一般式(6)は、塩を形成しているものも塩を形成していないものも好ましい。
一般式(6)で表される色素の好ましい具体例としては、下記構造式で表される化合物が挙げられる。
【0083】
【化18】
【0084】
一般式(7)において、R15〜R30は、任意の置換基を表し、本発明の化合物の基本的性能を損なわない限り特に制限は無いが、例えば、R15〜R30の置換基としてあげたものと同様の基があげられる。
上記一般式(7)におけるM7は、フタロシアニン骨格と錯体を形成出来る元素であれ
ば、特に限定されないが、好ましくは銅原子、バナジウムオキシ基又は塩化スズ基が挙げられる。
【0085】
上記一般式(7)で表される化合物のうち、好ましい具体例としては、特開平10−78509号公報、特開平11−116826号公報、特開平11−65463号公報及び特開2000−26748号公報に記載されているものが挙げられ、中でも、下記に記載したような含フッ素フタロシアニン系化合物が好ましい。
【0086】
【化19】
【0087】
【化20】
【0088】
前記一般式(8)において、R31とR32、及び、R33とR34は、それぞれ独立して、置換されていても良い脂肪族炭化水素基又は置換されていても良いアリール基又は、置換されていても良いヘテロアリール基を示す。M8は、M1で記載したものと同様の金属を用いることができる。上記R31〜R34の脂肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロアリール基としては、X3及びX8であげたものと同様のものがあげられるが、より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、ネオペンチル基、2−エチルブチル基、イソプロピル基、2−ブチル基、シクロヘキシル基、3−ペンチル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルプロピル基等の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基;2−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2,4−ペンタジエニル基等のアルケニル基;エチニル基等のアルキニル基が挙げられる。このうち好ましくは炭素数10以下の1級又は2級アルキル基である。上記アリール基としては、フェニル基又はナフチル基などが挙げられる。上記へテロアリール基としては、チエニル基、フリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基などがあげられる。
該R31〜R34の脂肪族炭化水素基及びアリール基及びヘテロアリール基の置換基としては、X3及びX8であげたものと同様のものがあげられる。
【0089】
また、上記R31とR32、及び、R33とR34が一体となって−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CF2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−CH2−、−CH(Ph)−CH2−、−CH(Me)−CH2−等の置換されていても良いアルキレン基;−CH=CH−、−C(Me)=CH−、−CH=CH−CH2−CH2−CH=CH−等の置換されていても良いアルケニレン基;−CH2−S−CH2−、−CH2−O−CH2−、−CH2−C(=O)−CH2−、−CH2−CH2−S−CH2−CH2−、−CH2−CH2−O−CH2−CH2−等の連結基を含有するアルキレン基等を形成していても良い。
【0090】
上記R31及びR32、R33及びR34として好ましくは無置換のアルキル基、または、置換基を有していても良いアルキル基、特に好ましくは無置換のアルキル基、ハロゲン原子(特に好ましくはフッ素原子)、シアノ基、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基を有していても良いアルキル基である。
また、式(8)は、塩型を形成してもよく、Xは、15族原子を表し、特に好ましくは、窒素原子、または、リン原子である。R’、R''、R''’、R''''は、それぞれ独立に、置換されていても良いアルキル基又は置換されていてもよいアリール基であり、上記アルキル基及びアリール基の置換基としては、X3及びX8の置換基としてあげたものと同様の置換基が挙げられる。R’、R''、R''’、R''''として、中でも好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基などのハロアルキル基;フェニル基;ベンジル基などの、フェネチル基などのアラルキル基があげられる。
【0091】
一般式(8)は、塩を形成していないものの方が塩を形成しているものより好ましい。一般式(8)で表される色素の好ましい具体例として、下記で表されるものがあげられる。
【0092】
【化21】
【0093】
【化22】
【0094】
【化23】
【0095】
【化24】
【0096】
一般式(9)において、R35〜R42は、それぞれ独立に置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアリール基又は置換基を有しても良いヘテロアリール基を示し、ここで、R35〜R42は隣り合う2つの置換基同士が連結基を介して結合で結ばれていても良い。R35〜R42の置換基として、具体的には、一般式(1)のX3及びX8の説明で述べたものと同様の基が選ばれる。
【0097】
また、R35〜R42は隣り合う2個の置換基が一体となって、−(CH2)3−又は−(CH2)4−等の炭素数2〜5程度のアルキレン基、−OCH2O−又は−O(CH2)2O−等の炭素数1〜4程度のアルキレンジオキシ基等を形成していても良い。
Xは陰イオンを示し、具体的には、フッ素アニオン、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、過塩素酸アニオン、6フッ化アンチモン酸イオン、硝酸アニオン、ヘキサフルオロフォスフェイトアニオン、テトラフルオロボレートアニオンで表される1価の陰イオンを示す。
【0098】
上記一般式(9)で表される化合物のうち、好ましい具体例としては、特開平10−18092号公報、特開平11−170700号公報、特開2000−80071号公報、特開2000−81511号公報及び特開2001−174626号公報に記載されているものが挙げられ、中でも、日本化薬社製「kayasorb IRG022」及び「kayasorb IRG023」として市販されているような色素、並びに、日本カーリット社製「CIR1080」、「CIR1081」、「CIR1083」及び「CIR1085」として市販されているような色素が好ましい。
【0099】
ここで、上記一般式(2)〜(6)、(8)で表される化合物は、リガンド部分の分子量が通常800以下、好ましくは500以下の物である。
また、上記一般式(2)〜(6)、(8)で表される化合物のモル吸光係数は、通常通常5000以上、好ましくは8000以上の物である。
一般式(7)に記載のフタロシアニン化合物としては、分子量900〜3000、好ましくは、1000〜2500のものである。
【0100】
また、上記一般式(7)で表される化合物のモル吸光係数は、通常通常5000以上、好ましくは8000以上の物である。
一般式(9)に記載のジインモニウム化合物としては、分子量600〜3000、好ましくは、900〜2100のものである。
また、上記一般式(9)で表される化合物のモル吸光係数は、通常70000以上、好ましくは90000以上の物である。
【0101】
加えて、上記一般式(2)〜(9)で表される化合物のトルエン等芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒から選ばれる溶媒に対する溶解度としては、通常0.1%以上、好ましくは0.5%以上である。
尚、上記化合物(2)は、例えば、Russ. J. Gen. Chem., 66巻、1842頁(1996年)に記載の方法で合成でき、上記化合物(3)は、例えば、特開2001−89492号公報に記載の方法で合成でき、化合物(4)は例えば、J.Am.Chem.Soc.,88卷、5201頁(1966年)により合成でき、化合物(5)は、例えば、J.Am.Chem.Soc.,88卷、43頁及び4870頁(1966年)に記載の方法で合成でき、化合物(6)は、例えば、J.Am.Chem.Soc.,87卷、1483頁(1965年)に記載の方法で合成でき、化合物(7)は、例えば、The Porphyrin Handbook(2003)に記載の方法で合成でき、化合物(8)は、例えば、J.Mater.Chem.,1861頁(1994)に記載の合成方法で合成でき、化合物(9)は、例えば、特開昭61−246391号公報に記載の方法で合成できる。
【0102】
(近赤外線吸収フィルター)
本願の近赤外線吸収フィルターは、上記一般式(1)で表される化合物を用いることにより、800〜980nm付近に極大吸収を有し、さらに、上記(2)〜(11)で表される化合物と組み合わせて用いることにより、750〜1050nmの波長域をカバーする近赤外線吸収フィルターを効率的に得ることができる。
【0103】
加えて、プラズマディスプレイパネルにおいては、820〜825nm、880nm、980nm近辺の近赤外線発光が特に強いため、この部分の光線透過率が15%以下とするのが好ましい。
また、可視光透過率が、特には400〜450nmにおける平均透過率が45%以上であり、加えて、550〜600nmにおける透過率が60%以上、好ましくは70%以上であるため、車窓ガラスに用いた場合の景色の色再現性(明るさ)やディスプレイの画面の明るさ等を確保することもできるものである。
【0104】
本発明の近赤外線吸収フィルターは、耐熱性も優れたものであり、80℃の恒温槽での500時間耐熱試験後に可視光領域に新たなピークが出ることもない。
本願フィルターとして好ましくは、上記耐熱試験での色素残存率が60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上となるものである。ここで、色素残存率は、750〜1050nmの領域における試験前後の吸収強度の減少度合から求める。
【0105】
さらに、本発明の近赤外線吸収フィルターは、耐光性富士フィルム(株)社製UVカットフィルターを装着した状態でのキセノンランプによる280時間耐光性試験後の色素残存率も優れたものであり、好ましくは色素残存率が70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上となるものである。
(フィルターの製造方法)
本発明の赤外線吸収フィルターの製造方法としては、透明基板に近赤外線吸収色素を含む塗工液をコーティングする方法、近赤外線吸収色素をバインダー樹脂と溶融混錬してフィルム状に成形する方法などが挙られるが、近赤外線吸収色素に対する負荷を低減するため、塗工液をコーティングする方法の方が好ましい。
【0106】
以下に、透明基板に近赤外線吸収色素を含む塗工液を塗布して赤外線吸収フィルターを製造する方法について詳細に説明する。
(基板)
本発明の赤外線吸収フィルターを構成する透明基板としては、実質的に透明であって、吸収、散乱が大きくない基材であればよく、特に制限はない。その具体的な例としては、ガラス、ポリオレフィン系樹脂、非晶質ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂等が挙げられる。これらの中では、特に非晶質ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂が好ましい。
【0107】
これらの樹脂は、フェノール系、燐系などの酸化防止剤、ハロゲン系、燐酸系等の難燃剤、耐熱老化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等の公知の添加剤を配合することができる。
透明基板は、これらの樹脂を、射出成形、Tダイ成形、カレンダー成形、圧縮成形等の方法や、有機溶剤に溶解させてキャスティングする方法などなどの成形方法を用い、フィルム状に成形したものが用いられる。フィルム状に成形された樹脂は延伸されていても未延伸でもよい。また、異なる材料からなるフィルムが積層されていても良い。
【0108】
透明基板の厚みは、目的に応じて通常10μm〜5mmの範囲から選択される。
更に、透明基板は、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、薬品処理等の従来公知の方法による表面処理や、アンカーコート剤やプライマー等のコーティングを施してもよい。
(近赤外線吸収色素層)
近赤外線吸収色素を含む塗工液は、近赤外線吸収色素をバインダー樹脂とともに溶剤中に溶解又は分散させることにより、調製することができる。また、分散させる場合、近赤外線吸収色素を必要に応じて分散剤を用いて、粒径を通常0.1〜3μmに微粒子化し、バインダーとともに、溶剤に分散させて調製することもできる。
【0109】
このとき溶剤に溶解又は分散される近赤外線吸収色素、分散剤、およびバインダー樹脂などの全固形分の濃度は、通常5〜50重量%である。また、全固形分に対する金属錯体の濃度は、近赤吸収色素トータルとして通常0.1〜50重量%、好ましくは0.2〜30重量%である。また、一般式(1)で表される化合物の他に一般式(2)〜(11)で表される化合物を併用する場合においては、同一層に併存させても良いし、別層として積層させても良いが、一般式(1)で表される化合物に対する一般式(2)〜(11)で表される化合物の総量の比としては、1:0.1〜1:10、好ましくは、1:0.2〜1:5である。
【0110】
尚、バインダー樹脂に対する近赤外線吸収剤の濃度としては、当然のことながら、近赤外線吸収フィルターの膜厚にも依存するため、溶融混練してフィルム状に成形するような場合には、上述の色濃度よりは低くなる。
分散剤としては、ポリビニルブチラール樹脂、フェノキシ樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂、硬化ロジン、ロジンエステル、マレイン化ロジン、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。その使用量は、金属錯体化合物に対して、通常0〜100重量%、好ましくは0〜70重量%である。
【0111】
バインダーとしては、ポリメチルメタクレート樹脂、ポリエチルアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、エチレンービニルアルコール共重合体樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。その使用量は、バインダーに対して金属錯体化合物が、0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%である。
溶媒としては、1,2,3−トリクロロプロパン、テトラクロルエチレン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、エナント酸メチル、リノール酸メチル、ステアリン酸メチル等のエステル類シクロヘキサン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、スクアラン等の芳香族炭化水素類、ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N,N′,N′−テトラメチル尿素等のアミド類、テトラヒドロフラン(以下「THF」という)、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類あるいはこれらの混合物を用いることができる。
【0112】
また、近赤外線吸収色素を含む塗工液には、必要に応じて、上記以外の近赤外線吸収剤を添加してもよい。他の近赤外線吸収剤としては、有機物質であるニトロソ化合物及びその金属錯塩、シアニン系化合物、スクアリリウム系化合物、チオールニッケル錯塩系化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、トリアリルメタン系化合物、インモニウム系化合物、ジインモニウム系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、アミノ化合物、アミニウム塩系化合物、あるいは、無機物であるカーボンブラックや、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズ、周期律表4A、5Aまたは6A族に属する金属の酸化物、もしくは炭化物、またはホウ化物などが挙げられる。
【0113】
金属錯体を含む塗工液の透明基材へのコーティングは、ディッピング法、フローコート法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法等の公知の塗工方法で行われる。
金属錯体を含む層は、乾燥後の膜厚が、通常0.1〜30μm、好ましくは0.5〜10μmとなるように塗布される。
【0114】
(紫外線カット層)
本発明の赤外線吸収フィルターは、さらに紫外線カット層を設けることにより、金属錯体との相乗効果によって、赤外線吸収フィルターの耐光性を著しく向上させることができる。紫外線カット層としては、400nm以下の波長の紫外線を効率よくカットできるものであり、350nmの波長の光を70%以上吸収できることが好ましい。紫外線カット層の種類については、特に制限されないが、好ましくは紫外線吸収剤を含有する樹脂フィルム(紫外線カットフィルム)が好ましい。
【0115】
紫外線カット層に用いられる紫外線吸収剤としては、300〜400nmの間に極大吸収を有し、その領域の光を効率よくカットする化合物であれば、有機系、無機系のいずれも特に限定なく用いることができる。例えば有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、アクリレート系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤等が挙げられ、無機系紫外線級剤としては酸化チタン系紫外線吸収剤、酸化亜鉛系紫外線吸収剤、微粒子酸化鉄系紫外線吸収剤等が挙げられるが、無機系紫外線吸収剤の場合は紫外線カット層中で微粒子状態で存在しているため、赤外線吸収フィルターの効率を損なう恐れがあることから、有機系紫外線吸収剤が好ましい。
【0116】
このような紫外線吸収剤としては、例えば、チバガイギー(株)のチヌビンP、チヌビン120、213、234、320、326、327、328、329、384、400、571、住友化学(株)のスミソーブ250、300、577、共同薬品(株)バイオソーブ582、550、591、城北化学(株)のJFー86、79、78、80、旭電化(株)のアデカスタブLA−32,LA−36,LA−34、シプロ化成(株)のシーソルブ100、101、101S、102、103、501、201、202、612NH、大塚化学(株)のRUVA93、30M、30S、BASF(株)のユービナール3039等が挙げられる。
【0117】
これらの紫外線吸収剤は、単独で用いても良いが、数種類組み合わせても良い。また、紫外線を吸収して可視領域に波長変換するチバガイギー(株)のユービテックスOB,OB−P等の蛍光増白剤も利用できる。
また、紫外線カットフィルムは、市販のUVカットフィルターを使用することもでき、例えば、富士フィルム(株)のSC−38、SC−39、SC−42、三菱レーヨン(株)のアクリプレン等が挙げられる。上記のUVカットフィルター、SC−39、アクリプレンは、ともに350nmの波長を99%以上吸収する紫外線カットフィルムである。
【0118】
このように紫外線吸収槽を設けた本発明の近赤外線吸収フィルターは、Xeランプを200時間照射することによる耐光性試験後の色素残存率が80%以上、好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上となり、可視光領域に新たな吸収ピークが出てくることもない。ここで、色素残存率は、800〜1100nm領域における試験前後の吸収強度の減少度合から求める。
【0119】
上記近赤外線吸収フィルターは単独はもちろん透明のガラスや他の透明樹脂板等と貼り合わせた積層体として用いてもよい。
また、本発明により得られる近赤外線吸収フィルターは、本発明のディスプレイパネル用フィルター以外にも、熱線遮断フィルム、サングラス、保護眼鏡、リモコン受光器など幅広い用途に使用することができる。
【0120】
3.電子ディスプレイ用フィルター
さらに、本発明の赤外線吸収フィルターは、必要に応じて、電磁波カット層、表面への蛍光灯などの外光の写り込みを防止する反射防止層、ぎらつき防止層(ノングレア層)、色調補正層を設け、電子ディスプレイ用、より好ましくはプラズマディスプレイパネル用フィルターとして使用することができる。
【0121】
本発明の電子ディスプレイ用フィルターは、上記近赤外線吸収フィルターを用いている他は、通常、用いられる構成や製造方法等を任意にとることができ、特に限定されるものではないが、以下にプラズマディスプレイパネル用フィルターとして用いる場合を代表例として説明する。
(電磁波カット層)
本発明のプラズマディスプレイパネル用フィルターに用いられる電磁波カット層としては、金属酸化物等の蒸着あるいはスパッタリング方法等が利用できる。通常は酸化インジウムスズ(ITO)が一般的であるが、誘導体層と金属層を基材上に交互にスパッタリング等で積層させることで1000nm以上の光をカットすることもできる。誘電体層としては酸化インジウム、酸化亜鉛などの透明な金属酸化物等であり、金属層としては銀あるいは銀−パラジウム合金が一般的であり、通常、誘電体層より3層、5層、7層あるいは11層程度積層する。基材としては、本発明の赤外線吸収フィルターをそのまま利用しても良いし、樹脂フィルムあるいはガラス上に蒸着あるいはスパッタリングして電磁波カット層を設けた後に、本発明の赤外線吸収フィルターと貼り合わせても良い。
【0122】
(反射防止層)
本発明のプラズマディスプレイパネル用フィルターに用いられる反射防止層としては、表面の反射を抑えてフィルターの透過率を向上させるために、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等の無機物を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法等で単層あるいは多層に積層させる方法、アクリル樹脂、フッ素樹脂などの屈折率の異なる樹脂を単層あるいは多層に積層させる方法等がある。また、反射防止処理を施したフィルムを該フィルター上に貼り付けることもできる。
【0123】
(色調補正層)
本発明のプラズマディスプレイパネル用フィルターに用いられる色調補正層としては、プラズマディスプレイから発せられる590〜600nmの波長域のネオンオレンジ光をカットできれば特に限定されず、公知のスクアリリウム系化合物、テトラアザポルフィリン系化合物、シアニン系化合物、メチン系化合物、ピロメテン系化合物、ジピロメテン系化合物等の化合物を含有させる。また、消光時のディスプレイの色がニュートラルグレーになるようにその他の色素を添加することもある。
【0124】
(ノングレア層)
また、上述の各層の他にぎらつき防止層(ノングレア層)も設けてもよい。ノングレア層は、フィルターの視野角を広げる目的で、透過光を散乱させるために、シリカ、メラミン、アクリル等の微粉体をインキ化して、表面にコーティングする方法などを用いることができる。インキの硬化は、熱硬化あるいは光硬化を用いることができる。また、ノングレア処理したフィルムを該フィルター上に貼り付けることもできる。更に必要であれば、ハードコート層を設けることもできる。
【実施例】
【0125】
以下に、実施例により本発明の実施態様を説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。
実施例1
下式に示す化合物(A)(34.3mg)をトルエン0.80gに添加し、これらの中にアクリル系樹脂(オプトレッソOZ1100)のMEK/トルエン(=1/1)溶液(樹脂濃度25重量%)3.2gを添加し、超音波をかけて溶解させ、濾過後、この塗工液を、バーコータ(No.18;江藤器械(株)製)でポリエチレンテレフタレート製フィルムに塗工し、乾燥することにより、近赤外線吸収フィルターを得た。
【0126】
【化25】
【0127】
このフィルターのλmaxは851nmであった。
更に、耐熱性および耐湿熱性を評価するため、80℃の恒温槽および、60℃、湿度90%の恒温層に500時間入れて耐熱性及び耐湿熱性の試験(851nmにおける試験前後の吸収強度の測定)を実施したところ、色素残存率(試験後の強度÷試験前の強度×100)はそれぞれ、85.6%及び98.9%と良好な耐熱性および耐湿熱性を示し、フィルターの色変化はなかった。
【0128】
このフィルターに、富士写真フィルム(株)製UVカットフィルター(SC−39)を装着し、キセノンロングライフフェードメーター(FAL−25AX−HCB−EC)(スガ試験機社製品)により、280時間照射し、851nmにおける照射前後の吸収強度を測定したところ、色素残存率(照射後の強度÷照射前の強度×100)は96.6%と非常に良好であり、フィルター色変化はなかった。
【0129】
実施例2
実施例1において、化合物(A)にかえて下式に示す化合物(B)を用いた以外は実施例1と同様の方法により近赤外線吸収フィルターを得た。
【0130】
【化26】
【0131】
このフィルターのλmaxは855nmであった。
更に、耐熱性および耐湿熱性を評価するため、80℃の恒温槽および、60℃、湿度90%の恒温層に500時間入れて耐熱性及び耐湿熱性の試験(855nmにおける試験前後の吸収強度の測定)を実施したところ、色素残存率(試験後の強度÷試験前の強度×100)はそれぞれこのフィルターに、富士写真フィルム(株)製UVカットフィルター(SC−3、97.4%及び100.0%と良好な耐熱性および耐湿熱性を示し、フィルターの色変化はなかった。9)を装着し、キセノンロングライフフェードメーター(FAL−25AX−HCB−EC)(スガ試験機社製品)により、280時間照射し、855nmにおける照射前後の吸収強度を測定したところ、色素残存率(照射後の強度÷照射前の強度×100)は95.1%と非常に良好であり、フィルター色変化はなかった。
【0132】
実施例3
下記に示す化合物(C)(34.3mg)をTHF(テトラヒドロフラン)1.0gに添加し、これらの中にアクリル系樹脂(オプトレッソOZ1100)のTHF溶液(樹脂濃度30重量%)3.0gを添加し、超音波をかけて溶解させ、濾過後、この塗工液を、バーコータ(No.18;江藤器械(株)製)でポリエチレンテレフタレート製フィルムに塗工し、乾燥することにより、近赤外線吸収フィルターを得た。
【0133】
【化27】
【0134】
このフィルターのλmaxは856nmであった。
更に、耐熱性および耐湿熱性を評価するため、80℃の恒温槽および、60℃、湿度90%の恒温層に500時間入れて耐熱性及び耐湿熱性の試験(856nmにおける耐久試験前後の吸収強度の測定)を実施したところ、色素残存率(試験後の強度÷試験前の強度×100)はそれぞれ、96.2%及び99.0%と良好な耐熱性および耐湿熱性を示し、フィルターの色変化はなかった。
【0135】
このフィルターに、富士写真フィルム(株)製UVカットフィルター(SC−39)を装着し、キセノンロングライフフェードメーター(FAL−25AX−HCB−EC)(スガ試験機社製品)により、280時間照射し、856nmにおける照射前後の吸収強度を測定したところ、色素残存率(照射後の強度÷照射前の強度×100)は96.7%と非常に良好であり、フィルター色変化はなかった。
【0136】
以下の実施例および比較例は、2種の近赤外線吸収色素を混合した近赤外線吸収フィルターを製造するものであるが、近赤外線吸収フィルターの825nm、880nm、980nmでの透過率が20%以下になるように近赤外線吸収色素の量を調節して製造した。
【0137】
実施例4
下式に示す化合物(A)(0.099g)、下式(D)に示す化合物(0.0684g)をトルエン2.0gに添加し、これらの中にアクリル系樹脂(オプトレッソOZ1100)のMEK/トルエン(=1/1)溶液(樹脂濃度25重量%)8.0gを添加し、超音波をかけて溶解させ、濾過後、この塗工液を、バーコータ(No.18;江藤器械(株)製)でポリエチレンテレフタレート製フィルムに塗工し、乾燥することにより、近赤外線吸収フィルターを得た。
【0138】
【化28】
【0139】
この近赤外線吸収フィルターは、825nm、880nm、980nmでの透過率が20%以下であり、PDP本体からの発光を有効に遮蔽するものであった。
更に、耐熱性および耐湿熱性を評価するため、80℃の恒温槽および、60℃、湿度90%の恒温層に500時間入れて耐熱性及び耐湿熱性の試験を実施したところ、図1(耐熱性結果)、図2(耐湿熱性結果)と良好な耐熱性および耐湿熱性を示し、フィルターの色変化はなかった。
【0140】
このフィルターに、富士写真フィルム(株)製UVカットフィルター(SC−42)を装着し、キセノンロングライフフェードメーター(FAL−25AX−HCB−EC)(スガ試験機社製品)により、280時間照射し、照射前後の吸収強度を測定したところ、図3に示すように良好であり、フィルター色変化はなかった。
【0141】
実施例5
化合物(A)に変えて下式に示す化合物(B)を用いた以外は実施例4と同様の方法により、下式に示す化合物(B)および下式(D)に示す化合物(0.0684g)を含有する近赤外線吸収フィルターを得た。
【0142】
【化29】
【0143】
この近赤外線吸収フィルターは、825nm、880nm、980nmでの透過率が20%以下であり、PDP本体からの発光を有効に遮蔽するものであった。
更に、耐熱性および耐湿熱性を評価するため、80℃の恒温槽および、60℃、湿度90%の恒温層に500時間入れて耐熱性及び耐湿熱性の試験を実施したところ、図4(耐熱性結果)、図5(耐湿熱性結果)と良好な耐熱性および耐湿熱性を示し、フィルターの色変化はなかった。
【0144】
このフィルターに、富士写真フィルム(株)製UVカットフィルター(SC−42)を装着し、キセノンロングライフフェードメーター(FAL−25AX−HCB−EC)(スガ試験機社製品)により、280時間照射し、照射前後の吸収強度を測定したところ、図6に示すように良好であり、フィルター色変化はなかった。
【0145】
実施例6
下式に示す化合物(C)(0.099g)、下式(D)に示す化合物(0.0684g)をTHF3.0gに添加し、これらの中にアクリル系樹脂(オプトレッソOZ1100)のTHF(樹脂濃度30重量%)8.0gを添加し、超音波をかけて溶解させ、濾過後、この塗工液を、バーコータ(No.18;江藤器械(株)製)でポリエチレンテレフタレート製フィルムに塗工し、乾燥することにより、近赤外線吸収フィルターを得た。
【0146】
【化30】
【0147】
この近赤外線吸収フィルターは、825nm、880nm、980nmでの透過率が20%以下であり、PDP本体からの発光を有効に遮蔽するものであった。
更に、耐熱性および耐湿熱性を評価するため、80℃の恒温槽および、60℃、湿度90%の恒温層に500時間入れて耐熱性及び耐湿熱性の試験を実施したところ、図7(耐熱性結果)、図8(耐湿熱性結果)と良好な耐熱性および耐湿熱性を示し、フィルターの色変化はなかった。
【0148】
このフィルターに、富士写真フィルム(株)製UVカットフィルター(SC−42)を装着し、キセノンロングライフフェードメーター(FAL−25AX−HCB−EC)(スガ試験機社製品)により、280時間照射し、照射前後の吸収強度を測定したところ、図9に示すように良好であり、フィルター色変化はなかった。
以下の表1〜3に、実施例4〜6の近赤外線吸収フィルター耐熱性、耐湿熱性、および耐光性試験前後(試験前に対する試験後)の825nm、880nm、980nmにおける透過率の変化を、図1〜9に試験前後の透過スペクトルを示す。
【0149】
【表1】
【0150】
【表2】
【0151】
【表3】
【0152】
実施例1〜6により、本発明の近赤外線吸収フィルターは耐熱性、耐湿熱性、および耐光性に優れていることが明らかである。
【0153】
実施例7
実施例4と同様の方法で調製したインク液を7日間室温で、放置し、その前後の透過スペクトルを測定したところスペクトル形状に変化はなかった。(図10)
実施例8
実施例5と同様の方法で調製したインク液を7日間室温で、放置し、その前後の透過スペクトルを測定したところスペクトル形状に変化はなかった。(図11)
実施例9
実施例6と同様の方法で調製したインク液を7日間室温で、放置し、その前後の透過スペクトルを測定したところスペクトル形状に変化はなかった。(図12)
以下の表4に、実施例7〜9のインク液を7日間室温で、放置する前後(放置前に対する放置後)の825nm、880nm、980nmにおける透過率の変化を示す。
【0154】
【表4】
【0155】
比較例1
下式に示す化合物(E)(0.0686g)、下式(D)に示す化合物(0.0740g)をトルエン1.6gに添加し、これらの中にアクリル系樹脂(オプトレッソOZ1100)のMEK/トルエン(=1/1)溶液(樹脂濃度25重量%)6.4を添加し、超音波をかけて溶解させ塗工液を調製した。
【0156】
【化31】
【0157】
この塗工液を室温で、7日間放置し、その前後の透過スペクトルを観察したところ、スペクトル形状に顕著な変化があり、この塗工液は、不安定であった。(図13)
比較例2
下式に示す化合物(F)(0.0686g)、下式(D)に示す化合物(0.0740g)をTHF2.0gに添加し、これらの中にアクリル系樹脂(オプトレッソOZ1100)のTHF溶液(樹脂濃度30重量%)8.0を添加し、超音波をかけて溶解させ塗工液を調製し、塗工液をろ過した。
【0158】
【化32】
【0159】
この塗工液を室温で、7日間放置し、その前後の透過スペクトルを観察したところ、スペクトル形状に顕著な変化があり、この塗工液は、不安定であった。(図14)
実施例7〜9と、比較例1および2とを対比することにより、本発明の近赤外線吸収フィルターは、他の近赤外線吸収色素と混合した場合に、従来のジチオレート系色素と対比して経時的なスペクトルの変化が非常に少なく、安定した近赤外線吸収フィルターであることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】実施例4における、耐熱性試験結果を示す図である。
【図2】実施例4における、耐湿熱性試験結果を示す図である。
【図3】実施例4における、耐光性試験結果を示す図である。
【図4】実施例5における、耐熱性試験結果を示す図である。
【図5】実施例5における、耐湿熱性試験結果を示す図である。
【図6】実施例5における、耐光性試験結果を示す図である。
【図7】実施例6における、耐熱性試験結果を示す図である。
【図8】実施例6における、耐湿熱性試験結果を示す図である。
【図9】実施例6における、耐光性試験結果を示す図である。
【図10】実施例7における透過スペクトルの形状変化を示す図である。
【図11】実施例8における透過スペクトルの形状変化を示す図である。
【図12】実施例9における透過スペクトルの形状変化を示す図である。
【図13】比較例1における透過スペクトルの形状変化を示す図である。
【図14】比較例2における透過スペクトルの形状変化を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は近赤外線吸収フィルター、特に可視光線領域の透過率が高く、近赤外線を有効に遮断する近赤外線吸収フィルターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、近赤外線吸収色素を含有した樹脂からなるプラスチック性近赤外線吸収フィルターはよく知られており、その用途としては、サングラス、溶接用眼鏡、ビルや自動車、電車、飛行機の窓、あるいは情報読み取りのための光学読み取り装置等が挙げられる。
また、最近では、大型薄型の壁掛けテレビとして注目されているプラズマディスプレイパネル(以下、「PDP」という)が、近赤外線を発生して、コードレスホン、近赤外線リモコンを使うビデオデッキ等、周辺にある電子機器に作用し誤動作を起こすことから、PDP用フィルターとしても800nm〜1100nmの近赤外線を吸収する赤外線吸収色素を含有したフィルターの要求がある。
【0003】
上述のような近赤外線吸収フィルターとしては、銅や鉄などの金属イオンを含有させたもの、ニトロソ化合物及びその金属錯塩、シアニン系化合物、スクアリリウム系化合物、ジチオール系金属錯体化合物、アミノチオフェノール系金属錯体化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、トリアリルメタン系化合物、インモニウム系化合物、ジインモニウム系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、アミノ化合物、アミニウム塩系化合物等の近赤外線吸収色素を含有させたものなど各種検討がなされているが、実際に用いられているものは、限定されたジチオール系金属錯体化合物、フタロシアニン化合物及びジインモニウム系化合物の一部にすぎない。
【0004】
特に、電子ディスプレイ用に用いるためには、耐熱性、耐光性に優れていること、溶媒に対する溶解性が高いこと、800〜1000nm付近に吸収極大をもちつつ、可視光領域に大きな吸収がないことが必須となる。特許文献1には、下記構造を持つ化合物が、近赤外色素としてPDPフィルターに用いられている。
【特許文献1】特開2003−262719号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のジチオール金属錯体は、他のニッケル金属錯体系近赤外色素と混合して、800−1000nmの吸収をカットしようとすると、配位子交換がおこり別の化合物が生成し、吸収極大がシフトすることが明らかとなった。すなわち、近赤外線吸収フィルターを設計する際に、所定の吸収特性を有する2種以上の近赤外線吸収色素を混合すると、極大吸収が変化してしまい、目的とする近赤外線吸収フィルターが得られないという問題がある。
【0006】
以上のことから、本発明においては、目的とする800−1000nm付近に吸収極大を有し、かつ、他の近赤外線吸収色素、特に、ニッケル金属錯体系近赤外色素と混合しても、配位子交換が起こらず吸収極大がシフトしない化合物群を設計、合成し、耐光性、耐熱性等に優れ、かつ、溶媒に対する溶解性を向上させた近赤外線吸収フィルター、特には電子ディスプレイ用近赤外線吸収フィルターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、一般式(1)で示されるジチオレート金属錯体中のアリール基のオルト位に立体的に嵩高い官能基を導入し、硫黄原子への分子間置換反応を阻止することで、配位子交換を抑えることができるジチオレート金属錯体群を見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は下記一般式(1)
【0008】
【化1】
【0009】
(一般式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立に1価の基である。
X1およびX6は炭素原子、酸素原子、窒素原子およびケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する1価の基である。
X2〜X5及びX7〜X10はそれぞれ独立に1価の基であって、隣り合う基が連結基を介
して結合してもよい。M1は金属原子を示す。)で表される化合物を少なくとも一種類以
上含有する層を有することを特徴とする近赤外線吸収フィルターに存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、他の金属錯体と混合しても配位子交換を起こさないジチオレート金属錯体と他の近赤外線吸収色素とを組み合わせることで、耐光性、耐熱性、耐湿熱性に優れ、かつ、750−1050nm付近の近赤外線領域を広範囲にカットする近赤外線吸収フィルターが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明するが、本発明の実施の形態は以下の形態に制限されるものではない。
1.一般式(1)で表される化合物;
前記一般式(1)において、R1及びR2はそれぞれ独立に1価の置換基である。
1価の置換基としては、水素原子、置換されていても良い炭化水素基、置換されていても良いカルボニル基、置換されていても良い炭化水素チオ基、置換されていても良いシリル基、置換されていても良い炭化水素アミノ基、置換されていても良い炭化水素オキシ基、シアノ基またはハロゲン原子が挙げられる。
【0012】
上記炭化水素基としては、1)脂肪族炭化水素基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、ネオペンチル基、2−エチルブチル基、イソプロピル基、2−ブチル基、シクロヘキシル基、3−ペンチル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルプロピル基等の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基;2−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2,4−ペンタジエニル基等のアルケニル基;エチニル基等のアルキニル基が挙げられる。このうち好ましくは炭素数10以下のアルキル基である。2)アリール基;フェニル基、ナフチル基、アントラニル基、フルオレニル基、フェナンスレニル基、アズレニル基、メタロセン環基などが挙げられる。このうち好ましくは炭素数12以下の単環又は縮合2環式アリール基である。更に好ましくは、炭素数12以下の単環かつアリール基のオルト位に置換基を有さないアリール基である。
3)複素環基;チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、インドールイル基、キノキサリニル基、アクリジニル基、チアゾリル基、ピラジニル基などがあげられる。このうち好ましくは、炭素数12以下の単環又は2環式5員環複素環基である。
【0013】
上記カルボニル基としては、アシル基(−COR)、カルバモイル基(−CONRR’)、アルコキシカルボニル基(−C(O)OR)、アリールオキシカルボニル基、複素環オキシカルボニル基があげられ、各々さらに具体的には、アシル基(−COR)のR、及び、カルバモイル基(−CONRR’)のR、R’は、先にあげた脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものがあげられ、アルコキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげた脂肪族炭化水素基の具体例と同様のものがあげられ、アリールオキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげたアリール基の具体例と同様のものがあげられ、複素環オキシカルボニル基(−C(O)OR)のRは、先にあげた複素環基の具体例と同様のものがあげられ、または、アルデヒド基があげられる。
【0014】
上記炭化水素チオ基としては、1)アルキルチオ基;n−プロピルチオ基、n−ブチルチオ基、2−メチルプロピルチオ基、2−メチルブチルチオ基、3−メチルブチルチオ基、シクロヘキシルメチルチオ基、ネオペンチルチオ基、2−エチルブチルチオ基、イソプロピルチオ基、2−ブチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、3−ペンチルチオ基、1,1−ジメチルプロピルチオ基等の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基などがあげられ、このうち好ましくは炭素数10以下のアルキルチオ基、特に好ましくは、炭素数10以下の分岐鎖のアルキルチオ基である。2)アルケニルチオ基;プロペニルチオ基、ビニルチオ基、イソプロペニルチオ基、スチリルチオ基などがあげられ、このうち好ましくは炭素数12以下のアルケニルチオ基である。3)アルキニルチオ基;エチニルチオ基、1−ペンテニルチオ基、フェネチニルチオ基、t−ブチルエチニル基などがあげられ、このうち好ましくは炭素数12以下のアルキニルチオ基である。4)アリールチオ基;フェニルチオ基、p−tert−ブチルフェニルチオ基、o−トリルチオ基、メシチルチオ基、キシリルチオ基、クメニルチオ基、ナフチルチオ基などがあげられ、好ましくは炭素数12以下の単環又は2員環からなるアリールチオ基である。5)複素環チオ基;チエニルチオ基、フリルチオ基、ピラゾリルチオ基、ピロリイルチオ基、イソオキサゾリルチオ基、ピリジルチオ基、インドールイルチオ基などがあげられ好ましくは炭素数10以下の5員環からなる複素環チオ基である。
【0015】
上記シリル基としては、トリメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、n−ブチルジメチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、トリイソプリピルシリル基などが挙げられ、好ましくは炭素数18以下のシリル基である。
上記炭化水素オキシ基(−OR)のRとしては、先にあげた脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものがあげられ、または、水酸基があげられる。
【0016】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素があげられるが、特に好ましくは、フッ素原子、塩素原子である。
これらの基のうち、置換基を有してもよい基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、アシル基、アミノアシル基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、イミド基及びシリル基などが挙げられる。
【0017】
具体的にはメチル基、エチル基などの炭素数1〜6程度のアルキル基;エチニル基、プロピレニル基などの炭素数1〜6程度のアルケニル基;アセチレニル基など炭素数1〜6程度のアルキニル基;フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜20程度のアリール基;チエニル基、フリル基、ピリジル基などの炭素数3〜20程度のヘテロアリール基;エトキシ基、プロポキシ基などの炭素数1〜6程度のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基などの炭素数6〜20程度のアリールオキシ基;ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基などのなどの炭素数3〜20程度のヘテロアリールオキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基などの炭素数1〜6程度のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基などの炭素数6〜20程度のアリールチオ基;ピリジルチオ基、チエニルチオ基などのなどの炭素数3〜20程度のヘテロアリールチオ基;ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの炭素数1〜20程度の置換基を有していても良いアミノ基;アセチル基、ピバロイル基などの炭素数2〜20程度のアシル基;アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基などの炭素数2〜20程度のアシルアミノ基;3−メチルウレイド基などの炭素数2〜20程度のウレイド基;メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基などの炭素数1〜20程度のスルホンアミド基;ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基などの炭素数1〜20程度のカルバモイル基;エチルスルファモイル基などの炭素数1〜20程度のスルファモイル基;ジメチルスルファモイルアミノ基などの炭素数1〜20程度のスルファモイルアミノ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭素数2〜6程度のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基などの炭素数7〜20程度のアリールオキシカルボニル基;ピリジルオキシカルボニル基などの炭素数6〜20程度のヘテロアリールオキシカルボニル基;メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、取りフルオロメタンスルホニル基などの炭素数1〜6程度のアルキルスルホニル基;ベンゼンスルホニル基、モノフルオロベンゼンスルホニル基などの炭素数6〜20程度のアリールスルホニル基;チエニルスルホニル基などの炭素数3〜20程度のヘテロアリールオキシスルホニル基;フタルイミドなどの炭素数4〜20程度のイミド基;又は、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で3置換されているシリル基などが挙げられる。
【0018】
R1およびR2として特に好ましくは、総炭素数10以下の、置換基を有しても良いアルキル基又はハロアルキル基、総炭素数10以下の、置換基を有しても良いアルキルチオ基、総炭素数12以下の、置換基を有しても良い単環アリール基、総炭素数12以下置換基を有しても良い単環アリールチオ基、総炭素数10以下の、置換基を有していても良い5員環複素環基、シアノ基、フッ素原子、塩素原子、もしくは水素原子である。
【0019】
X1およびX6は炭素原子、酸素原子、窒素原子およびケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する1価の基である。
X1およびX6としては、炭素原子、酸素原子、窒素原子およびケイ素原子のうち少なくとも1種類の原子が鎖状に3以上連結した基が好ましい。ここで、鎖状に3以上連結した基とは、ベンゼン環に結合した原子から数えて3以上の原子を含む鎖状の基、またはベンゼン環に結合した原子を含めて4以上の原子を含む環状の基を意味する。
【0020】
このような基としては、例えば脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基、オキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、置換基を有するアミノ基、および置換基を有するシリル基等が挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基としては、n−プロピル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、2−ブチル基、3−ペンチル基、ネオペンチル基、2−メチルブチル基、2−エチルブチル基、3−メチルブチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基等の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素基、より好ましくは、炭素数3〜10程度の直鎖状、分岐鎖状脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0021】
上記アリール基としては、フェニル基、p−トリル基、ベンジル基、フェニルエチル基、3,4−キシリル基、2−エチルフェニル基、3,4,5−トリメチルフェニル基、2,4,6−トリメチルフェニル基等のアリール基、より好ましくは、炭素数6〜12程度の単環式アリール基が挙げられる。
上記複素環基としては、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、インドールイル基などの複素環基、より好ましくは、炭素数5〜10程度の単環式複素環基が挙げられる。
【0022】
上記脂肪族炭化水素オキシ基としては、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、イソプロポキシ基、シクロヘキシルオキシ基、2−ブトキシ基、アミルオキシ基、t−ブトキシ基等の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状の脂肪族炭化水素オキシ基、より好ましくは、炭素数2〜10程度の直鎖状、分岐鎖状脂肪族炭化水素オキシ基が挙げられる。
【0023】
上記アリールオキシ基としては、(−OR)のRが先にあげたアリール基の具体例と同様のものがあげられる。
上記複素環オキシ基としては、(−OR)のRが先にあげた複素環基の具体例と同様のものがあげられる。
上記置換基を有するアミノ基としては、(−NRR’)のR、R’が先にあげた脂肪族炭化水素基、アリール基、複素環基の具体例と同様のものがあげられる。
【0024】
上記置換基を有するシリル基としては、トリエチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、n−ブチルジメチルシリル基、ジメチルエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチルイソプロピルシリル基、トリイソプリピルシリル基などのシリル基が挙げられ、好ましくは炭素数2〜18程度のシリル基があげられる。
これらの中でも特に好ましくは、総炭素数3〜10程度の置換基を有していても良いアルキル基、又は、総炭素数6〜12程度の置換基を有しても良い単環アリール基、又は、総炭素数2〜10程度の置換基を有しても良いアルコキシ基、総炭素数6〜12程度の置換基を有しても良いアリールオキシ基である。
【0025】
X2〜X5及びX7〜X10はそれぞれ独立に1価の基であり、隣り合う基が連結基を介して結合してもよい。
該1価の基としては、金属錯体の安定性に悪影響を及ぼさない基であれば特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、アシル基、アミノアシル基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、イミド基及びシリル基などが挙げられる。
【0026】
具体的にはメチル基、エチル基などの炭素数1〜6程度のアルキル基;エチニル基、プロピレニル基などの炭素数1〜6程度のアルケニル基;アセチレニル基など炭素数1〜6程度のアルキニル基;フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜20程度のアリール基;チエニル基、フリル基、ピリジル基などの炭素数3〜20程度のヘテロアリール基;エトキシ基、プロポキシ基などの炭素数1〜6程度のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基などの炭素数6〜20程度のアリールオキシ基;ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基などのなどの炭素数3〜20程度のヘテロアリールオキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基などの炭素数1〜6程度のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基などの炭素数6〜20程度のアリールチオ基;ピリジルチオ基、チエニルチオ基などのなどの炭素数3〜20程度のヘテロアリールチオ基;ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの炭素数1〜20程度の置換基を有していても良いアミノ基;アセチル基、ピバロイル基などの炭素数2〜20程度のアシル基;アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基などの炭素数2〜20程度のアシルアミノ基;3−メチルウレイド基などの炭素数2〜20程度のウレイド基;メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基などの炭素数1〜20程度のスルホンアミド基;ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基などの炭素数1〜20程度のカルバモイル基;エチルスルファモイル基などの炭素数1〜20程度のスルファモイル基;ジメチルスルファモイルアミノ基などの炭素数1〜20程度のスルファモイルアミノ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭素数2〜6程度のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基などの炭素数7〜20程度のアリールオキシカルボニル基;ピリジルオキシカルボニル基などの炭素数6〜20程度のヘテロアリールオキシカルボニル基;メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、取りフルオロメタンスルホニル基などの炭素数1〜6程度のアルキルスルホニル基;ベンゼンスルホニル基、モノフルオロベンゼンスルホニル基などの炭素数6〜20程度のアリールスルホニル基;チエニルスルホニル基などの炭素数3〜20程度のヘテロアリールオキシスルホニル基;フタルイミドなどの炭素数4〜20程度のイミド基;又は、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で3置換されているシリル基などが挙げられる。
【0027】
隣り合う基が連結基を介して結合した結果形成される基としては、−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−、CH2−CH2−CH2−CH2−、−CH(Ph)−CH2−、−CH(Me)−CH2−等で置換されていても良いアルキレン基;−CH=CH−、−C(Me)=CH−、−CH=CH−CH2−CH2−CH=CH−等の、置換されていても良いアルケニレン基;−CH2−S−CH2−、−CH2−O−CH2−、−CH2−C(=O)−CH2−、−CH2−CH2−S−CH2−CH2−、−CH2−CH2−O−CH2−CH2−等が好ましく挙げられる。
【0028】
これらの中でも、X2および/またはX4、ならびにX7および/またはX10が、炭素原子、酸素原子、窒素原子、およびケイ素原子のうち少なくとも1種類以上の原子を合計2以上有する基であるのが好ましい。
これらは、ベンゼン環上を立体的にかさ高くすることで、配位子交換反応を起こりにくくすると同時に、有機溶媒への溶解性を向上させることを可能にする基である。
【0029】
なかでも該原子を合計3以上有する基であるのがより好ましい。具体的には、X1およびX6であげた基が挙げられる。
特に好ましくは、総炭素数2〜10程度の置換基を有していても良いアルキル基、又は、総炭素数10以下の置換基を有しても良いアルコキシ基である。
上記X3及びX8として特に好ましくは、総炭素数10以下の置換基を有しても良いアルキル基、又は、ハロアルキル基、総炭素数10以下の置換基を有しても良いアルキルチオ基、又は、総炭素数12以下置換基を有しても良い単環アリール基、又は、総炭素数12以下置換基を有しても良い単環アリールチオ基、又は、総炭素数10以下の置換基を有していても良い5員環複素環基、又は、シアノ基、又は、フッ素原子、又は、塩素原子、又は、水素原子である。
【0030】
X1〜X10の中で、置換基を有してもよい基の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロアリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロアリールチオ基、アミノ基、アシル基、アミノアシル基、ウレイド基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、スルファモイルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、ヘテロアリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基、イミド基及びシリル基などが挙げられる。
【0031】
具体的にはメチル基、エチル基などの炭素数1〜6程度のアルキル基;エチニル基、プロピレニル基などの炭素数1〜6程度のアルケニル基;アセチレニル基など炭素数1〜6程度のアルキニル基;フェニル基、ナフチル基などの炭素数6〜20程度のアリール基;チエニル基、フリル基、ピリジル基などの炭素数3〜20程度のヘテロアリール基;エトキシ基、プロポキシ基などの炭素数1〜6程度のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基などの炭素数6〜20程度のアリールオキシ基;ピリジルオキシ基、チエニルオキシ基などのなどの炭素数3〜20程度のヘテロアリールオキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基などの炭素数1〜6程度のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基などの炭素数6〜20程度のアリールチオ基;ピリジルチオ基、チエニルチオ基などのなどの炭素数3〜20程度のヘテロアリールチオ基;ジメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などの炭素数1〜20程度の置換基を有していても良いアミノ基;アセチル基、ピバロイル基などの炭素数2〜20程度のアシル基;アセチルアミノ基、プロピオニルアミノ基などの炭素数2〜20程度のアシルアミノ基;3−メチルウレイド基などの炭素数2〜20程度のウレイド基;メタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基などの炭素数1〜20程度のスルホンアミド基;ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基などの炭素数1〜20程度のカルバモイル基;エチルスルファモイル基などの炭素数1〜20程度のスルファモイル基;ジメチルスルファモイルアミノ基などの炭素数1〜20程度のスルファモイルアミノ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭素数2〜6程度のアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル基、ナフトキシカルボニル基などの炭素数7〜20程度のアリールオキシカルボニル基;ピリジルオキシカルボニル基などの炭素数6〜20程度のヘテロアリールオキシカルボニル基;メタンスルホニル基、エタンスルホニル基、取りフルオロメタンスルホニル基などの炭素数1〜6程度のアルキルスルホニル基;ベンゼンスルホニル基、モノフルオロベンゼンスルホニル基などの炭素数6〜20程度のアリールスルホニル基;チエニルスルホニル基などの炭素数3〜20程度のヘテロアリールオキシスルホニル基;フタルイミドなどの炭素数4〜20程度のイミド基;又は、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で3置換されているシリル基などが挙げられる。
【0032】
また、上記一般式(1)で表される化合物において、R1及びR2、X2〜X5及びX7〜X10のうち、特には、それぞれ同一でも異なっていても良いが、同一である方がより好ましい。
M1は、4配位の形態をとりうる金属原子であれば特に限定されないが、好ましくはNi、Pd又はPtの10族金属原子;Co;Fe;Cu;Au;Cr又はMnが挙げられ、より好ましくは10族金属原子であり、特に好ましくはNi又はPdである。
【0033】
ここで、上記一般式(1)の、リガンド部分の分子量は通常1000以下、好ましくは600以下である。また、モル吸光係数は、通常8000以上、好ましくは10000以上の物である。
加えて、上記一般式(1)で表される化合物のトルエン等芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒から選ばれる溶媒に対する溶解度としては、通常0.1%以上、好ましくは0.5%以上である。
【0034】
本発明の近赤外線吸収フィルターに用いられる化合物の好ましい具体例としては、例えば、以下に例示されるものが挙げられる。ただし、以下の化合物に限定されるものではない。
【0035】
【化2】
【0036】
【化3】
【0037】
【化4】
【0038】
【化5】
【0039】
【化6】
【0040】
このような一般式(1)で表される化合物は、例えば、Mol. Cryst. Liq. Crst.(Lett), 56巻、249頁(1980年)記載の公知の方法などで1,3−ジチオール−2−オン誘導体を得た後、含金属化し、対称型金属錯体を得ることができる。また、その吸収極大波長が750nm〜980nm程度のものである。
2.一般式(2)〜(9)で表される近赤外線吸収化合物)
本発明の近赤外線吸収フィルターには、さらに下記一般式(2)〜(9)で表される化合物からなる群より選ばれる化合物を少なくとも1種類以上含有することにより、750〜1050nmの範囲の近赤外線領域を幅広く吸収できるため、特に電子ディスプレイ用フィルターに用いる場合には好ましい。
【0041】
特に(5)、(6)および(8)の色素と混合するときに従来の色素に対して配位子交換しづらいので好ましい。
【0042】
【化7】
【0043】
【化8】
【0044】
前記一般式(2)において、A及びA’は、それぞれ独立して、置換基を有していても良いアリール基又は置換基を有していても良いヘテロアリール基を示す。
R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いアリール基又は置換基を有していても良いヘテロアリール基を示す。ここで、R5とR6は、互いに直接的に又は連結基を介して結ばれていても良い。M2は、M1で記載したのと同様の金属を用いることができる。
【0045】
上記A及びA’のアリール基及びヘテロアリール基を構成する骨格としては、好ましくは6員の単環又はその縮合環であり、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基又はフルオレニル基等のアリール基;又は、チエニル基、フリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラジニル基又はピラゾリル基等のヘテロアリール基が挙げられる。このうち好ましくは、アリール基、より好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環のような単環又は2員環式アリール基である。
【0046】
上記A及びA’のアリール基及びヘテロアリール基の置換基としては、先のX3及びX8の置換基としてあげたものと同様の置換基が挙げられるが、中でも好ましくは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していても良いヘテロアリール基、置換基を有していても良いアルコキシ基、置換基を有していても良いアリールオキシ基又は置換基を有していても良いアミノ基があげられる。より具体的には、塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;メチル基、エチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、トリフルオロメチル基などのハロゲン原子又はアリール基置換されていても良い炭素数1〜10のアルキル基;フェニル基、トリル基等の炭素数6〜10のアリール基;ピリジル基、チエニル基等の炭素数4〜8のヘテロアリール基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシ基;フェノキシ基、メチルフェノキシ基などの炭素数6〜10のアリールオキシ基;または、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基などのアルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良いアミノ基が挙げられる。
【0047】
また、A及びA’上の隣り合う2個の置換基が一体となって、−(CH2)3−又は−(CH2)4−等の炭素数2〜5程度のアルキレン基、−OCH2O−又は−O(CH2)2O−等の炭素数1〜4程度のアルキレンジオキシ基等を形成していても良い。
上記R5とR6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、ネオペンチル基、2−エチルブチル基、イソプロピル基、2−ブチル基、シクロヘキシル基、3−ペンチル基、1,1−ジメチルプロピル基等の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基が挙げられる。このうち好ましくは炭素数10以下の1級又は2級アルキル基、特に好ましくは炭素数10以下の1級アルキル基である。
上記R5とR6のアルキル基の置換基としては、先のX3及びX8の置換基としてあげたものと同様の置換基が挙げられるが、特に好ましくは,無置換、ハロゲン原子(特に好ましくはフッ素原子)、シアノ基、アルコキシ基及びアリール基である。
上記R5とR6のアリール基及びヘテロアリール基としてはフェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基又はフルオレニル基、チエニル基、フリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラジニル基又はピラゾリル基等の5員又は6員単環若しくはそれらの縮合環が挙げられる。このうち好ましくは、置換基を有していても良いアリール基、より好ましくは、置換基を有していても良いフェニル基である。
【0048】
【化9】
【0049】
さらに、置換基を有しても良いフェニル基のうち、特に好ましくは、上記R5及びR6が結合している窒素原子と結合する炭素原子に隣接する炭素原子が、置換基R43及びR44を有する場合である。R43及びR44は、1価の置換基を示す。上記R43及びR44としては、色素の安定性に悪影響を与えない基であれば特に限定されないが、より好ましくは、置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアルコキシ基、置換基を有しても良いアリール基、置換基を有しても良いアリールオキシ基、置換基を有しても良い複素環基、置換基を有しても良い複素環オキシ基、置換されていても良いアルキルチオ基、置換されていても良いアリールチオ基及び置換されていても良い複素環チオ基からなる群より選ばれる置換基のように立体障害性の高い基であるか、または、Hammettの置換基定数smが0.00<sm<0.90となるような電子吸引性基が挙げられる。
上記電子吸引性基としては、例えば、J.Med.Chem.,16,1207(1973)やJ.Med.Chem.,20,304(1977)に記載されているようなものが挙げられるが、より具体的には、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、ハロアリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ハロアルキルスルホニル基、ハロアリールスルホニル基等が挙げられる。
【0050】
R5及びR6が芳香環の場合、芳香環上の置換基同士は、隣り合う2個の置換基が一体となって、−(CH2)3−又は−(CH2)4−等の炭素数2〜5程度のアルキレン基、−OCH2O−又は−O(CH2)2O−等の炭素数1〜4程度のアルキレンジオキシ基等を形成していても良い。
Xは、15族原子を表し、特に好ましくは、窒素原子、または、リン原子である。R’、R''、R''’、R''''は、それぞれ独立に、置換されていても良いアルキル基又は置換されていてもよいアリール基であり、上記アルキル基及びアリール基の置換基としては、X3及びX8の置換基としてあげたものと同様の置換基が挙げられる。R’、R''、R''’、R''''として、中でも好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基などのハロアルキル基;フェニル基;ベンジル基などの、フェネチル基などのアラルキル基があげられる。
好ましくは、塩を形成しているものより、塩を形成していないものの方がよい。
【0051】
一般式(2)で表される色素の好ましい具体例としては、下記構造式で表される化合物が上げられる。
【0052】
【化10】
【0053】
【化11】
【0054】
【化12】
【0055】
前記一般式(3)において、B及びB’は、それぞれ独立して、置換基を有していても良いアリール基又は置換基を有していても良いヘテロアリール基を示す。
R7及びR8は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いアリール基又は置換基を有していても良いヘテロアリール基を示す。ここで、R7とR8は、互いに直接的に又は連結基を介して結ばれていても良い。M3は、M1で記載したのと同様の金属を用いることができる。
【0056】
上記B及びB’のアリール基及びヘテロアリール基を構成する骨格としては、好ましくは6員の単環又はその縮合環であり、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基又はフルオレニル基等のアリール基;又は、チエニル基、フリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラジニル基又はピラゾリル基等のヘテロアリール基が挙げられる。このうち好ましくは、アリール基、より好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環のようなアリール基である。
【0057】
上記B及びB’のアリール基及びヘテロアリール基の置換基としては、先のX3及びX8の置換基としてあげたものと同様の置換基が挙げられるが、中でも好ましくは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していても良いヘテロアリール基、置換基を有していても良いアルコキシ基、置換基を有していても良いアリールオキシ基又は置換基を有していても良いアミノ基があげられる。より具体的には、塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;メチル基、エチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、トリフルオロメチル基などのハロゲン原子又はアリール基置換されていても良い炭素数1〜10のアルキル基;フェニル基、トリル基等の炭素数6〜10のアリール基;ピリジル基、チエニル基等の炭素数4〜8のヘテロアリール基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシ基;フェノキシ基、メチルフェノキシ基などの炭素数6〜10のアリールオキシ基;または、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基などのアルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良いアミノ基が挙げられる。
【0058】
また、B及びB’上の隣り合う2個の置換基が一体となって、−(CH2)3−又は−(CH2)4−等の炭素数2〜5程度のアルキレン基、−OCH2O−又は−O(CH2)2O
−等の炭素数1〜4程度のアルキレンジオキシ基等を形成していても良い。
上記R7及びR8のアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基としては、先のR5及びR6のアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基であげたものと同様のものがあげられる。上記R7及びR8のアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基の置換基としては、先のX3及びX8の置換基としてあげたものと同様の置換基があげられるが、特に好ましくは、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、アルコキシ基、アリール基及びアリールオキシ基である。
【0059】
R7及びR8は、直接、あるいは、連結基を介して互いに結ばれていても良いが、特に下図のような場合が好ましい。
【0060】
【化13】
【0061】
R45〜R54として好ましい具体例としては、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;水酸基;ニトロ基;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、ベンジル基、フェネチル基などのハロゲン原子又はアリール基置換されていても良い炭素数1〜10のアルキル基;フェニル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシ基;フェノキシ基、メチルフェノキシ基などのアルキル基で置換されていても良い炭素数6〜10のアリールオキシ基が挙げられる。R45〜R54の隣り合う2個の置換基が一体となって、−(CH2)3−又は−(CH2)4−等の炭素数2〜5程度のアルキレン基、−OCH2O−又は−O(CH2)2O−等の炭素数1〜4程度のアルキレンジオキシ基等を形成していても良い。
【0062】
このうち好ましくは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、ハロアルキル基、ハロアルコキシ基、ハロアリールオキシ基等の電子吸引性基、もしくは、水素原子が挙げられ、R45〜R54の中で、少なくともひとつは水素原子でないものである。さらにはR45〜R54の少なくとも1つがフッ素原子、塩素原子またはシアノ基であり、残りは水素原子であるのが好ましい。
【0063】
Xは、15族原子を表し、特に好ましくは、窒素原子、または、リン原子である。R’、R''、R''’、R''''は、それぞれ独立に、置換されていても良いアルキル基又は置換されていてもよいアリール基であり、上記アルキル基及びアリール基の置換基としては、X3及びX8の置換基としてあげたものと同様の置換基が挙げられる。R’、R''、R''’、R''''として、中でも好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基などのハロアルキル基;フェニル基;ベンジル基などの、フェネチル基などのアラルキル基があげられる。
【0064】
好ましくは、塩を形成しているものより、塩を形成していないものの方がよい。
前記一般式(3)で表される色素の好ましい具体例として、下記構造式で表される物が挙げられる。
【0065】
【化14】
【0066】
【化15】
【0067】
前記一般式(4)において、C及びC’は、それぞれ独立して、置換基を有していても良いアリール基又は置換基を有していても良いヘテロアリール基を示す。
R3、R4、R9及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していても良いアリール基又は置換基を有していても良いヘテロアリール基を示す。ここで、R3とR4、及び、R9とR10は、互いに直接的に又は連結基を介して結ばれていても良い。M4は、M1で記載したのと同様の金属を用いることができる。
【0068】
上記C及びC’のアリール基及びヘテロアリール基を構成する骨格としては、6員の単環又はその縮合環であり、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基又はフルオレニル基等のアリール基;又は、チエニル基、フリル基、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラジニル基又はピラゾリル基等のヘテロアリール基が挙げられる。このうち好ましくは、アリール基、より好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環のようなアリール基である。
【0069】
上記C及びC’のアリール基及びヘテロアリール基の置換基としては、先のX3及びX8の置換基としてあげたものと同様の置換基が挙げられるが、中でも好ましくは、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していても良いヘテロアリール基、置換基を有していても良いアルコキシ基、置換基を有していても良いアリールオキシ基又は置換基を有していても良いアミノ基があげられる。より具体的には、塩素原子、フッ素原子などのハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;メチル基、エチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、トリフルオロメチル基などのハロゲン原子又はアリール基置換されていても良い炭素数1〜10のアルキル基;フェニル基、トリル基等の炭素数6〜10のアリール基;ピリジル基、チエニル基等の炭素数4〜8のヘテロアリール基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシ基;フェノキシ基、メチルフェノキシ基などの炭素数6〜10のアリールオキシ基;または、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基などのアルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良いアミノ基が挙げられる。
【0070】
また、C及びC’上の隣り合う2個の置換基が一体となって、−(CH2)3−又は−(CH2)4−等の炭素数2〜5程度のアルキレン基、−OCH2O−又は−O(CH2)2O−等の炭素数1〜4程度のアルキレンジオキシ基等を形成していても良い。
上記R3、R4、R9及びR10のアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基としては
、先のX3及びX8のアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基であげたものと同様のものがあげられる。上記R3、R4、R9及びR10のアルキル基、アリール基又はヘテロアリール基の置換基としては、先のX3及びX8の置換基としてあげたものと同様の置換基があげられるが、特に好ましくは、ハロゲン原子、アルキル基、ニトロ基、アルコキシ基、アリール基及びアリールオキシ基である。
【0071】
また、式(4)は、塩型を形成してもよく、Xは、15族原子を表し、特に好ましくは、窒素原子、または、リン原子である。R’、R''、R''’、R''''は、それぞれ独立に、置換されていても良いアルキル基又は置換されていてもよいアリール基であり、上記アルキル基及びアリール基の置換基としては、X3及びX8の置換基としてあげたものと同様の置換基が挙げられる。R’、R''、R''’、R''''として、中でも好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基などのハロアルキル基;フェニル基;ベンジル基などの、フェネチル基などのアラルキル基があげられる。
【0072】
好ましくは、塩を形成しているものより、塩を形成していないものの方がよい。
前記一般式(4)で表される色素の好ましい具体例として、下記構造式で表される物が挙げられる。
【0073】
【化16】
【0074】
前記一般式(5)において、D及びD’は、それぞれ独立して、置換基を有していても良いアリール基を示す。
M5は、M1で記載したのと同様の金属を用いることができる。
上記D及びD’のアリール基を構成する骨格としては、好ましくは6員の単環又はその縮合環であり、具体的には、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ピレニル基が挙げられる。より好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環のようなアリール基である。
【0075】
上記D及びD’のアリール基の置換基としては、先のX3及びX8の置換基としてあげたものと同様の置換基が挙げられるが、中でも好ましくは、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有していても良いアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していても良いヘテロアリール基、置換基を有していても良いアルコキシ基、置換基を有していても良いアリールオキシ基又は置換基を有していても良いアミノ基があげられる。より具体的には、塩素原子、臭素原子、フッ素原子などのハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;メチル基、エチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、トリフルオロメチル基などのハロゲン原子又はアリール基置換されていても良い炭素数1〜10のアルキル基;フェニル基、トリル基等の炭素数6〜10のアリール基;ピリジル基、チエニル基等の炭素数4〜8のヘテロアリール基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシ基;フェノキシ基、メチルフェノキシ基などの炭素数6〜10のアリールオキシ基;または、アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、メチルフェニルアミノ基などのアルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基で置換されていても良いアミノ基が挙げられる。
【0076】
また、D及びD’上の隣り合う2個の置換基が一体となって、−(CH2)3−又は−(CH2)4−等の炭素数2〜5程度のアルキレン基、−OCH2O−又は−O(CH2)2O−等の炭素数1〜4程度のアルキレンジオキシ基等を形成していても良い。
また、式(5)は、塩型を形成してもよく、Xは、15族原子を表し、特に好ましくは、窒素原子、または、リン原子である。R’、R''、R''’、R''''は、それぞれ独立に、置換されていても良いアルキル基又は置換されていてもよいアリール基であり、上記アルキル基及びアリール基の置換基としては、X3及びX8の置換基としてあげたものと同様の置換基が挙げられる。R’、R''、R''’、R''''として、中でも好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基などのハロアルキル基;フェニル基;ベンジル基などの、フェネチル基などのアラルキル基があげられる。
【0077】
一般式(5)は、塩を形成しているものも塩を形成していないものも好ましい。
一般式(5)で表される色素の好ましい具体例として、下記構造式で表される物が挙げられる。
【0078】
【化17】
【0079】
前記一般式(6)において、R11〜R14は、それぞれ独立して、水素原子、シアノ基、置換されていても良いカルボニル基、置換されていても良いアルキル基、置換されていても良いアリール基、又は、置換されていてもよいヘテロアリール基である。特に好ましくは、水素原子、置換されていても良いアリール基である。M6は、上記M1で記載したのと同様の金属を用いることができる。
【0080】
上記アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基及びカルボニル基の置換基としては、上記X3及びX8で記載したのと同様の基が挙げられる。
また、上記R11〜R14の脂肪族炭化水素基及びアリール基及びヘテロアリール基の置換基が、一体となって、−(CH2)3−又は−(CH2)4−等の炭素数2〜5程度のアルキレン基、−OCH2O−又は−O(CH2)2O−等の炭素数1〜4程度のアルキレンジオキシ基等を形成していても良い。
【0081】
また、式(6)は、塩型を形成してもよく、Xは、15族原子を表し、特に好ましくは、窒素原子、または、リン原子である。R’、R''、R''’、R''''は、それぞれ独立に、置換されていても良いアルキル基又は置換されていてもよいアリール基であり、上記アルキル基及びアリール基の置換基としては、X3及びX8の置換基としてあげたものと同様の置換基が挙げられる。R’、R''、R''’、R''''として、中でも好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基などのハロアルキル基;フェニル基;ベンジル基などの、フェネチル基などのアラルキル基があげられる。
【0082】
一般式(6)は、塩を形成しているものも塩を形成していないものも好ましい。
一般式(6)で表される色素の好ましい具体例としては、下記構造式で表される化合物が挙げられる。
【0083】
【化18】
【0084】
一般式(7)において、R15〜R30は、任意の置換基を表し、本発明の化合物の基本的性能を損なわない限り特に制限は無いが、例えば、R15〜R30の置換基としてあげたものと同様の基があげられる。
上記一般式(7)におけるM7は、フタロシアニン骨格と錯体を形成出来る元素であれ
ば、特に限定されないが、好ましくは銅原子、バナジウムオキシ基又は塩化スズ基が挙げられる。
【0085】
上記一般式(7)で表される化合物のうち、好ましい具体例としては、特開平10−78509号公報、特開平11−116826号公報、特開平11−65463号公報及び特開2000−26748号公報に記載されているものが挙げられ、中でも、下記に記載したような含フッ素フタロシアニン系化合物が好ましい。
【0086】
【化19】
【0087】
【化20】
【0088】
前記一般式(8)において、R31とR32、及び、R33とR34は、それぞれ独立して、置換されていても良い脂肪族炭化水素基又は置換されていても良いアリール基又は、置換されていても良いヘテロアリール基を示す。M8は、M1で記載したものと同様の金属を用いることができる。上記R31〜R34の脂肪族炭化水素基、アリール基、ヘテロアリール基としては、X3及びX8であげたものと同様のものがあげられるが、より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、2−メチルプロピル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、ネオペンチル基、2−エチルブチル基、イソプロピル基、2−ブチル基、シクロヘキシル基、3−ペンチル基、tert−ブチル基、1,1−ジメチルプロピル基等の直鎖状、分岐鎖状若しくは環状のアルキル基;2−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、2,4−ペンタジエニル基等のアルケニル基;エチニル基等のアルキニル基が挙げられる。このうち好ましくは炭素数10以下の1級又は2級アルキル基である。上記アリール基としては、フェニル基又はナフチル基などが挙げられる。上記へテロアリール基としては、チエニル基、フリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基などがあげられる。
該R31〜R34の脂肪族炭化水素基及びアリール基及びヘテロアリール基の置換基としては、X3及びX8であげたものと同様のものがあげられる。
【0089】
また、上記R31とR32、及び、R33とR34が一体となって−CH2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−、−CH2−CF2−CH2−、−CH2−CH2−CH2−CH2−、−CH(Ph)−CH2−、−CH(Me)−CH2−等の置換されていても良いアルキレン基;−CH=CH−、−C(Me)=CH−、−CH=CH−CH2−CH2−CH=CH−等の置換されていても良いアルケニレン基;−CH2−S−CH2−、−CH2−O−CH2−、−CH2−C(=O)−CH2−、−CH2−CH2−S−CH2−CH2−、−CH2−CH2−O−CH2−CH2−等の連結基を含有するアルキレン基等を形成していても良い。
【0090】
上記R31及びR32、R33及びR34として好ましくは無置換のアルキル基、または、置換基を有していても良いアルキル基、特に好ましくは無置換のアルキル基、ハロゲン原子(特に好ましくはフッ素原子)、シアノ基、アルキル基及びアリール基からなる群より選ばれる置換基を有していても良いアルキル基である。
また、式(8)は、塩型を形成してもよく、Xは、15族原子を表し、特に好ましくは、窒素原子、または、リン原子である。R’、R''、R''’、R''''は、それぞれ独立に、置換されていても良いアルキル基又は置換されていてもよいアリール基であり、上記アルキル基及びアリール基の置換基としては、X3及びX8の置換基としてあげたものと同様の置換基が挙げられる。R’、R''、R''’、R''''として、中でも好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、i−プロピル基、i−ブチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基などのアルキル基;トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基などのハロアルキル基;フェニル基;ベンジル基などの、フェネチル基などのアラルキル基があげられる。
【0091】
一般式(8)は、塩を形成していないものの方が塩を形成しているものより好ましい。一般式(8)で表される色素の好ましい具体例として、下記で表されるものがあげられる。
【0092】
【化21】
【0093】
【化22】
【0094】
【化23】
【0095】
【化24】
【0096】
一般式(9)において、R35〜R42は、それぞれ独立に置換基を有しても良いアルキル基、置換基を有しても良いアリール基又は置換基を有しても良いヘテロアリール基を示し、ここで、R35〜R42は隣り合う2つの置換基同士が連結基を介して結合で結ばれていても良い。R35〜R42の置換基として、具体的には、一般式(1)のX3及びX8の説明で述べたものと同様の基が選ばれる。
【0097】
また、R35〜R42は隣り合う2個の置換基が一体となって、−(CH2)3−又は−(CH2)4−等の炭素数2〜5程度のアルキレン基、−OCH2O−又は−O(CH2)2O−等の炭素数1〜4程度のアルキレンジオキシ基等を形成していても良い。
Xは陰イオンを示し、具体的には、フッ素アニオン、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、過塩素酸アニオン、6フッ化アンチモン酸イオン、硝酸アニオン、ヘキサフルオロフォスフェイトアニオン、テトラフルオロボレートアニオンで表される1価の陰イオンを示す。
【0098】
上記一般式(9)で表される化合物のうち、好ましい具体例としては、特開平10−18092号公報、特開平11−170700号公報、特開2000−80071号公報、特開2000−81511号公報及び特開2001−174626号公報に記載されているものが挙げられ、中でも、日本化薬社製「kayasorb IRG022」及び「kayasorb IRG023」として市販されているような色素、並びに、日本カーリット社製「CIR1080」、「CIR1081」、「CIR1083」及び「CIR1085」として市販されているような色素が好ましい。
【0099】
ここで、上記一般式(2)〜(6)、(8)で表される化合物は、リガンド部分の分子量が通常800以下、好ましくは500以下の物である。
また、上記一般式(2)〜(6)、(8)で表される化合物のモル吸光係数は、通常通常5000以上、好ましくは8000以上の物である。
一般式(7)に記載のフタロシアニン化合物としては、分子量900〜3000、好ましくは、1000〜2500のものである。
【0100】
また、上記一般式(7)で表される化合物のモル吸光係数は、通常通常5000以上、好ましくは8000以上の物である。
一般式(9)に記載のジインモニウム化合物としては、分子量600〜3000、好ましくは、900〜2100のものである。
また、上記一般式(9)で表される化合物のモル吸光係数は、通常70000以上、好ましくは90000以上の物である。
【0101】
加えて、上記一般式(2)〜(9)で表される化合物のトルエン等芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒から選ばれる溶媒に対する溶解度としては、通常0.1%以上、好ましくは0.5%以上である。
尚、上記化合物(2)は、例えば、Russ. J. Gen. Chem., 66巻、1842頁(1996年)に記載の方法で合成でき、上記化合物(3)は、例えば、特開2001−89492号公報に記載の方法で合成でき、化合物(4)は例えば、J.Am.Chem.Soc.,88卷、5201頁(1966年)により合成でき、化合物(5)は、例えば、J.Am.Chem.Soc.,88卷、43頁及び4870頁(1966年)に記載の方法で合成でき、化合物(6)は、例えば、J.Am.Chem.Soc.,87卷、1483頁(1965年)に記載の方法で合成でき、化合物(7)は、例えば、The Porphyrin Handbook(2003)に記載の方法で合成でき、化合物(8)は、例えば、J.Mater.Chem.,1861頁(1994)に記載の合成方法で合成でき、化合物(9)は、例えば、特開昭61−246391号公報に記載の方法で合成できる。
【0102】
(近赤外線吸収フィルター)
本願の近赤外線吸収フィルターは、上記一般式(1)で表される化合物を用いることにより、800〜980nm付近に極大吸収を有し、さらに、上記(2)〜(11)で表される化合物と組み合わせて用いることにより、750〜1050nmの波長域をカバーする近赤外線吸収フィルターを効率的に得ることができる。
【0103】
加えて、プラズマディスプレイパネルにおいては、820〜825nm、880nm、980nm近辺の近赤外線発光が特に強いため、この部分の光線透過率が15%以下とするのが好ましい。
また、可視光透過率が、特には400〜450nmにおける平均透過率が45%以上であり、加えて、550〜600nmにおける透過率が60%以上、好ましくは70%以上であるため、車窓ガラスに用いた場合の景色の色再現性(明るさ)やディスプレイの画面の明るさ等を確保することもできるものである。
【0104】
本発明の近赤外線吸収フィルターは、耐熱性も優れたものであり、80℃の恒温槽での500時間耐熱試験後に可視光領域に新たなピークが出ることもない。
本願フィルターとして好ましくは、上記耐熱試験での色素残存率が60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上、特に好ましくは85%以上となるものである。ここで、色素残存率は、750〜1050nmの領域における試験前後の吸収強度の減少度合から求める。
【0105】
さらに、本発明の近赤外線吸収フィルターは、耐光性富士フィルム(株)社製UVカットフィルターを装着した状態でのキセノンランプによる280時間耐光性試験後の色素残存率も優れたものであり、好ましくは色素残存率が70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上となるものである。
(フィルターの製造方法)
本発明の赤外線吸収フィルターの製造方法としては、透明基板に近赤外線吸収色素を含む塗工液をコーティングする方法、近赤外線吸収色素をバインダー樹脂と溶融混錬してフィルム状に成形する方法などが挙られるが、近赤外線吸収色素に対する負荷を低減するため、塗工液をコーティングする方法の方が好ましい。
【0106】
以下に、透明基板に近赤外線吸収色素を含む塗工液を塗布して赤外線吸収フィルターを製造する方法について詳細に説明する。
(基板)
本発明の赤外線吸収フィルターを構成する透明基板としては、実質的に透明であって、吸収、散乱が大きくない基材であればよく、特に制限はない。その具体的な例としては、ガラス、ポリオレフィン系樹脂、非晶質ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂等が挙げられる。これらの中では、特に非晶質ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂が好ましい。
【0107】
これらの樹脂は、フェノール系、燐系などの酸化防止剤、ハロゲン系、燐酸系等の難燃剤、耐熱老化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤等の公知の添加剤を配合することができる。
透明基板は、これらの樹脂を、射出成形、Tダイ成形、カレンダー成形、圧縮成形等の方法や、有機溶剤に溶解させてキャスティングする方法などなどの成形方法を用い、フィルム状に成形したものが用いられる。フィルム状に成形された樹脂は延伸されていても未延伸でもよい。また、異なる材料からなるフィルムが積層されていても良い。
【0108】
透明基板の厚みは、目的に応じて通常10μm〜5mmの範囲から選択される。
更に、透明基板は、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、グロー放電処理、粗面化処理、薬品処理等の従来公知の方法による表面処理や、アンカーコート剤やプライマー等のコーティングを施してもよい。
(近赤外線吸収色素層)
近赤外線吸収色素を含む塗工液は、近赤外線吸収色素をバインダー樹脂とともに溶剤中に溶解又は分散させることにより、調製することができる。また、分散させる場合、近赤外線吸収色素を必要に応じて分散剤を用いて、粒径を通常0.1〜3μmに微粒子化し、バインダーとともに、溶剤に分散させて調製することもできる。
【0109】
このとき溶剤に溶解又は分散される近赤外線吸収色素、分散剤、およびバインダー樹脂などの全固形分の濃度は、通常5〜50重量%である。また、全固形分に対する金属錯体の濃度は、近赤吸収色素トータルとして通常0.1〜50重量%、好ましくは0.2〜30重量%である。また、一般式(1)で表される化合物の他に一般式(2)〜(11)で表される化合物を併用する場合においては、同一層に併存させても良いし、別層として積層させても良いが、一般式(1)で表される化合物に対する一般式(2)〜(11)で表される化合物の総量の比としては、1:0.1〜1:10、好ましくは、1:0.2〜1:5である。
【0110】
尚、バインダー樹脂に対する近赤外線吸収剤の濃度としては、当然のことながら、近赤外線吸収フィルターの膜厚にも依存するため、溶融混練してフィルム状に成形するような場合には、上述の色濃度よりは低くなる。
分散剤としては、ポリビニルブチラール樹脂、フェノキシ樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂、硬化ロジン、ロジンエステル、マレイン化ロジン、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。その使用量は、金属錯体化合物に対して、通常0〜100重量%、好ましくは0〜70重量%である。
【0111】
バインダーとしては、ポリメチルメタクレート樹脂、ポリエチルアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、エチレンービニルアルコール共重合体樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。その使用量は、バインダーに対して金属錯体化合物が、0.01〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%である。
溶媒としては、1,2,3−トリクロロプロパン、テトラクロルエチレン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化脂肪族炭化水素類、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、オクタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、エナント酸メチル、リノール酸メチル、ステアリン酸メチル等のエステル類シクロヘキサン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、スクアラン等の芳香族炭化水素類、ジメチルスルホキシド、スルホラン等のスルホキシド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N,N′,N′−テトラメチル尿素等のアミド類、テトラヒドロフラン(以下「THF」という)、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類あるいはこれらの混合物を用いることができる。
【0112】
また、近赤外線吸収色素を含む塗工液には、必要に応じて、上記以外の近赤外線吸収剤を添加してもよい。他の近赤外線吸収剤としては、有機物質であるニトロソ化合物及びその金属錯塩、シアニン系化合物、スクアリリウム系化合物、チオールニッケル錯塩系化合物、フタロシアニン化合物、ナフタロシアニン化合物、トリアリルメタン系化合物、インモニウム系化合物、ジインモニウム系化合物、ナフトキノン系化合物、アントラキノン系化合物、アミノ化合物、アミニウム塩系化合物、あるいは、無機物であるカーボンブラックや、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズ、周期律表4A、5Aまたは6A族に属する金属の酸化物、もしくは炭化物、またはホウ化物などが挙げられる。
【0113】
金属錯体を含む塗工液の透明基材へのコーティングは、ディッピング法、フローコート法、スプレー法、バーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法等の公知の塗工方法で行われる。
金属錯体を含む層は、乾燥後の膜厚が、通常0.1〜30μm、好ましくは0.5〜10μmとなるように塗布される。
【0114】
(紫外線カット層)
本発明の赤外線吸収フィルターは、さらに紫外線カット層を設けることにより、金属錯体との相乗効果によって、赤外線吸収フィルターの耐光性を著しく向上させることができる。紫外線カット層としては、400nm以下の波長の紫外線を効率よくカットできるものであり、350nmの波長の光を70%以上吸収できることが好ましい。紫外線カット層の種類については、特に制限されないが、好ましくは紫外線吸収剤を含有する樹脂フィルム(紫外線カットフィルム)が好ましい。
【0115】
紫外線カット層に用いられる紫外線吸収剤としては、300〜400nmの間に極大吸収を有し、その領域の光を効率よくカットする化合物であれば、有機系、無機系のいずれも特に限定なく用いることができる。例えば有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸エステル系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、パラアミノ安息香酸系紫外線吸収剤、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、アクリレート系紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系紫外線吸収剤等が挙げられ、無機系紫外線級剤としては酸化チタン系紫外線吸収剤、酸化亜鉛系紫外線吸収剤、微粒子酸化鉄系紫外線吸収剤等が挙げられるが、無機系紫外線吸収剤の場合は紫外線カット層中で微粒子状態で存在しているため、赤外線吸収フィルターの効率を損なう恐れがあることから、有機系紫外線吸収剤が好ましい。
【0116】
このような紫外線吸収剤としては、例えば、チバガイギー(株)のチヌビンP、チヌビン120、213、234、320、326、327、328、329、384、400、571、住友化学(株)のスミソーブ250、300、577、共同薬品(株)バイオソーブ582、550、591、城北化学(株)のJFー86、79、78、80、旭電化(株)のアデカスタブLA−32,LA−36,LA−34、シプロ化成(株)のシーソルブ100、101、101S、102、103、501、201、202、612NH、大塚化学(株)のRUVA93、30M、30S、BASF(株)のユービナール3039等が挙げられる。
【0117】
これらの紫外線吸収剤は、単独で用いても良いが、数種類組み合わせても良い。また、紫外線を吸収して可視領域に波長変換するチバガイギー(株)のユービテックスOB,OB−P等の蛍光増白剤も利用できる。
また、紫外線カットフィルムは、市販のUVカットフィルターを使用することもでき、例えば、富士フィルム(株)のSC−38、SC−39、SC−42、三菱レーヨン(株)のアクリプレン等が挙げられる。上記のUVカットフィルター、SC−39、アクリプレンは、ともに350nmの波長を99%以上吸収する紫外線カットフィルムである。
【0118】
このように紫外線吸収槽を設けた本発明の近赤外線吸収フィルターは、Xeランプを200時間照射することによる耐光性試験後の色素残存率が80%以上、好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上となり、可視光領域に新たな吸収ピークが出てくることもない。ここで、色素残存率は、800〜1100nm領域における試験前後の吸収強度の減少度合から求める。
【0119】
上記近赤外線吸収フィルターは単独はもちろん透明のガラスや他の透明樹脂板等と貼り合わせた積層体として用いてもよい。
また、本発明により得られる近赤外線吸収フィルターは、本発明のディスプレイパネル用フィルター以外にも、熱線遮断フィルム、サングラス、保護眼鏡、リモコン受光器など幅広い用途に使用することができる。
【0120】
3.電子ディスプレイ用フィルター
さらに、本発明の赤外線吸収フィルターは、必要に応じて、電磁波カット層、表面への蛍光灯などの外光の写り込みを防止する反射防止層、ぎらつき防止層(ノングレア層)、色調補正層を設け、電子ディスプレイ用、より好ましくはプラズマディスプレイパネル用フィルターとして使用することができる。
【0121】
本発明の電子ディスプレイ用フィルターは、上記近赤外線吸収フィルターを用いている他は、通常、用いられる構成や製造方法等を任意にとることができ、特に限定されるものではないが、以下にプラズマディスプレイパネル用フィルターとして用いる場合を代表例として説明する。
(電磁波カット層)
本発明のプラズマディスプレイパネル用フィルターに用いられる電磁波カット層としては、金属酸化物等の蒸着あるいはスパッタリング方法等が利用できる。通常は酸化インジウムスズ(ITO)が一般的であるが、誘導体層と金属層を基材上に交互にスパッタリング等で積層させることで1000nm以上の光をカットすることもできる。誘電体層としては酸化インジウム、酸化亜鉛などの透明な金属酸化物等であり、金属層としては銀あるいは銀−パラジウム合金が一般的であり、通常、誘電体層より3層、5層、7層あるいは11層程度積層する。基材としては、本発明の赤外線吸収フィルターをそのまま利用しても良いし、樹脂フィルムあるいはガラス上に蒸着あるいはスパッタリングして電磁波カット層を設けた後に、本発明の赤外線吸収フィルターと貼り合わせても良い。
【0122】
(反射防止層)
本発明のプラズマディスプレイパネル用フィルターに用いられる反射防止層としては、表面の反射を抑えてフィルターの透過率を向上させるために、金属酸化物、フッ化物、ケイ化物、ホウ化物、炭化物、窒化物、硫化物等の無機物を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法等で単層あるいは多層に積層させる方法、アクリル樹脂、フッ素樹脂などの屈折率の異なる樹脂を単層あるいは多層に積層させる方法等がある。また、反射防止処理を施したフィルムを該フィルター上に貼り付けることもできる。
【0123】
(色調補正層)
本発明のプラズマディスプレイパネル用フィルターに用いられる色調補正層としては、プラズマディスプレイから発せられる590〜600nmの波長域のネオンオレンジ光をカットできれば特に限定されず、公知のスクアリリウム系化合物、テトラアザポルフィリン系化合物、シアニン系化合物、メチン系化合物、ピロメテン系化合物、ジピロメテン系化合物等の化合物を含有させる。また、消光時のディスプレイの色がニュートラルグレーになるようにその他の色素を添加することもある。
【0124】
(ノングレア層)
また、上述の各層の他にぎらつき防止層(ノングレア層)も設けてもよい。ノングレア層は、フィルターの視野角を広げる目的で、透過光を散乱させるために、シリカ、メラミン、アクリル等の微粉体をインキ化して、表面にコーティングする方法などを用いることができる。インキの硬化は、熱硬化あるいは光硬化を用いることができる。また、ノングレア処理したフィルムを該フィルター上に貼り付けることもできる。更に必要であれば、ハードコート層を設けることもできる。
【実施例】
【0125】
以下に、実施例により本発明の実施態様を説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。
実施例1
下式に示す化合物(A)(34.3mg)をトルエン0.80gに添加し、これらの中にアクリル系樹脂(オプトレッソOZ1100)のMEK/トルエン(=1/1)溶液(樹脂濃度25重量%)3.2gを添加し、超音波をかけて溶解させ、濾過後、この塗工液を、バーコータ(No.18;江藤器械(株)製)でポリエチレンテレフタレート製フィルムに塗工し、乾燥することにより、近赤外線吸収フィルターを得た。
【0126】
【化25】
【0127】
このフィルターのλmaxは851nmであった。
更に、耐熱性および耐湿熱性を評価するため、80℃の恒温槽および、60℃、湿度90%の恒温層に500時間入れて耐熱性及び耐湿熱性の試験(851nmにおける試験前後の吸収強度の測定)を実施したところ、色素残存率(試験後の強度÷試験前の強度×100)はそれぞれ、85.6%及び98.9%と良好な耐熱性および耐湿熱性を示し、フィルターの色変化はなかった。
【0128】
このフィルターに、富士写真フィルム(株)製UVカットフィルター(SC−39)を装着し、キセノンロングライフフェードメーター(FAL−25AX−HCB−EC)(スガ試験機社製品)により、280時間照射し、851nmにおける照射前後の吸収強度を測定したところ、色素残存率(照射後の強度÷照射前の強度×100)は96.6%と非常に良好であり、フィルター色変化はなかった。
【0129】
実施例2
実施例1において、化合物(A)にかえて下式に示す化合物(B)を用いた以外は実施例1と同様の方法により近赤外線吸収フィルターを得た。
【0130】
【化26】
【0131】
このフィルターのλmaxは855nmであった。
更に、耐熱性および耐湿熱性を評価するため、80℃の恒温槽および、60℃、湿度90%の恒温層に500時間入れて耐熱性及び耐湿熱性の試験(855nmにおける試験前後の吸収強度の測定)を実施したところ、色素残存率(試験後の強度÷試験前の強度×100)はそれぞれこのフィルターに、富士写真フィルム(株)製UVカットフィルター(SC−3、97.4%及び100.0%と良好な耐熱性および耐湿熱性を示し、フィルターの色変化はなかった。9)を装着し、キセノンロングライフフェードメーター(FAL−25AX−HCB−EC)(スガ試験機社製品)により、280時間照射し、855nmにおける照射前後の吸収強度を測定したところ、色素残存率(照射後の強度÷照射前の強度×100)は95.1%と非常に良好であり、フィルター色変化はなかった。
【0132】
実施例3
下記に示す化合物(C)(34.3mg)をTHF(テトラヒドロフラン)1.0gに添加し、これらの中にアクリル系樹脂(オプトレッソOZ1100)のTHF溶液(樹脂濃度30重量%)3.0gを添加し、超音波をかけて溶解させ、濾過後、この塗工液を、バーコータ(No.18;江藤器械(株)製)でポリエチレンテレフタレート製フィルムに塗工し、乾燥することにより、近赤外線吸収フィルターを得た。
【0133】
【化27】
【0134】
このフィルターのλmaxは856nmであった。
更に、耐熱性および耐湿熱性を評価するため、80℃の恒温槽および、60℃、湿度90%の恒温層に500時間入れて耐熱性及び耐湿熱性の試験(856nmにおける耐久試験前後の吸収強度の測定)を実施したところ、色素残存率(試験後の強度÷試験前の強度×100)はそれぞれ、96.2%及び99.0%と良好な耐熱性および耐湿熱性を示し、フィルターの色変化はなかった。
【0135】
このフィルターに、富士写真フィルム(株)製UVカットフィルター(SC−39)を装着し、キセノンロングライフフェードメーター(FAL−25AX−HCB−EC)(スガ試験機社製品)により、280時間照射し、856nmにおける照射前後の吸収強度を測定したところ、色素残存率(照射後の強度÷照射前の強度×100)は96.7%と非常に良好であり、フィルター色変化はなかった。
【0136】
以下の実施例および比較例は、2種の近赤外線吸収色素を混合した近赤外線吸収フィルターを製造するものであるが、近赤外線吸収フィルターの825nm、880nm、980nmでの透過率が20%以下になるように近赤外線吸収色素の量を調節して製造した。
【0137】
実施例4
下式に示す化合物(A)(0.099g)、下式(D)に示す化合物(0.0684g)をトルエン2.0gに添加し、これらの中にアクリル系樹脂(オプトレッソOZ1100)のMEK/トルエン(=1/1)溶液(樹脂濃度25重量%)8.0gを添加し、超音波をかけて溶解させ、濾過後、この塗工液を、バーコータ(No.18;江藤器械(株)製)でポリエチレンテレフタレート製フィルムに塗工し、乾燥することにより、近赤外線吸収フィルターを得た。
【0138】
【化28】
【0139】
この近赤外線吸収フィルターは、825nm、880nm、980nmでの透過率が20%以下であり、PDP本体からの発光を有効に遮蔽するものであった。
更に、耐熱性および耐湿熱性を評価するため、80℃の恒温槽および、60℃、湿度90%の恒温層に500時間入れて耐熱性及び耐湿熱性の試験を実施したところ、図1(耐熱性結果)、図2(耐湿熱性結果)と良好な耐熱性および耐湿熱性を示し、フィルターの色変化はなかった。
【0140】
このフィルターに、富士写真フィルム(株)製UVカットフィルター(SC−42)を装着し、キセノンロングライフフェードメーター(FAL−25AX−HCB−EC)(スガ試験機社製品)により、280時間照射し、照射前後の吸収強度を測定したところ、図3に示すように良好であり、フィルター色変化はなかった。
【0141】
実施例5
化合物(A)に変えて下式に示す化合物(B)を用いた以外は実施例4と同様の方法により、下式に示す化合物(B)および下式(D)に示す化合物(0.0684g)を含有する近赤外線吸収フィルターを得た。
【0142】
【化29】
【0143】
この近赤外線吸収フィルターは、825nm、880nm、980nmでの透過率が20%以下であり、PDP本体からの発光を有効に遮蔽するものであった。
更に、耐熱性および耐湿熱性を評価するため、80℃の恒温槽および、60℃、湿度90%の恒温層に500時間入れて耐熱性及び耐湿熱性の試験を実施したところ、図4(耐熱性結果)、図5(耐湿熱性結果)と良好な耐熱性および耐湿熱性を示し、フィルターの色変化はなかった。
【0144】
このフィルターに、富士写真フィルム(株)製UVカットフィルター(SC−42)を装着し、キセノンロングライフフェードメーター(FAL−25AX−HCB−EC)(スガ試験機社製品)により、280時間照射し、照射前後の吸収強度を測定したところ、図6に示すように良好であり、フィルター色変化はなかった。
【0145】
実施例6
下式に示す化合物(C)(0.099g)、下式(D)に示す化合物(0.0684g)をTHF3.0gに添加し、これらの中にアクリル系樹脂(オプトレッソOZ1100)のTHF(樹脂濃度30重量%)8.0gを添加し、超音波をかけて溶解させ、濾過後、この塗工液を、バーコータ(No.18;江藤器械(株)製)でポリエチレンテレフタレート製フィルムに塗工し、乾燥することにより、近赤外線吸収フィルターを得た。
【0146】
【化30】
【0147】
この近赤外線吸収フィルターは、825nm、880nm、980nmでの透過率が20%以下であり、PDP本体からの発光を有効に遮蔽するものであった。
更に、耐熱性および耐湿熱性を評価するため、80℃の恒温槽および、60℃、湿度90%の恒温層に500時間入れて耐熱性及び耐湿熱性の試験を実施したところ、図7(耐熱性結果)、図8(耐湿熱性結果)と良好な耐熱性および耐湿熱性を示し、フィルターの色変化はなかった。
【0148】
このフィルターに、富士写真フィルム(株)製UVカットフィルター(SC−42)を装着し、キセノンロングライフフェードメーター(FAL−25AX−HCB−EC)(スガ試験機社製品)により、280時間照射し、照射前後の吸収強度を測定したところ、図9に示すように良好であり、フィルター色変化はなかった。
以下の表1〜3に、実施例4〜6の近赤外線吸収フィルター耐熱性、耐湿熱性、および耐光性試験前後(試験前に対する試験後)の825nm、880nm、980nmにおける透過率の変化を、図1〜9に試験前後の透過スペクトルを示す。
【0149】
【表1】
【0150】
【表2】
【0151】
【表3】
【0152】
実施例1〜6により、本発明の近赤外線吸収フィルターは耐熱性、耐湿熱性、および耐光性に優れていることが明らかである。
【0153】
実施例7
実施例4と同様の方法で調製したインク液を7日間室温で、放置し、その前後の透過スペクトルを測定したところスペクトル形状に変化はなかった。(図10)
実施例8
実施例5と同様の方法で調製したインク液を7日間室温で、放置し、その前後の透過スペクトルを測定したところスペクトル形状に変化はなかった。(図11)
実施例9
実施例6と同様の方法で調製したインク液を7日間室温で、放置し、その前後の透過スペクトルを測定したところスペクトル形状に変化はなかった。(図12)
以下の表4に、実施例7〜9のインク液を7日間室温で、放置する前後(放置前に対する放置後)の825nm、880nm、980nmにおける透過率の変化を示す。
【0154】
【表4】
【0155】
比較例1
下式に示す化合物(E)(0.0686g)、下式(D)に示す化合物(0.0740g)をトルエン1.6gに添加し、これらの中にアクリル系樹脂(オプトレッソOZ1100)のMEK/トルエン(=1/1)溶液(樹脂濃度25重量%)6.4を添加し、超音波をかけて溶解させ塗工液を調製した。
【0156】
【化31】
【0157】
この塗工液を室温で、7日間放置し、その前後の透過スペクトルを観察したところ、スペクトル形状に顕著な変化があり、この塗工液は、不安定であった。(図13)
比較例2
下式に示す化合物(F)(0.0686g)、下式(D)に示す化合物(0.0740g)をTHF2.0gに添加し、これらの中にアクリル系樹脂(オプトレッソOZ1100)のTHF溶液(樹脂濃度30重量%)8.0を添加し、超音波をかけて溶解させ塗工液を調製し、塗工液をろ過した。
【0158】
【化32】
【0159】
この塗工液を室温で、7日間放置し、その前後の透過スペクトルを観察したところ、スペクトル形状に顕著な変化があり、この塗工液は、不安定であった。(図14)
実施例7〜9と、比較例1および2とを対比することにより、本発明の近赤外線吸収フィルターは、他の近赤外線吸収色素と混合した場合に、従来のジチオレート系色素と対比して経時的なスペクトルの変化が非常に少なく、安定した近赤外線吸収フィルターであることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0160】
【図1】実施例4における、耐熱性試験結果を示す図である。
【図2】実施例4における、耐湿熱性試験結果を示す図である。
【図3】実施例4における、耐光性試験結果を示す図である。
【図4】実施例5における、耐熱性試験結果を示す図である。
【図5】実施例5における、耐湿熱性試験結果を示す図である。
【図6】実施例5における、耐光性試験結果を示す図である。
【図7】実施例6における、耐熱性試験結果を示す図である。
【図8】実施例6における、耐湿熱性試験結果を示す図である。
【図9】実施例6における、耐光性試験結果を示す図である。
【図10】実施例7における透過スペクトルの形状変化を示す図である。
【図11】実施例8における透過スペクトルの形状変化を示す図である。
【図12】実施例9における透過スペクトルの形状変化を示す図である。
【図13】比較例1における透過スペクトルの形状変化を示す図である。
【図14】比較例2における透過スペクトルの形状変化を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(一般式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立に1価の基である。
X1およびX6は炭素原子、酸素原子、窒素原子およびケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する1価の基である。
X2〜X5及びX7〜X10はそれぞれ独立に1価の基であって、隣り合う基が連結基を介して結合してもよい。M1は金属原子を示す。)で表される化合物を少なくとも一種類以上含有する層を有することを特徴とする近赤外線吸収フィルター。
【請求項2】
X1ならびにX6が、炭素原子、酸素原子、窒素原子およびケイ素原子のうち少なくとも1種類の原子が鎖状に3以上連結した基である、請求項1に記載の近赤外線吸収フィルター。
【請求項3】
X2および/またはX4、ならびにX7および/またはX9が炭素原子、酸素原子、窒素原子およびケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計2以上有する基である請求項1または2に記載の近赤外線吸収フィルター。
【請求項4】
さらに紫外線カット層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の近赤外線吸収フィルター。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の近赤外線吸収フィルターを用いた電子ディスプレイ用フィルター。
【請求項1】
下記一般式(1)
【化1】
(一般式(1)中、R1及びR2はそれぞれ独立に1価の基である。
X1およびX6は炭素原子、酸素原子、窒素原子およびケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計3以上有する1価の基である。
X2〜X5及びX7〜X10はそれぞれ独立に1価の基であって、隣り合う基が連結基を介して結合してもよい。M1は金属原子を示す。)で表される化合物を少なくとも一種類以上含有する層を有することを特徴とする近赤外線吸収フィルター。
【請求項2】
X1ならびにX6が、炭素原子、酸素原子、窒素原子およびケイ素原子のうち少なくとも1種類の原子が鎖状に3以上連結した基である、請求項1に記載の近赤外線吸収フィルター。
【請求項3】
X2および/またはX4、ならびにX7および/またはX9が炭素原子、酸素原子、窒素原子およびケイ素原子から選ばれる少なくとも1種類の原子を合計2以上有する基である請求項1または2に記載の近赤外線吸収フィルター。
【請求項4】
さらに紫外線カット層を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の近赤外線吸収フィルター。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の近赤外線吸収フィルターを用いた電子ディスプレイ用フィルター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−18048(P2011−18048A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157694(P2010−157694)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【分割の表示】特願2005−20620(P2005−20620)の分割
【原出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(396020464)株式会社エーピーアイ コーポレーション (39)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【分割の表示】特願2005−20620(P2005−20620)の分割
【原出願日】平成17年1月28日(2005.1.28)
【出願人】(396020464)株式会社エーピーアイ コーポレーション (39)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]