説明

送受信システム、受信装置、送信装置及び送受信方法

【課題】回路規模を小さくして消費電力を削減できるようにする。
【解決手段】送信装置2では、電圧制御発振器21が、0、1のデジタル信号D1をそれぞれ異なる周波数を有する単一の変調信号D2に変調する。アンテナ22が、変調された変調信号D2を信号伝送媒体に出力する。受信装置3では、アンテナ31が、信号伝送媒体に出力された変調信号D2を受信する。電圧制御発振器33が、受信された変調信号D2の周波数に基づく同期処理をして発振信号D3を生成する。これを前提にして、復調手段30が、変調信号D2と発振信号D3とを演算して、変調信号D2を復調する。これにより、電圧制御発振器21,33でデジタル信号D1の変調及び復調を行うので、従来の送受信システムに設けていた変調信号源、通過帯域フィルタ等を削減できるようになる。この結果、送受信システム1の回路規模を小さくでき、送受信システム1の消費電力を削減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧制御発振器に同期するか否かでデジタル信号の「1」、「0」を判断する送受信システム、受信装置、送信装置及び送受信方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線通信技術の発達により、高速で通信を行う送受信システムが開発されている。この送受信システムは、ミリ波帯等の高い周波数帯を有する搬送波に所望の電気信号をのせて伝送するものである。このような送受信システムによって動画等の大容量を有するデータを高速にデータ伝送できる。
【0003】
特許文献1には、ミリ波帯の無線信号波で無線通信を行う無線通信装置が開示されている。この無線通信装置によれば、送信側では、変調信号源が、入力信号を変調して中間周波数信号を生成する。第1の局部発振器が、所定の周波数を有する局部発振波を生成する。第1のミキサが、変調信号源で生成された中間周波数信号を第1の局部発振器で生成された局部発振波を用いて周波数変換して無線信号波を生成する。無線信号波及び局部発振波が第1の通過帯域フィルタを通過して所定の周波数を有する無線信号波及び局部発振波が抽出される。第1のアンテナが、所定の周波数が抽出された無線信号波及び局部発振波を送信する。
【0004】
受信側では、第2のアンテナが、送信側で送信された無線信号波及び局部発振波を受信する。第2のアンテナで受信された無線信号波及び局部発振波が第2の通過帯域フィルタを通過して所定の周波数を有する無線信号波及び局部発振波が抽出される。第2の局部発振器が、所定の周波数が抽出された局部発振波に基づいて自走発振周波数に同期した送信側の局部発振波を生成する。第2のミキサが、第2のアンテナで受信された無線信号を送信側の局部発振波で周波数変換して中間周波数信号を生成する。復調部が、周波数変換された中間周波数信号を復調する。このような構成により、ミリ波帯の無線信号波を用いて入力信号を送信側から受信側へ伝送するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−295594号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1によれば、送受信間の局部発振器で無線信号波の同期をとることで信号伝送が可能である。しかしながら、送信側に中間周波数変調用の変調信号源及び通過帯域フィルタ、受信側に変調された中間周波数信号を復調する復調器が必要となるために、無線通信装置の回路規模が大きくなり、その結果、無線通信装置の消費電力が大きくなってしまう。
【0007】
本発明は、このような課題を解決したものであって、回路規模を小さくして消費電力を削減できる送受信システム、送信装置、受信装置及び送受信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明に係る送受信システムは、デジタル信号を当該デジタル信号のレベルに応じて異なる周波数を有する変調信号に変調する第1の発振器と、第1の発振器によって変調された変調信号を信号伝送媒体に出力する出力手段と、出力手段によって信号伝送媒体に出力された変調信号を受信する受信手段と、受信手段で受信された変調信号を注入して所定の周波数範囲を有する自走発振周波数を発振し、該発振した自走発振周波数で変調信号に同期して発振信号を生成する第2の発振器と、受信手段で受信された変調信号と第2の発振器によって生成された発振信号とを演算して、デジタル信号を復調する復調手段とを備えたものである。
【0009】
本発明に係る送受信システムによれば、第1の発振器が、デジタル信号を当該デジタル信号のレベルに応じて異なる周波数を有する変調信号に変調する。出力手段が、第1の発振器によって変調された変調信号を信号伝送媒体に出力する。受信手段が、出力手段によって信号伝送媒体に出力された変調信号を受信する。第2の発振器が、受信手段で受信された変調信号を注入して所定の周波数範囲を有する自走発振周波数を発振し、該発振した自走発振周波数で変調信号に同期して発振信号を生成する。これを前提にして、復調手段が、受信手段で受信された変調信号と第2の発振器によって生成された発振信号とを演算して、デジタル信号を復調する。つまり、復調手段は、デジタル信号を変調した変調信号が第2の発振器の同期処理によって生成された発振信号に同期するか否かで、デジタル信号を復調する。
【0010】
これにより、第1及び第2の発振器によってデジタル信号の変調及び復調を行うので、従来の送受信システムに設けていた送信側における中間周波数変調用の変調信号源、周波数抽出部である通過帯域フィルタ、及び、受信側における変調された中間周波数信号を復調する復調器を削減できるようになる。
【0011】
本発明に係る送信装置は、デジタル信号を当該デジタル信号のレベルに応じて異なる周波数を有する変調信号に変調する発振器と、発振器によって変調された変調信号を信号伝送媒体に出力する出力手段とを備えたものである。
【0012】
本発明に係る送信装置によれば、発振器が、デジタル信号を当該デジタル信号のレベルに応じて異なる周波数を有する変調信号に変調する。出力手段が、発振器によって変調された変調信号を信号伝送媒体に出力する。
【0013】
これにより、発振器によってデジタル信号の変調を行うので、従来の送信装置に設けていた中間周波数変調用の変調信号源、周波数抽出部である通過帯域フィルタを削減できるようになる。
【0014】
本発明に係る受信装置は、デジタル信号が当該デジタル信号のレベルに応じて異なる周波数を有するように変調された変調信号を受信する受信手段と、受信手段で受信された変調信号を注入して所定の周波数範囲を有する自走発振周波数を発振し、該発振した自走発振周波数で変調信号に同期して発振信号を生成する発振器と、受信手段で受信された変調信号と発振器によって生成された発振信号とを演算して、デジタル信号を復調する復調手段とを備えたものである。
【0015】
本発明に係る受信装置によれば、受信手段が、デジタル信号が当該デジタル信号のレベルに応じて異なる周波数を有するように変調された変調信号を受信する。発振器が、受信手段で受信された変調信号を注入して所定の周波数範囲を有する自走発振周波数を発振し、該発振した自走発振周波数で変調信号に同期して発振信号を生成する。これを前提にして、復調手段が、受信手段で受信された変調信号と発振器によって生成された発振信号とを演算して、デジタル信号を復調する。つまり、復調手段は、デジタル信号を変調した変調信号が発振器の同期処理によって生成された発振信号に同期するか否かで、デジタル信号を復調する。
【0016】
これにより、発振器によってデジタル信号の復調を行うので、従来の受信装置に設けていた変調された中間周波数信号を復調する復調器を削減できるようになる。
【0017】
本発明に係る送受信方法は、送受信システムが、デジタル信号を当該デジタル信号のレベルに応じてそれぞれ異なる周波数を有する変調信号に変調し、変調された変調信号を信号伝送媒体に出力し、信号伝送媒体に出力された変調信号を受信し、受信された変調信号を注入して自走発振周波数を発振し、該発振した自走発振周波数で変調信号に同期して発振信号を生成し、受信された変調信号と生成された発振信号とを演算して、デジタル信号を復調するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る送受信システム及び送受信方法によれば、従来の送受信システムに設けていた変調信号源、通過帯域フィルタ及び中間周波数信号を復調する復調器を削減できるので、当該送受信システムの回路規模を小さくすることができる。この結果、当該送受信システムの消費電力を削減することができる。
【0019】
本発明に係る送信装置によれば、従来の送信装置に設けていた変調信号源、通過帯域フィルタを削減できるので、当該送信装置の回路規模を小さくすることができる。この結果、当該送信装置の消費電力を削減することができる。
【0020】
本発明に係る受信装置によれば、従来の受信装置に設けていた中間周波数信号を復調する復調器を削減できるので、当該受信装置の回路規模を小さくすることができる。この結果、当該受信装置の消費電力を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施の形態に係る送受信システム1の構成例を示すブロック図である。
【図2】電圧制御発振器21の構成例を示す回路図である。
【図3】電圧制御発振器33の構成例を示す回路図である。
【図4】ミキサ34の構成例を示す回路図である。
【図5】A,Bは、送信装置2の動作例を示すタイミングチャートである。
【図6】A,B,C,D,Eは、受信装置3の動作例を示すタイミングチャートである。
【図7】第2の実施の形態に係る受信装置4の構成例を示すブロック図である。
【図8】電圧制御発振器37の入出力間の位相差の特性例を示す説明図である。
【図9】ミキサ38の出力DC変動の特性例を示す説明図である。
【図10】電圧制御発振器37の構成例を示す回路図である。
【図11】ミキサ38の構成例を示す回路図である。
【図12】第3の実施の形態に係る受信装置5の構成例を示すブロック図である。
【図13】A,B,C,D,Eは、受信装置5の動作例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序にて行う。
1.第1の実施の形態(送受信システム1、送信装置2、受信装置3:構成例、動作例)
2.第2の実施の形態(受信装置4:構成例、動作例)
3.第3の実施の形態(受信装置5:構成例、動作例)
【0023】
<第1の実施の形態>
[送受信システム1の構成例]
図1に示すように、本実施の形態に係る送受信システム1は、送信装置2及び受信装置3で構成される。送信装置2は、第1の発振器の一例である第1の電圧制御発振器(以下、電圧制御発振器21という)及び出力手段の一例であるアンテナ22を備える。受信装置3は、受信手段の一例であるアンテナ31、第2の発振器の一例である第2の電圧制御発振器(以下、電圧制御発振器33という)及び復調手段30を備える。更に、受信装置3は、増幅器32を備える。
【0024】
送信装置2と受信装置3とは所定の距離だけ離間しており、送信装置2と受信装置3との間には図示しない信号伝送媒体が設けられる。信号伝送媒体は、送信装置2から送信された信号を伝送する媒体であり、例えば、空気のような気体でもよいし、誘電体のような固体でもよい。
【0025】
電圧制御発振器21には、入力端子INから入力信号である0、1のデジタル信号D1が入力される。電圧制御発振器21は、0、1のデジタル信号D1を当該デジタル信号のレベルに応じて、異なる周波数を有する変調信号D2に変調する。
【0026】
電圧制御発振器21にはアンテナ22が接続され、当該アンテナ22は、電圧制御発振器21によって変調された変調信号D2を図示しない信号伝送媒体に出力する。アンテナ22と信号伝送媒体とは接触している。なお、電圧制御発振器21とアンテナ22の間に、電圧制御発振器21の出力を変化させる為のアンプやインピーダンス整合回路等があってもよい。
【0027】
信号伝送媒体にはアンテナ31が接触しており、当該アンテナ31は、アンテナ22によって信号伝送媒体に出力された変調信号D2を受信する。アンテナ31には増幅器32が接続される。増幅器32は、アンテナ31で受信した変調信号D2を所定の増幅率で増幅して、変調信号D2aを出力する。なお、ある基準値を元に増幅器32の増幅率を自動で変化させる機能がついていてもよい。
【0028】
増幅器32には電圧制御発振器33が接続される。電圧制御発振器33は、増幅器32で増幅された変調信号D2aを注入して所定の周波数範囲を有する自走発振周波数を発振し、該発振した自走発振周波数で変調信号D2aに同期して発振信号D3を生成する。なお、電圧制御発振器33は、増幅器32で増幅された変調信号D2aではなく、アンテナ31で受信した変調信号D2を注入して所定の周波数範囲を有する自走発振周波数を発振し、該発振した自走発振周波数で変調信号に同期して発振信号D3を生成するものであってもよい。
【0029】
増幅器32及び電圧制御発振器33には復調手段30が接続される。復調手段30は、増幅器32で増幅された変調信号D2aと電圧制御発振器33で生成された発振信号D3とを演算して、デジタル信号D1を復調する。復調手段30は、復調した変調信号D2aをデジタル信号D6として出力端子OUTに出力する。なお、復調手段30は、アンテナ31で受信した変調信号D2と電圧制御発振器33で生成された発振信号D3とを演算して、デジタル信号D1を復調するものであってもよい。つまり、復調手段30は、デジタル信号D1を変調した変調信号D2a(又は変調信号D2)が電圧制御発振器の同期処理によって生成された発振信号D3に同期するか否かで、デジタル信号D1を復調する。
【0030】
次に、復調手段30の一例について説明する。図1に示すように、復調手段30は、例えば、演算処理部の一例であるミキサ34、周波数抽出部の一例であるローパスフィルタ(以下、LPF35という)及び判別部の一例である比較器36を有する。
【0031】
ミキサ34は、増幅器32で増幅された変調信号D2aと電圧制御発振器33で生成された発振信号D3とを乗算して、DC動作点に対してDC成分の変動を有する部分と有さない部分とを備える演算信号D4を生成する。また、DC成分の変動を有さない部分については変調信号D2aと電圧制御発振器33の差分の低周波信号が合わせて出力される。
【0032】
ミキサ34にはLPF35が接続される。LPF35は、ミキサ34で生成された演算信号D4のうち、DC動作点に対してDC成分の変動を有さない部位に重畳されている変調信号D2aと電圧制御発振器33の差分の周波数成分を除去し、DC成分の変動を有する部分を抽出して抽出信号D5を出力する。
【0033】
LPF35には比較器36が接続される。比較器36は、LPF35で抽出された抽出信号D5のうち、DC動作点に対してDC成分の変動を有する部分を「1」とし、DC成分の変動を有さない部分を「0」とするデジタル信号D6を生成して出力端子OUTに出力する。なお「0」、「1」のデジタル信号のどちらにDC成分の変動を対応させるかについては、電圧制御発振器33を送信装置20内の電圧制御発振器21が出力するデジタル信号D1に対応させた変調信号D2のどちらに同期させるかで決定される。
【0034】
これにより、電圧制御発振器21,33によってデジタル信号の変調及び復調を行うので、従来の送受信システムに設けていた送信側における中間周波数変調用の変調信号源、周波数抽出部である通過帯域フィルタ、及び、受信側における変調された中間周波数信号を復調する復調器を削減できるようになる。
【0035】
[電圧制御発振器21の構成例]
次に、本実施の形態に係る電圧制御発振器21の構成例について説明する。図2に示すように、電圧制御発振器21は、第1のインダクタ(以下、インダクタL11という)、第2のインダクタ(以下、インダクタL12という)、第1のMOSCAP(Metal Oxide Semiconductor Capacitorの略、以下、コンデンサC11という)、第2のMOSCAP(以下、コンデンサC12という)、第1のトランジスタ(以下、トランジスタQ11という)、第2のトランジスタ(以下、トランジスタQ12という)及び電流源Ieeで構成される。
【0036】
インダクタL11,L12は、その一端が電源Vccに接続される。コンデンサC11は、その一端が入力端子INに接続され、その他端がインダクタL11の他端に接続される。コンデンサC12は、その一端が入力端子INに接続され、その他端がインダクタL12の他端及びアンテナ22に接続される。
【0037】
トランジスタQ11は、ゲートがコンデンサC12の他端に接続され、ドレインがコンデンサC11の他端に接続され、ソースが電流源Ieeの一端に接続される。トランジスタQ12は、ゲートがコンデンサC11の他端に接続され、ドレインがコンデンサC12の他端に接続され、ソースが電流源Ieeの一端に接続される。電流源Ieeは、他端がグランドに接続される。
【0038】
このように構成された電圧制御発振器21は、入力端子INから入力信号である0、1のデジタル信号D1が入力され、当該デジタル信号をそれぞれ異なる周波数を有する単一の変調信号D2に変調する。
【0039】
電圧制御発振器21は、ある所定の周波数調整が可能である自走発振周波数で発振する。例えば、電圧制御発振器21は、デジタル信号D1の「1」の部分を、受信装置3内の電圧制御発振器33で同期可能なある第1の周波数を有する変調信号D2に変調し、デジタル信号の「0」の部分を、受信装置3内の電圧制御発振器33では同期不可能な第2の周波数を有する変調信号D2に変調する。つまり、電圧制御発振器21は、デジタル信号の「1」の部分が受信装置3内の電圧制御発振器33にて同期し、デジタル信号の「0」の部分が受信装置内の電圧制御発振器33にて同期しないように変調する。電圧制御発振器21は、このように変調されたデジタル信号を変調信号D2としてアンテナ22に出力する。
【0040】
なお、電圧制御発振器21は、デジタル信号D1の「0」の部分を、受信装置3内の電圧制御発振器33に同期可能な第1の周波数を有する変調信号D2に変調し、デジタル信号の「1」の部分を、同期不可能な周波数である第2の周波数を有する変調信号D2に変調するようにしても良い。つまり、電圧制御発振器21は、デジタル信号の「0」の部分が受信装置3内の電圧制御発振器33にて同期し、デジタル信号の「1」の部分が電圧制御発振器33にて同期しないように変調するようにしても良い。この場合、受信装置3の出力端子OUTから出力されるデジタル信号D6は、送信装置2の入力端子INに入力されるデジタル信号D1と反転しているので、出力端子OUTにインバータ回路等を設ければ、所望のデジタル信号を受信できるようになる。
【0041】
なお、電圧制御発振器21の自走発振周波数の大きさは、インダクタL11,L12のインダクタンス及びコンデンサC11,C12の容量によって決定される。
【0042】
[電圧制御発振器33の構成例]
次に、本実施の形態に係る電圧制御発振器33の構成例について説明する。図3に示すように、電圧制御発振器33は、第1のインダクタ(以下、インダクタL21という)、第2のインダクタ(以下、インダクタL22という)、第1のMOSCAP(以下、コンデンサC21という)、第2のMOSCAP(以下、コンデンサC22という)、第1のトランジスタ(以下、トランジスタQ21という)、第2のトランジスタ(以下、トランジスタQ22という)、第3のトランジスタ(以下、トランジスタQ23という)、第4のトランジスタ(以下、トランジスタQ24という)、第1の電流源(以下、電流源Ivcoという)及び第2の電流源(以下、電流源Iinjという)で構成される。
【0043】
インダクタL21,L22は、その一端が電源Vccに接続される。コンデンサC21は、その一端が自走発振周波数調整電圧(以下、調整電圧Vctという)が出力される端子に接続され、その他端がインダクタL21の他端及びミキサ34に接続される。コンデンサC22は、その一端が調整電圧Vctが出力される端子に接続され、その他端がインダクタL22の他端及びミキサ34に接続される。
【0044】
トランジスタQ21は、ゲートがコンデンサC22の他端及びミキサ34に接続され、ドレインがコンデンサC21の他端に接続され、ソースが電流源Ivcoの一端に接続される。トランジスタQ22は、ゲートがコンデンサC21の他端に接続され、ドレインがコンデンサC22の他端に接続され、ソースが電流源Ivcoの一端に接続される。トランジスタQ23は、ゲートが増幅器32に接続され、ドレインがコンデンサC21の他端、トランジスタQ21のドレイン及びトランジスタQ22のゲートに接続され、ソースが電流源Iinjの一端に接続される。トランジスタQ24は、ゲートが図示しない電圧源に接続され、ドレインがコンデンサC22の他端、トランジスタQ22のドレイン及びトランジスタQ21のゲートに接続され、ソースが電流源Iinjの一端に接続される。電流源Ivco,Iinjは、他端がグランドに接続される。なお、トランジスタQ24のゲートに接続される電圧VrefはトランジスタQ23のゲートへと入力される変調信号D2aのDC電圧と同一の電圧が入力される。
【0045】
このように構成された電圧制御発振器33は、トランジスタQ23のゲートに増幅器32で増幅された変調信号D2aが入力されて、この変調信号D2aの周波数と電圧制御発振器33の自走発振周波数に基づいて同期の有無の処理をして発振信号D3を生成する。
【0046】
電圧制御発振器33は、前述の電圧制御発振器21と同じ周波数の自走発振周波数で発振する。この自走発振周波数は、コンデンサC21、C22間に接続された調整電圧Vctと、インダクタL21,L22のインダクタンス及びコンデンサC21,C22の容量によって決定される。
【0047】
電圧制御発振器33は、トランジスタQ23のゲートに入力された変調信号D2aの周波数のうち前述で説明した第1の周波数と同期した発振信号D3を生成する。また、電圧制御発振器33は、トランジスタQ23のゲートに入力された変調信号D2aの周波数のうち前述で説明した第2の周波数から、第2の周波数とは異なる第3の周波数を有する発振信号D3を生成する。なお電圧制御発振器33の発振信号D3が有する第3の周波数は、変調信号D2aの有する第2の周波数とは異なるが、第1の周波数とは同じになる場合はある。電圧制御発振器33によって生成された発振信号D3は、コンデンサC21,C22の他端から出力される。
【0048】
[ミキサ34の構成例]
次に、本実施の形態に係るミキサ34の構成例について説明する。図4に示すように、ミキサ34は、第1の電気抵抗(以下、抵抗R1という)、第2の電気抵抗(以下、抵抗R2という)、第1のトランジスタ(以下、トランジスタQ31という)、第2のトランジスタ(以下、トランジスタQ32という)及び第3のトランジスタ(以下、トランジスタQ33という)で構成される。
【0049】
抵抗R1,R2は、その一端が電源Vccに接続される。トランジスタQ31は、ゲートが電圧制御発振器33に接続され、ドレインが抵抗R1の他端に接続され、ソースがトランジスタQ33のソースに接続される。トランジスタQ32は、ゲートが電圧制御発振器33に接続され、ドレインが抵抗R2の他端及びLPF35に接続され、ソースがトランジスタQ31のソースに接続される。トランジスタQ33は、ゲートが増幅器32に接続され、ドレインがトランジスタQ31,Q32のソースに共通に接続され、ソースがグランドに接続される。
【0050】
このように構成されたミキサ34は、トランジスタQ31,Q32のゲートに電圧制御発振器33で生成された発振信号D3が入力され、トランジスタQ33のゲートに増幅器32で増幅された変調信号D2aが入力される。
【0051】
ミキサ34は、発振信号D3と変調信号D2aとを乗算する。そして、ミキサ34は、発振信号D3の周波数のうち第3の周波数を有する部分から、DC動作点に対してDC成分の変動成分を有さない演算信号D4を生成する。また、ミキサ34は、発振信号D3の周波数のうち変調信号D2aの第1の周波数と同じ周波数を有する部分から、DC成分の変動成分を有する演算信号D4を生成する。ミキサ34によって生成された演算信号D4は、抵抗R2の他端及びトランジスタQ32のドレインから出力される。
【0052】
[送信装置2の動作例]
次に、送信装置2の動作例について説明する。図5Aに示すように、送信装置2に入力される入力信号であるデジタル信号D1は、時間t0から時間t1まで、「1」の値をとり、時間t1から時間t3まで、「0」の値をとる。そして、デジタル信号D1は、時間t3から時間t4まで、「1」の値をとり、時間t4から時間t5まで、「0」の値をとり、時間t5から時間t6まで「1」の値をとる。つまり、デジタル信号D1は、「1、0、0、1、0、1」のような1、0のデジタル値を有する。
【0053】
このようなデジタル信号D1が送信装置2の入力端子INに入力され、電圧制御発振器21に入力される。図5Bに示すように、電圧制御発振器21は、入力されたデジタル信号D1の「1」の部分を、第1の周波数を有する変調信号D2に変調し、入力されたデジタル信号D1の「0」の部分を、第2の周波数を有する変調信号D2に変調する。
【0054】
つまり、図5Bでは、電圧制御発振器21は、時間t0から時間t1までと、時間t3から時間t4までと、時間t5から時間t6までとにおいて、デジタル信号D1を、第1の周波数を有する変調信号D2に変調する。また、電圧制御発振器21は、時間t1から時間t3までと、時間t4から時間t5までとにおいて、デジタル信号を、第2の周波数を有する変調信号D2に変調する。図5Bに示した変調信号D2がアンテナ22によって信号伝送媒体を介して受信装置3に出力される。
【0055】
本実施の形態に係る送信装置2によれば、電圧制御発振器21が、デジタル信号D1を当該デジタル信号のレベルに応じて異なる周波数を有する変調信号D2に変調する。アンテナ22が、電圧制御発振器21によって変調された変調信号D2を信号伝送媒体に出力する。
【0056】
これにより、電圧制御発振器21によってデジタル信号D1の変調を行うので、従来の送信装置に設けていた中間周波数変調用の変調信号源、周波数抽出部である通過帯域フィルタを削減できるようになる。この結果、当該送信装置2の回路規模を小さくでき、送信装置2の消費電力を削減することができる。
【0057】
[受信装置3の動作例]
次に、受信装置3の動作例について説明する。受信装置3は、送信装置2のアンテナ22から出力された変調信号D2をアンテナ31で受信する。受信装置3は、図6Aに示すように、アンテナ31で受信した変調信号D2を増幅器32で増幅して変調信号D2aを生成する。
【0058】
図6Bに示すように、電圧制御発振器33は、増幅器32で増幅された変調信号D2aのうち第2の周波数を有する部分から、第3の周波数を有する発振信号D3を生成する。また、電圧制御発振器33は、増幅器32で増幅された変調信号D2aのうち第1の周波数を有する部分から、当該変調信号D2aと同じ第1の周波数を有する発振信号D3を生成する。
【0059】
つまり、図6Bでは、電圧制御発振器33は、時間t0から時間t1までと、時間t3から時間t4までと、時間t5から時間t6までとにおいて、変調信号D2aと同じ第1の周波数を有する発振信号D3を生成する。また、電圧制御発振器33は、時間t1から時間t3までと、時間t4から時間t5までとにおいて、第3の周波数を有する発振信号D3を生成する。この第3の周波数を有する発振信号D3は、電圧制御発振器33によって同期処理されたが、電圧制御発振器33の同期範囲外のために、第2の周波数が電圧制御発振器33にて同期されずに、電圧制御発振器33の自走発信周波数が出力として生じたものである。
【0060】
図6Cに示すように、ミキサ34は、増幅器32で増幅された変調信号D2a(図6A)と電圧制御発振器33で生成された発振信号D3(図6B)とを乗算する。ミキサ34は、発振信号D3の周波数のうち第3の周波数を有する部分から、DC動作点Vbiasに対してDC成分の変動を有さない演算信号D4を生成する。また、ミキサ34は、発振信号D3の周波数のうち変調信号D2aと同じ第1の周波数を有する部分から、DC成分の変動を有する演算信号D4を生成する。つまり、図6Cでは、ミキサ34は、時間t0から時間t1までと、時間t3から時間t4までと、時間t5から時間t6までとにおいて、DC成分の変動を有する演算信号D4を生成する。また、ミキサ34は、時間t1から時間t3までと、時間t4から時間t5までとにおいて、DC成分の変動を有さない演算信号D4を生成する。ここで、DC成分とは、信号の電圧値が時間に対して変化しない部分のことをいう。
【0061】
図6Dに示すように、LPF35は、ミキサ34で生成された演算信号D4のうち、DC動作点Vbiasに対してDC成分の変動を有する信号を抽出して抽出信号D5を生成する。つまり、図6Dでは、LPF35は、時間t0から時間t1までと、時間t3から時間t4までと、時間t5から時間t6までとにおいて、DC成分の変動を有する演算信号D4を抽出して抽出信号D5を生成する。また、LPF35は、時間t1から時間t3までと、時間t4から時間t5までとにおいて、演算信号D4がDC成分の変動を有さないので、抽出は行わないが変調信号D2aが有する第2の周波数と電圧制御発振器33が有する第3の周波数の差分の低周波信号は減衰される。
【0062】
図6Eに示すように、比較器36は、LPF35で、DC動作点に対するDC成分の変動を抽出して生成した抽出信号D5のうちDC成分の変動を有する部分を「1」とし、DC成分の変動を有さない部分を「0」とするデジタル信号D6を生成して出力端子OUTに出力する。つまり、図6Eでは、比較器36は、時間t0から時間t1までと、時間t3から時間t4までと、時間t5から時間t6までとにおいて、デジタル信号D6を「1」とする。また、比較器36は、時間t1から時間t3までと、時間t4から時間t5までとにおいて、デジタル信号D6を「0」とする。なお、比較器36は、予め所定の閾値を記憶し、その閾値より大きな値の抽出信号D5を「1」のデジタル信号D6に変換し、その閾値より小さな値の抽出信号D5を「0」のデジタル信号D6に変換するようにしても構わない。
【0063】
本実施の形態に係る受信装置3によれば、アンテナ31が、送信装置2への入力されたデジタル信号D1に基づき、電圧制御発振器21により生成され、アンテナ22によって信号伝送媒体に出力された変調信号D2を受信する。電圧制御発振器33が、アンテナ31で受信された変調信号D2を注入して所定の周波数範囲を有する自走発振周波数を発振し、該発振した自走発振周波数で変調信号D2に同期して発振信号D3を生成する。これを前提にして、復調手段30が、アンテナ31で受信された変調信号D2と電圧制御発振器33によって生成された発振信号D3とを演算して、デジタル信号D1を復調する。つまり、復調手段30は、デジタル信号D1を変調した変調信号D2が電圧制御発振器33の同期処理によって生成された発振信号D3に同期するか否かで、デジタル信号D1を復調する。
【0064】
これにより、電圧制御発振器33によってデジタル信号D1の復調を行うので、従来の受信装置に設けていた変調された中間周波数信号を復調する復調器を削減できるようになる。この結果、当該受信装置3の回路規模を小さくでき、受信装置3の消費電力を削減することができる。
【0065】
このように、本実施の形態に係る送受信システム1によれば、上述の送信装置2及び受信装置3を備えて、電圧制御発振器21,33によってデジタル信号D1の変調及び復調を行うので、従来の送受信システムに設けていた送信側における中間周波数変調用の変調信号源、周波数抽出部である通過帯域フィルタ、及び、受信側における変調された中間周波数信号を復調する復調器を削減できるようになる。この結果、当該送受信システム1の回路規模を小さくでき、送受信システム1の消費電力を削減することができる。
【0066】
<第2の実施の形態>
前述の第1の実施の形態に係る送受信システム1は、データの送受信が可能であるが、ミキサ34に入力される変調信号D2aと発振信号D3との位相差によってデータの復調能力の劣化等が生じる可能性がある。そこで、本実施の形態では、この位相差を調整する位相調整部を備えた受信装置4について説明する。前述の実施の第1の形態と同じ名称及び符号のものは同じ機能を有するので、その説明を省略する。
【0067】
[受信装置4の構成例]
図7に示すように、本実施の形態に係る受信装置4は、アンテナ31、増幅器32、電圧制御発振器37、ミキサ38、LPF39、比較器40及び位相調整部50を備える。
【0068】
位相調整部50は、LPF39と電圧制御発振器37との間に接続される。位相調整部50は、LPF39から出力された抽出信号D5a,D5bのDC成分における位相を調整する。
【0069】
図8は、横軸を電圧制御発振器37の自走発振周波数ωvcoと電圧制御発振器37に入力される変調信号D2aの周波数ωinjとの差とし、縦軸を発振信号D3と変調信号D2aとの位相差θ1としたとき、電圧制御発振器37の入出力間の位相差の特性例を示す説明図である。
【0070】
図8に示すように、周波数の差ωvco−ωinjが所定値−ωm以下である場合、発振信号D3と変調信号D2aとの位相差θ1は0となり、自走発振周波数ωvcoは変調信号D2aの周波数ωinjに同期しない。また、周波数の差ωvco−ωinjが所定値ωm以上である場合も、発振信号D3と変調信号D2aとの位相差θ1は0となり、自走発振周波数ωvcoは変調信号D2aの周波数ωinjに同期しない。周波数の差ωvco−ωinjが所定値−ωmより大きく所定値ωmより小さい場合には、位相差θ1は曲線41のようにπ/2から−π/2まで変化し、自走発振周波数ωvcoは変調信号D2aの周波数ωinjに同期する。なおωmは式1にて決定される。
【0071】
破線43で囲まれた領域は、電圧制御発振器37の自走発振周波数ωvcoが当該電圧制御発振器37に入力される変調信号D2aの周波数ωinjに同期する状態である。破線43で囲まれていない領域は、電圧制御発振器37の自走発振周波数ωvcoが当該電圧制御発振器37に入力される変調信号D2aの周波数ωinjに同期しない状態である。
【0072】
図9は、ミキサ38に入力される変調信号D2aと発振信号D3とが同じ周波数であることを前提として、横軸をミキサ38に入力される変調信号D2aと発振信号D3との位相差θ2とし、縦軸をミキサ38が出力するDC動作点に対する変動の電圧値Vdifとしたとき、ミキサ38の出力DC変動の特性例を示す説明図である。
【0073】
図9に示すように、位相差θ2が−π/2及びπ/2のとき、電圧値Vdifは0となる。位相差θ2が−π/2とπ/2との間では、当該位相差θ2と電圧値Vdifとの関係は曲線42のようになり、位相差が0のとき、電圧値Vdifは最大値をとる。つまり、電圧制御発振器37の自走発振周波数ωvcoと電圧制御発振器37に入力される変調信号D2aの周波数ωinjとの差を0にすることで、変調信号D2aと発振信号D3との位相差が0になり、電圧値Vdifは最大値となり、図6Cに示したような理想的な演算信号D4が得られる。つまり、電圧値Vdifを最大にするような制御を行えば、理想的な演算信号D4が得られることになる。
【0074】
次に、位相調整部50について説明する。図7に戻って、位相調整部50は、減算器51、A/D変換器52、位相制御部53及びD/A変換器54を有する。位相調整部50は、減算器51、A/D変換器52、位相制御部53及びD/A変換器54の順番でそれぞれ接続される。
【0075】
位相制御部53は、電圧制御発振器37に入力する調整電圧Vctを時間的に徐々に変化させる。すると、減算器51は、LPF39から出力された調整電圧Vctで時間的に変化された抽出信号D5aと抽出信号D5bとの差を算出して、電圧値Vdifとして出力する。
【0076】
A/D変換器52は、減算器51から出力された電圧値Vdifをデジタル信号に変換する。位相制御部53は、デジタル信号に変換されて時間的に変化された電圧値Vdifの値を測定する。位相制御部53は、測定した電圧値Vdifが最大となるように調整電圧Vctを調整して出力する。D/A変換器54は、位相制御部53から出力された調整電圧Vctをアナログ信号に変換して電圧制御発振器37に出力する。
【0077】
これにより、電圧値Vdifが最大となるように調整された調整電圧Vctによって、電圧制御発振器37の自走発振周波数ωvcoと電圧制御発振器37に入力される変調信号D2aの周波数ωinjとの差が0になり、変調信号D2aと発振信号D3との位相差が0になる。これにより、図6Cに示したような理想的な演算信号D4が得られる。
【0078】
このように、受信装置4にフィードバック制御を行う位相調整部50を備えることで、データの復調能力の劣化や復調自体ができなくなるということを防止できる。
【0079】
[電圧制御発振器37の構成例、動作例]
次に、本実施の形態に係る電圧制御発振器37の構成例について説明する。図10に示すように、電圧制御発振器37は、インダクタL21,L22、コンデンサC21,C22、トランジスタQ21,Q22,Q23,Q24及び電流源Ivco,Iinjで構成される。
【0080】
インダクタL21,L22は、その一端が電源Vccに接続される。コンデンサC21は、その一端が位相調整部50に接続され、その他端がインダクタL21の他端及びミキサ38に接続される。コンデンサC22は、その一端が位相調整部50及びコンデンサC21の一端に接続され、その他端がインダクタL22の他端及びミキサ38に接続される。
【0081】
トランジスタQ21,Q22,Q23,Q24及び電流源Ivco,Iinjは、前述の電圧制御発振器33と同じであるので、その説明を省略する。
【0082】
このように構成された電圧制御発振器37は、コンデンサC21,C22の一端に接続された位相調整部50から調整電圧Vctを受信する。電圧制御発振器37は、調整電圧Vctで自走発振周波数ωvcoと入力される変調信号D2aの周波数ωinjとの差を0にするように調整して発振信号D3を生成し、コンデンサC21,C22の他端に接続されたミキサ38に当該発振信号D3を出力する。
【0083】
電圧制御発振器37が変調信号D2aに対して同期するか否かは、変調信号D2aの周波数ωinj、電流源Iinj、当該電圧制御発振器37の自走発振周波数ωvco及び電流源Ivcoで決定される。同期可能周波数範囲Δωm及び変調信号D2aと発振信号D3との位相差φは、式1及び式2で示される。ここでQは電圧制御発振器37のクオリティファクタと呼ばれる性能を表す指数であり、その値はインダクタL21、L22、コンデンサC21、C22と出力D3につく寄生抵抗で決定される。
【0084】
【数1】

【0085】
【数2】

【0086】
これらの式より、電圧制御発振器37の自走発振周波数ωvcoを調整することにより、同期可能周波数範囲Δωm及び位相差φを同時に調整することができる。
【0087】
[ミキサ38の構成例]
次に、本実施の形態に係るミキサ38の構成例について説明する。図11に示すように、ミキサ38は、抵抗R1,R2及びトランジスタQ31,Q32,Q33で構成される。
【0088】
抵抗R1,R2は、その一端が電源Vccに接続され、その他端がLPF39に接続される。トランジスタQ31は、ゲートが電圧制御発振器37に接続され、ドレインが抵抗R1の他端及びLPF39に接続され、ソースがトランジスタQ33のドレインに接続される。トランジスタQ32は、ゲートが電圧制御発振器37に接続され、ドレインが抵抗R2の他端及びLPF39に接続され、ソースがトランジスタQ31のソースに接続される。トランジスタQ33は、ゲートが増幅器32に接続され、ドレインがトランジスタQ31,Q32のソースに接続され、ソースがグランドに接続される。
【0089】
このように構成されたミキサ38は、トランジスタQ31,Q32のゲートに電圧制御発振器37で生成された発振信号D3が入力され、トランジスタQ33のゲートに増幅器32で増幅された変調信号D2aが入力される。ミキサ38は、発振信号D3と変調信号D2aとを乗算して演算信号D4a,D4bを生成し、LPF39に当該演算信号D4a,D4bを出力する。
【0090】
電圧制御発振器37の自走発振周波数が変調信号D2aの周波数に同期する場合には、ミキサ38の入力部(図11では、トランジスタQ31,Q32のゲート及びトランジスタQ33のゲート)に同じ周波数の変調信号D2a及び発振信号D3が入力される。この結果、ミキサ38の出力部(図11では、抵抗R1,R2の他端)にDC成分がDC動作点Vbiasに対して電圧Vdcが変動する。電圧Vdcは、式3で示されるものである。ここでVrfは、変調信号D2aの入力レベルであり、Vvcoは、発振信号D3の入力レベルであり、θは、変調信号D2aと発振信号D3との位相差である。なお電圧の変動はD4a、D4bでは正負逆方向になる。
【0091】
【数3】

【0092】
電圧制御発振器37の自走発振周波数ωvcoが変調信号D2aの周波数ωinjに同期していない場合、ミキサ38には異なる周波数を有する変調信号D2a及び発振信号D3が入力される。そのため、ミキサ38は、DC動作点Vbiasに対する電圧Vdcを発生しない。ただし、変調信号D2a及び発振信号D3の差分の低周波信号(図6の時間t1から時間t3及び時間t4から時間t5の部分)が出力されるが、LPF39によって除去される。この結果、LPF39を通過後にはDC成分のみ(図6の抽出信号D5)が出力される。
【0093】
LPF39から出力された抽出信号D5は、比較器40に入力される。比較器40は、例えばDC動作点Vbiasに対する変動が抽出された抽出信号D5をVbias+Vdc/2を閾値として比較することで、当該抽出信号D5を復調してデジタル信号D6を生成することができる。
【0094】
このように、本実施の形態に係る受信装置4によれば、変調信号D2aと発振信号D3との位相差を調整する位相調整部50を備えるので、当該受信装置4の復調能力を向上でき、送信装置2から出力された変調信号D2を確実に復調できる。
【0095】
<第3の実施の形態>
本実施の形態では、2つの受信装置を備えた受信装置5について説明する。前述の実施の第1及び第2の形態と同じ名称及び符号のものは同じ機能を有するので、その説明を省略する。
【0096】
図12に示すように、本実施の形態に係る受信装置5は、第1の受信装置(以下、受信装置4aという)、第2の受信装置(以下、受信装置4bという)及び減算器60を備える。受信装置4aは、アンテナ31a、増幅器32a、ミキサ34a、LPF35a、比較器36a、電圧制御発振器37a及び位相調整部50aを備える。受信装置4bは、アンテナ31b、増幅器32b、ミキサ34b、LPF35b、比較器36b、電圧制御発振器37b及び位相調整部50bを備える。
【0097】
アンテナ31a,31b、増幅器32a,32b、ミキサ34a,34b、LPF35a,35b、比較器36a,36b、位相調整部50a,50bは、前述の第1及び第2の実施の形態で説明した、アンテナ31、増幅器32、ミキサ34、LPF35、比較器36及び位相調整部50とそれぞれ同一のものであるので、その説明を省略する。
【0098】
受信装置4aの電圧制御発振器37aは、デジタル信号の「0」の部分に同期しないで、デジタル信号の「1」の部分に同期するような自走発振周波数が設定される。
【0099】
受信装置4bの電圧制御発振器37bは、デジタル信号の「1」の部分に同期しないで、デジタル信号の「0」の部分に同期するような自走発振周波数が設定される。
【0100】
すると、受信装置4aは、前述の図6で説明したように、図13Aに示す受信装置5に送信された変調信号D2を復調して、図13Bに示すデジタル信号D10を生成する。また、受信装置4bは、デジタル信号の「1」の部分に同期しないで、デジタル信号の「0」の部分に同期するような自走発振周波数が設定されるので、図13Cに示すように、受信装置4aが復調したデジタル信号が反転したデジタル信号D11を出力する。
【0101】
受信装置4a,4bには減算器60が接続される。減算器60は、受信装置4aから出力されたデジタル信号D10と、受信装置4bから出力されたデジタル信号D11とを減算して、図13Dに示すようなデジタル信号D12を出力端子OUTに出力する。このデジタル信号D12は、エネルギー効率的に改善されたものである。
【0102】
このように、本実施の形態に係る受信装置5によれば、デジタル信号の「0」で同期しないで、デジタル信号の「1」で同期する受信装置4aと、デジタル信号の「1」で同期しないで、デジタル信号の「0」で同期する受信装置4bとを備えるので、当該受信装置5の受信感度を受信装置3,4より向上できる。
【符号の説明】
【0103】
1・・・送受信システム、2・・・送信装置、3,4,4a,4b,5・・・受信装置、21,33,37,37a,37b・・・電圧制御発振器、30・・・復調手段、34,34a,34b,38・・・ミキサ、60・・・減算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタル信号を当該デジタル信号のレベルに応じて異なる周波数を有する変調信号に変調する第1の発振器と、
前記第1の発振器によって変調された前記変調信号を信号伝送媒体に出力する出力手段と、
前記出力手段によって前記信号伝送媒体に出力された前記変調信号を受信する受信手段と、
前記受信手段で受信された前記変調信号を注入して所定の周波数範囲を有する自走発振周波数を発振し、該発振した前記自走発振周波数で前記変調信号に同期して発振信号を生成する第2の発振器と、
前記受信手段で受信された前記変調信号と前記第2の発振器によって生成された前記発振信号とを演算して、前記デジタル信号を復調する復調手段とを備えた送受信システム。
【請求項2】
前記第1の発振器は、
所定の周波数範囲を有する自走発振周波数で発振して、
前記デジタル信号の0の部分を、第1の周波数を有する変調信号に変調し、
前記デジタル信号の1の部分を、第2の周波数を有する変調信号に変調する請求項1に記載の送受信システム。
【請求項3】
前記第1の発振器は、
所定の周波数である自走発振周波数で発振して、
前記デジタル信号の0の部分を、第1の周波数を有する変調信号に変調し、
前記デジタル信号の1の部分を、第2の周波数を有する変調信号に変調する請求項1に記載の送受信システム。
【請求項4】
前記第2の発振器は、
前記受信手段で受信された前記変調信号の周波数を前記自走発振周波数に同期させて、
前記変調信号の周波数のうち前記第2の周波数を有する部分から、前記第2の周波数とは異なる第3の周波数を有する発振信号を生成し、
前記変調信号の周波数のうち前記第1の周波数を有する部分から、当該変調信号の周波数へと同期して同じ周波数を有する発振信号を生成する1乃至3のいずれかに記載の送受信システム。
【請求項5】
前記復調手段には演算処理部が設けられ、
前記演算処理部は、
前記受信手段で受信された前記変調信号と前記第2の発振器によって生成された前記発振信号とを乗算し、
前記発振信号の周波数のうち前記第3の周波数を有する部分から、DC動作点に対する変動成分を有さない演算信号を生成し、
前記発振信号の周波数のうち前記変調信号の周波数と同じ周波数を有する部分から、DC動作点に対する変動成分を有する演算信号を生成する請求項1又は4に記載の送受信システム。
【請求項6】
前記復調手段には周波数抽出部が設けられ、
前記周波数抽出部は、
前記演算処理部で生成された信号のうちDC動作点に対する変動成分を有する抽出信号を抽出する請求項1又は5に記載の送受信システム。
【請求項7】
前記復調手段には判別部が設けられ、
前記判別部は、
前記周波数抽出部で抽出されたDC動作点に対する変動成分を有する抽出信号のみを外部に出力する請求項1又は6に記載の送受信システム。
【請求項8】
前記第2の発振器には位相調整部が接続され、
前記位相調整部は、
前記周波数抽出部から抽出された信号情報を用いて位相を調整して前記第2の発振器に出力する請求項1又は6に記載の送受信システム。
【請求項9】
デジタル信号を当該デジタル信号のレベルに応じて異なる周波数を有する変調信号に変調する発振器と、
前記発振器によって変調された前記変調信号を信号伝送媒体に出力する出力手段とを備えた送信装置。
【請求項10】
デジタル信号が当該デジタル信号のレベルに応じて異なる周波数を有するように変調された変調信号を受信する受信手段と、
前記受信手段で受信された前記変調信号を注入して所定の周波数範囲を有する自走発振周波数を発振し、該発振した前記自走発振周波数で前記変調信号に同期して発振信号を生成する発振器と、
前記受信手段で受信された前記変調信号と前記発振器によって生成された前記発振信号とを演算して、前記デジタル信号を復調する復調手段とを備えた受信装置。
【請求項11】
前記受信装置を複数備え、
前記複数の受信装置によって復調された前記変調信号を演算処理して、出力信号を生成する請求項10に記載の受信装置。
【請求項12】
送受信システムが、
デジタル信号を当該デジタル信号のレベルに応じてそれぞれ異なる周波数を有する変調信号に変調し、
前記変調された前記変調信号を信号伝送媒体に出力し、
前記信号伝送媒体に出力された前記変調信号を受信し、
前記受信された前記変調信号を注入して自走発振周波数を発振し、該発振した前記自走発振周波数で前記変調信号に同期して発振信号を生成し、
前記受信された前記変調信号と前記生成された前記発振信号とを演算して、前記デジタル信号を復調する送受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−9859(P2011−9859A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148952(P2009−148952)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】