説明

送受信切替回路及び無線通信機

【目的】複雑な回路構成や、高価な回路素子を使用することなく、受信側スイッチ素子に送信信号が印加されたとき、受信部接続端に送信信号が漏洩することを防止することが可能な送受信切替回路及び無線通信機を提供する。
【構成】受信部接続端とアンテナ回路接続端との間に、送信信号を阻止し、且つ、受信信号を受信部接続端に通過させるための受信側スイッチ素子を挿入するとともに、この受信側スイッチ素子に並列に整流素子を接続し、これらの並列回路に送信信号が印加されたとき受信側スイッチ素子に自動的に高い逆バイアス電圧が発生し、送信信号が受信部に流入しないように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送受信切替回路及び無線通信機に関し、詳細には、送信と受信とを一つのアンテナで共用するプレストーク方式の無線通信機及び、それに好適な送受信切替回路に関する。
【背景技術】
【0002】
送信と受信を交互に切替えて通信を行う単信方式(プッシュ・ツー・トークあるいはプレストーク方式とも云う)の無線通信機、特に、移動通信用の無線通信機では、一つのアンテナを送受信に共用する場合が多く、そのための送受信切替回路が必須である。図3は、特許文献1に開示された従来の送受信切替回路を示す図である。この例は、送信機側端子101とアンテナ側端子102との間に直流阻止用キャパシタ103、104を介して送信経路用ダイオードスイッチ105を挿入し、受信機側端子106と上記送信経路用ダイオードスイッチ105のカソード(陰極)との間に、直流阻止キャパシタ107、受信経路用ダイオードスイッチ108、所要値のインダクタ(インダクタンス値L100)109を挿入するとともに、上記送受信経路用ダイオードスイッチ105と108のアノード(陽極)には、夫々、送信用スイッチ(SWT)110、高周波信号阻止用インダクタ111と、受信用スイッチ(SWR)112、高周波信号阻止用インダクタ113を介して送受信切替に対応してバイアス電圧を印加するように構成されている。更に、この例の特徴は、上記受信経路用ダイオードスイッチ108のカソードと接地間に、ダイオードスイッチ114、所要値のキャパシタ(容量値C100)115、可変容量ダイオード(容量値C101)116を含む直列回路が挿入され、可変容量ダイオード116のカソードには容量値制御電圧Vfが高周波信号阻止用インダクタ117を介して供給され、ダイオードスイッチ114のカソードは、高周波信号阻止用インダクタ118を介して直流的に接地されている。
この回路の動作については特許文献1に詳細に記載されているので更なる説明は省略するが、送信動作の間、インダクタ109と、キャパシタ115及び可変容量ダイオード116からなる回路の直列共振周波数が、そのときの送信周波数に一致するように、上記可変容量ダイオード116の容量制御電圧Vfを調整することによって、受信経路に漏洩する可能性のある送信周波数信号を除去するものである。
【0003】
また、図4は、従来の送受信切替回路の他の例を示すブロック図であり、この例では、送信部接続端120とアンテナ回路接続端121との間に、直流阻止用キャパシタ122を介して送信側スイッチ素子123と、そのスイッチ素子を制御するための送信側バイス回路124とを備え、受信部接続端125と上記アンテナ回路接続端121との間に、直流阻止用キャパシタ126を介して受信側スイッチ素子127と、そのスイッチ素子を制御するための受信側バイス回路128とを備え、更に、送信側スイッチ素子123及び受信側スイッチ素子の接続点に、両者のバイアス電流/電圧を接地するための送受共用バイアス回路129を備えたものである。
図5は、上記図4に示した送受信切替回路の具体的構成例を示す図であり、夫々の符号は同一符号のブロックを示している。この例では、送信側スイッチ素子123と受信側スイッチ素子127は、高周波信号のスイッチングに適したPINダイオード(P-Intrinsic-N Diode)が用いられている。この素子は、周知のように順方向に所要値以上の電流が流れると、送信信号や受信信号に対して導通し、低損失電路として働く。そこで図示したように、送信バイアス回路124の送信側バイアス端子TXBには、受信動作のとき電圧RX=0Vが、送信動作のとき電圧TX=8Vが供給され、受信側バイアス回路128の受信側バイアス端子RXBには、受信動作のときRX=8Vが、送信動作のときTX=−200Vが印加されるようになっている。このバイアス電圧制御によって、送信動作では、送信側スイッチ素子123としてのPINダイオード123に電流が流れ、送信信号が通過してアンテナ回路接続端子に供給されるが、受信側スイッチ素子127であるPINダイオードには−200Vの大きな逆電圧が供給されるので、送信信号電圧値がこの電圧を超えない範囲では、同ダイオードがオフ(非導通状態)となるので、送信信号が受信部に流れることがない。また、受信動作においては、送信側スイッチ素子123にバイアス電圧が0V、受信側スイッチ素子117にバイアス電圧8Vが印加されるのでアンテナ回路接続端121に供給される受信信号は受信部接続端125に導かれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4-223621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら以上説明した従来の送受信切替回路や、そのような送受信切替回路を備えた無線通信機では、夫々以下のような不具合があった。
即ち、図3に示した特許文献1記載の発明では、送信動作の間、インダクタ109と、キャパシタ115及び可変容量ダイオード116からなる回路の直列共振周波数が、そのときの送信周波数に一致するように、可変容量ダイオード116の容量制御電圧Vfを調整することによって、受信経路に漏洩する可能性のある送信周波数信号を除去するものである。従って、送信周波数が変更される毎に、可変容量ダイオードを調整して送信周波数に直列共振周波数を正確に一致させる必要があるので、複雑な制御回路が必要であった。また、直列共振回路の周波数は、温度変化や経年変化等によって回路素子の特性が変化するので、その補正回路が必要であり、コストアップや形状の大型化を招く虞があった。
また、図4乃至図5により説明した従来のものでは、送信信号電圧以上の逆バイアス電圧をスイッチングダイオードに印加する必要があるので、その電圧発生のために複雑な電圧昇圧手段が必要であり、同様に、コストアップや形状の大型化を伴うものであった。
本発明は、このような従来の無線通信機や送受信切替回路における不具合を解消するためになされたものであって、複雑な制御や部品点数の増加を伴うことなく、送信信号が受信部に漏洩することを防止した送受信切替回路及び、そのような送受信切替回路を備えた無線通信機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はこのような課題を解決するために、請求項1記載の発明は、送信動作と受信動作を切替え、一つのアンテナによって送受信を行う無線通信機の送受信切替回路において、送信部接続端とアンテナ回路接続端との間に、送信側直流信号阻止用キャパシタ、送信側バイアス回路、送信側スイッチ素子を備え、受信部接続端と上記アンテナ回路接続端との間に、受信側直流信号阻止用キャパシタ、受信側バイアス回路、受信側スイッチ素子、この受信側スイッチ素子に並列に接続した整流素子、上記送信側スイッチ素子と上記受信側スイッチ素子との接続点に接続した送受共用バイアス回路を備え、送信側バイアス回路は、送信動作のとき上記送信側スイッチ素子を導通状態にし、受信動作のときは非導通状態にするようにバイアス電流/電圧を発生し、受信側バイアス回路は、受信動作のとき上記受信側スイッチ素子を導通状態にし、送信動作のときは非導通状態にするようにバイアス電流/電圧を発生するとともに、上記受信側スイッチ素子と整流素子との並列回路に送信信号が印加された際、整流素子により発生する電圧が上記受信側スイッチ素子に対して所要値の逆バイアス電圧となるように発生させることによって、送信電力信号が受信接続端に流入することを防止するように構成したことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は無線通信機に関するもので、送信部と、受信部と、送信動作と受信動作を切替える手段と、送信部が発生する高周波信号をアンテナ接続端に供給し、且つ、アンテナ接続端に供給される受信信号を受信部接続端に導くように送受信信号を切替える送受信切替回路とを備え、一つのアンテナを共用して送受信を行う無線通信機において、上記送受信切替回路は、送信部接続端とアンテナ回路接続端との間に、送信側直流信号阻止用キャパシタ、送信側バイアス回路、送信側スイッチ素子を備え、受信部接続端と上記アンテナ回路接続端との間に、受信側直流信号阻止用キャパシタ、受信側バイアス回路、受信側スイッチ素子、該受信側スイッチ素子に並列に接続した整流素子、上記送信側スイッチ素子と上記受信側スイッチ素子との接続点に接続した送受共用バイアス回路を備え、送信側バイアス回路は、送信動作のとき上記送信側スイッチ素子を導通状態にし、受信動作のときは非導通状態にするようにバイアス電流/電圧を発生し、受信側バイアス回路は、受信動作のとき受信側スイッチ素子を導通状態にし、送信動作のときは非導通状態にするようにバイアス電流/電圧を発生するとともに、上記受信側スイッチ素子と整流素子との並列回路に送信信号が印加された際、整流素子により発生する電圧が上記受信側スイッチ素子に対して所要値の逆バイアス電圧となるように発生させることによって、送信信号が受信接続端に流入することを防止するように構成したことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の送受信切替回路又は請求項2記載の無線通信機において、上記受信用スイッチ素子がPINダイオードであり、これに並列に接続する上記整流素子が、上記PINダイオードに比較して整流動作速度が高速である半導体スイッチ素子であることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3記載の送受信切替回路又は無線通信機において、上記受信用スイッチ素子に並列に接続する整流素子は、上記受信用スイッチ素子数より多い数の半導体整流素子が直列に接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は以上のように、送信部接続端とアンテナ回路接続端との間に、送信側直流信号阻止用キャパシタ、送信側バイアス回路、送信側スイッチ素子を、受信部接続端と上記アンテナ回路接続端との間に、受信側直流信号阻止用キャパシタ、受信側バイアス回路、受信側スイッチ素子、該受信側スイッチ素子に並列に接続した整流素子、上記送信側スイッチ素子と上記受信側スイッチ素子との接続点に接続した送受信共用バイアス回路を備えるとともに、上記受信側スイッチ素子と整流素子との並列回路に送信信号が印加された際、整流素子により発生する電圧が上記受信側スイッチ素子に対して所要値の逆バイアス電圧となるように発生させることによって、送信電力信号が受信接続端に流入することを防止するように構成したものである。従って、複雑な回路構成や、高価な回路素子を使用することなく、受信側スイッチ素子に送信信号が印加されたとき、自動的に高い逆バイアス電圧が発生し、送信信号が受信部に流入することが阻止される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の送受信切替回路の一例を示すブロック図。
【図2】本発明の送受信切替回路の具体例を示す回路図。
【図3】従来の送受信回路の例を示す回路図。
【図4】従来の送受信回路の他の例を示すブロック図。
【図5】従来の送受信回路の他の例を示す回路図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
図1は、本発明に係る送受信切替回路の一例を示すブロック図である。この例に示す送受信切替回路は、送信部接続端1とアンテナ回路接続端2との間に、直流阻止用キャパシタ3を介して送信側スイッチ素子4と、この送信側スイッチ素子を制御するための送信側バイス回路5とを備え、受信部接続端6と上記アンテナ回路接続端2との間に、直流阻止用キャパシタ7を介して受信側スイッチ素子8と、この受信側スイッチ素子8に並列に接続した整流素子9と、受信側スイッチ素子を制御するための受信側バイス回路10とを備え、更に、送信側スイッチ素子4及び受信側スイッチ素子8の接続点に、両者のバイアス電流/電圧を接地するための送受共用バイアス回路11を備えたものである。なお、アンテナ回路接続端2側に直流阻止用キャパシタが挿入されていないが、接続されるアンテナ回路に直流阻止機能がない場合は、送受共用バイアス回路11よりアンテナ回路接続端2側に直流阻止用キャパシタを挿入する必要がある。
【0012】
この例の特徴は、受信側スイッチ素子8に並列に整流素子9を接続し、これら受信側スイッチ素子8と整流素子9との並列回路に送信信号が印加された際、整流素子9により発生する電圧が上記受信側スイッチ素子8に対して所要値の逆バイアス電圧を発生することによって、送信電力信号が受信接続端6に流入することを防止するように構成したことである。
また、送信側バイアス回路5は、送信動作のとき上記送信側スイッチ素子4を導通状態にし、受信動作のときは非導通状態にするようにバイアス電流/電圧を発生し、受信側バイアス回路10は、受信動作のとき上記受信側スイッチ素子8を導通状態にし、送信動作のときは非導通状態にするようにバイアス電流/電圧を発生することは、従来例として説明した図4、図5のものと同様である。
【0013】
図2は、上記図1に示した送受信切替回路の具体的構成例を示す図であり、夫々の符号は同一符号のブロックを示している。この例では、送信側スイッチ素子(D1)4と受信側スイッチ素子(D2)8として、高周波信号のスイッチングに適したPINダイオード(P-Intrinsic-N Diode)が用いられている。この素子は、周知のようにPN接合間に電気抵抗の大きな半導体層を挟み、少数キャリア蓄積効果を大きくし、逆回復時間を長くしたもので、順方向バイアス時に高周波交流を通過させる性質があることを利用し、アンテナ切替など、高周波信号のスイッチングに使用されている。スイッチング回路として使用するため、図示したように、送信バイアス回路5の送信側バイアス端子TXBには、受信動作のとき電圧RX=0V、送信動作のとき電圧TX=8Vが供給され、同時に、受信側バイアス回路10の受信側バイアス端子RXBには、スイッチSWを介してバイアス電圧8Vが供給されるようになっており、受信動作のときスイッチSWを接(ON)してRX=8Vを供給し、送信動作のときスイッチSWを断(OFF)するようになっている。
【0014】
このバイアス電圧制御によって、送信動作では、送信側スイッチ素子4としてのPINダイオードD1に電流が流れ、送信信号が通過してアンテナ回路接続端子2に供給されるが、受信側スイッチ素子8であるPINダイオードD2にはバイアス電流が供給されないので同ダイオードD2がオフ(非導通状態)となる。また、受信動作においては、送信側スイッチ素子4にバイアス電圧が0V、受信側スイッチ素子8にはスイッチSWを介してバイアス電圧8Vが印加されるのでアンテナ回路接続端2にアンテナから供給される受信信号は受信部接続端6に導かれる。
なお、送信動作状態では、大きな電力値の送信信号が受信側スイッチ素子8であるPINダイオードD2に印加されると、その信号波形値の順方向ピーク値付近で送信信号電流が流れ、受信部接続端6に漏洩する場合がある。そこで、従来は図5に示したように、送信時に受信側スイッチ素子に例えば−200V程度の高い逆バイアス電圧を印加する必要があった。
【0015】
この実施例では、このような不具合に対処するため受信側スイッチ素子8であるPINダイオードD2に並列に、整流素子としてPINダイオードのスイッチング速度より速い整流動作速度の二個のダイオードD3、D4を直列に接続している。このように、比較的スイッチング動作の立ち上がり速度が遅いPINダイオードと、それより動作速度が速い整流素子を並列接続した回路に高い波高値の高周波信号が印加されると、その送信信号印加の初期段階にてPINダイオードがスイッチング(導通)するより速く、整流用ダイオードD3、D4によって送信信号が、受信信号端、受信側直流阻止キャパシタ、整流用D3、D4、アンテナ回路接続端の経路で整流され、受信側直流信号阻止用キャパシタに充電されて、結果的にPINダイオードDに送信信号の波高値に応じた逆バイアス電圧が印加された状態となる。図に受信接続端のインピーダンスは示していないが一般的にアンテナ回路端のインピーダンスと同じ50オーム程度であり、直流的なインピーダンスも有限の値であるため、受信端直流阻止キャパシタは高周波信号の整流のピーク電圧で充電される。送信中は受信側バイアス回路が開放されているため、受信側直流信号阻止キャパシタの放電経路が無く、逆バイアス電圧が充電された状態で保持される。従って、この作用によって、PINダイオードが遮断(OFF)状態となって、送信信号が受信部接続端2に流入することが阻止される。
このとき発生する逆バイアス電圧は、整流回路の順方向の電圧(一つのダイオードの順方向電圧は、通常0.6Vであるので、二個分では1.2V)分を差し引いた値となる。例えば、整流素子回路(従って、PINダイオードD2)の両端に印加する送信信号の波高値が+20V〜−20Vである場合、20V−1.2V=18.8Vの電圧の逆バイアス電圧が発生することになる。高周波信号(送信信号)の電圧波高値の正の半サイクルでは整流素子に電流が流れPINダイオードD2の両端電圧(アノード側電圧)は1.2Vになるが、電圧波高値の負の半サイクルでは電流が流れないので20Vの逆電圧が発生し、両端電圧はトータルで−38.8Vになり、結果的にPINダイオードD2の両端電圧はこの逆バイス電圧が維持されることになる。従って、送信信号はPINダイオードD2によって阻止され、受信部接続端6に流れることがない。
【0016】
このように、本発明では、特段にダイオードスイッチに対する逆バイアス電圧として供給するための電源回路を設ける必要が無いので、無線通信機の小型化が可能であり、しかも大幅なコストアップを伴わない。
また、この例に示すように整流素子の直列接続数をPINダイオードの素子数(直列接続数)より多くすれば、受信動作においてPINダイオードD2に順方向にバイアス電流を通電して導通状態にする際、バイアス電流が整流用ダイオード側に流れて、PINダイオードが導通しないという不具合を回避する上で有用である。
【0017】
このような送受信切替回路を搭載する無線通信機としては、一般的な構成のものに適用であってもよい。例えば、送信部と、受信部と、送信動作と受信動作を切替える手段と、送信部が発生する高周波信号をアンテナ接続端に供給し、且つ、アンテナ接続端子に供給される受信信号を受信部に導くように送受信信号を切替える送受信切替回路とを備え、一つのアンテナを共用して送受信を行う無線通信機であれば適用可能である。そして、そのような無線通信機において、その送受信切替回路を、上述したように、送信部接続端とアンテナ回路接続端との間に、直流信号阻止用キャパシタと、送信側バイアス回路と、送信側スイッチ素子を備え、受信部接端と上記アンテナ回路接続端との間に、直流信号阻止用キャパシタと、受信側バイアス回路と、受信側スイッチ素子と、この受信側スイッチ素子に並列に接続した整流素子と、上記送信側スイッチ素子と上記受信側スイッチ素子との接続点に接続した送受共用バイアス回路を備え、上記送信側バイアス回路は、送信動作のとき送信側スイッチ素子を導通状態にし、受信動作のときは非導通状態にするようにバイアス電流/電圧を発生し、受信側バイアス回路は、受信動作のとき前記受信側スイッチ素子を導通状態にし、送信動作のときは非導通状態にするようにバイアス電流/電圧を発生する。
【0018】
更に、上記受信側スイッチ素子と整流素子との並列回路に送信信号が印加された際、整流素子により発生する電圧が前記受信側スイッチ素子に対して所要値の逆バイアス電圧となるように発生させることによって、送信電力信号が受信接続端に流入することを防止するように構成すればよい。プレストーク方式の無線通信機では、一般的にマイクロホンに送信動作時に押圧するプレストークスイッチ(PTTスイッチ)が備えられているので、そのスイッチの押圧信号によって、図2に示した送信側バイアス回路5のTXB端子にB電源電圧(バイアス電圧)を供給し、また、受信側バイアス回路10のスイッチSWをオン/オフするように構成すればよい。なお、プレストークスイッチの代わりに、マイクロホンから所定レベル以上の音声信号を検出して、自動的に送信動作を起動する機能を付加したものでは、その機能によって、上記バイアス回路を制御すればよい。
このように構成した無線通信機であれば、送受信切替回路が小型化や低コスト化できるのみならず、プレストークスイッチ、又は、マイクロホンのボイスコントロールによるプレストークスイッチングとの連動によって、受信機と送信機の動作を切替るとともに、一つのアンテナへの送信信号の供給、アンテナに誘起する受信信号を受信部に導く切替処理も行うことができる。
なお、図2に示した送受共用バイアス回路11を、送受信別々に設けても良いことは云うまでもない。
【0019】
また、送受共用バイアス回路11の構成を変形してスプリアス信号の除去機能を付加することもできる。例えば、高周波阻止用インダクタL3と直流阻止用キャパシタC3の値を適宜選定することによって、その直列共振周波数が送信、又は、受信動作時における、不要波信号周波数になるように設定すれば、その不要波信号の影響を除去し得る可能性がある。その際、特許文献1に倣って直流阻止用キャパシタC3を可変容量ダイオードにするとともに、そのバイアス電圧を制御するための回路を付加すれば、送受信夫々において、また、チャネル周波数を変更した場合に不要波周波数が変動する場合にも対応可能である。なお、希望信号周波数と不要波信号周波数が近く、希望信号周波数に対する直列共振周波数の選択度が所望値に至らず、希望波が漏洩する可能性がある場合は、キャパシタC3に並列に所要値のインダクタを(直流阻止用キャパシタを介して)接続することにより、送受共用バイアス回路全体の並列共振周波数が希望波信号となるように構成することにより、希望信号に対するインピーダンスを高くすることも可能であろう。
【0020】
本発明は以上のように、送信部接続端とアンテナ回路接続端との間に、送信側直流信号阻止用キャパシタ、送信側バイアス回路、送信側スイッチ素子を、受信部接続端と上記アンテナ回路接続端との間に、受信側直流信号阻止用キャパシタ、受信側バイアス回路、受信側スイッチ素子、該受信側スイッチ素子に並列に接続した整流素子、上記送信側スイッチ素子と上記受信側スイッチ素子との接続点に接続した送受信共用バイアス回路を備えるとともに、上記受信側スイッチ素子と整流素子との並列回路に送信信号が印加された際、整流素子により発生する電圧が上記受信側スイッチ素子に対して所要値の逆バイアス電圧となるように発生させることによって、送信電力信号が受信接続端に流入することを防止するように構成したものである。従って、複雑な回路構成や、高価な回路素子を使用することなく、受信側スイッチ素子に送信信号が印加されたとき、自動的に高い逆バイアス電圧が発生し、送信信号が受信部に流入することが阻止される。
【0021】
以上本発明の実施例を説明したが、このような回路としては、例えば、上記受信用スイッチ素子がPINダイオードであり、これに並列に接続する整流素子が、PINダイオードのスイッチング速度に比較して整流動作速度が高速である半導体スイッチ素子であるように構成することによって実現できる。
本発明はこれらの例に限定することなく、種々の変形が可能である。例えば、PINダイオードと整流ダイオードとの組合せのように、一方のダイオードの整流動作速度が他方のダイオードのスイッチング動作より速いものとの組合せであれば、同様の作用効果が期待でき、本発明に利用可能であろう。また、両者のダイオードを同一半導体基板中に、混合物の含有量や種類を部分的に適宜選択して、上述したように整流動作速度とスイッチング速度が異なるような半導体素子を作り込むことによって、上述したような動作を呈する半導体素子を構成することも可能であろう。現在知られているダイオードの種類としては、金属と半導体との接合面のショットキー効果の整流作用を利用するショットキーバリアダイオード、逆方向の所定電圧以上で、なだれ現象(ツェナー降伏)を呈するツェナーダイオード、所定の順方向電圧以上で、一定の電流が流れる定電流ダイオード、量子トンネル効果により順方向電圧が上昇するほど流れる電流が少なくなるトンネルダイオード、交流電源から直接トリガパルスを得る回路やサージ保護用に使用されるトリガ・ダイオード等々が知られている。これらのダイオードの高周波に対する特性が異なっているので、夫々の特性を勘案して適宜組合せることにより、本発明の整流素子、スイッチング素子として使用し得る可能性があろう。また、ダイオード(二極素子)に限らず、FET素子のような多極半導体素子として構成することも可能である。
【符号の説明】
【0022】
1 送信部接続端、2 アンテナ回路接続端、3、7 直流阻止キャパシタ、4 送信側スイッチ素子、5 送信側バイアス回路、6 受信部接続端子、8 受信側スイッチ素子、9 整流素子、10 受信側バイアス回路、11 送受共用バイス回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信動作と受信動作を切替え一つのアンテナによって送受信を行う無線通信機の送受信切替回路において、送信部接続端とアンテナ回路接続端との間に、送信側直流信号阻止用キャパシタ、送信側バイアス回路、送信側スイッチ素子を備え、受信部接続端と前記アンテナ回路接続端との間に、受信側直流信号阻止用キャパシタ、受信側バイアス回路、受信側スイッチ素子、該受信側スイッチ素子に並列に接続した整流素子、前記送信側スイッチ素子と前記受信側スイッチ素子との接続点に接続した送受共用バイアス回路を備え、前記送信側バイアス回路は、送信動作のとき前記送信側スイッチ素子を導通状態にし、受信動作のときは非導通状態にするようにバイアス電流/電圧を発生し、前記受信側バイアス回路は、受信動作のとき前記受信側スイッチ素子を導通状態にし、送信動作のときは非導通状態にするようにバイアス電流/電圧を発生するとともに、前記受信側スイッチ素子と整流素子との並列回路に送信信号が印加された際、前記整流素子により発生する電圧が前記受信側スイッチ素子に対して所要値の逆バイアス電圧となるように発生させることによって、送信信号が受信接続端に流入することを防止するように構成したことを特徴とする送受信切替回路。
【請求項2】
送信部と、受信部と、送信動作と受信動作を切替える手段と、送信部が発生する高周波信号をアンテナ接続端に供給し、且つ、アンテナ接続端子に供給される受信信号を前記受信部接続端に導くように送受信信号を切替える送受信切替回路とを備え、一つのアンテナを共用して送受信を行う無線通信機において、前記送受信切替回路は、送信部接続端とアンテナ回路接続端との間に、送信側直流信号阻止用キャパシタ、送信側バイアス回路、送信側スイッチ素子を備え、受信部接端と前記アンテナ回路接続端との間に、受信側直流信号阻止用キャパシタ、受信側バイアス回路、受信側スイッチ素子、該受信側スイッチ素子に並列に接続した整流素子、前記送信側スイッチ素子と前記受信側スイッチ素子との接続点に接続した送受共用バイアス回路を備え、前記送信側バイアス回路は、送信動作のとき前記送信側スイッチ素子を導通状態にし、受信動作のときは非導通状態にするようにバイアス電流/電圧を発生し、前記受信側バイアス回路は、受信動作のとき前記受信側スイッチ素子を導通状態にし、送信動作のときは非導通状態にするようにバイアス電流/電圧を発生するとともに、前記受信側スイッチ素子と整流素子との並列回路に送信信号が印加された際、前記整流素子により発生する電圧が前記受信側スイッチ素子に対して所要値の逆バイアス電圧となるように発生させることによって、送信信号が受信接続端に流入することを防止するように構成したことを特徴とする無線通信機。
【請求項3】
請求項1記載の送受信切替回路又は請求項2記載の無線通信機において、前記受信用スイッチ素子がPINダイオードであり、これに並列に接続する前記整流素子が、前記PINダイオードに比較して整流動作速度が高速である半導体スイッチ素子であることを特徴とする送受信切替回路又は無線通信機。
【請求項4】
請求項1乃至3記載の送受信切替回路又は無線通信機において、前記受信用スイッチ素子に並列に接続する前記整流素子は、前記受信用スイッチ素子数より多い数の半導体整流素子が直列に接続されていることを特徴とする送受信切替回路又は無線通信機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−263575(P2010−263575A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−114762(P2009−114762)
【出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】