説明

送受信装置および方法、送受信装置の製造装置、並びにプログラム

【課題】RFIDタグの通信の安定性を向上させる。
【解決手段】磁性流体インクにより印刷媒体11に印刷されて構成され、RFIDタグICチップ21の通信に使用されるアンテナ22−1は、13.56MHzよりも低周波の周波数帯域の信号を送受信し、同様に構成されるアンテナ22−2は、13.56MHzよりも高周波の周波数帯域の信号を送受信する。スイッチ制御部61が、係数記憶部62に記憶されている係数に基づいて、アンテナ22−1を第1の時間だけオンにした後オフにし、アンテナ22−2を、第2の時間だけオンにした後オフにするように、アンテナ22−1,22−2とを切り替えて、アンテナ22−1,22−2が一体となって13.56MHzの共振周波数となるように構成する。本発明は、RFIDタグを内蔵する印刷用紙に適用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送受信装置および方法、送受信装置の製造装置、並びにプログラムに関し、特に、通信の安定性を向上させるようにした送受信装置および方法、送受信装置の製造装置、並びにプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
RFID(Radio Frequency Identification)タグを用いて固体管理を行うシステムが一般に普及しつつある。
【0003】
RFIDタグとは、識別コードなどの情報が記録された微小な無線IC(Integrated Circuit)チップであり、電波を使って管理システムと情報を送受信する能力をもつものである。RFIDタグは、物体の識別に利用されるものとして、産業界においてバーコードに代わる商品識別、または管理技術として研究が進められてきたが、それに留まらず社会のIT(Infomation Technology)化、および自動化を推進する上での基盤技術として注目が高まっている。
【0004】
RFIDタグは、このような特徴を持ったものであるため、近年、このRFIDタグをパスポートなどの紙面に付し、電子パスポートのように扱えるようにした印刷物がある。ところが、従来技術では、RFIDタグが破損しないように紙が厚くなっている課題があった。
【0005】
そこで、RFIDタグにおいて破損し易いアンテナを構成する部位を印刷により構成する技術が提案されている。
【0006】
しかしながら、印刷によりアンテナを構成すると印刷斑や経年劣化による感度のばらつきが生じるため、通信の安定性が低下する恐れがあった。
【0007】
このようなアンテナの感度のばらつきによる通信の安定性を向上させる技術としては、アンテナを二重にすることによりRFIDタグとの通信範囲を広くして、通信の安定性を向上させる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0008】
また、アンテナの共振回路を構成するコンデンサを複数実装することにより、複数のコンデンサの組み合わせにより共振周波数を調整することで、通信の安定性を向上させる技術が提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2007−523562号公報
【特許文献2】特開2006−244214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1の手法では、出力が強化されるものの、共振周波数のばらつきが調整できないので、必ずしも通信を安定させることができない恐れがある。
【0011】
また、特許文献2の手法では、共振周波数のばらつきを調整できるものの、大量のコンデンサを設けない限り、離散的な調整しかできないため、微小な共振周波数の調整を行うことが必ずしもできない恐れがある。
【0012】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、特に、紙面にRFIDタグを用いる際、紙面の厚さを違和感のない厚さとしつつ、容易で、かつ、低コストな構成により、RFIDタグの通信の安定性を向上させるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の側面の送受信装置は、第1の周波数帯域の信号を送受信する第1のアンテナと、前記第1の周波数帯域と異なる第2の周波数帯域の信号を送受信する第2のアンテナと、前記第1のアンテナを第1の時間だけオンにし、前記第2のアンテナを、前記第2の時間だけオンにするように、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとを切り替える切替手段とを含む。
【0014】
前記第1のアンテナおよび前記第2のアンテナは、磁性流体インクにより印刷されたアンテナとすることができる。
【0015】
前記第1の周波数帯域は、所定の周波数帯域よりも低く、前記第2の周波数帯域は、所定の周波数帯域よりも高いものとすることができる。
【0016】
前記切替手段には、前記第1の周波数帯域および前記第2の周波数帯域を合成することにより、前記所定の周波数帯域の搬送波を構成するように、前記第1のアンテナを第1の時間だけオンにし、前記第2のアンテナを、前記第2の時間だけオンにするように、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとを切り替えるようにさせることができる。
【0017】
前記第1の時間および前記第2の時間を設定する係数を記憶する記憶手段をさらに含ませるようにすることができ、前記切替手段には、前記記憶手段に記憶された係数に基づいて、前記第1の周波数帯域および前記第2の周波数帯域を合成することにより、前記所定の周波数帯域の搬送波を構成するように、前記第1のアンテナを第1の時間だけオンにし、前記第2のアンテナを、前記第2の時間だけオンにするように、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとを切り替えるようにさせることができる。
【0018】
本発明の第1の側面の送受信方法は、第1の周波数帯域の信号を送受信する第1のアンテナと、前記第1の周波数帯域と異なる第2の周波数帯域の信号を送受信する第2のアンテナとを含む送受信装置の送受信方法であって、前記第1のアンテナを第1の時間だけオンにし、前記第2のアンテナを、前記第2の時間だけオンにするように、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとを切り替える切替ステップを含む。
【0019】
本発明の第1の側面のプログラムは、第1の周波数帯域の信号を送受信する第1のアンテナと、前記第1の周波数帯域と異なる第2の周波数帯域の信号を送受信する第2のアンテナとを含む送受信装置を制御するコンピュータに、前記第1のアンテナを第1の時間だけオンにし、前記第2のアンテナを、前記第2の時間だけオンにするように、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとを切り替える切替ステップを含む処理を実行させる。
【0020】
本発明の第2の側面の送受信装置の製造装置は、第1の周波数帯域の信号を送受信する第1のアンテナと、前記第1の周波数帯域と異なる第2の周波数帯域の信号を送受信する第2のアンテナと、第1の時間および第2の時間を設定する係数を記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された係数に基づいて、前記第1の周波数帯域および前記第2の周波数帯域を合成することにより、前記所定の周波数帯域の搬送波を構成するように、前記第1のアンテナを第1の時間だけオンにし、前記第2のアンテナを、前記第2の時間だけオンにするように、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとを切り替える切替手段とを含む送受信装置を製造する製造装置であって、前記所定の周波数帯域の搬送波により送受信する送受信手段と、前記第1のアンテナ、および前記第2のアンテナにより前記所定の周波数帯域の搬送波による信号を受信したことを検出する第1の受信検出手段と、前記送受信手段により前記第1のアンテナおよび前記第2のアンテナより送信されてくる信号を受信したこを検出する第2の受信検出手段と、前記第1の受信検出手段および前記第2の受信検出手段により受信が検出されない場合、前記記憶手段に記憶されている係数を所定値だけ変更する係数設定手段とを含む。
【0021】
本発明の第1の側面においては、第1のアンテナにより、第1の周波数帯域の信号が送受信され、第2のアンテナにより、前記第1の周波数帯域と異なる第2の周波数帯域の信号が送受信され、前記第1のアンテナが第1の時間だけオンにされ、前記第2のアンテナが、前記第2の時間だけオンにされるように、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとが切り替えられる。
【0022】
本発明の第2の側面においては、第1のアンテナにより、第1の周波数帯域の信号が送受信され、第2のアンテナにより、前記第1の周波数帯域と異なる第2の周波数帯域の信号が送受信され、第1の時間および第2の時間を設定する係数が記憶され、記憶された係数に基づいて、前記第1の周波数帯域および前記第2の周波数帯域が合成されることにより、前記所定の周波数帯域の搬送波が構成されるように、前記第1のアンテナが第1の時間だけオンにされ、前記第2のアンテナが、前記第2の時間だけオンにされるように、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとが切り替えられ、前記所定の周波数帯域の搬送波により送受信され、前記第1のアンテナ、および前記第2のアンテナにより前記所定の周波数帯域の搬送波による信号が受信されたことが検出され、前記第1のアンテナおよび前記第2のアンテナより送信されてくる信号が受信されたこが検出され、受信が検出されない場合、記憶されている係数が所定値だけ変更される。
【0023】
本発明の送受信装置、または送受信装置の製造装置は、独立した装置であっても良いし、送受信処理、または、製造処理を行うブロックであっても良い。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一側面によれば、RFIDタグを紙面に内蔵させる際、通信の安定性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明を適用した印刷媒体の構成例を示す図である。
【図2】図1のRFIDタグICおよびアンテナの構成例を示す図である。
【図3】図2のRFIDタグICおよびアンテナの構成例を回路図で示した図である。
【図4】印刷媒体、リーダライタ、および発振周波数調整器の構成例を示すブロック図である。
【図5】周波数調整処理を説明するフローチャートである。
【図6】周波数調整処理を説明する図である。
【図7】周波数調整処理により実現されるアンテナの構成例を説明する図である。
【図8】周波数調整処理を説明する図である。
【図9】パーソナルコンピュータの構成例を説明する図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
[RFIDタグICチップ内蔵印刷媒体の構成例]
図1は、本発明を適用した一実施の形態の構成例を示す印刷媒体である。尚、図1の上部は、印刷媒体の印刷面を正面とした正面図であり、図1の下部は、印刷媒体の印刷面を上部とした側面図である。
【0027】
図1の印刷媒体11は、例えば、写真プリンタ用紙である。この印刷媒体11には、RFID(Radio Frequency Identification)タグIC(Integrated Circuit)チップ21が内蔵されている。このため、印刷媒体11は、リーダライタ51(図4)との通信によりRFIDタグICチップ21に記録された情報を読み出す、または、RFIDタグICチップ21に情報を書き込むことが可能となっている。このため、印刷媒体11の内蔵するRFIDタグICチップ21に記憶された情報に基づいて、印刷された情報を電子的に管理することが可能である。
【0028】
RFIDタグICチップ21は、例えば、0.8mm×0.8mm×80μm(縦×横×厚さ)ほどの大きさであり、図1で示されるように、印刷媒体11の左下隅から、例えば、縦および横方向に1mm程度の位置が重心位置となるように配設されている。さらに、RFIDタグICチップ21には、例えば、5mm×5mm(縦×横)程の略方形環状に、磁性流体インクからなるアンテナ22が設けられており、図1で示されるように配設されている。また、アンテナ22の環状内側部分には、アンテナ22の受信感度を向上させるため、軟鉄材からなる磁性体シート23が配設されている。
【0029】
さらに、RFIDタグICチップ21、アンテナ22、および磁性体シート23が配設された領域よりも広い領域において、印刷媒体11の印刷面を上面としたときの背面方向に、ポリエチレンテレフタレートからなる静電気対策シート24が配設されている。また、RFIDタグICチップ21は、その本体の上面部分がポリエチレンテレフタレートなどの封止樹脂25により封止されている。
【0030】
より詳細には、印刷媒体11は、下層部26と上層部27とが張り合わされた構造となっており、さらに、下層部26は、背面から、静電気対策シート24、磁性体シート23、およびアンテナ22の順に積層されており、下層部26の上面にRFIDタグICチップ21が配設されている。アンテナ22は、磁性流体インクによりプリンタなどで印刷された状態で、上層部27に張り合わされることになる。この際、封止樹脂25は、上層部27の平面構造を保つように構成される。また、同様に、静電気対策シート24も、印刷媒体11の平面を保つように構成され、上層部27の図1下部の上面部分となる印刷面における印刷品質の劣化を防止する。
【0031】
このような構成により、RFIDタグICチップ21は、ポリエチレンテレフタレートにより上面が封止され、さらに、背面にポリエチレンテレフタレートからなる静電気対策シート24が配設されることにより、静電気が直接進入しない構造となっている。結果として、RFIDタグICチップ21の静電気による破壊を抑制することが可能となっている。
【0032】
[アンテナの構成例]
次に、図2を参照して、アンテナ22の詳細な構成例について説明する。
【0033】
アンテナ22は、印刷媒体11の下層部26の上面に磁性流体インクにより印刷された2つのアンテナ22−1,22−2より構成されており、それぞれRFIDタグICチップ21に接続されている。アンテナ22−1,22−2は、それぞれ異なるインダクタンスと静電容量の、コイルL0およびコンデンサC0、並びにコイルL1およびコンデンサC1を備えている。アンテナ22−1,22−2は、RFIDタグICチップ21の搬送波周波数13.56MHzよりも低い13MHz付近の周波数と、搬送波周波数13.56MHzよりも高い14MHz付近の周波数との2種類の周波数の電波を発信する構成となっている。RFIDタグICチップ21は、これらの2種のアンテナ22−1,22−2のオンオフを切り替えることにより13.56MHzの周波数の搬送波を発生する。
【0034】
すなわち、アンテナ22−1,22−2は、いずれも磁性流体インクにより印刷されて構成されるが、印刷斑によりアンテナ22−1,22−2の周波数は変化する。そこで、RFIDタグICチップ21が、これらのアンテナ22−1,22−2のオンオフを適切に切り替えることにより、2つの周波数を合成することで、13.56MHzの適正な周波数を共振周波数とするように設定する。結果として、磁性流体インクにより印刷されるアンテナ22−1,22−2が、印刷斑により固体差が生じても、それらを適切に切り替えることで、適正な13.56MHzの搬送波周波数をにより共振させることが可能となり、通信が可能となる。
【0035】
[図2のアンテナの回路構成]
次に、図3を参照して図2のアンテナ22の回路構成について説明する。
【0036】
アンテナ22−1は、並列に接続されたコンデンサC0およびコイルL0より構成されている。アンテナ22−1の一方の端部は、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)からなるスイッチ41−1を介してRFIDタグICチップ21の端子21cに接続され、他方の端部が、RFIDタグICチップ21の端子21dに接続されている。また、アンテナ22−2は、並列に接続されたコンデンサC1およびコイルL1より構成されている。アンテナ22−2の一方の端部は、MOSFETからなるスイッチ41−2を介してRFIDタグICチップ21の端子21cに接続され、他方の端部が、RFIDタグICチップ21の端子21dに接続されている。
【0037】
また、スイッチ41−1のゲートは、RFIDタグICチップ21の端子21aに接続されており、スイッチ41−2のゲートは、RFIDタグICチップ21の端子21bに接続されている。
【0038】
すなわち、RFIDタグICチップ21は、端子21aのオンオフを制御することにより、スイッチ41−1のMOSFETをオンまたはオフに制御すると共に、端子21bのオンオフを制御することにより、スイッチ41−2のMOSFETをオンまたはオフに制御する。
【0039】
[アンテナの周波数調整システムの構成例]
次に、図4のブロック図を参照して、アンテナ22の周波数を調整するための、周波数調整システムの構成例について説明する。周波数調整システムは、リーダライタ51、発振周波数調整器52、および印刷媒体11より構成され、図4は、それらにより実現される機能を示す図である。
【0040】
リーダライタ51は、RFIDタグICチップ21の搬送波周波数13.56MHzの電波によりRFIDタグICチップ21と通信し、RFIDタグICチップ21に情報を記録させると共に、RFIDタグICチップ21に記録されている情報を読み出す。また、RFIDタグICチップ21のアンテナ22の周波数調整処理において、RFIDタグICチップ21に対して、13.56MHzの搬送波周波数により情報を送信すると共に、その情報に対応付けて応答してきた場合、応答が受信されたことを検出し、検出結果を発振周波数調整器52に供給する。
【0041】
より詳細には、リーダライタ51は、制御部71および送受信アンテナ72より構成されている。制御部71は、発振周波数調整器52より周波数調整処理が指示されると送受信アンテナ72を制御して、13.56MHzのRFIDタグの適正な周波数で信号を発信する。また、制御部71は、送受信アンテナ72を制御して、RFIDタグICチップ21がアンテナ22を介して送信してくる13.56MHzの周波数の信号を受信させると共に、RFIDタグICチップ21より13.56MHzの周波数の信号を受信したことを発信周波数調整器52に通知する。
【0042】
RFIDタグICチップ21は、スイッチ制御部61、係数記憶部62、送受信制御部63、リードライト制御部64、および記憶部65より構成されている。スイッチ制御部61は、係数記憶部62に記憶されている係数に基づいて、図3を参照して説明したように端子21a,21bのオンオフを制御して、スイッチ41−1を所定時間だけオンにすることでアンテナ22−1をオンにした後、オフにする。そして、このとき、スイッチ制御部61は、スイッチ41−2をオンに制御し、アンテナ22−2を所定時間だけオンにした後オフにするといった制御を繰り返す。係数記憶部62は、発振周波数調整部52により調整された係数を記憶する。
【0043】
送受信制御部63は、アンテナ22を介してリーダライタ51より13.56MHzの搬送波で送信されてくる信号を受信すると、発信周波数調整器52にその旨を通知する。また、送受信制御部63は、アンテナ22を介してリーダライタ51より情報の書き込み、または読み出しが指示された場合、リードライト制御部64を制御して、記憶部65に情報を記録する、または、記録されている情報を読み出す。送受信制御部63は、周波数調整処理においては、アンテナ22を介してリーダライタ51より情報が送信されてきたとき、すなわち、13.56MHzで発振される搬送波に対して共振したとき、対応する信号をアンテナ22を制御して、リーダライタ51に送信させる。
【0044】
発振周波数調整器52は、係数調整部81、RFID送受信監視部82、リーダライタ送受信監視部83より構成されている。発振周波数調整部52は、RFIDタグICチップ21の受信状態と、リーダライタ51の送受信状態に基づいて、RFIDタグICチップ21に内蔵される係数を更新し、係数記憶部62に記憶させる。
【0045】
係数調整部81は、RFID送受信監視部82、およびリーダライタ送受信監視部83より、13.56MHzの電波に基づいて情報を相互に授受しているか否かにより、係数記憶部62の係数を少しずつ更新する。
【0046】
すなわち、RFIDタグICチップ21およびリーダライタ51により13.56MHzの搬送波信号により信号が受信できたことが通知されてくるまで、係数記憶部62の係数を徐々に更新させる。そして、発振周波数調整器52は、RFIDタグICチップ21およびリーダライタ51により13.56MHzの搬送波信号により信号が受信できた場合、処理を終了する。すなわち、いずれでも応答ができること、すなわち、そのタイミングにおける係数記憶部62に記憶されている係数に基づいて、スイッチ41−1,41−2がオンまたはオフされることにより適正な13.56MHzにより共振は発生していることとなるので、処理が終了する。
【0047】
結果として、2種類の周波数特性のアンテナを用いて合成することにより、適正な13.56MHzの搬送波周波数を共振周波数に設定することが可能となる。
【0048】
[周波数調整処理]
次に、図5のフローチャートを参照して、周波数調整処理について説明する。
【0049】
ステップS1において、係数調整部81は、印刷媒体11におけるRFIDタグICチップ21の係数記憶部62に記憶されている係数を初期値に設定する。尚、係数については、詳細を後述する。
【0050】
ステップS2において、発振周波数調整器52のリーダライタ送受信監視部83は、リーダライタ51に対して周波数調整処理の開始を指示する。
【0051】
ステップS3において、RFID送受信監視部82は、RFIDタグICチップ21より信号を受信したことが通知されてきたか否かを判定する。ステップS3において、例えば、RFIDタグICチップ21より信号を受信したことが通知されていない場合、処理は、ステップS5に進む。ステップS5において、RFID送受信監視部82は、係数調整部81に対して、RFIDタグICチップ21より信号が受信されたことが通知されてきていないので、これに応じて、係数調整部81は、RFIDタグICチップ21の係数記憶部62に記憶されている係数を所定値だけ変更し、処理は、ステップS3に戻る。
【0052】
すなわち、ステップS3において、RFID送受信監視部82が、RFIDタグICチップ21からRFIDタグからの信号が受信されたと判定されるまで、ステップS3,S5の処理が繰り返され、係数調整部81により、係数記憶部62の係数の値が所定値ずつ順次変更され続ける。
【0053】
一方、リーダライタ51においては、ステップS11において、リーダライタ51の制御部71は、周波数調整処理の開始が指示されたか否かを判定し、指示されたと判定されるまで、同様の処理を繰り返す。ステップS11において、例えば、ステップS1の処理により、周波数調整処理の開始が指示された場合、処理は、ステップS12に進む。
【0054】
ステップS12において、リーダライタ51の制御部71は、送受信アンテナ72を介して、RFIDタグの規格周波数である13.56MHzの搬送波により記憶部65に記憶されている情報を読み出す指示を示す情報を送信する。
【0055】
RFIDタグICチップ21においては、ステップS21において、RFIDタグICチップ21のスイッチ制御部61は、係数記憶部62に記憶されている係数を読み出す。この係数は、スイッチ41−1,41−2のそれぞれのオン時間を示す2つの値T0,T1からなる。
【0056】
ステップS22において、スイッチ制御部61は、係数T0,T1の値に基づいて、スイッチ41−1,41−2のオン、またはオフに順次切り替えてアンテナ22−1,22−2を制御する。より詳細には、図6で示されるように、スイッチ制御部61は、スイッチ41−1を係数T0に対応する時間T0だけオンに制御した後、オフに制御すると共に、スイッチ41−2を係数T1に対応する時間T1だけオンに制御し、その後、オフに制御する。そして、再び、スイッチ制御部61は、スイッチ41−1を時間T0だけオンに制御する処理を繰り返す。尚、その際、スイッチ制御部61は、スイッチ41−1をオフに制御してから、スイッチ41−2をオンに制御する際、および、スイッチ42−1をオフに制御してから、スイッチ42−2をオンに制御する際、それぞれ時間Tdだけタイムラグが発生する。
【0057】
スイッチ制御部61は、規格周波数である13.56MHzの、例えば、10倍程度の135.6MHz程度の周波数でスイッチ41−1,41−2のオンオフを制御する。したがって、スイッチ41−1,41−2をそれぞれ一回ずつオンに制御する時間Tcは、実質的に(T0+T1+2Td)となる。したがって、スイッチ41−1は、時間Tcの間隔で、時間T0だけオンに制御されると、それ以降はオフに制御されると共に、スイッチ41−2は、時間Tcの間隔で、時間T1だけオンに制御され、それ以降はオフに制御される。すなわち、スイッチ41−1,41−2が、それぞれ時間(T0+Td)および時間(T1+Td)の間隔で交互に、それぞれが略逆位相となるように制御される。この結果、アンテナ22−1からは、時間Tcの間隔で、時間T0だけ略13MHzの搬送波が発振され、それ以降は発振が停止されると共に、アンテナ22−2は、時間Tcの間隔で、時間T1だけ略14MHzは搬送波が発振され、それ移行は発振が停止される。
【0058】
尚、図6の上段においては、実線で示される波形により、スイッチ41−1のオンまたはオフの状態が表されており、点線で示される波形により、スイッチ41−2のオンまたはオフの状態が表されている。一方、図6の下段においては、実線で示される波形により、スイッチ41−2のオンまたはオフの状態が表されており、点線で示される波形により、スイッチ41−1のオンまたはオフの状態が表されている。
【0059】
すなわち、アンテナ22−1,22−2は、図7で示されるように、それぞれ波形L0,L1で示される略13MHz、および14MHz近傍にピークを備えたスペクトルをとる周波数で発振することになる。このため、スイッチ制御部61が、スイッチ41−1,41−2を係数T0,T1(時間T0,T1)に基づいて、オンオフ制御することにより、時間T0,T1のそれぞれの比率に対応して、アンテナ22−1,22−2の発振周波数が合成され、アンテナ22は、図8で示されるように、あたかもコンデンサCxおよびコイルLxからなる、単独のアンテナとして振る舞い、13MHz乃至14NHzの中間周波数XMHzの共振周波数を発生する。尚、図8においては、RFIDタグICチップ21が、並列に接続されたコンデンサCxおよびコイルLxからなる単独のアンテナ22を介して情報を授受する構成例を示している。
【0060】
ここで、共振周波数である中間周波数XMHzは、以下の式(1)で表される。
【0061】
X=1/(2π√(Lx×Cx))
・・・(1)
【0062】
ここで、Lxは、時間T0,T1に基づいた、アンテナ22−1のコイルL0と、アンテナ22−2のコイルL1との合成インダクタンスであり、以下の式(2)により表される。また、Cxは、時間T0,T1に基づいた、アンテナ22−1のコンデンサC0と、アンテナ22−2のコンデンサC1との合成容量であり、以下の式(3)により表される。
【0063】
Lx=(T0×L0+T1×L1)/Tc
・・・(2)
【0064】
Cx=(T0×C0+T1×C1)/Tc
・・・(3)
【0065】
ステップS23において、送受信制御部63は、アンテナ22(アンテナ22−1,22−2)を制御して、今現在のスイッチ41−1,41−2の切替処理によりリーダライタ51より送信されてくる13.56MHzの信号を受信したか否かを判定する。ステップS23において、例えば、係数T0,T1に対応する時間T0,T1に基づく、スイッチ41−1,41−2のオンオフの切替により生じる共振周波数XMHzが、13.56MHzではなく、受信することができない場合、処理は、ステップS21に戻る。
【0066】
すなわち、受信できない場合、ステップS21乃至S23の処理が繰り返される。この間、RFIDタグICチップ21からは受信したことを示す旨の通知がない状態となるため、発振周波数調整器52においては、上述したように、ステップS3,S5の処理が繰り返されることにより、順次係数記憶部62の係数が所定値ずつ変更され続けるので、ステップS21乃至S23の処理が繰り返される度に、共振周波数Xが変化し続けることになる。
【0067】
そして、ステップS23において、共振周波数XMHzが、様々な値に変化した後、13.56MHzに変化した場合、送受信制御部63は、アンテナ22を介してリーダライタ51より送信されてくる信号を受信することになる。この結果、処理は、ステップS24に進む。
【0068】
ステップS24において、送受信制御部63は、13.56MHzの共振周波数によりリーダライタ51より送信されてきた信号を受信したことを発振周波数調整器52に通知する。
【0069】
この結果、リーダライタ51においては、ステップS3において、信号を受信したことが通知されることになるので、処理は、ステップS4に進む。
【0070】
ステップS4において、リーダライタ送受信監視部83は、リーダライタ51よりRFIDタグICチップ21からの信号が受信されたことが通知されてきたか否かを判定する。ステップS4において、例えば、リーダライタ51よりRFIDタグICチップ21からの信号が受信されたことが通知されてこない場合、処理は、ステップS5に戻る。すなわち、再び係数記憶部62の係数が更新されることになる。
【0071】
さらに、RFIDタグICチップ21においては、ステップS25において、送受信制御部63は、受信した信号をリードライト制御部64に供給する。リードライト制御部64は、受信した信号の指示に基づいて、記憶部65に記憶されている情報を読み出し、送受信制御部63を制御し、アンテナ22を介してリーダライタ51に送信する。
【0072】
そして、ステップS26において、送受信制御部63は、発振周波数調整器52より処理の終了が指示されたか否かを判定し、指示されていない場合、処理は、ステップS21に戻り、終了は指示されるまで、ステップS21乃至S26の処理が繰り返される。
【0073】
また、リーダライタ51においては、ステップS13において、制御部71は、送受信アンテナ72を介して、RFIDタグICチップ21よりアンテナ22を介して、13.56MHzの共振周波数により記憶部65に記憶されていた情報が送信されてきたか否かを判定する。ステップS13において、例えば、ステップS25の処理により、情報が送信されてきた場合、処理は、ステップS14に進む。
【0074】
ステップS14において、制御部71は、発振周波数調整器52に対して、13.56MHzの適正な周波数によりRFIDタグICチップ21の記憶部65に記憶されていた情報を受信したことを通知する。
【0075】
一方、ステップS13において、送信されてきていないと判定された場合、ステップS14の処理はスキップされる。そして、ステップS15において、制御部71は、発振周波数調整器52より処理の終了が指示されたか否かを判定し、指示されていない場合、処理は、ステップS12に戻り、終了は指示されるまで、ステップS12乃至S15の処理が繰り返される。
【0076】
そして、発振周波数調整器52においては、ステップS4において、例えば、ステップS14の処理により、13.56MHzの共振周波数によりRFIDタグICチップ21の記憶部65に記憶されていた情報を受信したことが通知されると、処理は、ステップS6に進む。ステップS6において、RFID送受信監視部82は、RFIDタグICチップ21に対して周波数調整処理の終了を指示する。また、同時に、リーダライタ送受信監視部83は、リーダライタ51に対して周波数調整処理の終了を指示する。
【0077】
この結果、ステップS15,S26においては、終了が指示されたと判定されて、処理は、終了する。
【0078】
以上の処理により、発振周波数調整処理により、調整された係数に基づいて、アンテナ22−1,22−2を適切な時間間隔で交互に切り替えることで、13.56MHzの周波数を発するよにアンテナ22を調整することが可能となる。結果として、アンテナ22−1,22−2が磁性流体インクにより印刷されることで印刷斑などにより発振周波数が変動することがあっても、常に適切な共振周波数に設定することが可能となる。また、経年劣化などにより磁性流体インクによるアンテナ22による共振周波数が変化しても、再調整することが可能となり、リーダライタ51との安定的な通信を実現することが可能となる。
【0079】
また、このような構成のアンテナ22により、紙面にRFIDタグを用いる際、紙面の厚さを違和感のない厚さとしつつ、容易で、かつ、低コストな構成により、RFIDタグの通信の安定性を向上させることが可能となる。
【0080】
尚、以上においては、アンテナの材質として磁性流体インクを用いる例について説明してきたが、アンテナの材質は、磁性流体インクに限るものではなく、その他の材質であってもよいものであり、その他の材質を用いたアンテナであっても、上述のように、適切な間隔で切り替えて使用することで、適切な共振周波数に設定することが可能となる。
【0081】
ところで、上述した一連の処理は、ハードウェアにより実行させることもできるが、ソフトウェアにより実行させることもできる。一連の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ、または、各種のプログラムをインストールすることで、各種の機能を実行することが可能な、例えば汎用のパーソナルコンピュータなどに、記録媒体からインストールされる。
【0082】
図9は、汎用のパーソナルコンピュータの構成例を示している。このパーソナルコンピュータは、CPU(Central Processing Unit)1001を内蔵している。CPU1001にはバス1004を介して、入出力インタフェース1005が接続されている。バス1004には、ROM(Read Only Memory)1002およびRAM(Random Access Memory)1003が接続されている。
【0083】
入出力インタフェース1005には、ユーザが操作コマンドを入力するキーボード、マウスなどの入力デバイスよりなる入力部1006、処理操作画面や処理結果の画像を表示デバイスに出力する出力部1007、プログラムや各種データを格納するハードディスクドライブなどよりなる記憶部1008、LAN(Local Area Network)アダプタなどよりなり、インターネットに代表されるネットワークを介した通信処理を実行する通信部1009が接続されている。また、磁気ディスク(フレキシブルディスクを含む)、光ディスク(CD-ROM(Compact Disc-Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)を含む)、光磁気ディスク(MD(Mini Disc)を含む)、もしくは半導体メモリなどのリムーバブルメディア1011に対してデータを読み書きするドライブ1010が接続されている。
【0084】
CPU1001は、ROM1002に記憶されているプログラム、または磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、もしくは半導体メモリ等のリムーバブルメディア1011から読み出されて記憶部1008にインストールされ、記憶部1008からRAM1003にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM1003にはまた、CPU1001が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0085】
尚、本明細書において、記録媒体に記録されるプログラムを記述するステップは、記載された順序に沿って時系列的に行われる処理は、もちろん、必ずしも時系列的に処理されなくとも、並列的あるいは個別に実行される処理を含むものである。
【符号の説明】
【0086】
11 印刷媒体, 21 RFIDタグICチップ, 22,22−1,22−2 アンテナ, 41−1,41−2 スイッチ, 51 リードライタ, 52 発振周波数調整器, 61 スイッチ制御部, 62 係数記憶部, 63 送受信制御部, 64 リードライト制御部, 65 送受信制御部, 71 制御部, 72 送受信アンテナ, 81 係数調整部, 82 RFID送受信監視部, 83 リーダライタ送受信監視部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の周波数帯域の信号を送受信する第1のアンテナと、
前記第1の周波数帯域と異なる第2の周波数帯域の信号を送受信する第2のアンテナと、
前記第1のアンテナを第1の時間だけオンにし、前記第2のアンテナを、前記第2の時間だけオンにするように、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとを切り替える切替手段と
を含む送受信装置。
【請求項2】
前記第1のアンテナおよび前記第2のアンテナは、磁性流体インクにより印刷されたアンテナである
請求項1に記載の送受信装置。
【請求項3】
前記第1の周波数帯域は、所定の周波数帯域よりも低く、前記第2の周波数帯域は、所定の周波数帯域よりも高い
請求項1に記載の送受信装置。
【請求項4】
前記切替手段は、前記第1の周波数帯域および前記第2の周波数帯域を合成することにより、前記所定の周波数帯域の搬送波を構成するように、前記第1のアンテナを第1の時間だけオンにし、前記第2のアンテナを、前記第2の時間だけオンにするように、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとを切り替える
請求項3に記載の送受信装置。
【請求項5】
前記第1の時間および前記第2の時間を設定する係数を記憶する記憶手段をさらに含み、
前記切替手段は、前記記憶手段に記憶された係数に基づいて、前記第1の周波数帯域および前記第2の周波数帯域を合成することにより、前記所定の周波数帯域の搬送波を構成するように、前記第1のアンテナを第1の時間だけオンにし、前記第2のアンテナを、前記第2の時間だけオンにするように、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとを切り替える
請求項4に記載の送受信装置。
【請求項6】
第1の周波数帯域の信号を送受信する第1のアンテナと、
前記第1の周波数帯域と異なる第2の周波数帯域の信号を送受信する第2のアンテナとを含む送受信装置の送受信方法において、
前記第1のアンテナを第1の時間だけオンにし、前記第2のアンテナを、前記第2の時間だけオンにするように、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとを切り替える切替ステップ
を含む送受信方法。
【請求項7】
第1の周波数帯域の信号を送受信する第1のアンテナと、
前記第1の周波数帯域と異なる第2の周波数帯域の信号を送受信する第2のアンテナとを含む送受信装置を制御するコンピュータに、
前記第1のアンテナを第1の時間だけオンにし、前記第2のアンテナを、前記第2の時間だけオンにするように、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとを切り替える切替ステップ
を含む処理を実行させるプログラム。
【請求項8】
第1の周波数帯域の信号を送受信する第1のアンテナと、
前記第1の周波数帯域と異なる第2の周波数帯域の信号を送受信する第2のアンテナと、
第1の時間および第2の時間を設定する係数を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された係数に基づいて、前記第1の周波数帯域および前記第2の周波数帯域を合成することにより、前記所定の周波数帯域の搬送波を構成するように、前記第1のアンテナを第1の時間だけオンにし、前記第2のアンテナを、前記第2の時間だけオンにするように、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとを切り替える切替手段とを含む送受信装置を製造する製造装置において、
前記所定の周波数帯域の搬送波により送受信する送受信手段と、
前記第1のアンテナおよび前記第2のアンテナにより前記所定の周波数帯域の搬送波による信号を受信したことを検出する第1の受信検出手段と、
前記送受信手段により前記第1のアンテナおよび前記第2のアンテナより送信されてくる信号を受信したこを検出する第2の受信検出手段と、
前記第1の受信検出手段および前記第2の受信検出手段により受信が検出されない場合、前記記憶手段に記憶されている係数を所定値だけ変更する係数設定手段と
を含む送受信装置の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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