送液システム
【課題】ポンプの立ち上がり時間を短縮することができる送液システムを提供する。
【解決手段】
本発明の送液システムは、プランジャを備えた第1及び第2ポンプと吸込口と吐出口を有し、上記吸込口を介して吸込んだ液を上記第1、第2ポンプを経由して上記吐出口から吐出する。起動運転モードでは、上記第2ポンプを停止し上記第1ポンプのみを作動する。上記吐出口の吐出圧力が所定の値に到達したとき起動運転モードを定常運転モードに切り替える。定常運転モードでは、上記第1ポンプを停止し上記第2ポンプのみを運転する。
【解決手段】
本発明の送液システムは、プランジャを備えた第1及び第2ポンプと吸込口と吐出口を有し、上記吸込口を介して吸込んだ液を上記第1、第2ポンプを経由して上記吐出口から吐出する。起動運転モードでは、上記第2ポンプを停止し上記第1ポンプのみを作動する。上記吐出口の吐出圧力が所定の値に到達したとき起動運転モードを定常運転モードに切り替える。定常運転モードでは、上記第1ポンプを停止し上記第2ポンプのみを運転する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低流量の送液を行うのに適した送液システムに関し、特に液体クロマトグラフに使用して好適な送液システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフ用ポンプとして、2つのプランジャを備えたプランジャポンプが知られている。このようなプランジャポンプでは、2つのプランジャを独立にモータで駆動し、両プランジャの協調駆動により流量の脈動を低減する。
【0003】
特開昭63−75375号公報に記載された例では、第1プランジャが1往復する間に第2プランジャも1往復し、第1プランジャの吸込動作により発生する流量脈動を第2プランジャの動作により補正する。すなわち第1プランジャが送液流量を決定し、第2プランジャは第1プランジャの脈動補正用として使用する。
【0004】
【特許文献1】特開昭63−75375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、液体クロマトグラフ用ポンプを運転する場合、先ず、ポンプ及び配管内に溶離液を充填し、気泡を排気する。こうして準備作業が終了したら、次に、ポンプを起動し、吐出圧力が所定の目標値に到達したら定常運転に切り替える。定常運転になってから、液体クロマトグラフによる計測を開始する。
【0006】
液体クロマトグラフ用ポンプでは、低流量の送液が必要である。例えば、毎分ミクロリットル(μl)、ナノリットル(nl)レベルの極低流量の送液が要求される。このような低流量又は極低流量のポンプでは、準備作業を開始してから定常運転を開始するまでに長時間を要する。換言すればポンプ起動時の立ち上がり時間が長くなる。
【0007】
本発明の目的は、ポンプ起動時の立ち上がり時間を短縮することができる送液システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の送液システムは、プランジャを備えた第1及び第2ポンプと吸込口と吐出口を有し、上記吸込口を介して吸込んだ液を上記第1、第2ポンプを経由して上記吐出口から吐出する。起動運転モードでは、上記第2ポンプを停止し上記第1ポンプのみを作動する。上記吐出口の吐出圧力が所定の値に到達したとき起動運転モードを定常運転モードに切り替える。定常運転モードでは、上記第1ポンプを停止し上記第2ポンプのみを運転する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポンプ起動時の立ち上がり時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、以下図面を参照して説明する。
図1および図2は、本発明による送液システムを使用した液体クロマトグラフ装置を示す。液体クロマトグラフ装置は、送液システム、インジェクタ53、カラム54、検出器55、及び貯蔵槽56を有する。本発明による送液システムは、カラム54に、例えば、0.1nL(ナノリットル)/min〜50μL(ミクロンリットル)/minの極低流量の送液を行う。
【0011】
本例の送液システムは、溶離液、又は溶媒液を貯蔵する貯蔵槽51、液中のガスを除去する脱気装置(デガッサ)14、4つのポートを有するアクティブバルブ5、2つのプランジャを有するプランジャポンプ装置1、プランジャに接続された直動機構(アクチュエータ)122、222、直動機構を駆動するモータ121、221、及び、モータ121、221及びアクティブバルブ5を制御するコントローラ50を有する。
【0012】
アクティブバルブ5は、脱気装置14及び吸込配管15を介して貯蔵槽51に接続されている。
【0013】
プランジャポンプ装置1は、吸込配管16、中間吐出配管17、及び、中間吸込配管18を介してアクティブバルブ5に接続され、吐出配管19を介してインジェクタ53に接続されている。吐出配管19には、ドレンバルブ9が設けられている。
【0014】
プランジャポンプ装置1は、第1及び第2加圧室102、202を有し、これらの加圧室はシール124、224により液密されている。第1及び第2加圧室102、103には、それぞれ第1及び第2プランジャ101、201が配置されている。第1及び第2プランジャ101、201は軸受123、223により摺動可能に保持されている。
【0015】
第1加圧室102には、吸込通路103と吐出通路104が接続されている。吸込通路103は、吸込配管16に接続されている。吸込通路103には吸込チェック弁105が設けられている。吐出通路104は、中間吐出配管17に接続されている。第2加圧室202には、吸込通路203と吐出通路204が接続されている。吸込通路203は中間吸込配管18に接続されている。吐出通路204は吐出配管19に接続されている。吐出通路204には圧力センサ60が設けられている。尚、圧力センサ60によって検出された吐出通路204の圧力を、ここではポンプの吐出圧力と言う。
【0016】
以下に、第1加圧室102、第1プランジャ101、これを駆動するモータ121及び直動機構122を含む部分を第1ポンプと称し、第2加圧室202、第2プランジャ201、これを駆動するモータ221及び直動機構222を含む部分を第2ポンプと称することにする。図示のように、第1プランジャ101の径は第2プランジャ201の径より大きく、従って、第1ポンプの流量は第2ポンプの流量より大きい。
【0017】
アクティブバルブ5は、外部の駆動部(図示せず)によって流路を切り替えるロータリーバルブであり、4つのポート5a、5b、5c、5dと2本の流路5e、5fを有する。流路5e、5fの体積は非常に小さい。第1ポート5aは吸込配管15に接続され、第2ポート5bは吸込配管16に接続され、第3ポート5cは中間吐出配管17に接続され、第4ポート5dは中間吸込配管18に接続されている。
【0018】
図1は、流路5eによって、第1及び第2ポート5a、5bが接続されているが、第3及び第4ポート5c、5dは接続されていない状態を示す。図2は、流路5cによって、第3及び第4ポート5c、5dが接続されているが、第1及び第2ポート5a、5bは接続されていない状態を示す。
【0019】
モータ121、221の回転は、それぞれ直動機構122、222により直線運動に変換され、それぞれ第1及び第2プランジャ101、201を往復運動させる。コントローラ50は圧力センサ60の信号に基づいてモータ121、221に駆動信号を与えるとともに、アクティブバルブ5にバルブの開閉信号を与える。
【0020】
本例の送液システムにおける送液経路の概略を説明する。まず、図1に示すように、流路5eによって、第1及び第2ポート5a、5bが接続されている場合には、貯蔵槽51内の溶液は、脱気装置14及び吸込配管15を介してアクティブバルブ5の第1ポート5aに導かれ、第1流路5e、第2ポート5b及び吸込配管16を経由して、プランジャポンプ装置1の吸込通路103に導かれる。溶液は、更に、吸込チェック弁105を介して第1加圧室102に導かれる。
【0021】
一方、図2に示すように第2流路5fによって、第3及び第4ポート5c、5dが接続されている場合には、第1加圧室102内の溶液は、吐出通路104及び中間吐出配管17を介してアクティブバルブ5の第3ポート5cに導かれ、第2流路5f、第4ポート5d及び中間吸込配管18を経由して、プランジャポンプ装置1の吸込通路203に導かれる。溶液は、更に、第2加圧室202、吐出通路204、及び、吐出配管19を介してインジェクタ53に導かれる。
【0022】
インジェクタ53により分析対象となる試料が注入される。それにより、溶液中に試料が混合される。試料を含む溶液はカラム54に導入され、試料に含まれる成分は互いに分離される。分離された各成分は、検出器55により、成分分析される。カラム54には微小なシリカゲル粒が充填されており、ここを流れる際の流体抵抗によってプランジャポンプ装置1には10MPa程度の負荷圧力が発生する。負荷圧力の大きさはカラムの径と通過流量により変化する。
【0023】
図3を参照して、本例の送液システムの動作を説明する。尚、同時に図1及び図2を参照する。図3Aは、ドレンバルブの開閉動作、図3Bは、第1プランジャ101に対するアクティブバルブ5の開閉動作、図3Cは、第1プランジャ101の変位、図3Dは、第2プランジャ201に対するアクティブバルブ5の開閉動作、図3Eは、第2プランジャ201の変位、図3Fは、第1ポンプ流量、図3Gは、第2ポンプ流量、図3Hは、圧力センサ60によって検出されたポンプの吐出圧力を示す。横軸は時間である。
【0024】
また、図1の例のように、アクティブバルブ5において、流路5eによって、第1及び第2ポート5a、5bが接続され、且つ、第3及び第4ポート5c、5dは接続されていない状態を、第1プランジャ101に対して「開」と呼び、第2プランジャ201に対して「閉」と呼ぶことにする。このとき、第1加圧室102は、アクティブバルブ5を介して貯蔵槽51内の溶液に接続されるが、第2加圧室202には接続されていない。
【0025】
図2に示すように、流路5fによって、第3及び第4ポート5c、5dが接続され、且つ、第1及び第2ポート5a、5bは接続されていない状態を、第1プランジャ101に対して「閉」と呼び、第2プランジャ201に対して「開」と呼ぶことにする。このとき、第1加圧室102は、アクティブバルブ5を介して第2加圧室202に接続されるが、貯蔵槽51内の溶液には接続されていない。アクティブバルブ5は、第1プランジャ101に対して「開」であるときは、第2プランジャ201に対して「閉」である。逆に、第1プランジャ101に対して「閉」であるときは、第2プランジャ201に対して「開」である。
【0026】
更に、第1及び第2プランジャ101、201は、モータ121、221及び直動機構122、222によって引き込まれた状態にあるとき、即ち、図1及び図2にて、加圧室の左端に配置されている状態を下死点にあると言い、モータ21及び直動機構22によって押し込まれた状態にあるとき、即ち、図1及び図2にて、加圧室の右端に配置されている状態を上死点にあると言う。
【0027】
本例では、試験開始前の溶離液充填及び気泡排出モードでは、第1ポンプおよび第2ポンプを使用し、起動運転モードでは第1ポンプを使用し、定常運転モードにて極低流量の送液を行う場合には、第2ポンプを使用する。
【0028】
先ず、気泡排出及び溶離液充填モードを説明する。気泡排出及び溶離液充填モードでは、本例の送液システムに含まれるポンプ、通路、及び配管内の気泡を排出して溶離液を充填する。図3Aに示すように、ドレンバルブ9を開放する。図3Bと図3Dを比較すると、アクティブバルブ5の第2プランジャ201に対する開閉動作は、第1プランジャ101に対する開閉動作に対して、半周期遅れている。
【0029】
図3Cと図3Eを比較すると、第2のプランジャ201の往復運動は第1のプランジャ101の往復運動に対して、半周期遅れている。第1プランジャ101が引き込まれ上死点から下死点に移動するとき、第2プランジャ201は押し込まれ下死点から上死点に移動する。即ち、第1ポンプの吸込工程では、第2ポンプの吐出工程となる。逆に、第1プランジャ101が押し込まれ下死点から上死点に移動するとき、第2プランジャ201は引き込まれ上死点から下死点に移動する。即ち、第1ポンプの吐出工程では、第2ポンプの吸込工程となる。
【0030】
図3Fと図3Gを比較すると、第1ポンプが吸込工程のとき、第2ポンプは吐出工程である。逆に、第1ポンプが吐出工程のとき、第2ポンプは吸込工程である。
【0031】
図3B〜図3Eを比較すると、第1及び第2プランジャ2の動作は、アクティブバルブ5の開閉動作に対して、4分の1周期遅れている。従って、図3Bのアクティブバルブ5の第1プランジャ101に対する開閉動作、図3Cの第1プランジャ101の往復運動、図3Dのアクティブバルブ5の第2プランジャ2に対する開閉動作、及び、図3Eの第2プランジャ2の往復運動は、それぞれ、順に、4分の1周期ずつ遅れている。
【0032】
例えば、図3Bに示すように、アクティブバルブ5が第1プランジャ101に対して「閉」から「開」に変化する。次に、4分の1周期遅れて、図3Cに示すように、第1プランジャ101が上死点から下死点に変化し、第1ポンプの吸込工程が行われる。次に、4分の1周期遅れて、図3Dに示すように、アクティブバルブ5が第2プランジャ2に対して「閉」から「開」に変化する。次に、4分の1周期遅れて、図3Eに示すように、第2プランジャ2が上死点から下死点に変化し、第2ポンプの吸込工程が行われる。
【0033】
図3Bに示すように、アクティブバルブ5が第1プランジャ101に対して、半周期遅れて、「開」から「閉」に変化する。次に、4分の1周期遅れて、図3Cに示すように、第1プランジャ101が下死点から上死点に変化し、第1ポンプの吐出工程が行われる。次に、4分の1周期遅れて、図3Dに示すように、アクティブバルブ5が第2プランジャ2に対して「開」から「閉」に変化する。次に、4分の1周期遅れて、図3Eに示すように、第2プランジャ2が下死点から上死点に変化し、第2ポンプの吐出工程が行われる。
【0034】
図3Hに示すように、ポンプの吐出圧力は、第1ポンプ流量と第2ポンプ流量の変動成分を含むが略一定となる。
【0035】
図3に示すように、気泡排出及び溶離液充填モードでは、第1及び第2プランジャを複数回往復運動させる。ドレンバルブ9からは、第1ポンプ流量と第2ポンプ流量の差分が排出され、同時に気泡も除去される。本例では、上流側の第1ポンプは流量が大きいので、下流側の第2加圧室202内に溜まった気泡を容易に排出することが可能である。これにより短時間で試験準備を完了することができる。
【0036】
気泡排出及び溶離液充填モードが終了すると、第1及び第2プランジャとアクティブバルブは以下に説明するホームポジションに配置される。
【0037】
次に、ポンプの起動運転から定常運転に移行する動作について説明する。第1及び第2プランジャとアクティブバルブはホームポジションに配置されている。ホームポジションでは、アクティブバルブ5は第1プランジャ101に対して「開」であり、第2プランジャ201に対して「閉」である。また、第1及び第2プランジャは下死点に配置されている。したがって、第1及び第2加圧室には、溶離液が満たされている。
【0038】
以下に、アクティブバルブ5が第1プランジャ101に対して「開」であるとき、単に、アクティブバルブ5が「開」であると記述する。従って、アクティブバルブ5が「開」であるとは、図1に示すように第1プランジャ101に対して「開」であり、且つ、第2プランジャ201に対して「閉」であることを意味する。アクティブバルブ5が第1プランジャ101に対して「閉」であるとき、単に、アクティブバルブ5が「閉」であると記述する。従って、アクティブバルブ5が「閉」であるとは、図2に示すように、第1プランジャ101に対して「閉」であり、且つ、第2プランジャ201に対して「開」であることを意味する。
【0039】
ホームポジションにあるときアクティブバルブ5は「開」である。まず、図3Aに示すようにドレンバルブ9を閉じ、図3B及び図3Dに示すように、アクティブバルブ5を「開」から「閉」にする。従って、図2に示すように、第1加圧室102は、アクティブバルブ5を介して第2加圧室202に接続される。図3Cに示すように、第1プランジャ101を下死点から上死点方向に所定の速度にて移動し、第1ポンプの吐出工程が行われる。グラフの勾配から判るように、ポンプの起動運転における第1プランジャ101の移動速度は、気泡排出及び溶離液充填モードの場合より小さい。図3Eに示すように、第2プランジャ201は下死点に配置されているから、第1加圧室102から吐出された溶離液は、アクティブバルブ5を介して第2加圧室202に導かれ、そこから吐出配管19に吐出される。このとき、第2ポンプは実質的に作動していない。従って、図3Fに示すように、第1ポンプ流量は第1プランジャ101の移動速度に対応した所定の値となるが、図3Gに示すように、第2ポンプ流量はゼロである。
【0040】
図3Hに示すように、ポンプの吐出圧力が目標圧力Psetに到達すると、定常運転に切り替える。目標圧力Psetは、カラム径と通過流量によって決まる。圧力センサ60は、ポンプの吐出圧力が目標圧力Psetに到達すると、それをコントローラ50に通知する。
【0041】
コントローラ50は、第1及び第2ポンプとアクティブバルブ5に定常運転モードの命令を送信する。定常運転では、吐出圧力を目標圧力Psetに保持しながら、送液流量を一定に保持する。
【0042】
定常運転では、図3B及び図3Dに示すように、アクティブバルブ5を「閉」から「開」にする。従って、図1に示すように、第2加圧室202は、第1加圧室102より遮断される。図3Cに示すように、第1プランジャ101は停止する。第1プランジャ101は、下死点と上死点の間の所定の位置に配置される。次に、図3Eに示すように、第2プランジャ201を下死点から上死点へ低速で移動する。第2ポンプの吐出工程が低速にて実行される。図3Fに示すように、第1ポンプ流量はゼロとなり、図3Gに示すように、第2ポンプ流量は目標流量Qsetとなる。本例では、第2プランジャ201を一定の低速度にて押し込むことにより、吐出圧力を目標圧力Psetに保持し、且つ、送液流量を目標流量Qsetに保持することができる。
【0043】
こうして定常運転が行われると、インジェクタ53により分析対象となる試料が注入され、混合された溶液はカラム54に入り,成分毎に分離された後に検出器55で成分分析される。
【0044】
本例では、ポンプの起動運転は、第1ポンプのみを運転し、定常運転では、第2ポンプのみを運転する。この運転方法によって目標圧力までの到達時間、つまりはポンプ起動時の立ち上がり時間を短縮することができる。
【0045】
次に、起動運転から定常運転への切り替えについて述べる。実際には、アクティブバルブ5の切り替え時の応答時間やアクティブバルブ5のデッドボリュームの存在に起因して、ポンプ圧力は目標圧力Psetに対しオーバーシュートし、立ち上がり時間が長くなることがある。そこで次はその対応策について説明する。
【0046】
図4は、図3と同様に本発明の送液システムの他の運転方法を説明するものである。気泡の排出および溶離液の充填については図3と同様であるためその説明は省略する。
【0047】
本例では、図3の例と同様に、ポンプの起動運転では、第1ポンプのみを運転する。図4Hに示すように、ポンプの吐出圧力が目標圧力PsetよりΔPsetだけ低い値(Pset−ΔPset)に到達すると、定常運転に切り替える。定常運転が開始されると、図4B及び図4Dに示すように、アクティブバルブ5を「閉」から「開」にする。図4Cに示すように、第1プランジャ101は停止する。図4Fに示すように、第1ポンプ流量はゼロとなり、図4Gに示すように、第2ポンプ流量は目標流量Qsetとなる。図4Hに示すように、ポンプの吐出圧力は、上昇し、目標圧力Psetに到達する。
【0048】
本例では、図3の運転方法に比べて、第1プランジャ101から第2プランジャ201への運転の切り替え時間をΔtだけ早めに行うことによって、目標圧力に対するオーバーシュートを低減することができる。尚、時間Δtにおけるポンプの吐出圧力の勾配は、起動運転におけるポンプの吐出圧力の勾配より小さい。
【0049】
なお、本例ではオーバーシュートを低減するために、プランジャの切り替え時間を調整しているが、他の方法、例えば第1プランジャ101の送り速度を小さくする方法を用いてもよい。このように、オーバーシュートを低減するために、プランジャの切り替え時間を調整したり、第1プランジャ101の送り速度を小さくすることを、以下では圧力補正と称することとする。
【0050】
次に、本実施形態の効果について図5および図6を用いて説明する。
図5は、ポンプを起動運転から定常運転に変化させたときポンプの吐出圧力の変化を測定した結果を示す。図5の実線の曲線501は、圧力補正を行った場合のポンプの吐出圧力を示し、破線の曲線は圧力補正を行わなかった場合のポンプの吐出圧力を示す。
【0051】
圧力補正を行わない場合には、ポンプの立ち上がり時間が長くなるとともに、立ち上がり時間のデータのばらつきが大きくなる。これに対し、圧力補正を行った場合には、ポンプの立ち上がり時間が大幅に短縮されるとともに、立ち上がり時間のデータばらつきがほとんど無くなる。尚、図には示していないが、圧力補正を行わない場合には、第2ポンプの目標流量や目標圧力によっては、目標圧力に達しない場合も生じたが、圧力補正を行った場合にはこのような現象は生じなかった。
【0052】
図6を参照して、第1ポンプ(第1プランジャの動作)による圧力補正を行う場合に、第1ポンプと第2ポンプとの流量関係について説明する。第1ポンプの設定流量(第1プランジャの断面積に第1プランジャの送り速度を乗じた値)をQ1とし、第2ポンプの設定流量(第2プランジャの断面積に第1プランジャの送り速度を乗じた値)をQ2とし、そのときの流量係数をαとすると、次の式が得られる。
【0053】
Q1=α・Q2 ……………… (数式1)
【0054】
図6は流量係数αとポンプの立ち上がり特性の関係を示す。流量係数αが大きいと立ち上がり時間が短くなるが、大きすぎるとオーバーシュートが生じる。これに対し、αが小さいと立ち上がり時間は長くなるが、オーバーシュートは起きない。流量係数α=1は、第1ポンプの設定流量が第2ポンプの設定流量と同一の場合である。流量係数α=1では、ポンプの圧力は、目標圧力に到達しない場合が生じる。従って、流量係数αは少なくとも1より大きい。
【0055】
流量係数αには最適値が存在する。流量係数αの最適値は、目標圧力および目標流量によっても異なる。換言すれば、目標圧力および目標流量が決まれば流量係数αの最適値が得られる。例えば、本送液システムを用いた液体クロマトグラフによる分析を行う場合、あらかじめ目標流量に対する目標圧力のマップを作成しておくとよい。このマップを利用して、本例の送液システムを自動的に立ち上げることも可能である。例えば、ユーザが、目標圧力を入力する。送液システムは、マップから目標圧力に対応する目標流量を読み取り、目標流量から流量係数αの最適値を得る。こうして、流量係数αの最適値を入力値とし送液システムを運転する。
【0056】
なお、図1及び図2の例では、第1プランジャの径は第2プランジャの径より大きいように構成したが、第1プランジャ径と第2プランジャ径を同一にして、第1プランジャの移動速度を第2プランジャの移動速度より大きくしてもよい。それにより、第1ポンプの流量は第2ポンプの流量より大きくなる。
【0057】
図7乃至図9を参照して、本発明の送液システムの他の例を説明する。図1乃至図3に示した送液システムの第1の例と同等の部分には同一の付号を付し、適宜その説明を省略する。本例では、アクティブバルブ5は、2つのポート5c、5dと1本の流路5fを有する。
【0058】
アクティブバルブ5の第1ポート5cは第1ポンプの吐出通路104に接続され、第2ポート5dは第2ポンプの吸込通路203に接続されている。第1ポンプの吸込通路103は、脱気装置14及び吸込配管16を介して貯蔵槽51に接続されている。第1ポンプの吐出通路104には吐出チェック弁106が設けられている。第1の例と同様に、第1ポンプの流量は第2ポンプの流量より大きい。
【0059】
図7は、アクティブバルブ5の第1及び第2ポート5c、5dが流路5fによって接続されている状態を示す。ここでは、この状態をアクティブバルブ5が「開」であると称する。図8は、アクティブバルブ5の第1及び第2ポート5c、5dが接続されていない状態を示す。ここでは、この状態をアクティブバルブ5が「閉」であると称する。
【0060】
図9を参照して、本例の送液システムの運転方法を説明する。先ず気泡排出及び溶離液充填モードを説明する。図9Aに示すように、ドレンバルブ9を「開」にし、図9Bに示すように、アクティブバルブ5を「開」にする。図9Cに示すように、第1プランジャ101を高速で往復運動させる。このとき、図9Dに示すように、第2プランジャは下死点に配置されている。図9Eに示すように、流量が大きい上流側の第1ポンプによって送液を行い、第1及び第2ポンプ内の気泡を排出して溶離液を充填する。流量が小さい下流側の第2ポンプの流量はゼロである。図9Gに示すように、ポンプの吐出圧力は、ゼロである。
【0061】
本例では、上流側の容量の大きい第1ポンプによって気泡排出及び溶離液充填モードを行うため、下流側の第2加圧室内に溜まった気泡を容易に排出することが可能である。これによりさらに短時間で試験準備を完了することができる。図9Eに示すように、ポンプからの流量は、間欠的になるが、このモードでの流量脈動は測定精度には何ら影響しないので問題はない。
【0062】
次に、起動運転から定常運転への切り替えについて説明する。ポンプの起動運転では、図9Aに示すように、ドレンバルブ9を「閉」にし、図9Bに示すように、アクティブバルブ5を「開」の状態に保持する。図9Cに示すように、第1プランジャ101を所定の速度にて下死点から上死点方向に移動させる。このとき、図9Dに示すように、第2プランジャは下死点に配置されている。図9Eに示すように、第1ポンプの流量は、第1プランジャ101を移動速度に対応して所定の値となる。図9Fに示すように、第2ポンプの流量はゼロである。図9Gに示すように、ポンプの吐出圧力は増加する。ポンプの吐出圧力が目標圧力Psetに到達すると、定常運転への切り替える。本例では、第1プランジャ101の位置がXiniになったとき、ポンプの吐出圧力が目標圧力Psetに到達した。
【0063】
定常運転では、図9Bに示すようにアクティブバルブ5を「閉」にする。図9Cに示すように第1プランジャ101の位置をXiniに保持し、図9Dに示すように、第2プランジャ201を低速で第2加圧室202内に押し込む。このとき、図9Eに示すように、第1ポンプの流量はゼロであり、図9Fに示すように、第2ポンプの流量は目標流量Q1となる。
【0064】
以上説明したように、本例の送液システムによれば、気泡の排出および溶離液の充填を短時間で実施でき、アクティブバルブの切り替え回数を少なくできるのでアクティブバルブの耐久性を向上させる効果がある。
【0065】
図10は高圧グラジエント運転システムの例を示す。高圧グラジエント運転システムは、2台の送液システムを接続して、高圧グラジエント運転を行う。本例の高圧グラジエント運転システムは、2つの送液システム10a、10b、メインコントローラ70、及び、ミキサー62を含む。2つの送液システム10a、10bの第1ポンプの吐出通路には、第1の圧力センサ60a、60bがそれぞれ設けられ、第1加圧室に第2の圧力センサ61a、61bがそれぞれ設けられている。2つの送液システム10a、10bは、第2の圧力センサ61a、61bが設けられている点を除いて、図1の送液システムと同一であってよい。尚、2つの送液システム10a、10bの各々は、図1の送液システムの代わりに、上述の他の送液システムであってもよい。
【0066】
2つの送液システム10a、10bの吐出配管19a、19bはミキサー62に接続されている。ミキサー62の吐出側はインジェクタ53に接続されている。
【0067】
図11を参照してグラジエント運転を説明する。グラジエント運転とは2種類の溶離液A,Bの混合比を時間と共に階段状に変化させながら送液することをいう。即ち、総送液流量(Qt=Qa+Qb)を一定に保持しながら、2つの送液流量QaとQbの比率を変化させる。図11Aに示すように、第1の溶離液Aの流量Qaは時間と共に段階的に増加し、例えば、Qa=1から99まで段階的に変化する。図11Bに示すように、第2の溶離液Bの流量Qbは時間と共に段階的に減少し、例えば、Qb=99から1まで段階的に変化する。図11Cに示すように、総送液流量Qt=Qa+Qbは一定であり、その値を100とする。尚、総送液流量Qtはミキサー62の流量である。図11Dはミキサー62の吐出点Sにおける溶液の混合比を示す。第1の溶離液Aと第2の溶離液Bの混合比は時間と共に段階的に増加する。例えば、Qb/Qa=1から99まで段階的に変化する。本例は、100段階のグラジエントである。従って、総送液流量Qtを1μL/minとすると最小流量及び分解能はその1/100、即ち、10nL/minである。
【0068】
図11Eは、ポンプの吐出圧力を示す。2つのポンプの吐出配管19a、19bはミキサー62を介して接続されている。ミキサー62による圧力低下又は圧力損失を無視すると、2つのポンプの吐出圧力は同一である。即ち、第1ポンプの第1の圧力センサ60aによって検出された吐出圧力は、第2ポンプの第2の圧力センサ60bによって検出された吐出圧力に等しい。更に、これらの圧力センサ60a、60bによって検出された吐出圧力は、ミキサー62の吐出圧力に等しい。
【0069】
図11Cに示すように、総送液流量Qtが一定でも、図11Eに示すように、ポンプの吐出圧力は、最大1.5〜2倍程度も変化する。これは、2つの溶離液の混合比が変化すると、カラムを通過するときの流体抵抗が変化するためである。ポンプの吐出圧力を一定に保持しようとすると、逆に総送液流量Qtが一定とならない。
【0070】
一方、混合比と圧力変動の関係は過去の実験データより既知である。従って、総送液流量Qtが一定である場合の圧力変動曲線は予測可能である。そこで、ミキサー62の吐出圧力を測定し、それを、圧力変動曲線の予測値と比較し、両者の偏差をフィードバック信号としてポンプを駆動してよい。
【0071】
図11Eの実線の曲線は、ポンプの吐出圧力の測定値であり、破線の曲線は、過去の実験データより得られた目標圧力である。
【0072】
図10に示すように、第1の送液システムのポンプに設けられた第1の圧力センサ60aの出力は、メインコントローラ70にフィードバックされる。メインコントローラ70は、第1の圧力センサ60aからの測定値を目標圧力と比較し、両者の偏差を求める。この偏差を、各ポンプのコントローラ50a、50bに送信する。コントローラ50a、50bは、偏差に基づいて、各ポンプを制御する。
【0073】
ポンプの吐出圧力が目標圧力より低い場合、総送液流量(Qt=Qa+Qb)が低下している。従って、総送液流量を増加させればよい。しかしながら、2つの送液流量QaとQbのどちらがより大きく低下しているのかは不明である。例えば、実際には第1の送液流量Qaが低下しているのに誤って第2の送液流量Qbが低下していると判断し、第2の送液流量Qbを増加させた場合、混合比の精度が悪化する。これはグラジエント運転における相互干渉と呼ばれる問題である。
【0074】
本例では、2つの送液流量QaとQbは、同一の割合で増加又は減少すると仮定する。従って、図11Fに示すように、2つの送液流量QaとQbに対して、流量比に比例したフィードバックゲインを与える。即ち、比例制御を行う。例えば2つの送液流量の比Qa:Qbが20:80の場合、2つの送液流量Qa、Qbのフィードバックゲインは、それぞれ(20/100)×K、(80/100)×Kで与えられる。Kは定数である。仮に総送液流量Qtが5だけ不足している場合、2つのポンプへの指令値はそれぞれ20+(20/100)×K×5、80+(80/100)×K×5で与えられる。例えばKを1とすると、前者は21、後者は84となる。この方法によれば2個のポンプの固体差による混合比の精度の低下は避けられないが、相互干渉は避けられる。
【0075】
以上により、送液安定性と混合精度に優れた高圧グラジエントシステムを提供することができる。
【0076】
図12(a)は、本発明の送液システムを使用して、液体クロマトグラフ及び質量分析計システムを構築した例を示す。液体クロマトグラフは、送液システム52、インジェクタ53、カラム54、高電圧スプレー(噴霧器)56を含む。本例では、液体クロマトグラフと質量分析計58の間を接続するインターフェースとして、たんぱく質やペプチドなど極性の高い物質の分析に用いられるエレクトロスプレーイオン化(ESI)法が使用されている。エレクトロスプレーイオン化法では、3〜5kVの高電圧を印加したキャピラリーに試料溶液を送り込むと、非常に微細なスプレー(噴霧)が大気圧下にて生じ、試料分子がイオン化される。こうして、イオン化された試料分子は質量分析計に導入される。質量分析計は、質量を電荷で割った値を分析し、分子量を特定する。
【0077】
図12(b)および図12(c)は質量分析計での処理データの一例を示したものである。図12(b)のマススペクトル、図12(c)のマスクロマトグラムを示す。
【0078】
プロテオーム解析においては、採取した細胞からたんぱく質を抽出して分析するが、細胞に含まれるたんぱく質は極微量であり、増殖も不可能である。従って、液体クロマトグラフ及び質量分析計システムの検出感度をあげるためには、液体クロマトグラフにおける低流量化が必要である。また、分析時間は試料を投入してデータ処理するまでに数時間を要する。
【0079】
以上説明した液体クロマトグラフ及び質量分析計システムに、本発明の送液システムを導入することによって、液体クロマトグラフに投入する分析試料の量を微量化することができる。また、本発明の送液システムではポンプ起動時の立ち上がり時間が短いので、長時間の分析時間を確保することができる。その結果、データの処理件数を増やすことができる。
【0080】
また、ポンプの圧力をモニターして、所定値(例えば、上述した目標圧力)に達したときに、試料を投入し分析を開始してもよい。それにより、省動力化を達成することができる。
【0081】
図13は、本発明の送液システムの他の例を示し、図1に示した送液システムと同等の部分には同一の付号を付し、適宜説明を省略する。本例の特徴は、第1ポンプ1と第2ポンプ2は別個のポンプとして構成されている。本例の送液システムは、2つの貯蔵槽51−1、51−2、2つの脱気装置(デガッサ)14−1、14−2、2つのプランジャポンプ装置1、2、直動機構(アクチュエータ)122、222、直動機構を駆動するモータ121、221、及び、コントローラ50を有する。
【0082】
2つのプランジャポンプ装置1、2は、吐出配管19を介してインジェクタ53に接続されている。吐出配管19には、ドレンバルブ9及び圧力センサ60が設けられている。
【0083】
2つのプランジャポンプ装置1、2は、それぞれ第1及び第2ポンプに相当する。第1の例と同様に、第1ポンプの流量は第2ポンプの流量より大きい。
【0084】
第1及び第2のプランジャポンプ装置1、2は、それぞれ第1及び第2加圧室102、202を有し、これらの加圧室はシール124、224により液密されている。第1及び第2加圧室102、202には、それぞれ第1及び第2プランジャ101、201が配置されている。第1及び第2プランジャ101、201は軸受123、223により摺動可能に保持されている。
【0085】
第1加圧室102には、吸込通路103と吐出通路104が接続されている。吸込通路103は、吸込配管16−1及び脱気装置14−1を介して貯蔵槽51−1に接続されている。吸込通路103には吸込チェック弁105が設けられている。吐出通路104は、吐出配管19に接続されている。吐出通路104には吐出チェック弁106が設けられている。
【0086】
第2加圧室202には、吸込通路203と吐出通路204が接続されている。吸込通路203は、吸込配管16−2及び脱気装置14−2を介して貯蔵槽51−2に接続されている。吸込通路203には吸込チェック弁205が設けられている。吐出通路204は、吐出配管19に接続されている。吐出通路204には吐出チェック弁206が設けられている。
【0087】
次に、送液システムのポンプ動作について説明する。気泡排出及び溶離液充填モードでは、ドレンバルブ9を「開」にし、2つのプランジャポンプ装置を作動させ、それぞれ加圧室及び通路内の気泡を排出する。起動運転では、ドレンバルブ9を閉じ、第1プランジャ101のみを作動させる。第1プランジャ101の流量は第2プランジャ201の流量より大きい。従って、容易に、ポンプの吐出圧力は目標圧力に到達する。ポンプの吐出圧力が目標圧力の到達すると、ポンプの起動運転から定常運転に変える。定常運転では、ドレンバルブ9を閉じ、第1プランジャポンプ装置を停止し、第2プランジャポンプ装置のみを作動させる。第2プランジャを低速にて第2加圧室202に押し込む。それにより、ポンプの吐出圧力を目標圧力に保持しながら、所定のポンプ流量を達成することができる。
【0088】
なお、本実施形態ではポンプの吐出側に吐出チェック弁を設けるが、上述したアクティブバルブを用いてもよい。
【0089】
本例の送液システムでは、2つのポンプを別個の要素として設け、両者を配管で接続する。従って、ポンプの分解作業が容易となり、シール交換などのメンテナンス作業が容易となる。また、機器のレイアウト性が向上するなどの利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の送液システムの第1の例及び液体クロマトグラフの概略構成を示す図であり、アクティブバルブが第1プランジャに対して「開」、第2プランジャに対して「閉」である状態を示す。
【図2】本発明の送液システムの第1の例及び液体クロマトグラフの概略構成を示す図であり、アクティブバルブが第2プランジャに対して「閉」、第2プランジャに対して「開」である状態を示す。
【図3】本発明の送液システムの第1の例の駆動方法の一例を示す図である。
【図4】本発明の送液システムの第1の例の駆動方法の他の例を示す図である。
【図5】本発明のポンプの圧力特性の実験結果を示す図である。
【図6】本発明のポンプの圧力特性の実験結果を示す図である。
【図7】本発明の送液システムの第2の例及び液体クロマトグラフの概略構成を示す図であり、アクティブバルブが「開」である状態を示す。
【図8】本発明の送液システムの第2の例及び液体クロマトグラフの概略構成を示す図であり、アクティブバルブが「閉」である状態を示す。
【図9】本発明の送液システムの第2の例の駆動方法の一例を示す図である。
【図10】本発明の高圧グラジエント運転システムの例を示す図である。
【図11】本発明の高圧グラジエント運転システムの駆動方法の一例を示す図である。
【図12】図12Aは、本発明の送液システムを用いた液体クロマトグラフ及び質量分析計システムの例を示す図である。図12B及び図12Cは、質量分析計による分析結果を示す図である。
【図13】本発明の送液システムの第3の例及び液体クロマトグラフの概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0091】
1…プランジャポンプ装置、5…アクティブバルブ、5a、5b、5c…ポート、5e、5f…流路、9…ドレンバルブ、10…プランジャポンプ装置、14、14’…脱気装置(デガッサ)、15、16…吸込配管、17…吐出配管、18…吸込配管、19…吐出配管、20…プランジャポンプ装置、50、50a、50b…コントローラ、51a、51b…溶離液、53…インジェクタ、54…カラム、55…検出器、56…スプレー、58…質量分析計、60、60a、60b、61a、61b…圧力センサ、62…ミキサー、70…メインコントローラ、101…第1プランジャ、102…第1加圧室、103…吸込通路、104…吐出通路、105…吸込チェック弁、106…吐出チェック弁、121…モータ、122…直動機構、123…軸受、124…シール、201…第2プランジャ、202…第2加圧室、203…吸込通路、204…吐出通路、205…吸込チェック弁、206…吐出チェック弁、221…モータ、222…直動機構、223…軸受、224…シール
【技術分野】
【0001】
本発明は、低流量の送液を行うのに適した送液システムに関し、特に液体クロマトグラフに使用して好適な送液システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体クロマトグラフ用ポンプとして、2つのプランジャを備えたプランジャポンプが知られている。このようなプランジャポンプでは、2つのプランジャを独立にモータで駆動し、両プランジャの協調駆動により流量の脈動を低減する。
【0003】
特開昭63−75375号公報に記載された例では、第1プランジャが1往復する間に第2プランジャも1往復し、第1プランジャの吸込動作により発生する流量脈動を第2プランジャの動作により補正する。すなわち第1プランジャが送液流量を決定し、第2プランジャは第1プランジャの脈動補正用として使用する。
【0004】
【特許文献1】特開昭63−75375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
通常、液体クロマトグラフ用ポンプを運転する場合、先ず、ポンプ及び配管内に溶離液を充填し、気泡を排気する。こうして準備作業が終了したら、次に、ポンプを起動し、吐出圧力が所定の目標値に到達したら定常運転に切り替える。定常運転になってから、液体クロマトグラフによる計測を開始する。
【0006】
液体クロマトグラフ用ポンプでは、低流量の送液が必要である。例えば、毎分ミクロリットル(μl)、ナノリットル(nl)レベルの極低流量の送液が要求される。このような低流量又は極低流量のポンプでは、準備作業を開始してから定常運転を開始するまでに長時間を要する。換言すればポンプ起動時の立ち上がり時間が長くなる。
【0007】
本発明の目的は、ポンプ起動時の立ち上がり時間を短縮することができる送液システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の送液システムは、プランジャを備えた第1及び第2ポンプと吸込口と吐出口を有し、上記吸込口を介して吸込んだ液を上記第1、第2ポンプを経由して上記吐出口から吐出する。起動運転モードでは、上記第2ポンプを停止し上記第1ポンプのみを作動する。上記吐出口の吐出圧力が所定の値に到達したとき起動運転モードを定常運転モードに切り替える。定常運転モードでは、上記第1ポンプを停止し上記第2ポンプのみを運転する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポンプ起動時の立ち上がり時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、以下図面を参照して説明する。
図1および図2は、本発明による送液システムを使用した液体クロマトグラフ装置を示す。液体クロマトグラフ装置は、送液システム、インジェクタ53、カラム54、検出器55、及び貯蔵槽56を有する。本発明による送液システムは、カラム54に、例えば、0.1nL(ナノリットル)/min〜50μL(ミクロンリットル)/minの極低流量の送液を行う。
【0011】
本例の送液システムは、溶離液、又は溶媒液を貯蔵する貯蔵槽51、液中のガスを除去する脱気装置(デガッサ)14、4つのポートを有するアクティブバルブ5、2つのプランジャを有するプランジャポンプ装置1、プランジャに接続された直動機構(アクチュエータ)122、222、直動機構を駆動するモータ121、221、及び、モータ121、221及びアクティブバルブ5を制御するコントローラ50を有する。
【0012】
アクティブバルブ5は、脱気装置14及び吸込配管15を介して貯蔵槽51に接続されている。
【0013】
プランジャポンプ装置1は、吸込配管16、中間吐出配管17、及び、中間吸込配管18を介してアクティブバルブ5に接続され、吐出配管19を介してインジェクタ53に接続されている。吐出配管19には、ドレンバルブ9が設けられている。
【0014】
プランジャポンプ装置1は、第1及び第2加圧室102、202を有し、これらの加圧室はシール124、224により液密されている。第1及び第2加圧室102、103には、それぞれ第1及び第2プランジャ101、201が配置されている。第1及び第2プランジャ101、201は軸受123、223により摺動可能に保持されている。
【0015】
第1加圧室102には、吸込通路103と吐出通路104が接続されている。吸込通路103は、吸込配管16に接続されている。吸込通路103には吸込チェック弁105が設けられている。吐出通路104は、中間吐出配管17に接続されている。第2加圧室202には、吸込通路203と吐出通路204が接続されている。吸込通路203は中間吸込配管18に接続されている。吐出通路204は吐出配管19に接続されている。吐出通路204には圧力センサ60が設けられている。尚、圧力センサ60によって検出された吐出通路204の圧力を、ここではポンプの吐出圧力と言う。
【0016】
以下に、第1加圧室102、第1プランジャ101、これを駆動するモータ121及び直動機構122を含む部分を第1ポンプと称し、第2加圧室202、第2プランジャ201、これを駆動するモータ221及び直動機構222を含む部分を第2ポンプと称することにする。図示のように、第1プランジャ101の径は第2プランジャ201の径より大きく、従って、第1ポンプの流量は第2ポンプの流量より大きい。
【0017】
アクティブバルブ5は、外部の駆動部(図示せず)によって流路を切り替えるロータリーバルブであり、4つのポート5a、5b、5c、5dと2本の流路5e、5fを有する。流路5e、5fの体積は非常に小さい。第1ポート5aは吸込配管15に接続され、第2ポート5bは吸込配管16に接続され、第3ポート5cは中間吐出配管17に接続され、第4ポート5dは中間吸込配管18に接続されている。
【0018】
図1は、流路5eによって、第1及び第2ポート5a、5bが接続されているが、第3及び第4ポート5c、5dは接続されていない状態を示す。図2は、流路5cによって、第3及び第4ポート5c、5dが接続されているが、第1及び第2ポート5a、5bは接続されていない状態を示す。
【0019】
モータ121、221の回転は、それぞれ直動機構122、222により直線運動に変換され、それぞれ第1及び第2プランジャ101、201を往復運動させる。コントローラ50は圧力センサ60の信号に基づいてモータ121、221に駆動信号を与えるとともに、アクティブバルブ5にバルブの開閉信号を与える。
【0020】
本例の送液システムにおける送液経路の概略を説明する。まず、図1に示すように、流路5eによって、第1及び第2ポート5a、5bが接続されている場合には、貯蔵槽51内の溶液は、脱気装置14及び吸込配管15を介してアクティブバルブ5の第1ポート5aに導かれ、第1流路5e、第2ポート5b及び吸込配管16を経由して、プランジャポンプ装置1の吸込通路103に導かれる。溶液は、更に、吸込チェック弁105を介して第1加圧室102に導かれる。
【0021】
一方、図2に示すように第2流路5fによって、第3及び第4ポート5c、5dが接続されている場合には、第1加圧室102内の溶液は、吐出通路104及び中間吐出配管17を介してアクティブバルブ5の第3ポート5cに導かれ、第2流路5f、第4ポート5d及び中間吸込配管18を経由して、プランジャポンプ装置1の吸込通路203に導かれる。溶液は、更に、第2加圧室202、吐出通路204、及び、吐出配管19を介してインジェクタ53に導かれる。
【0022】
インジェクタ53により分析対象となる試料が注入される。それにより、溶液中に試料が混合される。試料を含む溶液はカラム54に導入され、試料に含まれる成分は互いに分離される。分離された各成分は、検出器55により、成分分析される。カラム54には微小なシリカゲル粒が充填されており、ここを流れる際の流体抵抗によってプランジャポンプ装置1には10MPa程度の負荷圧力が発生する。負荷圧力の大きさはカラムの径と通過流量により変化する。
【0023】
図3を参照して、本例の送液システムの動作を説明する。尚、同時に図1及び図2を参照する。図3Aは、ドレンバルブの開閉動作、図3Bは、第1プランジャ101に対するアクティブバルブ5の開閉動作、図3Cは、第1プランジャ101の変位、図3Dは、第2プランジャ201に対するアクティブバルブ5の開閉動作、図3Eは、第2プランジャ201の変位、図3Fは、第1ポンプ流量、図3Gは、第2ポンプ流量、図3Hは、圧力センサ60によって検出されたポンプの吐出圧力を示す。横軸は時間である。
【0024】
また、図1の例のように、アクティブバルブ5において、流路5eによって、第1及び第2ポート5a、5bが接続され、且つ、第3及び第4ポート5c、5dは接続されていない状態を、第1プランジャ101に対して「開」と呼び、第2プランジャ201に対して「閉」と呼ぶことにする。このとき、第1加圧室102は、アクティブバルブ5を介して貯蔵槽51内の溶液に接続されるが、第2加圧室202には接続されていない。
【0025】
図2に示すように、流路5fによって、第3及び第4ポート5c、5dが接続され、且つ、第1及び第2ポート5a、5bは接続されていない状態を、第1プランジャ101に対して「閉」と呼び、第2プランジャ201に対して「開」と呼ぶことにする。このとき、第1加圧室102は、アクティブバルブ5を介して第2加圧室202に接続されるが、貯蔵槽51内の溶液には接続されていない。アクティブバルブ5は、第1プランジャ101に対して「開」であるときは、第2プランジャ201に対して「閉」である。逆に、第1プランジャ101に対して「閉」であるときは、第2プランジャ201に対して「開」である。
【0026】
更に、第1及び第2プランジャ101、201は、モータ121、221及び直動機構122、222によって引き込まれた状態にあるとき、即ち、図1及び図2にて、加圧室の左端に配置されている状態を下死点にあると言い、モータ21及び直動機構22によって押し込まれた状態にあるとき、即ち、図1及び図2にて、加圧室の右端に配置されている状態を上死点にあると言う。
【0027】
本例では、試験開始前の溶離液充填及び気泡排出モードでは、第1ポンプおよび第2ポンプを使用し、起動運転モードでは第1ポンプを使用し、定常運転モードにて極低流量の送液を行う場合には、第2ポンプを使用する。
【0028】
先ず、気泡排出及び溶離液充填モードを説明する。気泡排出及び溶離液充填モードでは、本例の送液システムに含まれるポンプ、通路、及び配管内の気泡を排出して溶離液を充填する。図3Aに示すように、ドレンバルブ9を開放する。図3Bと図3Dを比較すると、アクティブバルブ5の第2プランジャ201に対する開閉動作は、第1プランジャ101に対する開閉動作に対して、半周期遅れている。
【0029】
図3Cと図3Eを比較すると、第2のプランジャ201の往復運動は第1のプランジャ101の往復運動に対して、半周期遅れている。第1プランジャ101が引き込まれ上死点から下死点に移動するとき、第2プランジャ201は押し込まれ下死点から上死点に移動する。即ち、第1ポンプの吸込工程では、第2ポンプの吐出工程となる。逆に、第1プランジャ101が押し込まれ下死点から上死点に移動するとき、第2プランジャ201は引き込まれ上死点から下死点に移動する。即ち、第1ポンプの吐出工程では、第2ポンプの吸込工程となる。
【0030】
図3Fと図3Gを比較すると、第1ポンプが吸込工程のとき、第2ポンプは吐出工程である。逆に、第1ポンプが吐出工程のとき、第2ポンプは吸込工程である。
【0031】
図3B〜図3Eを比較すると、第1及び第2プランジャ2の動作は、アクティブバルブ5の開閉動作に対して、4分の1周期遅れている。従って、図3Bのアクティブバルブ5の第1プランジャ101に対する開閉動作、図3Cの第1プランジャ101の往復運動、図3Dのアクティブバルブ5の第2プランジャ2に対する開閉動作、及び、図3Eの第2プランジャ2の往復運動は、それぞれ、順に、4分の1周期ずつ遅れている。
【0032】
例えば、図3Bに示すように、アクティブバルブ5が第1プランジャ101に対して「閉」から「開」に変化する。次に、4分の1周期遅れて、図3Cに示すように、第1プランジャ101が上死点から下死点に変化し、第1ポンプの吸込工程が行われる。次に、4分の1周期遅れて、図3Dに示すように、アクティブバルブ5が第2プランジャ2に対して「閉」から「開」に変化する。次に、4分の1周期遅れて、図3Eに示すように、第2プランジャ2が上死点から下死点に変化し、第2ポンプの吸込工程が行われる。
【0033】
図3Bに示すように、アクティブバルブ5が第1プランジャ101に対して、半周期遅れて、「開」から「閉」に変化する。次に、4分の1周期遅れて、図3Cに示すように、第1プランジャ101が下死点から上死点に変化し、第1ポンプの吐出工程が行われる。次に、4分の1周期遅れて、図3Dに示すように、アクティブバルブ5が第2プランジャ2に対して「開」から「閉」に変化する。次に、4分の1周期遅れて、図3Eに示すように、第2プランジャ2が下死点から上死点に変化し、第2ポンプの吐出工程が行われる。
【0034】
図3Hに示すように、ポンプの吐出圧力は、第1ポンプ流量と第2ポンプ流量の変動成分を含むが略一定となる。
【0035】
図3に示すように、気泡排出及び溶離液充填モードでは、第1及び第2プランジャを複数回往復運動させる。ドレンバルブ9からは、第1ポンプ流量と第2ポンプ流量の差分が排出され、同時に気泡も除去される。本例では、上流側の第1ポンプは流量が大きいので、下流側の第2加圧室202内に溜まった気泡を容易に排出することが可能である。これにより短時間で試験準備を完了することができる。
【0036】
気泡排出及び溶離液充填モードが終了すると、第1及び第2プランジャとアクティブバルブは以下に説明するホームポジションに配置される。
【0037】
次に、ポンプの起動運転から定常運転に移行する動作について説明する。第1及び第2プランジャとアクティブバルブはホームポジションに配置されている。ホームポジションでは、アクティブバルブ5は第1プランジャ101に対して「開」であり、第2プランジャ201に対して「閉」である。また、第1及び第2プランジャは下死点に配置されている。したがって、第1及び第2加圧室には、溶離液が満たされている。
【0038】
以下に、アクティブバルブ5が第1プランジャ101に対して「開」であるとき、単に、アクティブバルブ5が「開」であると記述する。従って、アクティブバルブ5が「開」であるとは、図1に示すように第1プランジャ101に対して「開」であり、且つ、第2プランジャ201に対して「閉」であることを意味する。アクティブバルブ5が第1プランジャ101に対して「閉」であるとき、単に、アクティブバルブ5が「閉」であると記述する。従って、アクティブバルブ5が「閉」であるとは、図2に示すように、第1プランジャ101に対して「閉」であり、且つ、第2プランジャ201に対して「開」であることを意味する。
【0039】
ホームポジションにあるときアクティブバルブ5は「開」である。まず、図3Aに示すようにドレンバルブ9を閉じ、図3B及び図3Dに示すように、アクティブバルブ5を「開」から「閉」にする。従って、図2に示すように、第1加圧室102は、アクティブバルブ5を介して第2加圧室202に接続される。図3Cに示すように、第1プランジャ101を下死点から上死点方向に所定の速度にて移動し、第1ポンプの吐出工程が行われる。グラフの勾配から判るように、ポンプの起動運転における第1プランジャ101の移動速度は、気泡排出及び溶離液充填モードの場合より小さい。図3Eに示すように、第2プランジャ201は下死点に配置されているから、第1加圧室102から吐出された溶離液は、アクティブバルブ5を介して第2加圧室202に導かれ、そこから吐出配管19に吐出される。このとき、第2ポンプは実質的に作動していない。従って、図3Fに示すように、第1ポンプ流量は第1プランジャ101の移動速度に対応した所定の値となるが、図3Gに示すように、第2ポンプ流量はゼロである。
【0040】
図3Hに示すように、ポンプの吐出圧力が目標圧力Psetに到達すると、定常運転に切り替える。目標圧力Psetは、カラム径と通過流量によって決まる。圧力センサ60は、ポンプの吐出圧力が目標圧力Psetに到達すると、それをコントローラ50に通知する。
【0041】
コントローラ50は、第1及び第2ポンプとアクティブバルブ5に定常運転モードの命令を送信する。定常運転では、吐出圧力を目標圧力Psetに保持しながら、送液流量を一定に保持する。
【0042】
定常運転では、図3B及び図3Dに示すように、アクティブバルブ5を「閉」から「開」にする。従って、図1に示すように、第2加圧室202は、第1加圧室102より遮断される。図3Cに示すように、第1プランジャ101は停止する。第1プランジャ101は、下死点と上死点の間の所定の位置に配置される。次に、図3Eに示すように、第2プランジャ201を下死点から上死点へ低速で移動する。第2ポンプの吐出工程が低速にて実行される。図3Fに示すように、第1ポンプ流量はゼロとなり、図3Gに示すように、第2ポンプ流量は目標流量Qsetとなる。本例では、第2プランジャ201を一定の低速度にて押し込むことにより、吐出圧力を目標圧力Psetに保持し、且つ、送液流量を目標流量Qsetに保持することができる。
【0043】
こうして定常運転が行われると、インジェクタ53により分析対象となる試料が注入され、混合された溶液はカラム54に入り,成分毎に分離された後に検出器55で成分分析される。
【0044】
本例では、ポンプの起動運転は、第1ポンプのみを運転し、定常運転では、第2ポンプのみを運転する。この運転方法によって目標圧力までの到達時間、つまりはポンプ起動時の立ち上がり時間を短縮することができる。
【0045】
次に、起動運転から定常運転への切り替えについて述べる。実際には、アクティブバルブ5の切り替え時の応答時間やアクティブバルブ5のデッドボリュームの存在に起因して、ポンプ圧力は目標圧力Psetに対しオーバーシュートし、立ち上がり時間が長くなることがある。そこで次はその対応策について説明する。
【0046】
図4は、図3と同様に本発明の送液システムの他の運転方法を説明するものである。気泡の排出および溶離液の充填については図3と同様であるためその説明は省略する。
【0047】
本例では、図3の例と同様に、ポンプの起動運転では、第1ポンプのみを運転する。図4Hに示すように、ポンプの吐出圧力が目標圧力PsetよりΔPsetだけ低い値(Pset−ΔPset)に到達すると、定常運転に切り替える。定常運転が開始されると、図4B及び図4Dに示すように、アクティブバルブ5を「閉」から「開」にする。図4Cに示すように、第1プランジャ101は停止する。図4Fに示すように、第1ポンプ流量はゼロとなり、図4Gに示すように、第2ポンプ流量は目標流量Qsetとなる。図4Hに示すように、ポンプの吐出圧力は、上昇し、目標圧力Psetに到達する。
【0048】
本例では、図3の運転方法に比べて、第1プランジャ101から第2プランジャ201への運転の切り替え時間をΔtだけ早めに行うことによって、目標圧力に対するオーバーシュートを低減することができる。尚、時間Δtにおけるポンプの吐出圧力の勾配は、起動運転におけるポンプの吐出圧力の勾配より小さい。
【0049】
なお、本例ではオーバーシュートを低減するために、プランジャの切り替え時間を調整しているが、他の方法、例えば第1プランジャ101の送り速度を小さくする方法を用いてもよい。このように、オーバーシュートを低減するために、プランジャの切り替え時間を調整したり、第1プランジャ101の送り速度を小さくすることを、以下では圧力補正と称することとする。
【0050】
次に、本実施形態の効果について図5および図6を用いて説明する。
図5は、ポンプを起動運転から定常運転に変化させたときポンプの吐出圧力の変化を測定した結果を示す。図5の実線の曲線501は、圧力補正を行った場合のポンプの吐出圧力を示し、破線の曲線は圧力補正を行わなかった場合のポンプの吐出圧力を示す。
【0051】
圧力補正を行わない場合には、ポンプの立ち上がり時間が長くなるとともに、立ち上がり時間のデータのばらつきが大きくなる。これに対し、圧力補正を行った場合には、ポンプの立ち上がり時間が大幅に短縮されるとともに、立ち上がり時間のデータばらつきがほとんど無くなる。尚、図には示していないが、圧力補正を行わない場合には、第2ポンプの目標流量や目標圧力によっては、目標圧力に達しない場合も生じたが、圧力補正を行った場合にはこのような現象は生じなかった。
【0052】
図6を参照して、第1ポンプ(第1プランジャの動作)による圧力補正を行う場合に、第1ポンプと第2ポンプとの流量関係について説明する。第1ポンプの設定流量(第1プランジャの断面積に第1プランジャの送り速度を乗じた値)をQ1とし、第2ポンプの設定流量(第2プランジャの断面積に第1プランジャの送り速度を乗じた値)をQ2とし、そのときの流量係数をαとすると、次の式が得られる。
【0053】
Q1=α・Q2 ……………… (数式1)
【0054】
図6は流量係数αとポンプの立ち上がり特性の関係を示す。流量係数αが大きいと立ち上がり時間が短くなるが、大きすぎるとオーバーシュートが生じる。これに対し、αが小さいと立ち上がり時間は長くなるが、オーバーシュートは起きない。流量係数α=1は、第1ポンプの設定流量が第2ポンプの設定流量と同一の場合である。流量係数α=1では、ポンプの圧力は、目標圧力に到達しない場合が生じる。従って、流量係数αは少なくとも1より大きい。
【0055】
流量係数αには最適値が存在する。流量係数αの最適値は、目標圧力および目標流量によっても異なる。換言すれば、目標圧力および目標流量が決まれば流量係数αの最適値が得られる。例えば、本送液システムを用いた液体クロマトグラフによる分析を行う場合、あらかじめ目標流量に対する目標圧力のマップを作成しておくとよい。このマップを利用して、本例の送液システムを自動的に立ち上げることも可能である。例えば、ユーザが、目標圧力を入力する。送液システムは、マップから目標圧力に対応する目標流量を読み取り、目標流量から流量係数αの最適値を得る。こうして、流量係数αの最適値を入力値とし送液システムを運転する。
【0056】
なお、図1及び図2の例では、第1プランジャの径は第2プランジャの径より大きいように構成したが、第1プランジャ径と第2プランジャ径を同一にして、第1プランジャの移動速度を第2プランジャの移動速度より大きくしてもよい。それにより、第1ポンプの流量は第2ポンプの流量より大きくなる。
【0057】
図7乃至図9を参照して、本発明の送液システムの他の例を説明する。図1乃至図3に示した送液システムの第1の例と同等の部分には同一の付号を付し、適宜その説明を省略する。本例では、アクティブバルブ5は、2つのポート5c、5dと1本の流路5fを有する。
【0058】
アクティブバルブ5の第1ポート5cは第1ポンプの吐出通路104に接続され、第2ポート5dは第2ポンプの吸込通路203に接続されている。第1ポンプの吸込通路103は、脱気装置14及び吸込配管16を介して貯蔵槽51に接続されている。第1ポンプの吐出通路104には吐出チェック弁106が設けられている。第1の例と同様に、第1ポンプの流量は第2ポンプの流量より大きい。
【0059】
図7は、アクティブバルブ5の第1及び第2ポート5c、5dが流路5fによって接続されている状態を示す。ここでは、この状態をアクティブバルブ5が「開」であると称する。図8は、アクティブバルブ5の第1及び第2ポート5c、5dが接続されていない状態を示す。ここでは、この状態をアクティブバルブ5が「閉」であると称する。
【0060】
図9を参照して、本例の送液システムの運転方法を説明する。先ず気泡排出及び溶離液充填モードを説明する。図9Aに示すように、ドレンバルブ9を「開」にし、図9Bに示すように、アクティブバルブ5を「開」にする。図9Cに示すように、第1プランジャ101を高速で往復運動させる。このとき、図9Dに示すように、第2プランジャは下死点に配置されている。図9Eに示すように、流量が大きい上流側の第1ポンプによって送液を行い、第1及び第2ポンプ内の気泡を排出して溶離液を充填する。流量が小さい下流側の第2ポンプの流量はゼロである。図9Gに示すように、ポンプの吐出圧力は、ゼロである。
【0061】
本例では、上流側の容量の大きい第1ポンプによって気泡排出及び溶離液充填モードを行うため、下流側の第2加圧室内に溜まった気泡を容易に排出することが可能である。これによりさらに短時間で試験準備を完了することができる。図9Eに示すように、ポンプからの流量は、間欠的になるが、このモードでの流量脈動は測定精度には何ら影響しないので問題はない。
【0062】
次に、起動運転から定常運転への切り替えについて説明する。ポンプの起動運転では、図9Aに示すように、ドレンバルブ9を「閉」にし、図9Bに示すように、アクティブバルブ5を「開」の状態に保持する。図9Cに示すように、第1プランジャ101を所定の速度にて下死点から上死点方向に移動させる。このとき、図9Dに示すように、第2プランジャは下死点に配置されている。図9Eに示すように、第1ポンプの流量は、第1プランジャ101を移動速度に対応して所定の値となる。図9Fに示すように、第2ポンプの流量はゼロである。図9Gに示すように、ポンプの吐出圧力は増加する。ポンプの吐出圧力が目標圧力Psetに到達すると、定常運転への切り替える。本例では、第1プランジャ101の位置がXiniになったとき、ポンプの吐出圧力が目標圧力Psetに到達した。
【0063】
定常運転では、図9Bに示すようにアクティブバルブ5を「閉」にする。図9Cに示すように第1プランジャ101の位置をXiniに保持し、図9Dに示すように、第2プランジャ201を低速で第2加圧室202内に押し込む。このとき、図9Eに示すように、第1ポンプの流量はゼロであり、図9Fに示すように、第2ポンプの流量は目標流量Q1となる。
【0064】
以上説明したように、本例の送液システムによれば、気泡の排出および溶離液の充填を短時間で実施でき、アクティブバルブの切り替え回数を少なくできるのでアクティブバルブの耐久性を向上させる効果がある。
【0065】
図10は高圧グラジエント運転システムの例を示す。高圧グラジエント運転システムは、2台の送液システムを接続して、高圧グラジエント運転を行う。本例の高圧グラジエント運転システムは、2つの送液システム10a、10b、メインコントローラ70、及び、ミキサー62を含む。2つの送液システム10a、10bの第1ポンプの吐出通路には、第1の圧力センサ60a、60bがそれぞれ設けられ、第1加圧室に第2の圧力センサ61a、61bがそれぞれ設けられている。2つの送液システム10a、10bは、第2の圧力センサ61a、61bが設けられている点を除いて、図1の送液システムと同一であってよい。尚、2つの送液システム10a、10bの各々は、図1の送液システムの代わりに、上述の他の送液システムであってもよい。
【0066】
2つの送液システム10a、10bの吐出配管19a、19bはミキサー62に接続されている。ミキサー62の吐出側はインジェクタ53に接続されている。
【0067】
図11を参照してグラジエント運転を説明する。グラジエント運転とは2種類の溶離液A,Bの混合比を時間と共に階段状に変化させながら送液することをいう。即ち、総送液流量(Qt=Qa+Qb)を一定に保持しながら、2つの送液流量QaとQbの比率を変化させる。図11Aに示すように、第1の溶離液Aの流量Qaは時間と共に段階的に増加し、例えば、Qa=1から99まで段階的に変化する。図11Bに示すように、第2の溶離液Bの流量Qbは時間と共に段階的に減少し、例えば、Qb=99から1まで段階的に変化する。図11Cに示すように、総送液流量Qt=Qa+Qbは一定であり、その値を100とする。尚、総送液流量Qtはミキサー62の流量である。図11Dはミキサー62の吐出点Sにおける溶液の混合比を示す。第1の溶離液Aと第2の溶離液Bの混合比は時間と共に段階的に増加する。例えば、Qb/Qa=1から99まで段階的に変化する。本例は、100段階のグラジエントである。従って、総送液流量Qtを1μL/minとすると最小流量及び分解能はその1/100、即ち、10nL/minである。
【0068】
図11Eは、ポンプの吐出圧力を示す。2つのポンプの吐出配管19a、19bはミキサー62を介して接続されている。ミキサー62による圧力低下又は圧力損失を無視すると、2つのポンプの吐出圧力は同一である。即ち、第1ポンプの第1の圧力センサ60aによって検出された吐出圧力は、第2ポンプの第2の圧力センサ60bによって検出された吐出圧力に等しい。更に、これらの圧力センサ60a、60bによって検出された吐出圧力は、ミキサー62の吐出圧力に等しい。
【0069】
図11Cに示すように、総送液流量Qtが一定でも、図11Eに示すように、ポンプの吐出圧力は、最大1.5〜2倍程度も変化する。これは、2つの溶離液の混合比が変化すると、カラムを通過するときの流体抵抗が変化するためである。ポンプの吐出圧力を一定に保持しようとすると、逆に総送液流量Qtが一定とならない。
【0070】
一方、混合比と圧力変動の関係は過去の実験データより既知である。従って、総送液流量Qtが一定である場合の圧力変動曲線は予測可能である。そこで、ミキサー62の吐出圧力を測定し、それを、圧力変動曲線の予測値と比較し、両者の偏差をフィードバック信号としてポンプを駆動してよい。
【0071】
図11Eの実線の曲線は、ポンプの吐出圧力の測定値であり、破線の曲線は、過去の実験データより得られた目標圧力である。
【0072】
図10に示すように、第1の送液システムのポンプに設けられた第1の圧力センサ60aの出力は、メインコントローラ70にフィードバックされる。メインコントローラ70は、第1の圧力センサ60aからの測定値を目標圧力と比較し、両者の偏差を求める。この偏差を、各ポンプのコントローラ50a、50bに送信する。コントローラ50a、50bは、偏差に基づいて、各ポンプを制御する。
【0073】
ポンプの吐出圧力が目標圧力より低い場合、総送液流量(Qt=Qa+Qb)が低下している。従って、総送液流量を増加させればよい。しかしながら、2つの送液流量QaとQbのどちらがより大きく低下しているのかは不明である。例えば、実際には第1の送液流量Qaが低下しているのに誤って第2の送液流量Qbが低下していると判断し、第2の送液流量Qbを増加させた場合、混合比の精度が悪化する。これはグラジエント運転における相互干渉と呼ばれる問題である。
【0074】
本例では、2つの送液流量QaとQbは、同一の割合で増加又は減少すると仮定する。従って、図11Fに示すように、2つの送液流量QaとQbに対して、流量比に比例したフィードバックゲインを与える。即ち、比例制御を行う。例えば2つの送液流量の比Qa:Qbが20:80の場合、2つの送液流量Qa、Qbのフィードバックゲインは、それぞれ(20/100)×K、(80/100)×Kで与えられる。Kは定数である。仮に総送液流量Qtが5だけ不足している場合、2つのポンプへの指令値はそれぞれ20+(20/100)×K×5、80+(80/100)×K×5で与えられる。例えばKを1とすると、前者は21、後者は84となる。この方法によれば2個のポンプの固体差による混合比の精度の低下は避けられないが、相互干渉は避けられる。
【0075】
以上により、送液安定性と混合精度に優れた高圧グラジエントシステムを提供することができる。
【0076】
図12(a)は、本発明の送液システムを使用して、液体クロマトグラフ及び質量分析計システムを構築した例を示す。液体クロマトグラフは、送液システム52、インジェクタ53、カラム54、高電圧スプレー(噴霧器)56を含む。本例では、液体クロマトグラフと質量分析計58の間を接続するインターフェースとして、たんぱく質やペプチドなど極性の高い物質の分析に用いられるエレクトロスプレーイオン化(ESI)法が使用されている。エレクトロスプレーイオン化法では、3〜5kVの高電圧を印加したキャピラリーに試料溶液を送り込むと、非常に微細なスプレー(噴霧)が大気圧下にて生じ、試料分子がイオン化される。こうして、イオン化された試料分子は質量分析計に導入される。質量分析計は、質量を電荷で割った値を分析し、分子量を特定する。
【0077】
図12(b)および図12(c)は質量分析計での処理データの一例を示したものである。図12(b)のマススペクトル、図12(c)のマスクロマトグラムを示す。
【0078】
プロテオーム解析においては、採取した細胞からたんぱく質を抽出して分析するが、細胞に含まれるたんぱく質は極微量であり、増殖も不可能である。従って、液体クロマトグラフ及び質量分析計システムの検出感度をあげるためには、液体クロマトグラフにおける低流量化が必要である。また、分析時間は試料を投入してデータ処理するまでに数時間を要する。
【0079】
以上説明した液体クロマトグラフ及び質量分析計システムに、本発明の送液システムを導入することによって、液体クロマトグラフに投入する分析試料の量を微量化することができる。また、本発明の送液システムではポンプ起動時の立ち上がり時間が短いので、長時間の分析時間を確保することができる。その結果、データの処理件数を増やすことができる。
【0080】
また、ポンプの圧力をモニターして、所定値(例えば、上述した目標圧力)に達したときに、試料を投入し分析を開始してもよい。それにより、省動力化を達成することができる。
【0081】
図13は、本発明の送液システムの他の例を示し、図1に示した送液システムと同等の部分には同一の付号を付し、適宜説明を省略する。本例の特徴は、第1ポンプ1と第2ポンプ2は別個のポンプとして構成されている。本例の送液システムは、2つの貯蔵槽51−1、51−2、2つの脱気装置(デガッサ)14−1、14−2、2つのプランジャポンプ装置1、2、直動機構(アクチュエータ)122、222、直動機構を駆動するモータ121、221、及び、コントローラ50を有する。
【0082】
2つのプランジャポンプ装置1、2は、吐出配管19を介してインジェクタ53に接続されている。吐出配管19には、ドレンバルブ9及び圧力センサ60が設けられている。
【0083】
2つのプランジャポンプ装置1、2は、それぞれ第1及び第2ポンプに相当する。第1の例と同様に、第1ポンプの流量は第2ポンプの流量より大きい。
【0084】
第1及び第2のプランジャポンプ装置1、2は、それぞれ第1及び第2加圧室102、202を有し、これらの加圧室はシール124、224により液密されている。第1及び第2加圧室102、202には、それぞれ第1及び第2プランジャ101、201が配置されている。第1及び第2プランジャ101、201は軸受123、223により摺動可能に保持されている。
【0085】
第1加圧室102には、吸込通路103と吐出通路104が接続されている。吸込通路103は、吸込配管16−1及び脱気装置14−1を介して貯蔵槽51−1に接続されている。吸込通路103には吸込チェック弁105が設けられている。吐出通路104は、吐出配管19に接続されている。吐出通路104には吐出チェック弁106が設けられている。
【0086】
第2加圧室202には、吸込通路203と吐出通路204が接続されている。吸込通路203は、吸込配管16−2及び脱気装置14−2を介して貯蔵槽51−2に接続されている。吸込通路203には吸込チェック弁205が設けられている。吐出通路204は、吐出配管19に接続されている。吐出通路204には吐出チェック弁206が設けられている。
【0087】
次に、送液システムのポンプ動作について説明する。気泡排出及び溶離液充填モードでは、ドレンバルブ9を「開」にし、2つのプランジャポンプ装置を作動させ、それぞれ加圧室及び通路内の気泡を排出する。起動運転では、ドレンバルブ9を閉じ、第1プランジャ101のみを作動させる。第1プランジャ101の流量は第2プランジャ201の流量より大きい。従って、容易に、ポンプの吐出圧力は目標圧力に到達する。ポンプの吐出圧力が目標圧力の到達すると、ポンプの起動運転から定常運転に変える。定常運転では、ドレンバルブ9を閉じ、第1プランジャポンプ装置を停止し、第2プランジャポンプ装置のみを作動させる。第2プランジャを低速にて第2加圧室202に押し込む。それにより、ポンプの吐出圧力を目標圧力に保持しながら、所定のポンプ流量を達成することができる。
【0088】
なお、本実施形態ではポンプの吐出側に吐出チェック弁を設けるが、上述したアクティブバルブを用いてもよい。
【0089】
本例の送液システムでは、2つのポンプを別個の要素として設け、両者を配管で接続する。従って、ポンプの分解作業が容易となり、シール交換などのメンテナンス作業が容易となる。また、機器のレイアウト性が向上するなどの利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の送液システムの第1の例及び液体クロマトグラフの概略構成を示す図であり、アクティブバルブが第1プランジャに対して「開」、第2プランジャに対して「閉」である状態を示す。
【図2】本発明の送液システムの第1の例及び液体クロマトグラフの概略構成を示す図であり、アクティブバルブが第2プランジャに対して「閉」、第2プランジャに対して「開」である状態を示す。
【図3】本発明の送液システムの第1の例の駆動方法の一例を示す図である。
【図4】本発明の送液システムの第1の例の駆動方法の他の例を示す図である。
【図5】本発明のポンプの圧力特性の実験結果を示す図である。
【図6】本発明のポンプの圧力特性の実験結果を示す図である。
【図7】本発明の送液システムの第2の例及び液体クロマトグラフの概略構成を示す図であり、アクティブバルブが「開」である状態を示す。
【図8】本発明の送液システムの第2の例及び液体クロマトグラフの概略構成を示す図であり、アクティブバルブが「閉」である状態を示す。
【図9】本発明の送液システムの第2の例の駆動方法の一例を示す図である。
【図10】本発明の高圧グラジエント運転システムの例を示す図である。
【図11】本発明の高圧グラジエント運転システムの駆動方法の一例を示す図である。
【図12】図12Aは、本発明の送液システムを用いた液体クロマトグラフ及び質量分析計システムの例を示す図である。図12B及び図12Cは、質量分析計による分析結果を示す図である。
【図13】本発明の送液システムの第3の例及び液体クロマトグラフの概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0091】
1…プランジャポンプ装置、5…アクティブバルブ、5a、5b、5c…ポート、5e、5f…流路、9…ドレンバルブ、10…プランジャポンプ装置、14、14’…脱気装置(デガッサ)、15、16…吸込配管、17…吐出配管、18…吸込配管、19…吐出配管、20…プランジャポンプ装置、50、50a、50b…コントローラ、51a、51b…溶離液、53…インジェクタ、54…カラム、55…検出器、56…スプレー、58…質量分析計、60、60a、60b、61a、61b…圧力センサ、62…ミキサー、70…メインコントローラ、101…第1プランジャ、102…第1加圧室、103…吸込通路、104…吐出通路、105…吸込チェック弁、106…吐出チェック弁、121…モータ、122…直動機構、123…軸受、124…シール、201…第2プランジャ、202…第2加圧室、203…吸込通路、204…吐出通路、205…吸込チェック弁、206…吐出チェック弁、221…モータ、222…直動機構、223…軸受、224…シール
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プランジャを備えた第1及び第2ポンプと吸込口と吐出口を有し、上記吸込口を介して吸込んだ液を上記第1、第2ポンプを運転して上記吐出口から吐出する送液システムにおいて、起動運転モードでは、上記第2ポンプを停止し上記第1ポンプのみを作動し、上記吐出口の吐出圧力が所定の値に到達したとき起動運転モードを定常運転モードに切り替え、定常運転モードでは、上記第1ポンプを停止し上記第2ポンプのみを運転することを特徴とする送液システム。
【請求項2】
請求項1記載の送液システムにおいて、上記所定の値は、定常運転モードにおける上記吐出口の吐出圧力の目標値に等しいことを特徴とする送液システム。
【請求項3】
請求項1記載の送液システムにおいて、上記所定の値は、定常運転モードにおける上記吐出口の吐出圧力の目標値より小さい値であることを特徴とする送液システム。
【請求項4】
請求項1記載の送液システムにおいて、上記起動運転モードにおいて、上記吐出口の吐出圧力が所定の値に到達したとき、上記第1ポンプの作動速度を低下させることを特徴とする送液システム。
【請求項5】
請求項1記載の送液システムにおいて、上記起動運転モードの前の気泡排出及び溶液充填モードでは、上記第1及び第2ポンプは吸込工程と吐出工程を所定の周期にて繰り返して行い且つ上記第2ポンプは、上記第1ポンプより半周期遅れて吸込工程と吐出工程を繰り返すことを特徴とする送液システム。
【請求項6】
請求項1記載の送液システムにおいて、上記起動運転モードの前の気泡排出及び溶液充填モードでは、上記第2ポンプを停止し、上記第1ポンプのみを作動させることを特徴とする送液システム。
【請求項7】
請求項1記載の送液システムにおいて、上記吐出口の吐出圧力を開放するドレンバルブを設け、上記気泡排出及び溶液充填モードでは、上記ドレンバルブを開放することを特徴とする送液システム。
【請求項8】
請求項1記載の送液システムにおいて、上記第1ポンプの作動流量は上記第2ポンプの作動流量より大きいことを特徴とする送液システム。
【請求項9】
請求項1記載の送液システムにおいて、上記吐出口の吐出圧力の目標値と目標流量の関係を示すマップを有し、上記目標値が入力されたとき、上記マップを参照して目標流量を求め、該目標流量に基づいて、上記第1ポンプの作動流量と上記第2ポンプの作動流量の比である流量係数αの最適値を求めることを特徴とする送液システム。
【請求項10】
プランジャを備えた第1及び第2ポンプとバルブ装置と吐出口を有し、溶液源からの溶液を上記第1、第2ポンプを経由して上記吐出口より吐出する送液システムにおいて、上記バルブ装置は、上記溶液源と上記第1ポンプの間を接続し且つ上記第1ポンプと上記第2ポンプの間を遮断する開の状態と上記溶液源と上記第1ポンプの間を遮断し且つ上記第1ポンプと上記第2ポンプの間を接続する閉の状態の2つの状態を有し、起動運転モードでは、上記バルブ装置を上記開状態にし、上記第2ポンプを停止し上記第1ポンプのみを作動し、上記吐出口の吐出圧力が所定の値に到達したとき起動運転モードを定常運転モードに切り替え、定常運転モードでは、上記バルブ装置を上記閉状態にし、上記第1ポンプを停止し上記第2ポンプのみを運転することを特徴とする送液システム。
【請求項11】
請求項10記載の送液システムにおいて、上記起動運転モードの前の気泡排出及び溶液充填モードでは、上記バルブ装置を閉から開に変化させてから4分の1周期遅れて、第1ポンプの吸込工程を行い、第1ポンプの吸込工程の終了から4分の1周期遅れて、上記バルブ装置を閉から開に変化させ、上記バルブ装置を閉から開に変化させてから4分の1周期遅れて、第2ポンプの吸込工程を行い、上記バルブ装置を開から閉に変化させてから4分の1周期遅れて、第1ポンプの吐出工程を行い、第1ポンプの吐出工程の終了から4分の1周期遅れて、上記バルブ装置を開から閉に変化させ、上記バルブ装置を開から閉に変化させてから4分の1周期遅れて、第2ポンプの吐出工程を行うことを特徴とする送液システム。
【請求項12】
請求項1乃至11項に記載の送液システムにおいて、送液流量の範囲は0.1nL/min〜50μL/minであることを特徴とする送液システム。
【請求項13】
第1の溶液を送液する第1の送液装置と、第2の溶液を送液する第2の送液装置と、上記第1及び第2の送液装置によって送液された溶液を混合するミキサーと、を有し、上記第1及び第2の溶液の混合比を時間と共に階段状に変化させながら送液するグラジエント運転を行うグラジエント運転システムにおいて、上記第1及び第2の送液装置の送液流量を制御するための信号に対して、2つの送液流量の比に比例したフィードバックゲインを与えることを特徴とするグラジエント運転システム。
【請求項14】
請求項13に記載のグラジエント運転システムにおいて、上記第1及び第2の送液装置は、請求項1から12のいずれか1項に記載の送液システムを含むことを特徴とするグラジエント運転システム。
【請求項1】
プランジャを備えた第1及び第2ポンプと吸込口と吐出口を有し、上記吸込口を介して吸込んだ液を上記第1、第2ポンプを運転して上記吐出口から吐出する送液システムにおいて、起動運転モードでは、上記第2ポンプを停止し上記第1ポンプのみを作動し、上記吐出口の吐出圧力が所定の値に到達したとき起動運転モードを定常運転モードに切り替え、定常運転モードでは、上記第1ポンプを停止し上記第2ポンプのみを運転することを特徴とする送液システム。
【請求項2】
請求項1記載の送液システムにおいて、上記所定の値は、定常運転モードにおける上記吐出口の吐出圧力の目標値に等しいことを特徴とする送液システム。
【請求項3】
請求項1記載の送液システムにおいて、上記所定の値は、定常運転モードにおける上記吐出口の吐出圧力の目標値より小さい値であることを特徴とする送液システム。
【請求項4】
請求項1記載の送液システムにおいて、上記起動運転モードにおいて、上記吐出口の吐出圧力が所定の値に到達したとき、上記第1ポンプの作動速度を低下させることを特徴とする送液システム。
【請求項5】
請求項1記載の送液システムにおいて、上記起動運転モードの前の気泡排出及び溶液充填モードでは、上記第1及び第2ポンプは吸込工程と吐出工程を所定の周期にて繰り返して行い且つ上記第2ポンプは、上記第1ポンプより半周期遅れて吸込工程と吐出工程を繰り返すことを特徴とする送液システム。
【請求項6】
請求項1記載の送液システムにおいて、上記起動運転モードの前の気泡排出及び溶液充填モードでは、上記第2ポンプを停止し、上記第1ポンプのみを作動させることを特徴とする送液システム。
【請求項7】
請求項1記載の送液システムにおいて、上記吐出口の吐出圧力を開放するドレンバルブを設け、上記気泡排出及び溶液充填モードでは、上記ドレンバルブを開放することを特徴とする送液システム。
【請求項8】
請求項1記載の送液システムにおいて、上記第1ポンプの作動流量は上記第2ポンプの作動流量より大きいことを特徴とする送液システム。
【請求項9】
請求項1記載の送液システムにおいて、上記吐出口の吐出圧力の目標値と目標流量の関係を示すマップを有し、上記目標値が入力されたとき、上記マップを参照して目標流量を求め、該目標流量に基づいて、上記第1ポンプの作動流量と上記第2ポンプの作動流量の比である流量係数αの最適値を求めることを特徴とする送液システム。
【請求項10】
プランジャを備えた第1及び第2ポンプとバルブ装置と吐出口を有し、溶液源からの溶液を上記第1、第2ポンプを経由して上記吐出口より吐出する送液システムにおいて、上記バルブ装置は、上記溶液源と上記第1ポンプの間を接続し且つ上記第1ポンプと上記第2ポンプの間を遮断する開の状態と上記溶液源と上記第1ポンプの間を遮断し且つ上記第1ポンプと上記第2ポンプの間を接続する閉の状態の2つの状態を有し、起動運転モードでは、上記バルブ装置を上記開状態にし、上記第2ポンプを停止し上記第1ポンプのみを作動し、上記吐出口の吐出圧力が所定の値に到達したとき起動運転モードを定常運転モードに切り替え、定常運転モードでは、上記バルブ装置を上記閉状態にし、上記第1ポンプを停止し上記第2ポンプのみを運転することを特徴とする送液システム。
【請求項11】
請求項10記載の送液システムにおいて、上記起動運転モードの前の気泡排出及び溶液充填モードでは、上記バルブ装置を閉から開に変化させてから4分の1周期遅れて、第1ポンプの吸込工程を行い、第1ポンプの吸込工程の終了から4分の1周期遅れて、上記バルブ装置を閉から開に変化させ、上記バルブ装置を閉から開に変化させてから4分の1周期遅れて、第2ポンプの吸込工程を行い、上記バルブ装置を開から閉に変化させてから4分の1周期遅れて、第1ポンプの吐出工程を行い、第1ポンプの吐出工程の終了から4分の1周期遅れて、上記バルブ装置を開から閉に変化させ、上記バルブ装置を開から閉に変化させてから4分の1周期遅れて、第2ポンプの吐出工程を行うことを特徴とする送液システム。
【請求項12】
請求項1乃至11項に記載の送液システムにおいて、送液流量の範囲は0.1nL/min〜50μL/minであることを特徴とする送液システム。
【請求項13】
第1の溶液を送液する第1の送液装置と、第2の溶液を送液する第2の送液装置と、上記第1及び第2の送液装置によって送液された溶液を混合するミキサーと、を有し、上記第1及び第2の溶液の混合比を時間と共に階段状に変化させながら送液するグラジエント運転を行うグラジエント運転システムにおいて、上記第1及び第2の送液装置の送液流量を制御するための信号に対して、2つの送液流量の比に比例したフィードバックゲインを与えることを特徴とするグラジエント運転システム。
【請求項14】
請求項13に記載のグラジエント運転システムにおいて、上記第1及び第2の送液装置は、請求項1から12のいずれか1項に記載の送液システムを含むことを特徴とするグラジエント運転システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−17590(P2006−17590A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195940(P2004−195940)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
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