送電系統における鉄塔の構造
【課題】 架空線の引き留め部分の近くに取り付けられる微風振動防止用ダンパーの働きを阻害することがない鉄塔の構造を提供する。
【解決手段】 監視用自走機が架空線2からバイパス3へまたはその逆へと乗り移るための通路を形成する分岐器5が、架空線2に載置された状態でその一部を鉄塔1側の架空線引き留めクランプ6に取り付けられている。バイパス3は、鉄塔1に設けられた複数の支持具によって支持されていることが好ましい。また、バイパス3は、鉄塔1の側方をほぼ水平に回り込む形で支持されていることが好ましい。
【解決手段】 監視用自走機が架空線2からバイパス3へまたはその逆へと乗り移るための通路を形成する分岐器5が、架空線2に載置された状態でその一部を鉄塔1側の架空線引き留めクランプ6に取り付けられている。バイパス3は、鉄塔1に設けられた複数の支持具によって支持されていることが好ましい。また、バイパス3は、鉄塔1の側方をほぼ水平に回り込む形で支持されていることが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電系統における鉄塔の構造に関する。さらに詳述すると、本発明は、監視用自走機を用いて鉄塔、架空線、線下周辺等の保守を実施する場合に適した送電系統における鉄塔の構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
送電系統における鉄塔、架空線、線下周辺等の保守のための監視ないしは巡視作業(本明細書ではパトロールともいう)は多くの人手と時間を要する現場作業であり、通常は、地上においては車両や徒歩、上空においてはヘリコプターによって実施されている。ところが、車両や徒歩でのパトロールは例えば週に1回といったペースで実施する必要があり、もちろん人員の交替はあるものの監視自体には原則として休みがないために保守点検作業者にかかる負担が大きいという面がある。また、ヘリコプターによる監視作業は、天候の影響を受けやすいという面、墜落事故等を起こさないようにするべく安全に対する十分な配慮が必要であり、手間とコストがかかるという面がある。
【0003】
従来、このような問題を回避しつつ各送電線路の点検をするための手段として、架空線上を自走する送電線等監視用の自走機が提案されている。さらには、自走機が鉄塔を超えて自走できるようにするため、当該鉄塔の架空線から分岐したバイパスを設けておき、このバイパス上を走ることによって自走機が鉄塔を乗り越えるという技術も提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平10−023628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような監視用自走機には以下のような問題がある。すなわち、第一に、バイパスを例えばY字型クランプを使うなどして架空線から分岐させているために、架空線の引き留め部分の近くに取り付けられる微風振動防止用ダンパー(電線が風によって振動し、引き留め部分で破断するのを防止するダンパー)の動きに影響が及ぶことがある。つまり、監視用自走機が鉄塔を迂回してなお自走するためにはバイパスを分岐させることが必要だが、分岐構造によっては微風振動防止用ダンパーの動きに影響を及ぼして働きを阻害することがある。
【0006】
これについてもう少し説明を加えると以下のとおりである。すなわち、架空線からバイパスを分岐させている場合、振動は架空線からバイパスへと伝わることになる。さらに、バイパスが鉄塔に固定されているため、分岐部分から固定部分にかけてバイパスが変形することにより振動が吸収される。このため、バイパス自体が振動吸収作用を引き受けることになる。したがって、このときにバイパス自体やその固定部分の疲労が懸念される。また、ダンパーに対する影響としては、バイパスにより、ダンパーの共振条件が変わることが考えられる。以上から、「ダンパーの働きを阻害する」、および「バイパス自体や固定部分が振動疲労する」の2つの影響が生じることがある。
【0007】
また、第二に、監視用自走機を使用した監視作業を実施するには、監視作業の度に作業員が鉄塔を登ってこの自走機を架空地線へ取り付けなければならず、監視用として日常的に使用することを前提とすると非常に不便だという問題がある。
【0008】
そこで本発明は、監視用自走機を使って鉄塔、架空線等を監視する場合において、架空線の引き留め部分の近くに取り付けられる微風振動防止用ダンパーの働きを阻害することがない鉄塔の構造を提供することを目的とする。さらに本発明は、監視作業の度に作業員が鉄塔を登らなくて済む鉄塔の構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため本発明者は種々の検討を繰り返し、その結果、微風振動防止用ダンパーの働きを阻害することのない技術を知見するに至った。さらに、本発明者は、監視作業の度に作業員が鉄塔を登らなくて済む技術をも知見するに至った。
【0010】
本発明はかかる知見に基づくものであり、請求項1に記載の発明は、鉄塔間に架設された架空線および鉄塔を迂回するバイパスを監視用自走機に自走させて鉄塔、架空線等を監視するようにした送電系統における当該鉄塔の構造において、監視用自走機が架空線からバイパスへまたはその逆へと乗り移るための通路を形成する分岐器が、架空線に載置された状態でその一部を鉄塔側の架空線引き留めクランプに取り付けられていることを特徴とするものである。
【0011】
隣り合う鉄塔間に例えば架空地線を架設する場合、架空地線はその端部を架空線引き留めクランプによって留め付けられて固定される場合がある。本発明においては、この架空線引き留めクランプを利用し、分岐器を、架空線に対しては載置された状態でこの架空線引き留めクランプに取り付けている。こうした場合の分岐器は、架空線引き留めクランプに対しては一体的な状態となっているが架空線に対しては載置されただけの状態であり、例えば微風を受けたような場合に架空線との間でわずかでも相対的に動くことが可能となっている。したがって本発明における分岐器は従来のY字型クランプなどとは異なり、微風振動防止用ダンパーの動きに影響を与えることがない。架空線上を走行する監視用自走機は、架空線からこの分岐器へ乗り移り、引き続きバイパス上を走行することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の送電系統における鉄塔のバイパスが、鉄塔に設けられた複数の支持具によって支持されているというものである。この場合のバイパスは、単数の支持具のみによって支持されている場合よりも安定度が高い。
【0013】
また、上記におけるバイパスは、請求項3に記載のように、鉄塔の側方をほぼ水平に回り込む形で支持されていることが好ましい。こうした場合のバイパスは、その起伏がないかあるいはあっても少ないものとなる。
【0014】
さらに、請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかひとつに記載の送電系統における鉄塔の構造において、監視用自走機が載せられる昇降台と、監視作業が開始されまたは終了する鉄塔の側部に設置されて昇降台を案内するガイドレールとを備えているというものである。
【0015】
監視が開始されるかまたは終了する鉄塔に対しては、当該鉄塔の側面にガイドレールを取り付け、さらにこのガイドレールに沿って昇降する昇降台を取り付けることとする。昇降台には、例えば上記バイパスにぶら下がった状態にある監視用自走機を載せる。この場合、架空線から分岐したバイパスは、鉄塔の例えば側方を通過し,昇降台上に載せられている監視用自走機へと通じている。したがって、この鉄塔構造によれば、監視用自走機を自走させ、架空線からバイパス、さらにバイパスから別の架空線へと乗り移らせることができる。
【0016】
また、上記の昇降台は、請求項5に記載のように、鉄塔の塔頂部近傍まで上昇したときにバイパスと繋がる監視用自走機用の支持部材を備えていることが好ましい。支持部材によって監視用自走機を支持した状態で昇降台を上昇させ、支持部材とバイパスとを繋げることにより、監視用自走機は昇降台からバイパスへと容易に乗り移ることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の送電系統における鉄塔の構造によれば、監視用自走機を使って鉄塔、架空線等を監視する場合において、分岐器によって微風振動防止用ダンパーの働きを阻害するようなことがない。このため、架空線の振動を効果的に防止することを図りつつ、架空線からバイパスへと繋がる監視用自走機の走行通路を形成することが可能となる。
【0018】
請求項2に記載の送電系統における鉄塔の構造によれば、鉄塔の側方を回り込むバイパスを複数の支持具によって安定した状態で支持することができる。このため、例えば強風などといった外因に対する安定度が高い。
【0019】
請求項3に記載の送電系統における鉄塔の構造によれば、鉄塔の側方を回り込むバイパスの起伏がないかあるいはあっても少ない。このため、このバイパス上を監視用自走機が走行する際に駆動源に作用する負荷の変動が極めて少なくて済む。また、監視用自走機の速度変動も少なくなるためより安定して走行することが可能となる。
【0020】
請求項4に記載の送電系統における鉄塔の構造によれば、塔脚部と塔頂部との間で監視用自走機を人手をかけずに容易に昇降させることが可能となり、労力削減、安全性向上といった効果が得られる。
【0021】
さらに請求項5に記載の送電系統における鉄塔の構造によれば、監視用自走機を設置あるいは回収する際、昇降台とバイパスとの間での容易な乗り移りが実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1〜図12に本発明の実施の一形態を示す。本発明にかかる送電系統における鉄塔1の構造は、隣り合う鉄塔1の間に架設された架空線2および鉄塔1を迂回するためのバイパス3を備えたもので、架空線2およびバイパス3上を監視用自走機4に自走させることによって鉄塔1や架空線2、架空線2下の周辺部等を監視することを可能としたものである。また、分岐器5を架空線引き留めクランプ6に取り付け、監視用自走機4が架空線2からバイパス3へまたはその逆へと乗り移るための通路を形成することとしている。本明細書における「架空線」には送電線と架空地線の両者が含まれるが、以下に示す実施形態では、避雷線として機能する架空地線(グランドワイヤとも呼ばれる)上を監視用自走機4が自走して監視作業を行う場合における鉄塔1の構造について説明する。
【0024】
架空地線(以下、符号2を付して説明する)は避雷線とも呼ばれるもので、架空送電線への雷の直撃を防止するため、鉄塔1の最上部に設けられている。この架空地線2は1条設けられるが、場合によっては2条設けられることもある。また、本実施形態においてはこの架空地線2に分岐器5を介してバイパス3を接続し、これら架空地線2、分岐器5およびバイパス3に沿って監視用自走機4を自走させることとしている。この架空地線2には微風振動防止用のダンパー11が設けられている(図2等参照)。
【0025】
微風振動防止用ダンパー11は、微風によって起こる電線の振動を振動体(錘)の共振により吸収し、電線の疲労、損傷を防止するためのもので、例えば架空線引き留めクランプ6から1m程度の位置に取り付けられている。本実施形態では、微風振動防止用のダンパー11としてダブルトーショナルダンパーを利用している(図3、図4等参照)。ダブルトーショナルダンパーは、例えば1個の電線把持部14、2個の重錘13、振動を吸収する鋼より線12で構成されている。この場合、架空送電線に生じる微風振動の周波数の高さによってその振動を抑制するねじれ運動が2通りある。
【0026】
また、架空地線2は架空線引き留めクランプ(本実施形態の場合、より詳しくは架空地線用の引き留めクランプ)6によってその端部を留め付けられ、鉄塔間に張架された状態となっている(図2等参照)。ここでは特に詳しく説明しないが、架空線引き留めクランプ6としては例えば金車通過型引き留めクランプ、圧縮型引き留めクランプ、高圧引き留めクランプ、さらにはアルミクランプ口元の電線笑いを防止する笑い防止型引き留めクランプなどがある。
【0027】
バイパス3は、鉄塔1を迂回するように設けられた迂回路であり、監視用自走機4は、架空地線2からこのバイパス3へと乗り移ることによって鉄塔1を迂回してさらに自走し続けることが可能である。上述したように、監視用自走機4が架空地線2上を自走する本実施形態においては、鉄塔1の前後に設けられている架空地線2どうしを結ぶようにバイパス3が設けられている(図1等参照)。なお、このバイパス3を架空地線2に直接固定することは避け、微風振動防止用ダンパー11の動きに影響を与えないようにしている。
【0028】
ここで、バイパス3は、鉄塔1の側方をほぼ水平に回り込む形で支持されていることが好ましい。例えば監視用自走機4が上り傾斜を上る場合には余計にトルクが必要となるが、このようにバイパス自体の起伏がないかまたはあっても極めて少ないものであれば余計なトルクを要しないで済む。また、起伏がないか少なければ監視用自走機4の自走時における速度変動がその分少なくなるので、鉄塔1や架空線(架空送電線)等の監視という観点からも好ましい。
【0029】
また、鉄塔1の側方をほぼ水平に回り込むようにしてバイパス3が設けられる場合、当該バイパス3は、鉄塔1に設けられた複数の支持具(例えば鉄塔1に取り付けられた支持用の金具など)7によって支持されていることが好ましい(図1等参照)。こうした場合、より多くの点で支持することによってバイパス3を安定した状態に保つことができる。また、例えば当該バイパス3上を監視用自走機4が通過している場合、当該監視用自走機4およびバイパス3の沈み量を少なくすることが可能となる。
【0030】
以下では、鉄塔1に対する架空地線2およびバイパス3の接続の形態について説明する(図1、図2参照)。本実施形態の場合、架空地線2上に分岐器5を載置し、この分岐器5の一部を架空線引き留めクランプ6に取り付けるとともに、バイパス3の一端をこの分岐器5に接続して連続した通路が形成されるようにしている(図1、図2等参照)。こうした場合、分岐器5は架空線引き留めクランプ6に対しては固定された状態となるが、架空地線2に対しては載置されているだけで固定はされておらず、相対的に動くことが可能な状態となっている。このため、この分岐器5は架空地線2に取り付けられている微風振動防止用ダンパー11の動きに影響を与えるようなことがない。構造の一例を示せば、例えば本実施形態では、分岐器5の鉄塔1に近い側の端部を微風振動防止用ダンパー11の形状に合わせて形成し、ボルトなどでこの端部を微風振動防止用ダンパー11に固定するようにしている。この場合における分岐器5は、微風振動防止用ダンパー11の上に載置された状態となっていて構わない(図2参照)。要は、微風振動防止用ダンパー11の働きを阻害することなく監視用自走機4の通路を形成するものであればよい。
【0031】
このような分岐器5の具体例を挙げるとすれば、監視用自走機4を滑らかに導くための斜路(ランプ)を備えたレールなどが望ましい。例えば本実施形態では、2段の斜路5a,5bを備えたレールを分岐器5として用い、監視用自走機4を2段階に分けて上昇させる(あるいは下降させる)ようにしている(図2参照)。この分岐器5にはバイパス3が接続されており、分岐器5上を走行する監視用自走機4が引き続きバイパス3上を走行するようになっている。分岐器5から続くバイパス3は、その後は側方へと曲がって鉄塔1を迂回するように形成されている(図1参照)。この場合、バイパス3のすべてを形状の自由度が高いワイヤ製とすることもできるが、例えばバイパス3のうち少なくとも分岐器5の近傍部分を金属レール製とすれば、当該部分は当初形成された形状のまま保持できるという点で好ましい。
【0032】
監視用自走機4は、架空地線2上およびこの架空地線2に連続するバイパス3上を自走して鉄塔1や架空地線2、架空地線2下の周辺部等の監視作業を行うための自走車である。ここで、途中が曲線となっているバイパス3上を走行する監視用自走機4の駆動系は、単に溝が入った車輪のみならず、脱輪を防ぐための機構、バイパス3の曲線部分を走行するための機構を含んだ構造であることが望ましい。本実施形態の監視用自走機4は、走行方向前後に配置された2個の走行用ローラ15と、これら走行用ローラ15の下側左右に配置された一対のサイドローラ16とを備えたものとなっている(図5〜図7参照)。走行用ローラ15は架空地線2とバイパス3の上を転がるローラであり、モータ17によって駆動される。また、サイドローラ16は架空地線2とバイパス3の左右に位置し、架空地線2とバイパス3から走行用ローラ15がずれ落ちないように保持する(図7参照)。本実施形態では、監視用自走機4がバイパス3の曲線部分を走行する際の妨げとならないよう、左右のサイドローラ16の間隔を架空地線2やバイパス3の太さよりも広めにとることとしている(図7参照)。また、特に図示していないが、スプリングなどの弾性圧を利用し、架空地線2の走行時には左右のサイドローラ16の一定の間隔(架空地線2の太さ程度)が保持され、バイパス3の曲線部分の走行時には自然に必要な幅まで広がる仕組みとして、走行中のがたつきをなくすようにしている。走行用ローラ15の左右にはそれぞれ2本ずつ前後で計4本の脚18が設けられている。これら脚18は、例えば監視装置などが設けられているケーシング19を支持している(図6、図7参照)。また、両側の脚18間には微風振動防止用ダンパー11が通り抜け可能なだけの隙間が形成されている(図8(A)参照)。なお、本実施形態においては、上述した斜路5aを鉄塔1から見て微風振動防止用ダンパー11よりも遠い位置に設置している(図2参照)。こうすることにより、斜路5aを通過する監視用自走機4を徐々に持ち上げて上昇させ、微風防止用ダンパー11が当該監視用自走機4に形成された隙間を通過するようにしている。
【0033】
さらに、監視用自走機4の本体のうち左右いずれかには、架空地線2を通過させるため必要時に開放する装置が設けられている。例えば本実施形態の場合には、進行方向右側(または左側でもよい)の前後の脚18のそれぞれに、横倒しになって架空地線2が通過可能な開放スペースを形成する開閉弁20が設けられている(図5〜図7参照)。開閉弁20は例えばソレノイドなどのアクチュエータの作用によって開閉動作させることができる。また、上記の脚18であってこれら開閉弁20の内側位置には、物体が近接したことを検出可能な図示しないセンサが設けられている。監視用自走機4が例えば架空地線2からバイパス3へと乗り移る際、相対的に側方へとずれていく架空地線2をこのセンサが検出すると、開閉弁20が開放し、この架空地線2が通過可能な開放スペースが形成される。
【0034】
なお、架空地線2を通過させる際、前後2個の開閉弁20を同時に開放することも可能ではあるが、監視用自走機4が架空地線2からバイパス3へと乗り移る際、あるいは逆にバイパス3から架空地線2へと乗り移る際、監視用自走機4は架空地線2に対して斜め前方方向に走行する状態となることから、架空地線2が開放スペースを通過するタイミングには前後で差が生じる。そこで本実施形態では、前後の開閉弁20を開放するタイミングに時間差を設け、両開閉弁20を同時に動作させないこととしている。こうした場合、少なくとも一方の開閉弁20が常に閉じた状態となるから、仮に走行用ローラ15が架空地線2あるいはバイパス3から横にずれたとしても監視用自走機4が墜落することから免れることができる。
【0035】
続いて、図8〜図10を用いて、監視用自走機4が架空地線2からバイパス3へと乗り移る際の動作について説明する。まず、ステップ1として、監視用自走機4は架空地線2から分岐器5へと乗り移る(図8(A)、図8(B)参照)。この際、監視用自走機4は分岐器5の1段目の斜路5aを登坂して1段高い位置まで上る。また、走行中に微風振動防止用ダンパー11が監視用自走機4の両脚18間の隙間を通り抜ける。次に、ステップ2では、分岐器5の2段目の斜路5bを登坂することによって監視用自走機4がさらに高い位置まで上る(図9(A)、図9(B)参照)。この時点で、監視用自走機4に対する架空地線2の位置(高さ)は開閉弁20が形成する通過用の開放スペースと同程度となっている(図9(A)参照)。さらに、ステップ3では、監視用自走機4がバイパス3に沿って走行し、徐々に鉄塔1の側方へと回り込む動作をする(図10(A)、図10(B)参照)。このとき、前方の開閉弁20を開けておくと、架空地線2がまずは前方の開放スペースを通過する(図10(A)参照)。その後、前方の開閉弁20を閉じ、後方の開閉弁20を開けておくと、架空地線2が後方の開放スペースも通過する。監視用自走機4と架空地線2とはこの時点で分離した状態となる。この後の監視用自走機4はバイパス3に沿って走行し、塔頂部を迂回する動作をする。なお、塔頂部を迂回した後の監視用自走機4が再び架空地線2に戻るときは上述したのと逆の動作を行うことになる。この逆動作については詳細な説明を省略する。
【0036】
また、鉄塔1には昇降台8およびガイドレール9が設けられている(図11、図12参照)。昇降台8は監視用自走機4を載せたまま昇降することができる台であり、ガイドレール9はこの昇降台8を鉄塔1に沿って案内するというものである。例えば本実施形態の場合には、昇降台8上の端寄りの位置に支持柱21が設けられ、この支持柱21にはほぼ水平な片持ちの支持バー10が設けられている(図11等参照)。また、バイパス3は鉄塔1の側方まで設けられており、昇降台8が塔頂部まで昇降すると、このバイパス3の端部と支持バー10の端部とが繋がるようになっている。
【0037】
さらに、本実施形態の場合には、これら昇降台8およびガイドレール9を、監視作業が開始されるかまたは終了する鉄塔1の側部にのみ設置することとしている。すなわち、監視作業の開始地点となる鉄塔1に対しては監視用自走機4を所定高さまでリフトして配置する必要があり、さらに、監視作業の終了地点となる鉄塔1からは監視作業の終了した監視用自走機4を地上まで降ろして回収する必要がある。これらの必要性を鑑み、本実施形態においては、監視作業が開始されるかまたは終了する鉄塔1の側部にガイドレール9を設け、このガイドレール9に沿って昇降台8を昇降させることとしている(図11参照)。この場合、ガイドレール9および昇降台8が設置される鉄塔1においては、監視用自走機4をリフトして所定位置に配置する作業および下降させて回収する作業の両方が行われてもよいし、これらの一方のみが行われてもよい。要は、上記のような昇降台8およびガイドレール9が設置されていれば監視用自走機4をリフトして配置する作業と下降させて回収する作業の少なくとも一方を実施することが可能となる。
【0038】
ここで、監視用自走機4を鉄塔1の塔頂部へ配置し、または塔頂部から回収するために鉄塔1に設置される本実施形態の昇降台8およびガイドレール9について以下に説明する(図11等参照)。本実施形態の場合、昇降台8およびガイドレール9が、監視が開始される鉄塔1と終了する鉄塔1の両方に設置されている。ガイドレール9は、鉄塔1の脚部(塔脚部)から塔頂部まで直線状に形成されている。さらに、塔脚部と塔頂部の間をこのガイドレール9に沿って昇降する昇降台8が設けられている。昇降台8の駆動源は特に限定されることはないが例えばモータなどが用いられる。また、昇降台8の例えば底部には物体近接センサあるいはリミットスイッチなどからなる図示しない位置決めセンサが設けられている。この位置決めセンサが例えばガイドレール9の所定位置に設けられた被センサ部を検出することにより、監視用自走機4が頭頂部および塔脚部の所定位置において自動的に停止するようになっている。なお、昇降台8はガイドレール9に対して着脱可能なものであることが好ましい。着脱可能とした場合、複数の鉄塔1において1台の昇降台8を共用することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態では、上記の昇降台8およびガイドレール9によって監視用自走機4を以下のように鉄塔1の塔頂部へ配置することとしている。すなわち、まず昇降台8を塔脚部に位置させた状態としておき、地上にてこの昇降台8に監視用自走機4を載せる。より具体的には、走行用ローラ15が支持バー10の上に載った状態となるように監視用自走機4を設置する(図12参照)。監視用自走機4の設置後、昇降台8を塔頂部まで上昇させ、支持バー10とバイパス3とを連結させる。そうしたら監視用自走機4を走行させ、昇降台8上の支持バー10からバイパス3へと乗り移らせればよい。一方、監視を終えた監視用自走機4を回収するにはこれと逆の動作とすればよい。すなわち、塔頂部に昇降台8を待機させておき、監視用自走機4をバイパス3からこの昇降台8へと乗り移らせる。乗り移ったらこの昇降台8を塔脚部まで下降させ、地上にて監視用自走機4を回収することによって作業が終了する。
【0040】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば本実施形態においては監視用自走機4が架空地線(グランドワイヤ)2上およびこれに繋がったバイパス3上を走行する場合の一形態について説明したがこれは一例に過ぎず、例えば配電線の架空地線などにも適用可能である。つまり、本明細書における「架空線」は、地上に張られた線の総称という意味で使用されているものである。
【0041】
また、微風振動防止用ダンパー11の働きを阻害しないようにするという観点からは、分岐器5の一部(架空地線2から分岐する部分〜架空線引き留めクランプ6に固定されている部分にかけてのいずれかの部分)に可動部を設けることも好ましい。こうすることにより、微風振動防止用ダンパー11の働きを阻害しないという更なる効果が得られることになる。一例を示すと、例えば図13に示すように、斜路5aの一部を可撓性のある弾性部材で形成するなどして可動部22とする場合などがある(図13参照)。なお、図13においては、斜路5aの先端部分にY字型クランプ23を設けて分岐器5の一部を架空地線2に固定することとしている。本来、微風振動防止用ダンパー11の動きに影響を与えないようにするためにはY字型クランプ23を設置しないことが望ましい。ただし、図13に示すように、分岐器5を架空線引き留めクランプ6に取り付け、尚かつ上述のように可動部22を設けるというように十分な対処をしている場合には、Y字型クランプ23を設置したとしても微風振動防止用ダンパー11の働きを阻害しないことが可能である。以上から、図13に示した送電系統における鉄塔1の構造は、(1)振動対策のため、分岐器5の分岐部分〜固定部分のいずれかに可動部22が設けられている、(2)監視用自走機4の隙間(両側の脚18の間に形成された空間部分)を微風振動防止用ダンパー11が通過するようにするため、当該微風振動防止用ダンパー11よりも手前(鉄塔1から見てより遠い位置)で分岐器5と架空地線2との接触点を設け、さらに斜路5aを設けて、微風振動防止用ダンパー11が走行中に徐々に上昇するようにしている、(3)監視用自走機4が安定してバイパス3を走行できるようにするため、当該バイパス3を迂回させてアップダウンをなくし、当該監視用自走機4が鉄塔1の塔頂部の側方を通過するようにしている、といった特徴を有している。
【0042】
また、昇降台8の一例として片持ちの支持バー10を備えたものを例示したが、これも好適な一例に過ぎない。例えば、支持柱21を左右に設け、両支持柱21の間にバイパス3と同様のワイヤを備え付けておくようにしてもかまわない。要は、監視用自走機4を支持するこれら支持部材は、昇降台8が塔頂部まで上昇したときにバイパス3と繋がり、監視用自走機4をこのバイパス3上にスムーズに送り出せるものであれば足りる。
【0043】
さらに、本明細書では鉄塔1の側部にガイドレール9を設けるという説明をしたが、ここでいう側部は、鉄塔1の腕金1aが儲けられている左右方向はもちろんのこと、架空線が延びる前後の方向も含むものである。要は、昇降台8に監視用自走機4を載せ、塔頂部と塔脚部との間で昇降させ、尚かつ昇降台8とバイパス3との間で監視用自走機4をスムーズに乗り移らせることが可能であればガイドレール9が設置されている向きは特に問わない。なお、鉄塔1の側部にガイドレール9を設けた本実施形態の場合、昇降台8は鉄塔1の腕金1aの間を通過して昇降する(図12参照)。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態を示したもので、鉄塔の塔頂部付近における架空地線、バイパス、架空線引き留めクランプ等の構造の一例を表す斜視図である。
【図2】本実施形態における架空地線、バイパス、微風振動防止用ダンパー、架空線引き留めクランプ等の構造を示す図である。
【図3】微風振動防止用ダンパーの一例を示す側面図である。
【図4】図3に示した微風振動防止用ダンパーを架空地線の架線方向から見た図である。
【図5】監視用自走機の一例を示す側面図である。
【図6】図5に示した監視用自走機において開閉弁が動作する様子を示すものである。
【図7】図5に示した監視用自走機を架空地線の架線方向から見た図である。
【図8】監視用自走機が架空地線からバイパスへと乗り移る際の動作のうちのステップ1(監視用自走機が架空地線から分岐器へと乗り移る動作)を示すもので、(A)は架空地線の架線方向から見た図、(B)は側面図である。
【図9】監視用自走機が架空地線からバイパスへと乗り移る際の動作のうちのステップ2(監視用自走機が分岐器の2段目の斜路を登坂することによってさらに高い位置まで上る動作)を示すもので、(A)は架空地線の架線方向から見た図、(B)は側面図である。
【図10】監視用自走機が架空地線からバイパスへと乗り移る際の動作のうちのステップ3(監視用自走機がバイパスに沿って走行し、徐々に鉄塔の側方へと回り込む動作)を示すもので、(A)は架空地線の架線方向から見た図、(B)は側面図である。
【図11】昇降台とガイドレールを備えた鉄塔構造の一例を示す斜視図である。
【図12】昇降台を用いて監視用自走機を設置あるいは回収する際の動作を説明するための鉄塔の塔頂部および塔脚部の図である。
【図13】本発明の別の実施形態を示すもので、架空地線、バイパス、微風振動防止用ダンパー、架空線引き留めクランプ等の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 鉄塔
2 架空地線(架空線)
3 バイパス
4 監視用自走機
5 分岐器
6 架空線引き留めクランプ
7 支持具
8 昇降台
9 ガイドレール
10 支持バー(支持部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電系統における鉄塔の構造に関する。さらに詳述すると、本発明は、監視用自走機を用いて鉄塔、架空線、線下周辺等の保守を実施する場合に適した送電系統における鉄塔の構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
送電系統における鉄塔、架空線、線下周辺等の保守のための監視ないしは巡視作業(本明細書ではパトロールともいう)は多くの人手と時間を要する現場作業であり、通常は、地上においては車両や徒歩、上空においてはヘリコプターによって実施されている。ところが、車両や徒歩でのパトロールは例えば週に1回といったペースで実施する必要があり、もちろん人員の交替はあるものの監視自体には原則として休みがないために保守点検作業者にかかる負担が大きいという面がある。また、ヘリコプターによる監視作業は、天候の影響を受けやすいという面、墜落事故等を起こさないようにするべく安全に対する十分な配慮が必要であり、手間とコストがかかるという面がある。
【0003】
従来、このような問題を回避しつつ各送電線路の点検をするための手段として、架空線上を自走する送電線等監視用の自走機が提案されている。さらには、自走機が鉄塔を超えて自走できるようにするため、当該鉄塔の架空線から分岐したバイパスを設けておき、このバイパス上を走ることによって自走機が鉄塔を乗り越えるという技術も提案されている(特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平10−023628号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述のような監視用自走機には以下のような問題がある。すなわち、第一に、バイパスを例えばY字型クランプを使うなどして架空線から分岐させているために、架空線の引き留め部分の近くに取り付けられる微風振動防止用ダンパー(電線が風によって振動し、引き留め部分で破断するのを防止するダンパー)の動きに影響が及ぶことがある。つまり、監視用自走機が鉄塔を迂回してなお自走するためにはバイパスを分岐させることが必要だが、分岐構造によっては微風振動防止用ダンパーの動きに影響を及ぼして働きを阻害することがある。
【0006】
これについてもう少し説明を加えると以下のとおりである。すなわち、架空線からバイパスを分岐させている場合、振動は架空線からバイパスへと伝わることになる。さらに、バイパスが鉄塔に固定されているため、分岐部分から固定部分にかけてバイパスが変形することにより振動が吸収される。このため、バイパス自体が振動吸収作用を引き受けることになる。したがって、このときにバイパス自体やその固定部分の疲労が懸念される。また、ダンパーに対する影響としては、バイパスにより、ダンパーの共振条件が変わることが考えられる。以上から、「ダンパーの働きを阻害する」、および「バイパス自体や固定部分が振動疲労する」の2つの影響が生じることがある。
【0007】
また、第二に、監視用自走機を使用した監視作業を実施するには、監視作業の度に作業員が鉄塔を登ってこの自走機を架空地線へ取り付けなければならず、監視用として日常的に使用することを前提とすると非常に不便だという問題がある。
【0008】
そこで本発明は、監視用自走機を使って鉄塔、架空線等を監視する場合において、架空線の引き留め部分の近くに取り付けられる微風振動防止用ダンパーの働きを阻害することがない鉄塔の構造を提供することを目的とする。さらに本発明は、監視作業の度に作業員が鉄塔を登らなくて済む鉄塔の構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するため本発明者は種々の検討を繰り返し、その結果、微風振動防止用ダンパーの働きを阻害することのない技術を知見するに至った。さらに、本発明者は、監視作業の度に作業員が鉄塔を登らなくて済む技術をも知見するに至った。
【0010】
本発明はかかる知見に基づくものであり、請求項1に記載の発明は、鉄塔間に架設された架空線および鉄塔を迂回するバイパスを監視用自走機に自走させて鉄塔、架空線等を監視するようにした送電系統における当該鉄塔の構造において、監視用自走機が架空線からバイパスへまたはその逆へと乗り移るための通路を形成する分岐器が、架空線に載置された状態でその一部を鉄塔側の架空線引き留めクランプに取り付けられていることを特徴とするものである。
【0011】
隣り合う鉄塔間に例えば架空地線を架設する場合、架空地線はその端部を架空線引き留めクランプによって留め付けられて固定される場合がある。本発明においては、この架空線引き留めクランプを利用し、分岐器を、架空線に対しては載置された状態でこの架空線引き留めクランプに取り付けている。こうした場合の分岐器は、架空線引き留めクランプに対しては一体的な状態となっているが架空線に対しては載置されただけの状態であり、例えば微風を受けたような場合に架空線との間でわずかでも相対的に動くことが可能となっている。したがって本発明における分岐器は従来のY字型クランプなどとは異なり、微風振動防止用ダンパーの動きに影響を与えることがない。架空線上を走行する監視用自走機は、架空線からこの分岐器へ乗り移り、引き続きバイパス上を走行することができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の送電系統における鉄塔のバイパスが、鉄塔に設けられた複数の支持具によって支持されているというものである。この場合のバイパスは、単数の支持具のみによって支持されている場合よりも安定度が高い。
【0013】
また、上記におけるバイパスは、請求項3に記載のように、鉄塔の側方をほぼ水平に回り込む形で支持されていることが好ましい。こうした場合のバイパスは、その起伏がないかあるいはあっても少ないものとなる。
【0014】
さらに、請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかひとつに記載の送電系統における鉄塔の構造において、監視用自走機が載せられる昇降台と、監視作業が開始されまたは終了する鉄塔の側部に設置されて昇降台を案内するガイドレールとを備えているというものである。
【0015】
監視が開始されるかまたは終了する鉄塔に対しては、当該鉄塔の側面にガイドレールを取り付け、さらにこのガイドレールに沿って昇降する昇降台を取り付けることとする。昇降台には、例えば上記バイパスにぶら下がった状態にある監視用自走機を載せる。この場合、架空線から分岐したバイパスは、鉄塔の例えば側方を通過し,昇降台上に載せられている監視用自走機へと通じている。したがって、この鉄塔構造によれば、監視用自走機を自走させ、架空線からバイパス、さらにバイパスから別の架空線へと乗り移らせることができる。
【0016】
また、上記の昇降台は、請求項5に記載のように、鉄塔の塔頂部近傍まで上昇したときにバイパスと繋がる監視用自走機用の支持部材を備えていることが好ましい。支持部材によって監視用自走機を支持した状態で昇降台を上昇させ、支持部材とバイパスとを繋げることにより、監視用自走機は昇降台からバイパスへと容易に乗り移ることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の送電系統における鉄塔の構造によれば、監視用自走機を使って鉄塔、架空線等を監視する場合において、分岐器によって微風振動防止用ダンパーの働きを阻害するようなことがない。このため、架空線の振動を効果的に防止することを図りつつ、架空線からバイパスへと繋がる監視用自走機の走行通路を形成することが可能となる。
【0018】
請求項2に記載の送電系統における鉄塔の構造によれば、鉄塔の側方を回り込むバイパスを複数の支持具によって安定した状態で支持することができる。このため、例えば強風などといった外因に対する安定度が高い。
【0019】
請求項3に記載の送電系統における鉄塔の構造によれば、鉄塔の側方を回り込むバイパスの起伏がないかあるいはあっても少ない。このため、このバイパス上を監視用自走機が走行する際に駆動源に作用する負荷の変動が極めて少なくて済む。また、監視用自走機の速度変動も少なくなるためより安定して走行することが可能となる。
【0020】
請求項4に記載の送電系統における鉄塔の構造によれば、塔脚部と塔頂部との間で監視用自走機を人手をかけずに容易に昇降させることが可能となり、労力削減、安全性向上といった効果が得られる。
【0021】
さらに請求項5に記載の送電系統における鉄塔の構造によれば、監視用自走機を設置あるいは回収する際、昇降台とバイパスとの間での容易な乗り移りが実現する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1〜図12に本発明の実施の一形態を示す。本発明にかかる送電系統における鉄塔1の構造は、隣り合う鉄塔1の間に架設された架空線2および鉄塔1を迂回するためのバイパス3を備えたもので、架空線2およびバイパス3上を監視用自走機4に自走させることによって鉄塔1や架空線2、架空線2下の周辺部等を監視することを可能としたものである。また、分岐器5を架空線引き留めクランプ6に取り付け、監視用自走機4が架空線2からバイパス3へまたはその逆へと乗り移るための通路を形成することとしている。本明細書における「架空線」には送電線と架空地線の両者が含まれるが、以下に示す実施形態では、避雷線として機能する架空地線(グランドワイヤとも呼ばれる)上を監視用自走機4が自走して監視作業を行う場合における鉄塔1の構造について説明する。
【0024】
架空地線(以下、符号2を付して説明する)は避雷線とも呼ばれるもので、架空送電線への雷の直撃を防止するため、鉄塔1の最上部に設けられている。この架空地線2は1条設けられるが、場合によっては2条設けられることもある。また、本実施形態においてはこの架空地線2に分岐器5を介してバイパス3を接続し、これら架空地線2、分岐器5およびバイパス3に沿って監視用自走機4を自走させることとしている。この架空地線2には微風振動防止用のダンパー11が設けられている(図2等参照)。
【0025】
微風振動防止用ダンパー11は、微風によって起こる電線の振動を振動体(錘)の共振により吸収し、電線の疲労、損傷を防止するためのもので、例えば架空線引き留めクランプ6から1m程度の位置に取り付けられている。本実施形態では、微風振動防止用のダンパー11としてダブルトーショナルダンパーを利用している(図3、図4等参照)。ダブルトーショナルダンパーは、例えば1個の電線把持部14、2個の重錘13、振動を吸収する鋼より線12で構成されている。この場合、架空送電線に生じる微風振動の周波数の高さによってその振動を抑制するねじれ運動が2通りある。
【0026】
また、架空地線2は架空線引き留めクランプ(本実施形態の場合、より詳しくは架空地線用の引き留めクランプ)6によってその端部を留め付けられ、鉄塔間に張架された状態となっている(図2等参照)。ここでは特に詳しく説明しないが、架空線引き留めクランプ6としては例えば金車通過型引き留めクランプ、圧縮型引き留めクランプ、高圧引き留めクランプ、さらにはアルミクランプ口元の電線笑いを防止する笑い防止型引き留めクランプなどがある。
【0027】
バイパス3は、鉄塔1を迂回するように設けられた迂回路であり、監視用自走機4は、架空地線2からこのバイパス3へと乗り移ることによって鉄塔1を迂回してさらに自走し続けることが可能である。上述したように、監視用自走機4が架空地線2上を自走する本実施形態においては、鉄塔1の前後に設けられている架空地線2どうしを結ぶようにバイパス3が設けられている(図1等参照)。なお、このバイパス3を架空地線2に直接固定することは避け、微風振動防止用ダンパー11の動きに影響を与えないようにしている。
【0028】
ここで、バイパス3は、鉄塔1の側方をほぼ水平に回り込む形で支持されていることが好ましい。例えば監視用自走機4が上り傾斜を上る場合には余計にトルクが必要となるが、このようにバイパス自体の起伏がないかまたはあっても極めて少ないものであれば余計なトルクを要しないで済む。また、起伏がないか少なければ監視用自走機4の自走時における速度変動がその分少なくなるので、鉄塔1や架空線(架空送電線)等の監視という観点からも好ましい。
【0029】
また、鉄塔1の側方をほぼ水平に回り込むようにしてバイパス3が設けられる場合、当該バイパス3は、鉄塔1に設けられた複数の支持具(例えば鉄塔1に取り付けられた支持用の金具など)7によって支持されていることが好ましい(図1等参照)。こうした場合、より多くの点で支持することによってバイパス3を安定した状態に保つことができる。また、例えば当該バイパス3上を監視用自走機4が通過している場合、当該監視用自走機4およびバイパス3の沈み量を少なくすることが可能となる。
【0030】
以下では、鉄塔1に対する架空地線2およびバイパス3の接続の形態について説明する(図1、図2参照)。本実施形態の場合、架空地線2上に分岐器5を載置し、この分岐器5の一部を架空線引き留めクランプ6に取り付けるとともに、バイパス3の一端をこの分岐器5に接続して連続した通路が形成されるようにしている(図1、図2等参照)。こうした場合、分岐器5は架空線引き留めクランプ6に対しては固定された状態となるが、架空地線2に対しては載置されているだけで固定はされておらず、相対的に動くことが可能な状態となっている。このため、この分岐器5は架空地線2に取り付けられている微風振動防止用ダンパー11の動きに影響を与えるようなことがない。構造の一例を示せば、例えば本実施形態では、分岐器5の鉄塔1に近い側の端部を微風振動防止用ダンパー11の形状に合わせて形成し、ボルトなどでこの端部を微風振動防止用ダンパー11に固定するようにしている。この場合における分岐器5は、微風振動防止用ダンパー11の上に載置された状態となっていて構わない(図2参照)。要は、微風振動防止用ダンパー11の働きを阻害することなく監視用自走機4の通路を形成するものであればよい。
【0031】
このような分岐器5の具体例を挙げるとすれば、監視用自走機4を滑らかに導くための斜路(ランプ)を備えたレールなどが望ましい。例えば本実施形態では、2段の斜路5a,5bを備えたレールを分岐器5として用い、監視用自走機4を2段階に分けて上昇させる(あるいは下降させる)ようにしている(図2参照)。この分岐器5にはバイパス3が接続されており、分岐器5上を走行する監視用自走機4が引き続きバイパス3上を走行するようになっている。分岐器5から続くバイパス3は、その後は側方へと曲がって鉄塔1を迂回するように形成されている(図1参照)。この場合、バイパス3のすべてを形状の自由度が高いワイヤ製とすることもできるが、例えばバイパス3のうち少なくとも分岐器5の近傍部分を金属レール製とすれば、当該部分は当初形成された形状のまま保持できるという点で好ましい。
【0032】
監視用自走機4は、架空地線2上およびこの架空地線2に連続するバイパス3上を自走して鉄塔1や架空地線2、架空地線2下の周辺部等の監視作業を行うための自走車である。ここで、途中が曲線となっているバイパス3上を走行する監視用自走機4の駆動系は、単に溝が入った車輪のみならず、脱輪を防ぐための機構、バイパス3の曲線部分を走行するための機構を含んだ構造であることが望ましい。本実施形態の監視用自走機4は、走行方向前後に配置された2個の走行用ローラ15と、これら走行用ローラ15の下側左右に配置された一対のサイドローラ16とを備えたものとなっている(図5〜図7参照)。走行用ローラ15は架空地線2とバイパス3の上を転がるローラであり、モータ17によって駆動される。また、サイドローラ16は架空地線2とバイパス3の左右に位置し、架空地線2とバイパス3から走行用ローラ15がずれ落ちないように保持する(図7参照)。本実施形態では、監視用自走機4がバイパス3の曲線部分を走行する際の妨げとならないよう、左右のサイドローラ16の間隔を架空地線2やバイパス3の太さよりも広めにとることとしている(図7参照)。また、特に図示していないが、スプリングなどの弾性圧を利用し、架空地線2の走行時には左右のサイドローラ16の一定の間隔(架空地線2の太さ程度)が保持され、バイパス3の曲線部分の走行時には自然に必要な幅まで広がる仕組みとして、走行中のがたつきをなくすようにしている。走行用ローラ15の左右にはそれぞれ2本ずつ前後で計4本の脚18が設けられている。これら脚18は、例えば監視装置などが設けられているケーシング19を支持している(図6、図7参照)。また、両側の脚18間には微風振動防止用ダンパー11が通り抜け可能なだけの隙間が形成されている(図8(A)参照)。なお、本実施形態においては、上述した斜路5aを鉄塔1から見て微風振動防止用ダンパー11よりも遠い位置に設置している(図2参照)。こうすることにより、斜路5aを通過する監視用自走機4を徐々に持ち上げて上昇させ、微風防止用ダンパー11が当該監視用自走機4に形成された隙間を通過するようにしている。
【0033】
さらに、監視用自走機4の本体のうち左右いずれかには、架空地線2を通過させるため必要時に開放する装置が設けられている。例えば本実施形態の場合には、進行方向右側(または左側でもよい)の前後の脚18のそれぞれに、横倒しになって架空地線2が通過可能な開放スペースを形成する開閉弁20が設けられている(図5〜図7参照)。開閉弁20は例えばソレノイドなどのアクチュエータの作用によって開閉動作させることができる。また、上記の脚18であってこれら開閉弁20の内側位置には、物体が近接したことを検出可能な図示しないセンサが設けられている。監視用自走機4が例えば架空地線2からバイパス3へと乗り移る際、相対的に側方へとずれていく架空地線2をこのセンサが検出すると、開閉弁20が開放し、この架空地線2が通過可能な開放スペースが形成される。
【0034】
なお、架空地線2を通過させる際、前後2個の開閉弁20を同時に開放することも可能ではあるが、監視用自走機4が架空地線2からバイパス3へと乗り移る際、あるいは逆にバイパス3から架空地線2へと乗り移る際、監視用自走機4は架空地線2に対して斜め前方方向に走行する状態となることから、架空地線2が開放スペースを通過するタイミングには前後で差が生じる。そこで本実施形態では、前後の開閉弁20を開放するタイミングに時間差を設け、両開閉弁20を同時に動作させないこととしている。こうした場合、少なくとも一方の開閉弁20が常に閉じた状態となるから、仮に走行用ローラ15が架空地線2あるいはバイパス3から横にずれたとしても監視用自走機4が墜落することから免れることができる。
【0035】
続いて、図8〜図10を用いて、監視用自走機4が架空地線2からバイパス3へと乗り移る際の動作について説明する。まず、ステップ1として、監視用自走機4は架空地線2から分岐器5へと乗り移る(図8(A)、図8(B)参照)。この際、監視用自走機4は分岐器5の1段目の斜路5aを登坂して1段高い位置まで上る。また、走行中に微風振動防止用ダンパー11が監視用自走機4の両脚18間の隙間を通り抜ける。次に、ステップ2では、分岐器5の2段目の斜路5bを登坂することによって監視用自走機4がさらに高い位置まで上る(図9(A)、図9(B)参照)。この時点で、監視用自走機4に対する架空地線2の位置(高さ)は開閉弁20が形成する通過用の開放スペースと同程度となっている(図9(A)参照)。さらに、ステップ3では、監視用自走機4がバイパス3に沿って走行し、徐々に鉄塔1の側方へと回り込む動作をする(図10(A)、図10(B)参照)。このとき、前方の開閉弁20を開けておくと、架空地線2がまずは前方の開放スペースを通過する(図10(A)参照)。その後、前方の開閉弁20を閉じ、後方の開閉弁20を開けておくと、架空地線2が後方の開放スペースも通過する。監視用自走機4と架空地線2とはこの時点で分離した状態となる。この後の監視用自走機4はバイパス3に沿って走行し、塔頂部を迂回する動作をする。なお、塔頂部を迂回した後の監視用自走機4が再び架空地線2に戻るときは上述したのと逆の動作を行うことになる。この逆動作については詳細な説明を省略する。
【0036】
また、鉄塔1には昇降台8およびガイドレール9が設けられている(図11、図12参照)。昇降台8は監視用自走機4を載せたまま昇降することができる台であり、ガイドレール9はこの昇降台8を鉄塔1に沿って案内するというものである。例えば本実施形態の場合には、昇降台8上の端寄りの位置に支持柱21が設けられ、この支持柱21にはほぼ水平な片持ちの支持バー10が設けられている(図11等参照)。また、バイパス3は鉄塔1の側方まで設けられており、昇降台8が塔頂部まで昇降すると、このバイパス3の端部と支持バー10の端部とが繋がるようになっている。
【0037】
さらに、本実施形態の場合には、これら昇降台8およびガイドレール9を、監視作業が開始されるかまたは終了する鉄塔1の側部にのみ設置することとしている。すなわち、監視作業の開始地点となる鉄塔1に対しては監視用自走機4を所定高さまでリフトして配置する必要があり、さらに、監視作業の終了地点となる鉄塔1からは監視作業の終了した監視用自走機4を地上まで降ろして回収する必要がある。これらの必要性を鑑み、本実施形態においては、監視作業が開始されるかまたは終了する鉄塔1の側部にガイドレール9を設け、このガイドレール9に沿って昇降台8を昇降させることとしている(図11参照)。この場合、ガイドレール9および昇降台8が設置される鉄塔1においては、監視用自走機4をリフトして所定位置に配置する作業および下降させて回収する作業の両方が行われてもよいし、これらの一方のみが行われてもよい。要は、上記のような昇降台8およびガイドレール9が設置されていれば監視用自走機4をリフトして配置する作業と下降させて回収する作業の少なくとも一方を実施することが可能となる。
【0038】
ここで、監視用自走機4を鉄塔1の塔頂部へ配置し、または塔頂部から回収するために鉄塔1に設置される本実施形態の昇降台8およびガイドレール9について以下に説明する(図11等参照)。本実施形態の場合、昇降台8およびガイドレール9が、監視が開始される鉄塔1と終了する鉄塔1の両方に設置されている。ガイドレール9は、鉄塔1の脚部(塔脚部)から塔頂部まで直線状に形成されている。さらに、塔脚部と塔頂部の間をこのガイドレール9に沿って昇降する昇降台8が設けられている。昇降台8の駆動源は特に限定されることはないが例えばモータなどが用いられる。また、昇降台8の例えば底部には物体近接センサあるいはリミットスイッチなどからなる図示しない位置決めセンサが設けられている。この位置決めセンサが例えばガイドレール9の所定位置に設けられた被センサ部を検出することにより、監視用自走機4が頭頂部および塔脚部の所定位置において自動的に停止するようになっている。なお、昇降台8はガイドレール9に対して着脱可能なものであることが好ましい。着脱可能とした場合、複数の鉄塔1において1台の昇降台8を共用することが可能となる。
【0039】
また、本実施形態では、上記の昇降台8およびガイドレール9によって監視用自走機4を以下のように鉄塔1の塔頂部へ配置することとしている。すなわち、まず昇降台8を塔脚部に位置させた状態としておき、地上にてこの昇降台8に監視用自走機4を載せる。より具体的には、走行用ローラ15が支持バー10の上に載った状態となるように監視用自走機4を設置する(図12参照)。監視用自走機4の設置後、昇降台8を塔頂部まで上昇させ、支持バー10とバイパス3とを連結させる。そうしたら監視用自走機4を走行させ、昇降台8上の支持バー10からバイパス3へと乗り移らせればよい。一方、監視を終えた監視用自走機4を回収するにはこれと逆の動作とすればよい。すなわち、塔頂部に昇降台8を待機させておき、監視用自走機4をバイパス3からこの昇降台8へと乗り移らせる。乗り移ったらこの昇降台8を塔脚部まで下降させ、地上にて監視用自走機4を回収することによって作業が終了する。
【0040】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば本実施形態においては監視用自走機4が架空地線(グランドワイヤ)2上およびこれに繋がったバイパス3上を走行する場合の一形態について説明したがこれは一例に過ぎず、例えば配電線の架空地線などにも適用可能である。つまり、本明細書における「架空線」は、地上に張られた線の総称という意味で使用されているものである。
【0041】
また、微風振動防止用ダンパー11の働きを阻害しないようにするという観点からは、分岐器5の一部(架空地線2から分岐する部分〜架空線引き留めクランプ6に固定されている部分にかけてのいずれかの部分)に可動部を設けることも好ましい。こうすることにより、微風振動防止用ダンパー11の働きを阻害しないという更なる効果が得られることになる。一例を示すと、例えば図13に示すように、斜路5aの一部を可撓性のある弾性部材で形成するなどして可動部22とする場合などがある(図13参照)。なお、図13においては、斜路5aの先端部分にY字型クランプ23を設けて分岐器5の一部を架空地線2に固定することとしている。本来、微風振動防止用ダンパー11の動きに影響を与えないようにするためにはY字型クランプ23を設置しないことが望ましい。ただし、図13に示すように、分岐器5を架空線引き留めクランプ6に取り付け、尚かつ上述のように可動部22を設けるというように十分な対処をしている場合には、Y字型クランプ23を設置したとしても微風振動防止用ダンパー11の働きを阻害しないことが可能である。以上から、図13に示した送電系統における鉄塔1の構造は、(1)振動対策のため、分岐器5の分岐部分〜固定部分のいずれかに可動部22が設けられている、(2)監視用自走機4の隙間(両側の脚18の間に形成された空間部分)を微風振動防止用ダンパー11が通過するようにするため、当該微風振動防止用ダンパー11よりも手前(鉄塔1から見てより遠い位置)で分岐器5と架空地線2との接触点を設け、さらに斜路5aを設けて、微風振動防止用ダンパー11が走行中に徐々に上昇するようにしている、(3)監視用自走機4が安定してバイパス3を走行できるようにするため、当該バイパス3を迂回させてアップダウンをなくし、当該監視用自走機4が鉄塔1の塔頂部の側方を通過するようにしている、といった特徴を有している。
【0042】
また、昇降台8の一例として片持ちの支持バー10を備えたものを例示したが、これも好適な一例に過ぎない。例えば、支持柱21を左右に設け、両支持柱21の間にバイパス3と同様のワイヤを備え付けておくようにしてもかまわない。要は、監視用自走機4を支持するこれら支持部材は、昇降台8が塔頂部まで上昇したときにバイパス3と繋がり、監視用自走機4をこのバイパス3上にスムーズに送り出せるものであれば足りる。
【0043】
さらに、本明細書では鉄塔1の側部にガイドレール9を設けるという説明をしたが、ここでいう側部は、鉄塔1の腕金1aが儲けられている左右方向はもちろんのこと、架空線が延びる前後の方向も含むものである。要は、昇降台8に監視用自走機4を載せ、塔頂部と塔脚部との間で昇降させ、尚かつ昇降台8とバイパス3との間で監視用自走機4をスムーズに乗り移らせることが可能であればガイドレール9が設置されている向きは特に問わない。なお、鉄塔1の側部にガイドレール9を設けた本実施形態の場合、昇降台8は鉄塔1の腕金1aの間を通過して昇降する(図12参照)。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態を示したもので、鉄塔の塔頂部付近における架空地線、バイパス、架空線引き留めクランプ等の構造の一例を表す斜視図である。
【図2】本実施形態における架空地線、バイパス、微風振動防止用ダンパー、架空線引き留めクランプ等の構造を示す図である。
【図3】微風振動防止用ダンパーの一例を示す側面図である。
【図4】図3に示した微風振動防止用ダンパーを架空地線の架線方向から見た図である。
【図5】監視用自走機の一例を示す側面図である。
【図6】図5に示した監視用自走機において開閉弁が動作する様子を示すものである。
【図7】図5に示した監視用自走機を架空地線の架線方向から見た図である。
【図8】監視用自走機が架空地線からバイパスへと乗り移る際の動作のうちのステップ1(監視用自走機が架空地線から分岐器へと乗り移る動作)を示すもので、(A)は架空地線の架線方向から見た図、(B)は側面図である。
【図9】監視用自走機が架空地線からバイパスへと乗り移る際の動作のうちのステップ2(監視用自走機が分岐器の2段目の斜路を登坂することによってさらに高い位置まで上る動作)を示すもので、(A)は架空地線の架線方向から見た図、(B)は側面図である。
【図10】監視用自走機が架空地線からバイパスへと乗り移る際の動作のうちのステップ3(監視用自走機がバイパスに沿って走行し、徐々に鉄塔の側方へと回り込む動作)を示すもので、(A)は架空地線の架線方向から見た図、(B)は側面図である。
【図11】昇降台とガイドレールを備えた鉄塔構造の一例を示す斜視図である。
【図12】昇降台を用いて監視用自走機を設置あるいは回収する際の動作を説明するための鉄塔の塔頂部および塔脚部の図である。
【図13】本発明の別の実施形態を示すもので、架空地線、バイパス、微風振動防止用ダンパー、架空線引き留めクランプ等の構造を示す図である。
【符号の説明】
【0045】
1 鉄塔
2 架空地線(架空線)
3 バイパス
4 監視用自走機
5 分岐器
6 架空線引き留めクランプ
7 支持具
8 昇降台
9 ガイドレール
10 支持バー(支持部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔間に架設された架空線および前記鉄塔を迂回するバイパスを監視用自走機に自走させて前記鉄塔、架空線等を監視するようにした送電系統における当該鉄塔の構造において、前記監視用自走機が前記架空線から前記バイパスへまたはその逆へと乗り移るための通路を形成する分岐器が、前記架空線に載置された状態でその一部を前記鉄塔側の架空線引き留めクランプに取り付けられていることを特徴とする送電系統における鉄塔の構造。
【請求項2】
前記バイパスは、前記鉄塔に設けられた複数の支持具によって支持されていることを特徴とする請求項1に記載の送電系統における鉄塔の構造。
【請求項3】
前記バイパスは、前記鉄塔の側方をほぼ水平に回り込む形で支持されていることを特徴とする請求項2に記載の送電系統における鉄塔の構造。
【請求項4】
前記監視用自走機が載せられる昇降台と、監視作業が開始されまたは終了する前記鉄塔の側部に設置されて前記昇降台を案内するガイドレールとを備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかひとつに記載の送電系統における鉄塔の構造。
【請求項5】
前記昇降台は、前記鉄塔の塔頂部近傍まで上昇したときに前記バイパスと繋がる前記監視用自走機用の支持部材を備えていることを特徴とする請求項4に記載の送電系統における鉄塔の構造。
【請求項1】
鉄塔間に架設された架空線および前記鉄塔を迂回するバイパスを監視用自走機に自走させて前記鉄塔、架空線等を監視するようにした送電系統における当該鉄塔の構造において、前記監視用自走機が前記架空線から前記バイパスへまたはその逆へと乗り移るための通路を形成する分岐器が、前記架空線に載置された状態でその一部を前記鉄塔側の架空線引き留めクランプに取り付けられていることを特徴とする送電系統における鉄塔の構造。
【請求項2】
前記バイパスは、前記鉄塔に設けられた複数の支持具によって支持されていることを特徴とする請求項1に記載の送電系統における鉄塔の構造。
【請求項3】
前記バイパスは、前記鉄塔の側方をほぼ水平に回り込む形で支持されていることを特徴とする請求項2に記載の送電系統における鉄塔の構造。
【請求項4】
前記監視用自走機が載せられる昇降台と、監視作業が開始されまたは終了する前記鉄塔の側部に設置されて前記昇降台を案内するガイドレールとを備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれかひとつに記載の送電系統における鉄塔の構造。
【請求項5】
前記昇降台は、前記鉄塔の塔頂部近傍まで上昇したときに前記バイパスと繋がる前記監視用自走機用の支持部材を備えていることを特徴とする請求項4に記載の送電系統における鉄塔の構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−296053(P2006−296053A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−111745(P2005−111745)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000173809)財団法人電力中央研究所 (1,040)
【Fターム(参考)】
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