説明

送風機能付シート

【課題】クッションパッドの着座面側と反着座面側とにそれぞれ開口を形成すると共に、クッションパッド内で着座面側開口と反着座面側開口とを互いに連通させて空気通路を形成して成る送風機能付シートにおいて、クッションパッドの厚み方向に空気通路と表皮吊り込み用の吊り溝とを重ねて配置可能とする。
【解決手段】連通路は、着座面側開口21に通じる第1通路11と、反着座面側開口31に通じる第2通路13と、第1及び第2通路を互いに連通させる第3通路14とから成り、第2通路の反着座面側は開口31を除いて裏蓋30によって覆われて空気通路が形成され、第2通路13の着座面側に位置するクッションパッド10の着座面側に吊り溝15が形成されている。第2通路の反着座面側壁面は裏蓋30によって形成されており、第2通路は着座面側から離して形成することができるため、第2通路の着座面側に吊り溝15を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートのクッションパッドの着座面側と反着座面側とにそれぞれ開口を形成すると共に、クッションパッド内で着座面側開口と反着座面側開口とを互いに連通路によって連通させてクッションパッド内に空気通路を形成して成る送風機能付シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートでは、シートクッション部やシートバック部のクッションパッド内に空気通路を形成して、その空気通路を経由して送風し着座者のシート表面との接触部分の蒸れを防止するものがある。下記特許文献1には、その一例が開示されている。
一方、車両用シートでは、乗り心地向上や意匠性向上の観点からシート表皮を部分的にクッションパッド内側へ吊り込んで、シート表面を単純な平面とせず立体的な意匠とすることが行われている。
【0003】
従来、クッションパッドの空気通路が形成されている領域には表皮の吊り込みを行うことができないため、クッションパッドの厚み方向で両者は重ならないように設計されている。図9及び図10には、従来の送風機能付シートの一例が示されている。この場合、シートクッション部に送風機能が付加されており、クッションパッド91の着座面側91aと反着座面側91bとにそれぞれ開口96、97が形成されると共に、クッションパッド91内で着座面側開口96と反着座面側開口97とが互いに連通路93によって連通されてクッションパッド91内に空気通路が形成されている。反着座面側開口97に連結された送風ダクト95を介して上記空気通路に空気を送り込むことによって、着座面側開口96から着座者に向けて送風される。このようにクッションパッド91上における送風領域は、シートクッション部の前方域のみにあり、吊り溝98における表皮の吊り込みはシートクッション部の中央付近の左右方向に一本のみとされている。なお、図9及び図10において、94はクッションパッド91の送風領域の一部が別体化された置きパッドであり、92はクッションパッド91の着座面側91aに置かれたクッションパッド91よりも軟質のスラブウレタンパッドである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−90016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の従来のシートでは、左右方向の吊り溝が一本のみであるが、乗り心地の観点から吊り込みをシートクッション部の前後に2本としたい場合、前側の吊り込み構造と送風領域の空気通路がクッションパッドの厚み方向に重ならざるを得ないことがあり、その場合には、限られたクッションパッドの厚みの中で、所定断面の空気通路と吊り込み構造とを両立させることができない。
本発明は、このような問題に鑑み、クッションパッドの厚さを増加させることなく、空気通路をシートの着座表面から離れた側に偏倚させることによって、クッションパッドの厚み方向に空気通路と吊り込み構造とを重ねて配置可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、シートのクッションパッドの着座面側と反着座面側とにそれぞれ開口を形成すると共に、クッションパッド内で着座面側開口と反着座面側開口とを互いに連通路によって連通させてクッションパッド内に空気通路を形成して成る送風機能付シートにおいて、前記連通路のうち前記クッションパッドの反着座面側を通る反着座面側連通路は、前記クッションパッドとは別体の裏蓋によって覆われて形成され、前記反着座面側連通路の着座面側に位置するクッションパッドの着座面側に表皮吊り込み用の吊り溝が形成されていることを特徴とする送風機能付シートである。
第1発明によれば、反着座面側連通路の反着座面側は裏蓋によって形成されており、反着座面側連通路は着座面側から離して形成することができるため、反着座面側連通路の着座面側に吊り溝を形成することができる。従って、吊り込み構造と送風領域の空気通路がクッションパッドの厚み方向に重なる設計を採用することができ、送風領域と表皮の吊り込みを任意の場所に設定することができる。
【0007】
本発明の第2発明は、上記第1発明において、前記裏蓋は、前記反着座面側連通路の反着座面側領域を超える大きさで形成され、前記裏蓋の周縁部が当接する前記クッションパッドの反着座面側は前記裏蓋の厚さ分だけ窪まされて段差を成し、前記クッションパッドの反着座面側には前記裏蓋との当接面となる前記段差部を除いて異音防止用の裏面材が設けられていることを特徴とする送風機能付シートである。
第2発明によれば、裏蓋との当接面には、比較的平坦度の低い裏面材がないため、裏蓋とクッションパッドとの当接面からの空気漏れを防止でき、空気漏れによる送風効率の低下を防止できる。
【0008】
本発明の第3発明は、上記第1発明において、前記反着座面側連通路を形成する前記クッションパッドは、前記吊り溝下で前記吊り溝の長手方向の通路幅が狭くなるように前記反着座面側連通路内へ突出する突部が形成されていることを特徴とする送風機能付シートである。
第3発明によれば、吊り溝の反着座面側はクッションパッドの厚さが薄くなっており、クッションパッドの剛性は低下するのに対し、突部によってかかる剛性低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態におけるクッションパッドの平面図である。
【図2】図1と同様のクッションパッドの底面図である。
【図3】図1と同様のクッションパッドの反転斜視図である。
【図4】図1のIV−IV線断面図である。
【図5】図1のV−V線断面図である。
【図6】図4のクッションパッドと裏蓋との接合部の拡大説明図である。
【図7】図4の送風ダクトの裏蓋への取付状態の拡大説明図である。
【図8】上記実施形態における吊り込み構造の説明図である。
【図9】従来の送風機能付シートのクッションパッドの平面図である。
【図10】図9のX−X線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図5には、送風機能付車両用シートのシートクッション部が示されており、このシートクッション部は、図示を省略したシートクッションフレーム上にクッションパッド10が載置され、そのクッションパッド10上にスラブウレタンパッド20が被せられて、更にスラブウレタンパッド20上には図示省略の表皮が被せられて成る。クッションパッド10内には送風機能のための空気通路11〜14が形成されており、この空気通路11〜14はスラブウレタンパッド20に形成された着座面側開口21と反着座面側10bの裏蓋30に形成された反着座面側開口31とを互いに連通させる連通路によって形成されている。この連通路は、着座面側開口21に通じる第1通路11、12と、反着座面側開口31に通じる第2通路13と、これらの第1通路11、12及び第2通路13を互いに連通させる第3通路14とから成る。第1通路11、12は、図1に良く示されているように、着座面側10aの送風域を成すシートクッション部の中央部及び前方側に広く送風が行われるように広範囲に枝分かれして形成されている。また、第2通路13は、図2及び図3に良く示されているように、反着座面側10bの前方中央部に形成され、第2通路13をクッションパッド10の左右両方向から突部17によって狭めることによって、クッションパッド10の上下方向の剛性を維持する形状としている。第3通路14は、第1通路11、12のうちシートクッション前方側の部分11と第2通路13とを連通させる通路と、第1通路11、12のうちシートクッション後方側の部分12と第2通路13とを連通させる左右一対の通路とから成る。なお、図1〜3では、第3通路14に便宜上ハッチングを施し、他の通路と区別し易くしている。
【0011】
図1に良く示されているように、吊り込みのための吊り溝15は、シートクッションの両側に前後方向に沿って形成されると共に、シートクッションの中央部に左右方向に沿って前後に2本形成されている。これらの吊り溝15のうちシートクッション前方で左右方向に沿って形成されるものは、図1に示されるように第1通路11、12のうちシートクッション前方側の部分11と、第1通路11、12のうちシートクッション後方側の部分12との間に位置し、且つ図4に示されるように第2通路13の着座面側10aに位置し、クッションパッド10内の空気通路である第2通路13とクッションパッド10の厚さ方向で重なって形成されている。図1に良く示されているように、上述の第2通路13部分の突部17は、吊り溝15のうちシートクッション前方で左右方向に沿って形成されるものの直下に位置し、吊り溝15の形成によりクッションパッド10の厚さが薄くなってクッションパッド10の剛性が低下するのを抑制している。ここで第2通路13が本発明の反着座面側連通路に相当する。
【0012】
図8に良く示されているように、吊り溝15の底には溝の長手方向に沿って金属ワイヤ18が埋設されており、表皮70は適当な間隔を置いて吊り溝15内に引き込まれ、Cリング73によってワイヤ18に係止されている。かかる吊り込み構造は、公知のものであり、図8において、71は表皮70に縫い付けられた吊り綿布であり、袋状とされた吊り綿布71内にはCリング73と係合させるためのワイヤ72が貫通されている。
【0013】
このように第2通路13の着座面側10aに吊り溝15が形成されているが、第2通路13は従来に比べて反着座面側10bに偏倚して形成されており、例えば吊り溝15の底面と第2通路13との間のクッションパッド10の厚さは、着座者が着座していない状態で10〜15mm程度とされている。同様に第2通路13の上下寸法は15〜25mm程度とされている。
【0014】
第2通路13の反着座面側10bは裏蓋30によって覆われており、裏蓋30の周縁部はクッションパッド10の反着座面側10bに接着されている。従って、裏蓋30が第2通路13の反着座面側壁面を形成していることになる。裏蓋30はフェルト製であり、空気漏れ防止のため目付けは高めにされている。裏蓋30はウレタンによって形成することもできる。また、上述のとおり裏蓋30の中央部には、反着座面側開口31が形成されており、この開口31には、図3及び図4に良く示されているようにダクト40が接続されている。
【0015】
クッションパッド10の反着座面側10bの裏蓋30周縁部との当接面には、図6に良く示されるように段部16が形成されており、裏蓋30の厚さに相当する深さでクッションパッド10の反着座面側10bが窪まされている。クッションパッド10の反着座面側10bには、周知のとおり、異音防止用の裏面材60が設けられているが、段部16の裏蓋30との当接面には裏面材60は設けられていない。これにより裏蓋30の周縁部とクッションパッド10の反着座面側10bとの当接面で空気漏れが発生するのを抑制している。なぜなら、裏面材60は比較的平坦度が低いため、裏蓋30とクッションパッド1との当接面に裏面材60があると、それらの境界部で空気漏れが発生してしまうが、裏面材60を介在させないことで当接面での密着度が高められている。裏面材60はクッションパッド10の反着座面側10bがシートクッションフレームやばね体に振動しながら当接したときに、異音を発生しないようにするため、緩衝材としてフェルト等の不織布が接着されたもので周知のものである。
【0016】
裏蓋30と送風ダクト40との結合構造は、図7に良く示されているように、送風ダクト40の端部には全周にフランジ41が形成されており、このフランジ41が裏蓋30とクッションパッド10をシートクッションフレームに対して支持するばね体50との間に挟持されている。但し、裏蓋30と送風ダクト40との結合構造は、かかる構造に限らず、種々のものが採用できる。例えば、接着剤などの別部材による結合、或いは図7のフランジ41と同様のフランジを送風ダクト40の外周にフランジ41と対向させて一体に設け、それら一対のフランジの対向面間に裏蓋30の開口端部を挟持して結合する。
【0017】
以上のとおり構成されたシートでは、不図示のブロアファンによって送風ダクト40内に送風されると、この空気流が第2通路13及び第3通路14を介して第1通路11、12に送られ、第1通路11、12からスラブウレタンパッド20の開口21を通して着座者の太腿部に送風され、当該部の蒸れが防止される。この空気流は逆方向に流れるものでも良い。即ち、着座者の太腿部周りの空気を送風ダクト40に吸引するものでも良い。
【0018】
上述のとおり第2通路13の着座面側10aのクッションパッド10には前方側の吊り溝15が形成されているが、第2通路13は従来に比べて反着座面側10bに偏倚して形成され、第2通路13の着座面側10aのクッションパッド10には吊り溝15を形成することができる厚さがあるため、吊り溝15を形成したことにより第2通路13を通る空気が吊り溝15側に漏れるような不具合は生じない。しかも、第2通路13が反着座面側10bに偏倚して形成されても第2通路13の反着座面側壁面は裏蓋30によって形成されているため、クッションパッド10の厚みの制約を受けることなく第2通路13の通路径を確保することができ、着座者がシートクッションに着座してクッションパッド10が圧縮されても第2通路13の径が細くなって送風に支障を来たすことはない。また、送風ダクト40は、裏蓋30に結合されているため、車種の違いにより送風ダクト40の形状が違っても裏蓋30の開口31の形状変更のみで対応でき、従来、送風ダクトがクッションパッド10に直接結合されていた場合のようにクッションパッド10の形状を変更する必要はなく、変更への対応が容易となるメリットがある。
【0019】
上記一実施形態では、シートクッション部へ適用した例を説明したが、シートバック部へ適用しても良い。また、本発明は車両用に限定されない。
その他、本発明は、その発明思想の範囲内で各種形態で実施可能である。
【符号の説明】
【0020】
10 クッションパッド
11,12 第1通路(連通路)
13 第2通路(反着座面側連通路)
14 第3通路(連通路)
15 吊り込み用の吊り溝
16 段差
21 開口
30 裏蓋
31 開口
40 送風ダクト
60 裏面材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートのクッションパッドの着座面側と反着座面側とにそれぞれ開口を形成すると共に、クッションパッド内で着座面側開口と反着座面側開口とを互いに連通路によって連通させてクッションパッド内に空気通路を形成して成る送風機能付シートにおいて、前記連通路のうち前記クッションパッドの反着座面側を通る反着座面側連通路は、前記クッションパッドとは別体の裏蓋によって覆われて形成され、前記反着座面側連通路の着座面側に位置するクッションパッドの着座面側に表皮吊り込み用の吊り溝が形成されていることを特徴とする送風機能付シート。
【請求項2】
請求項1の送風機能付シートにおいて、前記裏蓋は、前記反着座面側連通路の反着座面側領域を超える大きさで形成され、前記裏蓋の周縁部が当接する前記クッションパッドの反着座面側は前記裏蓋の厚さ分だけ窪まされて段差を成し、前記クッションパッドの反着座面側には前記裏蓋との当接面となる前記段差部を除いて異音防止用の裏面材が設けられていることを特徴とする送風機能付シート。
【請求項3】
請求項1の送風機能付シートにおいて、前記反着座面側連通路を形成する前記クッションパッドは、前記吊り溝下で前記吊り溝の長手方向の通路幅が狭くなるように前記反着座面側連通路内へ突出する突部が形成されていることを特徴とする送風機能付シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−336(P2012−336A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139578(P2010−139578)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】