説明

透明または半透明の成形体とその製造方法

【課題】有機材料のキレートを応用した導電性と光透過性とを有するフィルムあるいはシートを提供する。
【解決手段】ポリエチレンオキサイドあるいはポリビニルアルコールのMgCl がモル比20〜40%添加されたキレート溶液に対し、MgF の粉末を混和し、N 磁場中で数日間放置することによって、MgF 粉末をキレート溶液に溶解し、このキレート溶液をガラス板上に展開して減圧乾燥することによってフィルムあるいはシートを得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機キレートから成る透明または半透明の成形体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示パネルは、極めて薄い金属膜を吹きつけた2枚のガラス板の間に液晶を挟込み、上記金属膜に電流を流すことによって、液晶の分子の並び方を変えるようにし、これによって、バックライトからの光を通したり通さなかったりする制御を行なうことにより、所望の表示を行なうようにしている。そしてこのような液晶表示装置においては、上述の金属膜として、インジュームから成る透明電極膜が用いられる。
【0003】
液晶表示パネルに用いられる金属膜は、導電性を有するとともに、バックライトからの光を通す必要があり、これによって透明性をも要する。すなわち導電性と透明性の2つの性質を具備しなければならない。ところがインジュームは、亜鉛を精錬する過程で出る微量副産物であって、生産量が限られており、需給が逼迫し、これによって価格が高騰する傾向にある。
【特許文献1】特開2005−166427
【特許文献2】特開2005−290148
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明の課題は、導電性と透明性または半透明性とを備える有機成形体およびその製造方法を提供することである。
【0005】
本願発明の別の課題は、導電性と透明性または半透明性とを備えるフィルム状またはシート状の成形体およびその製造方法を提供することである。
【0006】
本願発明のさらに別の課題は、有機キレートから成り、導電性と透明性または半透明性とを有する成形体およびその製造方法を提供することである。
【0007】
本願発明のさらに別の課題は、有機キレートから成り、導電性と透明性または半透明性とを有するフィルム状またはシート状の成形体およびその製造方法を提供することである。
【0008】
本願発明の上記の課題および別の課題は、以下に述べる本願発明の技術的思想、およびその実施の形態によって明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、エチレンオキサイドのMgCl キレートにMgF を添加して固化させた透明または半透明の成形体に関するものである。
【0010】
本願の別の発明は、ポリビニルアルコールのMgCl キレートにMgF を添加して固化させた透明または半透明の成形体に関するものである。
【0011】
上記2つの発明において、成形体がフィルム状またはシート状であってよい。
【0012】
製造方法に関する発明は、エチレンオキサイドの水溶液にMgCl を加え、MgF 粉末を添加し、N 磁場(N極が上を向く磁場)中で乾燥させてフィルム状またはシート状とした透明または半透明の成形体の製造方法に関するものである。
【0013】
製造方法に関する別の発明は、ポリビニルアルコールの水溶液にMgCl を加え、MgF 粉末を添加し、N 磁場(N極が上を向く磁場)中で乾燥させてフィルム状またはシート状とした透明または半透明の成形体の製造方法に関するものである。
【0014】
本発明の好ましい態様は、500〜2500の重合度のポリエチレンオキサイドの5%水溶液に、MgCl をモル比で20〜40%位を加え、これによってポリエチレンオキサイドのキレートの透明溶液を得る。このような溶液に、さらにMgF の粉末を混和し、N 磁場中で常温で放置することによって、溶液の全体を均一にする。
【0015】
MgF は白色粒状であるが、時間とともに溶解する。そしてMgCl を含むキレート液中では、MgF は膨潤し、MgCl とほぼ同量のMgF が溶解する。このようにして得られたMgCl 含有キレート液を、N 磁場中で減圧乾燥させることによって、透明板になる。
【0016】
このような透明板は、液体窒素(−190℃)の中でも導電性を保持し、常温でスイッチ等の導通手段として用いることができる。また蓄電池の電極板として利用することができる。適当な厚さのシート状に成形することによって、200Vの帯電にも耐えることが可能になり、このために電気自動車のバッテリの電極板に用いることができる。またここで成形されるフィルムは、−200℃の液体窒素温度では、寒天状のフィルムとなるとともに、ガラス板状で一方の方向に磁性を持つフィルムとなる。
【0017】
また乾燥した後のフィルムは、MgF の含有量によってその強度が左右され、MgF の量を少くすると強度が大きくなる。これに対してMgF の量が多いほど強度は小さくなる。従って強度を要する場合には、MgF の添加量を抑えることを要する。
【発明の効果】
【0018】
成形体に関する発明は、エチレンオキサイドあるいはポリビニルアルコールのMgCl キレートにMgF を添加して固化させた透明または半透明の成形体である。このような成形体は、導電性と透明性また半透明性とを備えているために、フィルム状またはシート状にすると、透明電極膜として利用することができる。また各種のタッチパネルのスイッチとして利用可能である。
【0019】
エチレンオキサイドまたはポリビニルアルコールの水溶液にMgCl を加え、MgF 粉末を添加し、N 磁場中で乾燥させてフィルム状またはシート状とすることによって、導電性を有し、しかも透明性または半透明の成形体が得られる。従ってこのような成形体を、例えばフィルム状あるいはシート状とすることによって、導電性と光透過性とを有するフィルムあるいはシートを得ることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下本願発明を実施の形態によって説明する。
【0021】
実施の形態1
500〜2500の重合度のエチレンオキサイド水溶液に、30%のMgCl 加え、さらにほぼ同量のMgF の粉末を添加した。このような混合溶液を撹拌して、MgF を分散させた。
【0022】
このような分散液をN極が上を向くN 磁場中で、常温で、5日間放置した。これによってMgF が分散した状態の半透明溶液となる。このような半透明溶液を、ガラス板または高分子板上に展開し、減圧乾燥した。これによって透明フィルムが得られた。この透明フィルムは、導電性を有することが確認された。また液体窒素中でも導電性を有していた。
【0023】
実施の形態2
分子量が10000〜30000の重合度のポリビニルアルコールを用い、このポリビニルアルコールによってMgCl をモル比で20%加え、これによってポリビニルアルコールのMgCl キレートの透明溶液を得た。なおMgCl は白色吸湿性の結晶で、水に容易に溶け、発熱する物質である。またその液は無色透明である。
【0024】
上記のキレート溶液に、MgF をMgCl とほぼ同量添加した。MgF は粉末であって、これをキレート溶液に加えて放置すると、その全量がコロイダルになり、ほとんど溶解する。なおMgCl が予め加えられていない場合には、MgF は溶出すことはない。
【0025】
このようなキレート溶液をN 磁場中で、しかも常温で放置することによって、全体が均一になった。そして5日間放置した後に取出し、ガラス板上に展開して減圧乾燥した。これによって淡い藍色のフィルムが得られた。このフィルムは、光透過性と導電性とを兼備えたフィルムであることが確認された。
【0026】
実施の形態3
ポリビニルアルコールの重合度が1500〜2000の結晶を使い、ソックスレー抽出器で約2日間、CH OHで洗浄したものを利用し、約5%の水溶液を作成した。なおポリビニルアルコールは約80℃で加温溶解する。
【0027】
上記のようにして作った水溶液に、PVClの重合度が約1500のものを、モル比で30〜40%加えた。さらにMgCl に適宜、LiFを添加した。これによって完全な透明液が得られた。
【0028】
上記の完全透明液に、MgCO の結晶を添加し、N極が上を向くN 磁場に放置し、ペーストで、2〜4日間でほぼ溶解した。上述の完全透明液をガラス板または高分子板に展開し、磁場が上を向くN 磁場中で減圧乾燥を約1日間行なった。その後に、N 磁場中で、2〜4日間完全乾燥した。
【0029】
極板は、約10mm厚で、20〜40mmの広さでは、−200℃(液体窒素中)で、20〜40Vで2〜3Å10時間の導電性を示した。なお極板は必要に応じて、その厚さを1〜20mmのものを用いているが、十分に強力な磁場中に十分に圧力をかけ、10日間真空で乾燥することによって、十分な導電性を持った板状体あるいはシートが得られることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本願発明に係るフィルム状あるいはシート状の有機成形体は、導電性と光透過性とを備える透明電極膜や、蓄電池の電極板として利用することが可能である。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンオキサイドのMgCl キレートにMgF を添加して固化させた透明または半透明の成形体。
【請求項2】
ポリビニルアルコールのMgCl キレートにMgF を添加して固化させた透明または半透明の成形体。
【請求項3】
成形体がフィルム状またはシート状であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の成形体。
【請求項4】
エチレンオキサイドの水溶液にMgCl を加え、MgF 粉末を添加し、N 磁場中で乾燥させてフィルム状またはシート状とした透明または半透明の成形体の製造方法。
【請求項5】
ポリビニルアルコールの水溶液にMgCl を加え、MgF 粉末を添加し、N 磁場中で乾燥させてフィルム状またはシート状とした透明または半透明の成形体の製造方法。

【公開番号】特開2008−111005(P2008−111005A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−293356(P2006−293356)
【出願日】平成18年10月27日(2006.10.27)
【出願人】(591224560)
【Fターム(参考)】