説明

透明コート膜

【課題】 高い硬度と透明性を両立させた透明コート膜、この透明コート膜を効率よく製造する方法、及びその透明コート膜の形成に用いられる透明コート材を提供すること。
【解決手段】 (1)常圧における沸点が300℃以下のアミン類に由来する有機カチオンを含有する層状チタン酸を含み、窒素/チタンの原子比が0.01〜0.3である透明コート膜、及び(2)基板上に、常圧における沸点が300℃以下のアミン類に由来する有機カチオンを含有する層状チタン酸を含む液を塗布し、450℃未満の温度で熱処理する、窒素/チタンの原子比が0.01〜0.3である透明コート膜の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明コート膜及びその製造方法に関し、詳しくは、高い硬度と透明性を両立させた透明コート膜、及びこの透明コート膜を効率よく製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン酸化物を含有する膜は、紫外線(UV)カット、セルフクリーニング、超親水(防曇)性、反射防止性、耐熱(難燃)性、耐摩耗性、電気絶縁性、誘電性等の様々な機能を有するため、その活用が検討されている。
一般に、チタン酸化物としては、アナターゼ型又はルチル型の酸化チタン(チタニア)が用いられ、10〜数100nmの粒子サイズを持つチタニア分散溶液がコート材として使用される。また、基板上においてチタンアルコキシドの加水分解により得られるチタニア前駆体を焼成処理することによりチタニア膜が作製されている。
また、チタン酸化物として、従来のアナターゼ型やルチル型のチタニアではなくチタン酸を含有する膜が報告されている(例えば、非特許文献1参照)。この報告によると、水酸化テトラメチルアンモニウム又はジエタノールアミン等の有機カチオンとチタンテトライソプロポキシドとの反応により得られる透明水溶液を、ガラス基板上にスピンコート又はディップコートすることにより、比較的透明なチタン酸含有膜が作製されている。
【0003】
【非特許文献1】T. Ohya, A. Nakayama, T. Ban, Y. Ohya, Y. Takahashi, 「Bull. Chem. Soc. Jpn.」、第76巻、第429頁(2003年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記のいずれの製膜方法においても、基板と同等以上の優れた硬度を持つ透明膜を得ることが困難であった。
このため、透明性に優れ高い硬度を有する透明コート膜が求められていた。
本発明は、高い硬度と透明性を両立させた透明コート膜、及びこの透明コート膜を効率よく製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、層状チタン酸を含み、窒素/チタン原子比が特定値以下の透明コート膜が、高い硬度と透明性を両立させ得ること、そして、特定のアミン類に由来する有機カチオンを含有する層状チタン酸を含む液を塗布し、特定温度以下で熱処理することにより、透明コート膜を効率よく製造し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、
(1)常圧における沸点が300℃以下のアミン類に由来する有機カチオンを含有する層状チタン酸を含み、窒素/チタンの原子比が0.01〜0.3である透明コート膜、及び
(2)基板上に、常圧における沸点が300℃以下のアミン類に由来する有機カチオンと層状チタン酸とを含む液を塗布し、450℃未満の温度で熱処理する、窒素/チタンの原子比が0.01〜0.3である透明コート膜の製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、高い硬度と透明性を両立させた安定な透明コート膜、及びこの透明コート膜を効率よく製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(透明コート膜)
本発明の透明コート膜は、常圧における沸点が300℃以下のアミン類に由来する有機カチオンを含有する層状チタン酸を含み、窒素/チタンの原子比が0.01〜0.3である透明コート膜である。この窒素/チタンの原子比が0.01〜0.3であることで、該コート膜が高い硬度を有する膜となる。窒素/チタンの原子比は、好ましくは0.01〜0.25、更に好ましくは0.05〜0.24である。なお、窒素/チタンの原子比は、チタンの定量については蛍光X線法により、窒素の定量については全自動元素分析計によりそれぞれ求めることができる。
本発明の透明コート膜においては、ヘイズ値は、膜の透明性の観点から、通常0〜5%であり、好ましくは0〜2%、更に好ましくは0〜1%、特に好ましくは0〜0.5%である。このヘイズ値は、ヘイズメーター等により求めることができる。
本願の方法により、基板が十分に高い硬度を有している場合にはJIS K−5400の鉛筆硬度法による鉛筆硬度で6H以上の硬度の膜が得られ、好ましくは鉛筆硬度で7H以上のものが、より好ましくは鉛筆硬度で9Hのものが得られる。
【0008】
コート膜の膜厚は、電子顕微鏡による直接観察や光学式(エリプソメーター等)、触針式の膜厚計により測定することができる。膜の透明性の観点から、膜厚は10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましく、3μm以下が更に好ましく、1μm以下が特に好ましい。また膜の硬度の観点から、10nm以上が好ましく、20nm以上がより好ましく、50nm以上が更に好ましく、100nm以上が特に好ましい。
なお、本発明のコート膜の紫外線吸収スペクトルは、吸収スペクトルの立ち上がり波長(吸収端)が300〜340nmに見られる。これに対し、アナターゼ型チタニアでは360〜380nm、ルチル型チタニアでは400〜420nmに見られる。
一般に、アナターゼ型やルチル型のチタニアは光触媒能があり、その光触媒能によりコート液や膜中の有機配合物を分解したり、また基板自身を劣化させる等の問題がある。これに対して、本発明の有機カチオンを含有する層状チタン酸は、アナターゼ型やルチル型のチタニアに比べ吸収端が短波長にあり、紫外光(UV−A及びUV−B)の吸収量が少ないため光触媒能が低いという利点があり、この結果、有機配合物や膜の安定性(耐光性)の観点から、アナターゼ型やルチル型のチタニアに比べ好ましい透明コート膜を形成することができる。
【0009】
(層状チタン酸)
層状チタン酸は、ラマンスペクトルにおいて260〜305cm-1、440〜490cm-1、及び650〜1000cm-1の領域にそれぞれシグナルが観測されるものである。一方、アナターゼ型チタニアでは、140〜160cm-1、390〜410cm-1、510〜520cm-1、630〜650cm-1、ルチル型チタニアでは、230〜250cm-1、440〜460cm-1、600〜620cm-1の領域にラマンピークが観測される。
ここで層状チタン酸は、チタンを中心として6個の酸素が配位した8面体構造を基本ユニットとし、このユニットが平面状に並んだ構造を有するものと推定されている。層状チタン酸は、具体的には二チタン酸、三チタン酸、四チタン酸、五チタン酸、六チタン酸、レピドクロサイト型等の構造を有するチタン酸を包含する。
層状チタン酸は、(i)アミン類の含水溶液とチタン源とを混合する方法、及び(ii)アミン類とチタン源を混合した後、水を添加して加水分解する方法等により製造することができる。
【0010】
(アミン類)
本発明の方法において、アミン類としては、常圧における沸点が300℃以下、好ましくは20〜100℃のものが用いられる。このように、沸点が300℃以下の低沸点のアミン類を用いることにより、アミン類を分解させることなく低温で揮発除去することができ、低温処理でも極めて優れた透明コート膜の製造が可能となる。
アミン類としては、アルキルアミンやアルケニルアミンが好ましく、1級アミン、2級アミン、又は3級アミンが好ましい。4級アンモニウム塩では、得られるコート膜の硬度と透明度が不十分となる場合がある。
このアルキルアミンやアルケニルアミンは、炭素数1〜20のものが好ましく、炭素数1〜10のものがより好ましい。また、モノアミンであってもよく、多価アミンであってもよい。
【0011】
このようなアルキルアミンやアルケニルアミンの具体例としては、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、n−ブチルアミン、n−ペンチルアミン、n−ヘキシルアミン、n−ヘプチルアミン、n−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、アリルアミン等の第1級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジアリルアミン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、等の第2級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン等の第3級アミン;エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,2−ブタンジアミン、1,3−ブタンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,2−ペンタンジアミン、1,3−ペンタンジアミン、1,4−ペンタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、2,3−ペンタンジアミン、1,2−ヘキサンジアミン、1,3−ヘキサンジアミン、1,4−ヘキサンジアミン、1,5−ヘキサンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,7−ペプチルジアミン、1,8−オクチルジアミン等のジアミン;ブテニルアミン、ヘキセニルアミン、オクテニルアミン、デセニルアミン等のアルケニルアミン等が挙げられる。これらのアミン類は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中では、コスト及び膜硬度の観点から、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン等の第2級アルキルアミン、トリエチルアミン等の第3級アルキルアミンが好ましく、炭素数が1〜10のものが好ましく、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミンが更に好ましく、ジエチルアミンが特に好ましい。
【0012】
(チタン源)
チタン源としては、チタンアルコキシド及び水酸化チタン等が挙げられる。
チタンアルコキシドとしては、チタンテトラエトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラブトキシドなどが挙げられる。これらは、単独で又は2種以上を混合して用いることができるが、一般的な入手のし易さ、取り扱い性の観点からチタンテトライソプロポキシドが好ましい。
水酸化チタンは、四塩化チタン、三塩化チタン、二塩化チタン等の塩化チタン、硫酸チタン、硫酸チタニル、硝酸チタニル等のチタン塩をアルカリで加水分解して得ることができる。アルカリとしてはアンモニアが好ましい。
【0013】
(透明コート膜の製造方法)
本発明の透明コート膜を製造する方法については、特に制限はない。好ましくは、本発明の方法により、基板上に、常圧における沸点が300℃以下のアミン類に由来する有機カチオンを含有する層状チタン酸を含む液(以下、透明コート液)を塗布し、450℃未満の温度で熱処理することにより、目的の透明コート膜を製造することができる。
【0014】
(透明コート液)
層状チタン酸を含む透明コート液は、例えば、前記(i)、(ii)の方法のようにアミン類の存在下で、前記チタン源を加水分解することにより得ることができる。
ここで、透明コート液中のチタン酸濃度(TiO2質量換算濃度)は、透明コート液の保存安定性の観点から、40%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下が更に好ましく、膜の製造効率や膜物性の観点から、0.1%以上が好ましく、1%以上がより好ましく、2%以上が更に好ましい。
【0015】
この透明コート液中には、チタンアルコキシド(例えば、チタンテトライソプロポキシド等)、アナターゼ型チタニア、ルチル型チタニア等のチタン酸以外のチタン種が共存していてもよい。しかしこの場合、チタン酸以外のチタン種の濃度(TiO2質量換算濃度)は、透明コート液の保存安定性や膜物性の観点から、50%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下が更に好ましく、0%が特に好ましい。透明コート液中のチタン種の同定は、層状チタン酸の場合と同様に、ラマンスペクトルにより同定、定量することができる。
【0016】
透明コート液中の有機カチオンの濃度(窒素/チタン原子比)は、透明コート液中の層状チタン酸の構造安定性及びコストの観点から、0.01〜10が好ましく、0.1〜2がより好ましく、0.2〜1.5が更に好ましく、0.8〜1.2が特に好ましい。また、透明コート液のpH(25℃)は、透明コート液の汎用性及び透明コート液中の層状チタン酸の構造安定性の観点から、3〜13が好ましく、6〜12がより好ましい。
【0017】
透明コート液の溶媒は特に限定されず、水、有機溶媒、及びこれらの混合溶媒を用いることができる。用いる有機溶媒の沸点は、膜の製造効率の観点から、20〜300℃が好ましく、30〜200℃がより好ましく、30〜130℃が更に好ましい。
用いることのできる有機溶媒の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール、アセトン、テトラヒドロフラン、プロピレンカーボネート等の含酸素有機溶媒、アセトニトリルなどの含窒素有機溶媒等のほか、前記のアミン類を挙げることができる。
透明コート液中には、透明コート液や透明コート膜の性能を悪化させない範囲で、層状チタン酸やその他チタン種、有機カチオン、溶媒以外の他の成分が共存してもよい。
【0018】
(基板)
本発明の透明コート膜が設けられている基板については特に制限はない。例えば、ガラス、金属、セラミックス、プラスチック、紙、繊維等が利用できる。膜作製の容易性や膜の透明性、硬度発現の観点から、外圧や熱による変形が少ないものが好ましい。従って、ガラス、金属、セラミックス、プラスチックが好ましく、ガラス、金属、セラミックスがより好ましい。
基板に対するコート膜の付着性(密着性)は、JIS K−5400のXカットテープ法等により求めることができる。このXカットテープ法による評価で2〜10が好ましく、8〜10がより好ましく、10が特に好ましい。
【0019】
(塗布)
透明コート液を基板に塗布する方法については特に制限はないが、スピンコート、ディップコート、スプレーコート等の常法により、透明コート液を基板に塗布することができる。膜の製造効率や膜の均一性の観点から、スピンコート、ディップコートが好ましい。
【0020】
(熱処理)
このようにして基板上に形成された塗膜を、乾燥や焼成による熱処理を行うことにより高硬度の透明コート膜を製造することができる。
熱処理温度は、残留有機物の除去及び膜硬度の観点から、有機カチオンや溶媒の沸点以上が好ましい。また、有機カチオンが熱分解すると、炭素質の残査を生成する場合があり、着色や透明度低下の原因となるため、有機カチオンの分解温度以下が好ましい。更に、層状チタン酸の構造安定性、チタニアへの相転移抑制の観点から、熱処理温度は450℃未満とするが、350℃以下がより好ましく、250〜80℃が更に好ましい。
熱処理時間は、熱処理温度にも依存し特に限定されないが、残留有機物の除去及び膜硬度の観点から、15分以上が好ましく、20分以上がより好ましく、30分以上が更に好ましい。また、膜の製造効率の観点から、24時間以下が好ましく、12時間以下がより好ましく、5時間以下が更に好ましい。
【実施例】
【0021】
以下の実施例及び比較例で得られたコート膜は、以下に示す方法により行った。
(1)膜厚の測定
膜厚の測定は、触針式膜厚計(株式会社東京精密製、SURFCOM 1500DX)を用い、パラメーター算出規格JIS−01、測定種別粗さ測定、カットオフ種別ガウシアン、傾斜補正前半、スキャン距離20mm、スキャン速度0.3mm/s、基準高さ0.1μm、削除長さ500μmの条件で行った。1つの薄膜に対し5箇所の平均高さ(AVH)の測定を行い、その平均値を膜厚とした。
(2)Ti骨格構造の同定
Ti骨格構造の同定はラマンスペクトルにより行った。ラマンスペクトル測定は、Arイオンレーザー(波長488nm)を光源、CCDカメラを検出器とし、100〜1100cm-1の測定波数領域において5154点の測定データを得た。レーザー出力100〜400mW、積算時間30〜300秒で反射法で測定した。
(3)組成分析
膜の組成分析は、Ti定量分析は蛍光X線(理学電機株式会社製、ZSX100E)により、C、H、N定量分析は、全自動元素分析計(パーキンエルマー社製、2400II、カラム分離方式、TCD検出)により行った。
(4)吸収端
膜の吸収端は、紫外−可視分光光度計(株式会社日立製作所製、U-3300)を用いて測定した吸収スペクトルから求めた。
(5)透明性
膜の透明性は、ヘイズメーター(株式会社村上色材研究所製、反射透過計HR-100)を用いてヘイズ値(%)により評価した。
(6)付着性
膜の基板に対する密着性(付着性)は、JIS K−5400のXカットテープ法により評価した。
(7)鉛筆硬度
薄膜の硬度は、JIS K−5400鉛筆硬度法により評価した。
(8)光触媒能
ガラス容器に5ppmローダミンB色素水溶液30mLと作製した膜1枚を入れ、キセノンランプ(ヘラウス社製サンテストCPS+)を2時間照射(照射強度500W/m2)した。光照射前後のローダミンB色素水溶液の吸光度変化よりローダミンB色素分解率(%)を算出した。
なお、膜を入れないローダミンB色素水溶液のみの系においてキセノンランプを2時間照射した後の分解率は6%であった(ブランク値)。そこで、各測定値よりブランク値を差し引いた値をもって各コート膜の光触媒能とした。
【0022】
実施例1
ジエチルアミン(和光純薬工業株式会社製、沸点55℃)7.3gを水160gに溶解後、チタンテトライソプロポキシド(和光純薬工業株式会社製)28.4gをゆっくり滴下、更に室温で1日攪拌することにより、層状チタン酸を含む透明コート液を合成した。
アセトン洗浄により油分、汚れを除去したスライドガラス(株式会社マツナミ、76×26mm、厚さ1.2〜1.5mm)基板の両端をテープで固定し、スピンコーター(株式会社エイブル製)を用いて次の条件により膜を作製した(滴下量0.2mL、滴下時間10秒、滴下後保持時間30秒、滴下時スピン速度0rpm、スピン加速度100rpm/s、スピン速度1000rpm、スピン時間30秒、スピン減速度100rpm/s)。
スピンコートにより作製した膜を電気乾燥機を用いて100℃、30分間の熱処理を行った。コート膜の作製条件を表1に、評価結果を表2に示す。
【0023】
実施例2
100℃、30分間の熱処理の代わりに、電気炉(株式会社モトヤマ製、スーパーバーン)を用いて200℃、30分間(昇温時間3時間、降温時間1時間)の熱処理を行った以外は、実施例1と同様にしてコート膜を作製した。コート膜の作製条件を表1に、評価結果を表2に示す。
【0024】
比較例1
100℃、30分間の熱処理の代わりに、110℃、10分間の熱処理を行った以外は、実施例1と同様にしてコート膜を作製した。コート膜の作製条件を表1に、評価結果を表2に示す。
比較例2
水酸化テトラメチルアンモニウム(分解温度310℃、和光純薬工業株式会社製、25%水溶液)18.2gを水150gに溶解後、チタンテトライソプロポキシド(和光純薬工業株式会社製)28.4gをゆっくり滴下、更に室温で1日攪拌することにより、層状チタン酸を含む透明コート液を合成した。水酸化テトラメチルアンモニウムを含有する透明コート液を用い、実施例1と同様にスピンコート及び熱処理することによりコート膜を作製した。コート膜の作製条件を表1に、評価結果を表2に示す。
比較例3
100℃、30分間の熱処理の代わりに、電気炉(株式会社モトヤマ製、スーパーバーン)を用いて200℃、30分間(昇温時間3時間、降温時間1時間)の熱処理を行った以外は、比較例2と同様にしてコート膜を作製した。コート膜の作製条件を表1に、評価結果を表2に示す。
比較例4
市販チタニアゾル溶液(多木化学株式会社製、タイノックM-6)を用い、実施例1と同様にスピンコート及び熱処理することによりコート膜を作製した。コート膜の作製条件を表1に、評価結果を表2に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明のコート膜は、硬度が高く、透明性に優れる上、触媒能が低く安定性に優れ、基板に対する密着性(付着性)も良好である。このため、反射防止膜、耐熱性膜、耐摩耗性膜、電気絶縁膜、誘電膜等として、広範な分野において好適に使用できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
常圧における沸点が300℃以下のアミン類に由来する有機カチオンを含有する層状チタン酸を含み、窒素/チタンの原子比が0.01〜0.3である透明コート膜。
【請求項2】
基板上に、常圧における沸点が300℃以下のアミン類に由来する有機カチオンと層状チタン酸とを含む液を塗布し、450℃未満の温度で熱処理する、窒素/チタンの原子比が0.01〜0.3である透明コート膜の製造方法。
【請求項3】
アミン類が、アルキルアミン及び/又はアルケニルアミンである請求項2に記載の透明コート膜の製造方法。
【請求項4】
アミン類が、炭素数1〜10の第2級アルキルアミンである請求項2に記載の透明コート膜の製造方法。



【公開番号】特開2006−289220(P2006−289220A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−111458(P2005−111458)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】