説明

透明導電体

【課題】優れた耐磨耗性を有し、高湿度環境下や化学物質雰囲気下におかれても電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することができる透明導電体を提供する。
【解決手段】基体11と、導電性粒子12a及びバインダーの硬化体12bを含有する導電層12と、を備え、バインダーが、下記一般式(1)〜(4)で表される置換基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を側鎖に有する、透明導電体である。


[式中、n、m及びpは正の整数を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電体に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル等のパネルスイッチは一般に、互いに対向する一対の透明電極と、これら一対の透明電極間に挟まれたスペーサまたは一対の透明電極のどちらか一方の導電面に印刷されたドットスペーサーとから構成される。このようなパネルスイッチ等においては、一方の透明電極を押圧すると、この透明電極が他方の透明電極と接触して通電が起こり、これによって、その接触点の位置が検知される。上記透明電極としては、透明導電体が使用されており、この透明導電体としては基体上に導電層としてスパッタ膜を成膜したものや、導電性粒子とバインダーとからなるものを導電層として形成したものがある。
【0003】
ところで、透明導電体を高湿度環境下や化学物質雰囲気でタッチパネル等に用いると、透明導電体が徐々に水分や化学物質を吸収して、透明導電体自体の電気抵抗値が上昇し、さらにかかる電気抵抗値の経時的変化も大きくなる傾向にある。このため、このような透明導電体を例えばタッチパネル等に用い上記環境下におくと、徐々にタッチパネルの作動が不安定になる虞がある。
【0004】
そこで、水分や化学物質の吸収に起因した電気抵抗値の上昇や経時的変化を抑制する透明導電体が望まれている。例えば、導電粒子を固着する樹脂として、吸湿性の小さいとされているフェノキシ樹脂またはフェノキシ樹脂とエポキシ樹脂の混合樹脂、或いはポリフッ化ビニリデンを用いた光透過性導電材料が提案されている(例えば下記特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開平08−78164号公報
【特許文献2】特開平11−273874号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1,2に記載の光透過性導電材料を透明導電体としてタッチパネル等に用いた場合には、その透明導電体が、高湿度環境下や化学物質雰囲気下におかれると、透明導電体における電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することが困難となる傾向にある。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高湿度環境下や化学物質雰囲気下におかれても電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することができる透明導電体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、上記フッ化炭素基を上記バインダーの側鎖に設けることで、電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制できることを見出した。そして、本発明者らは更に鋭意研究を重ねた結果、以下の発明により上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、基体と、導電性粒子及びバインダーの硬化体を含有する導電層と、を備え、バインダーが、下記一般式(1)〜(4)で表される置換基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を側鎖に有する透明導電体を提供する。
【化1】



[式(1)〜(3)中、n、m及びpはそれぞれ正の整数を示す。]
【0009】
ここで、本発明における透明導電体は、膜状及び板状のものを含み、膜状透明導電体は厚みが50nm〜1mmの範囲のものをいい、板状透明導電体は厚みが1mmを超えるものをいう。
【0010】
本発明の透明導電体は、導電層中に上記置換基を側鎖に備えるバインダーの硬化体(以下単に「硬化体」ともいう。)を含ませることにより、高湿度環境下や化学物質雰囲気下であっても透明導電体における電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することができる。
【0011】
また、本発明の透明導電体は、透明導電体の導電層にフッ化炭素基を有するバインダーの硬化体を含ませることにより、耐磨耗性に優れるものとすることができる。したがって、本発明の透明導電体は、優れた耐磨耗性を有するので、削れた透明導電体が再付着するという事態も防止でき、ひいては電気的抵抗値の局所的な上昇も十分に抑制することができる。更に、上記導電層は透明導電体間の摩擦によって透明導電体が削れるのを防止するだけでなく、汚れ等をつきにくくする、いわゆる撥水、撥油の働きも示し、透明導電体の劣化も十分に抑制される。更にまた、上記透明導電体は導電層にクラックが生じることも抑制することが可能となり、透明導電体の寿命を延ばすことができる。
【0012】
このように、透明導電体における電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することができ、かつ電気的抵抗値の局所的上昇を十分に抑制することが可能となるメカニズムについては未だ明らかではないが、導電層に含まれる硬化体が、側鎖にフッ化炭素基を備えることにより、フッ化炭素基が結晶性を有することから当該硬化体の側鎖同士が密な構造となり、また、フッ化炭素基は分子間力が極めて小さく、かつ、表面エネルギーも低いため、本発明の透明導電体は、外部から水分や化学物質が導電層内に浸入することを妨げることができるものと本発明者等は考えている。また、硬化体が側鎖にフッ化炭素基を備えることにより、導電層の表面には、耐磨耗性に優れるフッ化炭素基が存在することとなるため、本発明の透明導電体は、透明導電体間で摩擦が生じても、透明導電体の表面が削れることを防止することができるものと本発明者等は考えている。
【0013】
上記透明導電体において、バインダーが、少なくとも1種のモノマーから重合されるものであり、モノマーが、下記一般式(1)〜(4)で表される置換基のいずれかを有することが好ましい。
【化2】



[式(1)〜(3)中、n、m及びpはそれぞれ正の整数を示す。]
【0014】
上記モノマーが上記一般式(1)〜(4)で表される置換基を有すると、容易に一般式(1)〜(4)で表される置換基を有するバインダーが重合される。また、モノマーは上記一般式(1)〜(4)で表される置換基を有していれば、複数種類のモノマーを重合させてバインダーとすることができる。この場合、ガラス転移温度が異なる等の所望の透明導電体とすることが可能となる。
【0015】
上記透明導電体において、モノマーが、下記一般式(5)〜(8)で表される重合性官能基のいずれかを有することが好ましい。
【化3】



[式(5)中、Rは、二価の炭化水素基を示し、Rは、水素原子、若しくはメチル基を示す。また、式(7)中、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、又はプロピル基を示す。]
【0016】
上記モノマーが上記一般式(5)〜(8)で表される重合性官能基を有すると、このバインダーを硬化させた硬化体は、直鎖状のC−C結合の側鎖にフッ化炭素基を有することになるため、水分等がより浸入し難い硬化体とすることができる。したがって、この硬化体を含む導電層を、より膨潤しにくいものとすることができる。
【0017】
上記透明導電体において、重合性官能基が、下記一般式(5)で表される重合性官能基であることが好ましい。
【化4】



[式(5)中、Rは、二価の炭化水素基を示し、Rは、水素原子、若しくはメチル基を示す。]
【0018】
このようなモノマーから合成されるバインダーの硬化体は、屈折率を低下させることができる。すなわち、この硬化体を含む導電層を備える透明導電体は、より透明性を向上させることができる。また、上記硬化体は、酸・アルカリに対する耐薬品性に優れるとともに耐スクラッチ性(表面硬度)にも優れる。したがって、上記透明導電体は、有機溶剤、界面活性剤等を含む拭き取り剤で拭くことや、対向する導電面同士の接触、擦れ等が想定されるタッチパネル等により好適に用いられる。
【0019】
上記透明導電体において、バインダーが、上述したモノマーと、ビニル基を有する他のモノマーやバインダーとの共重合体を含むことが好ましい。
【0020】
上記共重合体の硬化体を含む導電層は、機械的強度を向上させることができる。よって、この導電層を備える透明導電体は、高湿度環境下や化学物質雰囲気下であっても透明導電体における電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することができ、透明導電体間で摩擦が生じても、透明導電体の表面が削れることを防止し、電気的抵抗値の局所的上昇を十分に抑制することができるとともに、透明導電体の機械的強度をも向上させることができる。さらに、このことから、当該透明導電体は、繰り返し使用した場合の耐久性にも優れるものとなる。
【0021】
上記透明導電体において、バインダー中のフッ素の含有率が、1.85質量%〜68.3質量%であることが好ましい。
【0022】
この場合の透明導電体は、より優れた耐磨耗性を有し、高湿度環境下や化学物質雰囲気下であっても透明導電体における電気抵抗値の上昇や経時的変化をより十分に抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の透明導電体によれば、優れた耐磨耗性を有し、高湿度環境下や化学物質雰囲気下におかれても電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0025】
[第1実施形態]
図1は、本発明の透明導電体の一実施形態を示す模式断面図である。本実施形態のタッチパネル1は、図1に示すように、互いに対向する一対の透明導電体2a及び2bと、一対の透明導電体間に設けられるスペーサとを備える。
【0026】
このタッチパネル1は、一対の透明導電体のうち少なくともいずれか一方に、内側が導電層となるように本実施形態の透明導電体2aが配置される。そして、このタッチパネル1の透明導電体2aの外側Aから透明導電体2aを押圧し、他方の透明導電体2bと接触することにより通電して、その位置が検知される。
【0027】
<透明導電体>
ここで、透明導電体2aについて説明する。
【0028】
図2は、透明導電体2aを示す模式断面図である。図2に示すように、透明導電体2aは、基体11と、導電性粒子12a及びバインダーの硬化体12bを含む導電層12と、を備えており、上記バインダーは、上記一般式(1)〜(4)で表される置換基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を側鎖に有している。
【0029】
本実施形態に係る透明導電体2aを上記構成とすることにより、優れた耐磨耗性を有し、透明導電体2aを高湿度環境下や化学物質雰囲気下で用いた場合であっても、透明導電体2aにおける電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することができ、また、透明導電体間で摩擦が生じても、透明導電体の表面が削れることを防止し、電気的抵抗値の局所的上昇を十分に抑制することができる。
【0030】
また、本実施形態に係るタッチパネル1は、優れた耐磨耗性を有することにより、透明導電体2aが削れた場合であっても、透明導電体が再付着するという事態を防止でき、ひいては電気的抵抗値の局所的な上昇も十分に抑制することができる。更に、上記導電層12は透明導電体2a及び2b間の摩擦によって透明導電体2aが削れるのを防止するだけでなく、汚れ等をつきにくくする、いわゆる撥水、撥油の働きも示し、透明導電体2aの劣化も十分に抑制される。更にまた透明導電体2aにクラックが生じることも抑制することが可能となり、透明導電体2aの寿命、ひいてはタッチパネル1の寿命を延ばすことができる。
【0031】
なお、上記タッチパネルにおいて、上記透明導電体2bが透明導電体2aと同様の構成であることが好ましい。この場合は、タッチパネル1における上記効果をより奏することとなる。
【0032】
次に、導電層12及び基体11について更に詳細に説明する。
【0033】
<導電層>
本実施形態に係る透明導電体は、導電層12を有し、この導電層12は、導電性粒子と上記一般式(1)〜(4)で表される置換基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を側鎖に備えるバインダーの硬化体とを含む。
【0034】
この硬化体は、上記バインダーを硬化させたものであり、硬化する方法としては、特に限定されないが、例えば、熱硬化、光硬化、化学反応による硬化等が挙げられる。なお、化学反応による硬化には、一方の化合物に他方の化合物を反応させて硬化させるものや、空気や水と接触させて硬化させるもの等が含まれる。なお、上記バインダーは熱可塑性であってもよい。この場合は、溶融した状態で用いた後、冷却することにより、硬化させることができる。
【0035】
上記バインダーの主鎖の構造は、特に限定されない。本発明においては、バインダーの主鎖の構造に関わらず、当該バインダーが側鎖に上記一般式(1)〜(4)で表される置換基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を有することにより、高湿度環境下や化学物質雰囲気下であっても透明導電体における電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することができ、また、透明導電体間で摩擦が生じても、透明導電体の表面が削れることを防止し、電気的抵抗値の局所的上昇を十分に抑制することができるという効果を奏する。
【0036】
上記バインダーは、上記置換基を側鎖に有していればよい。したがって、上記バインダーは、置換基がバインダーの主鎖に直接結合してバインダーの側鎖となっていてもよく、置換基がバインダーの側鎖に結合していてもよい。
【0037】
上記一般式(1)〜(3)で表される置換基のn、m及びpの値はそれぞれ正の整数であればよいが、好ましくは、nが1〜10であり、mが1〜5であり、pが1〜5である。nの値が10を超えると、nが上記範囲内にある場合と比較して、他のモノマーとの混合時において相分離しやすくなる傾向にあり、m及びpの値が5を超えると、m及びpが上記範囲内にある場合と比較して、他のモノマーとの混合時において相分離しやすくなる傾向にある。
【0038】
また、上記バインダーは、上記一般式(1)〜(4)で表される置換基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を有するため、上記バインダーの側鎖にはフッ化炭素基を有することとなる。このときのバインダー中のフッ素の含有率は、1.85質量%〜68.3質量%であることが好ましい。上記フッ素の含有率が、1.85質量%未満であると、フッ素の含有率が上記範囲にある場合と比較して、フッ化炭素基の導入効果が十分に得られない傾向にあり、上記フッ素の含有率が、68.3質量%を超えると、フッ素の含有率が上記範囲にある場合と比較して、硬化体の機械的強度が低下する傾向にある。
【0039】
また、本実施形態のバインダーは、バインダーの主鎖を形成した後に、当該バインダーと一般式(1)〜(4)で表される置換基を有する化合物とを反応させて製造されてもよく、バインダーの主鎖を形成する前に、上記一般式(1)〜(4)で表される置換基を有するモノマー、ダイマー、トリマー、テトラマー、オリゴマー等を重合して製造されてもよい。
【0040】
この中でも、反応性の観点から上記一般式(1)〜(4)で表される置換基を有するモノマーを重合して、上記バインダーが製造されることが好ましい。本実施形態のバインダーは、バインダーの主鎖を形成した後に当該バインダーと上記置換基とを反応させて製造されると、バインダーの立体障害により、バインダーと上記置換基との反応が起こり難い傾向がある。
【0041】
さらに、上記透明導電体において、バインダーが、少なくとも1種のモノマーから重合されるものであり、モノマーが、上記一般式(1)〜(4)で表される置換基のいずれかを有することが好ましい。
【0042】
上記モノマーが上記一般式(1)〜(4)で表される置換基を有すると、容易に一般式(1)〜(4)で表される置換基を有するバインダーが重合される。また、モノマーは上記一般式(1)〜(4)で表される置換基を有していれば、複数種類のモノマーを重合させてバインダーとすることができる。この場合、ガラス転移点温度が異なる等の所望の透明導電体とすることが可能となる。
【0043】
ここで、上記バインダーの好ましいガラス転移点温度は、50℃以下である。ガラス転移点温度が50℃を超えると、ガラス転移点温度が上記範囲にある場合と比較して、このバインダーを用いた透明導電体をタッチパネル等に用いた場合、耐久性が劣る傾向にある。
【0044】
上記透明導電体において、モノマーが、上記一般式(5)〜(8)で表される重合性官能基のいずれかを有することが好ましい。
【0045】
ここで、上記一般式(5)のRは、二価の炭化水素基であれば特に限定されないが、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、又はイソプロピレン基であることが好ましい。Rがこれらの置換基であると、フッ化炭素基の自由運動時の回転範囲が適度に制御されるという利点がある。
【0046】
上記モノマーが上記一般式(5)〜(8)で表される重合性官能基とを有すると、このバインダーを硬化させた硬化体は、直鎖状のC−C結合の側鎖にフッ化炭素基を有することになるため、水分等がより浸入し難い硬化体とすることができる。したがって、この硬化体を含む導電層を、より膨潤しにくいものとすることができる。
【0047】
また、上記モノマーは、上記一般式(1)〜(4)で表される置換基のいずれかと、上記一般式(5)〜(8)で表される重合性官能基のいずれかと、を有することが好ましい。なお、上記モノマーは、上記一般式(1)〜(4)で表される置換基のいずれかと、上記一般式(5)〜(8)で表される重合性官能基のいずれかと、を有していれば、他の構造は特に限定されない。
【0048】
このように上記モノマーが上記一般式(1)〜(4)で表される置換基と、上記一般式(5)〜(8)で表される重合性官能基とを有すると、水分や化学物質がより浸入し難い硬化体とすることができる。したがって、この硬化体を含む導電層を、より膨潤しにくいものとすることができる。
【0049】
また、上記モノマーは、更に好ましくは、下記一般式(9)〜(24)で表される化合物である。
【化5】



[式(9)〜(24)中、n、m及びpはそれぞれ正の整数を示し、式(9)〜(12)中、Rは、二価の炭化水素基を示し、Rは、水素原子、若しくはメチル基を示す。また、式(17)〜(20)中、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、又はプロピル基を示す。]
【0050】
なお、上記式(9)〜(24)のn、m及びpは、上記一般式(1)〜(3)のn、m及びpに相当するものであり、式(9)〜(12)のRは、上記一般式(5)のRに相当するものである。
【0051】
モノマーが有する重合性官能基は、上記一般式(5)〜(8)で表される重合性官能基であるが、この中でも、上記一般式(5)で表される重合性官能基であることが好ましい。
【0052】
上記一般式(5)で表される重合性官能基を有するモノマーを重合して合成されるバインダーの硬化体は、屈折率を低下させることができる。すなわち、この硬化体を含む導電層を備える透明導電体は、より透明性を向上させることができる。また、上記硬化体は、耐薬品性に優れるとともに耐スクラッチ性にも優れる。したがって、上記透明導電体は、有機溶剤、界面活性剤等を含む拭き取り剤で拭くことや、対向する導電面同士の接触、擦れ等が想定されるタッチパネル等にはより好適に用いることができる。
【0053】
このような観点から、モノマーの構造は、上記一般式(9)〜(12)で表されるモノマーがさらに好ましい。
【0054】
本発明のバインダーは、側鎖にエーテル結合を有することが好ましい。この場合、上記置換基がエーテル結合を有しない場合と比較して、エーテル結合部分で自由に回転、振動、伸縮等の運動ができるため、上記バインダーを有する導電層12を柔らかくすることができる。従って、この導電層12は、耐磨耗性を向上させるだけでなく、クラックが生じることを一層抑制することができる。このような観点から、上記バインダーが有する側鎖は、一般式(1)〜(4)で表される置換基の中でも、上記一般式(2)又は(3)で表される置換基であることが更に好ましい。
【0055】
上記バインダーは、上記一般式(5)〜(8)のいずれかの重合性官能基を有するモノマー(以下「第1のモノマー」ともいう。)と、ビニル基を有する他のモノマー(以下「第2のモノマー」ともいう。)との共重合体を含むことが好ましい。このように第1のモノマーと第2のモノマーとを共重合させることにより、上記バインダーに所望の機能を付加することができる。例えば、第2のモノマーとして重合性官能基を分子内に複数有するモノマー等を用いると、得られる共重合体の硬化体を含む導電層は、機械的強度を向上させることができる。
【0056】
この中でも、共重合体を含む導電層の機械的強度を向上させることができる他のモノマーとして、ジアクリレート、トリアクリレート、テトラアクリレート、ヘキサアクリレート等を用いることが好ましい。この場合、透明導電体の機械的強度が向上することから、タッチパネル等にこの透明導電体を用いると、タッチパネルを繰り返し使用した場合であっても耐久性にも優れるものとなる。
【0057】
また、第1のモノマーと第2のモノマーとを共重合させる場合、第1のモノマーは、上記一般式(5)又は(8)の重合性官能基を有することが好ましい。この場合、いずれのモノマーも二重結合を有することとなるため、上記第2のモノマーと一度に共重合反応を行うことが可能となる。
【0058】
導電層12は、上述したように導電性粒子12aを含有している。この導電性粒子12aは、隣合う導電性粒子12a同士が互いに接触するように、充填されている。このことにより、導電体としての機能を発揮する。
【0059】
導電性粒子12aは、透明導電性酸化物材料から構成される。透明導電性酸化物材料は、透明性及び導電性を有すれば特に限定されないが、かかる透明導電性酸化物材料としては、例えば、酸化インジウム、又は酸化インジウムに、錫、亜鉛、テルル、銀、ガリウム、ジルコニウム、ハフニウム又はマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされたものや、酸化錫、又は酸化錫に、アンチモン、亜鉛又はフッ素からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされたものや、酸化亜鉛、又は酸化亜鉛に、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ホウ素、フッ素、又はマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされたもの等が挙げられる。
【0060】
また、上記導電性粒子12aの平均粒径は10nm〜80nmであることが好ましい。平均粒径が10nm未満であると、平均粒径が10nm以上である場合と比べて、透明導電体2aの導電性が変動しやすくなる傾向がある。すなわち、本実施形態に係る透明導電体2aは導電性粒子12aにおいて生じる酸素欠陥によって導電性が発現することとなるが、導電性粒子12aの粒径が10nm未満では、粒径が上記範囲にある場合と比較して、例えば外部の酸素濃度が高い場合には酸素欠陥が減少し、導電性が変動する虞がある。一方、平均粒径が80nmを超えると、粒径が上記範囲にある場合と比較して、例えば可視光の波長領域では、平均粒径が80nm以下である場合に比べて光散乱が大きくなり、可視光の波長領域で透明導電体2aの透過率が低下し、ヘイズ値が増加する傾向がある。
【0061】
さらに透明導電体2aにおける導電性粒子12aの充填率は、10体積%〜70体積%であることが好ましい。充填率が10体積%未満であると、充填率が上記範囲である場合と比較して、透明導電体2aの電気的抵抗値が高くなる傾向にあり、充填度が70体積%を超えると、充填率が上記範囲である場合と比較して、導電層12を形成する膜の機械的強度が低下する傾向にある。
【0062】
このように、導電性粒子12aの平均粒径及び充填率が上記範囲であると、透明導電体の透明度がより向上し、かつ初期の電気抵抗値を低減することができる。
【0063】
また上記導電性粒子12aの比表面積は10m/g〜50m/gであることが好ましい。比表面積が10m/g未満であると、比表面積が上記範囲である場合と比較して、可視光の光散乱が大きくなる傾向があり、比表面積が50m/gを超えると、比表面積が上記範囲である場合と比較して、透明導電体2aの安定性が低くなる傾向がある。なお、ここで言う比表面積は、比表面積測定装置(型式:NOVA2000、カンタクローム社製)を用いて、試料を300℃で30分間真空乾燥した後に測定した値をいうものとする。
【0064】
導電層12の厚みは、50nm〜5μmであることが好ましい。厚みが50nm未満であると、厚みが上記範囲にある場合と比較して、耐磨耗性が低下する傾向にあり、厚みが5μmを超えると、厚みが上記範囲にある場合と比較して、導電層12の表面粗さや屈折率の影響等によりぎらつき等が発生し、視認性が低下する傾向にある。
【0065】
本実施形態に係る導電層12には、更に架橋剤を含有させることが好ましい。導電層12に架橋剤を含有させると、バインダー同士を架橋させることができるため、バインダーの硬化体を、より密な構造とすることができる。したがって、この場合、外部の水分が導電層内に浸入することをより妨げることができ、高湿度環境下や化学物質雰囲気下であっても透明導電体における電気抵抗値の上昇や経時的変化をより十分に抑制することができる。また、クラックが生じることを抑制する効果も奏する。
【0066】
かかる架橋剤としては、分子内にビニル基を複数有するものであれば特に限定されない。この架橋剤は、架橋剤のビニル基がバインダーと結合することとなるため、ビニル基の数に相当する数のバインダーを架橋することが可能となる。このような観点からビニル基の数は多いほうが好ましく、具体的には、2〜100であることが好ましい。なお、上記ビニル基の数が100を超えると、ビニル基の数が上記範囲にある場合と比較して、自由運動の抑制により架橋密度が低下する傾向にある。
【0067】
上記架橋剤は、分子内にフッ化炭素基フッ化炭素基を有するものも好適に使用され、下記一般式(25)で表される化合物であることが更に好ましい。この場合、導電層12が耐磨耗性により優れるものとなるため、透明導電体間で摩擦が生じても、透明導電体の表面が削れることを防止し、電気的抵抗値の局所的上昇をより一層抑制することができる。
【化6】



[式(25)中、qは正の整数を示す。]
【0068】
上記一般式(25)で表される架橋剤のqの値は正の整数であればよいが、好ましくは、qが1〜10である。qの値が10を超えると、qが上記範囲内にある場合と比較して、機械的強度が低下する傾向にある。
【0069】
本実施形態に係る導電層12には、導電性粒子12aの表面を処理する表面処理剤を更に含有させることが好ましい。導電層12に表面処理剤を含有させると、導電性粒子12aとバインダーとをカップリングさせることが可能となるため、導電性粒子12aに水分を吸着することをより抑制することができる。したがって、この場合、外部の水分が導電層内に浸入することをより妨げることができ、高湿度環境下や化学物質雰囲気下であっても透明導電体における電気抵抗値の上昇や経時的変化をより一層抑制することができる。
【0070】
なお、ここでいう「表面を処理」とは、導電性粒子表面の表面エネルギーを低下させ、撥水性または親油性を付与する処理のことをいい、例えば導電性粒子表面の水酸基の数を減少させる処理をいう。
【0071】
このような表面処理剤としては、分子内に少なくとも1つのビニル基を有するシランカップリング剤又はシラザン化合物が挙げられる。また、この表面処理剤は、複数のビニル基を有するシランカップリング剤又はシラザン化合物であることが好ましい。表面処理剤がビニル基を複数有することにより、導電性粒子12aとバインダーとをカップリングさせるのみならず、バインダー同士を架橋することも可能となる。換言すると、この場合、導電性粒子12aと複数のバインダーとの間に高分子ネットワークを形成することができる。したがって、外部の水分が導電層内に浸入することをより一層妨げることができ、高湿度環境下や化学物質雰囲気下であっても透明導電体における電気抵抗値の上昇や経時的変化を特に抑制することができる。また、この場合、クラックが生じることを抑制する効果も奏する。
【0072】
導電層12は、必要に応じて添加剤を更に含有してもよい。添加剤としては、上述の架橋剤、表面処理剤の他に、光重合開始剤、難燃剤、紫外線吸収剤、着色剤、可塑剤等が挙げられる。
【0073】
<基体>
基体11は、後述する高エネルギー線及び可視光に対して透明な材料で構成されるものであれば特に限定されない。すなわち基体11は公知の透明フィルムでよく、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム、ノルボルネンフィルム(JSR(株)製、アートンなど)等が挙げられる。樹脂フィルムの他に、基体11として、ガラスを用いることもできる。また、上記基体11は、樹脂のみからなることが好ましい。この場合、基体11が樹脂と、樹脂以外のものとを含む場合と比較して、透明導電体は透明性、屈曲性に優れるものとなる。したがって、例えばタッチパネルに用いた場合には特に有効である。
【0074】
<製造方法>
次に、上述した導電性粒子12aとして酸化インジウムに錫をドープしたもの(以下、「ITO」という。)を用いた場合について本実施形態に係る透明導電体2aの製造方法について説明する。
【0075】
まず、塩化インジウム及び塩化錫を、アルカリを用いて中和処理することにより共沈させる(沈殿工程)。このとき副生する塩はデカンテーションや遠心分離法によって除去する。得られた共沈物に対して乾燥を行い、得られた乾燥体に対して雰囲気焼成及び粉砕の処理を行う。こうして導電性粒子が製造される。上記焼成の処理は、酸素欠陥の制御の観点から、窒素雰囲気中、若しくはヘリウム、アルゴン、キセノン等の希ガス雰囲気中にて行うことが好ましい。
【0076】
こうして得られた導電性粒子12aに、上記一般式(1)〜(4)で表される置換基を有するバインダー若しくは上記一般式(1)〜(4)で表される置換基のいずれかと、上記一般式(5)〜(8)で表される前記重合性官能基のいずれかとを有するモノマーを加えて、液体中で分散させ分散液を得る。なお、添加剤を加える場合は、この分散液に混合すればよい。また、この導電性粒子12aと、バインダー若しくはモノマーとを分散させる液体としては、ヘキサン等の飽和炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルメチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。このとき上記バインダー若しくはモノマーを上記液体に溶かして用いてもよい。
【0077】
こうして得られた分散液を基体11上に塗布する。この基体11には、導電層12との接着面にアンカー層を予め設けておくことも可能である。基体11上に予めアンカー層を設けておくと、アンカー層を経て導電層12を基体11上により強固に固着させることができる。上記アンカー層としては、ポリウレタン等が好適に用いられる。
【0078】
また、上記液体を用いた場合は塗布後、乾燥工程を施すことが好ましい。上記塗布方法は、例えば、リバースロール法、ダイレクトロール法、ブレード法、ナイフ法、エクストルージョン法、ノズル法、カーテン法、グラビアロール法、バーコート法、ディップ法、キスコート法、スピンコート法、スクイズ法、スプレー等の方法で塗布することができる。
【0079】
そして、上記基体11上に設けられた未硬化の導電層を硬化させる。このとき未硬化の導電層に含まれる成分が熱硬化性であれば、加熱することにより導電層12が形成され、未硬化の導電層に含まれる成分が光硬化性であれば、高エネルギー線を照射することにより導電層12が形成される。なお、未硬化の導電層に含まれる成分が光硬化性であれば、当該未硬化の導電層が光重合開始剤を含有することが好ましい。換言すれば、上記分散液に光重合開始剤を含有させることが好ましい。また、上述した高エネルギー線は、例えば紫外線のほか、電子線、γ線、X線等であってもよい。
【0080】
こうして導電層12が基体11の一面上に形成され、図1に示す透明導電体2aが得られる。この透明導電体2aは、ノイズ対策部品や、発熱体、EL用電極、バックライト用電極、タッチパネル等に好適に用いることができる。
【0081】
[第2実施形態]
次に、本発明のタッチパネルの第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一又は同等の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0082】
図3は、本発明のタッチパネルの第2実施形態に用いる透明導電体を示す模式断面図である。図3に示すように、透明導電体20は、基体11と、硬化体層15と、導電性粒子12aを含む導電層12とを備えており、基体11上に、硬化体層15、導電層12が順次積層されている。上記導電層12には導電性粒子12aが充填されており、かつ導電性粒子12aの間には、浸透した硬化体15aが存しており、硬化体15aは導電性粒子12aを固着している。
【0083】
本実施形態の透明導電体20は、第1実施形態に係る透明導電体2aと同様に摩擦が生じる面側が導電層12となるようにタッチパネル1に配置される。
【0084】
したがって、タッチパネル1の表面を押圧した場合に、互いに向かい合う透明導電体同士が接触することとなるが、本実施形態の透明導電体20は、上記一般式(1)〜(4)で表される置換基からなる群より選ばれる少なくとも1種を側鎖に備えるバインダーの硬化物が、導電層12に含まれるため、透明導電体20間で摩擦が生じても、透明導電体20は摩擦が生じる面側に導電層12を有するため、透明導電体20の表面が削れることを防止することができる。
【0085】
また、このことにより、本実施形態に係るタッチパネル1は、透明導電体20が削れた場合であっても、透明導電体20が再付着するという事態を防止でき、ひいては電気的抵抗値の局所的な変動も十分に抑制することができる。更に、上記導電層12は透明導電体20間の摩擦によって透明導電体20が削れるのを防止するだけでなく、汚れ等をつきにくくする、いわゆる撥水、撥油の働きも示し、透明導電体20の劣化も十分に抑制される。更にまた透明導電体20にクラックが生じることも抑制することが可能となり、透明導電体20の寿命を延ばすことができる。
【0086】
透明導電体20は、例えば以下のようにして製造することができる。まず、図示しないガラス基板上に導電性粒子12aを載置する。このとき、基板上には、導電性粒子12aを基板上に固定するためのアンカー層を予め設けておくことが好ましい。予めアンカー層を設けておくと、導電性粒子11を基板上にしっかりと固定させることができ、また、上記導電性粒子12aの載置を容易に行うことができる。上記アンカー層としては、例えばポリウレタン等が好適に用いられる。
【0087】
また、基板上に導電性粒子12aを固定するためには、導電性粒子12aをガラス基板側に向かって圧縮して圧縮層を形成してもよい。この場合、アンカー層を形成することなく導電性粒子12aをガラス基板に接着することができ有用である。この圧縮はシートプレス、ロールプレス等により行うことができる。なお、この場合も、基板上に予めアンカー層を設けておくことが好ましい。この場合、導電性粒子12aをよりしっかりと固定させることが可能である。
【0088】
上記基板としては、例えば、ガラスのほか、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルムや各種プラスチック基板等が用いられる。
【0089】
次に、上述したバインダーを圧縮層の一面上に塗布する。こうしてバインダーの一部が圧縮層に浸透することになる。
【0090】
そして、基体11を当該バインダー上に設け、エネルギー線を照射し硬化させることにより、導電層12、硬化体層15、及び基体11が形成される。このことにより、導電性粒子12a内に浸透して硬化されたバインダーは、導電性粒子12aを固着して導電層12を形成する。また、導電性粒子12a内に浸透しないバインダーはそのまま硬化し硬化体層15を形成する。このとき、さらに基体11と硬化体層15とが接着することとなる。なお、上述した高エネルギー線は、例えば紫外線等の光であってもよく、電子線、γ線、X線等であってもよい。
【0091】
このようにA方向より高エネルギー線を照射することにより、バインダーが硬化し各層が形成されることとなる。その後得られた積層体から基板を剥離することにより、図2に示す透明導電体20が得られる。
【0092】
本実施形態に係る導電層12を構成する材料中の導電性粒子12aの含有率は10体積%〜70体積%であることが好ましい。配合量が10体積%未満であると、含有率が上記範囲である場合と比較して、透明導電体20の電気的抵抗値が高くなる傾向にあり、配合量が70体積%を超えると、含有率が上記範囲である場合と比較して、導電層12の機械的強度が低下する傾向にある。
【0093】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0094】
例えば、上記透明導電体2a及び20の製造方法の説明において、樹脂や硬化体15aとして、高エネルギー線によって硬化しうるものを含むものが用いられているが、その代わりに熱によって硬化しうるものを含むものが用いられてもよい。
【0095】
また、上記透明導電体2a及び20は、タッチパネル以外にも、光透過スイッチ等のパネルスイッチに用いることができ、さらにパネルスイッチ以外にも、ノイズ対策部品や、発熱体、EL用電極、バックライト用電極、LCD、PDP等の用途としても好適に用いることができる。
【実施例】
【0096】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0097】
[導電性粒子の作製]
塩化インジウム四水和物(関東化学社製)19.9g及び塩化第二錫(関東化学社製)2.6gを水980gに溶解した水溶液と、アンモニア水(関東化学社製)を水で10倍に希釈したものとを調製しながら混合し、白色の沈殿物(共沈物)を生成させた。
【0098】
生成した沈殿物を含む液体を遠心分離機で固液分離し固形物を得た。これを更に水1000gに投入し、ホモジナイザーで分散して、遠心分離機で固液分離を行なった。分散及び固液分離を5回繰り返したのち、固形物を乾燥し、窒素雰囲気中、600℃で1時間加熱して、ITO粉(導電性粒子)を得た。
【0099】
(実施例1)
ガラス基板上に10cm×30cm角のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基体、帝人株式会社製、厚さ100μm)の一端を両面粘着テープを用いて貼り付け、ガラス基板上に基体を固定した。
次に、ITO粒子(平均粒径30nm)150質量部と、2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレート(モノマー、株式会社ダイキンファインケミカル研究所社製、商品名:R−1820)50質量部と、ポリエチレングリコールジアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:A−400)20質量部と、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(他のモノマー、新中村化学工業株式会社製、商品名A−DPH)5質量部と、アクリルポリマー(平均分子量約10万、1分子当たりアクリロイル基を平均50基、トリエトキシシランを平均25基)25質量部と、UV重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社製、商品名:IRGACURE907)1質量部とをアセトン30質量部中に分散させて分散液を得た。そして、この分散液をバーコート法により基体上に硬化後の厚さが10μmとなるように製膜した。さらにこれを高圧水銀灯を光源として積算照度量3000mJ/cmとするUV照射を行うことにより、導電層を形成した。
【0100】
そして、ガラス基板を基体から分離することにより、導電層が積層された透明導電体Aを得た。
【0101】
(実施例2)
実施例1で使用した2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレートをパーフルオロ(3,6,9,12−テトラオキサテトラデカノイル)アクリレート(モノマー)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、透明導電体Bを得た。
【0102】
(実施例3)
実施例1で使用した2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレートをパーフルオロ(3,7,11−トリオキサペンタデカノイル)アクリレート(モノマー)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、透明導電体Cを得た。
【0103】
(実施例4)
実施例1で使用した2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレートを2−(パーフルオロブチル)エチルアクリレート(モノマー、株式会社ダイキンファインケミカル研究所社製、商品名:R−1420)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、透明導電体Dを得た。
【0104】
(実施例5)
実施例1で使用した2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレートを10質量部に変更し、かつ、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:702A)40質量部を分散液に更に加えたこと以外は実施例1と同様にして、透明導電体Eを得た。
【0105】
(比較例1)
ガラス基板上に10cm×30cm角のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(基体、帝人株式会社製、厚さ100μm)の一端を両面粘着テープを用いて貼り付け、ガラス基板上に基体を固定した。
次に、ITO粒子(平均粒径30nm)60質量部をTHV200A(ダイオニン社製)20質量%MEK溶液200質量部に分散させ分散液を得た。そして、この分散液をバーコート法により基体上に硬化後の厚さが10μmとなるように製膜した。硬化方法は100℃の温風乾燥炉内に1時間放置した。上記方法にて透明導電体Fを得た。
【0106】
(比較例2)
実施例1で使用した2−(パーフルオロオクチル)エチルアクリレートを2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名:702A)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、透明導電体Gを得た。
【0107】
[評価方法]
(透明導電膜の抵抗評価)
上記実施例1〜5及び比較例1、2で得られた導電体A〜Gを50mm角に切り取り、ITO面の予め定められた測定点につき、四端子四探針式表面抵抗測定器(三菱化学社製MCP−T600)で電気抵抗の値を測定し、その測定値を初期表面抵抗値とした。次に、60℃95%RH環境下にて1000時間放置後の表面抵抗値を上記と同様の方法にて測定し、負荷後表面抵抗値とした。そして、下記式:
変化率=負荷後表面抵抗値/初期表面抵抗値
に基づいて変化率を算出した。得られた結果を、表1に示す。
【表1】



【0108】
表1から明らかなように、側鎖に上記一般式(1)〜(4)で表される置換基のいずれかを有する実施例1〜5は、上記一般式(1)〜(4)で表される置換基を有しない比較例1及び2に比べて電気抵抗値の変化率が小さく、電気抵抗値の上昇が十分に抑制できていることが分かった。以上の結果より、本発明の透明導電材料によれば、高湿環境下であっても、電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制でき、また、透明導電体間で摩擦が生じても、透明導電体の表面が削れることを防止し、電気的抵抗値の局所的上昇を十分に抑制することができることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】図1は、本発明の透明導電体の一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】図2は、透明導電体2aを示す模式断面図である。
【図3】図3は、本発明のタッチパネルの第2実施形態に用いる透明導電体を示す模式断面図である。 1・・・タッチパネル、2a,20・・・透明導電体、11・・・基体、12・・・導電層、12a・・・導電性粒子、15・・・硬化体層、15a・・・硬化体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
導電性粒子及びバインダーの硬化体を含有する導電層と、を備え、
前記バインダーが、下記一般式(1)〜(4)で表される置換基からなる群より選ばれる少なくとも1種の置換基を側鎖に有する、透明導電体。
【化1】



[式(1)〜(3)中、n、m及びpはそれぞれ正の整数を示す。]
【請求項2】
前記バインダーが、少なくとも1種のモノマーから重合されるものであり、前記モノマーが、下記一般式(1)〜(4)で表される置換基のいずれかを有する、請求項1記載の透明導電体。
【化2】



[式(1)〜(3)中、n、m及びpはそれぞれ正の整数を示す。]
【請求項3】
前記モノマーが、下記一般式(5)〜(8)で表される重合性官能基のいずれかを有する、請求項2記載の透明導電体。
【化3】



[式(5)中、Rは、二価の炭化水素基を示し、Rは、水素原子、若しくはメチル基を示す。また、式(7)中、Rは、水素原子、メチル基、エチル基、又はプロピル基を示す。]
【請求項4】
前記重合性官能基が、上記一般式(5)で表される重合性官能基である、請求項3記載の透明導電体。
【請求項5】
前記バインダーが、前記モノマーと、ビニル基を有する他のモノマーとの共重合体を含む、請求項2〜4のいずれか一項に記載の透明導電体。
【請求項6】
前記バインダー中のフッ素の含有率が、1.85質量%〜68.3質量%である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の透明導電体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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