説明

透明度の高いコポリオルガノシロキサンカーボネートの製造法

コポリオルガノシロキサンカーボネートを製造するために、初めに唯一の触媒種としての第三アミンの存在下でビスフェノールAポリカーボネートオリゴマーのような芳香族ポリカーボネートオリゴマーを製造し、ポリカーボネートオリゴマー混合物をヒドロキシ末端オイゲノールポリジメチルシロキサンのビスクロロホルメートのようなポリオルガノシロキサンビス(アリール)クロロホルメートと接触させ、ホスゲン及び/又は連鎖停止剤を連続的又は段階的に導入する。この方法の一つの特徴は、当初唯一の仕込原料中にジヒドロキシ芳香族化合物が存在することである。生成物は、透明性を始めとする優れた物理的性質を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コポリオルガノシロキサンカーボネートの製造、さらに具体的には光学的透明度、すなわち透明性の高い生成物が得られるコポリオルガノシロキサンカーボネートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シロキサン−ポリカーボネートコポリマーとも呼ばれるコポリオルガノシロキサンカーボネート(以下、「シロキサン−PC」と略すこともある。)は、延性、高い耐衝撃性及び透明性を始めとするポリカーボネートの有益な性質とポリオルガノシロキサンの有益な性質を併せもつことがあるので重要である。特に、ブロックシロキサン−PCは良好な難燃性、離型性及び低温延性を特徴とする。
【0003】
シロキサン−PCの公知の製造方法として、ハロゲン化カルボニル(大抵はホスゲン)を1種以上のジヒドロキシ芳香族化合物(通例、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(「ビスフェノールA」))及び1種以上のビス(ヒドロキシアリール)ポリオルガノシロキサンと反応させるものがある。別法として、上記2種類の試薬の少なくともいずれかは対応ビスクロロホルメートであってもよい。多用されるビス(ヒドロキシアリール)ポリオルガノシロキサンは、オイゲノール(2−メトキシ−4−アリルフェノール)とビス(ヒドリド末端)ポリジメチルシロキサンの白金触媒ヒドロシリル化によって製造し得る。
【0004】
かかるシロキサン−PCは優れた性質を有していることが多いが、透明性の高い生成物が得られるような方法で製造するのは難しいことが多い。透明性の欠如は、シロキサン−PCの成形試験片における高いヘイズ(%)、また多くの場合溶液中での同様に高いヘイズで裏付けられる。一般に、この種の商業的に有用なポリマーのヘイズは3.18mm(0.125インチ)厚の成形試験片で約3%以下であるべきである。
【0005】
低いヘイズを有するシロキサン−PCの様々な製造法が開発されている。例えば、米国特許第5530083号には、相間移動触媒の存在下でビスフェノールをホスゲン化してクロロホルメート末端オリゴマーを形成し、次いでホスゲンの非存在下でビス(ヒドロキシアリール)ポリオルガノシロキサンをクロロホルメートと縮合させ、最後に通常は触媒としてのアミンの添加によって過剰のクロロホルメートを除去することによってポリカーボネートオリゴマーを製造する多段階法が開示されている。
【0006】
本出願人の係属中の米国特許出願第10/223037号に開示された別の方法は、界面反応条件下でヒドロキシ末端ポリカーボネートオリゴマーをシロキサンビスクロロホルメートと接触させてシロキサン含有ポリカーボネート中間体を得る第1段階と、得られた中間体を界面反応条件下で1種以上のビスフェノール及びホスゲンと接触させる第2段階からなる。この方法は相間移動触媒を必要としない点で上述の米国特許第5530083号に開示された方法よりも簡単ではあるが、、すなわちヒドロキシ末端ポリカーボネートオリゴマー製造用のものと最終段階でもう1つ計2つの固形ビスフェノール仕込原料が必要とされ、そのためサイクル時間が望ましいものよりも長くなる。
【特許文献1】米国特許第5530083号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0039145号明細書
【特許文献3】米国特許第6492481号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0065122号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2003/0058194号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
相間移動触媒単独又はトリアルキルアミンとの組合せではなく、容易に回収できる触媒(例えば慣用のトリアルキルアミン)を用いる方法で低いヘイズのシロキサン−PCを製造できれば望ましい。また、固形反応体の2回以上の添加を必要とせず、かつ所望の場合にはホスゲン化を中断せずに、取扱いの複雑さや長いサイクル時間を回避できる方法でかかる低ヘイズのシロキサン−PCを製造できれば望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、比較的簡単で、容易に回収できる触媒材料しか必要とせず、複雑な取扱い段階を最小限しか必要としないシロキサン−PCの製造方法を提供する。
【0009】
本発明の主な実施形態は、コポリオルガノシロキサンカーボネートの製造方法であって、
pH約9〜12のアルカリ性水性/有機混液中、存在する唯一の触媒種としての1種以上のトリアルキルアミン及び適宜連鎖停止剤としての1種以上のモノヒドロキシ芳香族化合物又はそのクロロホルメートの存在下で、1種以上のジヒドロキシ芳香族化合物をホスゲンと約0.3〜0.85:1のホスゲン/ジヒドロキシ芳香族化合物モル比で接触させて芳香族ポリカーボネートオリゴマー混合物を形成し、
(1)ホスゲン及び(2)連鎖停止剤としての1種以上のモノヒドロキシ芳香族化合物又はそのクロロホルメートの1種以上を適宜追加導入しながら、約10.5〜13.5の範囲内のpHで、上記混合物を1種以上のポリオルガノシロキサンビス(アリール)クロロホルメートから実質的になる試薬と混合してコポリオルガノシロキサンカーボネートオリゴマー混合物を形成し、
ホスゲン及び適宜連鎖停止剤をコポリオルガノシロキサンカーボネート含有混合物に添加して所望の分子量のコポリオルガノシロキサンカーボネートを得る
ことを含んでなる方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の方法で用いる試薬の1つは芳香族ポリカーボネートオリゴマーである。ポリカーボネートオリゴマー中の構造単位はすべて同じ構造であってもよいし、異なる構造でもあってもよく、換言すれば、ポリカーボネートオリゴマーはコポリカーボネートであってもよい。構造単位は一般に次式を有する。
【0011】
【化1】

式中、Rは二価芳香族基であって、芳香族炭化水素でも置換芳香族炭化水素基でもよく、置換基の例としては、アルキル、シクロアルキル、アルケニル(例えば、アリルのような架橋性−グラフト性基)、ハロ(特にフルオロ、クロロ及び/又はブロモ)、ニトロ及びアルコキシが挙げられる。
【0012】
好ましいR基は次式のものである。
【0013】
(II) −A−Y−A
式中、各A及びAは単環式二価芳香族基であり、Yは単結合又はAとAとを1又は2個の原子で隔てる橋かけ基である。式IIにおける自由原子価結合は通常はYに対してA及びAのメタ位又はパラ位にある。
【0014】
式II中において、AとA値は非置換フェニレンでもよいし、その置換誘導体でもよく、置換基はRについて定義した通りである。非置換フェニレン基が好ましい。AとAがいずれもp−フェニレンであるのが好ましいが、共にo−若しくはm−フェニレンであってもよいし、一方がo−若しくはm−フェニレンで他方がp−フェニレンであってもよい。
【0015】
橋かけ基Yは、AとAとを1又は2個の原子、好ましくは1個の原子で隔てる。大抵は、炭化水素基、特に飽和C1−12脂肪族若しくは脂環式基、例えばメチレン、シクロヘキシルメチレン、[2.2.1]ビシクロヘプチルメチレン、エチレン、エチリデン、2,2−プロピリデン、1,1−(2,2−ジメチルプロピリデン)、シクロヘキシリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン又は2,2−アダマンチリデン、特にアルキリデン基である。アリール置換基、不飽和基並びに炭素及び水素以外の原子、例えばオキシ基を含有する基も包含される。以上列挙した置換基はY基の脂肪族、脂環式及び芳香族基に存在し得る。
【0016】
Yが橋かけ基である式IIの基を含有する化合物はビスフェノールと分類される。本発明で使用するビスフェノールその他のジヒドロキシ芳香族化合物の例は米国特許第4737573号に挙げられており、その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。以下、便宜上「ビスフェノール」という用語を多用するが、ビスフェノールの全部又は一部に代えて他のジヒドロキシ芳香族化合物を適宜使用してもよい。ビスフェノールA(YがイソプロピリデンでAとAが各々p−フェニレンであるもの)は、入手が容易で本発明の目的に特に適していることから、往々にして特に好ましい。
【0017】
本発明に有用なポリカーボネートオリゴマーは、ポリカーボネートの製造方法として公知のいかなる方法で製造してもよい。界面法、エステル交換法及び再分配法が挙げられる。好ましい方法の一つでは、pH約9〜11のアルカリ性水性/有機混液中、存在する唯一の触媒種としての1種以上のトリアルキルアミン及び適宜連鎖停止剤としての1種以上のモノヒドロキシ芳香族化合物又はそのクロロホルメートの存在下で、1種以上のジヒドロキシ芳香族化合物をホスゲンと接触させるが、その際、ホスゲン/ジヒドロキシ芳香族化合物モル比は約0.1〜0.9:1、好ましくは約0.3〜0.85:1、最も好ましくは約0.5〜0.8:1である。この方法は本発明の一実施形態における第1段階である。
【0018】
オリゴマーの製造に使用し得る有機液体の具体例は、n−ヘキサン及びn−ヘプタンのような脂肪族炭化水素、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン及び1,2−ジクロロエチレンのような塩素化脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン及びキシレンのような芳香族炭化水素、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、クロロトルエン、ニトロベンゼン及びアセトフェノンのような置換芳香族炭化水素、並びに二硫化炭素である。塩素化脂肪族炭化水素、特に塩化メチレンが好ましい。
【0019】
触媒は第三アミン、通例トリエチルアミンのようなトリアルキルアミン、又は4−ジメチルアミノモルホリンのような求核性の高い複素環式アミンである。トリエチルアミンが好ましい。第三アミンの混合物も使用できる。
【0020】
オリゴマー生成反応は一般に、約15〜50℃の範囲の温度で実施される。反応混合物の水性相のpHは、適当な塩基、大抵はアルカリ金属水酸化物、好ましくは水酸化ナトリウムの導入によって約9〜12の範囲に維持される。
【0021】
オリゴマー製造法において、モノヒドロキシ芳香族化合物又はそのクロロホルメートが連鎖停止剤として存在していてもよい。連鎖停止剤の具体例は、フェノール、p−クミルフェノール及びこれらのクロロホルメートである。
【0022】
オリゴマーの製造に際して、ホスゲン/ビスフェノールモル比は好適には約0.1〜0.9:1の範囲に維持される。透明生成物の製造では、約0.3〜0.85:1、好ましくは約0.5〜0.8:1のモル比が適当である。反応混合物の水性相のpHは約9〜11の範囲に維持する。第三アミンの割合は通例、ビスフェノールを基準にして約0.05〜2.0モル%である。オリゴマーの濃度はオリゴマー+溶媒を基準にして約5〜30重量%である。連鎖停止剤が存在する場合、ビスフェノールを基準にして約10モル%以下の量でよい。ただし、以下に述べる通り、このプロセスの様々な段階で連鎖停止剤の導入が可能であり、オリゴマー製造時に存在する場合、その量は、全体での合計使用量よりも実質的に少量であってもよい。
【0023】
本発明で使用するポリカーボネートオリゴマーの分子量(本明細書では、すべてポリスチレンに対する重量平均分子量をいい、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定。)は臨界的ではない。ただし、商用ポリカーボネートの対応分子量未満であることはいうまでもない。大抵は、分子量の例は約1000〜8000である。
【0024】
本発明の方法の重要な特徴は、1回のビスフェノール仕込原料を使用して低ヘイズ生成物を得ることができることであるが、仕込原料は大抵は固体形態であり、そのため反応混合物中への連続的又は半連続的計量導入が難しい。そこで、本発明の好ましい実施形態では、プロセスで使用するビスフェノールはすべてポリカーボネートオリゴマーによって供給される。他の試薬はプロセスの様々な段階で供給し得るが、ビスフェノールから誘導される試薬はすべて最初から存在する。
【0025】
本発明の別の実施形態では、ビスフェノール全体の少量、概して全量の約10重量%以下をその最初の導入の後の1以上の時点で導入してもよい。かかる1以上の導入時点は最初のビスフェノール導入直後からシロキサン−BCF(後述)の導入後までの任意の時点でよい。ビスフェノールを後から導入する主な目的は、特に連続反応法で、各種プロセス流を供給するためである。
【0026】
ポリカーボネートオリゴマーを次いで、1種以上のポリオルガノシロキサンビス(アリール)クロロホルメートから実質的になる試薬(以下、「シロキサン−BCF」と略す。)と混合する。シロキサン−BCFは既に合成されたバッチの全部若しくは一部であってもよいし、又は必要に応じてジャスト・イン・タイム(just−in−time)式に製造してもよい。特に後者の場合、単離又は貯蔵の必要がなく、製造したままの形態で使用できる。
【0027】
典型的なシロキサン−BCFは次式のものである。
【0028】
【化2】

式中、Aは非置換又は置換二価芳香族基であり、RはC2−8二価脂肪族基であり、各Rは独立にC1−13有機基であり、nは1〜1000である。
【0029】
基の具体例は、1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、2−メチル−1,4−フェニレン及び2−メトキシ−1,4−フェニレンであり、オイゲノールは容易に入手可能で、シロキサン−BCFの製造に好ましい反応体であることから、往々にして好ましい。同様の理由でRは1,3−プロピレンであるのが好ましいが、その他の基の具体例はエチレン、1,2−プロピレン及び1,4−ブチレンである。
【0030】
基は脂肪族でも芳香族でもよく、置換基(通常ハロゲン、特にフッ素)を有していてもよい。R基の具体例は、メチル、フェニル及び3,3,3−トリフルオロプロピルであり、メチルが概して好ましい。
【0031】
上述の通り、往々にして好ましいシロキサン−BCFは、水素末端ポリジメチルシロキサンによるオイゲノールの白金触媒ヒドロシリル化と、その後のホスゲン化によって製造し得る。ホスゲン化段階は管型反応器で効率的に実施できる。以下、このシロキサン−BCFを「EuBCF」ともいう。上記式におけるAは酸素原子に対してオルト位にメトキシ基を有する2−メトキシ−1,4−フェニレンであり、Rはトリメチレンであり、各Rはメチルであり、nは大抵は約10〜100、好ましくは約25〜75、最も好ましくは約30〜60の平均値を有する。大抵は、シロキサン−BCF中のクロロホルメート末端基の割合は、全末端基に対する百分率として約90%以上である。
【0032】
ポリカーボネートオリゴマーとシロキサン−BCFとの混合は、概して、シロキサン−BCFを、通常は前述の有機液体中の溶液として、粗反応混合物又は精製生成物のいずれかの形態のポリカーボネートオリゴマーを含有する水性−有機混液に、水性相のpHを約10.5〜13.5に維持しながら添加する。pHは所要に応じて水性塩基を添加することで維持し得る。
【0033】
シロキサン−BCFとポリカーボネートオリゴマーとの比率は広く変更し得る。広義には、オリゴマー水酸化物/ビスクロロホルメートの当量比、つまり水酸基/クロロホルメート基の比は1:1超、好ましくは約4:1以上、さらに好ましくは約10:1以上である。また、約3000:1もの高さとなることも多々ある。透明生成物を得るため、オルガノシロキサン単位の割合を約0.1〜30.0重量%の範囲内、nの値を約5〜60の範囲に維持するのが概して望ましい。
【0034】
シロキサン−BCFの添加時に反応混合物のホスゲン化及び/又は連鎖停止剤の添加を継続することも本発明の技術的範囲に属する。代替実施形態ではホスゲン化を中断するが、初期段階は芳香族ポリカーボネートオリゴマーの製造中であり、後の段階はシロキサン−BCFの一部又は全部を仕込んだ後に開始され、シロキサン−BCFの全量導入後に適宜遅延があってもよく、この遅延を採用する場合、遅延時間は好ましくは約1〜5分である。同様に、連鎖停止剤を、芳香族ポリカーボネートオリゴマーの製造の前又は途中に全部又は一部添加してもよいし、或いは芳香族ポリカーボネートオリゴマーの製造と後段の間に分けてもよい。このように、これら2種類の試薬の添加は、ポリカーボネートオリゴマー及びシロキサン−PCオリゴマーの製造段階を通して連続的に実施してもよいし、プログラムされたスケジュールで実施してもよい。
【0035】
最終段階では、ホスゲン及び適宜連鎖停止剤を導入して所望の分子量の生成物を得る。この段階は大抵は約9.5〜11.5、好ましくは約10〜11の範囲内のpHで実施される。この段階で所望の分子量を達成すればよく、重量平均分子量は通例約20000〜100000の範囲内にある。
【0036】
本発明の方法で製造したシロキサン−PCは慣用手段、例えば貧溶媒沈殿とその後の真空乾燥で単離し得る。こうして得られた生成物は高い透明性その他の優れた性質を有する物品に成形できる。
【0037】
本発明の方法では、成形試験片の低いヘイズ%にみられるように、透明性の高い物品に成形できるシロキサン−PCを得ることができる。溶液のヘイズ測定も、成形品の透明性の評価にある程度有意義である。ただし、大抵は、溶液及び試験片のヘイズは、溶液の低いヘイズは試験片の低いヘイズを伴うという点でのみ対応する。溶液の高いヘイズが試験片のヘイズも高いことの指標となるわけではない。例えば、溶液が約50%未満の低いヘイズ、事例によってはさらに高いヘイズを有している場合でも、適度に低い試験片ヘイズを伴うことがある。一般に、本発明の目的には、約4%未満、特に約2%未満の試験片ヘイズ値が優れている。
【0038】
本発明のシロキサン−PCは本質的にオルガノシロキサンブロックとカーボネートブロックが交互に連なるブロックコポリマーであるが、透明性の点では、オルガノシロキサンブロックができるだけランダムに分布していることが重要であると思料される。本発明は、かなりの程度のランダムさをもつシロキサン−PCを得ることができるという利点をもつ。
【実施例】
【0039】
以下の実施例で本発明を例示する。部及び百分率はすべて重量基準である。分子量は重量平均分子量であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーでポリスチレン標準に対して測定した。ヘイズ測定には、BYK Gardner Haze−Gard Plusを使用した。試験片のヘイズ測定はASTM 3.18mm(1/8インチ)試験片で行った。溶液のヘイズは、測定機器の25mm(直径)円形光窓を完全にカバーするのに十分な幅をもつ厚さ1cmの溶液セル中に収容した試料で測定し、試料は塩化メチレンに溶解したシロキサン−PCを15(重量)%含有していた。
【0040】
実施例で使用したEuBCF溶液のバッチは、CHCl、NaOH水溶液、及びCOCl中の20%オイゲノール末端封鎖ポリジメチルシロキサン溶液を管状反応器に供給して調製した。これらを分析したところ、略100%がビスクロロホルメートであり、カーボネートは検出されなかった。
【0041】
実施例1〜3
反応容器は、2つの同じ6枚羽根インペラー、再循環ループ、還流凝縮器、ホスゲン導入管、水酸化ナトリウム水溶液導入管及びpHプローブを備えた2Lガラス反応器であった。pHプローブは、反応混合物のpHの関数として添加される水酸化ナトリウム溶液量を制御するフィードバック機構に接続されていた。
【0042】
反応器に、630mLの塩化メチレン、525mLの脱イオン水、140gのビスフェノールA、1.55mLのトリエチルアミン及び様々な量の50%水酸化ナトリウム水溶液を仕込んだ。ホスゲンを、ビスフェノールA1モル当たり毎分0.049モルでホスゲン/ビスフェノールAモル比(以下、「ホスゲン比」という。)1.0、0.033モルでホスゲン比1.0〜1.1及び0.0165モルで1.1〜最終ホスゲン比1.2で添加した。ホスゲン化で発熱が起こり、温度は還流温度まで上昇した。
【0043】
最初のホスゲン添加時に、水酸化ナトリウム溶液はホスゲン添加量に対して2:1の一定のモル比で添加し、pHは約11.5となった。次いで、水酸化ナトリウム溶液の導入によってpHを12.12に調節し、様々な量のEuBCF(平均シロキサン単位数48)を塩化メチレン中22.64%固形分の溶液として、pHを12.0〜12.1の範囲に維持しながら、様々な期間添加した。
【0044】
EuBCF添加終了3分後に、有機相から試料を採取して試験したところクロロホルメートは陰性であった。次に、7.16gのp−クミルフェノール(ビスフェノールAを基準にして5.5モル%)を反応器に加えた。pHを10.5に維持しつつ、追加分のホスゲンを導入した。
【0045】
ホスゲン化完了後、1分間pHを10.5に維持してから反応器から生成物を取り出した。水性相を捨て、有機相を1N塩酸水溶液で2回、脱イオン水で3回洗浄した。次に、生成物を脱イオン水中で沈殿させて単離した。
【0046】
実施例4〜5
手順は以下の点を除いて実施例1〜3と同様であった。初期仕込原料には水酸化ナトリウム水溶液は存在せず、代わりに最初のホスゲン化段階で必要に応じて添加してpHを10.5に維持した。最初のホスゲン仕込完了時のホスゲン比は実施例4では0.75、実施例5では0.85であった。
【0047】
実施例6
30L反応器で、2280gのビスフェノールA及びそれに比例した量の他の試薬を使用し、EuBCFを表面下に導入して、実施例4の手順を繰り返した。
【0048】
実施例7〜8
p−クミルフェノールが最初の仕込原料中に存在していた点以外は、実施例4〜5の手順を繰り返した。
【0049】
実施例9〜10
以下の点を除いて実施例4及び1の手順を繰り返した。ホスゲン化はプロセス全体を通して中断しなかった。連鎖停止剤はフェニルクロロホルメートであり、最初の仕込原料中に存在していた。オリゴマーホスゲン比は最初とEuBCF添加完了時の2時点の値を示す。
【0050】
実施例1〜10の反応パラメーターと結果を5つの対照例と対比して表Iに示す。対照例1〜4は米国特許出願第10/223037号に開示された方法によって2つの等しいビスフェノールA仕込原料を用いて調製した。これらの対照例では、オリゴマーホスゲン比は、最初の仕込原料中のBPA1モル当たり最初の仕込原料に加えたホスゲンのモル数である。対照例5は実験室で調製したビスフェノールAポリカーボネートである。
【0051】
【表1】

実施例1〜10は、本発明によるシロキサン−PCの製造法の有効性を示している。実施例6と対照例3との対比から分かるように、本発明の方法では適度に低い試験片ヘイズをもつ生成物が得られる。特に実施例6を参照して溶液ヘイズと試験片ヘイズを比較すると、溶液ヘイズの高い生成物でも適度に低い試験片ヘイズを有し得ることが分かる。対照例5との対比から分かるように、本発明の生成物は、透明性で知られているビスフェノールAポリカーボネートと遜色がない。
【0052】
実施例11
実施例6の反応器に、2280gのビスフェノールA、10.25Lの塩化メチレン、8.5Lの脱イオン水、116.6gのp−クミルフェノール及び25.3mLのトリエチルアミンを仕込んだ。10mLの50%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10.5に調節した。反応中、ホスゲンを約26g/minで中断せずに添加した。ホスゲン比が0.28となるまで追加の水酸化ナトリウム溶液を添加してpHを10.5に維持し、この時点で追加の水酸化ナトリウム溶液をpH11.9でホスゲン比が0.53となるまで導入した。
【0053】
塩化メチレン中の20%EuBCF溶液(平均シロキサン単位数41)を、pH11.9〜12.2の範囲に維持しながら205秒間反応混合物の表面下に仕込んだ。塩基をそれ以上添加せずに、ホスゲン比が0.87となるまでホスゲン化を続け、その後必要に応じて塩基を添加してpHを10.5に維持した。ホスゲン比が1.2になったところで、ホスゲンを止めた。
【0054】
有機相を1N塩酸水溶液で2回、脱イオン水で3回洗浄した。シロキサン−PC溶液の一部を熱脱イオン水中で沈殿させ、真空オーブンで一晩乾燥した。溶液ヘイズは1.49%、シロキサンレベルは4.52%であった。残りの溶液をメタノール中で沈殿させ、真空中105℃で16時間乾燥し、試験片に成形した。試験片のヘイズは1.7%であった。
【0055】
実施例12
以下の点を除いて実施例11の手順を繰り返した。ホスゲンは約22〜12g/minで添加した。最初の速度は22g/minであるが、この速度はホスゲン化中最終値12.4g/minまで次第に遅くした。ホスゲン比0.40でpHは12に上昇した。ホスゲン比0.51で、pH計は11.6を示し、EuBCFを244秒かけて反応器のヘッドスペースに仕込んだ。EuBCF添加中pHは11.6〜12.0の範囲内に維持した。ホスゲン比はEuBCF添加終了までに0.58となった。2分間塩基の添加を続け、pHを12に維持した。この時点でホスゲン比は0.616であり、pHは10.5に低下した。ホスゲン比が0.913になるまで追加の塩基は添加しなかった。この時点から必要に応じて塩基を添加してpHを10.5に維持した。ホスゲン比が1.2になった時点でホスゲンを止めた。実施例11と同様に処理して、シロキサンレベル6.34%、溶液ヘイズが1.00%、試験片ヘイズが1.83%のシロキサン−PCを得た。
【0056】
実施例13〜15
EuBCF(平均シロキサン数41)を塩化メチレン中20%溶液として管状反応器で工業規模で製造し、凝縮器、pH測定用の再循環ループ、並びにホスゲン、水酸化ナトリウム溶液及びEuBCFの各導入手段を備えた1135L撹拌反応容器に必要量供給した。
【0057】
反応器に、90.7kgのビスフェノールA、標記の固形分(すなわち、塩化メチレン溶液中の生成物の%)が得られる割合の塩化メチレン及び水、並びに実施例1〜12と同様の対ビスフェノールA比のp−クミルフェノール及びトリエチルアミンを仕込んだ。ホスゲン化の直前に、反応器に2.72kgの50%水酸化ナトリウム水溶液を仕込んだ。次いで、ホスゲンを68〜136kg/hrで加え、50%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10.0に維持した。ホスゲンは、47.2kgが添加されるまで実質的に一定の速度で添加した。ホスゲン比0.5で、pHは10.8〜11.2の範囲の値に上昇した。このpHをホスゲン比0.8まで維持したところ、pHはホスゲン化期間中に10.0に戻った。
【0058】
ホスゲン比が約0.6になったとき、管状反応器を始動させ、所望の量のEuBCFが導入されるまで作動させた。次いで管状反応器を停止させた。所望のホスゲン比になるまでホスゲン化を続けた後、生成物を実施例11に記載の通り処理した。
【0059】
実施例13〜15の反応パラメーターと生成物の性質を表IIに示す。「初期」及び「最終」ホスゲン比はEuBCF導入に関してのものである。
【0060】
【表2】

実施例13〜15の生成物の試験片ヘイズレベルはあまり慣用的でない方法で調製した他のシロキサン−PCに匹敵することが分かる。
【0061】
例示の目的で典型的な実施形態について説明してきたが、以上の説明及び実施例は本発明の技術的範囲を限定するものではない。従って、本発明の技術的思想及び範囲内における様々な修正、変更及び代替は当業者には自明であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コポリオルガノシロキサンカーボネートの製造方法であって、
pH約9〜12のアルカリ性水性/有機混液中、存在する唯一の触媒種としての1種以上のトリアルキルアミン及び適宜連鎖停止剤としての1種以上のモノヒドロキシ芳香族化合物又はそのクロロホルメートの存在下で、1種以上のジヒドロキシ芳香族化合物をホスゲンと約0.3〜0.85:1のホスゲン/ジヒドロキシ芳香族化合物モル比で接触させることによって芳香族ポリカーボネートオリゴマー混合物を形成し、
(1)ホスゲン及び(2)連鎖停止剤としての1種以上のモノヒドロキシ芳香族化合物又はそのクロロホルメートの1種以上を適宜追加導入しながら、約10.5〜13.5の範囲内のpHで、上記混合物を1種以上のポリオルガノシロキサンビス(アリール)クロロホルメートから実質的になる試薬と混合することによってコポリオルガノシロキサンカーボネートオリゴマー混合物を形成し、
ホスゲン及び適宜連鎖停止剤をコポリオルガノシロキサンカーボネート含有混合物に添加して、所望の分子量のコポリオルガノシロキサンカーボネートを得る
ことを含んでなる方法。
【請求項2】
前記芳香族ポリカーボネートオリゴマーが次式の構造単位を含んでなる、請求項1記載の方法。
【化1】

式中、Rは二価芳香族基である。
【請求項3】
が次式のものである、請求項2記載の方法。
(II) −A−Y−A
式中、各A及びAは単環式二価芳香族基であり、Yは単結合又はAとAとを1又は2個の原子で隔てる橋かけ基である。
【請求項4】
前記芳香族ポリカーボネートオリゴマーがビスフェノールAポリカーボネートである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記ポリオルガノシロキサンビス(アリール)クロロホルメートが次式のものである、請求項1記載の方法。
【化2】

式中、Aは非置換又は置換二価芳香族基であり、RはC2−8二価脂肪族基であり、各Rは独立にC1−13有機基であり、nは1〜1000である。
【請求項6】
が酸素原子に対してオルト位にメトキシ基を有する2−メトキシ−1,4−フェニレンであり、Rがトリメチレンであり、各Rがメチルであり、nが約10〜100の範囲内の平均値を有する、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記ポリオルガノシロキサンビス(アリール)クロロホルメート中のクロロホルメート末端基の割合が、全末端基に対する百分率として約90%以上である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
水酸基対クロロホルメート基の比が約4:1以上である、請求項1記載の方法。
【請求項9】
コポリオルガノシロキサンカーボネートの製造方法であって、
pH約9〜12のアルカリ性水性/塩化メチレン混液中、存在する唯一の触媒種としてのトリエチルアミン及び適宜連鎖停止剤としての1種以上のフェノール、p−クミルフェノール及びこれらのクロロホルメートの存在下で、1種以上のビスフェノールAをホスゲンと約0.30〜0.85:1のホスゲン/ビスフェノールAモル比で接触させることによって芳香族ポリカーボネートオリゴマー混合物を形成し、
ホスゲン及び連鎖停止剤としてのフェノール、p−クミルフェノール又はこれらのクロロホルメートの1種以上を適宜追加導入しながら、約10.5〜13.5の範囲内のpHで、上記混合物を水性/塩化メチレン混液中、唯一の触媒種としてのトリエチルアミンの存在下でのビスフェノールAポリカーボネートオリゴマーと共に、以下の式の1種以上のポリオルガノシロキサンビス(アリール)クロロホルメートから実質的になる試薬と、約10:1〜約3000:1の水酸基/クロロホルメート基比で、約0.1〜30.0重量%のオルガノシロキサン単位を含有する生成物が得られるようなポリオルガノシロキサンビス(アリール)クロロホルメートの割合で、混合することによってコポリオルガノシロキサンカーボネートオリゴマー混合物を形成し、
ホスゲン及び適宜連鎖停止剤をコポリオルガノシロキサンカーボネート含有混合物に添加して所望の分子量のコポリオルガノシロキサンカーボネートを得る
ことを含んでなる方法。
【化3】

式中、Aは酸素原子に対してオルト位にメトキシ基を有する2−メトキシ−1,4−フェニレンであり、Rはトリメチレンであり、各Rはメチルであり、nは約5〜60の範囲内の平均値を有する。
【請求項10】
コポリオルガノシロキサンカーボネートの製造方法であって、
pH約9〜12のアルカリ性水性/有機混液中、存在する唯一の触媒種としての1種以上のトリアルキルアミン及び適宜連鎖停止剤としての1種以上のモノヒドロキシ芳香族化合物又はそのクロロホルメートの存在下で、全使用量の約90重量%以上の量の1種以上のジヒドロキシ芳香族化合物をホスゲンと、約0.3〜0.85:1のホスゲン/ジヒドロキシ芳香族化合物モル比で、接触させることによって芳香族ポリカーボネートオリゴマー混合物を形成し、
(1)ホスゲン及び(2)連鎖停止剤としての1種以上のモノヒドロキシ芳香族化合物又はそのクロロホルメートの1種以上を適宜追加導入しながら、約10.5〜13.5の範囲内のpHで、上記混合物を1種以上のポリオルガノシロキサンビス(アリール)クロロホルメートから実質的になる試薬と混合することによってコポリオルガノシロキサンカーボネートオリゴマー混合物を形成し、
ジヒドロキシ芳香族化合物の最初の導入の後の1以上の時点でジヒドロキシ芳香族化合物の残り、すなわち約10重量%以下を導入し、
ホスゲン及び適宜連鎖停止剤をコポリオルガノシロキサンカーボネート含有混合物に添加して所望の分子量のコポリオルガノシロキサンカーボネートを得る
ことを含んでなる方法。

【公表番号】特表2007−501877(P2007−501877A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522596(P2006−522596)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/024032
【国際公開番号】WO2005/016997
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】