説明

透明性粘着剤組成物とその粘着シート

【課題】透明性にすぐれるとともに、低温〜高温の広い範囲にわたりすぐれた接着特性を発揮するアクリル系の透明性粘着剤組成物を提供する。
【解決手段】アルキル基の炭素数が2〜14個である(メタ)アクリル酸アルキルエステル70〜100重量%とこれと共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体30〜0重量%とからなる単量体の重合体と、液状添加剤成分と、これらに分散された有機化層状粘土鉱物とを含有し、かつ上記重合体100重量部あたり、液状添加剤成分が5〜30重量部、有機化層状粘土鉱物が3〜20重量部を占めるとともに、有機化層状粘土鉱物は、その層間に少なくとも上記重合体の一部が挿入されて層間分離を起こし、その層間の距離が100Å以上であることを特徴とする透明性粘着剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクリル系の透明性粘着剤組成物とその粘着シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、粘着剤の使用範囲が広がり、それに伴って要求される特性も高度化する傾向にある。とくに、使用温度範囲が上がり、今まで以上に高温での接着特性が重要となっている。また、ディスプレイのプラスチック保護板やガラス板の貼り合わせ、偏光ディスプレイの偏光板の貼り合わせに使用される透明性粘着剤においても、上記高温での接着特性への要求が高まりつつある。
【0003】
粘着剤はゴム系のものとアクリル系のものとに大別され、このうち、ゴム系のものは常温付近での接着特性にすぐれるが、その反面、耐候性や透明性に劣るため、光学用の粘着剤にはアクリル系のものが主に用いられている。
【0004】
アクリル系の粘着剤では、低温での接着特性を改良する目的で、可塑剤や軟化剤などの液状添加剤成分を含ませている。しかし、液状添加剤成分により低温での接着特性が改良される反面、高温使用下では液状添加剤成分が分離して粘着剤表面にブリードし、接着特性を阻害する難点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように、液状添加剤成分を含ませた従来のアクリル系の粘着剤は、低温での接着特性は改良される反面、高温での接着特性が乏しくなる問題があり、広い温度範囲にわたりすぐれた接着特性を発揮させにくかった。
したがって、本発明は、上記従来の問題を克服し、アクリル系の透明性粘着剤組成物またはその粘着シートとして、広い温度範囲においてすぐれた接着特性を発揮するものを提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の目的に対して、鋭意検討した結果、アクリル系重合体に液状添加剤成分を含ませた組成物中に有機化層状粘土鉱物を分子レベルで分散させることにより、低温〜高温の広い範囲にわたり、すぐれた接着特性を発揮する透明性粘着剤組成物が得られることを知り、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、アルキル基の炭素数が2〜14個である(メタ)アクリル酸アルキルエステル70〜100重量%とこれと共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体30〜0重量%とからなる単量体の重合体と、液状添加剤成分と、これらに分散された有機化層状粘土鉱物とを含有し、かつ上記重合体100重量部あたり、液状添加剤成分が5〜30重量部、有機化層状粘土鉱物が3〜20重量部を占めるとともに、有機化層状粘土鉱物は、その層間に少なくとも上記重合体の一部が挿入されて層間分離を起こし、その層間の距離が100Å以上であることを特徴とする透明性粘着剤組成物に係るものである。
とくに、本発明は、液状添加剤成分が可塑剤、軟化剤または粘着付与剤である上記構成の透明性粘着剤組成物と、液状添加剤成分が二塩基酸エステル系可塑剤、ポリオキシプロピレングリコールまたはポリオキシテトラメチレングリコールである上記構成の透明性粘着剤組成物を、提供できるものである。
【0008】
また、本発明は、上記構成の透明性粘着剤組成物からなる粘着剤層を有することを特徴とする粘着シートを提供できるものである。
なお、この明細書において、上記の粘着シートには、通常幅広の粘着シートのほか、通常幅狭の粘着テープも含まれるものであり、さらに、粘着ラベル、粘着光学部材などの各種の粘着製品も含まれるものである。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる重合体は、アクリル系重合体として、アルキル基の炭素数が2〜14個である(メタ)アクリル酸アルキルエステル70〜100重量%、好ましくは85〜100重量%と、これと共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体30〜0重量%、好ましくは15〜0重量%とからなる単量体の重合体である。上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとこれと共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体の量を上記範囲内とすることにより、接着性やクリープ特性(凝集力)などのバランスをうまくとることができる。
【0010】
上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単量体の主成分となるものであり、好ましくは非ターシャリーアルキルアルコールの単官能不飽和(メタ)アクリレートが用いられ、アルキル基の炭素数が2〜14個のものから選ばれる。このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなどがあり、これらのうちの1種または2種以上が用いられる。
【0011】
この(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体は、上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合させることにより、官能基や極性基の導入による耐熱性や接着性の改善,改質のために用いられる。具体的には、アクリル酸、イタコン酸、スルホプロピルアクリレート、ヒドロキシアルキルアクリレート、シアノアルキルアクリレート、アクリルアミド、置換アクリルアミド、N−ビニルカプロラクタム、アクリロニトリル、2−メトキシエチルアクリレート、アクリル酸グリシジル、酢酸ビニル、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、アクリロイルモルホリン、N−ビニルピロリドンなどが挙げられ、目的に応じて1種または2種以上が用いられる。
【0012】
本発明に用いられる液状添加剤成分には、可塑剤、軟化剤、粘着付与剤などがあり、具体的には、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレートなどの二塩基酸エステル系可塑剤、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールなどのオリゴマー系軟化剤、液状ポリブテン、液状ポリイソブチレン、液状ポリイソプレンなどの液状ゴム軟化剤、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイルなどの石油オイル系軟化剤、液状の各種の粘着付与剤が挙げられる。
これらの液状添加剤成分の中でも、有機化層状粘土鉱物との相性より、とくに二塩基酸エステル系可塑剤、ポリオキシプロピレングリコールまたはポリオキシテトラメチレングリコールが好ましく用いられる。
【0013】
これらの液状添加剤成分は、アクリル系重合体100重量部あたり、5〜30重量部、好ましくは5〜20重量部の割合で用いられる。液状添加剤成分が、アクリル系重合体100重量部あたり、5重量部より少ないと、低温条件下での接着性の改善効果に乏しくなり、30重量部を超えると、高温条件下でのブリード現象を抑制できず、高温での接着特性に好結果が得られない。
【0014】
本発明に用いられる有機化層状粘土鉱物は、層状粘土鉱物を有機化処理して、アクリル系重合体との親和性を良くするようにしたもので、通常は層状粘土鉱物の交換性無機イオンが有機オニウムイオンによってイオン交換されたものが用いられる。層状粘土鉱物には、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライトなどのスメクタイト系粘土鉱物や、バーミキュライト、ハロイサイト、膨潤性マイカなどがある。層状粘土鉱物の陽イオン交換量は、層間に挿入されるアクリル系重合体(ないしその単量体)や溶剤などとの親和性の観点より、50〜200meq/100gの範囲に設定されているのが望ましい。
【0015】
イオン交換に使用する有機オニウムイオンには、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、スルホニウムイオン、ホスホニウムイオンなどがあり、とくに、有機アンモニウムイオンが好ましい。この有機アンモニウムイオンとしては、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミンなどの有機アミンを塩酸などによりカチオン化したアルキルアミン塩酸塩や、テトラアルキルアンモニウム塩などの4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0016】
上記の有機アンモニウムイオンの中でも、アクリル系粘着剤中で良好に分散しうるという点から、つぎの式(1);



(式中、R1 〜R3 はメチル基またはエチル基のいずれかである。)
で表される、分子内にポリオキシプロピレン基を有する第4級アンモニウム塩が好ましく用いられる。また、分子内に長鎖アルキル基を有する第4級アンモニウム塩なども、好ましく用いられる。
【0017】
このような有機化層状粘土鉱物は、アクリル系重合体100重量部あたり、3〜20重量部、好ましくは3〜10重量部の割合で用いられる。有機化層状粘土鉱物が、アクリル系重合体100重量部あたり、3重量部未満となると、高温条件下での液状添加剤成分のブリード現象を抑制できず、高温での接着特性に好結果を得にくく、20重量部を超えると、透明性が低下する。
【0018】
本発明の透明性粘着剤組成物は、上記の重合体と液状添加剤成分とこれらに分散された有機化層状粘土鉱物とを上記割合で含有するとともに、上記粘土鉱物がその層間に少なくとも上記重合体の一部が挿入されて層間分離を起こし、その層間の距離が100Å以上であることを特徴としている。上記層間の距離は、広角または小角のX線散乱分析により、定量的に分析できる。
【0019】
ここで、有機化層状粘土鉱物の層間の距離が100Å以上であるとは、層間に少なくとも重合体の一部が挿入することにより、層間距離が顕著に増大していることを意味し、これは、換言すれば、重合体と液状添加剤成分を含有する組成物中に上記粘土鉱物が分子レベルで分散していることを意味している。その結果、この粘着剤組成物は、高い透明性を示し、フィルム化物のJIS−K6714に準拠したヘイズ値が5%以下、とくに2%以下、全光線透過率が85%以上、とくに90%以上となる透明性を示すものである。
【0020】
また、このような分散形態をとることで、粘着剤組成物中の液状添加剤成分の安定性が向上して、高温条件下でも従来のような粘着剤表面へのブリード現象がみられず、高温条件下での接着特性に好結果を得ることができ、これと、液状添加剤成分による低温条件下での接着特性の向上により、低温〜高温の広い範囲ですぐれた接着特性を発揮させることができるのである。
【0021】
なお、高温条件下でのブリード現象の抑制機構は、必ずしも明らかではない。推測では、上記した分散形態により、液状添加剤成分と有機化層状粘土鉱物との相互作用が強くなり、粘着剤中で上記粘土鉱物が形成している粘土鉱物同士の凝集性高次構造(一般にはカードハウス構造として知られる)中に液状添加剤成分が取り込まれることに起因するものと思われる。
いずれにしても、本発明において、有機化層状粘土鉱物の層間距離が100Å未満となると、粘着剤組成物の透明性を低下し、また液状添加剤成分の安定性が損なわれ、高温での接着特性に好結果を得にくい。
【0022】
本発明の透明性粘着剤組成物には、凝集力などを高めてせん断強さを増加させるために、架橋剤成分を含ませることができる。この架橋剤成分には、合成後の重合体に添加する多官能イソシアネート化合物、多官能メラミン化合物、多官能エポキシ化合物などの外部架橋剤や、重合体の合成時に交叉結合剤として添加する分子内に(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレート、たとえばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、1,2−エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなどの内部架橋剤が用いられる。これらの架橋剤成分は、重合体(単量体)100重量部あたり、通常0.02〜5重量部の使用量とするのがよい。
【0023】
本発明の透明性粘着剤組成物には、上記の各成分のほかに、前記した特性を損なわない限り、必要により、液状添加剤成分以外の添加剤として、老化防止剤、着色剤など、従来公知の各種の添加剤を配合してもよい。
【0024】
本発明の粘着シートは、上記構成の透明性粘着剤組成物からなる粘着剤層を有するものであり、上記組成物をこれ単独でシート状やテープ状などの形態としたもの、透明性を損なうことのないポリイミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルムなどの透明基材の片面または両面に上記組成物からなる粘着剤層を設けた基材付きの形態としたものなどがある。
【0025】
このように構成される本発明の透明性粘着剤組成物およびその粘着シートは、たとえば、以下の▲1▼〜▲3▼の方法により、製造することができる。
▲1▼ 単量体の溶液重合により重合体溶液を得、これに液状添加剤成分、有機化層状粘土鉱物、架橋剤成分(外部架橋剤)などを加えて、透明性粘着剤組成物の溶液とし、これを剥離性基材または非剥離性基材(透明基材)上に塗布し、乾燥により溶剤を揮散除去して、粘着シートとする。
【0026】
▲2▼ 単量体の溶液重合、懸濁重合または塊状重合(紫外線重合)により、溶剤を含まない固形重合体を得、これに液状添加剤成分、有機化層状粘土鉱物、架橋剤成分(外部架橋剤)などを加えて、透明性粘着剤組成物とし、これを溶融押出機などにより押出成形して、粘着シートとする。
▲3▼ 単量体に、液状添加剤成分、有機化層状粘土鉱物、架橋剤成分(内部架橋剤)などを加え、これを前記同様の基材上に塗布し、その上にポリエステルフィルムなどの透明マスクを被せ、紫外線の照射により重合処理して、重合体を含む透明性粘着剤組成物を得ると同時に、粘着シートとする。
【0027】
上記▲1▼〜▲3▼の方法において、重合体(または単量体)に有機化層状粘土鉱物を加えて混合分散する際に、その均一分散を促進する目的で、外的作用を付加するのが望ましい。外的作用を付加することにより、上記粘土鉱物の層間に少なくとも重合体の一部が挿入されて、層間の距離が増大し、層間の距離が100Å以上となる、換言すれば上記粘土鉱物が重合体および液状添加剤成分中に分子レベルで均一分散された透明性粘着剤組成物を容易に製造できる。
【0028】
上記の外的作用として、せん断的外的作用または振動的外的作用を付加するのが好ましい。せん断的外的作用は、混合物に対して高いせん断力をかけられる、たとえば、コロイドミル、ホモジナイザ、ディスパなどの分散機を用いて分散処理する方法である。また、振動的外的作用は、混合物を非常に強力な超音波ホモジナイザにより振動処理する方法である。
【0029】
これら以外の外的作用として、熱的外的作用や圧力的外的作用を付加してもよい。熱的外的作用は、混合物にその構成成分の揮発や劣化を及ぼさない程度の熱をかけて処理する方法である。圧力的外的作用としては、混合物をオートクレーブ中に入れて1〜5Kg/cm2 程度の圧力をかける方法や、超臨界二酸化炭素を媒体として高圧下で処理する方法などがある。
【0030】
また、上記▲1▼〜▲3▼の方法において、単量体の重合に際し、適宜の重合開始剤が用いられる。重合開始剤としては、熱によりラジカルを発生する熱重合開始剤として、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系化合物、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物が用いられる。また、光によりラジカルを発生する光重合開始剤として、ベンゾインエーテル類、置換ベンゾインエーテル類、置換アセトフェノン類、置換−α−ケトール類、芳香族スルホニルクロリド類、光活性オキシム類などが用いられる。
【0031】
このように製造される本発明の透明性粘着剤組成物およびその粘着シートは、既述したとおり、透明性に非常にすぐれているとともに、低温〜高温の広い範囲にわたりすぐれた接着特性を示すことから、ディスプレイのプラスチック保護板やガラス板の貼り合わせ、またプラズマディスプレイパネルの保護層などの各種用途に対して、好適に使用することができる。
【0032】
【実施例】
つぎに、本発明の実施例を記載して、より具体的に説明する。なお、以下において、部とあるのは重量部を意味するものとする。
【0033】
実施例1
<有機化層状粘土鉱物の調製>
サポナイト系層状粘土鉱物(カチオン交換容量90meq/100g)20gを400gの蒸留水中に撹拌分散した。式(1)で表されるポリオキシプロピレン基を有する4級アンモニウム塩(式中、R1 〜R3 はメチル基、nは25である)47.3g、水100g、エタノール100gを均一に混合し、これを、上記層状粘土鉱物の分散液に加えて、30℃で1時間撹拌した。その後、分散液の温度を80℃に昇温させ、析出した固体をろ別した。凍結乾燥により水分の乾燥を行い、ワックス状の有機化層状粘土鉱物を得た。
このようにして得た有機化層状粘土鉱物の層間距離は、X線散乱分析により、42Åであった。また、有機化層状粘土鉱物中の有機アンモニウムイオンの含有量は、熱重量分析の結果、60重量%であった。
【0034】
<粘着シートの作製>
上記の有機化層状粘土鉱物10g、アクリル酸2−エチルヘキシル95g、アクリル酸5g、液状添加剤成分としてポリプロピレングリコール(三洋化学工業社製の「サンニックスPP−400」)10g、溶剤としてトルエン150gを混合し、さらに単量体100部あたり、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバガイギーコーポレーション製の「イルガキュア184」)0.2部を加え、スリーワンモータで2時間混合し、分散物とした。この分散物に、超音波分散機(日本精機製)により、500wの照射強度で約3分間の処理を施し、外的作用を付加した。
【0035】
このようにして得た透明分散物に、上記単量体100部あたり、交叉結合剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート0.2部を加えて、均一に溶解した。これを、厚さが50μmのシリコーン離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、離型処理PETフィルムという)上に塗布し、乾燥機中で溶剤成分を揮散除去する処理を施した。その後、上記塗布面を上記と同様の離型処理PETフィルムでコートし、光強度5mw/cm2 の高圧水銀ランプで900mj/cm2 の紫外線を照射して光重合させた。
【0036】
このようにして、重合体と液状添加剤成分とこれらに分散された有機化層状粘土鉱物とを含有し、上記粘土鉱物の層間に少なくとも重合体の一部が挿入されて層間分離を起こした、厚さが500μmの透明性粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
上記の粘着剤層における有機化層状粘土鉱物のX線散乱分析により、有機化層状粘土鉱物由来の42Åのビークは消失しており、100Åを超える低角側にブロードな広がりをみせるピークを観察した。
【0037】
比較例1
アクリル酸2−エチルヘキシル100g、アクリル酸5g、液状添加剤成分としてポリプロピレングリコール(実施例1と同じもの)10gを混合し、さらに単量体100部あたり、実施例1と同じ光重合開始剤0.05部を加えて混合したのち、フラスコ内にてスポット紫外線照射装置により、単量体の10重量%を重合させて、混合物を増粘させた。
【0038】
その後、単量体100部あたり、実施例1と同じ光重合開始剤0.15部と、交叉結合剤としてトリメチロールプロパントリアクリレート0.2部を加えて、均一に溶解した。これを、実施例1と同じ離型処理PETフィルム上に塗布し、その塗布面に上記同様の離型処理PETフィルムを被せ、光強度5mw/cm2 の高圧水銀ランプで900mj/cm2 の紫外線を照射して光重合させた。
このようにして、重合体と液状添加剤成分を含有する、厚さが500μmの透明性粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
【0039】
実施例2
液状添加剤成分(ポリプロピレングリコール)の量を5gに変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さが500μmの透明性粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
上記の粘着剤層における有機化層状粘土鉱物のX線散乱分析により、有機化層状粘土鉱物由来の42Åのビークは消失しており、100Åを超える低角側にブロードな広がりをみせるピークを観察した。
【0040】
実施例3
液状添加剤成分(ポリプロピレングリコール)の量を30gに変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さが500μmの透明性粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
上記の粘着剤層における有機化層状粘土鉱物のX線散乱分析により、有機化層状粘土鉱物由来の42Åのビークは消失しており、100Åを超える低角側にブロードな広がりをみせるピークを観察した。
【0041】
比較例2
液状添加剤成分(ポリプロピレングリコール)の量を40gに変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さが500μmの透明性粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
上記の粘着剤層における有機化層状粘土鉱物のX線散乱分析により、有機化層状粘土鉱物由来の42Åのビークは消失しており、100Åを超える低角側にブロードな広がりをみせるピークを観察した。
【0042】
実施例4
有機化層状粘土鉱物の量を3gに変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さが500μmの透明性粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
上記の粘着剤層における有機化層状粘土鉱物のX線散乱分析により、有機化層状粘土鉱物由来の42Åのビークは消失しており、100Åを超える低角側にブロードな広がりをみせるピークを観察した。
【0043】
実施例5
有機化層状粘土鉱物の量を20gに変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さが500μmの透明性粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
上記の粘着剤層における有機化層状粘土鉱物のX線散乱分析により、有機化層状粘土鉱物由来の42Åのビークは消失しており、100Åを超える低角側にブロードな広がりをみせるピークを観察した。
【0044】
比較例3
有機化層状粘土鉱物の量を1gに変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さが500μmの透明性粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
上記の粘着剤層における有機化層状粘土鉱物のX線散乱分析により、有機化層状粘土鉱物由来の42Åのビークは消失しており、100Åを超える低角側にブロードな広がりをみせるピークを観察した。
【0045】
比較例4
有機化層状粘土鉱物の量を25gに変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さが500μmの粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
上記の粘着剤層は、わずかにクスミがみられた。また、この粘着剤層における有機化層状粘土鉱物のX線散乱分析により、有機化層状粘土鉱物由来の42Åのビークが一部残存していることが確認された。
【0046】
実施例6
液状添加剤成分として、ポリオキシテトラメチレングリコール(三洋化学工業社製の「PTMG 650」)10gを使用した以外は、実施例1と同様にして、厚さが500μmの透明性粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
上記の粘着剤層における有機化層状粘土鉱物のX線散乱分析により、有機化層状粘土鉱物由来の42Åのビークは消失しており、100Åを超える低角側にブロードな広がりをみせるピークを観察した。
【0047】
比較例5
液状添加剤成分として、ポリオキシテトラメチレングリコール(実施例6と同じもの)10gを使用した以外は、比較例1と同様にして、アクリル系重合体および液状添加剤成分を含有する、厚さが500μmの透明性粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
【0048】
実施例7
液状添加剤成分として、ジイソオクチルフタレート7gを使用した以外は、実施例1と同様にして、厚さが500μmの透明性粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
上記の粘着剤層における有機化層状粘土鉱物のX線散乱分析により、有機化層状粘土鉱物由来の42Åのビークは消失しており、100Åを超える低角側にブロードな広がりをみせるピークを観察した。
【0049】
比較例6
液状添加剤成分として、ジイソオクチルフタレート7gを使用した以外は、比較例1と同様にして、アクリル系重合体および液状添加剤成分を含有する、厚さが500μmの透明性粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
【0050】
実施例8
単量体組成を、アクリル酸2−エチルヘキシル95gおよびアクリル酸5gから、アクリル酸2−エチルヘキシル100gに変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さが500μmの透明性粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
上記の粘着剤層における有機化層状粘土鉱物のX線散乱分析により、有機化層状粘土鉱物由来の42Åのビークは消失しており、100Åを超える低角側にブロードな広がりをみせるピークを観察した。
【0051】
実施例9
単量体組成を、アクリル酸2−エチルヘキシル95gおよびアクリル酸5gから、アクリル酸2−エチルヘキシル92gおよびアクリル酸8gに変更した以外は、実施例1と同様にして、厚さが500μmの透明性粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートを作製した。
上記の粘着剤層における有機化層状粘土鉱物のX線散乱分析により、有機化層状粘土鉱物由来の42Åのビークは消失しており、100Åを超える低角側にブロードな広がりをみせるピークを観察した。
【0052】
実施例10
アクリル酸ブチル95g、2−ヒドロキシエチルアクリレート5g、トルエン200g、アゾビスイソブチロニトリル0.2gを反応器に仕込み、窒素気流下、70℃で5時間、ラジカル溶液重合を行った。
このようにして得た重合体溶液に、架橋剤として多官能イソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製の「コロネートHL」)1g、液状添加剤成分として液状ポリイソブチレン(分子量3,000)7g、有機化層状粘度鉱物(実施例1と同じもの)6gを加えて、高速せん断型分散機(M−テクニック社製の「クリアミックス」)により、均一に分散した。
【0053】
このようにして得た分散液を、実施例1と同じ離型処理PETフィルム上に、塗布したのち、乾燥により溶剤を揮散除去して、厚さが80μmの透明性粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートを作製した。なお、上記の粘着剤層面には実施例1と同じ別の離型処理PETフィルムを貼り合わせた。
上記の粘着剤層における有機化層状粘土鉱物のX線散乱分析により、有機化層状粘土鉱物由来の42Åのビークは消失しており、100Åを超える低角側にブロードな広がりをみせるピークを観察した。
【0054】
上記の実施例1〜10および比較例1〜6の各粘着シートについて、以下の方法により、透明性試験、ブリード試験および接着力試験を行った。これらの結果は、表1に示されるとおりであった。
【0055】
<透明性試験>
粘着シートを、その一方の離型処理PETフィルムを剥離して、スライドガラスに貼り合わせたのち、他方の離型処理PETフィルムを剥離して、ヘイズ値および全光線透過率を、濁度計により測定した。
【0056】
<ブリード試験>
二つの離型処理PETフィルムでサンドイッチされた粘着シートを、5cm角に裁断してサンプルとし、これを70℃の乾燥機中に放置し、24時間後に離型処理PETフィルムと粘着剤層との界面の様子を目視により観察した。液状添加剤成分のブリードは、上記界面での液状物の存在により明確に判別できる。観察の結果、上記界面に液状添加剤成分のブリードが全くみられないものを○、上記界面に液状添加剤成分のブリードがみられるものを×、と評価した。
【0057】
<接着力試験>
粘着シートを、その一方の離型処理PETフィルムを剥離して、ベークライト板に10mm×20mmの接着面積で貼り付け、これを25℃および70℃の雰囲気中に投入し、500gの荷重をかけて、24時間後の落下の有無を観察した。落下なしを○、落下ありを×、と評価した。
【0058】



【0059】
上記の表1の結果から明らかなように、実施例1〜10の各粘着シートは、透明性(ヘイズ値、全光線透過率)にすぐれているとともに、高温条件下での液状添加剤成分のブリード現象がみられず、低温〜高温の広い範囲にわたりすぐれた接着特性を発揮するものであることがわかる。これに対して、本発明の構成とは異なる比較例1〜6の各粘着シートは、高温条件下での液状添加剤成分のブリード現象がみられ、低温〜高温の広い範囲にわたりすぐれた接着特性を発揮させることができないか、あるいは透明性に劣ったものとなり、透明性と接着特性の両方をともに満足させることが難しかった。
【0060】
【発明の効果】
以上のように、本発明は、アクリル系重合体に液状添加剤成分を含ませた組成物に有機化層状粘土鉱物を分子レベルで分散させる特定構成としたことにより、透明性にすぐれ、かつ低温〜高温の広い温度範囲ですぐれた接着特性を発揮する透明性粘着剤組成物とその粘着シートを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル基の炭素数が2〜14個である(メタ)アクリル酸アルキルエステル70〜100重量%とこれと共重合可能なモノエチレン性不飽和単量体30〜0重量%とからなる単量体の重合体と、液状添加剤成分と、これらに分散された有機化層状粘土鉱物とを含有し、かつ上記重合体100重量部あたり、液状添加剤成分が5〜30重量部、有機化層状粘土鉱物が3〜20重量部を占めるとともに、有機化層状粘土鉱物は、その層間に少なくとも上記重合体の一部が挿入されて層間分離を起こし、その層間の距離が100Å以上であることを特徴とする透明性粘着剤組成物。
【請求項2】
液状添加剤成分は、可塑剤、軟化剤または粘着付与剤である請求項1に記載の透明性粘着剤組成物。
【請求項3】
液状添加剤成分は、二塩基酸エステル系可塑剤、ポリオキシプロピレングリコールまたはポリオキシテトラメチレングリコールである請求項1に記載の透明性粘着剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の透明性粘着剤組成物からなる粘着剤層を有することを特徴とする粘着シート。

【公開番号】特開2004−75829(P2004−75829A)
【公開日】平成16年3月11日(2004.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2002−237038(P2002−237038)
【出願日】平成14年8月15日(2002.8.15)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】