説明

透明液体柔軟剤組成物

【課題】低温長期貯蔵においても析出物を実質的に生成しない、透明又は半透明の液体柔軟剤組成物を提供する。
【解決手段】(a)エステル基等で分断されてもよい炭素数14〜26のアルキル基又はアルケニル基を有する特定のカチオン化合物の混合物であって、該混合物中の炭素数14〜26のアルケニル基と炭素数14〜26のアルキル基の存在比が、該アルケニル基の数/〔該アルケニル基の数+該アルキル基の数〕で0.85以上である混合物、(b)炭素数10〜36のアルキル基又はアルケニル基を少なくとも1個有する、硫酸エステル塩型又はスルホン酸塩型陰イオン界面活性剤、及び/又は炭素数10〜36のアルキル基で置換されたアリール基を少なくとも1個有する、硫酸エステル塩型又はスルホン酸塩型陰イオン界面活性剤、並びに、(c)特定の芳香族カルボン酸、芳香族スルホン酸、又はこれらの塩を含有する透明液体柔軟剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明液体柔軟剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
透明又は半透明の柔軟剤組成物はすでに知られている(特許文献1及び2)。特許文献1には、4級アンモニウム化合物、及び芳香族カルボン酸塩又は芳香族スルホン酸塩を含む液体柔軟剤組成物が開示されている。特許文献2には、4級アンモニウム化合物、特定のLogPを有する溶剤、非イオン界面活性剤、及び塩化マグネシウムなどの塩を含む液体柔軟剤組成物が開示されている。また、上記特許文献1及び2には、カチオン界面活性剤を含む柔軟剤組成物中に陰イオン界面活性剤が存在すると該カチオン界面活性剤と相互作用し、柔軟付与性能が悪くなることが記載されている。更に、4級アンモニウム塩化合物として、例えば、ジ(オレオイルオキシエチル)ジメチル4級塩のような不飽和結合を有するカチオン界面活性剤を用いた透明ないし半透明の液体柔軟剤組成物が知られている(特許文献3)。
【特許文献1】特開平7−3650号公報
【特許文献2】特表2001−524616号公報
【特許文献3】特表2003−183981号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような不飽和結合を有するカチオン界面活性剤を含む液体柔軟剤組成物は、低温において長期保存すると、析出物(白いもや状の析出物など)が生成するという問題があった。
【0004】
本発明の目的は、低温長期貯蔵においても析出物を実質的に生成しない、透明又は半透明の液体柔軟剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
(a)下記一般式(1)の化合物の混合物であって、該混合物中の炭素数14〜26のアルケニル基と炭素数14〜26のアルキル基の存在比が、該アルケニル基の数/〔該アルケニル基の数+該アルキル基の数〕で0.85以上である混合物〔以下、(a)成分という〕、
(b)直鎖又は分岐鎖の炭素数10〜36のアルキル基又はアルケニル基を少なくとも1個有する、硫酸エステル塩型又はスルホン酸塩型陰イオン界面活性剤、及び/又は炭素数10〜36のアルキル基で置換されたアリール基を少なくとも1個有する、硫酸エステル塩型又はスルホン酸塩型陰イオン界面活性剤〔以下、(b)成分という〕、並びに、
(c)炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、もしくは水酸基で置換されてもよいアリール基を有する芳香族カルボン酸、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、もしくは水酸基で置換されてもよいアリール基を有する芳香族スルホン酸、又はこれらの塩〔以下、(c)成分という〕、
を含有する透明液体柔軟剤組成物に関する。
【0006】
【化2】

【0007】
〔式中、
11は、エステル基、アミド基又はエーテル基で分断されてもよい炭素数14〜26のアルキル基又は炭素数14〜26のアルケニル基であり、
12及びR13は、それぞれ独立に、エステル基、アミド基又はエーテル基で分断されてもよい炭素数14〜26のアルキル基又は炭素数14〜26のアルケニル基であるか、あるいは炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、
14は、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、そして
-は、陰イオン基である。〕
【0008】
なお、本発明でいう透明とは、いわゆる半透明を含む概念であり、測定セルの光路長10mmの石英セルを使用し、対照側セルにイオン交換水を入れた場合に660nmの波長の光透過率が70%以上であること、全体的もしくは部分的に当該光透過率が70%未満ではないこと、及び目視観察により全体的もしくは部分的に、白濁もしくは析出物が存在していないことをいう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低温長期貯蔵においても析出物を生成しない、透明液体柔軟剤組成物が提供される。本発明の透明液体柔軟剤組成物は、柔軟効果も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<(a)成分>
本発明の組成物は、(a)成分として下記一般式(1)の化合物の混合物を含有する。
【0011】
【化3】

【0012】
〔式中、
11は、エステル基、アミド基又はエーテル基で分断されてもよい炭素数14〜26のアルキル基又は炭素数14〜26のアルケニル基であり、
12及びR13は、それぞれ独立に、エステル基、アミド基又はエーテル基で分断されてもよい炭素数14〜26のアルキル基又は炭素数14〜26のアルケニル基であるか、あるいは炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、
14は、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、そして
-は、陰イオン基である。〕
【0013】
ここで、上記X-の陰イオン基としては、ハロゲンイオン、メチル硫酸基、エチル硫酸基などが挙げられる。更に、当該陰イオン基は、(b)又は(c)成分由来の陰イオン基であってもよい。
【0014】
11、R12及びR13の炭素数14〜26のアルキル基、炭素数14〜26のアルケニル基は、エステル基(−COO−、−OCO−)、アミド基(−CONH−、−NHCO−)、エーテル基(−O−)で分断されていてもよく、柔軟剤組成物の低温での貯蔵安定性の観点からは、これらエステル基、アミド基、エーテル基を含むことが好ましい。
【0015】
上記の通り、(a)成分は一般式(1)で表される化合物の混合物であり、該混合物中の炭素数14〜26のアルケニル基と炭素数14〜26のアルキル基の存在比(アルケニル比ということもある)が、該アルケニル基の数/〔該アルケニル基の数+該アルキル基の数〕で0.85以上であり、好ましくは0.9以上、より好ましくは0.93以上、更に好ましくは0.94以上、更に好ましくは0.95以上、特に好ましくは0.96以上であり、柔軟剤組成物の低温での貯蔵安定性の観点から、該アルキル基が存在しない、すなわち、炭素数14〜26の基が全てアルケニル基であることが最も好ましい。
【0016】
上記アルケニル基とアルキル基の存在比は、ガスクロマトグラフィーを用いることで算出することができる。
【0017】
(a)成分は、下記一般式(1−1)の化合物及び下記一般式(1−2)の化合物から選ばれる化合物の混合物、特に下記一般式(1−1)の化合物の混合物であることが、柔軟剤組成物の透明化の点から好適である。
【0018】
【化4】

【0019】
〔式中、
15及びR17は、それぞれ独立に、炭素数16〜20のアルキル基又は炭素数16〜20のアルケニル基であり、
16及びR18は、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルキレン基、好ましくは、エチレン基又はプロピレン基であり、
19は、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、
20は、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、
A及びBは、それぞれ独立に、−COO−、−OCO−、−CONH−及び−NHCO−から選ばれる基であり、
a及びbは、それぞれ独立に、1以上の数であり、1〜5の数が好ましく、そして
-は、陰イオン基である。〕
【0020】
【化5】

【0021】
〔式中、
21は、炭素数16〜20のアルキル基又は炭素数16〜20のアルケニル基であり、
22は、炭素数1〜6のアルキレン基、好ましくは、エチレン基又はプロピレン基であり、
23及びR24は、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、
25は、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、
Dは、−COO−、−OCO−、−CONH−及び−NHCO−から選ばれる基であり、
cは、1以上の数であり、1〜5の数が好ましく、そして
-は、陰イオン基である〕
【0022】
一般式(1−1)の化合物の混合物においては、本発明のアルケニル比が0.87以上、更に0.9以上、特に0.92以上であることが好ましい。また、一般式(1−1)の化合物の混合物においては、炭素数14〜26のアルケニル基(X)に対する炭素−炭素不飽和結合を2つ以上有する炭素数14〜26のアルケニル基(Y)の存在比が、〔(Y)の数〕/〔(X)の数〕で0.1以下、更に0.08以下、更に0.05以下であることが好ましい。これらを満たすことが、透明化の点から好適であり、しかも低温長期貯蔵安定性の点から好ましい。
【0023】
19は、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基が好適であり、特にヒドロキシエチル基が好ましい。R20は、メチル基が好適であり、そしてA及びBは、−COO−が好ましい。
【0024】
一般式(1−1)において、A及びBが−COO−である化合物は、上記の好ましいアルキル組成を有する脂肪酸と、対応するモノアルキルジアルカノールアミン又はトリアルカノールアミンとの脱水エステル化反応で製造したアミン、あるいは好ましいアルキル組成を有する脂肪酸低級アルキル(炭素数1〜3)エステルと、モノアルキルジアルカノールアミン又はトリアルカノールアミンとのエステル交換反応で製造したアミンを、ジアルキル硫酸(炭素数1〜3)、ハロゲン化アルキル(炭素数1〜3)などから選ばれるアルキル化剤を用いて4級化反応を行うことで製造できる。
【0025】
脂肪酸又は脂肪酸エステルは、牛脂、豚油、魚油、パーム油、ヒマワリ油、ナタネ油、サフラワー油、綿実油、トウモロコシ油、大豆油、オリーブ油などの油脂をケン化して得られる脂肪酸組成のものが好適である。
【0026】
また、上記の脂肪酸又は脂肪酸エステルは、炭素−炭素不飽和結合を2つ以上有するアルケニル基を多量に含有するため、例えば特開平4−306296号公報に記載されているような晶析や、特開平6−41578号公報に記載されているようにメチルエステルを減圧蒸留する方法、あるいは特開平8−99036号公報に記載の選択水素化反応を行うことで、炭素−炭素不飽和結合を2つ以上含有する脂肪酸の割合を制御する方法等により製造できる。
【0027】
なお、選択水素化反応を行った場合には不飽和結合の幾何異性体の混合物が形成するが、本発明ではシス/トランスが25/75〜99.9/0.1、更に50/50〜99.9/0.1(モル比)が好ましい。
【0028】
エステル化反応又はエステル交換反応における、脂肪酸又は脂肪酸エステルと、モノメチルジアルカノールアミン又はトリアルカノールアミンとの比率は、1.4:1.0〜2.2:1.0、更に1.6:1.0〜2.0:1.0のモル比が好ましい。
【0029】
本発明において、トリアルカノールアミンと脂肪酸又は脂肪酸エステルとをエステル化又はエステル交換反応させ、続いて4級化反応を行った場合、一般式(1−1)の化合物以外に、一般式(1−2)の化合物に相当するモノエステル体〔一般式(1−1)において、R15が炭素数16〜20のアルキル基又はアルケニル基であり、R17−[B−R18b−がHO−R18−であり、そしてR19が炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基である化合物〕及び/又はトリエステル体〔一般式(1−1)において、R15、R17が炭素数16〜20のアルキル基又はアルケニル基であり、そしてR19がR17−[B−R18b−である化合物〕が混入する。本発明では、このような通常、一般式(1)の化合物の混合物として入手される(a)成分において、上記アルケニル比が特定範囲にあるものを使用することで、低温長期貯蔵においても析出物を実質的に生成せず、透明又は半透明の外観を維持できる液体柔軟剤組成物が得られることを見出したものである。
【0030】
本発明において、トリアルカノールアミンと脂肪酸又は脂肪酸エステルとをエステル化又はエステル交換反応させる工程を経て製造した4級アンモニウム塩を用いる場合には、組成物の透明化の点及び低温長期貯蔵安定性の点から、一般式(1−1)の化合物100質量部に対して、上記モノエステル体を25〜70質量部、トリエステル体を40〜120質量部含有する混合物が好適である。
【0031】
本明細書において、特に他に言及がなければ、単にアルケニル基と記載した場合は、炭素−炭素不飽和結合を1つ以上有する炭化水素基を意味する。
【0032】
<(b)成分>
本発明の(b)成分は、直鎖又は分岐鎖の炭素数10〜36のアルキル基又はアルケニル基を少なくとも1個有する硫酸エステル塩型又はスルホン酸塩型陰イオン界面活性剤、又は炭素数10〜36のアルキル基で置換されたアリール基を少なくとも1個有する硫酸エステル塩型又はスルホン酸塩型陰イオン界面活性剤であり、特に上記(a)成分において一般式(1−2)の化合物を用いる場合には、柔軟効果を著しく向上させることができる。このため、本発明の組成物中に(b)成分を添加すると、本発明の(a)成分(柔軟基剤量)等を低減化しても柔軟効果が低下することがない。
【0033】
(b)成分としては、炭素数10〜36、好ましくは12〜28の、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキル(又はアルケニル)硫酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸エステル、オレフィンスルホン酸、アルカンスルホン酸、α−スルホ脂肪酸、α−スルホ脂肪酸エステル又はこれらの塩が好ましい。これらの中でも特に炭素数16〜28のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル(又はアルケニル)硫酸エステル、炭素数16〜28のアルキル基又はアルケニル基を有し、エチレンオキシド平均付加モル数が1〜6、好ましくは1〜4、特に好ましくは1〜3であるポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸エステル及びこれらの塩からなる群から選ばれる1種以上を配合することが好ましい。本発明の特に好ましい(b)成分は、2−デシル−テトラデシル硫酸エステル又はその塩である。
【0034】
塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、及びカルシウム塩からなる群から選択されることが好ましく、更に、ナトリウム塩、カリウム塩、及びマグネシウム塩が貯蔵安定性の点から良好である。
【0035】
<(c)成分>
本発明の組成物は、(c)成分として、低温長期保存安定性の観点から、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、もしくは水酸基で置換されてもよいアリール基を有する芳香族カルボン酸、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、もしくは水酸基で置換されてもよいアリール基を有する芳香族スルホン酸、又はこれらの塩を含有する。塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、及びカルシウム塩からなる群から選択されることが好ましい。
【0036】
即ち、(c)成分の芳香族カルボン酸塩又は芳香族スルホン酸塩は、芳香族環を有し、この芳香族に直接結合したカルボン酸基又はスルホン酸基をもつ化合物の金属塩が好ましく、芳香族環に他の官能基が結合しても良い。
【0037】
本発明の芳香族カルボン酸塩又は芳香族スルホン酸塩の好ましい具体例としては、トルエンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、サリチル酸ナトリウム、フタル酸水素カリウムが挙げられ、これらは単独であるいは2種類以上併用して用いられる。
【0038】
<その他の成分>
<(d)成分>
本発明では、(d)成分としてLogPが−0.1〜3、好ましくは0.1〜2、より好ましくは0.5〜1.8、特に好ましくは0.5〜1.6の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0039】
ここで、LogPとは、有機化合物の水と1−オクタノールに対する親和性を示す係数である。1−オクタノール/水分配係数Pは、1−オクタノールと水の2液相の溶媒に微量の化合物が溶質として溶け込んだときの分配平衡で、それぞれの溶媒中における化合物の平衡濃度の比であり、底10に対するそれらの対数logPの形で示すのが一般的である。多くの化合物のlogP値が報告され、Daylight Chemical Information Systems, Inc.(Daylight CIS)などから入手しうるデータベースには多くの値が掲載されているので参照できる。実測のlogP値がない場合には、Daylight CISから入手できるプログラム“CLOGP”で計算すると最も便利である。
【0040】
このプログラムは、実測のlogP値がある場合にはそれと伴に、Hansch, Leoのフラグメントアプローチにより算出される“計算logP(ClogP)”の値を出力する。フラグメントアプローチは化合物の化学構造に基づいており、原子の数及び化学結合のタイプを考慮している(cf. A. Leo, Comprehensive Medicinal Chemistry, Vol.4, C. Hansch, P.G. Sammens, J.B. Taylor and C.A. Ramsden, Eds.,p.295, Pergamon Press, 1990)。このClogP値は現在最も汎用的で信頼できる推定値であるので、化合物の選択に際して実測のlogP値の代わりに用いることができる。本発明では、logPの実測値があればそれを、無い場合はプログラムCLOGP v4.01により計算したClogP値を用いた。
【0041】
(d)成分としては、n−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、n−ヘキサノール、シクロヘキサノール、フェノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、2−フェノキシエタノール、2−ベンジルオキシエタノール、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、テトラエチレングリコールモノフェニルエーテル、2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、ノナン−1,6−ジオール、2−メチルオクタン−1,8−ジオール、2−ブトキシエタノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、2−(2−メチル)プロポキシエタノール、ジエチレングリコールモノ−2−メチルプロピルエーテル、2−プロポキシ−1−プロパノール、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、2−ブトキシ−1−プロパノール、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、2−t−ブトキシ−1−プロパノール、2−フェノキシ−1−プロパノール、2−エトキシプロピル−1−アセテート、2−プロポキシプロピル−1−アセテート、1,2−ジアセトオキシプロパン、3−ジメチル−3−メトキシ−1−プロパノール、1,3−ジメチルブチルグリセリルエーテル、ペンチルグリセリルエーテル、ヘキシルグリセリルエーテル、ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル(平均縮合度約3)などを挙げることができる。
【0042】
組成物の透明化及び貯蔵安定性の点から特に好ましい(d)成分は、2−フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノ(n−ブチル)エーテル、及びポリエチレングリコールモノフェニルエーテル(平均縮合度約3)からなる群から選ばれる1種以上である。
【0043】
<(e)成分>
本発明の組成物には、(e)成分として無機塩を含有することができる。無機塩としては、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、及び塩化マグネシウムが貯蔵安定性の点から好ましい。但し、脂肪酸塩類などの界面活性剤にはナトリウム塩やカリウム塩が含まれているが、これら由来の無機塩も本発明の組成物中に含有し得る。
【0044】
<(f)成分>
本発明の(f)成分は水であり、通常、組成物の残部である。(f)成分は、水中に微量に存在するカルシウム、マグネシウム等の硬度成分や鉄等の重金属を除去した水が好ましく、イオン交換水又は蒸留水を用いることができる。また、水を殺菌又は滅菌する目的から少量の塩素を含有しても差し支えない。
【0045】
<(g)成分>
本発明の組成物には(g)成分として染み形成抑制効果の点から、第1の非イオン界面活性剤を含有することが好適である。
【0046】
具体的には炭素数8〜18、好ましくは10〜18のアルキル基又はアルケニル基と、平均付加モル数4〜200、好ましくは4〜30、特に好ましくは15〜30のアルキレン基(アルキレン基の炭素数は2又は3)とを有するポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテルから選ばれる非イオン界面活性剤を挙げることができる。特に好ましい(g)成分としては、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテルが挙げられるが、これに限定されない。
【0047】
51−O−(AO)n−H (5)
〔式中、R51は炭素数11〜22のアルキル基又はアルケニル基であり、Aはエチレン基又はプロピレン基であり、そしてnは平均付加モル数であり、10を超え40未満の数である〕
【0048】
51は、好ましくは12〜18であり、Aはエチレン基が好ましい。さらに、nは10〜35が好ましく、さらに15〜30が好適であり、特に15〜28が最も好ましい。本発明ではこのような第1の非イオン界面活性剤は、低温長期貯蔵安定性の観点から、好ましい。
【0049】
<(h)成分>
本発明の組成物には、(h)成分として金属封鎖剤を含有することが好適である。金属封鎖剤としては、
i)クエン酸、りんご酸、コハク酸などのポリカルボン酸化合物、
ii)エチレンジアミン4酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸などのアミノポリカルボン酸、
iii)1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラメチルホスホン酸などのホスホン酸、
から選ばれる1種以上が好適である。
【0050】
(h)成分としては、特にエチレンジアミン4酢酸及び/又は1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸が好ましい。
【0051】
<(i)成分>
本発明の組成物には、貯蔵安定性を改善する目的で、(i)成分として、上記(g)成分以外の第2の非イオン界面活性剤を含有することができる。(i)成分としては、炭素数8〜22、好ましくは8〜18、より好ましくは12〜18の飽和又は不飽和脂肪酸(例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、パルミトレイン酸等)と多価アルコール(好ましくは、グリセリン、ペンタエリスルトール、ソルビトール、ソルビタン等)とのエステル化合物を含有することができるが、透明な外観を得るために種類や含有量に留意する必要がある。含有できる化合物としては、トリグリセライド、ジグリセライド、モノグリセライド、ペンタエリスリトールのモノ、ジ、トリエステル、ソルビタンエステル等を挙げることができる。
【0052】
本発明の組成物は、上記(d)成分以外の溶剤〔以下(j)成分という〕を用いても差し支えない。具体的には、エタノール、イソプロパノール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコールなどの溶媒であり、特にエタノールが匂いの点から好ましい。
【0053】
本発明の組成物には、通常、繊維処理剤に用いる香料(特に好ましくは特開平8−113871号公報記載の成分(c)及び(d)にて示された香気成分の組み合わせ)を配合しても差し支えない。また、本発明の組成物には、水溶性染料を配合することができ、好ましくは特開平11−256474号公報の(b)成分として示される化合物や特開2004−60079号公報の(c)成分として記載されている化合物が好適である。
【0054】
<液体柔軟剤組成物>
本発明の組成物は、上記(a)成分、(b)成分、及び(c)成分を配合してなる透明液体柔軟剤組成物であり、通常は、これら成分及び任意成分と水とを混合する製造方法により得られる。好ましくは、本発明の組成物は、上記した各成分を下記の含有量になるように混合して得ることができる。
【0055】
(a)成分及び(b)成分の合計含有量は、処理衣料の柔軟性の観点から、5質量%を超え50質量%未満であり、好ましくは15質量%以上25質量%未満である。
【0056】
(a)成分及び(b)成分の質量比(a)/(b)は、シミ形成抑制効果の観点から、好ましくは40/1〜2/1、より好ましくは20/1〜4/1である。
【0057】
(c)成分の含有量は、貯蔵安定性の点から、1を超え5質量%以下、好ましくは2〜5質量%、より好ましくは2〜4質量%である。
【0058】
また、本発明の組成物は、(a)成分と(b)成分のとの合計量及び(c)成分の質量比〔(a)+(b)〕/(c)が、低温長期貯蔵安定性の観点から、好ましくは1〜50、より好ましくは3〜25、特に好ましくは3〜15である。
【0059】
(d)成分の含有量は、透明な外観の維持の観点から、好ましくは10〜35質量%、より好ましくは15〜30質量%、特に好ましくは15〜25質量%である。
【0060】
(e)成分は任意ではあるが、貯蔵安定性の点から重要であり、組成物中の含有量は、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。
【0061】
(g)成分は任意ではあるが、柔軟効果及び染み形成抑制効果の点から重要であり、組成物中の含有量は、好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは0.5〜7質量%、特に好ましくは3〜7質量%である。
【0062】
また、(h)成分、(i)成分、(j)成分も貯蔵安定性の点から含有することが好ましく、組成物中に(h)成分を好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下、(i)成分を好ましくは1〜10質量%、特に好ましくは1〜5質量%、(j)成分を好ましくは0.5〜5質量%、特に好ましくは1〜3質量%含有することが好適である。
【0063】
本発明では、上記成分を(f)成分である水に溶解又は分散させた液体組成物の形態であり、(a)成分はマイクロエマルジョン又は(d)成分に可溶化された状態で含有されているものと推察される。(f)成分の含有量は、組成物中に30〜95質量%が好ましく、より好ましくは40〜85質量%である。
【0064】
さらに本発明の組成物は、貯蔵安定性の点から、組成物の25℃におけるpHを1〜8.5、更に1〜8、特に2〜8に調整することが好ましい。pHは、25℃のpHを、(株)堀場製作所製pHメータD−52S、pH電極6367−10Dを用いて測定したものである。
【0065】
pHに調整するためのpH調整剤としては塩酸、硫酸等の無機酸、もしくはクエン酸、コハク酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、マロン酸、マレイン酸等の有機酸などの酸剤、又は水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、アンモニア及びその誘導体、アミン塩(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなど)、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ剤を、単独もしくは複合して用いることが好ましく、特に塩酸、硫酸から選ばれる酸剤、又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選ばれるアルカリ剤を用いることが好ましい。
【0066】
本発明の柔軟剤組成物には、柔軟効果の観点から、パルミトレイン酸、オレイン酸及びこれらの塩から選ばれる1種以上の成分を配合しても差し支えない。
【実施例】
【0067】
合成例1:(a−1)の合成
ステアリン酸とオレイン酸を質量比1/99(ステアリン酸/オレイン酸)で混合した脂肪酸とトリエタノールアミンとを、反応モル比1.95/1(脂肪酸/トリエタノールアミン)で定法に従って脱水縮合反応を行った。次にこの縮合物に対してジメチル硫酸を0.95当量用い、エタノール溶媒存在下、定法に従って4級化を行い、第4級アンモニウム塩混合物を得た(以下、(a−1)という)。
【0068】
この第4級アンモニウム塩混合物中の未反応の脂肪酸を、液体クロマトグラフィーを用いて除去した。次いで第4級アンモニウム塩分画物を、下記方法によりガスクロマトグラフィーを用いて分析した。その結果、該分画物中のアルケニル基とアルキル基の存在比(アルケニル基の数/〔アルケニル基の数+アルキル基の数〕)は、0.99であった。
【0069】
ガスクロマトグラフィー分析:上記分画物10mg、及び内部標準物質としてn−ドデカン約10mgを各々秤量し、これを80℃で30分間加熱処理を行い、分析用試料とした。カラムとしては、Ultra1(HEWLETT PACKARD)0.2mmφ×25m×0.11μmを用いて測定した。
【0070】
合成例2:(a’−2)の合成
ステアリン酸とオレイン酸を質量比20/80(ステアリン酸/オレイン酸)で混合した脂肪酸とトリエタノールアミンとを反応モル比1.95/1(脂肪酸/トリエタノールアミン)で定法に従って脱水縮合反応を行った。次にこの縮合物に対してジメチル硫酸を0.95当量用い、エタノールの溶媒の存在下、定法に従って4級化を行い、第4級アンモニウム塩混合物を得た(以下、(a’−2)という)。
【0071】
この第4級アンモニウム塩混合物中の未反応の脂肪酸を、液体クロマトグラフィーを用いて除去した。次いで第4級アンモニウム塩分画物を、上記ガスクロマトグラフィーを用いて分析した。その結果、該分画物中のアルケニル基とアルキル基の存在比(アルケニル基の数/〔アルケニル基の数+アルキル基の数〕)は、0.80であった。
【0072】
<配合成分>
以下に実施例及び比較例に用いた成分を示す。
(a−1):合成例1で得たN,N−ジオレオイルオキシエチル−N−ヒドロキシエチル−N−メチルアンモニウム メチルサルフェートを主成分とする反応物
(a’−2):合成例2で得たN,N−ジオレオイルオキシエチル−N−ヒドロキシエチル−N−メチルアンモニウム メチルサルフェートを主成分とする反応物
(b−1):2−デシル−1−テトラデシル硫酸エステルナトリウム
(b−2):直鎖アルキル(C12〜C13)ベンゼンスルホン酸ナトリウム
(b−3):ポリオキシエチレンドデシル硫酸ナトリウム(平均縮合度3)
(c−1):トルエンスルホン酸
(c−2):キシレンスルホン酸
(c−3):安息香酸
(c−4):サリチル酸
(c’−5):マレイン酸
(d−1):2−フェノキシエタノール(LogP 1.10)
(d−2):ポリエチレングリコールモノフェニルエーテル(平均縮合度3、LogP 1.32)
(e−1):硫酸ナトリウム
(f−1):イオン交換水
(g−1):ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル(平均縮合度19)
(h−1):エチレンジアミン4酢酸
(i−1):オレイン酸とソルビタンとの脱水縮合物(オレイン酸/ソルビタンのモル比は3/1)
(j−1):エタノール
【0073】
<液体柔軟剤組成物の調製方法>
上記成分を用いて、表1に示す液体柔軟剤組成物を調製した。300mLビーカーに、組成物の出来あがり質量が200gになるのに必要な量の95%相当量のイオン交換水を入れ、ウォーターバスで60℃に昇温した。一つの羽根の長さが2cmの攪拌羽根が3枚ついたタービン型の攪拌羽根で攪拌しながら(300r/min)、所要量の(a)成分、(b)成分を溶解させた。そのまま5分攪拌後、順次、(d)成分〜(j)成分を添加し、5分攪拌後、(c)成分で目標のpHに調整し、出来あがり質量にするのに必要な量の60℃のイオン交換水を添加した。その後、10分間攪拌し、5℃の水を入れたウォーターバスにビーカーを移し、攪拌しながら25℃に冷却した。なお、表1に示すpHは冷却後(25℃)のpHを記載した。
【0074】
<外観評価>
製造直後(初期)の液体柔軟剤組成物の外観と、−5℃で10日間保存後の液体柔軟剤組成物の外観を−5℃下で目視観察して下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
【0075】
評価基準(外観)
○‥透明もしくは半透明になっている
×‥全体的にもしくは部分的に白濁もしくは析出物が浮遊している
【0076】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)下記一般式(1)の化合物の混合物であって、該混合物中の炭素数14〜26のアルケニル基と炭素数14〜26のアルキル基の存在比が、該アルケニル基の数/〔該アルケニル基の数+該アルキル基の数〕で0.85以上である混合物
(b)直鎖又は分岐鎖の炭素数10〜36のアルキル基又はアルケニル基を少なくとも1個有する、硫酸エステル塩型又はスルホン酸塩型陰イオン界面活性剤、及び/又は炭素数10〜36のアルキル基で置換されたアリール基を少なくとも1個有する、硫酸エステル塩型又はスルホン酸塩型陰イオン界面活性剤、並びに、
(c)炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、もしくは水酸基で置換されてもよいアリール基を有する芳香族カルボン酸、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基、もしくは水酸基で置換されてもよいアリール基を有する芳香族スルホン酸、又はこれらの塩、
を含有する透明液体柔軟剤組成物。
【化1】


〔式中、
11は、エステル基、アミド基又はエーテル基で分断されてもよい炭素数14〜26のアルキル基又は炭素数14〜26のアルケニル基であり、
12及びR13は、それぞれ独立に、エステル基、アミド基又はエーテル基で分断されてもよい炭素数14〜26のアルキル基又は炭素数14〜26のアルケニル基であるか、あるいは炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、
14は、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、そして
-は、陰イオン基である。〕
【請求項2】
(a)成分及び(b)成分の合計が5質量%を超え50質量%未満であり、(c)成分が0.1〜5質量%であり、〔(a)成分及び(b)成分の合計〕/(c)成分が質量比で1〜300である、請求項1記載の透明液体柔軟剤組成物。
【請求項3】
(b)成分が、炭素数10〜36のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸、炭素数10〜36のアルキル硫酸エステル、炭素数10〜36のアルケニル硫酸エステル、炭素数10〜36のアルキル基を有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル、炭素数10〜36のアルケニル基を有するポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステル、炭素数10〜36のオレフィンスルホン酸、炭素数10〜36のアルカンスルホン酸、炭素数10〜36のアルキル基を有するα−スルホ脂肪酸、炭素数10〜36のアルキル基を有するα−スルホ脂肪酸エステル、及びこれらの塩からなる群から選択される1種以上である、請求項1又は2記載の透明液体柔軟剤組成物。
【請求項4】
(c)成分が、トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、安息香酸、サリチル酸、フタル酸、及びこれらの塩からなる群から選択される1種以上である、請求項1〜3の何れか1項記載の透明液体柔軟剤組成物。
【請求項5】
前記(b)成分及び/又は(c)成分の塩が、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、及びカルシウム塩からなる群から選択される、請求項3又は4記載の透明液体柔軟剤組成物。

【公開番号】特開2007−119935(P2007−119935A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−310850(P2005−310850)
【出願日】平成17年10月26日(2005.10.26)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】